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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1386710
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-22 
確定日 2022-07-06 
事件の表示 特願2019− 2352「側面数増強対応移送チャンバ,半導体デバイスの製造処理ツール及び処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開,特開2019− 83327〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2014年(平成26年)11月 3日(優先権主張 2013年(平成25年)11月 4日,米国)を国際出願日とする特願2016−552438号(以下,「原出願」という。)の一部を,2019年(平成31年) 1月10日に新たな特許出願としたものであって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 2月 4日 :翻訳文,手続補正書の提出
令和 1年12月26日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 4月 6日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 9月16日付け:拒絶査定
令和 3年 1月22日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 3年 6月23日付け:拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由」という。)
令和 3年 9月28日 :意見書,手続補正書の提出

第2 本願発明について
本願の請求項1−15(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明15」という。)に係る発明は,令和 3年 9月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1−15に記載された事項により特定される発明であるところ,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
半導体デバイス製造ツールの移送チャンバであって,
上部のロードロック及び下部のロードロックを含む二段ロードロックに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する3つの第1の側面と,
1つの処理チャンバに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する6つの第2の側面と,
を備え,
前記移送チャンバは九角形の形状を有し,前記移送チャンバ内での移送は,前記移送チャンバ内に配置された,共通の位置から独立して延びる2本のアーム及び当該2本のアームに連結された2つのエンドエフェクタを有する単一のロボットによって提供可能であり,
前記6つの第2の側面のそれぞれは,前記単一のロボットの前記2本のアームのいずれかに取り付けられた手首を有する前記エンドエフェクタの一方を受容する大きさの開口部を備える,
移送チャンバ。」

第3 当審における拒絶の理由
令和 3年 6月23日付けの,当審が通知した拒絶理由は,概略,次のとおりのものである。
理由1(進歩性) この出願の請求項1−15に係る発明は,下記の引用文献1−3に記載された発明に基づいて,その原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2003−115518号公報
引用文献2 特開2010−34505号公報
引用文献3 特開2008−272864号公報

