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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01C
管理番号 1386983
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-15 
確定日 2022-04-19 
事件の表示 特願2019−571857「環状交差点通知装置、環状交差点通知システム及び環状交差点通知方法」拒絶査定不服審判事件〔令和1年8月22日国際公開、WO2019/159254、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)2月14日を国際出願日とする出願であって、令和3年1月19日付け(発送日:令和3年1月26日)で拒絶理由が通知され、令和3年3月8日に意見書が提出されたが、令和3年4月12日付け(発送日:令和3年4月20日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して令和3年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記(引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項1、3、4、8及び9に対して:引用文献等1
・請求項6及び7に対して:引用文献等1及び2

<引用文献等一覧>
1.特開2014−153317号公報
2.特開2002−303526号公報

第3 本願発明
本願の請求項1ないし9に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
環状交差点の通過回数又は環状交差点に対する接近の通知回数をカウントして、前記通過回数又は前記通知回数の実績値を算出する実績値算出部と、
車両が通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部と、
前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して前記通過予定環状交差点における交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部と、
を備える環状交差点通知装置。
【請求項2】
前記実績値算出部は、環状交差点の種類毎に前記通過回数又は前記通知回数をカウントして、環状交差点の種類毎の前記実績値を算出するものであり、
前記実績値判定部は、前記車両が前記通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値のうちの前記通過予定環状交差点の種類に対応する前記実績値が前記閾値未満であるか否かを判定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項3】
前記実績値算出部は、環状交差点の位置毎に前記通過回数又は前記通知回数をカウントして、環状交差点の位置毎の前記実績値を算出するものであり、
前記実績値判定部は、前記車両が前記通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値のうちの前記通過予定環状交差点の位置に対応する前記実績値が前記閾値未満であるか否かを判定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項4】
前記車両は複数人のユーザにより共用されるものであり、
前記実績値算出部は、前記車両のユーザ毎に前記通過回数又は前記通知回数をカウントして、前記車両のユーザ毎の前記実績値を算出するものであり、
前記実績値判定部は、前記車両が前記通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値のうちの前記車両を運転中のユーザに対応する前記実績値が前記閾値未満であるか否かを判定するものである
ことを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項5】
前記車両が前記通過予定環状交差点に接近したとき、前記車両が前記通過予定環状交差点に進入するときの交通ルールが守られるか否かを予測する交通ルール順守予測部と、
前記交通ルール順守予測部により前記車両が前記通過予定環状交差点に進入するときの交通ルールが守られないと予測された場合、前記車両を運転中のユーザに対して警告を出力する制御を実行する警告出力制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項6】
前記通知制御部は、前記実績値算出部により算出された前記実績値に応じて、前記通過予定環状交差点における交通ルールの通知態様を異ならしめるものであることを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項7】
前記通過予定環状交差点における交通ルールの通知のオンオフが設定自在であることを特徴とする請求項1記載の環状交差点通知装置。
【請求項8】
環状交差点の通過回数又は環状交差点に対する接近の通知回数をカウントして、前記通過回数又は前記通知回数の実績値を算出する実績値算出部と、
車両が通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部と、
前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して前記通過予定環状交差点における交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部と、
を備える環状交差点通知システム。
【請求項9】
実績値算出部が、環状交差点の通過回数又は環状交差点に対する接近の通知回数をカウントして、前記通過回数又は前記通知回数の実績値を算出するステップと、
実績値判定部が、車両が通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定するステップと、
通知制御部が、前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して前記通過予定環状交差点における交通ルールを通知する制御を実行するステップと、
を備える環状交差点通知方法。」

第4 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014−153317号公報(以下「引用文献1」という。)には、「運転支援情報を提供する装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。

(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行に関する交通規則や法規制等の、車両の運転を支援する運転支援情報を提供する装置に関し、特に、交通規則等の異なる複数の国や地域を車両が走行する場合に、当該車両の現在位置に対応する国や地域に固有の運転支援情報を、当該国や地域における運転者の走行経験の程度に応じて出力する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通規則その他の車両走行に関する法規制の内容には、交通インフラ(道路や信号灯などの交通設備等)の整備状況や交通量等に応じ、国や地域毎に異なるルールが含まれていることが多い。例えば英国では、ロンドン市内の交通状態緩和のため特定のエリア内に車を乗り入れる際には、事前にコンジェスチョン・チャージ(Congestion Charge、混雑課金)を自治体に支払う必要がある。また、欧州に見られる、3本以上の道路を円形のスペースを介して接続する円形交差点(ラウンドアバウト、roundabout)では、国毎に、円形交差点内における走行方向(時計回りか、反時計回りか)や、円形交差点入口での環道内車両と進入車両との優先順位に違いがある。また、アジアや南米には、橋やトンネル等の走行を曜日毎に奇数又は偶数のナンバープレートを持つ車両に制限する国や地域も存在する。
【0003】
このような法規制の異なる複数の国や地域を車両が走行する場合には、進入先の国や地域における円滑な走行を確保すべく、当該国や当該地域における固有の交通規則その他の車両走行に関する法規制の情報(以下、「規制情報」という)を、事前に十分把握しておく必要がある。しかしながら、当該国や地域での走行経験の少ない運転者の場合には、そのような情報を入手しておいても、その場に応じて適宜これらの情報を思い出して十分に適切な運転行動をとることが困難な場合がある。このため、運転支援情報として車両の現在位置に応じた規制情報を運転者に提示する情報出力装置が求められる。」

