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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1386986
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-15 
確定日 2022-01-25 
事件の表示 特願2017−551394「半導体装置、表示装置、表示モジュール、電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月26日国際公開、WO2017/085595、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)11月10日(優先権主張 平成27年11月20日)を国際出願日とする特許出願であって、令和1年10月31日付けで手続補正がされるとともに上申書が提出され、令和2年12月8日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年1月27日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、同年3月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月11日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1、2、5−10に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、本願請求項3−10に係る発明は、以下の引用文献1−4に記載された発明及び引用文献5、6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015−195327号公報
2.特開2006−269696号公報
3.特開2013−179290号公報
4.特開2015−026830号公報
5.特開2012−151460号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2012−033836号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1、2の補正前の「前記接続電極と前記第2のゲート電極とは、前記金属膜を用いて電気的に接続される」との記載を、補正後の「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し、前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する」とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、補正後の請求項1、2において、「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し、前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する」とする当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討する。

補正後の請求項1、2において、「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」という事項を追加する補正は、補正前の「第2のゲート電極」が有する「酸化物導電膜」と「金属膜」を限定するものであり、補正後の請求項1、2において、「前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する」とする補正は、補正前の請求項1、2における、「前記接続電極と前記第2のゲート電極とは、前記金属膜を用いて電気的に接続される」という事項を限定するものであるから、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し、前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する」という構成は、本願の出願当初の図1に記載されている事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1−10に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1−10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明10」という。)は、令和3年6月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
トランジスタを有する半導体装置であって、
前記トランジスタは、第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜上のソース電極と、前記酸化物半導体膜上のドレイン電極と、前記酸化物半導体膜、前記ソース電極、及び前記ドレイン電極上の第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上の第2のゲート電極と、を有し、
前記第1の絶縁膜は、第1の開口部を有し、
前記第1の絶縁膜上には、前記第1の開口部を介して前記第1のゲート電極と電気的に接続される接続電極が形成され、
前記第2の絶縁膜は、前記接続電極に達する第2の開口部を有し、
前記第2のゲート電極は、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物導電膜と、前記酸化物導電膜上の金属膜と、を有し、
前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し、
前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する半導体装置。
【請求項2】
トランジスタを有する半導体装置であって、
前記トランジスタは、第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜上のソース電極と、前記酸化物半導体膜上のドレイン電極と、前記酸化物半導体膜、前記ソース電極、及び前記ドレイン電極上の第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上の第2のゲート電極と、を有し、
前記第1の絶縁膜は、第1の開口部を有し、
前記第1の絶縁膜上には、前記第1の開口部を介して前記第1のゲート電極と電気的に接続される接続電極が形成され、
前記第2の絶縁膜は、前記接続電極に達する第2の開口部と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極のいずれか一方に達する第3の開口部と、を有し、
前記第2のゲート電極は、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物導電膜と、前記酸化物導電膜上の金属膜と、を有し、
前記第3の開口部には、前記金属膜と同じ組成の導電膜が形成され、
前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し、
前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極は、それぞれ、第1の金属膜と、前記第1の金属膜上に接する第2の金属膜と、前記第2の金属膜上に接する第3の金属膜と、を有し、
前記第2の金属膜は、銅を含み、
前記第1の金属膜及び前記第3の金属膜は、それぞれ、前記銅の拡散を抑制する材料を含み、
前記第1の金属膜の端部は、前記第2の金属膜の端部よりも外側に位置する領域を有し、
前記第3の金属膜は、前記第2の金属膜の上面及び側面を覆い、且つ前記第1の金属膜と接する領域を有する半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、前記金属膜、前記導電膜、前記第1の金属膜、及び前記第3の金属膜は、それぞれ独立にチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有する半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記酸化物導電膜は、前記酸化物半導体膜が有する金属元素を少なくとも一つ有する半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有する半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一において、
前記酸化物半導体膜は、結晶部を有し、前記結晶部は、c軸配向性を有する半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の半導体装置と、表示素子と、を有する表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の表示装置と、タッチセンサと、を有する表示モジュール。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の半導体装置と、操作キーまたはバッテリと、を有する電子機器。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2015−195327号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。

「【技術分野】
【0001】
酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置及びその作製方法に関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。」

