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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1386721
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-29 
確定日 2022-07-21 
事件の表示 特願2019−88863「圧電アクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月29日出願公開、特開2019−142237〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成21年8月31日に出願された特願2009−200744号の一部を平成26年6月18日に特願2014−125039号として出願し,その一部を平成28年3月9日に特願2016−45371号として出願し,その一部を平成30年1月10日に特願2018−1702として出願し,その一部を令和1年5月9日に特願2019−88863号として出願されたものであって,令和1年6月7日に手続補正書が提出され,令和2年6月2日付けで拒絶理由が通知され,同年7月17日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年12月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対して令和3年1月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和3年1月29日に提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年1月29日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲について,下記(1)に示す本件補正前の(すなわち,令和2年7月17日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を,下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は当審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルに,それぞれ連通する複数の圧力室を有する流路ユニットと,
前記流路ユニットの一方面側に配置された絶縁層と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置された複数の個別電極と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極を覆うように配置された圧電層と,
前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極と対向する共通電極と,
前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分と,
前記圧電層の側面に前記第1配線部分とは離間して形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第2配線部分と,
前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置され,前記第1配線部分と電気的に接続された第1端子と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面における前記圧電層と前記絶縁層との間に挟まれない部分に配置され,前記第2配線部分と電気的に接続された第2端子と,
前記複数の個別配線のそれぞれと電気的に接続され,前記複数の個別電極と同一面上に配置される複数の個別端子と,を備え,
前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一であることを特徴とするインクジェットヘッド。」
(なお,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1において「前記第1配線部分が接続された」の箇所は,半角の数字が用いられているが,請求項1の他の箇所や発明の詳細な説明の記載を参酌して,全角の数字を用いた「前記第1配線部分が接続された」の誤記であると認め,上記のとおり認定した。本件補正後の特許請求の範囲の請求項1についても,同様に認定した。)

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルに,それぞれ連通する複数の圧力室を有する流路ユニットと,
前記流路ユニットの一方面側に配置された,圧電層とは異なる振動板と,
前記振動板の前記流路ユニットと反対側の面に配置された複数の個別電極と,
前記振動板の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極を覆うように配置された圧電層と,
前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極と対向する共通電極と,
前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分と,
前記圧電層の側面に前記第1配線部分とは離間して形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第2配線部分と,
前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線と,
前記振動板の前記流路ユニットと反対側の面に配置され,前記第1配線部分と電気的に接続された第1端子と,
前記振動板の前記流路ユニットと反対側の面における前記圧電層と前記振動板との間に挟まれない部分に配置され,前記第2配線部分と電気的に接続された第2端子と,
前記複数の個別配線のそれぞれと電気的に接続され,前記複数の個別電極と同一面上に配置される複数の個別端子と,を備え,