第4 引用文献,引用発明等
1 引用文献1に記載されている事項及び引用発明
ア 当審拒絶理由に引用された上記引用文献1(特開2003−115518号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0008】
【発明の実施の形態】以下,本発明の一実施の形態を図面に即して説明する。
【0009】本実施の形態において,図1および図2に示されているように,本発明に係る基板処理装置は,マルチチャンバ型CVD装置(以下,CVD装置という。)として構成されており,このCVD装置はICの製造方法にあってウエハに酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁膜を成膜したり,ウエハに五酸化タンタル(Ta2O5 )やルテニウム(Ru)等の金属膜を成膜する成膜工程に使用されるようになっている。
【0010】なお,本実施の形態に係るCVD装置においてはウエハ搬送用のキャリアとしては,FOUP(front opening unified pod 。以下,ポッドという。)が使用されている。また,以下の説明において,前後左右は図1を基準とする。すなわち,ウエハ移載室50側が前側,その反対側すなわちウエハ移載室10側が後側,搬入用予備室20側が左側,搬出用予備室30側が右側とする。
【0011】図1および図2に示されているように,CVD装置は大気圧未満の圧力(負圧)に耐えるロードロックチャンバ構造に構成された第一のウエハ移載室(以下,負圧移載室という。)10を備えており,負圧移載室10の筐体(以下,負圧移載室筐体という。)11は平面視が九角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。負圧移載室10の中央部には負圧下でウエハWを移載するウエハ移載装置(以下,負圧移載装置という。)12が設置されており,負圧移載装置12はスカラ形ロボット(selective compliance assembly robot arm SCARA)によって構成されており,負圧移載室筐体11の底壁に設置されたエレベータ13によって気密シールを維持しつつ昇降するように構成されている。
【0012】負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち正面側に位置する三枚の側壁には,搬入用予備室(以下,搬入室という。)20,搬出用予備室(以下,搬出室という。)30およびバッファ用予備室(以下,バッファ室という。)40がそれぞれ隣接して連結されている。搬入室20の筐体(以下,搬入室筐体という。)21,搬出室30の筐体(以下,搬出室筐体という。)31およびバッファ室40の筐体(以下,バッファ室筐体という。)41はそれぞれ平面視が大略四角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されているとともに,負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。
【0013】互いに隣接した搬入室筐体21の側壁および負圧移載室筐体11の側壁には搬入口22,23がそれぞれ開設されており,負圧移載室10側の搬入口23には搬入口22,23を開閉するゲートバルブ24が設置されている。互いに隣接した搬出室筐体31の側壁および負圧移載室筐体11の側壁には搬出口32,33がそれぞれ開設されており,負圧移載室10側の搬出口33には搬出口32,33を開閉するゲートバルブ34が設置されている。互いに隣接したバッファ室筐体41の側壁および負圧移載室筐体11の側壁には搬入搬出口42,43がそれぞれ開設されており,負圧移載室10側の搬入搬出口43には搬入搬出口42,43を開閉するゲートバルブ44が設置されている。
【0014】搬入室20には搬入室用仮置き台25が設置され,搬出室30には搬出室用仮置き台35が設置され,バッファ室40にはバッファ室用仮置き台45が設置されている。これら仮置き台25,35,45は略同様に構成されているので,その構成はバッファ室用仮置き台45について代表的に説明する。図1および図2に示されているように,仮置き台45は上下で一対の端板81,82と,上下の端板81と82との間に周方向に間隔を置いて垂直に架設された複数本の保持部材83と,各保持部材83に長手方向に等間隔に配置されて水平に刻設された保持溝84とを備えている。ウエハWの外周辺部が各保持部材83の同一平面内に位置する各保持溝84に挿入されることにより,ウエハWは仮置き台45に水平に保持された状態になる。そして,複数枚のウエハWは仮置き台45に中心を揃えられて整列された状態で保持される。仮置き台45はエレベータ85によって昇降されるように構成されている。
【0015】搬入室20,搬出室30およびバッファ室40の前側には,大気圧以上の圧力(以下,正圧という。)を維持可能な構造に構成された第二のウエハ移載室(以下,正圧移載室という。)50が隣接して連結されており,正圧移載室50の筐体(以下,正圧移載室筐体という。)51は平面視が横長の長方形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている。正圧移載室50には正圧下でウエハWを移載するウエハ移載装置(以下,正圧移載装置という。)52が設置されており,正圧移載装置52はスカラ形ロボットによって構成されている。正圧移載装置52は正圧移載室50に設置されたエレベータ53によって昇降されるように構成されているとともに,リニアアクチュエータ54によって左右方向に往復移動されるように構成されている。」

「【0019】図1に示されているように,負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち背面側に位置する四枚の側壁には第一処理部としての第一CVDユニット71,第二処理部としての第二CVDユニット72,第三処理部としての第三CVDユニット73および第四処理部としての第四CVDユニット74がそれぞれ隣接して連結されている。第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74は,いずれも二枚葉式ホットウオール形減圧CVD装置によってそれぞれ構成されている。」

「【0023】搬入室20が予め設定された圧力値に減圧されると,負圧移載室10側の搬入口22,23がゲートバルブ24によって開かれるとともに,第一CVDユニット71のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載室10の負圧移載装置12は搬入口22,23を通して搬入室20の仮置き台25からウエハWを二枚ずつピックアップして負圧移載室10に搬入し,第一CVDユニット71の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入(ウエハローディング)するとともに,処理室のボートに移載(セッティング)する。ウエハWのボートへの移載が終了すると,第一CVDユニット71のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって閉じられる。」

「【0026】第一CVDユニット71において予め設定された成膜処理時間が経過すると,第一膜を成膜済みの二枚のウエハWは負圧移載装置12によって第一CVDユニット71からピックアップされ,負圧に維持されている負圧移載室10に搬出(ウエハアンローディング)される。処理済みのウエハWが第一CVDユニット71から負圧移載室10に搬出されると,第二CVDユニット72のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載装置12は第一CVDユニット71から搬出した二枚のウエハWを第二CVDユニット72の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入するとともに,処理室のボートに移載する。二枚のウエハWの第一CVDユニット71から第二CVDユニット72への移替え作業が完了すると,第二CVDユニット72の処理室のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって閉じられる。」

