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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 B65G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65G
管理番号 1387004
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-22 
確定日 2022-03-29 
事件の表示 特願2018−502587「搬送システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月 8日国際公開、WO2017/150005、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願は、2017年(平成29年)1月24日(優先権主張 平成28年3月3日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 8月14日 :手続補正書の提出
令和 元年10月10日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月29日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 7月15日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 2年 9月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 3月23日付け:令和2年9月2日にした手続補正について の補正の却下の決定、拒絶査定(以下、「 原査定」という。)
令和 3年 6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和3年6月22日にした手続補正の補正の却下の決定
1.補正の却下の決定の結論
令和3年6月22日にした手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

2.補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容について
令和2年9月2日にした手続補正は、令和3年3月23日付けの補正の却下の決定により却下されているので、本件補正は、令和2年1月29日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を補正するものであって、本件補正前後の請求項1の記載は、それぞれ、以下のとおりである(下線は補正箇所である。)。

[本件補正前の請求項1]
「【請求項1】
基板を収容するキャリアを、前記基板の処理を行う複数の処理装置それぞれにおける移載ポート相互間で搬送する搬送システムであって、
第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置された走行レールと、
前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車と、を備え、
前記走行レールは、所定の工程の処理を実施する第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記所定の工程とは異なる工程の処理を実施する第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されており、
前記台車は、前記移載部が前記走行レールよりも下側に位置した状態で前記走行レールを走行し、
前記移載部は、前記保持部及び前記昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有する、搬送システム。」

[本件補正後の請求項1]
「【請求項1】
基板を収容するキャリアを、前記基板の処理を行う複数の処理装置それぞれにおける移載ポート相互間で搬送する搬送システムであって、
第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置された走行レールと、
前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車と、を備え、
前記走行レールは、所定の工程の処理を実施する第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記所定の工程とは異なる工程の処理を実施する第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されており、
前記台車は、前記移載部が前記走行レールよりも下側に位置した状態で前記走行レールを走行し、
前記移載部は、前記保持部及び前記昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有し、
複数の前記移載ポートのうちの少なくとも1つが、平面視において前記第1レールと前記第2レールとにより区画される2つ以上の空間にまたがって配置されている、搬送システム。」

(2)本件補正の適否について
請求項1に「複数の前記移載ポートのうちの少なくとも1つが、平面視において前記第1レールと前記第2レールとにより区画される2つ以上の空間にまたがって配置されている」という事項を追加する本件補正が、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、明細書のみを示す場合を「当初明細書」といい、全ての書類を示す場合を「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであって、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすか否かについて検討する。

ア 当初明細書等の記載事項
請求人が補正の根拠として挙げる当初明細書の段落【0018】、【0034】、【0069】には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。以下同様。)。

(ア)「【0018】
一実施形態においては、台車は、移載部が走行レールよりも下側に位置した状態で走行レールを走行してもよい。この構成では、走行レールに開口部を設けなくとも、移載ポートにキャリアを移載できる。」

(イ)「【0034】
図5に示されるように、走行レール4の下方で且つ第1〜第9処理装置M1〜M9の上方には、バッファ6が設けられている。バッファ6は、FOUP50が載置される棚であり、FOUP50を収容する。バッファ6は、支持部材20により走行レール4に支持されている。バッファ6は、複数のセルバッファ(保管部)22により構成されている。セルバッファ22は、走行レール4において第1レール9及び第2レール11により区画される矩形状のセル(空間)16毎に設定されている。セルバッファ22のそれぞれは、1個のFOUP50を保管する。セルバッファ22では、セル16を介してFOUP50が移載される。すなわち、FOUP50は、セル16を鉛直方向において通過してセルバッファ22に移載される。図5に示されるように、バッファ6は、そのバッファ6上に載置されたFOUP50の一部が、側面視において走行レール4と重なる位置に設けられている。」