前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一の前記振動板上にあることを特徴とするインクジェットヘッド。」

2 本件補正の適否について
(1)補正事項
本件補正は,以下の補正事項を含むものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1の「前記流路ユニットの一方面側に配置された絶縁層と」を,
「前記流路ユニットの一方面側に配置された,圧電層とは異なる振動板と」に補正する。
イ 補正事項2
本件補正前の請求項1に複数箇所ある「絶縁層」を,
「振動板」に補正する。(但し,補正事項1に係る箇所は除く。)
ウ 補正事項3
本件補正前の請求項1の「前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一である」を,
「前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一の前記振動板上にある」に補正する。

(2)補正の目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば,拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は,請求項の削除(第1号),特許請求の範囲の減縮(第2号),誤記の訂正(第3号),明瞭でない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで,本件補正について,以下,検討する。
ア 補正事項1について
本件補正前の請求項1において,流路ユニットの一方面側に配置されたものは「絶縁層」であったが,補正後の請求項1においては「圧電層とは異なる振動板」となり,請求項1から「絶縁層」という発明特定事項が削除されることとなった。
つまり,補正前の請求項1に係る発明から「絶縁層」という発明特定事項を削除することにより,補正後の請求項1に係る発明は「絶縁層」を備えないインクジェットヘッドを包含するものとなった。

したがって,補正事項1は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する,特許請求の範囲の減縮,いわゆる限定的減縮に該当するものではない。
さらに,補正事項1が請求項の削除,誤記の訂正,明りようでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。
イ 補正事項2について
本件補正は,補正事項1を含め,補正前の請求項1に係る発明から「絶縁層」という発明特定事項を削除するものであるから,補正後の請求項1に係る発明は「絶縁層」を備えないインクジェットヘッドを包含するものとなった。
また,補正前の請求項1に係る発明が備えるものではなかった「振動板」という新たな発明特定事項を限定するものとなったが,「絶縁層」と「(圧電層とは異なる)振動板」とは,特定しようとする技術事項が全く異なるものであり,後者が前者の下位概念に該当するものでもない。
したがって,補正事項2は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する,特許請求の範囲の減縮,いわゆる限定的減縮に該当するものではない。
さらに,補正事項2が請求項の削除,誤記の訂正,明りようでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。
ウ 補正事項3について
本件補正前の請求項1において,第1配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極と,第2配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極とは「同一」であったが,補正後の請求項1においては「同一の振動板上にある」こととなった。
第1配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極と,第2配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極とが「同一」であることと,第1配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極と,第2配線部分が接続された共通電極が対向する複数の個別電極とが「同一の振動板上にある」こととは,特定しようとする技術事項に全く関連性はなく,後者が前者の下位概念に該当するものでもない。
したがって,補正事項3は,特許法第17条の2第5項第2号に規定する,特許請求の範囲の減縮,いわゆる限定的減縮に該当するものではない。
さらに,補正事項3が請求項の削除,誤記の訂正,明りようでない記載の釈明に該当するものでないことも明らかである。
エ 小括
よって,上記補正事項1ないし3を含む本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定を満たすものではない。

なお,審判請求人は,審判請求書において,上記補正事項1及び2に関して,補正の根拠は発明の詳細な説明の段落【0036】であるとした上で,上記補正事項1及び2を含む本件補正は特許法第17条の2第5項に規定する補正の要件を満たした旨の主張を行うのみであって,本件補正が,特許法第17条の2第5項各号に規定するいずれの目的に該当するかについて,何ら具体的に説明していない。
また,上記補正事項3については何らの言及もない。
なお,段落【0036】の記載は以下のとおりである。
「振動板41は,複数の圧力室10を覆うようにキャビティプレート21の上面に配置されている。振動板41は,例えば,アルミナ,ジルコニア,後述するPZTなどのセラミックス材料や,ステンレスなどの金属材料などにより構成されている。ただし,振動板41が金属材料により構成されている場合には,導電性を有する振動板41と後述する個別電極43及び配線47との導通を防止するために,振動板41の上面にセラミックス材料などからなる絶縁層(図示省略)を配置し,その上に個別電極43及び配線47を配置する必要がある。」
