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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D |
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管理番号 | 1386641 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-04 |
確定日 | 2022-03-15 |
事件の表示 | 特願2017−525285号「表面光沢性に優れたダイレクトブロー成形容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月22日国際公開、WO2016/204210、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)6月16日(優先権主張 平成27年6月17日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。 令和2年 4月16日付け:拒絶理由通知書 令和2年 6月17日 :意見書、手続補正書の提出 令和2年 8月31日付け:拒絶査定 令和2年12月 4日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出 第2 原査定の概要 令和2年8月31日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。 本願の下記の請求項に係る発明は、その優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1、引用文献等1−2 ・請求項2−5、引用文献等1−2 ・請求項6−7、引用文献等1−3 <引用文献等一覧> 1.特許第2606645号公報 2.特開2013−53183号公報(周知技術を示す文献) 3.特開平5−111952号公報 第3 本件補正について 令和2年12月4日の審判請求と同時に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許法17条の2第3項から6項までの要件に違反しているものであるとはいえない。 本件補正前の請求項1に記載の「4.0〜15.0g/10min」を「4.0〜10.0g/10min」とする補正、及び、本件補正前の明細書の【0007】に記載の「4.0〜15.0g/10min」を「4.0〜10.0g/10min」とする補正は、数値範囲をさらに限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当初明細書の【0013】に「プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR:JIS K 7210に準拠)は、1.0〜15.0g/10min、特に4.0〜10.0g/10minの範囲にあることが好ましい。上記範囲よりもプロピレン系重合体のMFRが小さいと、上記範囲にある場合に比して、溶融押出性に劣り、シャークスキン発生のおそれがあり、一方、上記範囲よりもプロピレン系重合体のMFRが大きいと、上記範囲にある場合に比して成形性に劣る。」(下線は、当審で付与したものである。)と記載されており、本件補正後の数値範囲とともにその数値範囲を好ましいとする作用機序が記載されていることから、当該補正は新規事項を追加するものではない。 また、本件補正前の明細書の【0030】の記載において、「実施例10」を削除するとともに、「尚、実施例8と実施例11は比較例である。」と追記する補正、及び、【0035】【表1】の「実施例10」を削除するとともに、「8」を「8(比較例)」、「11」を「11(比較例)」とする補正は、シャークスキンに係る評価が十分でない実施例を比較例にするか又は削除するものであるが、これによって請求項1〜7に係る発明の奏する作用効果を新たに追加するものであるとまではいえないので、これらの補正は新規事項を追加するものではない。 そして、以下の「第4」〜「第6」までに示すように、本件補正後の請求項1〜7に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。 第4 本願発明 本願の請求項1〜7に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1〜7に係る発明(以下「本願発明1」〜「本願発明7」という。)は、その請求項1〜7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 エチレン・プロピレン・ランダム共重合体又はホモポリプロピレンであるプロピレン系重合体と、ノニトール系の核剤とを、少なくとも含有し、前記プロピレン系重合体のメルトフローレートが4.0〜10.0g/10minであるプロピレン系重合体組成物から成る層を少なくとも有し、該層の外表面がフレーム処理されていることを特徴とするダイレクトブロー成形容器。 【請求項2】 前記プロピレン系重合体がエチレン・プロピレン・ランダム共重合体である請求項1記載のダイレクトブロー成形容器。 【請求項3】 前記核剤が、前記プロピレン系重合体100質量部当たり0.1〜1質量部の量で含有されている請求項1又は2記載のダイレクトブロー成形容器。 