「【0030】第二CVDユニット72において第二膜の成膜について予め設定された処理時間が経過すると,前述した第一CVDユニット71の場合と同様にして,第二膜を成膜済みの二枚のウエハWは負圧移載装置12によって第二CVDユニット72からピックアップされ,負圧に維持されている負圧移載室10に搬出される。処理済みのウエハWが第二CVDユニット72から負圧移載室10に搬出されると,第三CVDユニット73のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載装置12は第二CVDユニット72から搬出した二枚のウエハWを第三CVDユニット73の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入するとともに,処理室のボートに移載する。二枚のウエハWの第二CVDユニット72から第三CVDユニット73への移替え作業が完了すると,第三CVDユニット73の処理室のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって閉じられる。」

「【0034】第三CVDユニット73において第三膜の成膜について予め設定された処理時間が経過すると,前述した第一CVDユニット71および第二CVDユニット72の場合と同様にして,第三膜を成膜済みの二枚のウエハWは負圧移載装置12によって第三CVDユニット73からピックアップされ,負圧に維持されている負圧移載室10に搬出される。処理済みのウエハWが第三CVDユニット73から負圧移載室10に搬出されると,第四CVDユニット74のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載装置12は第三CVDユニット73から搬出した二枚のウエハWを第四CVDユニット74の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入するとともに,処理室のボートに移載する。二枚のウエハWの第三CVDユニット73から第四CVDユニット74への移替え作業が完了すると,第四CVDユニット74の処理室のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって閉じられる。」

「【0051】本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
【0052】例えば,負圧移載室の周囲に配設するCVDユニットの数は,四に限らず,二または三または五以上であってもよい。」









イ 上記記載について検討する。
(ア)引用文献1の段落0010−0012,0015,0019及び図1には,平面視が九角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている負圧移載室筐体11である負圧移載室10,負圧移載室10の中央部に設置されている負圧下でウエハWを移載する,スカラ形ロボットによって構成されている負圧移載装置12,負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち正面側に位置する三枚の側壁に隣接して連結された,搬入室20,搬出室30およびバッファ室40,負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち背面側に位置する四枚の側壁にそれぞれ隣接して連結された,第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74,とを備えるCVD装置が記載されている。

(イ)引用文献1の段落0012の「搬入室20の筐体(以下,搬入室筐体という。)21,搬出室30の筐体(以下,搬出室筐体という。)31およびバッファ室40の筐体(以下,バッファ室筐体という。)41はそれぞれ平面視が大略四角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されているとともに,負圧に耐え得るロードロックチャンバ構造に構成されている。」旨の記載を参照すると,搬入室20,搬出室30およびバッファ室40は一種のロードロックであると認められる。

(ウ)引用文献1の図2の記載や,段落0023の「第一CVDユニット71のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載室10の負圧移載装置12は搬入口22,23を通して搬入室20の仮置き台25からウエハWを二枚ずつピックアップして負圧移載室10に搬入し,第一CVDユニット71の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入(ウエハローディング)する」,段落0026の「処理済みのウエハWが第一CVDユニット71から負圧移載室10に搬出されると,第二CVDユニット72のウエハ搬入搬出口がゲートバルブによって開かれる。続いて,負圧移載装置12は第一CVDユニット71から搬出した二枚のウエハWを第二CVDユニット72の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入する」,段落0030の「負圧移載装置12は第二CVDユニット72から搬出した二枚のウエハWを第三CVDユニット73の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入する」,段落0034の「負圧移載装置12は第三CVDユニット73から搬出した二枚のウエハWを第四CVDユニット74の処理室へウエハ搬入搬出口を通して搬入する」等の記載を参照すると,負圧移載室筐体11の第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74が連結された側面に,ウエハWを搬入・搬出するための何らかの開口部を有することは明らかである。

(エ)引用文献1の図1を参照すると,引用文献1の負圧移載装置12は,略Y字状のウエハWを載せる部分を含むエンドエフェクタと,該エンドエフェクタが連結されるアームを有することは明らかである。
ここで,エンドエフェクタとアームとが連結される部分が一種の手首であると認められる。
また,図1において,エンドエフェクタは第二CVDユニット72の中に入っているから,負圧移載室筐体11の側面が有する開口部は,エンドエフェクタを受容する大きさであると認められる。

