• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1386820
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-19 
確定日 2022-07-14 
事件の表示 特願2017− 36536「ねじ付きヒンジキャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月13日出願公開、特開2018−140809〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月28日に出願された特願2017−36536号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和2年 7月29日付け 拒絶理由通知
令和2年 9月24日 意見書及び手続補正書の提出
令和2年12月11日付け 拒絶査定
令和3年 3月19日 本件審判請求、同時に手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「容器本体の口筒部に螺合されるキャップ本体と、ヒンジを介して連設される蓋体とからなるねじ付きヒンジキャップであって、
キャップ本体は、内周面に、容器本体の口筒部に螺合するねじ部が形成された外周筒部を有し、
蓋体は、頂壁と、頂壁の周縁部から垂設される側周壁とを有し、
蓋体には、ヒンジの反対側に、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内に収まるように、指掛け部が設けられているとともに、
ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となるように、キャップ本体のヒンジより下方周辺の外周筒部に下切欠面および蓋体のヒンジより上方周辺の側周壁に上切欠面が、それぞれ形成され、
下切欠面は、外周筒部の下端面に達せず、切欠きのない外周筒部があることを特徴とするねじ付きヒンジキャップ。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「容器本体の口筒部に螺合されるキャップ本体と、ヒンジを介して連設される蓋体とからなるねじ付きヒンジキャップであって、
キャップ本体は、内周面に、容器本体の口筒部に螺合するねじ部が形成された外周筒部を有し、
蓋体は、頂壁と、頂壁の周縁部から垂設される側周壁とを有し、
蓋体には、ヒンジの反対側に、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内に収まるように、指掛け部が設けられているとともに、
ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となるように、キャップ本体のヒンジより下方周辺の外周筒部に下切欠面および蓋体のヒンジより上方周辺の側周壁に上切欠面が、それぞれ形成されていることを特徴とするねじ付きヒンジキャップ。」

2.補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明の「下切欠面」を、「下切欠面は、外周筒部の下端面に達せず、切欠きのない外周筒部があ」ると限定するものであって、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア.原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開2003−221053号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容器等の口部に嵌合する合成樹脂製キャップに関するもので、特に、キャップ本体と蓋体とを一体に連結する合成樹脂製キャップのヒンジ構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来合成樹脂キャップにおけるヒンジ構造に関するものとしては種々提案されているが、例えば実用新案登録第2528797号に記載されるものがある。該公報に記載されるものは、キャップ本体側と蓋体との間に間隔を有して一対の連結板片を一体に連結し、かつ連結板片の取り付け部分に凹部を形成したもので、蓋体の閉姿勢状態では連結板片を前記凹部に嵌入するようにして、連結板片がキャップの外周上に突出しないようにしたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した構造はヒンジ部材たる一対の連結板片を間隔を有して配設しているため、また一般にはヒンジ部材は比較的薄肉に形成しているため、開閉作用中に蓋体がヒンジ部材を平面から見た場合の垂直方向に対して捻れ易く、したがって、ヒンジ部材が破損し易いという問題を有している。本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべく、蓋体の開閉作用中に蓋体が捻れ現象を生起することがなく、これによりヒンジの破損を防止することを目的とする。また、両側の連結片及び中央のヒンジを収納しうる凹み面をキャップ本体側及び蓋体側に設けるとともに、ヒンジの上面の位置及びヒンジの長さを特定することにより、蓋体を閉状態にしたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出しないヒンジ構造を提供することを目的とするものである。」