つまり,段落【0036】には,振動板41を絶縁体で構成すること,及び金属材料により構成した場合に該振動板41の上面にセラミックス材料などからなる絶縁層を配置することは記載されているといえるものの,これは振動板自体が絶縁層となるか,振動板が絶縁層を有しているものであることを前提としており,補正前にあった「絶縁層」を発明特定事項として含まないことを限定しようとする補正の根拠とは,到底なりえない。
したがって,本件補正に関する,審判請求人の主張は当を得ないものである。
オ むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,令和2年7月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルに,それぞれ連通する複数の圧力室を有する流路ユニットと,
前記流路ユニットの一方面側に配置された絶縁層と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置された複数の個別電極と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極を覆うように配置された圧電層と,
前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極と対向する共通電極と,
前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分と,
前記圧電層の側面に前記第1配線部分とは離間して形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第2配線部分と,
前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置され,前記第1配線部分と電気的に接続された第1端子と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面における前記圧電層と前記絶縁層との間に挟まれない部分に配置され,前記第2配線部分と電気的に接続された第2端子と,
前記複数の個別配線のそれぞれと電気的に接続され,前記複数の個別電極と同一面上に配置される複数の個別端子と,を備え,
前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一であることを特徴とするインクジェットヘッド。」(以下,「本願発明1」という。)

2 原査定の概要
原査定の概要は,本願請求項1ないし7に係る発明は,本願の原出願の出願前に日本国内において頒布された下記の引用文献1に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2008−54401号公報(以下,「引用文献1」という。)

3 引用文献,引用発明等
(1)引用文献1について
原査定に係る拒絶の理由で引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。)
ア「 【0026】
[第1実施形態]
以下,本発明の好適な第1実施形態について説明する。

−中略−

【0031】
図2は図1に示すインクジェットプリンタ1に用いるインクジェットヘッド10の斜視図である。図3は図2に示すインクジェットヘッド10の平面図である。図2及び図3に示すように,インクジェットヘッド10は,インク流路を有する平面視で矩形状の流路ユニット11と,その流路ユニット11の上面に重ねて接着されるユニモルフ方式の圧電アクチュエータ12とを備えている。
【0032】
圧電アクチュエータ12は,下部共通電極(第1電極)27(図4参照)を上面に有し流路ユニット11に対面配置された1枚の振動板13と,振動板13の流路ユニット11と反対側の面に形成された共通電極27(図4参照)上に形成された一対の第1圧電層14と,第1圧電層14の上面にそれぞれ多数配列された個別電極(第2電極)15と,個別電極15を第1圧電層14との間で挟むように形成された一対の第2圧電層16と,第2圧電層16の上面に形成された上部共通電極(第3電極)17とを備えている。また,振動板13にはフィルタが被せられたインク供給口18が形成されており,流路ユニット11にもそのインク供給口18と連通するインク供給口(図示せず)が形成されている。圧電アクチュエータ12の上面には,外部機器との電気的接続を行うためのフレキシブルフラットケーブル19が重ねて配置され,そのフレキシブルフラットケーブル19の下面に露出した端子(図示せず)が,圧電アクチュエータ12の各電極15,17,27に導通接続される構成となっている。」
イ「【0033】
図4は図3のIV−IV線断面の要部拡大図である。図5は図3のV−V線断面図である。図4及び図5に示すように,流路ユニット11は,圧力室プレート21と,接続流路プレート22と,マニホールドプレート23と,ノズルプレート24とがそれぞれ接着積層された構成となっている。圧力室プレート21は,4列に並べられた複数の圧力室孔21aを有している。圧力室孔21aは,平面視で走査方向の長軸を有する長円形状となっている(図3も参照)。接続流路プレート22は,圧力室孔21aの一端部に連通する連通孔22aと,圧力室21aの他端部に連通する流出用貫通孔22bとを有している。マニホールドプレート23は,圧力室孔21aの各列にそれぞれ連通孔22aを介して連通するように列方向に延在するマニホールド孔23a(図3も参照)と,流出用貫通孔22bにそれぞれ連通する流出用貫通孔23bとを有している。ノズルプレート24は,流出用貫通孔23bに連通して外部にインクを噴射するノズル孔24aを有している。
【0034】