(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記背景より、車両を走行させる国又は地域についての交通規則その他の運転支援情報を、当該国又は地域における運転者の走行経験の程度に応じて提供する装置の実現が望まれている。」

(3)「【0036】
経験量判定部124は、情報記憶部110が記憶する運転者データ144に含まれた走行経験量の情報を参照し、各走行経験量(累積走行時間、累積走行距離、及び累積走行回数)と、対応する所定の基準値とを比較して、自車両が現在居る国又は地域における当該運転者の走行経験が十分か否かを判定する。当該判定の結果は、経験フラグとして情報記憶部110内の作業データ146に記憶される。すなわち、各走行経験量がそれぞれ対応する基準値以上であるときは、経験フラグ=1(経験が十分であることを示す)が設定され、判定基準値未満であるときは、経験フラグ=0(経験が不十分であることを示す)が設定されて、記憶される。
【0037】
情報出力制御部126は、情報記憶部110が記憶する規制情報データ142から、自車両の現在位置に関連する規制情報を抽出すると共に、作業データ146内の経験フラグを調査して、経験フラグの値に応じて、当該抽出した規制情報の全部又は一部を表示ユニット112に出力する。すなわち、情報出力制御部126は、経験フラグが0(経験不十分)であるときは、上記抽出した規制情報の全部を表示ユニット112に出力し、経験フラグが1(経験十分)であるときは、上記抽出した規制情報のうち、停止レベルが1である規制情報の出力を停止して(非表示として)、それ以外の規制情報を表示ユニット112に出力する。なお、この動作は所定の時間間隔で実行され、自車両の走行に伴って自車両の現在位置が移動するにつれて、その時々の現在位置に応じた規制情報の全部又は一部が、経験フラグの値に応じて表示ユニット112に出力される。
【0038】
経験量更新部128は、情報記憶部110内の作業データ146に含まれた違反発生フラグを参照し、当該フラグが1のときは、運転者データ144内の各経験量(すなわち、累積走行時間、累積走行距離、及び累積走行回数)を、0にリセットして更新する。これにより、十分な走行経験量を持っていた運転者であっても、交通違反を発生させた運転者に対しては走行経験量を減らし、経験量判定部124における経験量判定の結果が、経験フラグ=0(経験不十分)となるようにして、現在位置に応じた規制情報の全てが表示ユニット112に出力されるようにすることができる。なお、走行経験量の上記リセットに代えて、各走行経験量からそれぞれ対応する所定値を減算して、当該走行経験量を現在より低い値に更新するようにしてもよい。
【0039】
また、経験量更新部128は、イグニションスイッチがオンされたときにタイマー(不図示)を起動して、イグニションスイッチがオフされるまでの時間(走行時間)を計測すると共に、イグニションスイッチがオンされた時及びオフされた時に、自車両に搭載された走行距離計の指示値を取得して、イグニションスイッチがオンされてからオフされるまでの期間(以下、「運転サイクル」ともいう)における走行距離を算出する。そして、経験量更新部128は、イグニションスイッチがオフされたときに、情報記憶部110が記憶する運転者データ144の走行経験量情報を更新する。すなわち、経験量情報を構成する累積走行回数に1を加算し、累積走行時間と累積走行距離にそれぞれ上記計測した走行時間と算出した走行距離を加算する。
【0040】
さらに、経験量更新部128は、上記更新した走行経験量情報を含む運転者データ144を、無線通信部106を介してサーバ150へ送信する。当該情報を受信したサーバ150は、受信した運転者識別コードに対応する運転者に関して自身が記憶する走行経験量情報を、受信した運転者データ144を用いて更新することができる。
【0041】
上記の構成を備える情報出力装置100は、自車両の現在位置に対応する国や地域における規制情報を表示ユニット112に出力する機能を有し、自車両の現在位置に対応する国や地域における運転者の走行経験量(例えば、当該国又は地域における累積走行時間、累積総経距離、及び累積走行回数)がそれぞれ所定の基準値以上であれば、上記規制情報の所定の一部(例えば、当該国又は地域に固有である所定の一部の情報)については、表示ユニット112への出力を停止する。
【0042】
これにより、情報出力装置100は、車両を走行させる国又は地域についての交通規則等の規制情報の案内を、当該国又は地域における運転者の走行経験の程度に応じて取捨選択して提供することができる。その結果、経験豊富な運転者にとり煩わしさがなく、運転行動の邪魔とならない、規制情報の適切な案内動作が実現される。
【0043】
図4は、規制情報が表示された表示ユニット112の表示画面の一例を示す図である。図4(A)に示す例は、例えば米国に入って初めてイグニションスイッチをオンにしたときに表示ユニット112に表示される画像であり、「アメリカに入りました。」のメッセージの後に、図2に示した規制情報のうちの、米国全域を対象とする規制情報である「この国では、踏切は一旦停止しません。」及び「この国では信号赤でも右折できます。」とのメッセージが表示されている。また、図4(B)の例は、米国国内の特定の交差点に接近しているときに表示される規制情報であり、「この交差点では、黄色二重線を跨いで左折できません。」との規制情報が表示されている。
【0044】
本実施形態においては、経験量判定部124が現在の運転者の走行経験量を十分でないと判断した場合には、情報出力制御部126により図4(A)及び図4(B)に示す全ての規制情報が、自車両の現在位置に応じて表示ユニット112に出力される。一方、経験量判定部124が現在の運転者の走行経験量を十分であると判断した場合には、情報出力制御部126は、停止レベルが1(図2参照)とされている図4(A)に示す規制情報の出力を停止し(表示せず)、図4(B)に示す他の規制情報を表示ユニット112に出力する。
【0045】
これにより、現在位置の国又は地域における走行経験量の少ない運転者は、図4(A)の画面に示されるような一般的な規制情報をも表示画面から取得して、慎重な運転を行うことができる。一方、現在位置の国又は地域における走行経験量の多い運転者は、図4(A)の画面に示されるような一般的な規制情報の表示はされないので、過剰な情報提供が回避されることとなり、迅速かつ円滑な運転行動をとることが可能となる。」