(イ)「【0008】図1に示すように、キャップ本体1と蓋体2は一体に接続したヒンジ部材3により連結されている。前記キャップ本体1は、図1及び図4で示すように、外周筒壁4と、その上面の略中央付近に連設した注出口5と、該注出口5の外側周囲に立ち上がり形成した嵌合壁6とよりなり、該嵌合壁6は、蓋体2を閉じたとき、蓋体2の内周面と密に接触してキャップ本体と蓋体とが適切な保持状態に嵌合するよう構成されている。また、前記蓋体2は、天板7と、その外周端縁に立設する筒状壁8とより構成されている。
【0009】前記ヒンジ部材3は、図示するように、ヒンジ9と外側連結片10,10からなり、蓋体2の開状態で見ると、ヒンジ9は上面が略水平であり、外側連結片10,10は全体には下方外側に向かって傾斜している。 そして、図3に示すように、ヒンジ9と外側連結片10,10との間には切り込み20を設け、これにより、蓋の開閉時の反転運動を良くし、また蓋を閉じたときに外側連結片10,10をキャップ本体の外周筒壁4に沿わせることができるようになっている。
【0010】一方、前記キャップ本体1の外周筒壁上面11の後端縁には、外周に沿って適宜幅に第1切欠段部12が形成されている。該第1切欠段部12は、前記ヒンジ部材3に対応するよう、中央が水平で、両側が斜め下方に傾斜する凹み面13を有している。他方、蓋体2の筒状壁8の下面の後端縁には、前記キャップ本体側の第1切欠段部12に対応して第2の切欠段部14が形成され、該第2切欠段部は、前記と同様の凹み面17を有している。
【0011】前記ヒンジ部材3その一方端部を第1切欠段部12の外周端縁に、他方端部を前記第2切欠段部14の外周端縁にそれぞれ一体に接続し、キャップ本体1と蓋体2を一体に連結している。尚、前記それぞれの接続部に折溝を設けておくと、蓋体2をキャップ本体に嵌合するときにヒンジ部がスムーズに回動する。
【0012】前記ヒンジ9は、図4で示すように、中央部を肉厚に、両側部を薄肉にした断面略逆U字形とし、その一方の下端部をキャップ本体1側に、他方の下端部を蓋体側に、それぞれ一体に接続している。ヒンジ9の中央部を肉厚にすることにより、耐引っ張り力を十分なものとしている。ヒンジ9の上面15は、蓋の開状態で見ると、前記キャップ本体1の外周筒壁4の上面11及び蓋体2の筒状壁8の下面16より下方に位置している。ヒンジ9の下側面21は、蓋体の開状態で見ると、前記第1及び第2の切欠段部12,13のそれぞれの下面13及び15より上方に位置している。
【0013】また、図4乃至図6で示すように、前記外周筒壁4の上面11から第1切欠段部12の凹み面13までの高さ幅C、同じく蓋体2の下面16から第2の切欠段部14の凹み面17までの高さ幅Cは、蓋体2の開状態におけるヒンジ3の内側の全長L、すなわち蓋体の閉状態におけるヒンジの上下方向の全長Lの2分の1以上となっている。
【0014】前記第1切欠段部12と第2切欠段部14の凹み面13,17を、前記ヒンジ9の両側部18,18の厚みDより幅広とし、蓋体2が閉じたとき、ヒンジ9を前記切欠段部内に入り込むようにしている。
【0015】上記構成を有するヒンジ構造の作用について説明する。キャップ本体1に対して蓋体2をヒンジを中心に回転作動せしめると、ヒンジ9がキャップ本体側との接続部で折り曲げられ、さらに、ヒンジ9の中央部が外周筒壁4切欠段部12の垂直方向に立ち上がり、次いでヒンジ9が蓋体側の接続部で折り曲げられ、そして蓋体2の筒状壁の下面16がキャップ本体1の外周筒壁4の上面11に当接して蓋体2はキャップ本体1に嵌合する。尚、前記嵌合状態では、蓋体2の筒状壁8の内周面がキャップ本体1の嵌合壁6の外周面に接触し、嵌合状態を保持している。
【0016】前記蓋体2の嵌合において、第1の切欠段部12の凹み面13までの高さC、同じく第2の切欠段部14の凹み面17までの高さCが、蓋体の閉状態におけるヒンジの上下方向の全長Lの2分の1以上となっていることから、図5に示す閉状態では、ヒンジ9がキャップ本体1の外周筒壁側に引っ張られ、かつヒンジ9は、第1及び第2の切欠段部12,14内に入り込む。」

