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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1386775
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-26 
確定日 2022-02-08 
事件の表示 特願2017−521814「固体撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日国際公開,WO2016/194654,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 5月20日(優先権主張 2015年(平成27年) 6月 5日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年 5月20日 :手続補正書の提出
令和 2年 1月10日付け:拒絶理由通知
令和 2年 3月10日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 4月24日付け:拒絶理由通知(最後)
令和 2年 6月 2日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年11月26日付け:令和 2年 6月 2日の手続補正についての補正却下の決定,拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 3年 2月26日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 3年 5月25日 :前置報告
令和 3年 7月 6日付け:拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)
令和 3年 9月 7日 :意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
理由1 本願請求項1,2に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
理由2 本願請求項1−9に係る発明は,以下の引用文献A−Dに記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A 特開2005−072097号公報
引用文献B 特開2012−208257号公報(引用文献3)
引用文献C 特開2014−033052号公報(引用文献2)
引用文献D 特開2015−029054号公報(引用文献5)

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1 本願請求項1−7に係る発明は,以下の引用文献1−5に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2 この出願は,特許請求の範囲の請求項2の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引用文献1 特開2013−033864号公報
引用文献2 特開2014−033052号公報
引用文献3 特開2012−208257号公報
引用文献4 特開2007−240854号公報
引用文献5 特開2015−029054号公報

第4 本願発明
本願請求項1−6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」−「本願発明6」という。)は,令和 3年 9月 7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
光入射面である第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する基板と,
前記基板に設けられた,入射光を光電変換する光電変換領域と,
前記基板の前記第1面側で,断面視において前記基板の一部の領域と第1の絶縁膜とが交互に設けられた第1層と,
前記第1層の前記光入射面側と接するように設けられた第2層と,
前記光電変換領域を覆い,かつ,前記第2層の前記光入射面の上方に設けられた第3層と,
前記光電変換領域と前記光電変換領域に隣接する他の光電変換領域との間に設けられたトレンチとを有し,
前記第2層は,前記第1の絶縁膜のみを有し,
前記第3層は,第2の絶縁膜を有し,
前記基板の屈折率は,前記第1の絶縁膜の屈折率よりも大きく,
前記第1の絶縁膜の屈折率は,前記第2の絶縁膜の屈折率よりも大きく,
前記第1の絶縁膜は固定電荷を有する膜であり,
前記トレンチは,前記半導体基板に設けられた複数の各画素を取り囲むように設けられ,
前記基板の一部の領域の断面視における幅は,前記第1面から前記第2面に向かうにつれて段階的に,または徐々に大きくなる
固体撮像装置。」

