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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1386865
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-14 
確定日 2022-07-20 
事件の表示 特願2019−508904「血栓回収器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日国際公開、WO2018/051181、令和 1年10月17日国内公表、特表2019−528824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)9月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年(平成28年)9月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年 2月14日付け:拒絶理由通知書
令和2年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和2年12月 3日付け:拒絶査定
令和3年 4月14日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出

第2 令和3年 4月14日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年 4月14日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有し、第1の直径を有する収縮状態と第2の直径を有する展開状態とを選択可能であり、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい略円筒状の回収器本体と、
前記回収器本体から遠位方向に延在する複数の遠位アーム(120、320)と、
前記回収器本体の前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記遠位アーム(120、320)のそれぞれが取り付けられた1つ又は複数の取付け点を有する展開部材(110、111、340)と
を有し、
前記展開部材(110、111、340)は、前記複数の遠位アーム(120、320)を介して前記回収器本体の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により前記回収器本体に外向きの力を生成するように構成される
ことを特徴とする血栓回収器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年 7月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有し、第1の直径を有する収縮状態と第2の直径を有する展開状態とを選択可能であり、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい略円筒状の回収器本体と、
複数の遠位アームを介して前記回収器本体の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により前記回収器本体に外向きの力を生成するように構成される展開部材と
を有する血栓回収器。」

2 本件補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数の遠位アーム」及び「展開部材」について、上記1(1)のとおりの限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

(2)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(3)引用文献の記載事項、認定事項
ア 引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特表2014−525796号には、次の記載がある(下線は、当審で付与した。)。
「【0032】
本発明は、概ね、血管などの身体の内腔において使用されるデバイス、及びその使用方法に関する。いくつかの実施形態において、デバイスは、内腔を拡張するため及び/又は内腔から閉塞/凝血を除去するために身体の内腔に配置されてもよい。治療を必要とする身体の内腔の部分にある間、操作者は、内腔を拡張するために及び/又は閉塞/凝血を係合するためにデバイスを操作することができる。
【0033】
本発明のいくつかの態様は、脳卒中を含むが、これに限定されない血管の疾患を治療するために構成されたデバイス及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、デバイス及び方法は、血管から閉塞/凝血を除去することによって虚血性脳卒中に関連する疾患を治療するように及び/又は血管の血流を再開するために潜在的な狭窄のある血管を再開通させるように構成される。」

「【0047】
いくつかの実施形態では、再構成可能要素に用いられるストラットの直径は約0.0005インチから0.1インチ(12.5μmから2500μm)の間で変化してもよい。いくつかの他の実施形態では、再構成可能要素に用いられるワイヤの直径は約0.0005インチから0.1インチ(12.5μmから2500μm)の間で変化してもよい。再構成可能要素は、一般的に可撓性があり、弾性又は超弾性を有している。したがって再構成可能要素の構成は、再構成可能であることができる。再構成可能要素は、一般に、「収縮(すなわち軸方向に拡張した、折り畳まれた又は閉じられた)」構成、「弛緩(すなわち広げられた又は開かれた)」構成、及び「拡張(すなわち半径方向に拡張した又は半径方向に膨張した)」構成と呼ばれる少なくとも3つの異なる構成を有している。再構成可能要素の完全な収縮構成は、一般に、その軸方向の長さが最長になる一方で再構成可能要素の外径が最小になった状態を表す。デバイスが、導入シース又はマイクロカテーテル内にある場合には、再構成可能要素は収縮構成にある。再構成可能要素が、マイクロカテーテル又は導入シースの外に押し出され、圧縮力がなくなった、つまりいかなる抑制もなくなった場合、再構成可能要素は、弛緩状態にある。再構成可能要素の拡張構成は、一般に、再構成可能要素の外径がさらに拡張された状態を表す。再構成可能要素の構成は、制御要素及び支持要素によって、収縮状態又は弛緩状態から拡張状態への制御をされることができる。・・・」

「【0078】
デバイスは、再構成可能要素のワイヤ/ストラット(410)及び制御要素(10)に結合していてもよい支持要素(420)をさらに含む。例えば、図7に示すように、支持要素(420)は、コネクタ(430及び/又は451)を介して制御要素(10)に結合していてもよい。いくつかの実施形態では、支持要素(420)は、実質的に固定化されて制御要素(10)の遠位端と結合している。したがって、制御要素(10)が近位側に引っ張られるのに伴い、支持要素(420)の遠位端が近位側に引っ張られてもよい。図3及び図4に示すように、支持要素(420)は、再構成可能要素(410)に取り付けられてもよい。この実施形態では、再構成可能要素(410)に取り付けられた支持要素端部は、再構成可能要素(410)を拡大させるために、外側に動くことができる(図3C及び図4Cに示すように)。これは再構成可能要素の半径方向の力を増大させる。他の実施形態では、図3及び図14に示すように、支持要素(420)は、再構成可能要素(410)と同じ材料部品から作られる。したがって、これら2つのコンポーネントの接合は必要ない。この実施形態では、制御要素(10)を近位側に引っ張ることが、支持要素(420)と制御要素(10)との間の角度α(図3C)を広げ、再構成可能要素(410)を拡大させることとなる(図3Dに示すように)。これは再構成可能要素の半径方向の力を増大させる。」

