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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1386838
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-30 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2018−516964「端末装置、基地局装置、および、通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月16日国際公開、WO2017/195660、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2017年(平成29年)4月28日(優先権主張 平成28年5月12日)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年 8月21日 手続補正書及び上申書の提出
令和2年 6月 4日付け 拒絶理由通知書
令和2年 8月26日 意見書及び手続補正書の提出
令和2年11月19日付け 拒絶査定
令和3年 3月30日 審判請求書及び手続補正書の提出
令和3年 9月 3日 上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


●理由1及び理由2について

・請求項1ないし4に対して,引用文献1

<引用文献等一覧>
1. Panasonic,Discussion on reference signal design for shortened TTI,3GPP TSG-RAN WG1#84b R1-162531,3GPP,2016.04.01

第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は,令和3年3月30日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータとを、無線リソース制御信号を用いて受信する受信部と、
前記sPDCCHを復号する復号化部と
を備え、
前記sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである、端末装置。
【請求項2】
ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータとを生成する無線リソース制御部と、
前記第1のパラメータと、前記第2のパラメータとをRRC信号を用いて送信し、前記sPDCCHを送信する送信部
を備え、
前記sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである、基地局装置。
【請求項3】
端末装置における通信方法であって、
無線リソース制御信号を用いて、ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータとを受信するステップと、
前記sPDCCHを復号するステップと
を有し、
前記sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである、通信方法。
【請求項4】
基地局装置における通信方法であって、
ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータとを生成するステップと、
前記第1のパラメータと、前記第2のパラメータとをRRC信号を用いて送信するステップと、
前記sPDCCHを送信するステップと
を有し、
前記sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである、通信方法。」

第4 引用文献,引用発明及び技術的事項
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用され,本願優先日前に公開された引用文献1(Panasonic,Discussion on reference signal design for shortened TTI(当審仮訳:短縮TTIの参照信号の設計の議論),3GPP TSG-RAN WG1#84b R1-162531,3GPP,2016.04.01)には,図面とともに以下の記載がある。(なお,下線は当審で付与した。)

(1)「Example 1: sDMRS design for sPDSCH/sPDCCH as shown in Fig.1
Here the assumption is PDCCH region and TTI length is 1 OFDM symbol. Two OFDM symbols after PDCCH region are used to transmit sDMRSs which are shared by later sTTIs in the same subframe for demodulation. How to map those sDMRSs to different sTTI is FFS. This option could also be applied to other TTI lengths.」(第1頁下から4行目ないし下から1行目)
(当審仮訳:例1:図1に示されるsPDSCH/sPDCCHのsDMRS設計
ここで,PDCCH領域とTTI長は1OFDMシンボルであると仮定する。PDCCH領域の後の2つのOFDMシンボルは,復調のために同じサブフレーム内の後のsTTIにより共有されるsDMRSを送信するために使用される。これらのsDMRSをさまざまなsTTIにマッピングする方法はFFSである。このオプションは他のTTI長にも適用できる。)

(2)Figure 1として以下の図が記載されている。


」(第2頁)

(3)「To use sDMRS for shortened TTI has merit of supporting higher rank and MIMO/beamforming. But it also introduces complexity and overhead. Another possibility is legacy CRS is reused at least for downlink. For example CRSs in 1st OFDM symbol is used for demodulating sTTI located in OFDM symbol #1, #2 and #3. CRS in 4th OFDM symbol is used for demodulating sTTI located in OFDM symbol #4, #5 and #6. So we propose
Proposal 2: CRS which is not later than associated sTTI could be considered for demodulating sPDCCH and sPDSCH. 」(第2頁下から6行目ないし下から1行目)
(当審仮訳:短縮TTIにsDMRSを使用することは,より高いランクとMIMO/ビームフォーミングをサポートするというメリットがある。しかし,それはまた複雑さとオーバーヘッドを導入する。もう1つの可能性は,少なくともダウンリンクのために再利用されるレガシーCRSである。例えば,1番目のOFDMシンボルのCRSは,OFDMシンボル#1,#2及び#3に位置するsTTIを復調するために使用される。4番目のOFDMシンボルのCRSは,OFDMシンボル#4,#5及び#6にあるsTTIを復調するために使用される。そこで私たちは提案する。
提案2:関連するsTTIよりも遅くないCRSを,sPDCCH及びsPDSCHを復調するために考慮することができる。)