ウ 以上ア,イで示した事項を参酌すると,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 平面視が九角形で上下両端が閉塞した箱形状に形成されている負圧移載室筐体11である負圧移載室10,負圧移載室10の中央部に設置されている負圧下でウエハWを移載する,スカラ形ロボットによって構成されている負圧移載装置12,負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち正面側に位置する三枚の側壁に隣接して連結された,搬入室20,搬出室30およびバッファ室40,負圧移載室筐体11の九枚の側壁のうち背面側に位置する四枚の側壁にそれぞれ隣接して連結された,第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74,とを備えるCVD装置であって,
搬入室20,搬出室30およびバッファ室40はロードロックであり,
負圧移載室筐体11の第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74が連結された側面には,ウエハWを搬入・搬出するための開口部を有し,
負圧移載装置12は,手首を有するエンドエフェクタと,該エンドエフェクタが連結されるアームを有し,
負圧移載室筐体11の側面が有する開口部は,エンドエフェクタを受容する大きさである
CVD装置。」

2 引用文献2に記載されている事項
ア 当審拒絶理由に引用された上記引用文献2(特開2010−34505号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
図1に示すように,本実施形態の基板処理装置は,中央に設けられた排気可能なトランスファーチャンバ3と,トランスファーチャンバ3の周囲に設けられた複数の処理チャンバ201〜206及び複数の積層ロードロックチャンバ2とを有している。本実施形態では,トランスファーチャンバ3は略八角形柱の形状に構成されており,その8つの各側面に処理チャンバ201,202,203,204,205,206及び積層ロードロックチャンバ2が接続されている。トランスファーチャンバ3と処理チャンバ201〜206及び積層ロードロックチャンバ2の各々とは,ゲートバルブ5を介して気密状態を維持できるように接続されている。処理チャンバ201〜206には,例えば,スパッタリング成膜装置,化学蒸着(CVD)装置及びドライエッチング装置から選択される処理装置のチャンバとして構成されうる。各積層ロードロックチャンバ2は,上下方向に積層して配置された複数のロードロックチャンバ100,150を含む。本明細書において,「積層」とは,2つの部材が上下に重なって配置されていることをいうが,完全に重なっている必要はなく,平面視において半分以上が重なっているものをいうものとする。
【0016】
本実施形態ではトランスファーチャンバ3が略八角形柱の形状に構成されている場合を例に挙げたが,トランスファーチャンバ3の構成はこれに限られない。トランスファーチャンバ3は,例えば,底面及び上面が任意の多角形である柱状形状を有するように構成されていてもよい。複数の処理チャンバは,そのような多角形柱状のトランスファーチャンバ3の複数の側面に連結される。」

「【0018】
また,トランスファーチャンバ3内には,チャンバ201〜206及び2の間において基板9を搬送する搬送機構42が設けられている。この搬送機構42は,例えば,基板9を載せるアームを備えた多関節ロボットで構成され,稼働範囲内で水平面上の任意の位置と垂直方向の任意の位置とに基板9を搬送することが可能となっている。」

「【0020】
図2A〜図2Cは,図1のA−B線に沿った積層ロードロックチャンバ2の模式的な断面図である。図2A〜図2Cにおける右側には真空側のトランスファーチャンバ3が配置され,左側には大気側のオートローダ41が配置される。積層ロードロックチャンバ2は,上下方向に積層して配置された複数のロードロックチャンバ100,150を含む。図2Aは,上側及び下側のロードロックチャンバ100,150の大気側の開口部がそれぞれ上側及び下側のスリットバルブ可動部101,151で閉じられた状態を示している。図2Bは,上側及び下側のロードロックチャンバ100,150の大気側の開口部に対して,上側及び下側のスリットバルブ可動部101,151がそれぞれ開かれた状態を示している。図2Cは,上側及び下側のロードロックチャンバ100,150の大気側の開口部からスリットバルブ可動部101,151を離間させ,ロードロックチャンバ100,150のメンテナンスや清掃時に邪魔にならない位置にスリットバルブ可動部101,151を退避させた状態を示している。なお,バルブ可動部は,例えば,弁体或いはバルブドアとも呼ばれうる。」