【請求項4】 前記プロピレン系重合体組成物から成る層を外層とし、プロピレン系ブロック共重合体から成る内層を有する請求項1〜3の何れかに記載のダイレクトブロー成形容器。 【請求項5】 前記外層の容器胴部における厚みが、10〜200μmである請求項4記載のダイレクトブロー成形容器。 【請求項6】 前記プロピレン系重合体組成物から成る層を外層とし、接着層を介して、高密度ポリエチレンから成る内層を有する請求項1〜3の何れかに記載のダイレクトブロー成形容器。 【請求項7】 前記外層及び接着層の容器胴部における合計厚みが、30〜400μmである請求項6記載のダイレクトブロー成形容器。」 第5 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審で付与したものである。以下同じ。) (1)特許請求の範囲 「【請求項1】2種以上の樹脂層が積層された構造のブロー成形多層プラスチック容器において、最外表面層が、直径1mm及び長さ10mmのノズル及び測定温度190℃のキャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法(JIS K7199)において、下記式 【数1】 及び 【数2】 式中、上記キャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法における剪断応力(ダイン/cm2)であり、γは上記測定における剪断速度(sec−1)であり、nは0.39乃至0.41の数である。を満足する流動特性を有するオレフィン重合体から形成され且つ最外表面が溶融処理されていることを特徴とする表面光沢性に優れている多層プラスチック容器。 【請求項2】 オレフィン重合体がエチレン・プロピレン・ランダム共重合体である請求項1記載の多層プラスチック容器。」 (2)発明の詳細な説明 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は表面光沢性に優れたブロー成形多層プラスチック容器に関する。より詳細には、多層構造を有し、外表面がオレフィン樹脂で形成されていながら、優れた表面光沢を有するプラスチック容器に関する。」 イ 「【0013】本発明によれば、キャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法(JIS K 7199)において剪断速度(γ)と剪断応力(τ)との関係が前記「数1」及び「数2」を満足するオレフィン樹脂を、ブロー成形容器の外表面層として選択使用することにより、シャークスキンやフローマーク等の樹脂の溶融流動に基づく凹凸模様の発生が解消され、一方金型サンドブラスト面に基づく凹凸模様はブロー成形物表面の溶融処理により解消されることを見出だした。 【0014】本発明において問題としている剪断速度と剪断応力との関係で規定している流動特性は、従来オレフィン樹脂等に一般に使用されているメルト・インデックス(MI)やメルトフローレート(MFR)とは、意味のかなり相違するものである。即ち、MI(MFRも同じ)は単位時間(10分)当りの押出量(g数)で定義される特性値であり、剪断速度と剪断応力との関係は問題とされていない。これに対して、本発明では、剪断速度と剪断応力との関係がブロー成形品のシャークスキンやフローマークの発生に密接に関係するのである。 【0015】「図1」は、キャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法において、剪断速度(γ)と剪断応力(τ)との関係を示す線図である。この図において、線Aは、式 【数3】 但し、nは0.41の数である。に相当するものであり、一方線Bは式 【数4】 但し、nは0.39の数である。に相当するものであり、線Cはγ=9×101sec−1、線Dはγ=1.2×103sec−1に相当するものである。線A,B,C及びDで囲まれた領域が本発明で使用する溶融流動特性の領域である。尚、剪断速度(γ)を上記範囲としているのは、この範囲が実際の溶融押出条件と対応するためである。 【0016】線Aよりも上側の領域、即ち「数1」を満足しない領域では、ブロー成形品の外表面にシャークスキンを発生し、このブロー成形品ではたとえ表面溶融処理を行っても、シャークスキンによる凹凸模様が残留し、60゜グロスが60%以下となり、表面光沢性の点で不満足となる。 【0017】一方、線Bよりも下側の領域、即ち「数2」を満足しない領域では、ブロー成形品外表面にフローマークが発生したり、或いはドローダウンによる偏肉が生じたりする。尚フローマークとはダイス面に異物等が付着した影響で溶融押出物の表面に押出方向に沿ってスジが入る現象を言う。 【0018】本発明によれば、上記「数1」及び「数2」を満足するオレフィン樹脂を容器の外表面としてブロー成形することにより、シャークスキンやフローマークの発生が防止され、しかもブロー成形物の外表面を溶融処理に付することによって、金型サンドブラスト面に基づく凹凸模様も解消され、表面光沢性に優れたブロー成形多層プラスチック容器が提供される。 【0019】 【発明の好適態様】本発明によるプラスチック容器の一例を示す図2において、この容器11は、胴部12、胴部12の下端に連なりしかもパリソンのピンチオフにより形成された底部13、胴部12の上端に肩部14を介して連なる口頚部15から成っており、この口頚部15には蓋体(図示せず)と密封係合される口部16及び口部16の下方のネジ、ビード、フランジ或いは段肩等から成る蓋取付部17が設けられている。 