流路ユニット11内におけるインク流路を説明すると,図5に示すように,マニホールド孔23aの上下が接続流路プレート22とノズルプレート24とで閉鎖されることで共通液室30が形成されている。この共通液室30は,インクタンク(図示せず)からインクが供給されるインク供給口18(図2参照)に連通している。共通液室30は,接続流路プレート22の連通孔22aにより形成された接続流路31を介して上方の圧力室孔21aの一端部に連通している。この圧力室孔21aの上下が振動板13及び接続流路プレート22で閉鎖されることで圧力室32が形成されている。圧力室32の他端部は,流出用貫通孔22b,23bにより形成された流出路33を介してノズル孔24aに連通している。」
ウ「【0036】
図2乃至図4に示すように,振動板13の共通電極27の上面には平面視矩形状の一対の第1圧電層14が形成されている。振動板13の前辺の側端部13aは,第1圧電層14の前辺の側端部14aよりも側方に20μm以上突出しており,振動板13上にはその側端部13aに沿って露出領域13dが残されている。この露出領域13dでは,下部共通電極27の前辺側の一部が第1圧電層14で覆われないように露出している。また,図2,図3及び図5に示すように,振動板13の左右辺の側端部13b,13cは,第1圧電層14の左右辺の側端部14b,14cよりも側方に20μm以上突出しており,振動板13上にはその側端部14b,14cに沿ってそれぞれ露出領域13e,13fが残されている。さらに,一対の第1圧電層14は互いに空隙をあけて離反配置されており,その空隙部分における振動板13上に露出領域13gが残されている。
【0037】
図3に示すように,各第1圧電層14の上面には,各圧力室孔32の夫々に対応するよう配置された多数の個別電極15が4列に印刷形成されている。個別電極15は,平面視で圧力室32と相似形状で圧力室32よりも面積の小さい本体部15aと,本体部15aから第1圧電層14の左右両側に向けて延出された端子部15bとを有している。この本体部15aは,必ずしも圧力室32と相似形状である必要はなく,平面視で圧力室32と重複する位置に形成されていればよい。図2,図3及び図5に示すように,4列の個別電極15のうち両側2列の個別電極15の端子部15bは,第1圧電層14の左右辺側の側端部14b,14cを通過して,振動板13の露出領域13e,13f上まで段差状に延設されている。また,中央2列の個別電極15の端子部15bは,各第1圧電層14の対向する側端部を通過して,振動板13の露出領域13g上まで段差状に延設されている。
【0038】
一対の第1圧電層14の上面には,第1圧電層14との間で個別電極15を挟む平面視矩形状の一対の第2圧電層16が形成されている。図2乃至図4に示すように,第1圧電層14の前辺の側端部14aは,第2圧電層16の前辺の側端部16aよりも側方に20μm以上突出しており,第1圧電層14上にはその側端部14aに沿って露出領域14dが残されている。図2,図3及び図5に示すように,第2圧電層16の左右辺は平面視で第1圧電層14と同一位置に配置されている。また,各圧電層14,16は,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるシート状であり,エアロゾルデポジション法,スパッタ法,蒸着法又はゾルゲル法などの成膜法により接着剤を用いずに形成されている。」
エ「【0039】
図2乃至図4に示すように,第2圧電層16の上面には,各個別電極15に対向して2列毎に連続配置された平面視矩形状の上部共通電極17が印刷形成されている。上部共通電極17の一部は,第1圧電層14及び第2圧電層16の前辺側の側端部14a,16aを通過して,振動板13の露出領域13d上まで階段状に延設されて下部共通電極27の一部と導通接続されている。また,上部共通電極17の端子部17aは,振動板13上において個別電極15の端子部15bの存在する左右辺の露出領域13e,13fまで導出されている。」
オ 図2ないし図5から以下の技術事項が看て取れる。(上下左右の方向については,各図における紙面上の方向である。)
(ア)個別電極15は,2列を1単位として,左側2列,右側2列に離間して分けられている。
(イ)第2圧電層16は,個別電極15の左側2列に対向する左側部分(以下,「左側圧電層」という。)と,左側圧電層に離間して設けられる個別電極15の右側2列に対向する右側部分(以下,「右側圧電層」という。)とから構成される。
(ウ)上部共通電極17は,個別電極15の左側2列に対向する左側部分(以下,「左側共通電極」という。)と,左側共通電極に離間して設けられる個別電極15の右側2列に対向する右側部分(以下,「右側共通電極」という。)と,該左側共通電極と右側共通電極とを連結する部分(以下,「共通電極連結部」という。)とから構成される。
(エ)共通電極連結部は,第1圧電層14の前辺側の側端部14aを超えた領域において左側共通電極の下部右側と右側共通電極の下部左側とを連結している。

さらに,引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。
カ「【0052】
(第2実施形態)
図17は第2実施形態のインクジェットヘッド40の斜視図である。図18は図17に示すインクジェットヘッド40の平面図である。なお,インクジェットヘッド40の流路ユニット11は第1実施形態と同様であるので同一符号を付して説明を省略する。図17及び図18に示すように,インクジェットヘッド40の圧電アクチュエータ41は,ステンレス等の導電性材料からなり下部共通電極(第1電極)を兼ねた1枚の振動板42と,振動板42上に形成された1枚の第1圧電層43と,第1圧電層43の上面にそれぞれ多数配列された個別電極(第2電極)44と,個別電極44を第1圧電層43との間で挟むように形成された一対の第2圧電層45と,第2圧電層45の上面にそれぞれ形成された上部共通電極(第3電極)46とを備えている。」
キ「【0054】
第1圧電層43の上面には,各圧力室孔32の夫々に対応するよう配置された多数の個別電極44が4列に印刷形成されている。個別電極44は,平面視で圧力室32と相似形状で圧力室32よりも面積の小さい本体部44aと,本体部44aから側方に延出された端子部44bとを有している。4列の個別電極44のうち両側2列の個別電極44の端子部44bは,第1圧電層43の左右辺側に向けて延設されている。また,中央2列の個別電極44の端子部44bは,中央側に向けて延設されている。」
