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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08G
管理番号 1386873
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-20 
確定日 2022-07-21 
事件の表示 特願2015−220809「表示装置及び利用者誘導システム。」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017−91230〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成27年11月10日に出願され、令和元年9月5日付け(発送日:令和元年9月10日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和元年10月7日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年3月12日付け(発送日:令和2年3月17日)で最後の拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年4月24日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年9月17日付け(発送日:令和2年9月29日)で再度最後の拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月8日付け(発送日:令和3年3月23日)で令和2年11月16日の手続補正書でした補正を却下するとともに拒絶査定がされ、これに対して、令和3年4月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、当審において令和4年1月4日付け(発送日:令和4年1月11日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和4年3月8日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和4年3月8日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「施設内において利用者を目的地に向けて誘導する利用者誘導システムであって、
それぞれが前記施設内の異なる場所に設置された複数の表示装置を含み、
各表示装置は、音声入力部を有し、通常時には全ての利用者に共通する前記施設の案内画面を表示し、利用者により目的地が入力されると、前記施設及びその周辺の地図情報以外の他の情報を含む経路検索情報に基づいて現在位置から前記目的地に向かうための経路を決定し、前記利用者が進むべき方向を示す情報と、前記経路と、前記経路又はその近傍に設置された他の表示装置とを表示する、
利用者誘導システム。」

第3.当審において通知した拒絶の理由
当審において令和4年1月4日付けで通知した拒絶理由の理由2の概要は以下のとおりである。

理由2.(進歩性要件違反)
本願の請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

《引用文献等一覧》
1.特開2001−91293号公報
2.特開2013−205222号公報
3.特開2013−167487号公報
4.特開2013−232218号公報

第4.当審の判断
(1)引用発明
ア 引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。以下同様。)。

(ア)「【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0015】図1は本発明の実施の形態の案内装置の構成を示すブロック図であり、図2は図1の案内装置の外観の一例を示す斜視図である。図1,図2において、1は個人情報が格納されている情報格納体、2は情報格納体1から個人情報を入力する個人情報入力部、3はセレクトスイッチ3aおよび表示部3bからなり使用者個人がその目的情報を入力する目的情報入力部、4は通信部、5は制御回路8およびメモリ部9からなる情報選択部、6はスピーカ等からなる出力部、7は案内操作盤である。
【0016】情報格納体1は、例えばICメモリ等によって構成されるICタグからなり、使用者が携帯し、その使用者の個人情報をコード化して記憶している。情報格納体1の個人情報には、情報選択部5で個人を識別するための番号が情報として入っており、また個人のこれまでの行動の経過等の情報も含むものである。
【0017】個人情報入力部2は、例えば、情報格納体1であるICタグから個人情報を読み出すICタグリーダからなる。なお、情報格納体1はICカード等でもよく、例えばICカードの場合、個人情報入力部2にはICカードリーダを用いればよい。
【0018】目的情報入力部3は、ここではセレクトスイッチ3aおよび地理情報等を表示する表示部3bで構成され、表示部3bに表示された地理情報(地図や地名あるいは場所名の一覧表等)をみながら、使用者が表示部3bの画面上の目的とする場所(目的地)に該当するセレクトスイッチ3aを押すことで目的情報が入力される。例えば、表示部3bに表示された地理情報の中に番号が付されてあり、その番号をセレクトスイッチ3aで選択することでその番号が示されている場所を目的情報として入力できる。また、表示部3bの画面上にタッチパネルを設け、タッチパネルをタッチすることで、タッチされた部分に該当する表示部3b上の場所を目的情報として入力するようにしてもよい。この場合は表示部3bおよびタッチパネルが目的情報入力部3である。また、目的情報入力部3として音声認識装置を用い、目的情報の入力を音声によって入力するようにしてもよい。また、使用者が視覚障害者の場合、点字によって目的地を選択できるように、地図上に点字によって目的地名が記載されたものにすればよい。
【0019】通信部4は、個人情報入力部2から入力される個人情報および目的情報入力部3から入力される目的情報を情報選択部5へ送信し、情報選択部5から送信されてくる案内情報を受信し、出力部6へ与える。
【0020】情報選択部5は、制御回路8および情報を格納したメモリ部9からなり、制御回路8が個人情報からその個人を識別(認証)し、個人情報および目的情報に基づいて、予めメモリ部9に格納されている情報からその個人の目的にあった案内情報を選択し通信部4へ送信する。
【0021】出力部6は、通信部4で受信した案内情報を例えばスピーカにより音声で出力する。また、イヤホーンで出力されるようになっていてもよい。ここでは、目的情報として使用者が訪れようとする目的地が入力されているので、例えば、この案内装置の案内操作盤7の設置場所から目的地までの経路が音声により案内されることになる。」