(ウ)「【0069】
また、図16に示されるように、台車80は、走行部84及び移載部86を有している。台車80は、走行レール4の下方に位置し、走行部84が走行レール4に吊り下げられた状態で走行する形態であってもよい。この構成では、走行レール4に開口部を設けなくとも、第1〜第9ロードポートP1〜P9にFOUP50を移載できる。また、台車は、走行レール4のセル16の直上に停止し、当該セル16を介してFOUP50を移載できる形態であってもよい。すなわち、台車の移載部がスライドフォークを備えていなくてもよい。この構成では、第1〜第9ロードポートP1〜P9に対してFOUP50を移載する際に、移載部を進出させる必要がないため、第1〜第9ロードポートP1〜P9に対してFOUP50を迅速に移載することができる。」

また、請求人が挙げる上記の点に加え、当初明細書には、以下の事項が記載されている。

(エ)「【0046】
図9に示されるように、走行レール4には、開口部Kが設けられている。図9に示す例では、開口部Kは、第1処理装置M1の第1ロードポートP1の直上(鉛直上方)に設けられている。開口部Kは、第1レール9と第2レール11とにより区画された領域である。開口部Kにより、第1ロードポートP1の上方は、開放された空間となっている。つまり、開口部Kの領域の下方には、バッファ6が設けられていない。開口部Kは、複数(ここでは3個)の第1ロードポートP1を含む領域に設定されている。開口部Kの長手方向(Y方向)の寸法は、同方向における第1ロードポートP1の一方の端部から他方の端部までの寸法よりも大きい。開口部Kは、第1〜第9処理装置M1〜M9の第1〜第9ロードポートP1〜P9の上方に設けられている。」

(オ)「【0071】
上記実施形態では、走行レール4に設けられた開口部Kの領域内に複数のロードポートが位置する形態を一例に説明した。しかし、図17に示されるように、開口部Kは、1台の第1ロードポートP1を領域内に含むように設けられていてもよい。この構成では、台車8が、走行レール4の開口部K上に位置して、当該開口部Kを介してFOUP50を移載できる構成であってもよい。この構成では、第1〜第9ロードポートP1〜P9に対してFOUP50をより迅速に移載することができる。」

イ 補正の適否の判断
上記「ア 当初明細書等の記載事項」に示した(エ)〜(オ)より、当初明細書等には、開口部は、処理装置のロードポートの直上(鉛直上方)に設けられ、ロードポートを領域内に含むように設けられていること、開口部は、第1レールと第2レールとにより区画された領域であることが記載されており、これらより、ロードポートは、第1レールと第2レールとにより区画された領域の直下に配置されているものと認められる。
また、上記「ア 当初明細書等の記載事項」に示した(ア)、(ウ)より、台車の移載部が走行レールよりも下側に位置した状態で走行レールを走行する構成では、走行レールに開口部を設けなくてもよいことが記載されていると認められる。

しかしながら、当初明細書等には、台車の移載部が走行レールよりも下側に位置した状態で走行レールを走行するように構成して、走行レールに開口部を設けないようにした際に、ロードポートを、第1レールと第2レールとにより区画された領域の直下ではない場所に配置することは記載されていないし、そのように構成してもよいことを示唆する記載も無い。

そして、台車の移載部が、保持部及び昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有しており、第1レールと第2レールとにより区画される空間の直下で台車が停止しているときに、スライドフォークによって保持部及び昇降部を当該空間の直下からずれた位置に水平移動させることが可能であったとしても、それがために、ロードポートを、平面視において第1レールと第2レールとにより区画される2つ以上の空間にまたがって配置しなければならないものでもないことは、当初明細書等に記載された実施例に照らしてみれば、明らかである。

してみれば、本件補正で追加された「複数の前記移載ポートのうちの少なくとも1つが、平面視において前記第1レールと前記第2レールとにより区画される2つ以上の空間にまたがって配置されている」という事項は、当初明細書等の記載に接した当業者であれば、出願時の技術常識に照らして、当初明細書等に記載されているのと同然であると理解する事項ではないから、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといえる。

したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。

よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないので、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明
令和3年6月22日にした手続補正は、上記「第2 令和3年6月22日にした手続補正の補正の却下の決定」により却下され、令和2年9月2日にした手続補正は、令和3年3月23日付けの補正の却下の決定により却下されているから、本願の請求項1〜7に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明7」という。)は、令和2年1月29日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
基板を収容するキャリアを、前記基板の処理を行う複数の処理装置それぞれにおける移載ポート相互間で搬送する搬送システムであって、
第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置された走行レールと、
前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車と、を備え、
前記走行レールは、所定の工程の処理を実施する第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記所定の工程とは異なる工程の処理を実施する第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されており、
前記台車は、前記移載部が前記走行レールよりも下側に位置した状態で前記走行レールを走行し、
前記移載部は、前記保持部及び前記昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有する、搬送システム。
【請求項2】
複数の前記移載ポートは、前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群のそれぞれにおいて、前記第1方向又は前記第2方向に沿って互いに隣接して配置されており、
前記走行レールは、前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群において配列方向が平行となるように設けられた複数の前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第1の停止位置から前記第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されている、請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記走行レールは、前記第1の処理装置群と前記第2の処理装置群とにおいて互いに対向して配置された複数の前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第1の停止位置から前記第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されている、請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
複数の前記移載ポートの配列方向が平行となるように設けられた前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群を複数備え、
前記走行レールは、一の前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群の前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から他の前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群の前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第2の停止位置に前記台車が乗り入れ自在に配置されている、請求項2又は3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群のそれぞれは、前記第1方向に沿って配置された複数の前記移載ポートと、前記第2方向に沿って配置された複数の前記移載ポートとを有し、
前記第1の処理装置群及び前記第2の処理装置群のそれぞれにおいて、前記第1方向又は前記第2方向に沿って配置された複数の前記移載ポートは、互いに一直線上には配置されておらず且つ前記第1方向又は前記第2方向にずれた位置に配置されたものを含み、
前記走行レールは、前記第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される前記第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されている、請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記走行レールには、前記移載ポートに対する前記台車の停止位置に被検出体が設けられており、
前記台車は、前記被検出体を検出する検出部を備え、
前記走行部は、前記検出部による検出結果に基づいて、前記停止位置において前記台車を停止させる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記スライドフォークは、ミドル部及びトップ部を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送システム。」


第4 原査定の概要
原査定の概要は以下のとおりである。

進歩性)この出願の請求項1〜7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:国際公開第2015/104887号
引用文献2:国際公開第2016/029205号
引用文献3:特開平11−214471号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2009−57117号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5:国際公開第2015/174181号
引用文献6:特開平11−189313号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7:特開2007−17326号公報(周知技術を示す文献)


第5 引用文献に記載された事項及び引用発明
1.引用文献1に記載された事項及び引用発明について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「[0013] 以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面において天井走行車20の走行方向をY方向と表記し、Y方向に直交する方向をX方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。また、X軸周りの回転方向をθX方向、Y軸周りの回転方向をθY方向、Z軸周りの回転方向をθZ方向と表記する。
[0014] 図1は、処理室1の天井部分の一例を示す図である。処理室1は、例えばクリーンルーム内部であり、不図示の半導体処理装置などが設けられている。
処理室1の天井部分には、天井部材4と、第1支柱6と、第2支柱15とが設けられている。天井部材4には、天井面4aが形成されている。天井面4aは、水平面に平行に形成される。第1支柱6は、天井部材4に固定されており、天井面4aから下方(−Z方向)に延びている。」