「【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置及びその作製方法について図面を参照して説明する。
【0022】
図1(A)乃至図1(C)に、半導体装置が有するトランジスタ10の上面図及び断面図を示す。図1(A)はトランジスタ10の上面図であり、図1(B)は、図1(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図1(C)は、図1(A)の一点鎖線C−D間の断面図である。なお、図1(A)では、明瞭化のため、基板11及び絶縁膜などを省略している。
【0023】
図1(B)及び図1(C)に示すトランジスタ10は、チャネルエッチ型のトランジスタであり、基板11上に設けられるゲート電極13と、基板11及びゲート電極13上に形成されるゲート絶縁膜15と、ゲート絶縁膜15を介して、ゲート電極13と重なる酸化物半導体膜17と、酸化物半導体膜17に接する一対の電極19、20と、ゲート絶縁膜15、酸化物半導体膜17、及び一対の電極19、20上のゲート絶縁膜28と、ゲート絶縁膜28上のゲート電極31とを有する。ゲート絶縁膜28は、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、及び窒化物絶縁膜27を有する。また、ゲート電極31は、ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜28に設けられた開口部42、43においてゲート電極13と接続する。また、一対の電極19、20の一方、ここでは電極20に接続する電極32が、窒化物絶縁膜27上に形成される。なお、電極32は画素電極として機能する。
・・・
【0025】
ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜28には複数の開口部を有する。代表的には、図1(B)に示すように、一対の電極19、20の一方を露出する開口部41を有する。また、図1(C)に示すように、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜17を挟む開口部42、43を有する。即ち、酸化物半導体膜17の側面の外側に開口部42、43を有する。開口部41において、一対の電極19、20の一方、ここでは電極20と電極32が接続する。また、開口部42、43において、ゲート電極13及びゲート電極31が接続する。即ち、チャネル長方向に垂直な断面において、ゲート電極13及びゲート電極31は、ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜28を介して酸化物半導体膜17を囲む。また、チャネル幅方向において、ゲート絶縁膜28を介して酸化物半導体膜17の側面と開口部42、43に設けられたゲート電極31が位置する。
・・・
【0060】
以下に、トランジスタ10の構成の詳細について説明する。
・・・
【0081】
ゲート電極31及び電極32は、透光性を有する導電膜を用いる。透光性を有する導電膜は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物等がある。
・・・
【0148】
次に、図1に示すトランジスタ10の作製方法について、図9乃至図12を用いて説明する。なお、図9乃至図12において、A−Bに示すチャネル長方向の断面図及びC-Dに示すチャネル幅方向の断面図を用いて、トランジスタ10の作製方法を説明する。
・・・
【0206】
次に、窒化物絶縁膜26上に第4のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マスクを用いて、絶縁膜14、酸化物絶縁膜22、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜26のそれぞれ一部をエッチングして、ゲート絶縁膜15と、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、及び窒化物絶縁膜27で構成されるゲート絶縁膜28とを形成する。なお、ゲート絶縁膜28には、図11(B)のA-Bに示すように、開口部41を有する。また、ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜28には、図11(B)のC-Dに示すように、開口部42、43を有する。
【0207】
次に、図12(A)に示すように、後にゲート電極31及び電極32となる導電膜30を形成する。
【0208】
導電膜30は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等により形成する。
【0209】
ここでは、スパッタリング法により導電膜30として厚さ100nmのITO膜を形成する。
【0210】
次に、導電膜30上に第5のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜30の一部をエッチングして、ゲート電極31及び電極32を形成する。この後、マスクを除去する。
・・・
【0212】
以上の工程により、トランジスタ10を作製することができる。」

「【0229】
<変形例2>
図1及び図13と異なる構造のトランジスタについて、図14を用いて説明する。図14に示すトランジスタ60は、ゲート電極13及びゲート電極64が、導電膜62を介して接続している点が、実施の形態1に示す他のトランジスタと異なる。
【0230】
図14(A)乃至図14(C)に、半導体装置が有するトランジスタ60の上面図及び断面図を示す。図14(A)はトランジスタ60の上面図であり、図14(B)は、図14(A)の一点鎖線A−B間の断面図であり、図14(C)は、図14(A)の一点鎖線C−D間の断面図である。なお、図14(A)では、明瞭化のため、基板11及び絶縁膜などを省略している。
【0231】
図14(B)及び図14(C)に示すトランジスタ60は、チャネルエッチ型のトランジスタであり、基板11上に設けられるゲート電極13と、基板11及びゲート電極13上に形成されるゲート絶縁膜15と、ゲート絶縁膜15を介して、ゲート電極13と重なる酸化物半導体膜17と、酸化物半導体膜17に接する一対の電極19、20と、ゲート絶縁膜15、酸化物半導体膜17、及び一対の電極19、20上のゲート絶縁膜28と、ゲート絶縁膜28上に形成されるゲート電極64とを有する。ゲート絶縁膜28は、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、及び窒化物絶縁膜27を有する。ゲート電極64は、導電膜62を介して、ゲート電極13に接続する。また、一対の電極19、20の一方、ここでは電極20に接続する電極32がゲート絶縁膜28上に形成される。なお、電極32は画素電極として機能する。
【0232】
導電膜62は、実施の形態1に示す一対の電極19、20と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。また、導電膜62は、一対の電極19、20と同時に形成される。ゲート電極64は、実施の形態1に示すゲート電極31と同様の材料及び作製方法を適宜用いて形成することができる。また、ゲート電極64は、電極32と同時に形成することができる。
・・・
【0234】
また、ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜28は複数の開口部を有する。代表的には、図14(B)に示すように、一対の電極19、20の一方を露出する開口部41を有する。また、図14(C)に示すように、ゲート絶縁膜15に設けられた開口部61、及びゲート絶縁膜28に設けられた開口部63を有する。開口部61において、導電膜62がゲート電極13と接続する。また、開口部63において、ゲート電極64は導電膜62と接続する。即ち、導電膜62を介してゲート電極13及びゲート電極64は電気的に接続する。また、ゲート絶縁膜28を介して、ゲート電極13及びゲート電極64と同電位である導電膜62と酸化物半導体膜17の側面が位置する。
・・・
【0236】
次に、トランジスタ60の作製工程について説明する。
【0237】
図9の工程を経て、基板11上に、ゲート電極13、絶縁膜14、及び酸化物半導体膜17を形成する。当該工程においては、第1のフォトマスク及び第2のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程を行う。
【0238】
次に、第3のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により絶縁膜14上にマスクを形成した後、絶縁膜14の一部をエッチングして、図14(A)及び図14(B)に示す開口部61を形成する。
【0239】
次に、図10(A)及び図10(B)に示す工程と同様に、第4のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により導電膜18上にマスクを形成した後、導電膜18の一部をエッチングして、一対の電極19、20、及び導電膜62を形成する。
【0240】
次に、図11(A)に示す工程と同様に、酸化物絶縁膜22、酸化物絶縁膜24、及び窒化物絶縁膜26を形成する。次に、第5のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により窒化物絶縁膜26上にマスクを形成した後、窒化物絶縁膜26の一部をエッチングして、図14(A)及び図14(B)に示す開口部41、63を形成する。
【0241】
次に、図12(A)に示す工程と同様に、導電膜30を形成する。次に、第6のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程により導電膜30上にマスクを形成した後、導電膜30の一部をエッチングして、図14(A)乃至図14(C)に示すゲート電極64及び電極32を形成する。
【0242】
以上の工程により、トランジスタ60を作製することができる。」