(イ)「【0024】また、本実施の形態では、個人情報入力部2と、目的情報入力部3であるセレクトスイッチ3aおよび表示部3bと、出力部6とを案内操作盤7に設け、その案内操作盤7の近傍に通信部4を配置している。本実施の形態の案内装置は、使用者の目的とする場所へ案内する地理案内を行う案内装置である。例えば県庁等の複雑な建物内の案内装置の場合には、案内操作盤7と通信部4は、例えば県庁等の総合窓口やその他の窓口等に設置され、情報選択部5はそれらとは別室の端末室等に設置される。」

(ウ)「【0028】また、本実施の形態では、出力部6をスピーカやイヤホーン等を用い音声で出力するものとしたが、文字や画像情報として出力するようにしてもよい。さらには音声,文字,画像のうち2つ以上を組み合わせた情報として出力するようにしてもよい。文字または画像情報により案内情報を出力することにより、より正確な、また理解しやすい情報を与えることが可能となる。例えば、文字や画像情報を出力する場合には、表示部3bを出力部と兼用させるような構成もできる。」

(エ)「【0030】また、本実施の形態において、情報選択部5に代えて、個人情報および目的情報に基づいて案内情報を生成し出力する情報生成部を設けることにより、より個人の目的に沿った案内情報を生成し出力することが可能となる。例えば、前述の車検場の場合を例にとると、総合窓口を訪れた使用者は、本来ならば2番窓口を案内されるが、2番窓口が混雑していると予想される場合に特に手続きの順番に支障の出ない別の案内「26番窓口の納税課で重量税を納付してください」等の案内を生成するようにする。このように情報生成部は、各個人のみの情報を管理しているものではなく、受信時の全体の情報より各個人の目的にあった選択肢を選択するものである。これに対し、情報選択部5は予め決められた選択肢の流れを順に追うものである。」

上記記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「県庁等の複雑な建物内において使用者の目的とする場所へ案内する地理案内を行う案内装置であって、
案内操作盤7と通信部4は、県庁等の総合窓口やその他の窓口等に設置され、
案内操作盤7には、個人情報入力部2と、目的情報入力部3であるセレクトスイッチ3aおよび出力部6を兼用する表示部3bとが設けられ、表示部3bに表示された地理情報をみながら、使用者が表示部3bの画面上の目的とする場所に該当するセレクトスイッチ3aを押すことで目的情報が入力され、通信部4は、個人情報入力部2から入力される個人情報および目的情報入力部3から入力される目的情報を情報選択部5へ送信し、情報選択部5は、個人情報および目的情報に基づいて個人の目的にあった案内情報を選択し通信部4へ送信し、情報選択部5から送信されてくる案内操作盤7の設置場所から目的地までの経路に係る案内情報を受信し、出力部6へ与え、出力部6を兼用する表示部3bで文字または画像情報により案内情報を出力する案内装置。」