(2)「[0016] 支持面8a、9aには、それぞれレール10が隣り合って設けられている。レール10は、天井走行車20を案内する軌道である。レール10は、走行レール11及び給電レール12を有している。レール10の少なくとも一部は、例えば第1支持部材8、9の長手方向(Y方向)に沿って設けられている。隣り合うレール10同士は、互いに平行に配置される。なお、図1では、第1支持部材9のレール10に設けられる天井走行車の図示を省略している。
[0017] 天井走行車20は、走行レール11の内側に配置されている。天井走行車20は、レール10に沿って+Y方向に走行する。天井走行車20は、走行駆動部21と、受電部22と、連結部23とを有している。走行駆動部21は、走行レール11の内面に当接する複数のローラー21aと、これら複数のローラー21aを回転させる不図示の駆動装置とを有している。受電部22は、給電レール12に設けられた非接触給電線を介して受電し、走行駆動部21などに電力を供給する。連結部23は、走行駆動部21の−Z側に取り付けられており、走行駆動部21と移載装置40とを連結する。
[0018] 移載装置40は、ベース部(本体部)41と、移動部42と、移動規制部43とを備えている。ベース部41は、連結部23を介して天井走行車20(走行駆動部21)に連結されている。したがって、ベース部41は、天井走行車20と一体的に移動可能である。
[0019] 移動部42は、ミドル部44及びトップ部45を有している。ミドル部44は、ベース部41に取り付けられている。ミドル部44は、不図示のガイドにより、X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動する。トップ部45は、ミドル部44に取り付けられている。トップ部45は、ミドル部44の移動に伴って、X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動可能である。
[0020] また、トップ部45の下方(−Z側)には、旋回部46と、昇降駆動部47と、昇降台48と、グリッパ49とが設けられている。旋回部46は、トップ部45に対して昇降駆動部47以下の構成(昇降駆動部47、昇降台48及びグリッパ49)をθZ方向に旋回させる。
[0021] 昇降駆動部47は、昇降台48の昇降(Z方向についての移動)を制御する。昇降駆動部47は、所定の長さに形成されたベルト48a(図3参照)を介して昇降台48に接続されている。昇降駆動部47には、ベルト48aが巻かれる不図示のドラムが設けられている。昇降駆動部47は、ベルト48aを巻き取ったり送り出したりすることにより、昇降台48をZ方向に移動させる。
[0022] 昇降台48は、昇降駆動部47の駆動により、グリッパ49と一体的にZ方向に移動する。グリッパ49は、一対の爪部49aを有している。この爪部49aは、例えば半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持することが可能である。一対の爪部49aは、物品FPの+Z側の面に設けられる突起部FPaを把持している。」

(3)「[0029] 図3は、移載装置40の動作状態の一例を示す図である。
天井走行車20を走行させる場合、移動部42がレール10の+X側又は−X側に飛び出すと、周囲の構造物に干渉するおそれがある。これは、グリッパ49が物品FPを把持している場合も、物品FPを把持していない場合も同様である。そのため、天井走行車20を走行させる場合、移載装置40は、移動部42を+X側又は−X側に移動させることなく、図3に示すように、所定の基準位置P1に配置させた状態(第1状態)とする。第1状態において、基準位置P1は、天井走行車20を走行させる場合の移動部42の位置であり、本実施形態では、一例としてベース部41と移動部42(ミドル部44及びトップ部45)とがZ方向視で重なる位置としているが、これには限定されない。」

(4)「[0031] 更に、グリッパ49で把持している物品FPをレール10の下方に配置される装置等の所定位置に載置しようとする場合や、レール10の下方に配置される装置等の所定位置に載置された物品FPをグリッパ49で把持しようとする場合にも、天井走行車20を停止させた状態とする。そして、移動部42を突出位置P2及び突出位置P3に移動させることなく、昇降台48を−Z方向に移動させた状態(第3状態)にする。第3状態では、グリッパ49と物品FPとの位置関係を微調整するため、移動部42がX方向に所定範囲だけ移動させることができる。」

(5)「[図1]