図1、11、12、14は、以下のとおりのものである。





(2)ア 引用文献1の段落【0023】、【0081】、【0232】等の記載から、図14に示されるトランジスタ60について、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「トランジスタ60において、ゲート電極64及び電極32は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電膜を用いて形成される。」

イ 引用文献1の段落【0023】、【0025】、【0206】、【0231】、【0234】の記載、図1(B)、14(B)から、図14に示されるトランジスタ60について、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「トランジスタ60において、ゲート絶縁膜28は、一対の電極19、20の一方の電極20を露出する開口部41を有し、一対の電極19、20の一方の電極20に接続する電極32がゲート絶縁膜28上に形成され、電極32は画素電極として機能する。」

ウ したがって、上記引用文献1には、実施の形態1の変形例2のトランジスタ60について、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「トランジスタ60であって、
基板11上に設けられるゲート電極13と、基板11及びゲート電極13上に形成されるゲート絶縁膜15と、ゲート絶縁膜15を介して、ゲート電極13と重なる酸化物半導体膜17と、酸化物半導体膜17に接する一対の電極19、20と、ゲート絶縁膜15、酸化物半導体膜17、及び一対の電極19、20上のゲート絶縁膜28と、ゲート絶縁膜28上に形成されるゲート電極64とを有し、
ゲート電極64は、導電膜62を介して、ゲート電極13に接続され、
ゲート絶縁膜28は、一対の電極19、20の一方の電極20を露出する開口部41を有し、
一対の電極19、20の一方の電極20に接続する電極32がゲート絶縁膜28上に形成され、電極32は画素電極として機能し、
ゲート絶縁膜15に設けられた開口部61、及びゲート絶縁膜28に設けられた開口部63を有し、開口部61において、導電膜62がゲート電極13と接続され、また、開口部63において、ゲート電極64は導電膜62と接続され、即ち、導電膜62を介してゲート電極13及びゲート電極64は電気的に接続され、
導電膜62は、一対の電極19、20と同時に形成され、
ゲート電極64は、電極32と同時に形成され、
ゲート電極64及び電極32は、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電膜を用いて形成されたトランジスタ。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2006−269696号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法、回路基板及び電子表示装置に関する。より詳しくは、大型液晶テレビ、大型液晶モニター、大型有機エレクトロルミネセンスディスプレイに好適に用いられる回路基板の製造方法、回路基板、及び、それらを用いて得られる電子表示装置に関するものである。」