(ウ)「【0019】
【発明の効果】以上のように本発明の合成樹脂製キャップのヒンジ構造は、ヒンジ部材がヒンジと外側連結片とを有することにより、蓋体の開閉作用中に蓋体が捻れ現象を生起することがなく、ヒンジの破損を防止することができる。さらに、ヒンジ部材を収納しうる凹み面をキャップ本体側及び蓋体側に設けるとともに、ヒンジの長さ及びヒンジの上面の位置を特定することにより、蓋体を閉状態にしたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出することがなく、それによりキャップ本体の外観を向上せしめることができ、また、ベルトコンベヤ等において搬送する場合の障害を回避できるという効果を奏するものである。」

(エ)「

」(【図4A】)

(オ)「

」(【図4B】)

(カ)「

」(【図5】)

イ.上記ア(【0008】、【図1】、【図5】)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
蓋体2には、ヒンジ9の反対側に、指掛け部が設けられていること。

ウ.上記摘記事項ア.(ア)〜(カ)及び認定事項イを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「容器の口部に嵌合するキャップ本体1と、ヒンジ9を介して連結される蓋体2とからなるキャップであって、キャップ本体1は、容器の口部に嵌合する外周筒壁4を有し、蓋体2は、天板7と、天板7の外周端縁に立設する筒状壁8とを有し、前記蓋体2には、前記ヒンジ9の反対側に、指掛け部が設けられているとともに、
前記キャップ本体1の外周筒壁上面11の後端縁には、第1切欠段部12が形成され、前記蓋体2の筒状壁8の下面の後端縁には、第2切欠段部14が形成され、前記ヒンジ9は、蓋体2が閉じたとき、前記第1切欠段部12及び前記第2切欠段部14内に入り込み、蓋体を閉状態としたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出しない、キャップ。」

エ.原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2007−261660号公報には、図面とともに、次の記載がある。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着されるキャップに関し、特に、容器の口部に螺着されるキャップ本体と、該キャップ本体にヒンジを介して連結される蓋体とからなるキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器の口部に装着されるキャップは種々存在するが、例えば、特許文献1には、容器の口部に装着されるキャップ本体と、該キャップ本体にヒンジを介して連結される蓋体とからなるキャップにおいて、そのキャップ本体が、主にチューブ等の容器の口部にねじ込まれて装着されるものが開示されている。
そこで、上述のキャップを容器の口部に螺着させる際には、キャップの螺着作業を効率的に行うために、容器の口部に被せられるキャップを高速回転させる機械設備でチャックすると共に、キャップを高速で所定方向に回転させて容器の口部に螺着していた。
この作業を詳述すると、蓋体がキャップ本体に冠着されると、そのキャップの外周面からヒンジが突出するため、機械設備のチャック部でキャップ本体の外周面をチャックすることができず、蓋体の外周面だけをチャックして、キャップを高速で回転させて、キャップを容器の口部に螺着していた。
【0003】
しかしながら、蓋体だけをチャックして、キャップを高速で回転させた場合には、蓋体から伝達される回転方向の荷重は、キャップ本体と蓋体とを連結しているヒンジを介してキャップ本体に伝達されるため、ヒンジに回転方向の荷重が集中して、該ヒンジを破損させる虞があった。
さらに、キャップが容器の口部に螺着された状態で、容器がキャップ側から落下し、蓋体に衝撃が与えられると、蓋体がキャップ本体に対して位置ずれを起こして、ヒンジ等を破損させる虞があった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、キャップを容器の口部に螺着する際には、蓋体を機械設備でチャックして、キャップを高速で回転させて螺着しているために、キャップ本体と蓋体とを連結しているヒンジに回転方向の荷重が集中して、該ヒンジを破損させる虞があった。
さらに、キャップが容器の口部に螺着された状態で、容器がキャップ側から落下すると、蓋体に衝撃が与えられ、蓋体がキャップ本体に対して位置ずれを起こし、ヒンジ等を破損させる虞があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、キャップ本体と蓋体との間に回転方向の荷重が作用した際、蓋体のキャップ本体に対する回転移動を規制して、ヒンジ等に作用する荷重を低減させるキャップを提供することを目的とする。」