なお,本願発明2−6は,本願発明1の全ての構成を含む発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)前置報告書において引用され,当審拒絶理由に引用された引用文献1(特開2013−033864号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【発明を実施するための形態】
【0040】
本技術は,固体撮像素子において,単結晶からなる半導体基板による界面では屈折率差が比較的大きく,光が反射することにより発生する光の損失が大きいことに着目し,半導体基板の表面に,半導体基板の結晶の面方位に沿うエッチング特性を利用し,画素毎に大きさの異なる微細な突起群からなる凹凸構造を形成するものである。以下,本技術の実施の形態を説明する。
【0041】
[固体撮像素子の構成]
本技術の第1実施形態に係る固体撮像素子1の構成について,図1を用いて説明する。本実施形態に係る固体撮像素子1は,CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像素子である。固体撮像素子1は,単結晶シリコンからなる半導体基板2を有する。固体撮像素子1は,半導体基板2の平面視において,画素領域3と,画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域とを有する。
【0042】
画素領域3は,半導体基板2に設けられる撮像領域であり,所定の配列で設けられる複数の画素5を有する。画素5は,半導体基板2に形成される。本実施形態では,複数の画素5の配列として,複数の画素5が画素領域3において平面的に行列状に配置される,一般的な正方格子配列が採用される。この場合,複数の画素5は,例えば矩形状の画素領域3に沿って,縦方向(垂直方向)・横方向(水平方向)に2次元行列状に配置される。
【0043】
画素領域3は,各画素5における光電変換により信号電荷の生成,増幅,および読み出しを行う有効画素領域と,黒レベルの基準となる光学的黒を出力する光学的黒レベル領域とを有する。通常,光学的黒レベル領域は,有効画素領域の外周に形成される。
【0044】
画素5は,光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6と,複数のMOSトランジスタ7とを有する。フォトダイオード6は,受光面を有し,その受光面に入射した光の光量(強度)に応じた量の信号電荷を生成する。フォトダイオード6は,半導体基板2の厚さ方向の全域にわたるように形成される。
【0045】
本実施形態では,フォトダイオード6は,第1導電型としてのn型半導体領域8と,半導体基板2の表裏両面に臨むように形成される第2導電型としてのp型半導体領域9とを有し,pn接合型のフォトダイオードとして構成される。フォトダイオード6が有するp型半導体領域9は,暗電流抑制のための正孔電荷蓄積領域を兼ねる。画素5は,複数のMOSトランジスタ7として,例えばフォトダイオード6により生成された信号電荷の増幅,転送,選択,およびリセットをそれぞれ受け持つトランジスタを有する。
【0046】
MOSトランジスタ7は,図示せぬソース・ドレイン領域と,ゲート電極10とを有する。MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域は,半導体基板2の一方の板面側である表面2a側に形成されたp型半導体ウェル領域11においてn型の領域として形成される。ゲート電極10は,MOSトランジスタ7のソース・ドレイン領域の両領域間における半導体基板2の表面2a上にゲート絶縁膜を介して形成される。このようにフォトダイオード6およびMOSトランジスタ7からなる各画素5は,素子分離領域12により分離される。素子分離領域12は,p型半導体領域として形成され,接地される。
【0047】
以上のように,本実施形態の固体撮像素子1においては,半導体基板2は,単結晶シリコンからなり,光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6を含む画素5が複数配列される画素領域3を有する。なお,半導体基板2の材料としては,単結晶シリコンに限定されず,固体撮像素子を構成する半導体基板の材料として適用可能な単結晶の半導体材料であればよい。
【0048】
また,固体撮像素子1において,上記のとおり画素領域3の周囲に設けられる周辺回路領域には,固体撮像素子1を動作させるための種々の回路が配置される。周辺回路領域に配置される回路には,垂直方向および水平方向の各方向で画素を選択するための垂直走査回路および水平走査回路,各画素5からの出力信号の処理を行う信号処理回路,信号処理回路から順次供給される信号に対して所定の信号処理を行って出力する出力回路,これらの回路の動作の基準となるクロック信号や制御信号を生成し,各回路を制御する制御回路等含まれる。
【0049】
本実施形態の固体撮像素子1は,いわゆる裏面照射型のCMOS固体撮像素子である。このため,半導体基板2の表面2a上には,積層配線層13が設けられる。積層配線層13は,層間絶縁膜14を介して積層される複数の配線15を有する。層間絶縁膜14は,例えば,二酸化ケイ素(SiO2)により形成されるシリコン酸化膜により構成される。複数の配線15は,例えば異なる金属により形成され,層間に形成されるプラグ等を介して互いに接続される。なお,本実施形態において半導体基板2の一方の板面側に設けられる配線層は,複数の配線を有する積層配線層13であるが,これに限定されず,単層構造の配線層であってもよい。
【0050】
一方,半導体基板2の他方の板面である裏面2b上には,反射防止膜20が設けられている。反射防止膜20は,シリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜として形成される。反射防止膜20上には,保護用のパシベーション膜16が設けられている。パシベーション膜16は,平坦化された膜であり,光透過性を有する。パシベーション膜16は,例えばシリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜として形成される。なお,半導体基板2とパシベーション膜16との間には,反射防止膜として機能する絶縁膜等が適宜設けられる。
【0051】
パシベーション膜16上には,カラーフィルタ層17が設けられる。カラーフィルタ層17は,画素領域3に配列される各画素5に対応して設けられるカラーフィルタ18に区分される。つまり,カラーフィルタ層17は,各画素5を構成するフォトダイオード6毎に複数のカラーフィルタ18に区分される。本実施形態の固体撮像素子1では,各カラーフィルタ18は,赤色(R),緑色(G),および青色(B)のいずれかの色のフィルタ部分であり,各色の成分の光を透過させる。各色のカラーフィルタ18は,いわゆるオンチップカラーフィルタであり,複数の画素5の配列に従って形成される。このように,本実施形態の固体撮像素子1は,半導体基板2のフォトダイオード6により受光される光が入射する側,つまり表面側にて画素5毎に設けられるカラーフィルタ18を備える。
【0052】
カラーフィルタ層17上には,複数のマイクロレンズ19が設けられる。マイクロレンズ19は,いわゆるオンチップマイクロレンズであり,画素5を構成するフォトダイオード6に対応して,画素5毎に形成される。したがって,複数のマイクロレンズ19は,画素5と同様に例えば平面的に行列状に配置される。マイクロレンズ19は,外部からの入射光を,対応する画素5のフォトダイオード6に集光する。マイクロレンズ19は,例えば,SiN(窒化シリコン)等の無機材料により構成される。
【0053】
以上のように,本実施形態の固体撮像素子1は,半導体基板2に対して,積層配線層13が設けられる表面2a側と反対側である裏面2b側に,カラーフィルタ層17およびマイクロレンズ19が設けられる裏面照射型の構造を有する。つまり,固体撮像素子1においては,積層配線層13とカラーフィルタ層17とは,半導体基板2に対して互いに異なる板面側に設けられており,半導体基板2に対して光が入射する裏面2b側と反対側の表面2a側に,積層配線層13が設けられる。」

「【0056】
[反射防止構造]
以上のような構成を備える本実施形態の固体撮像素子1は,入射光の反射を防止するための反射防止構造として,半導体基板2における光が入射する側の表面(板面)に,微細な突起による反射防止構造,いわゆるモスアイ構造を有する。固体撮像素子1においては,単結晶シリコンからなる半導体基板2による界面では,他の積層構造における界面よりも屈折率差が比較的大きく,光が反射することにより発生する光の損失が大きい。そこで,本実施形態の固体撮像素子1においては,半導体基板2の光が入射する側の表面に,微細な突起群からなる反射防止構造が設けられている。
【0057】
図1および図2に示すように,本実施形態の固体撮像素子1においては,半導体基板2は,光が入射する側の表面である裏面2bに,画素5毎に所定のピッチで配列される微細な角錐状の突起31による凹凸構造30を有する。図2に示すように,本実施形態では,凹凸構造30を構成する突起31は,四角錐形状を有する。つまり,凹凸構造30を構成する突起31は,順ピラミッド型,つまり光が入射する側(図1において上側)に凸のピラミッド型の形状を有する。
【0058】
図2は,半導体基板2の裏面2bの一部を表す半導体基板2の一部拡大平面図である。凹凸構造30は,半導体基板2の裏面2bに設けられることから,図2は,凹凸構造30の平面視を表す。図2には,行列状に配置される複数の画素5の配列における2行2列の4個の画素5の境界部分が示されている。
【0059】
図2に示すように,四角錐形状の突起31は,平面視形状(四角錐形状における底面の形状に相当する形状)が正方形ないし矩形状となり,その平面視形状が行列状に配置される複数の画素5の配列に沿うように配列された状態で設けられる。つまり,凹凸構造30を構成する突起31は,その平面視形状の外形をなす辺が,2次元行列状に配置される複数の画素5の配列における縦方向(垂直方向)・横方向(水平方向)に沿うように設けられる。
【0060】
突起31群により構成される凹凸構造30は,画素領域3に配列される画素5毎に設けられる。図2に示すように,凹凸構造30を構成する複数の突起31は,画素領域3に配列される各画素5において矩形状に区画される凹凸領域32に設けられる。各画素5における凹凸領域32は,平面視で対応する画素5のフォトダイオード6が存在する範囲を含む領域である。突起31群は,各画素5の凹凸領域32において,縦方向および横方向に隣接した状態で隙間なく画素5の配列に沿って行列状に配置される。」

