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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1386689
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-05 
確定日 2022-01-11 
事件の表示 特願2016−540263「無線端末」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月11日国際公開、WO2016/021639、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)8月5日(優先権主張 平成26年8月7日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年5月30日付け 拒絶理由通知書
令和元年8月 5日 意見書、手続補正書の提出
令和2年1月31日付け 拒絶理由通知書
令和2年4月 6日 意見書、手続補正書の提出
令和2年9月29日付け 拒絶査定
令和3年1月 5日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年9月29日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の請求項1ないし5に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2014−512145号公報

第3 本願発明について
本願の請求項1および2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」および「本願発明2」という。)は、令和3年1月5日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1および2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1および2は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う無線端末であって、
制御部を備え、
前記制御部は、
前記移動通信網からの受信信号を測定対象とする第1測定と、無線LANからの無線信号を測定対象とする第2測定とを行い、
前記第1測定の結果が第1条件を満たしており、かつ、前記第2測定の結果が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行し、
前記制御部は、前記第2測定の結果に設定された有効期間が満了していない場合に、前記第2測定の結果が前記第2条件を満たしているか否かを判定し、
前記制御部は、前記第2測定の結果を取得することに応じて、カウントダウンによって前記有効期間を計測するタイマを起動し、前記タイマが満了する前に、前記第2測定の結果が前記第2条件を満たしているか否かを判定することを特徴とする無線端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記移動通信網側のエンティティから通知される前記有効期間を受信する処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の無線端末。」

第4 引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2014−512145号)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与した。)

(1)「【0011】
基地局114a、114bは、エアインターフェイス116を介してWTRU102a、102b、102c、102dのうちの1または複数と通信することができ、エアインターフェイス116は、任意の適切なワイヤレス通信リンク(例えば無線周波数(RF)、マイクロ波、赤外線(IR)、紫外線(UV)、可視光など)とすることができる。エアインターフェイス116は、任意の適切な無線アクセス技術(RAT)を使用して確立されてよい。」

(2)「【0013】
別の実施形態では、基地局114aおよびWTRU102a 、102b 、102cは、発展型UMTS地上無線アクセス(E−UTRA)などの無線技術を実装することができ、これにより、ロングタームエボリューション(LTE)および/またはLTEアドバンスト(LTE−A)を使用してエアインターフェイス116を確立することができる。」

(3)「【0015】
図1Aの基地局114bは、例えばワイヤレスルータ、Home NodeB、Home eNodeB、またはアクセスポイントとすることができ、事業所、家庭、車両、キャンパスなどの局所化されたエリア中でのワイヤレス接続性を容易にするために任意の適切なRATを利用することができる。一実施形態では、基地局114bおよびWTRU102c、102dは、IEEE802.11などの無線技術を実装して、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を確立することができる。別の実施形態では、基地局114bおよびWTRU102c、102dは、IEEE802.15 などの無線技術を実装して、ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)を確立することができる。さらに別の実施形態では、基地局114bおよびWTRU102c、102dは、セルラーベースのRAT(例えばWCDMA、CDMA2000、GSM、LTE、LTE−Aなど)を利用して、ピコセルまたはフェムトセルを確立することができる。図1Aに示すように、基地局114bは、インターネット110への直接接続を有することができる。したがって、基地局114bは、コアネットワーク106を介してインターネット110にアクセスすることは必要とされなくてよい。」

(4)「【0019】
図1Bは、例示的なWTRU102のシステム図である。図1Bに示すように、WTRU102は、プロセッサ118、送受信機120、送受信要素122、スピーカ/マイクロホン124、キーパッド126、ディスプレイ/タッチパッド128、取外し不可メモリ130、取外し可能メモリ132、電源134、全地球測位システム(GPS)チップセット136、および他の周辺装置138を備えてよい。WTRU102が一実施形態との整合性を維持しながら前述の要素の任意のサブコンビネーションを備えてよいことは理解されるであろう。
【0020】
プロセッサ118は、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアに関連する1または複数のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)回路、他の任意のタイプの集積回路(IC)、状態機械などとすることができる。プロセッサ118は、信号符号化、データ処理、電力制御、入出力処理、および/または、WTRU102がワイヤレス環境で動作できるようにする他の任意の機能を実施することができる。プロセッサ118は送受信機120に結合されてよく、送受信機120は送受信要素122に結合されてよい。図1Bではプロセッサ118と送受信機120とを別々のコンポーネントとして描いているが、プロセッサ118と送受信機120とが共に電子パッケージまたはチップ中で統合されてもよいことは理解されるであろう。」

(5)「【0044】
WTRUはその後、本明細書でより詳細に後述するように、少なくとも1つの位置についての記憶されたオフロードエリア情報を使用して、以下のうちの少なくとも1つを実施することができる。すなわち、アイドルモードで、周波数間もしくはRAT間測定を開始し、オフロードエリアに含まれるスモールセルへの潜在的なセル再選択を可能にすること、または、接続モードで、オフロードエリアに含まれるスモールセルへの潜在的なハンドオーバを可能にするための適切な更新済み構成(例えば、周波数間もしくはRAT間もしくは周波数内測定構成、DRX構成、またはモビリティ状態推定構成)を適時に適宜ネットワークが提供できるようにするためにオフロード表示を送信することである。」