3 引用文献3に記載されている事項
ア 当審拒絶理由に引用された上記引用文献3(特開2008−272864号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,産業用ロボット及び集合処理装置に関し,更に詳しくは,例えば半導体製造装置等の集合処理装置内でのワークの搬送時間等を短縮することができる産業用ロボット及びその産業用ロボットを備えた集合処理装置に関する。」

「【0026】
図1は,本発明の産業用ロボットの一例を示す透視正面図である。本発明の産業用ロボット(以下,「ロボット1」という。)は,図1に示すように,基台部100側からアーム部11及びハンド部12の順で連結され,そのハンド部12を所定方向に向けながら伸縮自在に動作するアーム10を2つ以上有する産業用ロボットである。
【0027】
図1には2つのアーム10A,10Bを有するロボット1が例示されており,アーム10A,10Bそれぞれは,アーム伸縮軸2A,2Bを回動中心としてアーム10A,10Bを伸縮させるアーム伸縮用駆動源4A,4Bと,アーム旋回軸3A,3Bを回動中心としてアーム10A,10Bを旋回させるアーム旋回用駆動源5A,5Bと,ハンド部12の上下方向の座標位置P1,P2をほぼ同じにする連結部材と,を備えている。そして,2つのアーム10A,10Bのうちの1つのアーム10Aを動作させるアーム伸縮軸2Aが中実軸であり,それ以外の軸であるアーム旋回軸3A,3B及び他のアーム10Bのアーム伸縮軸2Bが前記の中実軸と同心になるように設けられた中空軸であるように構成されている。
【0028】
なお,本願の説明及び図中の符号において,数字符号に続く「A」「B」の符号は,そうした2つのアーム10A,10Bに対応した構成要素であることを表している。本願発明の各構成要素について,それぞれのアーム10A,10Bに対応して説明するときは数字の後に「A」「B」を付すが,それぞれのアーム10A,10Bに対応しないで説明するときは数字の後に「A」「B」を付さないこととする。以下,本発明の産業用ロボット1を,構成要素ごとに詳しく説明する。
【0029】
(アーム)
先ず,アーム10(10A,10B)について説明する。図2は,図1に示す2つのアームのうちの1つのアームを構成する第1アーム部材の内部構造を示す透視平面図(A)及びB−B断面図(B)であり,図3は,図1に示す2つのアームのうちの1つのアームを構成する第2アーム部材の内部構造を示す透視平面図(A)及びC−C断面図(C)である。本発明に係るロボット1は,2以上のアーム10を有している。それぞれのアーム10は,基台部100側からアーム部11及びハンド部12の順で連結され,ハンド部12を所定方向に向けながら伸縮自在に動作する。アーム部11とハンド部12は,基台部100側から,第1アーム部材20,第2アーム部材30及びハンド部材40の順で連結されて構成されている。
【0030】
アーム部11を構成する第1アーム部材20は,基台部100側にあってアーム伸縮軸2に連結する第1プーリ21と,第2アーム部材30側にあって第2アーム部材30に連結する第2プーリ22と,第1プーリ21及び第2プーリ22間に掛かる第1ベルト23とを有している。また,アーム部11を構成する第2アーム部材30は,第2プーリ22と同心となるように設けられた第3プーリ31と,ハンド部材40側にあってハンド部材40に連結する第4プーリ32と,第3プーリ31及び第4プーリ32間に掛かる第2ベルト33とを有している。また,ハンド部12を構成するハンド部材40は,図1中に平面図として示したが,ウエハ等のワークを搭載して搬送するための搭載部41を有する部材である。アーム部11とハンド部12のこうした構成により,2つのアーム10A,10Bそれぞれは,アーム伸縮用駆動源4A,4Bとアーム旋回用駆動源5A,5Bとを備えて独立に動作することができるので,後述するように,トランスファチャンバの周囲に配置されたプロセスチャンバに対するワークの搬入/搬出等の時間を短縮することができる。」