「【0086】
いくつかの実施形態において、再構成可能要素の構成は、内腔から閉塞/凝血を除去及び/又は内腔を拡大するために血管内にて制御される。再構成可能要素が閉塞/凝血を係合すると、デバイスは内腔から引き抜かれ、最終的には身体から引き抜かれる。デバイスが内腔から引き抜かれるとき、閉塞/凝血に係合している拡張可能コンパートメントは、マイクロカテーテル内に部分的に引き戻されてもよく、マイクロカテーテルから遠位側に残されてもよい。閉塞/凝血の付いた拡張可能コンパートメント及びマイクロカテーテルは、同時に大きな内径を有する誘導カテーテル内に引き戻すことができる。マイクロカテーテル、誘導カテーテル、及び拡張可能コンパートメント間の相対的な位置は、蛍光透視法を用いて測定することができる。」

「【0096】
デバイスのさらなる別の実施形態が、図11に示される。この特定の傘型デバイスにおいて、図に見られるように、再構成可能要素(410)は複数のワイヤを含み、管状構造を形成してもよい。複数のワイヤを含んでもよい支持要素は、再構成可能要素の構成を変更するために使用されることができる。支持要素(420)は、制御要素(10)ならびに再構成可能要素(410)と結合していてもよく、会合位置の少なくともいくつかは、マーカー(440)と結合していてもよい。支持要素(420)ならびに再構成可能要素(410)は、制御要素(10)に実質的に固定化されて結合していてもよい。支持要素(420)のすべてのワイヤは、コネクタ(430)を介して制御要素(10)に結合していてもよい。コネクタ(430)は、制御要素に固定されている。したがって、制御要素(10)を近位側に引っ張ったり遠位側に押したりすることも他のワイヤ(すなわち再構成可能要素及び支持要素)にしかるべく作用することができる。」

「【0157】
・・・
450:遠位端コネクタ
・・・」



」(図3A−図3C)



」(図3D)



」(図11)