「【0076】
[画素間分離構造]
次に,本実施形態の固体撮像素子1が有する画素間分離構造について説明する。本実施形態の固体撮像素子1は,半導体基板2の光が入射する側の表面(裏面2b)に,画素間分離構造として機能する形状部分を有する。
【0077】
具体的には,図1から図4に示すように,本実施形態の固体撮像素子1においては,半導体基板2は,互いに隣り合う画素5間に,凹凸構造30の突起31を形成する面と平行な面からなる直線状の溝部40を有する。この半導体基板2において画素5間に設けられる溝部40が,画素間分離構造として機能する。
【0078】
溝部40は,半導体基板2の裏面2b部分において,行列状に配置される画素5間の境界に沿って格子状に設けられる。溝部40は,画素5間の境界に沿う格子状の形状において,縦方向の溝部40と横方向の溝部40との交点部分以外の主な部分は,断面視でV字状となるV字溝として形成される(図3,図4参照)。溝部40は,半導体基板2の板面に沿う方向に対して傾斜する一対の斜面41により形成され,縦方向および横方向の各方向については断面形状を共通にする。
【0079】
溝部40を形成する斜面41は,凹凸構造30の突起31を形成する面に対して平行な面として形成される。具体的には,図3を用いて説明すると,溝部40を形成する一対の斜面41のうち一方の(図3において左側の)斜面41aは,凹凸構造30を構成する突起31において四角錐形状を形成する右側の三角形状の斜面31aと平行な面として形成される。同様にして,溝部40を形成する斜面のうち他方の(図3において右側の)斜面41bは,凹凸構造30を構成する突起31において四角錐形状を形成する右側の三角形状の斜面31bと平行な面として形成される。これら溝部40を形成する斜面41(41a,41b),および突起31を形成する斜面31a,31bは,単結晶シリコンからなる半導体基板2の面方位に従って得られる面である。
【0080】
また,溝部40の幅の寸法(図2,符号w1参照)は,基本的にはどの色の画素5における凹凸構造30を構成する突起31群の配列におけるピッチよりも大きい。ただし,溝部40の幅の寸法と凹凸構造30の突起31群の配列におけるピッチとの大小関係は,本実施形態に限定されるものではない。また,本実施形態では,縦方向(垂直方向)および横方向(水平方向)の各方向に配される溝部40の幅の寸法は互いに等しいとする。
【0081】
以上のような画素間分離構造を有する本実施形態の固体撮像素子1によれば,画素5間の境界に沿って設けられる溝部40が,互いに隣り合う画素5間における掘り込み部分となり,ある画素5についてその画素5に隣接する画素5からの斜め光の入射を阻止することができ,混色を抑制することができる。
【0082】
ここで,混色とは,互いに異なる色の画素5が隣接する画素5間の境界部分において,一方の色の画素5に対応するカラーフィルタ18に入射した光の一部が,斜め光として他方の色の画素5のフォトダイオード6に入射する現象である。混色は,固体撮像素子1における感度や画質のムラを生じさせる原因ともなる。こうした混色による問題は,固体撮像素子1における微細化や画素数の増大等にともなって顕著となる。
【0083】
そこで,本実施形態の固体撮像素子1によれば,画素5間に設けられる溝部40により,隣接する画素5からの斜め光を阻止することができ,混色を抑制することができる。このように混色を抑制する観点からは,溝部40の深さ,つまり互いに隣接する画素5間の半導体基板2の掘り込みの深さは深い方が好ましい。すなわち,溝部40の深さが深いほど,高い混色防止効果が得られる。一方,溝部40の深さが深くなると,半導体基板2の面方位の関係から,光電変換を行うシリコン層,つまりフォトダイオード6としての層部分の領域を確保することが困難となる。このため,溝部40の深さ,つまり隣接画素間の半導体基板2の掘り込み量は,固体撮像素子1において要求される感度と,混色防止効果を得るための色分離性能とに基づいて,適切な量に決定される。」