上記記載事項及び図面の図示内容から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「イグニションスイッチがオンされたときにタイマーを起動して、イグニションスイッチがオフされるまでの時間(走行時間)を計測すると共に、イグニションスイッチがオンされた時及びオフされた時に、自車両に搭載された走行距離計の指示値を取得して、イグニションスイッチがオンされてからオフされるまでの期間における走行距離を算出し、イグニションスイッチがオフされたときに、情報記憶部110が記憶する運転者データ144の現在走行中の国又は地域における運転者の走行経験量情報を構成する累積走行回数に1を加算し、累積走行時間と累積走行距離にそれぞれ上記計測した走行時間と算出した走行距離を加算する経験量更新部128と、
情報記憶部110が記憶する運転者データ144に含まれた走行経験量の情報を参照し、各走行経験量(累積走行時間、累積走行距離、及び累積走行回数)と、対応する所定の基準値とを比較して、各走行経験量がそれぞれ対応する基準値以上であるときは、経験フラグ=1(経験が十分であることを示す)が設定され、判定基準値未満であるときは、経験フラグ=0(経験が不十分であることを示す)が設定されることで、自車両が現在居る国又は地域における当該運転者の走行経験が十分か否かを判定し、当該判定の結果を、経験フラグとして情報記憶部110内の作業データ146に記憶する経験量判定部124と、
情報記憶部110が記憶する規制情報データ142から、自車両の現在位置に関連する規制情報を抽出すると共に、前記作業データ146内の前記経験フラグを調査して、前記経験フラグの値に応じて、経験フラグが0(経験不十分)であるときは、上記抽出した規制情報の全部を表示ユニット112に出力し、経験フラグが1(経験十分)であるときは、上記抽出した規制情報のうち、停止レベルが1である規制情報の出力を停止して(非表示として)、それ以外の規制情報を表示ユニット112に出力する情報出力制御部126と、
を備える情報出力装置100。」

第5 対比及び判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明における
「イグニションスイッチがオンされたときにタイマーを起動して、イグニションスイッチがオフされるまでの時間(走行時間)を計測すると共に、イグニションスイッチがオンされた時及びオフされた時に、自車両に搭載された走行距離計の指示値を取得して、イグニションスイッチがオンされてからオフされるまでの期間における走行距離を算出し、イグニションスイッチがオフされたときに、情報記憶部110が記憶する運転者データ144の現在走行中の国又は地域における運転者の走行経験量情報を構成する累積走行回数に1を加算し、累積走行時間と累積走行距離にそれぞれ上記計測した走行時間と算出した走行距離を加算する経験量更新部128」と、
本願発明1における
「環状交差点の通過回数又は環状交差点に対する接近の通知回数をカウントして、前記通過回数又は前記通知回数の実績値を算出する実績値算出部」とは、
「走行に関する実績値を算出する実績値算出部」という限りにおいて一致している。