イ 引用文献2
(ア)「【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、インフラ面でのコストを安くし、通路上に設置される案内表示装置にユーザが指定した目的地までの案内表示を自動的に表示するナビゲーションシステム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、第1の発明は、目的地が入力される情報処理端末と、前記情報処理端末とネットワークを介して接続されるサーバと、前記目的地への経路案内を表示する案内表示装置と、から構成されるナビゲーションシステムであって、前記情報処理端末は、案内表示要求の入力又は前記案内表示装置を検出すると、前記案内表示装置が一定範囲内にあるか判定する判定手段と、前記案内表示装置が一定範囲内にある場合、前記案内表示装置の識別情報及び前記目的地を前記サーバに送信する目的地送信手段と、を具備し、前記サーバは、前記案内表示装置の識別情報から前記案内表示装置の位置を特定する位置特定手段と、前記案内表示装置の位置から前記目的地までの経路を計算する経路計算手段と、前記経路の案内画面を生成する生成手段と、前記案内画面を、前記情報処理端末又は前記ネットワークを介して、前記案内表示装置に送信する案内画面送信手段と、を具備し、前記案内表示装置は、前記案内画面を表示する表示手段、を具備することを特徴とするナビゲーションシステムである。
第1の発明によって、情報処理端末を所持するユーザに対して、通路の分岐点等に設置した案内表示装置に、不要な情報を含まない案内画面を自動的に表示することができる。
【0008】
前記送信手段は、前記案内画面を前記情報処理端末に送信し、前記情報処理端末は、前記サーバから受信した前記案内画面を前記案内表示装置に転送する案内画面転送手段、を更に具備する。
これによって、サーバと案内表示装置の間にネットワーク接続は必要ないため、システム導入のためのインフラが安価となる。
【0009】
前記生成手段は、前記案内表示装置の位置から前記目的地までの距離が一定以内の場合、前記目的地の画像を前記案内画面に含める。
これによって、ユーザは目的地を容易に認識することができる。
【0010】
前記生成手段は、前記距離が一定以上の場合、前記案内表示装置から前記目的地に行くために次にユーザが通る通路を特定し、前記通路の画像、あるいは、前記通路への方向を示す矢印画像と、前記目的地に関する情報を合成し、前記案内画面に含める。
これによって、ユーザはどの通路をどちらに曲がればいいのか、目的地までどのくらい距離があるか等の情報を容易に得ることができる。」

(イ)「【0039】
図9は、通路の方向を示す矢印の画像と目的地名、目的地までの距離を合成した案内画面を案内表示装置9に表示した一例を示す図である。
図9の案内表示装置9に表示される案内画面は、目的地である「A店」は案内表示板の右にある通路を通り、150mの道のりであることを示す。」

(ウ)「【図9】



上記記載事項を総合すると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献2記載事項]
「通路上に設置される案内表示装置にユーザが指定した目的地までの案内表示を自動的に表示するナビゲーションシステムにおいて、目的地に行くために次にユーザが通る通路の方向を示す矢印の画像を表示すること。」

ウ 引用文献3
(ア)「【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係る案内システムを、端末として複数の表示装置を含む、いわゆる道案内システムに適用した場合を例にあげて、図面に基づいて詳述する。本発明に係る道案内システムは、大型の駐車場、ショピングモール等に設置され、道に迷ったユーザが希望する目的地までの道案内を行なう。
【0021】
図1は本発明の実施の形態に係る道案内システム1の概念的構成を示す概念図である。本発明の実施の形態に係る道案内システム1は、複数の表示装置100,200,…800を含んでおり、これらはネットワークNを介して相互接続されており、自機のデータを他機に送信し、また他機からデータを受信出来るように構成されている。 以下においては、本発明の実施の形態に係る道案内システム1が、例えば、数多い店舗が並ぶ大型ショピングモールに設置された場合を例に挙げて説明する。
【0022】
図2は本発明の実施の形態に係る道案内システム1の適用例を示す例示図である。複数の表示装置100,200,…800は、ショピングモールのフロア内の8箇所に適宜分散配置されており、該フロアには4つの入口E1,E2,E3,E4が設けられている。本実施の形態においては、道案内システム1が8つの表示装置を有する場合を例として説明するが、これに限らないことは言うまでもない。」