【0020】この容器11は多層構造であり、その断面構造IIIを拡大して示す図3において、その器壁は、容器内面側(図で左側)の基体層21と容器外面側(図で右側)の外面層20とから成り、これらの多層構造は、2種の樹脂の共押出しによる積層で形成されている。外面層20は、前記「数1」及び「数2」を満足するオレフィン樹脂で形成されていると共に、その最外表面22はブロー成形後に溶融処理が行われている。一方、容器内面側の基体層20は、それ自体公知のブロー成形グレードのオレフィン樹脂で形成されている。 【0021】基体層20と外面層21との間に接着性がない場合には、図示していないが接着剤樹脂層を介在させることができる。 【0022】オレフィン樹脂としては、低−、中−或いは高−密度のポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブテン−1、エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体或いはこれらのブレンド物等が挙げられるが、これらの内から流動特性が本発明の基準に合致したものを使用する。 【0023】これらのオレフィン樹脂の内でも、プロピレン系樹脂は他のオレフィン樹脂に比して表面光沢性もよく、また内部ヘイズも低く、透明性にも優れているので、本発明の目的に好適である。プロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレンの他にプロピレンと他のα−オレフィン、例えばエチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等との共重合体、特にエチレンとの共重合体が挙げられる。 【0024】表面層を構成するオレフィン樹脂は、前述した溶融流動特性を有するものであるが、この溶融流動特性に影響を与えるものとして重量平均分子量(Mw)や樹脂の化学構造がある。この意味で重量平均分子量(Mw)が27×104乃至33×104、特に29×104乃至32×104の範囲にあるオレフィン樹脂、特にプロピレン系樹脂を用いるのが好ましい。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法を用いて分子量分布曲線を求めポリスチレンをスタンダードとしてユニバーサルキャリブレーション法により重量平均分子量を算出することにより求め得る。また、プロピレン系共重合体、特にプロピレン−エチレン・ランダム共重合体の内、上記重量平均分子量を有するものは、この目的に適している。 【0025】上記ランダム共重合体としては、エチレン含有量が2乃至8重量%、特に3乃至5重量%のものが適当である。」 ウ 「【0039】ブロー成形は、特に制限されないがロータリ成形機を用いて行うことが能率の点で望ましい。このロータリ成形機では周囲に多数の割型が配置して設けられており、一定方向に回転可能に且つ割型が開閉可能に設けられている。ダイヘッドから、熱可塑性樹脂パリソンが割金型中心の軌跡と接線方向に押し出され、この接線位置において、割金型は開いており、供給されるパリソンを割金型で挟んでブロー成形が行われる。ブロー成形後、割金型が開いて成形物が放出される。 【0040】本発明によれば、このようにして成形されるブロー成形物の最外面を溶融処理する。この表面溶融処理は、型のサンドブラスト面に対応する凹凸模様を消失させて、平滑化を行うものであり、軽度の処理でよい。 【0041】溶融処理の熱源としては、火炎による加熱、赤外線加熱、誘電加熱等の任意の熱源が使用されるが、操作の簡単さ及び短時間の内に効率よく加熱できること等から火炎処理が最も適当である。 【0042】火炎処理は、完全な還元炎の状態で行うことが、溶融パリソンの燃焼や酸化を引き起こさない点で重要であり、燃料としては都市ガス、プロパンガス、液化天然ガス、液化石油ガス等の任意の燃料ガスが使用される。本発明では、バナー温度を一般に1200乃至1400℃の温度とし、バナー先端と容器表面との間隔を20乃至40mm程度とし、加熱を行えば満足すべき結果が得られる。」 (3)図面 ア 図1 「 」 イ 図2 「 」 ウ 図3 「 」 (4)上記(1)〜(3)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「基体層とエチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるポリプロピレン系樹脂から形成された最外表面層とを有し、 前記共重合体が下記式の[数1]及び[数2]を満足し、 前記最外表面層の最外面が火炎処理されており、パリソンを割金型に挟んでブロー成形されたブロー成形多層プラスチック容器。 [数1] [数2] 式中、τは、直径1mm及び長さ10mmのノズル及び測定温度190℃のキャピラリーレオメーターによる流れ特性試験方法(JIS K7199)において測定された剪断応力(ダイン/cm2)であり、γは前記試験方法において測定された剪断速度(sec−1)であり、nは0.39乃至0.41の数である。」 2 引用文献2 引用文献2には、次の事項が記載されている。 (1)特許請求の範囲 「【請求項1】 下記の1)プロピレン系(共)重合体(I)40〜99重量部、下記の2)プロピレン系共重合体(II)1〜60重量部、および、下記の3)一般式(1)で表される造核剤0.01〜2.0重量部からなることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。ただし、プロピレン系(共)重合体(I)とプロピレン系共重合体(II)との合計を100重量部とする。 1)プロピレン系(共)重合体(I) プロピレン単独重合体もしくは、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、以下を満たすことを特徴とするプロピレン系(共)重合体。 (i)エチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィン含有量が0〜5wt%(ただし5を除く) (ii)23℃キシレン可溶分が0.1〜8wt% (iii)23℃キシレン可溶分の重量平均分子量(Mw)が1万以下 (iv)分子量分布(Q1)Mw/Mnが2〜10 2)プロピレン系共重合体(II) プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、以下を満たすことを特徴とするプロピレン系共重合体。 (i)エチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィン含有量が5〜20wt% (ii)分子量分布(Q2)Mw/Mnが1.5〜5 3)造核剤 下記の一般式(1)で表される化合物からなる造核剤。 【化1】 [但し、nは、0〜2の整数であり、R1〜R5は、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、R6は、炭素数が1〜20のアルキル基である。]」 (2)発明の詳細な説明 ア 「【背景技術】 【0002】 ポリプロピレン材料は、成形加工性、剛性に優れ、またリサイクル性や耐熱性、耐薬品性にも優れていることから、各種の方法で成形加工され、幅広い用途に用いられている。これらの特長を活かすべく、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどに代表される他の透明樹脂からポリプロピレン材料への置き換えの検討も活発であるが、その場合には、ポリプロピレン材料への透明性付与が非常に大きな課題となっている。」 イ 「【0005】 このため、プロピレン系重合体の一次構造の検討だけではなく、プロピレン系重合体に対する透明化核剤の活用による透明性の改良が幅広く試みられてきた。透明化核剤としては、ソルビトール系核剤に代表される溶解型透明化核剤が最も一般的に使用されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。また、近年開発されたノニトール系核剤では、さらに良好な透明性を実現することができる(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、これらの既存の透明核剤を使用しても、透明性の改良幅は必ずしも十分ではなく、ポリスチレン等の他の樹脂の透明性にはまだ及ばないのが実態であった。」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、上記問題点に鑑み、優れた透明性、耐衝撃性、成形加工性を両立し、同時にべたつきの少ないプロピレン系樹脂組成物、および成形品を提供することにある。」 エ 「【0017】 [1]プロピレン系樹脂組成物を構成する成分 1)プロピレン系(共)重合体(I) 本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(I)は、プロピレン単独重合体もしくは、プロピレンとコモノマーとのランダム共重合体でなければならない。これ以外の重合体、たとえばブロック共重合体では、透明性が発現しないため、好ましくない。」 オ 「【0024】 本発明で用いられるプロピレン系(共)重合体(I)のメルトフローレート(MFR:230℃ 2.16kg)は、他の条件を満たす限りにおいては、特に制限なく用いることができる。耐衝撃性と透明性とのバランスを考慮すると、成形法や成形品の形状等に依存するものの、一般的には、MFRが0.3〜100g/10分程度の範囲にあることが望ましい。一例として、プロピレン系(共)重合体(I)のMFRは、0.5〜100g/10分としながらも、プロピレン系(共)重合体の汎用の用途に供する場合には、0.5〜100g/10分、3〜80g/10分、10〜60g/10分、通常の成形品の場合には、15〜40g/10分程度の範囲に属するものを任意に使用することができる。」 カ 「【0059】 [2]プロピレン樹脂組成物の製造方法 本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系(共)重合体(I)、プロピレン系共重合体(II)、一般式(1)で示される化合物からなる造核剤および必要に応じて用いる他の添加剤を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に投入して混合(ドライブレンド)することにより得ることができる。