(イ)「【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図1〜図4に基いて詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係るキャップ1は、チューブ等の容器2の口部3に螺着されるものであって、容器2の口部3に螺着される略円筒状のキャップ本体4と、該キャップ本体4にヒンジ6を介して連結される蓋体5 とから構成されている。
【0011】
キャップ本体4は、図1及び図2に示すように、上壁部14の下面から、外側から順に間隔を置いて、胴部8、螺着壁部11及び吐出壁部13が略同心円筒状に下方に突設されている。
胴部8のヒンジ6側とは反対側の外周面に、周方向の所定範囲で、上下方向略中間部から上端に亘って、凹部8aが形成されている。この凹部8aの深さは、図4に示す、蓋体5がキャップ本体4に冠着された状態で、蓋体5に設けた指掛部23aを使用者が容易に指で引っ掛けることが可能な適宜の深さに設定されている。
螺着壁部11の内周面には、容器2の口部3に螺着される螺子部10が形成されている。この螺着壁部11の高さは、胴部8の高さより低く設定されている。また、吐出壁部13の内部には、容器2内の内容物の吐出通路12が設けられており、この吐出壁部13が容器2の口部3内に挿入されるようになる。」

(ウ)「【0013】
蓋体5は、図1及び図2に示すように、開状態において、水平壁部(天井部)20の上面から、外側から順に間隔を置いて、胴部23、壁部22及び閉塞壁部21が略円筒状に上方に突設されている。胴部23の上端部で、ヒンジ6側とは反対側には、使用者が指を引っ掛ける指掛部23aが、周方向の所定範囲で、外方に向って略水平方向に突設されている。
閉塞壁部21の中心は、キャップ本体4の吐出口部15に合わせて、蓋体5の中心から径方向に所定距離ずれた位置に偏心されており、閉塞壁部21の高さは、胴部23の高さよりも高く設定されている。
壁部22は、閉塞壁部21と略同心状に突設されており、壁部22の高さは、胴部23の高さよりも若干低く設定されている。
また、図1に示すように、蓋体5の胴部23の内周面には、キャップ本体4に設けた一対の係合溝部17、17に合わせて、一対の係合突部25、25が蓋体5の径方向、すなわち蓋体5の中心に向う放射方向に対向して突設されている。また、これら一対の係合突部25、25は、図3に示すように、水平壁部(天井部)20の下面から胴部23の内周面に沿って延設される板状体である。」

(エ)「【0016】
さらに、図4に示すように、蓋体5がキャップ本体4に冠着されると、上述したように、ヒンジ6を構成する屈曲自在バンド30の一端側がキャップ本体4の胴部8の一部を構成して、屈曲自在バンド30の他端側が蓋体5の胴部23及び水平壁部20の一部を構成すると共に、ヒンジ6の薄膜ヒンジ31、31は、折り曲げられて、キャップ本体4の胴部8の外周面と略同一周面上になる。さらに、蓋体5に設けた指掛部23aの端面は、キャップ本体4の胴部8の外周面と略同一周面上に位置するようになる。
このように、蓋体5がキャップ本体4に冠着された状態におけるキャップ1は、キャップ本体4の胴部8の外周面を含む同一周面から外方に突設される部位がない形態となる。」

