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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1386674
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-25 
確定日 2022-07-15 
事件の表示 特願2018− 94685「癌療法における使用のためのトランス−クロミフェン」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 9日出願公開、特開2018−123168〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願の経緯
本願は、平成25年10月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年11月2日、米国)を国際出願日とする特願2015−540702号の一部を、平成30年5月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成31年 2月28日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 9月 3日 :意見書及び手続補正書
令和 2年 1月29日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和 2年 8月 3日 :意見書
令和 2年 8月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 2年12月25日 :審判請求書

第2 本願発明
令和1年9月3日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、以下のとおりである。

「それを必要とする対象の血清中のインスリン様増殖因子1(IGF−1)のレベルを低下させるための方法であって、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)を含む組成物の有効量を前記対象に投与する工程を含む方法。」(以下「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の理由のうち、理由4は、本願発明の方法は人間を治療する方法に該当するから、特許法第29条第1項柱書きの産業上利用できる発明に該当しないというものである。

第4 当審の判断
(1)発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明の記載には、次の記載がある(下線は当審による。)。
摘記ア
「【0015】
一部の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の血清中のインスリン様増殖因子1(IGF−1)のレベルを低下させるための方法に関し、当該方法は、抗エストロゲン薬若しくは類似体又はその薬学的に許容される塩を含む組成物の有効量を対象に投与する工程を含む。対象は、限定するものではないが、300ng/ml以上、350ng/ml以上、400ng/ml以上、又は500ng/ml以上のIGF−1レベルを含む正常範囲よりも血清IGF−1レベルの高いヒト男性又は女性であってよい。」

摘記イ
「【0032】
本発明の別の実施形態では、抗エストロゲン薬の有効量を含む組成物の投与が、対象のIGF−1の上昇したレベルを治療するために使用される。この対象は、男性又は女性であってよい。」

摘記ウ
「【0037】
抗エストロゲン薬の「有効量」は、対象のIGF−1レベルを治療の開始前のベースラインレベルより低く下げるのに有効な量として定義される。好ましくは、本発明の組成物は、対象のIGF−1レベルを、治療の過程にわたって、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%又は少なくとも40%まで低下させるのに有効である。」

(2)判断
ア 本願発明には、「それを必要とする対象の血清中のインスリン様増殖因子1(IGF−1)のレベルを低下させるための方法」と記載されているところ、この「対象」について、上記摘記アには、「対象」は、正常範囲よりも血清IGF−1レベルの高いヒト男性又は女性であってもよい旨記載されていることからみて、当該「対象」には、人間も含まれるものである。
また、本願発明の「血清中のインスリン様増殖因子1(IGF−1)のレベルを低下させるための方法」について検討すると、上記摘記イ及び摘記ウの記載において、対象の上昇したIGF−1レベルを低下させることを「治療」と記載していることからみて、本願発明の「血清中のインスリン様増殖因子1(IGF−1)のレベルを低下させるための方法」は、治療方法を意味することが理解できる。

そうすると、本願発明は、人間を治療する方法を包含するものである。
よって、本願発明は、人間を治療する方法に該当するから、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。

イ 請求人は、令和2年12月25日付けの審判請求書及び令和2年8月3日付け意見書において、本願発明は必ずしも医師によってのみ実施されるものではなく、人間を治療する方法には該当しない旨主張する。

しかしながら、上記アで説示したように、本願発明における「対象」は、人間を包含しているものであるから、本願発明は、人間を治療する方法を含むものであり、人間を治療する方法は、医師が人間に対して治療を実施する方法であって、いわゆる「医療行為」といわれているものである。そうすると、本願発明は、医療行為を包含するものである。
そして、本願発明に医療行為が含まれていれば、それが特許された場合には、医師が行う医療行為が特許権侵害となり得るのであるから、その場合は、産業上利用できない発明として扱わざるを得ないことは明らかである。
したがって、請求人の主張は採用できない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項柱書きの「産業上利用できる発明」に該当せず、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡崎 美穂
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-18 
結審通知日 2022-02-21 
審決日 2022-03-04 
出願番号 P2018-094685
審決分類 P 1 8・ 14- Z (A61K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡崎 美穂
特許庁審判官 冨永 みどり
進士 千尋
発明の名称 癌療法における使用のためのトランス−クロミフェン  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  

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