(4)Figure 3として以下の図が記載されている。



」(第3頁)

(5)「It is FFS whether both CRS based demodulation and sDMRS base demodulation should be supported or not. If both are supported, RRC signalling would indicate whether legacy CRS based demodulation or sDMRS based demodulation is used when sTTI is configured to UE.」(第3頁第2行ないし第4行)
(当審仮訳:CRSベースの復調とsDMRSベースの復調の両方がサポートされるべきか否かはFFSである。両方がサポートされている場合,RRCシグナリングは,sTTIがUEに設定されているときに,レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示す。)

引用文献1の上記記載,及び通信分野における技術常識を考慮すると,次のことがいえる。

ア 上記「(1)」の「sPDSCH/sPDCCHのsDMRS設計
・・・(中略)・・・PDCCH領域の後の2つのOFDMシンボルは,復調のために同じサブフレーム内の後のsTTIにより共有されるsDMRSを送信するために使用される。」との記載によれば, sPDCCHのsDMRS設計として記載されていることから,sPDCCHを復調するためにsDMRSを使用することが記載されているといえる。

イ 上記「(3)」の「1番目のOFDMシンボルのCRSは,OFDMシンボル#1,#2及び#3に位置するsTTIを復調するために使用される。4番目のOFDMシンボルのCRSは,OFDMシンボル#4,#5及び#6にあるsTTIを復調するために使用される。」及び「関連するsTTIよりも遅くないCRSを,sPDCCH及びsPDSCHを復調するために考慮することができる。」との記載によれば,sPDCCHを復調するためにCRSを使用することが記載されているといえる。

ウ 上記「(5)」の「両方がサポートされている場合,RRCシグナリングは,sTTIがUEに設定されているときに,レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示す。」との記載,及び,RRCシグナリングをUEが受信することが技術常識であることを考慮すると,UEは,レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示すRRCシグナリングを受信するものであり,RRCシグナリングは,レガシーCRSベースの復調が使用されていること,又はsDMRSベースの復調が使用されていることを示すものであるといえる。

したがって,上記「ア」ないし「ウ」を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という)が記載されていると認められる。

「sPDCCHを復調するためにsDMRSを使用し,sPDCCHを復調するためにCRSを使用し,レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示すRRCシグナリングを受信するものであり,
RRCシグナリングは,レガシーCRSベースの復調が使用されていること,又はsDMRSベースの復調が使用されていることを示すものである,UE。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「sPDCCH」は,本願発明1の「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)」に相当する。また,RRCは無線リソース制御のことであることは技術常識であるから,引用発明の「RRCシグナリング」は,本願発明1の「無線リソース制御信号」に相当する。
また,引用発明の「レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示すRRCシグナリング」に,「レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示す」パラメータが含まれることは明らかであり,引用発明の「UE」が,RRCシグナリングを用いて当該パラメータを受信することも,そのための受信部を備えることも明らかである。
してみれば,本願発明1の「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータとを、無線リソース制御信号を用いて受信する受信部」と,引用発明の「sPDCCHを復調するためにsDMRSを使用し,sPDCCHを復調するためにCRSを使用し,レガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示すRRCシグナリングを受信するもの」であることとは,パラメータを,無線リソース制御信号を用いて受信する受信部である点で共通する。