「【0148】
[第2実施形態]
本技術の第2実施形態について説明する。なお,変形例の適用を含めて第1実施形態と共通する部分については,同一の符号を用いる等して適宜説明を省略する。本実施形態に係る固体撮像素子は,半導体基板2の裏面2b側に設けられる凹凸構造30が二層構造となっている点で,第1実施形態の固体撮像素子1と異なる。つまり,第1実施形態の固体撮像素子1が備えるモスアイ構造としての凹凸構造30が単層構造であるのに対し,本実施形態の固体撮像素子は,モスアイ構造が多層化(二層化)されている
【0149】
図12に示すように,本実施形態の固体撮像素子1Aにおいては,半導体基板2の裏面2b上に設けられる反射防止膜20が省略されており,半導体基板2の裏面2b上にはパシベーション膜16が設けられている。そして,本実施形態の固体撮像素子1Aは,半導体基板2と,半導体基板2において凹凸構造30が形成される裏面2bに設けられるパシベーション膜16との間に,中間膜50を備える。中間膜50は,半導体基板2に形成される凹凸構造30が二層構造となるように,均一な膜厚で成膜される。したがって,中間膜50は,上述したように半導体基板2の裏面2b側を被覆するように,析出面2xからなる凹凸形状に倣って均一的に形成される。
【0150】
本実施形態では,図12に示すように,中間膜50は,凹凸構造30と溝部40とを含む半導体基板2の裏面2b側に全体的に形成されている。ただし,中間膜50は,半導体基板2の裏面2b側において少なくとも凹凸構造30が形成される部分に設けられればよい。つまり,中間膜50は,半導体基板2の裏面2b側に対して,少なくとも凹凸構造30を覆い,凹凸構造30を二層構造とするように形成されればよい。
【0151】
中間膜50は,半導体基板2とパシベーション膜16との中間屈折率材料からなる。中間膜50は,半導体基板2の屈折率よりも低く,かつパシベーション膜16の屈折率よりも高い屈折率の膜である。本実施形態の場合,半導体基板2を構成する単結晶シリコンの屈折率は4程度であり,パシベーション膜16の材料として例示されるシリコン酸化膜(SiO2膜)の屈折率は1.5程度であることから,中間膜50は,これらの屈折率の間の値をとる屈折率の材料により成膜される。
【0152】
中間膜50の材料としては,例えば,酸化ハフニウム(HfO2),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化タンタル(Ta2O5),酸化ジルコニウム(ZrO2),酸化チタン(TiO2)等が挙げられる。また,中間膜50は,例えば,シリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸窒化膜(SiON膜)やシリコン炭窒化膜(SiCN膜)や炭素含有シリコン酸化膜(SiOC膜)やシリコン炭化膜(SiC膜)等であってもよい。ただし,中間膜50としては,ここに例示したものに限られず,上述したような中間屈折率材料からなる膜であれば,適宜周知の膜種を採用することができる。また,中間膜50は,例えば,CVD(Chemical Vapor Deposition)法,スパッタリング法,原子層蒸着法等により成膜される。
【0153】
このように,本実施形態の固体撮像素子1Aにおいては,半導体基板2とパシベーション膜16との間に,中間屈折率材料からなる中間膜50が設けられ,凹凸構造30が二層構造とされている。なお,本実施形態では,半導体基板2に対して凹凸構造30が設けられる裏面2b側にパシベーション膜16が設けられることから中間膜50は半導体基板2とパシベーション膜16との間に設けられているが,半導体基板2の裏面2b側に設けられる層構造によって,半導体基板2との間に中間膜50を介装させる層は異なる。
【0154】
すなわち,中間膜50は,半導体基板2とこの半導体基板2に対して凹凸構造30が存在する側,つまり本実施形態の場合裏面2b側に設けられる積層構造を構成する膜のうち最も半導体基板2側の膜との間に設けられる。本実施形態の場合,半導体基板2の裏面2b側に設けられる積層構造を構成する膜のうち最も半導体基板2側の膜は,パシベーション膜16である。なお,固体撮像素子1の変形例(図6)の場合は,上記の積層構造を構成する膜のうち最も半導体基板2側の膜は,カラーフィルタ層17となり,中間膜50は,半導体基板2とカラーフィルタ層17との間に設けられる。」

「【0160】
また,半導体基板2の裏面2b側に形成される中間膜50は,負の固定電荷を有する膜として形成することもできる。この場合も,中間膜50は,例えば,酸化ハフニウム(HfO2),酸化アルミニウム(Al2O3),酸化タンタル(Ta2O5),酸化ジルコニウム(ZrO2),酸化チタン(TiO2)等の材料が用いられ,CVD法等により成膜される。このように,中間膜50が負の固定電荷を有する膜として成膜されることで,次のような作用効果を得ることができる。
【0161】
半導体基板2の表面には,固体撮像素子1Aの製造工程において,自然酸化膜が形成される場合がある。この場合,半導体基板2の表面に形成される自然酸化膜は,単結晶シリコンが大気中の酸素と反応して形成されるものであり,SiO2膜となる。このように半導体基板2の表面に自然酸化膜としてのSiO2膜が形成されると,中間膜50は,半導体基板2に対してSiO2膜を介して存在することになる。
【0162】
このように中間膜50が自然酸化膜を介して半導体基板2上に存在する構成においては,中間膜50が負の固定電荷を有する膜である場合,半導体基板2と中間膜50との間の自然酸化膜が,界面準位を下げる膜として機能する。具体的には,負の固定電荷を有する膜としての中間膜50の膜中の負の固定電荷により,自然酸化膜であるSiO2膜を介して,半導体基板2内にてフォトダイオード6として構成される受光部の表面に電界が加わる。この受光部の表面に電界が加わることにより,受光部の表面にホール(正孔)が誘起され,受光部と自然酸化膜との間にホールを蓄積するピニング層が形成される。
【0163】
これにより,半導体基板2に形成される受光部と,界面準位を下げる膜として機能する自然酸化膜との間の界面において界面準位により発生する暗電流が抑制される。詳細には,受光部と自然酸化膜との界面から発生する電子が抑制され,しかもその界面から発生した電子は,ホールが多数存在するピニング層における流動によって消滅する。このため,受光部と自然酸化膜との界面から発生する電子による暗電流が受光部で検知されることが防止されるので,界面準位に起因する暗電流が抑制される。
【0164】
このように,本実施形態の固体撮像素子1Aにおいて,中間膜50を負の固定電荷を有する膜として成膜することにより,反射防止の効果に加え,暗電流を抑制する効果を得ることができる。暗電流は,いわゆる白点の原因となるため,暗電流の抑制は,白点を抑制することが可能となる。」





















(2)引用文献1に記載されている事項を検討する。
ア 引用文献1の段落0041−0053及び図1には,単結晶シリコンからなる半導体基板2を有し,半導体基板2には撮像領域であり所定の配列で設けられる複数の画素5を有する画素領域3が設けられ,画素5は光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6を有し,半導体基板2の表面2a側と反対側 である光が入射する裏面2b上に,反射防止膜20が設けられ,反射防止膜20は,シリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜として形成され,反射防止膜20上には,保護用のパシベーション膜16が設けられ,パシベーション膜16は,シリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜として形成されている固体撮像素子1が記載されている。