(6)図1A




(7)図1B




上記記載及び当業者における技術常識からみて、

ア.上記(1)の「基地局114a、114bは、エアインターフェイス116を介してWTRU102a、102b、102c、102dのうちの1または複数と通信することができ、・・・(中略)・・・エアインターフェイス116は、任意の適切な無線アクセス技術(RAT)を使用して確立されてよい。」および上記(6)の図1Aの記載によれば、基地局114a、114bは、任意の適切な無線アクセス技術(RAT)を使用して確立されたエアインターフェイス116を介してWTRU102a、102b、102c、102dのうちの1または複数と通信することができる。
ここで、基地局114aおよび114bとWTRU102cとの間の接続については、上記(2)の「基地局114a およびWTRU102a 、102b 、102c は、・・・(中略)・・・ロングタームエボリューション(LTE)・・・(中略)・・・を使用してエアインターフェイス116を確立することができる。」との記載によれば、基地局114aとWTRU102cは、LTEを使用してエアインターフェイス116を確立することができ、かつ、上記(3)の「基地局114bおよびWTRU102c、102dは、IEEE802.11などの無線技術を実装して、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)を確立することができる。」との記載によれば、基地局114bとWTRU102cは、WLANを確立することができる。
そして、上記(6)の図1AにおけるWTRU102cの位置においては、WTRU102cは基地局114aおよび114bの双方に接続可能であることが見て取れるから、少なくとも図1AにおけるWTRU102cの位置においては、基地局114aのLTEのカバレッジエリアと基地局114bのWLANのカバレッジエリアが重複していると解される。
そうすると、基地局114aのLTEのカバレッジエリアと基地局114bのWLANのカバレッジエリアの少なくとも一部が重複しているから、引用文献1には、「WLANのカバレッジエリアの少なくとも一部がLTEのカバレッジエリアと重複している場合」が記載されているといえる。

イ.上記(5)の「WTRUは・・・(中略)・・・アイドルモードで、・・・(中略)・・・、オフロードエリアに含まれるスモールセルへの潜在的なセル再選択を可能にすること、または、接続モードで、オフロードエリアに含まれるスモールセルへの潜在的なハンドオーバを可能にする」との記載によれば、WTRUは、アイドルモードで潜在的なセル再選択を可能にし、また、接続モードで潜在的なハンドオーバを可能にするものである。そして、WTRU102cは、上記アで説示したとおり、上記(6)の図1AにおけるWTRU102cの位置においては、LTE(基地局114a)およびWLAN(基地局114b)に接続可能であることから、WTRU102cに関しては、上記潜在的なセル再選択と上記潜在的なハンドオーバは、LTEとWLANとの間で行われることは明らかである。したがって、引用文献1には、WTRU102cが「LTEとWLANとの間で、アイドルモードで潜在的なセル再選択を行い、または、接続モードで潜在的なハンドオーバを行う」ことが記載されているといえる。

ウ.上記(4)の「WTRU102は、プロセッサ118・・・(中略)・・・を備えてよい。・・・(中略)・・・プロセッサ118は、・・・(中略)WTRU102がワイヤレス環境で動作できるようにする他の任意の機能を実施することができる。」との記載、および、上記(7)の図1Bの記載によれば、WTRU102はプロセッサ118を備え、プロセッサ118はワイヤレス環境で動作できるようにする他の任意の機能を実施することができるものである。
したがって、WTRU102cに着目して以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 WLANのカバレッジエリアの少なくとも一部がLTEのカバレッジエリアと重複している場合に、前記LTEと前記WLANとの間で、アイドルモードで潜在的なセル再選択を行い、または、接続モードで潜在的なハンドオーバを行うWTRUであって、
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、ワイヤレス環境で動作できるようにする任意の機能を実施するものであるWTRU。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「WTRU」はワイヤレス送受信ユニットであるから、本願発明1の「無線端末」に相当する。

イ.引用発明の「LTE」が本願発明1の「移動通信網」に含まれるものであることは技術常識であり、また、引用発明の「WLAN」は、本願発明1の「無線LAN」に相当する。

ウ.引用発明において「アイドルモードで潜在的なセル再選択を行」うこと、および、「接続モードで潜在的なハンドオーバを行う」ことは、技術常識を勘案すれば、待ち受け先を切り替えるための処理であること、および、接続先を切り替えるための処理であることは明らかであるから、本願発明1と引用発明は「前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う」点で共通する。

エ.引用発明の「プロセッサ」は、本願発明1の「制御部」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「無線LANのカバレッジエリアの少なくとも一部が移動通信網のカバレッジエリアと重複している場合に、前記移動通信網と前記無線LANとの間で待ち受け先又は接続先を切り替えるための所定の処理を行う無線端末であって、
制御部を備える無線端末。」

(相違点)
本願発明1においては、
「前記制御部は、
前記移動通信網からの受信信号を測定対象とする第1測定と、無線LANからの無線信号を測定対象とする第2測定とを行い、
前記第1測定の結果が第1条件を満たしており、かつ、前記第2測定の結果が第2条件を満たしている状態が所定期間に亘って継続する場合に、前記所定の処理を実行し、
前記制御部は、前記第2測定の結果に設定された有効期間が満了していない場合に、前記第2測定の結果が前記第2条件を満たしているか否かを判定し、
前記制御部は、前記第2測定の結果を取得することに応じて、カウントダウンによって前記有効期間を計測するタイマを起動し、前記タイマが満了する前に、前記第2測定の結果が前記第2条件を満たしているか否かを判定する」のに対して、引用発明においてはその旨の特定がない点。

(2)相違点についての判断
引用文献1には、オフロードエリア情報に対する有効性タイマについての記載はあるものの(段落【0074】ないし【0082】参照。)、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項については記載も示唆もなく、かつ、当該発明特定事項は、本願優先日前において周知技術であるとも認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-12-22 
出願番号 P2016-540263
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 望月 章俊
國分 直樹
発明の名称 無線端末  
代理人 キュリーズ特許業務法人  

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