イ 引用文献の認定事項
上記アに摘記した事項から、以下のことが認定できる
(ア) 図11から、再構成可能要素(410)は両端が開口している円筒状であることが看取できること、及び【0096】の「再構成可能要素(410)は」「管状構造を形成してもよい」との記載から、図11に記載された再構成可能要素(410)は、「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有する円筒状構造」であるといえる。
また、【0086】の「再構成可能要素の構成は、内腔から閉塞/凝血を除去及び/又は内腔を拡大するために血管内にて制御される。再構成可能要素が閉塞/凝血を係合すると、デバイスは内腔から引き抜かれ、最終的には身体から引き抜かれる。」の記載から、再構成可能要素(410)は、凝血を血管内から回収する機能を有するといえる。
(イ) 【0047】の「再構成可能要素は、一般に、「収縮(すなわち軸方向に拡張した、折り畳まれた又は閉じられた)」構成、「弛緩(すなわち広げられた又は開かれた)」構成、及び「拡張(すなわち半径方向に拡張した又は半径方向に膨張した)」構成と呼ばれる少なくとも3つの異なる構成を有している。再構成可能要素の完全な収縮構成は、一般に、その軸方向の長さが最長になる一方で再構成可能要素の外径が最小になった状態を表す。デバイスが、導入シース又はマイクロカテーテル内にある場合には、再構成可能要素は収縮構成にある。再構成可能要素が、マイクロカテーテル又は導入シースの外に押し出され、圧縮力がなくなった、つまりいかなる抑制もなくなった場合、再構成可能要素は、弛緩状態にある。再構成可能要素の拡張構成は、一般に、再構成可能要素の外径がさらに拡張された状態を表す。再構成可能要素の構成は、制御要素及び支持要素によって、収縮状態又は弛緩状態から拡張状態への制御をされることができる。」との記載から、再構成可能要素(410)は、最小の外径の収縮構成、収縮構成の外径より拡張された外径の弛緩構成、弛緩構成の外径より拡張された外径の拡張構成の3状態が選択可能であるといえる。
(ウ) 図11には、再構成可能要素(410)と制御要素(10)に設けられたコネクタ(430)に固定される複数の支持要素(420)が「破線」で記載されているところ、再構成可能要素(410)の遠位端と制御要素(10)に設けられた遠位端コネクタ(450)との間に「破線」が記載されており、当該破線は、上記支持要素(420)と同等の機能を有する支持要素を示していることは明らかである。
そうすると、図11から、再構成可能要素(410)と制御要素(10)に設けられたコネクタ(430)に固定される複数の支持要素(420)(以下「支持要素A」という。)と、再構成可能要素(410)の遠位端と制御要素(10)に設けられた遠位端コネクタ(450)に固定される複数の支持要素(420)(以下「支持要素B」という。)が看取できる。
そして、支持要素Aは、再構成可能要素(410)の内部に配置され、制御要素(10)が備えるコネクタ(430)に固定され、支持要素Bは、再構成可能要素(410)の遠位端から遠位方向に延在するように配置され、制御要素(10)が備える遠位端コネクタ(450)に固定されていることが看取できる。
また、図11から、制御要素(10)は、遠位端コネクタ(450)を再構成可能要素(410)の遠位端よりも遠位側に有していることが看取できる。
(エ)【0078】の「この実施形態では、制御要素(10)を近位側に引っ張ることが、支持要素(420)と制御要素(10)との間の角度α(図3C)を広げ、再構成可能要素(410)を拡大させることとなる(図3Dに示すように)。これは再構成可能要素の半径方向の力を増大させる。」との記載及び図3A−図3Dの図示内容から、制御要素(10)を近位側に引くと支持要素(420)により再構成可能要素(410)が拡張されることが看取できることから、制御要素(10)は、複数の支持要素Aを介して自己に加えられる引っ張り力により再構成可能要素(410)に外向きの力を生成するように構成されているといえる。
また、【0078】には、「支持要素(420)は、実質的に固定化されて制御要素(10)の遠位端と結合している。したがって、制御要素(10)が近位側に引っ張られるのに伴い、支持要素(420)の遠位端が近位側に引っ張られてもよい。」との記載があり、当該記載から、図11の実施形態においても、制御要素(10)は、複数の支持要素Bを介して自己に加えられる引っ張り力により再構成可能要素(410)に外向きの力を生成するように構成されているといえる。
(オ)【0032】の「本発明は、概ね、血管などの身体の内腔において使用されるデバイス」、「閉塞/凝血を除去するために身体の内腔に配置されてもよい。」との記載から、引用文献に記載された「デバイス」は、「血管の閉塞/凝血を除去するためのデバイス」であるといえる。

ウ 引用発明
上記アに摘記した事項及びイの認定事項から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有する円筒状構造であって、最小の外径の収縮構成、当該収縮構成の外径より拡張された外径の弛緩構成、当該弛緩構成の外径より拡張された外径の拡張構成の3構成が選択可能である再構成可能要素(410)と、
前記再構成可能要素(410)の内部に配置され、制御要素(10)が備えるコネクタ(430)に固定される複数の支持要素Aと、
前記再構成可能要素(410)の遠位端から遠位方向に延在するよう配置され、制御要素(10)が備える遠位端コネクタ(450)に固定される複数の支持要素Bと、
前記再構成可能要素(410)の前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記支持要素Bのそれぞれが取り付けられた遠位端コネクタ(450)を有する制御要素(10)と
を有し、
前記制御要素(10)は、複数の支持要素Bを介して前記再構成可能要素(410)の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により再構成可能要素(410)に外向きの力を生成するように構成される
血管の閉塞/凝血を除去するためのデバイス。」

(4)対比・判断
ア 対比
以下、本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「再構成可能要素(410)」は、凝血を血管内から回収する機能を有するから、本件補正発明における「回収器本体」に相当する。
同様に、「再構成可能要素(410)の遠位端から遠位方向に延在するように配置され、制御要素(10)が備える遠位端コネクタ(450)に固定される複数の支持要素B」は「回収器本体から遠位方向に延在する複数の遠位アーム(120、320)」に、「再構成可能要素(410)の前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記支持要素Bのそれぞれが取り付けられた遠位端コネクタ(450)」は「回収器本体から前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記遠位アーム(120、320)のそれぞれが取り付けられた1つ又は複数の取付け点」に、「制御要素(10)」は「展開部材」に、「血管の閉塞/凝血を除去するためのデバイス」は「血栓回収器」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「再構成可能要素(410)」が「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有する円筒状構造であって、最小の外径の収縮構成、当該収縮構成の外径より拡張された外径の弛緩構成、当該弛緩構成の外径より拡張された外径の拡張構成の3構成が選択可能である」態様は、本件補正発明の「回収器本体」が「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有し、第1の直径を有する収縮状態と第2の直径を有する展開状態とを選択可能であり、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい略円筒状」である態様に相当する。
また、引用発明の「制御要素(10)は、複数の支持要素Bを介して前記再構成可能要素(410)の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により再構成可能要素(410)に外向きの力を生成するように構成される」態様は、本件補正発明の「前記展開部材(110、111、340)は、前記複数の遠位アーム(120、320)を介して前記回収器本体の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により前記回収器本体に外向きの力を生成するように構成される」態様に相当する。