「【0028】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1に係る薄膜トランジスタ(TFT)アレイ基板の構造を示す平面模式図である。
実施例1に係るTFTアレイ基板は、図1に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板(図示せず)上に、ゲート配線(走査信号線)6とソース配線(データ信号線)15とが互いに直交するように配置されており、ゲート配線6とソース配線15とが交差する付近には、薄膜トランジスタ(TFT)17が配置されている。TFT17は、ゲート配線6に接続されたゲート電極6bと、ソース配線15に接続されたソース電極17aと、ドレイン電極(ドレイン側導電部)17cとを有してなる。ドレイン電極17c(下層導電部)は、ゲート配線6と平行に配置された補助容量配線6cの上層まで延伸され、かつ、コンタクトホール27を介して画素電極24(上層導電部)と接続されている。また、ゲート配線6(下層導電部)は、末端6aでコンタクトホール28を介してゲート電極端子25(上層導電部)と接続されている。更に、ソース配線15(下層導電部)は、末端15aでコンタクトホール29を介してソース電極端子26(上層導電部)と接続されている。
【0029】
図2は、図1に示すTFTアレイ基板の線分A−A’における断面を示す断面模式図である。
TFT17は、図2の中央部に示すように、ゲート電極6b上に、ゲート絶縁層7、チャネル部17bを有する半導体層8、及び、ソース電極17a/ドレイン電極17cがこの順に積層された構造を有するボトムゲート形(逆スタガ形)TFTである。TFT17のドレイン電極17cと画素電極24とは、画素電極24の開口部に連結された貫通孔を有する絶縁層(保護層18及び層間絶縁膜19からなる絶縁層)を介して積層されており、かつ、コンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及び画素電極24の開口部内に配線が形成されたもの)27を介して電気的に接続されている。このようにして、TFT駆動部1が構成されている。
【0030】
また、図2の左側部に示すように、ゲート配線の末端6aとゲート電極端子25とは、ゲート電極端子25の開口部に連結された貫通孔を有する絶縁層(ゲート絶縁層7、保護層18及び層間絶縁膜19からなる絶縁層)を介して積層されており、かつ、コンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及びゲート電極端子25の開口部内に配線が形成されたもの)28を介して電気的に接続されている。このようにして、ゲート電極端子部2が構成されている。
【0031】
更に、図2の右側部に示すように、ソース配線の末端15aとソース電極端子26とは、ソース電極端子26の開口部に連結された貫通孔を有する絶縁層(保護層18及び層間絶縁膜19からなる絶縁層)を介して積層されており、かつ、コンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及びソース電極端子26の開口部内に配線が形成されたもの)29を介して電気的に接続されている。このようにして、ソース電極端子部3が構成されている。
・・・
【0033】
図3〜13は、実施例1に係るTFTアレイ基板の製造工程を示す断面模式図である。
以下に、実施例1に係るTFTアレイ基板の製造工程について説明する。
(1)下層導電部等の形成
まず、スパッタリング法等の蒸着法により、絶縁性基板5上にゲート金属薄膜を形成する。続いて、第1のマスクを用いたフォトリソグラフィによりフォトレジストパターンを形成した後、該フォトレジストパターンを用いたドライエッチング又はウェットエッチング等により、ゲート金属薄膜をパターニングすることで、図3に示すように、ゲート配線の末端6a、TFTのゲート電極6b、及び、補助容量配線6cを含むゲートパターンを形成する。ゲート金属薄膜としては、モリブデン/アルミニウム/モリブデン(Mo/Al/Mo)の3層構造を採用した。このとき、ゲート金属薄膜を構成する各種金属は、純金属であってもよいし、不純物を添加した金属であってもよい。
【0034】
次に、図4に示すように、プラズマ化学蒸着(CVD)法等により、ゲート絶縁層7、TFTの活性層となる半導体層8及びコンタクト層9を積層する。・・・
【0035】
次に、図5に示すように、スパッタリング法等により、ソース/ドレイン金属層10〜12を積層した後、第2のマスクを用いたフォトリソグラフィにより、フォトレジストパターン13を形成する。なお、ソース/ドレイン金属層10〜12は、第1の金属層10がMo、第2の金属層11がAl、第3の金属層12がMoで構成した。・・・
【0036】
次に、フォトレジストパターン13を用いたウェットエッチングにより、不要なソース/ドレイン金属層10〜12をエッチングした後、該フォトレジストパターン13を用いたドライエッチング等により、不要なコンタクト層9及び半導体層8をエッチングする。これにより、図6に示すように、ソース配線15、15aを形成することができる。
【0037】
次に、図7に示すように、フォトレジストパターン13の相対的に膜厚が小さい部分(チャネル部上のフォトレジストパターン)14をアッシングにより除去し、フォトレジストパターン13’を形成する。続いて、図8に示すように、フォトレジストパターン13’を用いたウェットエッチング等により、不要なソース/ドレイン金属層10〜12をエッチングし、同フォトレジストパターン13’を用いたドライエッチング等により、不要なコンタクト層9、及び、半導体層8の上部をエッチングすることで、ソース電極17a、チャネル部17b及びドレイン電極17cを有するTFT17を形成する。その後、フォトレジストパターン13’を除去する。
【0038】
(2)絶縁層及び上層導電膜の形成〜フォトレジスト膜の形成
次に、図9に示すように、保護層18、層間絶縁膜19及び画素電極膜(上層導電膜)20を形成した後、第3のマスクを用いたフォトリソグラフィにより、フォトレジストパターン(フォトレジスト膜)21を形成する。保護層18は、プラズマCVD法等により、窒化シリコン、酸化シリコン等を堆積することで形成することができる。層間絶縁膜19は、無機物、有機物又は無機物と有機物との混合物で形成することができる。・・・更に、画素電極膜20は、スパッタリング法等により、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料を蒸着することで形成することができる。