イ 引用文献1の段落0057−0060及び図1,2には,固体撮像素子1において,半導体基板2の裏面2bに,画素5毎に所定のピッチで配列される微細な角錐状の突起31による凹凸構造30を有する点が記載されている。

ウ 引用文献1の段落0076−0083及び図1−4には,半導体基板2の裏面2b部分において,互いに隣り合う画素5間に,行列状に配置される画素5間の境界に沿って格子状に,画素間分離構造として機能する溝部40が設けられる点が記載されている。

(3)以上から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 単結晶シリコンからなる半導体基板2を有し,
半導体基板2には撮像領域である画素5を有する画素領域3が設けられ,
画素5は光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6を有し,
半導体基板2の表面2a側と反対側である光が入射する裏面2b上に,反射防止膜20が設けられ,反射防止膜20は,シリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜として形成され,
反射防止膜20上には,保護用のパシベーション膜16が設けられ,パシベーション膜16は,シリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜として形成され,
半導体基板2の裏面2bに,画素5毎に所定のピッチで配列される微細な角錐状の突起31による凹凸構造30を有し,
半導体基板2の裏面2b部分において,互いに隣り合う画素5間に,行列状に配置される画素5間の境界に沿って格子状に,画素間分離構造として機能する溝部40が設けられた
固体撮像素子1。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,当審拒絶理由に引用された引用文献2(特開2014−033052号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0020】
層間絶縁膜303はその屈折率が1.3〜1.6で,SiN膜304はその屈折率が2.0であり,Pウェル層306のSi層の屈折率は4.0である。層間絶縁膜303とPウェル層306との間の屈折率差からそれらの間にSiN膜304の屈折率が2.0を介在させることにより入射光の反射防止機能をSiN膜304に発揮させている。」

「【0067】
(実施形態2)
上記実施形態1では,各受光部3の上方に反射防止用の高屈折率のシリコンカーバイド膜8が設けられた場合について説明したが,本実施形態2では,シリコンカーバイド膜8の代わりに,後述のシリコンカーバイド膜8Aおよびその上の窒化シリコンまたは酸窒化シリコン膜13を設けて屈折率を順次変化させて反射防止を図る場合について説明する。
【0068】
図2は,本発明の実施形態2における固体撮像素子の要部構成例を模式的に示す縦断面図である。なお,図2では,図1の構成部材と同一の作用効果を奏する部材には同一の符号を付して説明する。
【0069】
図2において,本実施形態2の固体撮像素子1Aは,シリコン基板のPウェル層2の表面側に,入射光を光電変換して撮像する複数のフォトダイオードとしての複数の受光部3が2次元状でマトリクス状に配設されている。隣接する各受光部3間のPウェル層2の表面上には,絶縁膜4を介して各画素の電荷読出用の回路素子を含む配線回路5が配設されている。各配線回路5上を埋め込むように層間絶縁膜6が配設されている。
【0070】
Pウェル層2の裏面側には,絶縁膜7を介して反射防止および光透過用のシリコンカーバイド膜8A(SiC膜)が形成され,その上に窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜13が形成されている。シリコンカーバイド膜8Aと窒化シリコンまたは酸窒化シリコン膜13との合計の膜厚は30nm以上100nm以下の厚さに形成される。したがって,本実施形態2のシリコンカーバイド膜8Aの膜厚は,上記実施形態1のシリコンカーバイド膜8の膜厚に比べて薄く構成することができる。要するに,上記実施形態1のシリコンカーバイド膜8の膜厚の30nm以上100nm以下の厚さのうちの一部を窒化シリコンまたは酸窒化シリコン膜13に充てることができる。シリコンカーバイド膜8Aと窒化シリコンまたは酸窒化シリコン膜13との合計膜厚は,上記実施形態1のシリコンカーバイド膜8の膜厚に比べて厚くなることはない。
【0071】
その上に平坦化膜9を介して所定色配列(例えばベイヤ配列)のカラーフィルタ10,さらに,その上に平坦化膜11を介して,各受光部3に対して入射光を集光させるマイクロレンズ12を各受光部3毎に対応して形成している。
【0072】
シリコンカーバイド膜8A(SiC膜)は,屈折率が2.65で,その厚さを反射防止用に調整して形成されている。シリコンカーバイド膜8Aの屈折率2.65は,窒化シリコン膜(SiN膜)の2.0や酸窒化シリコン膜(SiON)の1.95程度と比べて圧倒的に屈折率が高い。
【0073】
シリコンカーバイド膜8A上でシリコンカーバイド膜8Aに接する状態で窒化シリコン膜(SiN膜)または酸窒化シリコン膜13(SiON膜)が形成されている。これによって,下から上に,屈折率の高いシリコン,シリコンカーバイド,窒化シリコン膜または酸窒化シリコンの各膜材料の順番に形成されている。これによって,窒化シリコン膜の屈折率2.0または酸窒化シリコン膜の屈折率1.95からシリコンカーバイド膜8Aの屈折率2.65を介してシリコン基板の屈折率4.0に屈折率が順次軽減されて変化する。この屈折率変化が急峻なところで起こる界面反射を抑えることができて,シリコンカーバイド膜8Aおよび窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜13によってシリコン基板への光透過性を向上させることができる。要するに,上下の各層で屈折率変化が大きいほど反射光が増えて光透過性が悪化することになる。
【0074】
以上により,本実施形態2によれば,入射光を光電変換して撮像する複数の受光部3が2次元状に配設された固体撮像素子1Aにおいて,複数の受光部3のそれぞれの直上を含む上方に,反射防止用のシリコンカーバイド膜8Aが第1透明絶縁膜として形成され シリコンカーバイド膜8A上に接触するように窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜13を形成し,シリコンカーバイド膜8Aと,窒化シリコン膜または酸窒化シリコン膜13の合計の膜厚が30nm以上100nm以下の厚さに形成されている。これによって,シリコン基板までの屈折率をさらに細かく段階的に変えることができて,より反射を抑制して高受光感度とすることができる。」