あるいは、ドライブレンドされた後、通常の単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロール等で180〜280℃程度の温度範囲でさらに溶融混練(メルトブレンド)することにより得ることもできる。さらには、プロピレン系(共)重合体(I)、プロピレン系共重合体(II)のどちらか一方に一般式(1)で示される化合物からなる造核剤を加え、それぞれに対して必要な添加剤等を加えてドライブレンドとメルトブレンドとを個別に行った後、各重合体をドライブレンドすることにより得ることもできる。 【0060】 [3]プロピレン樹脂成形品 本発明の成形品は、上記のプロピレン系樹脂組成物を、公知の射出成形機、押出成形機、フィルム成形機、ブロー成形機、繊維成形機等各種の成形機により成形することにより得られるものである。特に、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、結晶化速度が速いため、各種成形品において高速成形が可能になるという特長を持つ。さらに、射出成形時に適度な成形収縮率を有するため、離型時の抱きつきによる離型不良といった不具合が起きづらいという特徴も有する。 高速成形性は、成形条件によっても追及しうる。すなわち、成形時の冷却工程において冷却条件を強化することにより、結晶化が促進されて、冷却時間が短縮される。また、冷却を強化することにより、成形品が内部まで急激に冷却固化される結果、結晶のサイズが小さくなり、透明性がより改良されるという効果もある。冷却の強化は、金型や冷却ロールに通水する冷却水の温度を制御することにより実現できる。望ましい冷却水の温度は60℃以下であるが、40℃以下とすることがより好ましい。 【0061】 このようにして得られた成形品は、透明性、耐衝撃性、低べたつき性を求められる多くの用途に適用可能である。 具体的には、食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、その他のデザート容器、惣菜容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン容器、米飯容器、レトルト容器、弁当容器等)、飲料容器(飲料ボトル、チルドコーヒー容器、ワンハンドカップ容器、その他の飲料容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ、調味料キャップ、化粧品容器キャップ等)、医薬品容器(輸液バッグ、血液バッグ、プレフィルドシリンジ、キット製剤、目薬容器、薬液容器、薬剤容器、液体の長期保存容器、プレススルーパッケージ、ストリップパッケージ、分包、プラスチックバイアル等)、その他各種容器(インク容器、化粧品容器、シャンプー容器、洗剤容器等)、医療用器具(ディスポーザブルシリンジおよびその部品、カテーテル・チューブ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、試験管、検査キット、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース等)、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、バス・トイレタリー用品、筆記用具、文房具、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース等)、自動車部品(インパネ、バンパー、トリム、内装部品、灯体等)、電気・電子部品(各種電気機器の部材・筐体、半導体搬送容器、光学部品、各種情報メディアケース、太陽電池封止材等)、建材、産業資材品、理化学機器、延伸フィルム、未延伸フィルム、シート、繊維などが挙げられる。」 キ 「【0063】 以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの記載により何ら限定されるものではない。なお、各実施例および比較例において、用いた物性測定は以下の方法で行い、プロピレン系重合体、造核剤および他の添加剤(酸化防止剤、中和剤など)としては以下のものを使用した。」 ク 「【0068】 (5)試験片の作成 東芝機械製EC−100射出成形機により、成形温度220℃、金型温度40℃において、JISファミリー金型を用いて、各種試験片を成形した。」 3 引用文献3 引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1)発明の詳細な説明 ア 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ブロープラスチック容器の製法に関し、より詳細には、優れた表面光沢を有するオレフィン系樹脂製ブロープラスチック容器の製法に関する。」 イ 「【0009】 【問題点を解決するための手段】本発明によれば、溶融プラスチックパリソンを押し出し、このパリソンをブロー成形金型中でブロー成形することから成るプラスチック容器の製法において、溶融プラスチックパリソンとして少なくとも外表面がオレフィン系樹脂からなるパリソンを使用すると共に、該溶融プラスチックパリソンを押出ダイスとブロー成形金型との間で外表面を選択的に短時間加熱処理し、加熱処理後の溶融パリソンをブロー成形金型中でブロー成形することを特徴とする表面光沢性に優れたブロープラスチック容器の製法が提供される。 