(イ)「【0054】
経路表示部21は、CPU11による検索の結果に基づき、受け付けた目的地までの最短経路を表示部40に表示する(ステップS106)。図7は本発明の実施の形態に係る道案内システム1における、経路表示画面の一例を示す例示図である。図7の画面においては、ショピングモールの地図データの上に、目的地を表すフラグの絵文字と、現在地を表す人間の絵文字とが示され、現在地から目的地までの経路を矢印にて描画した画像が表示されている。」

(ウ)「【図7】



(エ)(ウ)から経路表示画面には、経路の近傍にある他の表示装置300も表示されていることが看取できる。

上記記載事項を総合すると、引用文献3には以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献3記載事項]

「複数の表示装置100,200,…800を含む道案内システム1において、現在地から目的地までの経路を矢印にて描画した画像と経路の近傍にある他の表示装置300を表示すること。」

(2)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「県庁等の複雑な建物内において使用者の目的とする場所へ案内する地理案内を行う案内装置」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「施設内において利用者を目的地に向けて誘導する利用者誘導システム」に相当し、以下同様に、「個人情報入力部2と、目的情報入力部3であるセレクトスイッチ3aおよび出力部6を兼用する表示部3bとが設けられ」た「案内操作盤7」は「表示装置」に、「案内操作盤7と通信部4は、県庁等の総合窓口やその他の窓口等に設置され」ることは「それぞれが前記施設内の異なる場所に設置された複数の表示装置を含」むことに、「表示部3bに表示された地理情報」は「全ての利用者に共通する前記施設の案内画面」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「セレクトスイッチ3a」と本願発明の「音声入力部」とは、「入力部」という限りにおいて一致し、そうすると、引用発明の「案内操作盤7には、個人情報入力部2と、目的情報入力部3であるセレクトスイッチ3aおよび出力部6を兼用する表示部3bとが設けられ、表示部3bに表示された地理情報をみながら、使用者が表示部3bの画面上の目的とする場所に該当するセレクトスイッチ3aを押すことで目的情報が入力され」ることと、本願発明の「各表示装置は、音声入力部を有し、通常時には全ての利用者に共通する前記施設の案内画面を表示し、利用者により目的地が入力される」こととは、「各表示装置は、入力部を有し、通常時には全ての利用者に共通する前記施設の案内画面を表示し、利用者により目的地が入力される」ことという限りにおいて一致している。
さらに、引用発明の「個人情報及び目的情報」は「経路検索情報」といえるものであるから、引用発明の「通信部4は、個人情報入力部2から入力される個人情報および目的情報入力部3から入力される目的情報を情報選択部5へ送信し、情報選択部5は、個人情報および目的情報に基づいて個人の目的にあった案内情報を選択し通信部4へ送信し、情報選択部5から送信されてくる案内操作盤7の設置場所から目的地までの経路に係る案内情報を受信し、出力部6へ与え、出力部6を兼用する表示部3bで文字または画像情報により案内情報を出力する」ことと、本願発明の「利用者により目的地が入力されると、前記施設及びその周辺の地図情報以外の他の情報を含む経路検索情報に基づいて現在位置から前記目的地に向かうための経路を決定し、前記利用者が進むべき方向を示す情報と、前記経路と、前記経路又はその近傍に設置された他の表示装置とを表示する」こととは、「利用者により目的地が入力されると、経路検索情報に基づいて現在位置から前記目的地に向かうための経路を決定し、案内情報を表示する」という限りにおいて一致している。

してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「施設内において利用者を目的地に向けて誘導する利用者誘導システムであって、
それぞれが前記施設内の異なる場所に設置された複数の表示装置を含み、
各表示装置は、入力部を有し、通常時には全ての利用者に共通する前記施設の案内画面を表示し、利用者により目的地が入力されると、現在位置から前記目的地に向かうための経路を決定し、案内情報を表示する、
利用者誘導システム。」