ケ「【0055】
第1圧電層43の上面には,第1圧電層43との間で個別電極44を挟む平面視矩形状の一対の第2圧電層45が形成されている。第1圧電層43の前辺の側端部43aは,第2圧電層45の前辺の側端部45aよりも側方に20μm以上突出しており,第1圧電層43上にはその側端部43aに沿って露出領域43dが残されている。また,第1圧電層43の左右辺の側端部43b,43cは,第2圧電層45の左右辺の側端部45b,45cよりも側方に20μm以上突出しており,第1圧電層43上にはその側端部43b,43cに沿ってそれぞれ露出領域43e,43fが残されている。さらに,一対の第2圧電層45は互いに空隙をあけて離反配置されており,その空隙部分における第1圧電層43上に露出領域43gが残されている。
【0056】
各第2圧電層45の上面には,各個別電極44に対向して連続配置された平面視矩形状の上部共通電極46が印刷形成されている。上部共通電極46の一部は,第1圧電層43及び第2圧電層45の前辺側の側端部43a,45aを通過して,露出領域42d上まで階段状に延設されて下部共通電極を兼ねた振動板42と導通接続されている。また,上部共通電極46の端子部46aは,第1圧電層43上において個別電極44の端子部44bの存在する左右辺の露出領域43e,43fまで導出されている。」
コ「【0058】
また,個別電極44は,第1圧電層43上で平面的に成膜形成されており,段差部分を有していないため,個別電極44の端子部44bの幅が微細であってもクラック発生等が防止され,電極品質がさらに向上する。さらに,上部共通電極46の端子部46aと個別電極44の端子部44bとは,第1圧電層43の同一平面上に形成されるので,フレキシブルフラットケーブル19による接続を容易に図ることができ,シンプルかつ低コストを実現することが可能となる。また,導電性材料からなる振動板42自体が下部共通電極を兼ねているので,下部共通電極を別工程で形成する必要がなくなり,製造工数を低減することができる。」
サ 図18から以下の技術事項が看て取れる。(上下左右の方向については,図18における紙面上の方向である。)
(ア)個別電極44は,2列を1単位として,左側2列,右側2列に分けられている。
(イ)上部共通電極46は,個別電極44の左側2列に対向する左側部分(以下,「左側部分」という。)と,個別電極44の右側2列に対向する右側部分(以下,「右側部分」という。)と,該左側部分と右側部分とを連結する部分とから構成される。
(ウ)左側部分と右側部分とを連結する部分は,第1圧電層43の前辺側の側端部43aを超えた領域において左側部分の下部右側と右側部分の下部左側とを連結している。
(エ)上部共通電極46は,左側部分の下部左側から,さらに左方向に延出する端子部46a(以下,「左側端子部」という。)と,右側部分の下部右側から,さらに右方向に延出する端子部46a(以下,「右側端子部」という。)とを備えるものである。
シ 図20から以下の技術事項が看て取れる。(上下左右の方向については,図20における紙面上の方向である。)
(ア)個別電極44の本体部44aと端子部44bは,いずれも第1圧電層43上に配列されている。

(2)引用発明
上記の記載事項を総合すると,引用文献1には第1実施形態としての「引用発明1−1」と,第2実施形態としての「引用発明1−2」が記載されていると認められる。
ア 引用発明1−1
「インクジェットプリンタ1に用いるインクジェットヘッド10であって,
インクジェットヘッド10は,インク流路を有する平面視で矩形状の流路ユニット11と,その流路ユニット11の上面に重ねて接着されるユニモルフ方式の圧電アクチュエータ12とを備え,
流路ユニット11内には,圧力室32が形成され,圧力室32は,流出用貫通孔22b,23bにより形成された流出路33を介してノズル孔24aに連通しており,
圧電アクチュエータ12は,流路ユニット11に対面配置された下部共通電極を兼ねた1枚の振動板13と,振動板13の流路ユニット11と反対側の面に形成された1枚の第1圧電層14と,第1圧電層14の上面にそれぞれ多数配列された個別電極15と,個別電極15を第1圧電層14との間で挟むように形成された一対の第2圧電層16と,第2圧電層16の上面に形成された上部共通電極17とを備え,
個別電極15は,各圧力室孔32の夫々に対応するよう配置された多数の個別電極15が4列に印刷形成されるとともに,2列を1単位として,左側2列,右側2列に離間して分けられ,本体部15aと,本体部15aから側方に向けて延出された端子部15bとを有し,両側2列の個別電極15の端子部15bは,第1圧電層14の左右辺側に向けて延設され,中央2列の個別電極15の端子部15bは,中央側に向けて延設されるとともに,個別電極15の本体部15aと端子部15bは,いずれも第1圧電層14上に配列され,
第2圧電層16は,個別電極15の左側2列に対向する左側圧電層と,個別電極15の右側2列に対向する右側圧電層とが互いに離間して構成され,
各圧電層14,16は,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるシート状であり,
第1圧電層14の前辺の側端部14aは,第2圧電層16の前辺の側端部16aよりも側方に突出しており,第1圧電層14上にはその側端部14aに沿って露出領域14dが残され,
上部共通電極17は,個別電極15の左側2列に対向する左側共通電極と,個別電極15の右側2列に対向する右側共通電極とが互いに離間しているとともに,左側共通電極の下部右側と右側共通電極の下部左側とを連結する共通電極連結部とから構成され,該共通電極連結部は,第1圧電層14の前辺の側端部14aを超えた領域において連結するものであって,左側共通電極の下部左側から,さらに左方向に延出する端子部17aと,右側共通電極の下部右側から,さらに右方向に延出する端子部17aとを備え,上部共通電極17の一部は,第1圧電層14及び第2圧電層16の前辺の側端部14a,16aを通過して,振動板13上まで階段状に延設され,