【0010】本発明では、溶融プラスチックパリソンの加熱処理を火炎(フレーム)処理により行うことが、装置面及び生産性の点で特に好ましく、またパリソンの少なくとも外表面が、エチレン含有量が2乃至8重量%で、メルトフローレートが2.5g/10分以上で且つMw /Mn の比が3乃至5のエチレン−プロピレン・ランダム共重合体から成るパリソンであることが、本発明の目的に特に好ましい。」 ウ 「【0014】 【発明の好適態様】 (ブロー成形法)本発明のブロー成形法に用いる装置の概略配置を示す図1において、溶融押出機1は図において下向きのダイヘッド2を備えており、これに対して、ロータリー成形機3が以下に示す関係位置で設けられる。即ち、ロータリー成形機3は内部にキャビテイ4を備えた多数の割金型5をその周囲に有しており、図において矢印方向(時計方向)に回転している。ダイヘッド2から、熱可塑性樹脂パリソン6が割金型5の軌跡と接線方向に押し出される。この接線位置において割金型5は開いており(図ではその下方のみが示されている)、供給されるパリソンを割金型5で挟んでブロー成形が行われる。 【0015】本発明では、このダイヘッド2の直下に溶融パリソンを短時間高温処理(火炎処理)するためのバーナ7を設置する。バーナ7はパリソン6よりも大きい径を有し且つこれと同心円状の環の形をしており、その内方を溶融パリソン6が通過するようになっている。バーナ7には配管8を通して燃料の混合ガスが供給され、その内周面には径内方向きに火炎9の噴出口10が設けられていて、通過する溶融パリソン6の表面層を短時間高温に加熱する。これにより、パリソン6の表層部は流動性のよい状態となり、パリソン表面の凹凸が十分にレベリングされて、その表層に粗面が出にくくなってからブロー成形が行われるようになる。 【0016】熱処理されたパリソン6は、割金型5により挟み込まれ、その内部に流体が吹き込まれてブロー成形が行われるが、前述した火炎処理により、パリソンが伸び易くなって、金型表面とよく密着し、表面光沢に優れたブロー成形容器が製造されることになる。 【0017】(プラスチック素材)本発明は任意のプラスチック素材のブロー成形に適用できるが、少なくとも容器表層部、即ちパリソン表層部が表面光沢のでにくいオレフィン系樹脂、特にプロピレン系樹脂からなるものの成形に有利に用いられる。容器表層部を構成するプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレンの他にプロピレンと他のαーオレフィン、特にエチレンとの共重合体が挙げられる。 【0018】成形時の耐ドローダウン性に優れ、表面光沢性も比較的良好なものとして、エチレン−プロピレン・ランダム共重合体が知られているが、少なくとも表層部がエチレン−プロピレン・ランダム共重合体から成るものに本発明を適用すると、特に優れた結果が得られる。 【0019】エチレン−プロピレン・ランダム共重合体としては、エチレン含有量が2乃至8重量%、特に3乃至5重量%が好適であり、そのメルトフローレート(MFR)は2.0g/10分以上、特に2.5乃至5g/10分の範囲にあり、またMw (重量平均分子量)/Mn (数平均分子量)の比(分子量分布)は3乃至5の範囲にあるものが好適である。この分子量分布は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ法を用いて分子量分布曲線を求めポリスチレンをスタンダードとしてユニバーサルキャリブレーション法により重量平均分子量と数平均分子量とを算出することにより求め得る。 【0020】従来、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をこの種の容器に用いる場合は、メルトフローレート(MFR)が1.5g/10分以下であることが、ドローダウン防止のために必要であった。しかし1.5g/10分以下のMFRでは満足する表面光沢を得ることができなかった。また、ポリプロピレンは、結晶化により透明性が悪くなる傾向があった。上記特性のエチレン−プロピレン・ランダム共重合体を使用することで、ドローダウンを防止しながら、表面光沢を向上させることができる。」 エ 「【0035】 【実施例】本発明を次の実施例で具体的に説明する。 【0036】実施例1 外層としてメルトフローレート(MFR)4g/10分、分子量分布(Mw /Mn )4.5、エチレン含有量3.5モル%のエチレン−プロピレン・ランダム共重合体を外層用押出機に供給し、内層としてMFR1.2g/10分、Mw /Mn 1.8、エチレン含有量3モル%のエチレン−プロピレン・ブロック共重合体を内層用押出機に供給して、2層溶融パリソンを押出し、このパリソンを1600℃の温度でフレーム処理した後、ブロー金型内でブロー成形して胴部平均肉厚900μm、内容積700ccのボトルを得た。このボトルの各層の厚みは、外層が100μm、内層が800μmであった。 【0037】実施例2 外層としてMFR3g/10分、Mw /Mn 3.5、エチレン含有量4モル%のエチレン−プロピレン・ランダム共重合体を外層用押出機、内層としてMFR1.5g/10分、Mw /Mn 2、エチレン含有量3.5モル%のエチレン?プロピレン・ランダム共重合体を外層用押出機、中間層としてエチレン含有量32モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体から成るガスバリヤー性樹脂を中間層用押出機及び内、外層と中間層との間に介在する接着剤層としてカルボニル基濃度50ミリモル/10g重合体のカルボン酸変性ポリプロピレンを接着剤層用押出機にそれぞれ供給して溶融パリソンを押し出し、このパリソンをブロー金型内でブロー成形して、胴部平均肉厚900μm、内容積700ccのボトルを得た。