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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1386903
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-30 
確定日 2022-07-27 
事件の表示 特願2017−566819「GaAsにほぼ合致する格子パラメータを有する基板上に希薄窒化物層を有する光電子検出器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月29日国際公開、WO2016/209836、平成30年 7月12日国内公表、特表2018−518848〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)6月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年6月22日、米国、パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年6月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。
令和2年 7月15日付け:拒絶理由通知書
令和2年10月29日 :意見書の提出
令和2年12月23日付け:拒絶査定
令和3年 4月30日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和3年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
令和3年10月12日 :意見書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1〜26に係る発明は、令和3年4月30日提出の手続補正書により補正された請求項1〜26に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「半導体であって、
GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを伴う基板と、
前記基板を覆う第1のドープされたIII−V層と、
前記第1のドープされたIII−V層を覆う吸収体層であって、
前記吸収体層は、希薄窒化物を備え、前記希薄窒化物は、InxGa1−xNyAs1−y−zSbz(0≦x≦1、かつ、0≦y≦1、かつ、0≦z≦1)を備え、
前記吸収体層は、約0.7eV〜0.95eVの間のバンドギャップを有し、
前記吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する、吸収体層と、
前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII−V層と、
を備える、半導体。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、下記の頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを含むものである。

1.JACKREL David et al., "GaInNAsSb Solar Cells Grown by Molecular Beam Epitaxy", Proc. of 2006 IEEE 4th World Conference on Photovoltaic Energy Conference, 2006年5月7日, pp.783-786

第4 引用文献の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由に引用された「JACKREL David et al., "GaInNAsSb Solar Cells Grown by Molecular Beam Epitaxy", Proc. of 2006 IEEE 4th World Conference on Photovoltaic Energy Conference, 2006年5月7日, pp.783-786」(以下「引用文献」という。)に記載された事項

(1)引用文献には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
ア 「II. EXPERIMENTAL
GaInNAs and GaInNAsSb PIN diodes (Figure 1) were grown at The Solid State Electronics Laboratory at Stanford University on (100) GaAs substrates using a load-locked Varian Mod. Gen II solid-source molecular beam epitaxy (MBE) system with nitrogen supplied by an SVT Associates Model 4.5 RF-plasma cell. Deflection plates were used at the output of the plasma cell to protect the growing film from ion damage [9, 15, 16]. The system and growth details have been reported previously [7]. The unintentionally doped n-type GaInNAs(Sb) materials are all 1 μm thick, composed of approximately 1 to 2% N, approximately 5 to 7% In, and approximately 2 to 6% Sb for the GaInNAsSb samples. The p-type emitter and n-type buffer layer are GaAs with dopant densities equal to roughly 1018cm-3. After growth, annealing was performed on the dilute nitride materials in a similar manner as that required to achieve low threshold current lasers, using a rapid thermal anneal with arsenic outdiffusion limited by a GaAs proximity cap [7]. Solar cell devices were fabricated at The National Renewable Energy Laboratory (NREL), using Au front contacts and annealed Au/Sn/Au back contacts. Internal quantum efficiency spectra were quantified by dividing the external quantum efficiency by (1-R), where R is the measured specular reflectivity. Light current-voltage photovoltaic measurements were performed as described below.」(第1頁右欄「II. EXPERIMENTAL」)
(当審訳: II. 実験
GaInNAsおよびGaInNAsSb PINダイオード(図1)は、スタンフォード大学のThe Solid State Electronics Laboratoryで(100)GaAs基板上にロードロック方式のVarian Modを用いて成長させたもので、GenII固体ソース分子線エピタキシー(MBE)システムを用い、SVT Associates Model 4.5 RF−プラズマセルから窒素を供給して、(100)GaAs基板上に成長させたものである。プラズマセルの出力部には、成長膜をイオンダメージから保護するための偏向板が使用されている[9,15,16]。このシステムおよび成長の詳細については、以前に報告されている[7]。非意図的にドープされたn型GaInNAs(Sb)材料は、いずれも厚さ1μmで、GaInNAsSb試料では約1〜2%のN、約5〜7%のIn、約2〜6%のSbで構成されている。p型エミッタとn型バッファ層はGaAsであり、ドーパント密度は約1018cm−3である。成長後、低閾値電流レーザーの実現に必要なのと同様の方法で希薄窒化物材料のアニールを行い、GaAs近接キャップでヒ素の拡散を制限した急速熱アニールを使用した[7]。太陽電池デバイスは、国立再生可能エネルギー研究所(NREL)で、AuフロントコンタクトとアニールしたAu/Sn/Auバックコンタクトを用いて作製した。内部量子効率スペクトルは,外部量子効率を(1−R)で割ることによって定量化された(Rは測定された鏡面反射率)。光電流−電圧光起電力測定は,以下に示すように行った。)