上部共通電極17の端子部17aと個別電極15の端子部15bとは,振動板13の同一平面上に形成されるとともに,上部共通電極17の端子部17aは第1振動板13上において個別電極15の端子部15bの存在する左右辺の露出領域13e,13fまで導出されるインクジェットヘッド。」

イ 引用発明1−2
「インクジェットプリンタ1に用いるインクジェットヘッド40であって,
圧電アクチュエータ12は,流路ユニット11に対面配置された下部共通電極を兼ねた1枚の振動板42と,振動板42の流路ユニット11と反対側の面に形成された1枚の第1圧電層43と,第1圧電層43の上面にそれぞれ多数配列された個別電極44と,個別電極44を第1圧電層43との間で挟むように形成された一対の第2圧電層45と,第2圧電層45の上面に形成された上部共通電極46とを備え,
個別電極44は,各圧力室孔32の夫々に対応するよう配置された多数の個別電極44が4列に印刷形成されるとともに,2列を1単位として,左側2列,右側2列に離間して分けられ,本体部44aと,本体部44aから側方に向けて延出された端子部44bとを有し,両側2列の個別電極44の端子部44bは,第1圧電層43の左右辺側に向けて延設され,中央2列の個別電極44の端子部44bは,中央側に向けて延設されるとともに,個別電極44の本体部44aと端子部44bは,いずれも第1圧電層43上に配列され,
第2圧電層45は,個別電極44の左側2列に対向する左側圧電層と,個別電極44の右側2列に対向する右側圧電層とが互いに離間して構成され,
上部共通電極46は,個別電極44の左側2列に対向する左側共通電極と,個別電極44の右側2列に対向する右側共通電極とが互いに離間しているとともに,左側共通電極の下部右側と右側共通電極の下部左側とを連結する共通電極連結部とから構成され,該共通電極連結部は,第1圧電層43の前辺の側端部43aを超えた領域において連結するものであって,左側共通電極の下部左側から,さらに左方向に延出する端子部46aと,右側共通電極の下部右側から,さらに右方向に延出する端子部46aとを備え,上部共通電極46の一部は,第1圧電層43及び第2圧電層45の前辺の側端部43a,45aを通過して,振動板42上まで階段状に延設され,
第1圧電層43の左右辺の側端部43b,43cは,第2圧電層45の左右辺の側端部45b,45cよりも側方に突出しており,第1圧電層43上にはその側端部43b,43cに沿ってそれぞれ露出領域43e,43fが形成され,
上部共通電極46の端子部46aと個別電極44の本体部44aと端子部44bとは,第1圧電層43の同一平面上に形成されるとともに,上部共通電極46の端子部46aは第1圧電層43上において個別電極44の端子部44bの存在する左右辺の露出領域43e,43fまで導出されるインクジェットヘッド。」

第4.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1−1とを対比する。
ア 引用発明1−1の「インクジェットヘッド10」は,本願発明1の「インクジェットヘッド」に相当する。
イ 引用発明1−1の「ノズル孔24a」は,本願発明1の「ノズル」相当する。
ウ 引用発明1−1の「圧力室32」は,本願発明1の「圧力室」相当する。
エ 引用発明1−1の「流路ユニット11」は,本願発明1の「流路ユニット」に相当する。
オ 引用発明1−1の「第1圧電層14」は,流路ユニット11の上面に重ねて接着された平面視矩形状の振動板13の上面に形成されている層であるから,流路ユニットの一方面側に配置された層である点において,本願発明1の「流路ユニットの一方面側に配置された層」に共通する。
また,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるシート状の部材であり,出願人が令和1年6月7日に提出した上申書の「なお,出願当初明細書の段落[0036]には,振動板41が「アルミナ,ジルコニア,後述するPZTなどのセラミックス材料」などの絶縁材料で構成されることが記載されており,振動板41が絶縁層に相当するものであることは明らかであります。(第2ページ第32〜35行)」を参酌すれば,チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるシート状のものである引用発明1−1の「第1圧電層14」は,「絶縁材料により形成された層状物」,つまり「絶縁層」であるといえる。
カ 引用発明1−1の「多数配列された個別電極15」は,「第1圧電層14の上面にそれぞれ多数配列」されており,上記「オ」で述べたとおり,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,「絶縁層」である。
そして,引用発明1−1の「第1圧電層14の上面」とは,「絶縁層の流路ユニットと反対側の面」に他ならない。
したがって,引用発明1−1の「多数配列された個別電極15」は,「絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置され」たものであるから,本願発明1の「複数の個別電極」に相当する。
キ 引用発明1−1の「第2圧電層16」は,「個別電極15を第1圧電層14との間で挟むように形成」されており,上記「オ」で述べたとおり,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,「絶縁層」である。
そして,「個別電極15を第1圧電層14との間で挟むように形成」するためには,少なくとも「第1圧電層14」の上面に形成することになり,このことは,「絶縁層の流路ユニットと反対側」であることに他ならず,さらに「個別電極15を第1圧電層14との間で挟」むことは,「第2圧電層16」が「多数配列された個別電極15」を覆うことに他ならない。
したがって,引用発明1−1の「第2圧電層16」は,「絶縁層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極を覆うように配置され」るものであるから,本願発明1の「複数の個別電極」に相当する。