(6)(2)に摘記した段落[0016]の記載のとおり、(5)に摘記した[図1]において、第1支持部材9のレール10に設けられる天井走行車の図示は省略されているから、[図1]より、天井走行車20は複数設けられていることが看取できる。

(7)(3)に摘記した段落[0029]の記載及び(4)に摘記した段落[0031]の記載から、天井走行車20が、グリッパ49が物品FPを把持している状態で走行し、装置に物品FPを載置することで物品FPを搬送するシステムと認められる。

(8)(5)に摘記した[図1]より、天井走行車20は、移載装置40がレール10よりも下側に位置した状態でレール10を走行することが看取できる。

摘記事項(1)〜(5)及び認定事項(6)〜(8)から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

【引用発明】
「半導体処理装置などが設けられている処理室1において、天井走行車20が、グリッパ49が半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持している状態で走行し、装置に物品FPを載置する搬送システムにおいて、
Y方向に沿って設けられている複数のレール10と、
レール10に沿って+Y方向に走行する複数の天井走行車20は、走行駆動部21と、移載装置40とを備え、移載装置40は、ベース部(本体部)41と、移動部42とを備え、移動部42は、ミドル部44及びトップ部45を有し、トップ部45の下方(−Z側)には、昇降駆動部47と、昇降台48と、グリッパ49とが設けられており、昇降台48は、昇降駆動部47の駆動により、グリッパ49と一体的にZ方向に移動し、グリッパ49は、半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持するものであり、
天井走行車20は、移載装置40がレール10よりも下側に位置した状態でレール10を走行し、
移載装置40の移動部42が有するミドル部44は、X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動し、ミドル部44に取り付けられているトップ部45は、ミドル部44の移動に伴って、X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動可能である
搬送システム。」

2.引用文献2に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「With specific reference to Fig. 1 of the drawing figures, the system of the present invention will be described in association with, or use with, a storage warehouse or building 20 of the prior art. It should be noted that the system may be used in other environments such as mini-warehouses, distribution warehouses, garages, ships and the like. The building is divided into a plurality of rows 23 of vertically tiered cells 24. The cells are defined by vertically and horizontally extending steel beams. In this embodiment, the cells are open horizontally, such as at 28, to receive goods or containers "C" carries by pallets "P" which are carried by elevating devices 29 connected by cables 32 to a load transfer vehicle or unit 30 that is movably linearly in X and Y directions along an overhead grid track system 22 formed of hollow open box beams as taught in the prior art. The grid incudes open box beams 25 extending in an X direction and intersecting open box beams 26 extending in a Y direction.」(第10ページ第9行〜第20行)
(当審仮訳)「図面の図1を特に参照して、本発明のシステムを、従来技術の貯蔵倉庫または建物20に関連して、またはそれとともに使用して説明する。システムは、小型倉庫、流通倉庫、ガレージ、船舶などの他の環境で使用されてもよいことに留意されたい。建物は、垂直に積み重ねられたセル24の複数の列23に分割される。セルは、垂直および水平に延在する鋼梁によって画定される。この実施形態では、セルは、先行技術で教示されているような中空の開放箱形ビームで形成されたオーバーヘッド・グリッド・トラック・システム22に沿ってX方向及びY方向に直線的に移動可能な車両又はユニット30にケーブル32によって接続された昇降装置29によって運ばれるパレットPによって物品又は容器Cを受け取るために、28などで水平に開いている。グリッドは、X方向に延在するオープンボックスビーム25と、Y方向に延在し交差するオープンボックスビーム26とを含む。」