(オ)「【0019】
しかも、本発明の実施の形態に係るキャップ1によれば、キャップ本体4に設けた一対の係合溝部17、17と、蓋体5に設けた一対の係合突部25、25とを、キャップ1の内部に配し、蓋体5がキャップ本体4に冠着された状態におけるキャップ1は、キャップ本体4の胴部8の外周面を含む同一周面から外方に突設される部位がないので、機械設備でキャップ1の蓋体5又はキャップ本体4をチャックする際、チャック場所が限定されることなく、作業が容易となる。」

(カ)「

」(【図1】)

(キ)「

」(【図2】)

(ク)「

」(【図4】)

オ.上記摘記事項エ.(ア)〜(ク)を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
「蓋体5の胴部23のヒンジ6側とは反対側に指掛部23aが設けられ、キャップ本体4の胴部8のヒンジ6側とは反対側に指掛部23aを容易に指で引っ掛けることが可能な適宜の深さの凹部8aが形成され、蓋体5がキャップ本体4に冠着された状態におけるキャップ1は、キャップ本体4の胴部8の外周面を含む同一周面から外方に突設される部位がないので、チャック場所が限定されることなく、キャップを回転させて螺着させる作業が容易となる技術。」

(3)引用発明との対比
ア.本件補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「容器」、「キャップ本体1」、「ヒンジ9」、「蓋体2」、「口部」、「外周筒壁4」、「天板7」、「筒状壁8」、は、それぞれ、本件補正発明の「容器本体」、「キャップ本体」、「ヒンジ」、「蓋体」、「口筒部」、「外周筒部」、「頂壁」、「側周壁」に相当する。
上記(2)ア.(エ)、(オ)、(カ)のとおり、引用文献1【図4A】、【図4B】、【図5】には、キャップの外周筒壁4がねじを有することが図示されているから、引用発明の「容器の口部に嵌合するキャップ本体1と、ヒンジ9を介して連結される蓋体2とからなるキャップであって、キャップ本体1は、容器の口部に嵌合する外周筒壁を有」することは、本件補正発明の「容器本体の口筒部に螺合されるキャップ本体と、ヒンジを介して連設される蓋体とからなるねじ付きヒンジキャップであって、キャップ本体は、内周面に、容器本体の口筒部に螺合するねじ部が形成された外周筒部を有」することに相当する。
引用発明の「前記蓋体2には、前記ヒンジ9の反対側に、指掛け部が設けられている」ことは、本件補正発明の「蓋体には、ヒンジの反対側に、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内に収まるように、指掛け部が設けられている」ことと、「蓋体には、ヒンジの反対側に、指掛け部が設けられている」ことの限りで一致する。
引用発明の「キャップ本体1の外周筒壁上面11の後端縁には、第1切欠段部12が形成され、前記蓋体2の筒状壁8の下面の後端縁には、第2切欠段部14が形成され、前記ヒンジ9は、蓋体2が閉じたとき、前記第1切欠段部12及び前記第2切欠段部14内に入り込み、蓋体を閉状態としたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出しない」ことは、本件補正発明の「ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となるように、キャップ本体のヒンジより下方周辺の外周筒部に下切欠面および蓋体のヒンジより上方周辺の側周壁に上切欠面が、それぞれ形成され、下切欠面は、外周筒部の下端面に達せず、切欠きのない外周筒部がある」ことと、「ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となる」ことで共通し、その限りで一致する。