ク 引用発明1−1の「上部共通電極17」は,「第2圧電層16の上面に形成」されており,これは「前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置」されることに他ならず,上記「オ」で述べたとおり,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,「絶縁層」である。
したがって,引用発明1−1の「上部共通電極17」は,「前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極と対向」するものであるから,本願発明1の「共通電極」に相当する。
ケ 引用発明1−1の「第2圧電層16」は,「個別電極15の左側2列に対向する左側圧電層」と,左側圧電層から離間して設けられる「個別電極15の右側2列に対向する右側圧電層」とから構成され,第2圧電層16の前辺の側端部16aは,「左側圧電層」にも「右側圧電層」にも存在しているから,「左側圧電層の側端部16a」と「右側圧電層の側端部16a」とは,互いに離間して設けられているといえる。
そして,上部共通電極17の一部は,第1圧電層14及び第2圧電層16の前辺の側端部14a,16aを通過して,振動板13の露出領域13d上まで階段状に延設されるものであるから,上部共通電極17の一部のうち「左側圧電層」及び「右側圧電層」の側端部16aに接する部分は,当然「共通電極と電気的に接続され」ていることになる。
したがって,引用発明1−1の上部共通電極17の一部のうち「左側圧電層」の側端部16aに接する部分は,本願発明1の「前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分」に相当する。
引用発明1−1の上部共通電極17の一部のうち「左側圧電層」の側端部16aに接する部分を,本願発明1の「前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分」に相当させたことで,引用発明1−1の上部共通電極17の一部のうち「右側圧電層」の側端部16aに接する部分は,本願発明1の「圧電層の側面に前記第1配線部分とは離間して形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第2配線部分」に相当する。
コ 引用発明1−1の「多数配列された個別電極15」について,「それぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線」が存在することについて,引用文献1には明記がない。
しかしながら、発明の詳細な説明の段落【0040】には「前記圧電アクチュエータ12によれば、個別電極15に印加された電圧によって発生する電界が第2圧電層16を介して上部共通電極17に作用すると共に、第1圧電層14を介して下部共通電極27にも作用し、1つの個別電極15で一対の圧電層14,16を変形させることができるため、個別電極15の数が低減されて個別電極15の断線や短絡による歩留まりの低下を抑制することが可能となる。」と記載されており、これは、個別電極15に電圧を印加すること、1つの個別電極15が第2圧電層16を介して上部共通電極17に作用すると共に、第1圧電層14を介して下部共通電極27にも作用し、1つの個別電極15で一対の圧電層14,16を変形させることができることを示しており、当該記載に照らせば「個別電極15」は、個別配線と接続されていることは明らかである。
したがって、引用発明1−1は、本願発明1の「前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線」に相当する構成を有するものであると認められる。
サ 引用発明1−1の「左方向に延出する端子部17a」は,第1圧電層14上に形成された「上部共通電極17」の一部分であり,上記「オ」で述べたとおり,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,本願発明1の「流路ユニットの一方面側に配置された層」に共通する。
また,第1圧電層14上は,第1圧電層14の前記流路ユニットと反対側の面に相当すること,及び,「左側圧電層の側端部16aに接する部分」と電気的に接続されることは明らかである。
したがって,引用発明1−1の「左方向に延出する端子部17a」は,「流路ユニットの一方面側に配置された層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記第1配線部分と電気的に接続」される点において,本願発明1の「第1端子」に共通する。
シ 引用発明1−1の「右方向に延出する端子部17a」は,第1圧電層14上に形成された「上部共通電極17」の一部分であり,上記「オ」で述べたとおり,引用発明1−1の「第1圧電層14」は,「絶縁層」である。
また,第1圧電層14上は,第1圧電層14の前記流路ユニットと反対側の面に相当すること,及び,「右側圧電層の側端部16aに接する部分」と電気的に接続されることは明らかである。
さらに,引用発明1−1の「端子部17a」が,「振動板13の同一平面上である個別電極15の端子部15bの存在する左右辺の露出領域13e,13fに形成」されることを踏まえれば,「右方向に延出する端子部17a」が形成される領域は「露出領域13e」であって,「圧電層と前記絶縁層との間に挟まれない部分」であることは明らかである。
したがって,引用発明1−1の「右方向に延出する端子部17a」は,「絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面における前記圧電層と前記絶縁層との間に挟まれない部分に配置され,前記第2配線部分と電気的に接続」されるものであるから,本願発明1の「第2端子」に相当する。
ス 引用発明1−1の個別電極15は,本体部15aと,本体部15aから側方に向けて延出された端子部15bとを有するものである。