このボトルの各層の厚みは、外層から内層に向かって100μm/10μm/30μm/10μm/750μmであった。」 第6 対比・判断 1 本願発明1 (1)本願発明1と引用発明とを対比するに、引用発明の「最外表面」は、その用語の意味からみて、本願発明1の「外表面」に相当し、以下同様に、「火炎処理」は「フレーム処理」に、「多層プラスチック容器」は「容器」に、それぞれ相当する。 また、本願発明1の「層」は、その外表面がフレーム処理されるものであることを踏まえると、最外表面を形成することは明らかであるから、引用発明の「最外表面層」は、本願発明1の「層」に相当する。 本願発明1の「エチレン・プロピレン・ランダム共重合体又はホモプロピレンであるプロピレン系重合体と、ノニトール系の核剤とを、少なくとも含有し」、「プロピレン系重合体組成物から成る層を少なくとも有し」と引用発明の「基体層とエチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるポリプロピレン系樹脂から形成された最外表面層とを有し」とは、その層の構造や含有成分からみて、「エチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるプロピレン系重合体を少なくとも含有」する「プロピレン系重合体組成物から成る層を少なくとも有」する限りにおいて一致する。 本願発明1の「ダイレクトブロー成形」と引用発明の「パリソンを割金型に挟んでブロー成形されたブロー成形」とは、ブロー成形である限りにおいて一致する。 (2)以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「エチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるプロピレン系重合体を少なくとも含有し、前記プロピレン系重合体がプロピレン系重合体組成物から成る層を少なくとも有し、 該層の外表面がフレーム処理されているブロー成形容器。」 [相違点1] エチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるプロピレン系重合体を少なくとも含有し、前記プロピレン系重合体がプロピレン系重合体組成物から成る層について、本願発明1では、「エチレン・プロピレン・ランダム共重合体又はホモプロピレンであるプロピレン系重合体と、ノニトール系の核剤とを、少なくとも含有し」、「プロピレン系重合体組成物から成る層」であるのに対して、引用発明では、基体層とエチレン・プロピレン・ランダム共重合体であるポリプロピレン系樹脂から形成された最外表面層とを有し、核剤については何ら特定されていない点。 [相違点2] プロピレン系重合体について、本願発明1では、メルトフローレートが4.0〜10.0g/10minであるのに対して、引用発明では、上記式の[数1]及び[数2]を満足するものである点。 [相違点3] ブロー成形について、本願発明1では、ダイレクトブロー成形であるのに対して、引用発明では、パリソンを割金型に挟んでブロー成形されたものである点。 (3)相違点について検討する。 ア 相違点2及び3について 相違点2及び3は技術的に互いに関連していることから、事案に鑑みて、まず相違点2及び3についてまとめて検討する。 まず、相違点3について検討する。 引用文献2には、上記第5の2(2)のカのとおり、ブロー成形により食品容器を製造することについて示唆されているといえるが、同キのとおり、実施例における試験片は射出成形機により成形されたものしか記載されておらず、ダイレクトブロー成形することについては記載されていない。 引用文献3には、上記第5の3(1)のとおり、ブロープラスチック容器において、火炎処理したパリソンをブロー成形して製造するものは記載されているが、ダイレクトブロー成形については記載されていない。 してみると、引用文献1〜3には、容器をダイレクトブロー成形により製造することが記載されていない。 次に、相違点2について検討する。 まず、引用文献2には、上記第5の1(2)イのとおり、【0024】には、「耐衝撃性と透明性とのバランスを考慮すると、成形法や成形品の形状等に依存するものの、一般的には、MFRが0.3〜100g/10分程度の範囲にあることが望ましい。」「一例として、プロピレン系(共)重合体(I)のMFRは、0.5〜100g/10分としながらも、プロピレン系(共)重合体の汎用の用途に供する場合には、0.5〜100g/10分、3〜80g/10分、10〜60g/10分、通常の成形品の場合には、15〜40g/10分程度の範囲に属するものを任意に使用することができる。」と記載されていることから、良好な透明性を実現するために、プロピレン系(共)重合体においてノニトール系造核剤を使用する場合には、必要に応じてどのような値でも構わないという示唆があるといえる。しかし、引用文献2には、シャークスキン等の課題を解決するための手段は記載されていない。 