3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,当審拒絶理由に引用された引用文献3(特開2012−208257号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0100】
〈実施例2〉
図9に示すように,媒体3からなる層A,層Bの凹凸構造として,2段に重なった四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり,以下のような条件に設定した。
【0101】
媒体3の屈折率NC:1.46
層A:媒体3で形成された,周期:200nm,高さ:110nm,幅:114nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:媒体3で形成された,周期:200nm,高さ:110nm,幅:174nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0102】
図19は,実施例2における反射率の算出結果を示す図である。
【0103】
〈実施例3〉
図10に示すように,媒体2(=媒体3)からなる層A,層Bの凹凸構造として,2段に重なった四角柱状の凸形微細構造4が2次元に配列された構造であり,以下のような条件に設定した。
【0104】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された,周期:200nm,高さ:110nm,幅:110nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.15)
層B:媒体2で形成された,周期:200nm,高さ:100nm,幅:167nmの凸状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)
【0105】
図20は,実施例3における反射率の算出結果を示す図である。
【0106】
〈実施例4〉
図11に示すように,媒体2(=媒体3)からなる層A,層Bの凹凸構造として,2段に重なった四角柱のホール(凹形微細構造4a)が2次元に配列された構造であり,以下のような条件に設定した。
【0107】
媒体3を媒体2と同じ媒体で形成した。屈折率NC:1.50
層A:媒体2で形成された,周期:200nm,高さ:120nm,幅:179nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_1:1.10)
層B:媒体2で形成された,周期:200nm,高さ:100nm,幅:110nmの凹状の構造と空気によって形成(有効屈折率Neff_2:1.35)」













4 引用文献4について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献4(特開2007−240854号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の反射防止構造体は,透明パネル等の基材の基礎面上に,可視光線の波長(最小波長:380nm)よりも小さいピッチで多数の微細凸部(微細構造)を配列させたものであり,図1〜図3に示すように,微細凸部が,円又はこの円に内接する多角形の平面形状を有し且つ頂部に向けて平面形状の面積が漸次減少する多段構造を成している。
【0009】
図1(a)(b)に示す微細凸部A1は,平面形状が円であって,頂部に向けて面積が漸次減少する円形の各段を同心状に備えており,図1(c)に示すように,基礎面上に六方細密配列のパターンで設けてある。
【0010】
図2(a)(b)に示す微細凸部A2は,平面形状が矩形であって,頂部に向けて面積が漸次減少する矩形の各段を同心状に備えており,図2(c)(d)に示すように,基礎面上に正方配列や六方細密配列のパターンで隙間無く設けてある。
【0011】
図3(a)(b)に示す微細凸部A3は,平面形状が三角形であって,頂部に向けて面積が漸次減少する三角形の各段を同心状に備えており,図3(c)に示すように,基礎面上に隙間無く設けてある。
【0012】
上記構成を備えた反射防止構造体は,微細凸部(微細構造)A1?A3が階段状を成していることから,当該反射防止構造体を成形するための成形型を作製する際には,電子線描画装置などにより垂直に掘り進むのみで微細凸部A1?A3に対応した階段状の微細凹部(反転した微細構造)を形成することができる。よって,斜面を有する微細凹凸を備えた従来のものに比べて,成形型を容易に作製することが可能となる。」

「【0037】
さらに,反射防止成形品は,上記のように成形型を用いて製造するほかに,図4に示すように,リソグラフィーによって微細凸部(微細構造)を形成する製造方法も採用し得る。
【0038】
すなわち,図4(a)に示す基材1に,図4(b)に示すように微細凸部となるレジスト膜2を塗布し,その後,図4(c)に示すように,レジスト膜2の部分に電子線Eにより所定のパターンを描画するのに続いて,図4(d)に示す如くイオンエッチングIを行なうことで,図4(e)に示すように,階段状の微細凸部Aを有する反射防止成形品Sを得ることができるほか,電子線硬化性又は電子線分解性のレジスト膜を採用すると共に,所望の形状に電子線を照射できるマスクを用い,段階的にレジスト膜を硬化又は分解して,硬化していない部分を除去する方法で反射防止成形品Sを得ることができる。」

