そして、上記コで検討したとおり、引用発明1−1が「前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線」に相当する構成を有するものであると認められ、複数の個別配線が複数の個別電極と電気的に接続する際に端子部15bを用いることは、技術常識から明らかである。
したがって、引用発明1−1の「端子部15b」は、個別配線のそれぞれと電気的に接続される点において本願発明1の「個別端子」に共通する。
セ 引用発明1−1の「上部共通電極17」は,「個別電極15の左側2列に対向する左側部分と,個別電極15の右側2列に対向する右側部分と,左側部分の下部右側と右側部分の下部左側とを連結する共通電極連結部とから構成」されており,上記「ケ」で述べたとおり,「上部共通電極17の個別電極15の左側2列に対向する左側部分」は「第1配線部分」を有し,「上部共通電極17の個別電極15の右側2列に対向する右側部分」は「第2配線部分」を有している。
したがって,「上部共通電極17」のうち,「第1配線部分を含む個別電極15の左側2列に対向する左側部分と,第2配線部分を含む個別電極15の右側2列に対向する右側部分と,左側部分の下部右側と右側部分の下部左側とを連結する部分」は電気的に接続されていることとなり,電気的に接続されている以上,引用発明1−1は本願発明1の「前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一である」という発明特定事項を備えているものと認められる。

以上のことより,両者は,
「液体を吐出する複数のノズルに,それぞれ連通する複数の圧力室を有する流路ユニットと,
前記流路ユニットの一方面側に配置された絶縁層と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置された複数の個別電極と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極を覆うように配置された圧電層と,
前記圧電層の前記流路ユニットと反対側に配置され,前記複数の個別電極と対向する共通電極と,
前記圧電層の側面に形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第1配線部分と,
前記圧電層の側面に前記第1配線部分とは離間して形成された部分であって,前記共通電極と電気的に接続された配線の一部である第2配線部分と,
前記複数の個別電極のそれぞれと電気的に接続された配線である複数の個別配線と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面に配置され,前記第1配線部分と電気的に接続された第1端子と,
前記絶縁層の前記流路ユニットと反対側の面における前記圧電層と前記流絶縁層との間に挟まれない部分に配置され,前記第2配線部分と電気的に接続された第2端子と,
前記複数の個別配線のそれぞれと電気的に接続される複数の個別端子と,を備え,
前記第1配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極と,前記第2配線部分が接続された前記共通電極が対向する前記複数の個別電極とは,同一であることを特徴とするインクジェットヘッド。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点] 本願発明1では,「複数の個別電極と同一面上に配置される複数の個別端子」を備えているのに対して,引用発明1−1の複数の個別電極15の「本体部15a」は「第1圧電層14上」にあり,「端子部15b」は「振動板13上」にあるから,個別電極と個別端子とが同一面上に配置されない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
引用発明1−2において,第1圧電層の左右辺の側端部は,第2圧電層の左右辺の側端部よりも側方に突出することで,第1圧電層上にはその側端部に沿ってそれぞれ露出領域が形成されることになった。
そして,引用発明1−2の個別電極の本体部は第1圧電層上に形成されるものであり,引用発明1−2の個別電極の端子部は,その第1圧電層上に形成された該露出領域に形成されるものであり,個別電極の本体部と端子部は同一平面上に形成されるものである。
ここで,引用発明1−1及び引用発明1−2は、同じ引用文献1に記載された発明であるから、当然に技術分野の関連性も課題の共通性もあると認められ、引用発明1−1に引用発明1−2を適用することは動機付けがあるものといえる。
したがって、引用発明1−1に引用発明1−2を適用して,相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすること、つまり引用発明1−1の個別電極の本体部と端子部の位置関係において,引用発明1−2を適用して、個別電極の本体部が形成される第1圧電層の左右辺の側端部を,第2圧電層の左右辺の側端部よりも側方に突出させて,第1圧電層上にその側端部に沿ってそれぞれ露出領域を形成し,該露出領域,つまり第1圧電層上に個別電極の端子部を形成して、個別電極の本体部と端子部とを同一平面上にあるとすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。
よって,本願発明1は,引用発明1−1に引用発明1−2から,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用文献1に記載された引用発明1−1に引用発明1−2に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願を拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-04-28 
結審通知日 2022-05-17 
審決日 2022-05-31 
出願番号 P2019-088863
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 佐々木 創太郎
吉村 尚
発明の名称 圧電アクチュエータ  
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