ここで、引用文献1には、上記第5の1(2)イのとおり、「【0014】本発明において問題としている剪断速度と剪断応力との関係で規定している流動特性は、従来オレフィン樹脂等に一般に使用されているメルト・インデックス(MI)やメルトフローレート(MFR)とは、意味のかなり相違するものである。即ち、MI(MFRも同じ)は単位時間(10分)当りの押出量(g数)で定義される特性値であり、剪断速度と剪断応力との関係は問題とされていない。これに対して、本発明では、剪断速度と剪断応力との関係がブロー成形品のシャークスキンやフローマークの発生に密接に関係するのである。」と記載されており、引用発明では、シャークスキンやフローマークの発生という課題を解決するためには、MFRを調整するではなく、式の[数1]及び[数2]で定められた剪断速度と剪断応力の関係を調整すればよいとしている。つまり、引用発明には、シャークスキン等の問題を解決するために、MFRを調整するという技術思想や動機づけがない。 そうすると、引用文献2に、たとえ、良好な透明性を実現するという課題を解決するためにMFRをどのような値にしてもよいとの記載があったとしても、当該課題と引用発明の課題とはそもそも異なるものであり、引用発明において、シャークスキン等の問題を解決すべくMFRの値を特定の範囲に調整しようとすることは、たとえ当業者といえども想起できるものではない。 なお、引用発明の式の[数1]及び[数2]で定められた剪断速度と剪断応力の関係を維持しつつ、MFRの値を4.0〜10.0g/10minの範囲内に調整できることが技術常識であればまだしも、それを示す証拠は何ら示されていない。 次に、引用文献3には、上記第5の3(1)のとおり、MFRを2〜5g/10分の範囲とすることについては示唆があり、実施例としては、3g及び4g/10分のものが一応記載されている。(なお、シャークスキン等の課題については何ら記載も示唆もない。) しかしながら、引用文献3に記載のMFRの数値範囲はダイレクトブロー成形ではなく、火炎処理したパリソンをブロー成形することを前提とするものであるから、仮に引用発明においてダイレクトブロー成形が採用できたとしても、当該MFRの数値範囲をそのまま採用できるとはいえないし、シャークスキン等の課題が解決できるともいえない。 そうすると、引用文献1〜3には、エチレン・ポリプロピレン・ランダム共重合体組成物からなる容器をダイレクトブロー成形で製造することについて直接的な記載はないし、そのような示唆もない。仮に、ダイレクトブロー成形により容器を製造することが周知の技術であって、引用発明の容器をダイレクトブロー成形で製造することを当業者が一応想起できたとしても、その場合において、シャークスキン等の課題を解決するために、MFRの値を4.0〜10.0g/10minの範囲内に調整することについては、引用文献1〜3に記載されていないし、それを示唆するものもなく、そのようなことが技術常識であるともいえない。また、そもそも引用発明において、シャークスキン等の課題を解決するためにMFRの値を調整する動機付けが存在しない。 したがって、引用発明及び引用文献2〜3に記載された事項から、上記相違点2及び3に係る本願発明1の構成を当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 作用効果について 上記の各相違点を総合的に勘案しても、本願発明1の奏するダイレクトブロー成形容器においてシャークスキン等の課題を解決するという作用効果は、引用発明、引用文献2〜3に記載された事項及び上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものであるとはいえず、格別顕著なものである。 ウ したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献2〜3に記載された事項及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2〜7 本願発明2〜7は、本願発明1の構成のすべてを備え、さらに請求項2〜7に記載された事項によって限定を付加したものであるから、上記1のとおり、本願発明1について述べたのと同じ理由により、引用発明、引用文献2〜3に記載された事項及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない 第7 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1〜7は、「メルトフローレートが4.0〜10.0g/10min」という事項を有するものとなっており、上記第6で説示したとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1〜3に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-02-22 |
出願番号 | P2017-525285 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B65D)
|
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
一ノ瀬 覚 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 芦原 康裕 |
発明の名称 | 表面光沢性に優れたダイレクトブロー成形容器 |
代理人 | 小野 尚純 |
代理人 | 奥貫 佐知子 |