【0039】
・・・
【0040】
なお、フォトレジストパターン21は、ゲート電極端子部2のコンタクトホールを形成する領域22a、TFT駆動部1のコンタクトホールを形成する領域22b、及び、ソース電極端子部3のコンタクトホールを形成する領域22cにそれぞれ開口部を有しており、これらの領域では、画素電極膜20が露出している。
【0041】
(3)上層導電部の開口部及び絶縁層の貫通孔の形成
次に、フォトレジストパターン21を用いた臭化水素酸(HBr溶液)、塩化鉄(II)を含む溶液等によるウェットエッチングにより、コンタクトホール形成領域22a、22b及び22cの画素電極膜20をエッチングした後、四フッ化炭素(CF4)を含むガスによる同じフォトレジストパターン21を用いたドライエッチングにより、コンタクトホール形成領域22a、22b及び22cの層間絶縁膜19及び保護層18をエッチングする。これにより、コンタクトホール形成領域22aでは、ゲート絶縁層7が露出し、コンタクトホール形成領域22b及び22cでは、第3の金属層12が露出する。このとき、コンタクトホール形成領域22aでは、更にゲート絶縁層7をエッチングする必要があるが、本実施例では、コンタクトホール形成領域22b及び22cで露出する金属層12が、CF4を含むガスを用いたドライエッチングに対して耐性を有するMoにより構成されているため、上記ドライエッチングを継続して行うことにより、図10に示すように、コンタクトホール形成領域22aのゲート絶縁層7もエッチングすることができる。なお、後述するように、本実施例では、導電性微粒子を含有する液状材料を注入することにより、コンタクトホールの形成を行うので、下層導電部と上層導電部とを接続する配線の被覆性を考慮してホールの形状を制御する必要が特になく、上記ドライエッチングを高速で行うことが可能となり、高い生産性を獲得することができる。
【0042】
(4)上層導電部間形成領域のフォトレジスト膜の除去
次に、図11に示すように、アッシングによりフォトレジストパターン21を薄膜化することにより、フォトレジストパターン21の相対的に膜厚が小さい部分(画素電極間形成領域のフォトレジストパターン)23を除去してフォトレジストパターン21’を形成するとともに、不要な画素電極膜20を露出させる。アッシング方法としては、減圧した酸素ガス雰囲気下でRF放電を生じさせることにより、酸素プラズマを生成させ、これによりフォトレジストを灰にする方法が好適である。
【0043】
(5)上層導電部の形成
続いて、図12に示すように、フォトレジストパターン21’を用いたウェットエッチングにより、不要な画素電極膜20を除去することで、画素電極24、ゲート電極端子25及びソース電極端子26を形成する。このとき、コンタクトホール形成領域22a、22b及び22cで露出している金属層12を腐食しないエッチング溶液を用いる必要がある。本実施例では、金属膜12がMoで構成されるため、画素電極膜20を構成するITOやIZOをエッチングすることができ、かつMoを腐食しないHBr溶液、又は、塩酸(HCl溶液)と硫酸(H2SO4溶液)との混合溶液等を用いるとよい。その後、フォトレジストパターン21’を除去する。
【0044】
(6)絶縁層の貫通孔内及び上層導電部の開口部内への配線の形成
次に、図13に示すように、インクジェット(IJ)法やスクリーン印刷法により、コンタクトホール形成領域22a、22b及び22cに形成したホール内に、導電性微粒子を含有する液状材料を注入し、適当な温度で分散媒を焼成又は乾燥し、導電性微粒子を溶融させることで、TFT17のドレイン電極と画素電極24とを電気的に接続するコンタクトホール27、ゲート配線の末端6aとゲート電極端子25とを電気的に接続するコンタクトホール28、及び、ソース配線の末端15aとソース電極端子26とを電気的に接続するコンタクトホール29を形成する。このとき、導電性微粒子を含有する液状材料としては、銀インジウム合金(Ag−In)の微粒子をテトラデカン溶媒に分散させてなる分散液、ITO微粒子をブチルカルビトール溶媒に分散させてなる分散液等を用いることができる。IJ法等を用いてこれらの分散液をホールに注入すると、毛細管現象により、分散液がゲート絶縁層7、保護層18、層間絶縁膜19、画素電極24、ゲート電極端子25及びソース電極端子26の側面を覆う。この後、TFT17に損傷を与えない範囲の温度(例えば、250℃程度)で加熱し、焼成を行うことで、Ag−InやITO等の導電性物質からなる配線が形成され、下層導電部と上層導電部とを電気的に接続することができる。
【0045】
また、導電性微粒子を含有する液状材料としては、微粒子化したハンダを含むペースト等を用いてもよい。この場合、スクリーン印刷法やディスペンサ法等により、目的のホールにペーストを注入する。この後、TFT17に損傷を与えない範囲の温度、例えば200〜250℃程度に加熱し、ハンダを溶融させると、毛細管現象により、ゲート絶縁層7、保護層18、層間絶縁膜19、画素電極24、ゲート電極端子25及びソース電極端子26の側面を覆い、下層導電部と上層導電部とを電気的に接続することができる。
なお、導電性微粒子を含有する液状材料を用いて形成された配線の形状は、通常、中央部が窪み、周辺部が盛り上がった形状となる。液状材料に含有される導電性微粒子の比率としては、10質量%以上であることが好ましい。また、導電性微粒子を含有する液状材料を用いて形成された配線は、開口率に影響を与えない範囲内であれば画素電極24の上面を覆っていてもよく、例えば補助容量配線6cの範囲内であれば、画素電極24の上面を覆っていてもよい。
【0046】
以上により、実施例1に係るTFTアレイ基板を作製することができる。
本実施例によれば、従来必要であった層間絶縁膜19にホールを形成するためのマスク工程と画素電極膜20をパターニングするためのマスク工程とを、1つのマスク工程で行うため、従来よりも1枚少ない3枚のマスクでTFTアレイ基板を製造することが可能である。したがって、製造工程を短縮することができ、設備投資額の削減や生産効率の向上を図ることが可能となる。
また本実施例で作製されるTFTアレイ基板においては、上層導電部の開口部が、各上層導電部内の同一の位置に配列されており、絶縁層の貫通孔と同一又は相似の平面形状を有している。」