5 その他の文献
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献A(特開2005−072097号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下,図面を参照して,本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
先ず,本発明の固体撮像素子の一実施の形態を,図1に示す拡大断面図と共に説明する。
本実施の形態の固体撮像装置100は,例えば,高純度の単結晶シリコン(Si)を主要材料とするN型のシリコン半導体基板1内に,P型の第1の半導体ウェル層2が形成され,半導体基板1の表面側には,光電変換部3を構成する例えばN型の半導体領域(所謂電荷蓄積領域)4からなるフォトダイオードが形成される。
光電変換部3列の一方の側には,垂直CCD部6を構成するN型の転送チャネル領域7が形成され,N型の転送チャネル領域7の下には,P型の第2の半導体ウェル領域8が形成されている。 光電変換部3の他方の側には,水平方向に隣り合う画素間を分離するための画素分離領域,即ち,高濃度のP型のチャネルストップ領域9が形成されている。光電変換部3と垂直CCD部6との間には,光電変換部3に蓄積された信号電荷を垂直CCD部6に読み出すための,トランスファーゲート部10が形成されている。
【0033】
半導体基板1の表面上には,光電変換部3の材質(例えば半導体基板1の単結晶シリコンに所定の不純物を注入してなる材質)とは異なった材質の,例えばシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜からなる絶縁膜11が形成されている。この絶縁膜11上には,トランスファーゲート部10,N型の転送チャネル領域7及びチャネルストップ領域9上に,例えば多結晶シリコン層よりなる転送電極12が形成されている。そして,転送チャネル領域7,転送電極12とにより垂直転CCD部6が構成される。この転送電極12上には層間絶縁膜13を介して例えばアルミニウムやタングステンのような金属材料からなる遮光膜14が形成される。
また,遮光膜14上には,全面を覆って透明なシリコン酸化膜(例えばPSG)からなるカバー膜(パッシべーション膜)15が形成されている。そして,このカバー膜15上に平坦化膜16,さらにはカラーフィルタ(図示せず)を介して,光電変換部13と対応する位置に,オンチップレンズ17が形成されている。
【0034】
ここで,絶縁膜11と光電変換部3との界面には,半導体基板1の厚さ方向に深部へと向かうにつれて,絶縁膜11を構成するシリコン酸化膜に対する半導体基板1を構成する単結晶シリコンの比率が徐々に(連続量的に)高くなって行くような凹凸部(フォトニック結晶)18が形成されている。即ち,N型の半導体領域4の表面に凹凸部18が形成されている。
【0035】
凹凸部18は,図2に平面図及び図3に拡大斜視図を示すように,その長手方向が,半導体基板1の平坦な主面に対して平行に寝かされて配置され,例えば三角柱状に形成されている。
この三角柱状の凹凸部18を構成している複数の三角柱のピッチの寸法D(隣り合った三角柱同士のピッチの寸法D)は,固体撮像装置の撮像対象として設定されている光の最長波長以下,さらに望ましくは最短波長以下に設定することができる。また,さらに望ましくは,設定されている光の最短波長の1/2〜1/5の範囲に設定することもできる。
このようなピッチの寸法Dに設定することにより,凹凸部18内における入射光に対する媒質の内の屈折率は連続的に変動する(即ち,入射光の波長に依存した凹凸部18中の屈折率が連続的に変動する)。
例えば,撮像対象として設定されている光が可視光である場合は,可視光領域は一般に約400nm〜約700nm程度の範囲であるので,隣り合った三角柱どうしのピッチの寸法Dとしては,例えばその最短波長よりも短い300nmに設定される。
【0036】
また,三角柱状の凹凸部18は,その長手方向(稜線)が,垂直CCD部6や転送電極12の長手方向(信号電荷の転送方向)に対してほぼ平行に揃うように形成されており,入射光の互いに直交するP偏光成分とS偏光成分のような2つの偏光成分のうち,例えば,スミアやクロストーク,さらには混色のようなノイズ成分となる無効電荷を発生させる要因となる度合いの高い偏光成分(P偏向成分)の光電変換部3への入射光量を減少させることができ,また,スミアを発生させる要因となる度合いの低い光の偏光成分(S偏向成分)の反射をさらに確実に低減し,相対的にスミアを発生させる要因となる度合いの低い光の透過率を向上することができる構成となっている。
【0037】
このように,スミアの発生要因となる度合いの低い光の透過率を向上させる一方,スミアの発生要因となる度合いの高い光の透過率は向上させないようにしているので,入射光全体の光量の増大に対して相対的にスミアの発生要因となる光量が減少することとなり,その結果,光電変換部3の全受光量におけるノイズの要因となる光の相対的な割合を低減させて,実質的なS/N比の改善を達成することができる。
尚,図2中,光電変換部3において,実線は凹凸部18を構成している三角柱の底辺を表しており,一点鎖線はその三角柱の頂辺(稜線)を表している。
【0038】
また,このような構成の三角柱状の凹凸部18が,半導体基板1の表面(界面)に形成された場合,基本的に単結晶シリコン(Si)からなる光電変換部3と,その上の例えばシリコン酸化膜(SiO2)からなる絶縁膜11との界面における,実質的な屈折率が,その三角柱の稜線から半導体基板1の底部側へと徐々に変化して行く構成となる。
即ち,図4A及び図4Bに示すように,単結晶シリコン(Si)の屈折率n(Si)とシリコン酸化膜の屈折率n(SiO2)とを比較すると,n(SiO2)<n(Si)であるので,三角柱の稜線から半導体基板1の底部側へと(入射光の進入経路で外部から光電変換部3の深部へと向かうにつれて)実質的な屈折率が連続的に単調増加して行く構成となる。
【0039】
これにより,従来の一般的な固体撮像装置の場合のように,光電変換部の表面と絶縁膜との界面が平坦に形成されて,その界面で断続的に(離散量的に)屈折率が変化している構成と比較して,光電変換部の表面と絶縁膜との界面における入射光の反射を大幅に低減することができる。従って,光電変換部3への最終的な入射光量を増大させて,光電変換部3の感度を向上することが可能となる。」





















第6 対比・判断
1 本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「裏面2b」,「表面2a」,「半導体基板2」が,それぞれ,本願発明1の「第1面」,「第2面」,「基板」に対応する。
そして,引用発明の「画素領域3」は,「光電変換機能を有する受光部としてのフォトダイオード6」を有する「画素5」を有するから,本願発明1の「入射光を光電変換する光電変換領域」に相当する。

(イ)引用発明の「反射防止膜20」は,「シリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜」であり,絶縁膜であることは明らかであるから,本願発明1の「第1の絶縁膜」に対応する。
ここで,引用文献1の図1を参照すると,引用発明の「反射防止膜20」には,「反射防止膜20」と「凹凸構造30」とが接する部分に,断面視で,「凹凸構造30」の「突起31」とその間の「反射防止膜20」とが交互に設けられている層と,その上に接するように設けられた「反射防止膜20」のみが設けられている層が存在すると認められる。
そして,引用発明の該「突起31とその間の反射防止膜20とが交互に設けられている層」が,本願発明1の「断面視において前記基板の一部の領域と第1の絶縁膜とが交互に設けられた第1層」に対応し,引用発明の該「反射防止膜20のみが設けられている層」が,本願発明1の「前記第1層の前記光入射面側と接するように設けられた第2層」に対応し,両者は「前記第2層は,前記第1の絶縁膜のみを有」する点で一致する。