イ.そうすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「容器本体の口筒部に螺合されるキャップ本体と、ヒンジを介して連設される蓋体とからなるねじ付きヒンジキャップであって、
キャップ本体は、内周面に、容器本体の口筒部に螺合するねじ部が形成された外周筒部を有し、
蓋体は、頂壁と、頂壁の周縁部から垂設される側周壁とを有し、
蓋体には、ヒンジの反対側に、指掛け部が設けられているとともに、
ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となる、
ねじ付きヒンジキャップ。」
<相違点1>
蓋体には、ヒンジの反対側に、指掛け部が設けられていることについて、本件補正発明では、「蓋体には、ヒンジの反対側に、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内に収まるように、指掛け部が設けられている」のに対し、引用発明では、蓋体2には、ヒンジ9の反対側に、指掛け部が設けられている点。
<相違点2>
ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となることについて、
本件補正発明が、「ヒンジは、閉蓋状態の上面視でキャップ外径内となるように、キャップ本体のヒンジより下方周辺の外周筒部に下切欠面および蓋体のヒンジより上方周辺の側周壁に上切欠面が、それぞれ形成され、下切欠面は、外周筒部の下端面に達せず、切欠きのない外周筒部がある」のに対して、
引用発明が、「キャップ本体1の外周筒壁上面11の後端縁には、第1切欠段部12が形成され、前記蓋体2の筒状壁8の下面の後端縁には、第2切欠段部14が形成され、前記ヒンジ9は、蓋体2が閉じたとき、前記第1切欠段部12及び前記第2切欠段部14内に入り込み、蓋体を閉状態としたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出しない」点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。
ア.<相違点1>について
引用文献1には、「蓋体を閉状態にしたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出することがなく、それによりキャップ本体の外観を向上せしめることができ、また、ベルトコンベヤ等において搬送する場合の障害を回避できる」(上記(2)ア.(ウ)【0019】)と記載され、引用文献3には、「蓋体5がキャップ本体4に冠着された状態におけるキャップ1は、キャップ本体4の胴部8の外周面を含む同一周面から外方に突設される部位がないので、機械設備でキャップ1の蓋体5又はキャップ本体4をチャックする際、チャック場所が限定されることなく、作業が容易となる」(上記(2)エ.(オ)【0019】)と記載されており、引用発明及び引用文献3記載事項は、ヒンジ又は指掛け部をキャップの外周面上に突出させない態様とすることで技術が共通しており、外観の向上や機械設備による作業性の向上は周知の課題であるところ、引用発明に引用文献3記載事項を適用することで、相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。

イ.<相違点2>について
引用発明の「第1切欠段部12」及び「第2切欠段部14」の「段部」が「面」を備えることは明らかであるから、「第1切欠段部12」は、ヒンジより下方周辺の外周筒部に下切欠面を形成するものであり、「第2切欠段部14」は、ヒンジより上方周辺の側周壁に上切欠面を形成するものである。 そして、「第1切欠段部12」は、「外周筒壁4」の下端面に達しないものであるから、その配置により「切り欠き」のない「外周筒壁4」が形成されることも明らかである。
したがって、相違点2は実質的な相違点ではない。

また、引用文献1は、蓋体を閉状態にしたとき、ヒンジがキャップ本体の外周面上に突出しないヒンジ構造を提供することを目的とするところ(【0003】)、ヒンジ及びヒンジ周辺を上面視でキャップ外径内に収まるように径方向内方へ移動した形状とすることは、課題解決手段として、当業者が設計上検討する具体化手段の一つに過ぎないものである。そうすると、引用発明において、上記移動した形状を採用することは設計事項であるし、移動により生じたキャップの消失部分を切欠面の形成として、相違点2に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。

ウ.そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3記載事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものであり、格別顕著なものということはできない。

エ.したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許受けることができないものである。

3.本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜6に係る発明は、令和2年9月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2[理由]1.(2)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、引用文献1、3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許受けることができない、というものである。

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、3の記載事項は、第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から、「下切欠面」に係る限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、第2の[理由]2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献3記載事項に基いて、当業者が容易に発明することができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-04-26 
結審通知日 2022-05-10 
審決日 2022-05-31 
出願番号 P2017-036536
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 藤井 眞吾
塩治 雅也
発明の名称 ねじ付きヒンジキャップ  
代理人 佐野 整博  
代理人 齋藤 信人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