イ 「V. BACKGROUND DOPING & DEPLETION WIDTH
The background doping density of the GaInNAsSb films is significantly lower than the background in the GaInNAs material. Figure 5 shows the background doping density as a function of the depletion width from capacitancevoltage measurements of both devices. The short-circuit depletion width for the GaInNAs sample is 0.28 μm, while it is 0.44 μm for the GaInNAsSb sample. The wider depletion width partially explains the improved collection efficiency in the GaInNAsSb devices. It is possible that the surfactant properties of antimony are directly responsible for the lower doping density, and therefore the wider depletion widths, by inhibiting the incorporation of impurities from the environment, or by creating new compensating defects. However, the wider depletion region also adversely affects both the Voc and the fillfactor, by increasing the amount of SRH recombination and dark current, as seen in Fig. 4.」(第3頁右欄「V. BACKGROUND DOPING & DEPLETION WIDTH」)
(当審訳: V. バックグラウンドドーピングと空乏幅
GaInNAsSb膜のバックグラウンドドーピング密度は、GaInNAs材料のバックグラウンドよりも大幅に低いことがわかる。図5は、両デバイスの容量電圧測定から得られた空乏幅の関数としてのバックグラウンドドーピング密度を示している。GaInNAs試料では短絡空乏幅が0.28μmであるのに対し、GaInNAsSb試料では0.44μmであることがわかる。この広い空乏幅は、GaInNAsSbデバイスにおける収集効率の向上を部分的に説明するものである。アンチモンの界面活性剤の特性が、環境からの不純物の取り込みを抑制し、新しい補償欠陥の生成によって、低いドーピング密度、したがって広い空乏幅の直接の原因になっている可能性がある。しかし、空乏領域が広くなると、図4に見られるように、SRH再結合や暗電流の量が増加し、Vocとフィルファクターの両方に悪影響を及ぼす。)

「表1


「図1


「図5


(2)図1より、GaAs基板、GaAsバッファ層(n+)、n型GaAs層、GaInNAsSb層及びp型GaAs層を備えるPINダイオードがみてとれる。

(3)上記(1)イのとおり、GaInNAsSb試料の短絡空乏幅は0.44μmであるところ、図5より、その時のバックグラウンドドーピング密度は、略1.00×1015cm−3であることがみてとれる。

(4)表1より、GaInNAsSb層のバンドギャップは、0.92eVとみてとれる。

(5)上記(1)アより、太陽電池デバイスは、図1のPINダイオードより作製されるものと認められる。

2 引用発明
上記1より、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、参考までに、引用発明の認定に用いた引用文献の記載等に係る段落番号等を括弧内に付してある。

<引用発明>
「GaAs基板、GaAsバッファ層(n+)、n型GaAs層、GaInNAsSb層及びp型GaAs層をこの順で備えるPINダイオードより作製される太陽電池デバイスであって、(上記1(2)及び(5))
GaAsバッファ層(n+)、n型GaAs層、GaInNAsSb層及びp型GaAs層は、GaAs基板上に分子線エピタキシー成長により成長させたものであり、
GaInNAsSb層は、非意図的にドープされた層であり、
GaInNAsSb層は、約1〜2%のN、約5〜7%のIn、約2〜6%のSbで構成され、(上記1(1)ア)
GaInNAsSb層のバンドギャップは、0.92eVであり、(上記1(4))
GaInNAsSb層のバックグラウンドドーピング密度は、略1.00×1015cm−3である、(上記1(3))
太陽電池デバイス。」

第5 対比、判断
1 対比
(1)本願発明の「GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを伴う基板」について
本願発明の「基板」は、「GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを伴う」ものであるから「GaAs基板」を含むものと解されるところ、引用発明は「GaAs基板」を備えるものである。
したがって、引用発明の「GaAs基板」は、本願発明の「基板」に相当し、「GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを伴う」との構成を備えるといえる。