(ウ)引用発明の「パシベーション膜16」は,引用文献1の図1を参照すると,「反射防止膜20」の上に,「半導体基板2」の全面に設けられているから,本願発明1の「第3層」と,「前記光電変換領域を覆い,かつ,前記第2層の前記光入射面の上方に設けられ」ている点で一致する。
また,引用発明の「パシベーション膜16」は,「シリコン酸化膜(SiO2膜)等の無機膜」であり,絶縁膜であることは明らかであるから,本願発明1の「第3層」と「第2の絶縁膜を有する」点でも一致する。

(エ)引用発明の「溝部40」は,「互いに隣り合う画素5間に,行列状に配置される画素5間の境界に沿って格子状」に設けられているから,本願発明1の「前記光電変換領域と前記光電変換領域に隣接する他の光電変換領域との間に設けられたトレンチ」に相当し,両者は「前記半導体基板に設けられた複数の各画素を取り囲むように設けられ」ている点でも一致することは明らかである。

(オ)引用発明の「半導体基板2」における「凹凸構造30」は,「角錐状の突起31」を有し,ここで,引用文献1の図1も参照すると,「凹凸構造30」の断面視における幅は,「裏面2b」から「表面2a」に向かうにつれて徐々に大きくなっているから,引用発明の「半導体基板2」と本願発明1の「基板」とは,「前記基板の一部の領域の断面視における幅は,前記第1面から前記第2面に向かうにつれて段階的に,または徐々に大きくなる」点で一致する。

イ 以上から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。
<一致点>
「 光入射面である第1面と前記第1面と反対側の第2面とを有する基板と,
前記基板に設けられた,入射光を光電変換する光電変換領域と,
前記基板の前記第1面側で,断面視において前記基板の一部の領域と第1の絶縁膜とが交互に設けられた第1層と,
前記第1層の前記光入射面側と接するように設けられた第2層と,
前記光電変換領域を覆い,かつ,前記第2層の前記光入射面の上方に設けられた第3層と,
前記光電変換領域と前記光電変換領域に隣接する他の光電変換領域との間に設けられたトレンチとを有し,
前記第2層は,前記第1の絶縁膜のみを有し,
前記第3層は,第2の絶縁膜を有し,
前記トレンチは,前記半導体基板に設けられた複数の各画素を取り囲むように設けられ,
前記基板の一部の領域の断面視における幅は,前記第1面から前記第2面に向かうにつれて徐々に大きくなる
固体撮像装置。」

<相違点1>
本願発明1は「前記基板の屈折率は,前記第1の絶縁膜の屈折率よりも大きく」,「前記第1の絶縁膜の屈折率は,前記第2の絶縁膜の屈折率よりも大きく」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1は「前記第1の絶縁膜は固定電荷を有する膜であ」ると特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

<相違点3>
「前記基板の一部の領域の断面視における幅」に関して,本願発明1は「前記第1面から前記第2面に向かうにつれて段階的に,または徐々に大きくなる」と特定されているのに対し,引用発明は,段階的に大きくなる点について特定されていない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて上記相違点2について先に検討する。

(ア)引用発明の「反射防止膜20」は「シリコン窒化膜(SiN膜)等の無機膜」ではあるが,「固定電荷を有する膜」とすることは記載されていない。
ここで,引用文献1の段落0148−0154等には,「半導体基板2とこの半導体基板2に対して凹凸構造30が存在する側,つまり本実施形態の場合裏面2b側に設けられる積層構造を構成する膜のうち最も半導体基板2側の膜との間に」「中間膜50」を設ける点が,また,段落0160−0164等には,「中間膜50」を「負の固定電荷を有する膜として形成する」点が記載されている。
しかしながら,該「中間膜50」は,引用文献1の段落0150に「半導体基板2の裏面2b側に対して,少なくとも凹凸構造30を覆い,凹凸構造30を二層構造とするように形成されればよい。」と記載されるように,「凹凸構造30」を二層構造とするために設けられるものである。
すると,この構成を引用発明に適用しても,「半導体基板2」と「反射防止膜20」との間に「中間膜50」を設けることになり,「反射防止膜20」を「中間膜50」に置き換えて「第1の絶縁膜」とする動機もあるとはいえず,本願発明1の相違点2に係る構成に至らない。

(イ)そして,上記相違点2に係る本願発明1の構成は,上記引用文献2−5,Aにも記載されておらず,また,本願の優先日において当該技術分野における周知技術であるともいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献2−5,Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2−6について
本願発明2−6は,本願発明1の全ての構成要素を備える従属請求項であり,上記相違点2に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2−5,Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1,2について
令和 3年 9月 7日付けの手続補正により,本願発明1−6は,上記「第6 対比・判断」における相違点2に係る構成を有するものとなった。
すると,本願発明1−6は,引用文献Aに記載の発明とはいえない。
そして,上記「第6 対比・判断」で検討したように,本願発明1−6は,当業者であっても,原査定における引用文献A,3,2,5に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由1,2を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 理由1について
令和 3年 9月 7日付けの手続補正により,本願発明1−6は,上記「第6 対比・判断」における相違点2に係る構成を有するものとなった。
そして,上記「第6 対比・判断」で検討したように,本願発明1−6は,当業者であっても,当審拒絶理由における引用発明及び引用文献2−5に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,当審拒絶理由の理由1を維持することはできない。

2 理由2について
令和 3年 9月 7日付けの手続補正により,請求項2が削除されたことにより,当審拒絶理由の理由2は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-19 
出願番号 P2017-521814
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小川 将之
発明の名称 固体撮像装置  
代理人 西川 孝  
代理人 三浦 勇介  
代理人 稲本 義雄  
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