第5 当審の判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
ア 引用発明の「CVD装置」の「負圧移載室10」は,本願発明1の「半導体デバイス製造ツールの移送チャンバ」に対応することは明らかである。

イ 引用発明の「搬入室20,搬出室30およびバッファ室40」は「ロードロック」であるから,本願発明1の「二段ロードロック」と,「ロードロック」である点で一致する。
そして,引用発明の「負圧移載室10」の「負圧移載室筐体11」における「正面側に位置する三枚の側壁」は,引用文献1の【図1】を参照すると,それぞれ隣接し,「搬入室20,搬出室30およびバッファ室40」が連結されるから,本願発明1の「第1の側面」と,「ロードロックに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する3つの第1の側面」である点で一致するといえる。

ウ 引用発明の「第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三
VDユニット73および第四CVDユニット74」が,それぞれ,本願発明1の「1つの処理チャンバ」に相当する。
そして,引用発明の「背面側に位置する四枚の側壁」は,引用文献1の【図1】を参照すると,それぞれ隣接し,「第一CVDユニット71,第二CVDユニット72,第三CVDユニット73および第四CVDユニット74」が連結されるから,本願発明1の「第2の側面」と,「1つの処理チャンバに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する第2の側面」である点で一致するといえる。

エ 引用発明の「負圧移載室10」の「負圧移載室筐体11」は「平面視が九角形」であるから,本願発明1の「移送チャンバ」と,「九角形の形状を有」する点で一致する。

オ 引用発明の「負圧移載装置12」は,「スカラ形ロボットによって構成され」ており,「負圧移載室10の中央部に設置されている負圧下でウエハWを移載する」ものであり,「手首を有するエンドエフェクタと,該エンドエフェクタが連結されるアームを有」するから,本願発明1の「ロボット」と,「前記移送チャンバ内での移送は,前記移送チャンバ内に配置された,アーム及び当該アームに連結されたエンドエフェクタを有する単一のロボットによって提供可能」なものである点で一致する。

カ 引用発明の「開口部」は,「エンドエフェクタを受容する大きさである」から,本願発明1の「開口部」と,「第2の側面のそれぞれは,前記単一のロボットの前記アームのいずれかに取り付けられた手首を有する前記エンドエフェクタの一方を受容する大きさ」である点で一致するといえる。

(2)したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「 半導体デバイス製造ツールの移送チャンバであって,
ロードロックに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する3つの第1の側面と,
1つの処理チャンバに連結するようにそれぞれ構成された,隣接する第2の側面と,
を備え,
前記移送チャンバは九角形の形状を有し,前記移送チャンバ内での移送は,前記移送チャンバ内に配置された,アーム及び当該アームに連結されたエンドエフェクタを有する単一のロボットによって提供可能であり,
前記第2の側面のそれぞれは,前記単一のロボットの前記アームのいずれかに取り付けられた手首を有する前記エンドエフェクタの一方を受容する大きさの開口部を備える,
移送チャンバ。」

(相違点)
(相違点1)「ロードロック」に関して,本願発明1は「上部のロードロック及び下部のロードロックを含む二段ロードロック」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点2)「第2の側面」に関して,本願発明1は「隣接する6つの」側面と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(相違点3)「単一のロボット」に関して,本願発明1は,「共通の位置から独立して延びる2本のアーム及び当該2本のアームに連結された2つのエンドエフェクタを有する」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点1について
ロードロックとして,どのような構造のものを用いるのかは,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項である。
そして,半導体デバイス製造ツールにおいて,上部のロードロック及び下部のロードロックを含む二段ロードロックは,例えば,引用文献2の段落0015−0016,0020及び図1,2A等に,上下方向に積層して配置された,上側及び下側のロードロックチャンバ100,150を含む積層ロードロックチャンバ2として開示されているように,原出願の優先日前に周知の技術にすぎない。
すると,引用発明に周知の上部のロードロック及び下部のロードロックを含む二段ロードロックを採用し,相違点1に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
引用文献1の段落0052には,「例えば,負圧移載室の周囲に配設するCVDユニットの数は,四に限らず,二または三または五以上であってもよい。」と,CVDユニットの数を五以上にすることも記載されており,引用発明において,負圧移載室の周囲に配設するCVDユニットの数は,必要に応じて選択し得た設計的事項である。
すると,引用発明においても,CVDユニットの数を6として,背面側に位置する隣接する6つの側面にCVDユニットと連結するように構成することにより,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点3について
移送チャンバに設けられる移送を提供するロボットとして,どのようなものを提供するのかは,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項である。
そして,半導体デバイス製造ツールにおいて,共通の位置から独立して延びる2本のアーム及び当該2本のアームに連結された2つのエンドエフェクタを有する単一のロボットは,例えば,引用文献3の段落0026−0030及び図1等に,アーム部11及びハンド部12の順で連結され,そのハンド部12を所定方向に向けながら伸縮自在に動作するアーム10を2つ以上有するロボット1として開示されているように,原出願の優先日前に周知の技術にすぎない。
なお,引用文献3の図10に照らせば,ハンド部12の手首がプロセスチャンバ210に入っているから,トランスファチャンバ209の開口部は,ハンド部12の手首を受容できる大きさであるものと認められる。
すると,引用発明に周知のロボットを採用し,相違点3に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