(2)本願発明の「前記基板を覆う第1のドープされたIII−V層」について
本願発明の「III−V層」は、「第1のドープされた」ものであるから、「n型」或いは「p型」の層であると理解できるところ、引用発明の「n型GaAs層」は「n型」の層である。
また、本願の【0073】には、「第2の層を覆うものとして本明細書で説明および/または描写される第1の層が、第2の層に直接隣接し得る、もしくは1つまたはそれを上回る中間層が、第1の層と第2の層との間にあることができる。」と記載されており、当該記載を参酌すると、本願発明の「前記基板を覆う」との特定は、中間層を介した構成を含むものと解されるところ、引用発明の「n型GaAs層」は、「GaAs基板」上に「GaAsバッファ層(n+)」を介して「分子線エピタキシー成長により成長させたもの」であるから、「GaAs基板」を覆っているものと理解できる。
したがって、引用発明の「n型GaAs層」は、本願発明の「III−V層」に相当し、「前記基板を覆う第1のドープされた」との構成を備えるといえる。

(3)本願発明の「前記第1のドープされたIII−V層を覆う吸収体層」について
本願発明の「吸収体層」について、本願の【0038】には、「吸収体層および吸収媒体という用語は、光子を吸収する任意の層を説明するために使用されることができる。」と記載されている。
一方、引用発明は「PINダイオードより作製される太陽電池デバイス」であるから、当該「I層」が太陽光を吸収する層と解される。そして、引用発明の「GaInNAsSb層」は、「非意図的にドープされた」層であり、「I層」であることは明らかといえるので、引用発明の「GaInNAsSb層」は、「太陽光を吸収する層」と解される。
また、当該「GaInNAsSb層」は、「n型GaAs層」上に「分子線エピタキシー成長により成長させたもの」であるから、「n型GaAs層」を覆っているものと理解できる。
したがって、引用発明の「GaInNAsSb層」は、本願発明の「吸収体層」に相当し、「前記第1のドープされたIII−V層を覆う」との構成を備えるといえる。

(4)本願発明の「前記吸収体層は、希薄窒化物を備え、前記希薄窒化物は、InxGa1−xNyAs1−y−zSbz(0≦x≦1、かつ、0≦y≦1、かつ、0≦z≦1)を備え、前記吸収体層は、約0.7eV〜0.95eVの間のバンドギャップを有し、前記吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する、吸収体層」について
ア 本願発明では、「吸収体層」について、次の特定がなされている。
(ア)「希薄窒化物を備え」ていること
(イ)「希薄窒化物」は、「InxGa1−xNyAs1−y−zSbz(0≦x≦1、かつ、0≦y≦1、かつ、0≦z≦1)」であること
(ウ)「約0.7eV〜0.95eVの間のバンドギャップを有」すること
(エ)「キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する」こと

イ 上記(ア)〜(エ)について、以下に検討する。
(ア)上記(ア)について、引用発明の「GaInNAsSb層」は、「約1〜2%のN」で構成されているので、上記(ア)の構成を備えるといえる。
(イ)上記(イ)について、引用発明の「GaInNAsSb層」は、「約1〜2%のN、約5〜7%のIn、約2〜6%のSbで構成され」、残りの構成がGa及びAsであることは明らかであるから、上記(イ)の構成を備えるといえる。
(ウ)上記(ウ)について、引用発明の「GaInNAsSb層のバンドギャップ」は、「0.92eV」であるから、引用発明の「GaInNAsSb層」は、上記(ウ)の構成を備えるといえる。
(エ)上記(エ)について、引用発明の「GaInNAsSb層のバックグラウンドドーピング密度」は、「略1.00×1015cm−3」である。
ここで、本願の【0039】には、「材料のキャリア濃度は、材料内の電子または正孔等の電荷キャリアの数密度である。材料のキャリア濃度は、ある時は、電子cm−3、正孔cm−3、または原子cm−3(原子ドーパント密度を指す)の単位で表されるが、より多くの場合、同一の数量を参照しながら、粒子の名称が省略され、キャリア濃度は、単純にcm−3の単位で表される。」と記載されており、当該記載を参酌すると、本願発明の「キャリア濃度」は、「電荷キャリアの数密度」であって、「原子cm−3(原子ドーパント密度を指す)の単位で表される」ものであると理解できる。したがって、本願発明の「キャリア濃度」は、「電荷キャリアの発生に寄与している不純物(ドナー或いはアクセプター)の数密度」に相当するものと理解できる。
一方、引用発明の「バックグラウンドドーピング密度」は、上記第4の1(1)イに記載のとおり、容量電圧測定により求められているところ、容量電圧測定は、電圧による容量(空乏層の厚さ)の変化を測定するものであり、当該容量は、電圧及び電荷により定まるものである。したがって、引用発明の「バックグラウンドドーピング密度」は、「電荷キャリアの発生に寄与している不純物のドーピング密度」に相当するものと理解できる。
そして、上記「電荷キャリアの発生に寄与している不純物(ドナー或いはアクセプター)の数密度」と「電荷キャリアの発生に寄与している不純物のドーピング密度」とは、実質的に同じものを表していると解されるので、引用発明の「バックグラウンドドーピング密度」は、本願発明の「キャリア濃度」に相当するものと理解できる。
また、引用文献において、容量電圧測定を行う際の温度について明記はないが、特に明記がない場合には室温であると解することが自然であるから、引用発明の「バックグラウンドドーピング密度」は、室温で測定されたものと解される。
以上より、引用発明の「GaInNAsSb層」は、本願発明の「吸収体層」と、「キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満である」との構成を備える点で一致するといえるも、当該構成であるように「少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する」か否かは不明である点で、本願発明と一応の相違が認められる。