図1、2、12、13は、以下のとおりのものである。
【図1】

【図2】

【図12】

【図13】


上記記載からみて、当該引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「TFTアレイ基板であって、
絶縁性基板上に、ゲート配線(走査信号線)6とソース配線(データ信号線)15とが互いに直交するように配置され、ゲート配線6とソース配線15とが交差する付近には、薄膜トランジスタ(TFT)17が配置され、TFT17は、ゲート配線6に接続されたゲート電極6bと、ソース配線15に接続されたソース電極17aと、ドレイン電極(ドレイン側導電部)17cとを有し、ドレイン電極17c(下層導電部)は、ゲート配線6と平行に配置された補助容量配線6cの上層まで延伸され、かつ、コンタクトホール27を介して画素電極24(上層導電部)と接続されており、
TFT17は、ゲート電極6b上に、ゲート絶縁層7、チャネル部17bを有する半導体層8、及び、ソース電極17a/ドレイン電極17cがこの順に積層された構造を有するボトムゲート形(逆スタガ形)TFTであり、
TFT17のドレイン電極17cと画素電極24とは、画素電極24の開口部に連結された貫通孔を有する絶縁層を介して積層されており、かつ、コンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及び画素電極24の開口部内に配線が形成されたもの)27を介して電気的に接続されており、
画素電極24は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料を用いて形成されており、
TFT17のドレイン電極17cと画素電極24とを電気的に接続する上記配線は、銀インジウム合金(Ag−In)の微粒子を分散させてなる分散液等の導電微粒子を含有する液状材料を用いて形成されており、開口率に影響を与えない範囲内であれば画素電極24の上面を覆っていてもよく、例えば補助容量配線6cの範囲内であれば、画素電極24の上面を覆っていてもよい、TFT基板。」