イ 引用発明の「レガシーCRSベースの復調が使用されていること」は,本願発明1の「CRS−basedトランスミッションスキーム」に含まれ,引用発明の「sDMRSベースの復調が使用されていること」は,本願発明1の「DMRS−basedトランスミッションスキーム」に含まれる。また,引用発明の「レガシーCRSベースの復調」又は「sDMRSベースの復調」は,「sPDCCH」を復調するものであることを踏まえると,本願発明1の「前記sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである」ことと,引用発明の「RRCシグナリングは,レガシーCRSベースの復調が使用されていること,又はsDMRSベースの復調が使用されていることを示すものである」こととは,sPDCCHに対するトランスミッションスキームは,CRS−basedトランスミッションスキームと,DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである,との点で共通する。

ウ 引用発明の「UE」は,本願発明1の「端末装置」に含まれる。

したがって,上記「ア」ないし「ウ」を総合すれば,本願発明1と引用発明は,以下の点で一致し,また相違する。

<一致点>
「パラメータを、無線リソース制御信号を用いて受信する受信部と、
を備え、
sPDCCHに対するトランスミッションスキームは、CRS−basedトランスミッションスキームと、DMRS−basedトランスミッションスキームのうちのいずれかである、端末装置。」

<相違点1>
無線リソース制御信号を用いて受信するパラメータが,本願発明1は,「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータ」であるのに対して,引用発明においてはレガシーCRSベースの復調又はsDMRSベースの復調が使用されているかを示すが,当該発明特定事項について特定されていない点。

<相違点2>
本願発明1の端末装置は「前記sPDCCHを復号する復号化部」を備えるものであるのに対して,引用発明においては当該発明特定事項について特定されていない点。

したがって,本願発明1と引用発明は,上記相違点1及び相違点2で相違するから,本願発明1は引用発明であるとはいえない。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み,まず,上記相違点1について検討する。
上記相違点1に係る,無線リソース制御信号を用いて受信するパラメータが「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータ」であるという発明特定事項は,引用文献1には記載も示唆もされておらず,また通信分野における周知技術であるともいえない。
よって,引用発明において,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者といえども,容易に想到し得たとはいえない。
したがって,上記相違点2について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても,引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2は,本願発明1に対応する基地局装置の発明であり,本願発明1の上記相違点1に係る,無線リソース制御信号を用いて受信するパラメータが「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータ」であるという発明特定事項に対応する構成を少なくとも備えるものであるから,本願発明1と同様の理由により,引用発明であるとはいえず,また,当業者であっても,引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また,本願発明3及び本願発明4は,本願発明1又は本願発明2に対応する通信方法の発明であり,本願発明1又は本願発明2の発明特定事項に対応する発明特定事項を備えるものであるから,本願発明1又は本願発明2と同様の理由により,引用発明であるとはいえず,また,当業者であっても,引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 原査定についての判断
令和3年3月30日にされた手続補正により,本願発明1ないし本願発明4はいずれも,無線リソース制御信号を用いて受信するパラメータが「ショート物理下りリンク制御チャネル(sPDCCH)に対するトランスミッションスキームを示す第1のパラメータと、ショート物理下りリンク共用チャネル(sPDSCH)に対するトランスミッションスキームを示す第2のパラメータであって、前記第1のパラメータと異なるパラメータ」であるという発明特定事項,又は対応する発明特定事項を,少なくとも備えるものとなっている。してみれば,上記「第5」の「1」及び「2」で説示したとおり,本願発明1ないし本願発明4は引用発明であるとはいえず,また,当業者であっても,本願発明1ないし本願発明4は,引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって,原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-08 
出願番号 P2018-516964
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
森田 充功
発明の名称 端末装置、基地局装置、および、通信方法  
代理人 三木 雅夫  
代理人 覚田 功二  
代理人 三木 雅夫  
代理人 覚田 功二  
代理人 野村 進  
代理人 西澤 和純  
代理人 西澤 和純  
代理人 野村 進  

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