イ 判断
以上のことから、本件補正発明と引用発明とは、
「近位端で開口し、遠位端で開口し、長手方向の軸を有し、第1の直径を有する収縮状態と第2の直径を有する展開状態とを選択可能であり、前記第1の直径は前記第2の直径よりも小さい略円筒状の回収器本体と、
前記回収器本体から遠位方向に延在する複数の遠位アームと、
前記回収器本体の前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記遠位アームのそれぞれが取り付けられた1つ又は複数の取付け点を有する展開部材と
を有し、
前記展開部材は、前記複数の遠位アームを介して前記回収器本体の前記遠位端に取り付けられ、自己に加えられる引っ張り力により前記回収器本体に外向きの力を生成するように構成される
血栓回収器。」
で一致するから、両者に相違する点はない。
よって、本件補正発明は、引用発明である。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書において(4.拒絶の理由 4(新規性)について <4−2.検討>)、
「(1b) このような構成によれば、複数の遠位アームそれぞれ(すなわち複数の遠位アーム全て)が、回収器本体の遠位側よりも遠位側に配置された1つ又は複数の取付け点に取り付けられることとなる。その結果、展開部材に引っ張り力が加わる際、当該引っ張り力は、取付け点を介して各遠位アームに伝達されて回収器本体に外向きの力が生成される。これにより、回収器本体の中でも、回収器本体の遠位端に集中的に外向きの力が生成され、血管内壁に対する圧力集中を生じさせて血栓の除去を効果的に行うことが可能となる。」
「(3a) また、原査定では、
「さらに、図11を参照すると、コネクタ450より遠位に支持要素が配置されていることも看取される。」
と判断された。
(3b) この点に関し、文献1の図11では、支持要素420のいくつかは、コネクタ430に取り付けられている。コネクタ430は、再構成可能要素410の本体に取り囲まれた又は同本体の内部に配置された(すなわち、再構成可能要素410の近位端と遠位端の間に配置された)ものである。
そのため、引用発明1は、少なくとも本願発明1の発明特定事項Cを充足しない。よって、本願発明1は、引用発明1を考慮しても新規性を有するものと思料される。」
と主張する。
審判請求人の上記主張は、要するに、下記の点であると認められる。
本件補正発明は、「複数の遠位アームの全てが回収器本体の遠位側よりも遠位側に配置された1つ又は複数の取付け点に取り付けられている」のに対して、引用発明は、「再構成可能要素(410)の内部に配置され、制御要素(10)が備えるコネクタ(430)に固定される複数の支持要素A」を備えている点、即ち、本件補正発明は、引用発明の「支持要素A」に相当するアームを備えていないのに対して、引用発明は「支持要素A」を備えている点で相違する。
なお、審判請求人が相違点と主張する根拠の発明特定事項Cは、特許請求の範囲の請求項1において、
「前記回収器本体の前記遠位端よりも遠位側に配置され、前記遠位アーム(120、320)のそれぞれが取り付けられた1つ又は複数の取付け点を有する展開部材(110、111、340)と」
と、特定するものであり、遠位アーム以外のアームを有するか否かについて何ら特定するものではない。

(イ)審判請求人の主張についての検討
上記主張について検討すると、審判請求人は、本件補正発明は、引用発明の「支持要素A」に相当する構成を備えていないことを相違点として主張するが、本件補正発明は、引用発明の「支持要素A」に相当する構成を有するか否かについては何ら特定されていないものとなっているから、引用発明のように「支持要素A」を備えているものを排除していないし、また審判請求人の主張のとおりに解釈すべき事情も見当たらない。そうすると、引用発明が「支持要素A」を備えていることをもって、本件補正発明と引用発明が相違するとはいえない。
よって、上記審判請求人の主張は採用できない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和2年 7月27日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(2)に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないという理由を含むものである。

引用文献:特表2014−525796号

3 引用文献、引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおりのものである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数の遠位アーム」及び「展開部材」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明であるところ、本願発明も、引用発明である。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 千壽 哲郎
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-09 
結審通知日 2022-02-15 
審決日 2022-03-01 
出願番号 P2019-508904
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 莊司 英史
津田 真吾
発明の名称 血栓回収器  
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所  
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