3 その他の文献について
(1)拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献5(特開2012−151460号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0043】
図1に示すトランジスタ100は、基板101上に下地層102が形成され、下地層102上に酸化物半導体層103が形成されている。また、酸化物半導体層103上にゲート絶縁層104が形成され、ゲート絶縁層104上にゲート電極105が形成されている。また、ゲート電極105上に絶縁層107と絶縁層108が形成され、絶縁層108上に、ソース電極110a及びドレイン電極110bが形成されている。ソース電極110a及びドレイン電極110bは、ゲート絶縁層104、絶縁層107及び絶縁層108に設けられたコンタクトホール109を介して、酸化物半導体層103に電気的に接続されている。
【0044】
酸化物半導体層103は、ゲート絶縁層104を介してゲート電極105と重畳するチャネル形成領域103cと、ソース電極110aと電気的に接続するソース領域103aと、ドレイン電極110bと電気的に接続するドレイン領域103bを有している。
【0045】
また、ゲート電極105は、ゲート絶縁層104に接するゲート電極105aと、ゲート電極105aに積層されたゲート電極105bを有している。
・・・
【0150】
次に、ゲート絶縁層104上に、スパッタリング法、真空蒸着法、またはメッキ法を用いて導電層を形成し、該導電層上にマスクを形成し、該導電層を選択的にエッチングしてゲート電極105を形成する。導電層上に形成するマスクは印刷法、インクジェット法、フォトリソグラフィ法を適宜用いることができる。ゲート電極105は、ゲート絶縁層104に接するゲート電極105aと、ゲート電極105a上に積層されたゲート電極105bにより形成される。
【0151】
ゲート電極105aを形成する材料としては、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物(In−Ga−Zn−O)や、窒素を含むインジウム錫酸化物(In−Sn−O)や、窒素を含むインジウムガリウム酸化物(In−Ga−O)や、窒素を含むインジウム亜鉛酸化物(In−Zn−O)や、窒素を含む酸化錫(Sn−O)や、窒素を含むインジウム酸化物(In−O)や、金属窒化物(InN、ZnNなど)を用いることが好ましい。
・・・
【0153】
ゲート電極105bを形成する材料としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)から選ばれた金属元素、上述した金属元素を成分とする合金、上述した金属元素を組み合わせた合金、上述した金属元素の窒化物などを用いて形成することができる。また、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)のいずれか一または複数から選択された金属元素を用いてもよい。
・・・
【0156】
本実施の形態では、ゲート電極105aとして、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いる。また、ゲート電極105bとして、窒化チタン上にタングステンを積層する二層構造を用いる(図3(B)参照)。なお、形成されたゲート電極105の端部をテーパー形状とすると、後に形成される層の被覆性が向上するため好ましい。」

「【0188】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で開示したトランジスタとは異なる構成を有するトランジスタの例について説明する。
・・・
【0203】
図7(B)は、トランジスタ180の断面構造を示している。トランジスタ180は、トランジスタ100にバックゲート電極115と絶縁層113を設けた構造を有している。トランジスタ180は、下地層102上にバックゲート電極115が形成され、バックゲート電極115上に絶縁層113が形成されている。また、トランジスタ180の酸化物半導体層103は、絶縁層113を介して、バックゲート電極115と重畳して形成されている。
【0204】
バックゲート電極115は、ゲート電極105とバックゲート電極115で酸化物半導体層103のチャネル形成領域103cを挟むように配置する。バックゲート電極115は導電層で形成され、ゲート電極105と同様に機能させることができる。また、バックゲート電極115の電位を変化させることで、トランジスタのしきい値電圧を変化させることができる。
【0205】
バックゲート電極115は、ゲート電極105bと同様の材料及び方法で形成することができる。また、バックゲート電極115と絶縁層113の間に、ゲート電極105aと同様の層を設けてもよい。」

図1、7は、以下のとおりのものである。



(2)拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献6(特開2012−33836号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0044】
(実施例3)
図8は本実施例のダブルゲート型コプラナー構造の酸化物半導体TFTである。
【0045】
まず、ガラス基板10上に、ボトムゲート電極層20として、膜厚200nmのMoを形成した後、フォトリソグラフィー法とエッチング法によりボトムゲート電極層20をパターニングした。
・・・
【0050】
続いて、上側ゲート絶縁層22上に、トップゲート電極層23として、膜厚200nmのアモルファスIGZOをスパッタ法により形成した。トップゲート電極層23はDCスパッタ装置を用いて基板温度は室温(25℃)で形成した。ターゲットとしてはInGaZnO4組成を有する多結晶焼結体を用い、投入DCパワーは150Wとした。成膜時の雰囲気は全圧0.5Paとし、その際のガス流量比はAr:O2=80:20とした。ボトムゲート電極層20とトップゲート電極層23は、前述のコンタクトホールを介して電気的に接続した。その後、ボトムゲート電極層20をマスクとする裏面露光を用いたフォトリソグラフィー法とエッチング法により上側ゲート絶縁層22及びトップゲート電極層23をパターニングした。ボトムゲート電極層20をマスクとした裏面露光を用いることにより、トップゲート電極層23がボトムゲート電極層20に対して準自己整合的にパターニングされた。」

図8は、以下のとおりのものである。



第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「トランジスタ60」、「ゲート電極13」、「ゲート絶縁膜15」、「酸化物半導体膜17」、「一対の電極19、20」、「ゲート絶縁膜28」、「ゲート電極64」、「開口部61」、「導電膜62」、「開口部63」は、それぞれ、本願発明1における「トランジスタを有する半導体装置」、「第1のゲート電極」、「第1の絶縁膜」、「酸化物半導体膜」、「『ソース電極』及び『ドレイン電極』」、「第2の絶縁膜」、「第2のゲート電極」、「第1の開口部」、「接続電極」、「第2の開口部」に相当する。
引用発明において、「ゲート電極64」は、「インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電膜を用いて形成された」ものであるから、酸化物導電膜を有するものであるといえる。
一方、本願発明1の「第2のゲート電極」は、「インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物導電膜と、前記酸化物導電膜上の金属膜と、を有」するものである。
そうすると、引用発明の「ゲート電極64」と本願発明1の「第2のゲート電極」とは、「酸化物導電膜」を有する点で共通する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「トランジスタを有する半導体装置であって、
前記トランジスタは、第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜上の酸化物半導体膜と、前記酸化物半導体膜上のソース電極と、前記酸化物半導体膜上のドレイン電極と、前記酸化物半導体膜、前記ソース電極、及び前記ドレイン電極上の第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜上の第2のゲート電極と、を有し、
前記第1の絶縁膜は、第1の開口部を有し、
前記第1の絶縁膜上には、前記第1の開口部を介して前記第1のゲート電極と電気的に接続される接続電極が形成され、
前記第2の絶縁膜は、前記接続電極に達する第2の開口部を有し、
前記第2のゲート電極は、酸化物導電膜を有する半導体装置。」