[相違点1]
入力部について、本願発明では、「音声入力部」であるのに対して、引用発明では、「セレクトスイッチ3a」である点。

[相違点2]
本願発明では、案内情報が「前記利用者が進むべき方向を示す情報と、前記経路と、前記経路又はその近傍に設置された他の表示装置」であるのに対して、引用発明では「文字又は画像情報」である点。

[相違点3]
本願発明では、経路検索情報が「前記施設及びその周辺の地図情報以外の他の情報を含む」のに対して、引用発明では「個人情報及び目的情報」である点。

(3)判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1の段落【0018】には「また、目的情報入力部3として音声認識装置を用い、目的情報の入力を音声によって入力するようにしてもよい。」と記載されているから、引用発明においてセレクトスイッチ3aを音声入力部に置換又は音声入力部を付加することは当業者が容易に気づくことである。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは引用文献1中の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点2について検討する。
引用発明と引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項とは、目的地への案内情報を表示するという点で共通している。そして、引用文献2記載事項の「目的地に行くために次にユーザが通る通路の方向を示す矢印の画像」及び引用文献3記載事項の「現在地から目的地までの経路を矢印にて描画した画像と経路の近傍にある他の表示装置300」が、どちらも文字又は画像情報による案内情報の一形態であることは当業者にとって明らかである。さらに、情報を提示するにあたって、利用者の利便性のため複数の形態の情報を提示することは例を挙げるまでもない周知技術である。
よって、引用発明において文字又は画像情報による案内情報を具体化するにあたり、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項を参照して、「目的地に行くために次にユーザが通る通路の方向を示す矢印の画像」及び「現在地から目的地までの経路を矢印にて描画した画像と経路の近傍にある他の表示装置」を表示することは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、「目的地に行くために次にユーザが通る通路の方向を示す矢印の画像」は、本願発明の「利用者が進むべき方向を示す情報」に相当し、「現在地から目的地までの経路を矢印にて描画した画像と経路の近傍にある他の表示装置」は、本願発明の「前記経路と、前記経路又はその近傍に設置された他の表示装置」に相当する。

よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

上記相違点3について検討する。
引用文献1の段落【0030】には、「例えば、前述の車検場の場合を例にとると、総合窓口を訪れた使用者は、本来ならば2番窓口を案内されるが、2番窓口が混雑していると予想される場合に特に手続きの順番に支障の出ない別の案内「26番窓口の納税課で重量税を納付してください」等の案内を生成するようにする。」と記載されている。このような案内を生成するためには、施設及びその周辺の地図情報以外の情報であるところの、窓口の混雑状況を予想するための情報が経路検索情報に含まれていなければならないことは明らかである。
また、利用者誘導システムである自動車のナビゲージョンシステム等において、通行規制区域があるために利用者の誘導が中断してしまうという状況を避けるために、経路を検索する際に通行規制区域に関する情報を考慮することは例を挙げるまでもない周知技術である。そして、引用発明においても通行規制区域があるために利用者の誘導が中断してしまうという状況は避けなければならないという課題があることは当業者にとって明らかであるから、引用発明にこの周知技術を適用することは当業者が容易に想到し得たことである。

よって、引用発明において、相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは引用文献1中の記載又は周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明が全体として奏する効果も引用発明、引用文献1中の記載、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術から当業者が予測し得た範囲のものであり、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1中の記載、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献1中の記載、引用文献2記載事項、引用文献3記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-12 
結審通知日 2022-05-17 
審決日 2022-06-07 
出願番号 P2015-220809
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 正章
特許庁審判官 鈴木 充
山本 信平
発明の名称 表示装置及び利用者誘導システム。  
代理人 西山 春之  
代理人 奥山 尚一  
代理人 小川 護晃  

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