2 請求人の主張について
(1)請求人は,令和 3年 9月28日の意見書において,「すなわち,引用文献3の発明は,ワークの搬送時間を短縮するために,ロボットのエンドエフェクタの上下方向の座標位置を同じにしています(引用文献3の請求項1,段落0013等を参照)。この構成は,引用文献3の請求項1に記載されていることからも理解できるように,引用文献3のロボットにおいて必須の構成であり,欠かすことができません。一方,引用文献2に示される二段ロードロックは,上下方向の位置が異なる2つのロードロックを含みます。よって,2つのエンドエフェクタの上下方向の位置が同じ引用文献3のロボットは,上下方向の位置が異なる引用文献2の二段ロードロックとともに,引用文献1の装置に同時に組み込むことができません。引用文献3のロボットの2つのエンドエフェクタは,引用文献2の上下方向に異なる位置にある2つのロードロックの中に同時に到達することができないからです。したがって,本技術分野の当業者は,引用文献1の装置に引用文献2のロードロック及び引用文献3のロボットを同時に組み込むことができず,本願請求項1,9,15に係る発明に想到することができません。」と主張している。

(2)しかしながら,請求項1には「前記移送チャンバは九角形の形状を有し,前記移送チャンバ内での移送は,前記移送チャンバ内に配置された,共通の位置から独立して延びる2本のアーム及び当該2本のアームに連結された2つのエンドエフェクタを有する単一のロボットによって提供可能であり」,「前記6つの第2の側面のそれぞれは,前記単一のロボットの前記2本のアームのいずれかに取り付けられた手首を有する前記エンドエフェクタの一方を受容する大きさの開口部を備える」と,移送チャンバ内での移送が単一のロボットにより提供可能であること,及び,第2の側面のそれぞれは,単一のロボットのエンドエフェクタの一方を受容する大きさの開口部を備えることは特定されているが,単一のロボットとしてどの様な構成を有するのか何ら記載されておらず,また,二段ロードロックからの移送に単一のロボットを用いることも記載されていない。
すると,上記主張は請求項の記載に基づくものではなく,採用できない。

(3)加えて,引用文献2の段落0018に「この搬送機構42は,例えば,基板9を載せるアームを備えた多関節ロボットで構成され,稼働範囲内で水平面上の任意の位置と垂直方向の任意の位置とに基板9を搬送することが可能となっている。」と記載されているように,半導体デバイス製造ツールにおいて,二段ロードロックから搬送するロボットとして,垂直方向,すなわち,上下方向にも搬送可能なロボットも当該技術分野において周知のものであるから,引用発明に周知技術を採用する際に,上下方向にも搬送可能なロボットとすることは,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項にすぎない。

第6 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。

審判長 辻本 泰隆
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-01-28 
結審通知日 2022-02-01 
審決日 2022-02-21 
出願番号 P2019-002352
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 側面数増強対応移送チャンバ、半導体デバイスの製造処理ツール及び処理方法  
代理人 園田・小林特許業務法人  
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