(5)本願発明の「前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII−V層」について
本願発明の「III−V層」は「第2のドープされた」ものであるから、「第1のドープされたIII−V層」とは異なる導電型にドープされたものと理解できるところ、引用発明の「p型GaAs層」は、「n型GaAs層」とは異なる導電型にドープされたものである。
また、引用発明の「p型GaAs層」は、「GaInNAsSb層」上に「分子線エピタキシー成長により成長させたもの」であるから、「GaInNAsSb層」を覆っているものと理解できる。
したがって、引用発明の「p型GaAs層」は、本願発明の「第2のドープされたIII−V層」に相当し、「前記吸収体層を覆う」との構成を備えるといえる。

(6)本願発明の「半導体」について
上記(1)〜(5)の事項を踏まえると、引用発明の「太陽電池」は、本願発明の「半導体」に相当するといえる。

(7)上記(1)〜(7)のとおりであるから、本願発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「半導体であって、
GaAsに合致またはほぼ合致する格子パラメータを伴う基板と、
前記基板を覆う第1のドープされたIII−V層と、
前記第1のドープされたIII−V層を覆う吸収体層であって、
前記吸収体層は、希薄窒化物を備え、前記希薄窒化物は、InxGa1−xNyAs1−y−zSbz(0≦x≦1、かつ、0≦y≦1、かつ、0≦z≦1)を備え、
前記吸収体層は、約0.7eV〜0.95eVの間のバンドギャップを有し、
前記吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満である、吸収体層と、
前記吸収体層を覆う第2のドープされたIII−V層と、
を備える、半導体。」

<一応の相違点>
キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように、本願発明は、「少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する」と特定したのに対し、引用発明は、このような特定がなされていない点。

2 判断
上記一応の相違点に係る本願発明の特定に、「堆積中の」と記載されていることを踏まえると、当該特定は、吸収体層を堆積する工程におけるチャンバ内のIn/Sb比を特定するものと解されるところ、発明の詳細な説明において、特に異なる意味内容と解すべき記載もなされてはいない。
そうすると、当該特定は、製造方法によって生産物を特定しようとするものである。そして、当該製造方法による特定が、「半導体」という物をいかに特定するのかについて検討すると、本願の明細書の【0057】には、図8の説明として、「約6を下回って堆積中のIn/Sb比を減少させることは、曲線802によって示されるように、より高いキャリア濃度をもたらす。」との記載がある。また、本願の請求項1の「前記吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する」との記載からみても、当該製造方法による特定は、「半導体」において、「吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満である」ということを特定するものであり、それ以外のことを何ら特定しない。
してみれば、引用発明の「GaInNAsSb層」は、「キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満である」との構成を備えているので、上記一応の相違点に係る本願発明の構成を備えており、上記一応の相違点は、実質的な相違ではない。

3 小括
上記1〜2のとおりであるから、本願発明は、引用発明と同一である。

4 審判請求人の主張
審判請求人は、審判請求書にて、「請求項1は、本願発明を引用文献3〜5からさらに区別することを目的として補正されています。具体的には、補正後の請求項1は、「前記吸収体層は、キャリア濃度が室温で約1×1016cm−3未満であるように少なくとも6の堆積中のIn/Sb比を有する」ことを本願発明の特徴の1つとして規定しています(強調すべき箇所に下線を引いています)。」と主張している。
しかしながら、上記2のとおりであるから、審判請求人の主張は、上記判断を左右するものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 加々美 一恵
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-24 
結審通知日 2022-02-25 
審決日 2022-03-14 
出願番号 P2017-566819
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 加々美 一恵
特許庁審判官 瀬川 勝久
吉野 三寛
発明の名称 GaAsにほぼ合致する格子パラメータを有する基板上に希薄窒化物層を有する光電子検出器  
代理人 山本 秀策  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  
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