引用発明における
「情報記憶部110が記憶する運転者データ144に含まれた走行経験量の情報を参照し、各走行経験量(累積走行時間、累積走行距離、及び累積走行回数)と、対応する所定の基準値とを比較して、各走行経験量がそれぞれ対応する基準値以上であるときは、経験フラグ=1(経験が十分であることを示す)が設定され、判定基準値未満であるときは、経験フラグ=0(経験が不十分であることを示す)が設定されることで、自車両が現在居る国又は地域における当該運転者の走行経験が十分か否かを判定し、当該判定の結果を、経験フラグとして情報記憶部110内の作業データ146に記憶する経験量判定部124」と、
本願発明1における
「車両が通過予定環状交差点に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部」とは、
「走行に関する実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部」という限りにおいて一致している。

引用発明における
「情報記憶部110が記憶する規制情報データ142から、自車両の現在位置に関連する規制情報を抽出すると共に、前記作業データ146内の前記経験フラグを調査して、前記経験フラグの値に応じて、経験フラグが0(経験不十分)であるときは、上記抽出した規制情報の全部を表示ユニット112に出力し、経験フラグが1(経験十分)であるときは、上記抽出した規制情報のうち、停止レベルが1である規制情報の出力を停止して(非表示として)、それ以外の規制情報を表示ユニット112に出力する情報出力制御部126」と、
本願発明1における
「前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して前記通過予定環状交差点における交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部」とは、
「前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部」という限りにおいて一致している。

引用発明における「情報出力装置100」と、本願発明1における「環状交差点通知装置」とは、「通知装置」という限りにおいて一致している。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
〔一致点〕
「走行に関する実績値を算出する実績値算出部と、
前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部と、
前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部と、
を備える通知装置。」

〔相違点〕
本願発明1は、「環状交差点」の通過回数又は「環状交差点」に対する接近の通知回数をカウントして、前記通過回数又は前記通知回数の実績値を算出する実績値算出部と、車両が「通過予定環状交差点」に接近したとき、前記実績値算出部により算出された前記実績値が閾値未満であるか否かを判定する実績値判定部と、前記実績値判定部により前記実績値が前記閾値未満であると判定された場合、前記車両を運転中のユーザに対して前記「通過予定環状交差点」における交通ルールを通知する制御を実行する通知制御部と、を備える「環状交差点」通知装置であるのに対して、引用発明は、環状交差点の通過回数又は環状交差点に対する接近の通知回数ではなく、自車両が現在居る国又は地域における各走行経験量(累積走行時間、累積走行距離、及び累積走行回数)を算出する点。

上記相違点について検討する。
引用発明は、運転者の走行経験量情報として、自車両が現在居る国又は地域における累積走行回数、累積走行時間及び累積走行距離を算出しているが、環状交差点の通過回数や環状交差点に対する接近の通知回数をカウントするものではない。また、環状交差点の通過回数が、累積走行回数、累積走行時間及び累積走行距離に相関しているとはいえない。
引用文献1の段落【0002】には「3本以上の道路を円形のスペースを介して接続する円形交差点(ラウンドアバウト、roundabout)では、国毎に、円形交差点内における走行方向(時計回りか、反時計回りか)や、円形交差点入口での環道内車両と進入車両との優先順位に違いがある。」との記載があり、段落【0043】及び図4(B)には、特定の交差点に接近しているときに表示される規制情報の例が示されているが、環状交差点の通過回数や環状交差点に対する接近の通知回数をカウントすることは、何ら記載されていないから、引用発明において、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたとはいえない。
引用文献2は、本願発明6及び7で特定する事項に対して示されたものであって、環状交差点の通過回数や環状交差点に対する接近の通知回数をカウントし、車両が通過予定環状交差点に接近したとき、通過予定環状交差点における交通ルールを通知することを開示ないし示唆する記載はない。
また、他に、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、周知の技術又は設計的事項であることを示す証拠や根拠はない。
そして、これにより、本願発明1は、「環状交差点の運転経験が少ないユーザに対して通過予定環状交差点Rにおける交通ルールを通知することができる。」という明細書(段落【0008】)に記載の作用効果を奏する。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て含むから、本願発明1に対して述べたものと同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明8及び9について
本願発明8及び9は、本願発明1をそれぞれ「システム」及び「方法」の発明として表現したものであって、本願発明1の発明特定事項に対応する事項を全て含むから、本願発明1に対して述べたものと同様の理由により、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-29 
出願番号 P2019-571857
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 鈴木 充
佐々木 正章
発明の名称 環状交差点通知装置、環状交差点通知システム及び環状交差点通知方法  
代理人 特許業務法人山王内外特許事務所  

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