<相違点>
<相違点1>
「第2のゲート電極」について、本願発明1は、「前記第2のゲート電極は、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物導電膜と、前記酸化物導電膜上の金属膜と、を有し」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「ゲート電極64」は、「インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化ケイ素を含むインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電膜を用いて形成された」という構成を備えているが、本願発明1の上記のような構成を備えていない点。

<相違点2>
「第2のゲート電極」について、本願発明1は、「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「ゲート電極64」は、そのような構成を備えていない点。

<相違点3>
本願発明1は、「前記接続電極の上面と前記金属膜の下面は接する領域を有する」という構成を備えるのに対し、引用発明では、「導電膜62」の上面について、本願発明1の上記のような構成を備えていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1、2は、いずれも「第2のゲート電極」に関するものであるから、まとめて検討する。

引用文献2に記載の技術的事項は、「TFT17のドレイン電極17cと画素電極24とは、画素電極24の開口部に連結された貫通孔を有する絶縁層を介して積層されており、かつ、コンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及び画素電極24の開口部内に配線が形成されたもの)27を介して電気的に接続されており、画素電極24は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料を用いて形成されており、TFT17のドレイン電極17cと画素電極24とを電気的に接続する上記配線は、銀インジウム合金(Ag−In)の微粒子を分散させてなる分散液等の導電微粒子を含有する液状材料を用いて形成されており、開口率に影響を与えない範囲内であれば画素電極24の上面を覆っていてもよく、例えば補助容量配線6cの範囲内であれば、画素電極24の上面を覆っていてもよい」という構成を備えていることから、引用文献2には、「ドレイン電極17cと、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)等の透明導電材料を用いて形成された画素電極24とは、配線が形成されたコンタクトホール(絶縁層の貫通孔内及び画素電極24の開口部内に配線が形成されたもの)27を介して電気的に接続されており、上記配線は、金属からなる導電微粒子を含有する液状材料を用いて形成され、画素電極24の上面を覆っていてもよい」との構成が開示されているといえる。

そうすると、引用文献2に記載のコンタクトホール27、及び、画素電極24とその上面を覆う配線は、それぞれ、引用発明における開口部41、及び、画素電極として機能する電極32に対応するものの、画素電極24とその上面を覆う配線は、引用発明におけるゲート電極64(本願発明1の「第2のゲート電極」に相当。)に対応するものではない。

また、引用文献2に記載の技術的事項において、「上記配線」は、「開口率に影響を与えない範囲内であれば画素電極24の上面を覆っていてもよく、例えば補助容量配線6cの範囲内であれば、画素電極24の上面を覆っていてもよい」という構成であるところ、「上記配線」が透明導電材料を用いて形成されている画素電極24の全面を覆うものであるならば、開口率に影響を与えることは明らかであり、また、引用文献2の図1、2から見てとれるように、補助容量配線6cの幅方向(図1の上下方向)の範囲は、画素電極24の一部の範囲にとどまる(図1を参照。)。
そうすると、引用文献2には、コンタクトホール27に形成され、画素電極24の上面を覆う配線が、画素電極24の全面を覆い、端部まで延在するとの構成は、記載も示唆もされていないといえるから、画素電極24の上端部は、当該配線の下端部と一致するとの構成は開示も示唆もされていない。
したがって、引用発明に、引用文献2に開示の上記の構成を採用しても、相違点2に係る本願発明1の構成は得られない。

また、相違点2に係る本願発明1の「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」という構成は、上記「第5」の「3(1)引用文献5」、「同(2)引用文献6」に記載されていないから、本願の優先日前において周知技術であったとはいえない。
したがって、上記相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3−10について
本願発明3−10は、本願発明1の「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
・理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1−10は「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」という構成を有するものとなっており、引用文献3、4にも、本願発明1−10の「前記酸化物導電膜の上端部は、前記金属膜の下端部と一致し」という構成は記載されていないから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1−4に記載された発明及び周知技術に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-01-04 
出願番号 P2017-551394
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 河本 充雄
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
恩田 春香
発明の名称 半導体装置、表示装置、表示モジュール、電子機器  

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