(2)「With reference to Fig. 3, the transfer unit 30 is suspended from pairs of parallel and adjacent beams 25 and 26 by spindles 27 extending through open slots 31 in the lower surfaces of the box beams 25 and 26. The spindles are mounted to carriages 35, see Figs. 4 and 5, which are movable within the box beams. Generally, four carriages are connected to each transfer unit such that the transfer unit is supported on two adjacent X beams 25 and two adjacent Y beams 26 which are oriented so as to intersect with one another in generally perpendicular relationship at open intersections 37. Each transfer unit, see Figs. 1 and 3, includes hoists 38, for controlling the cables 32 that are used to raise and lower pallets or objects 29 that are to be aligned with the cells 24 in order to transfer articles or objects to and from the transfer units and the cells.」(第11ページ第1行〜第10行)
(当審仮訳)「図3を参照すると、移送ユニット30は、ボックスビーム25及び26の下面の開口スロット31を通って延びるスピンドル27によって、平行で隣接するビーム25及び26の対から吊り下げられる。スピンドルは、図4及び図5に見られるように、ボックスビーム内で移動可能なキャリッジ35に取り付けられる。一般に、4つのキャリッジが各移送ユニットに接続されて、移送ユニットが、開いた交差部37において互いにほぼ垂直な関係で交差するように配向される2つの隣接するXビーム25及び2つの隣接するYビーム26上に支持される。各移送ユニット、図1及び図3に示すように、移送ユニットおよびセルとの間で物品または物体を移送するために、セル24と位置合わせされるパレットまたは物体29を昇降させるために使用されるケーブル32を制御するためのホイスト38を含む。」

3.引用文献3に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0003】図3は、一般的なクリーンルーム内部を示す斜視図である。同図に示すように、クリーンルーム内には、製造工程毎に複数の処理装置群3aが互いに並行に配置されている。また、各処理装置群3aは複数の処理装置3によって構成されており、すなわちリソグラフィーやウエット処理等における一連の処理装置3がまとめて配置されて各処理装置群3aが構成されている。さらに、各処理装置3が実施する処理はそれぞれ固定されており、ここではA,B,Cという3種類の処理条件を想定している。」

4.引用文献4に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0030】
<処理装置>
処理装置1は、被処理物に対して何らかの処理を行うための装置であり、本実施の形態では7台の処理装置1E1〜1E7が備えられている。つまり、本実施の形態において、被処理物は生産ラインに沿って、7台の処理装置1にそれぞれ搬送されて処理される。なお、本実施の形態において、被処理物は、複数個が一まとめとされてカセットに格納され、各処理装置1に搬送される構成とされているが、カセットに格納されていない被処理物が、1個あるいは複数個まとめて搬送される構成とされていてもよい。
【0031】
また、処理装置1は、被処理物に対する処理を施す処理部11と、処理部11で処理を行うためのカセットを格納するためのポート部12を備えており、搬送車2によって搬送されたカセットは、処理装置1のポート部12に格納される。処理装置1は、ポート部12に格納されたカセットから処理すべき被処理物を抜き出し、処理部11にて処理を施した後、処理が施された被処理物をポート部12に格納されたカセットに戻す構成とされている。この際、被処理物を格納するカセットは、処理前と処理後で同一であってもよいし、異なっていてもよい。」

(2)「【0038】
<仕掛棚>
仕掛棚4W1〜4W3は、処理装置1での処理前の被処理物を格納する棚であり、複数の各種処理装置1E1〜1E7から選択されたそれぞれ1つ以上の処理装置1からなる複数の処理装置群G1〜G3の近傍にそれぞれ対応させて配置されている。つまり、処理装置1E1と処理装置1E2とからなる処理装置群G1の近傍には、仕掛棚4W1が配置され、処理装置1E3と処理装置1E4と処理装置1E5とからなる処理装置群G2の近傍には、仕掛棚4W2が配置され、処理装置1E6と処理装置1E7とからなる処理装置群G3の近傍には、仕掛棚4W3が配置されている。」

5.引用文献5に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「[0021] 実施例での天井走行車4の任務は、異なるイントラベイルートのロードポート14間で速やかに物品10を搬送することである。ここで天井走行車4が、ロードポート14との間で物品10を移載するため停止することが、イントラベイルートの渋滞の原因となる。そこで天井走行車4はロードポート14以外のバッファに物品を搬出入する機会を増して、渋滞を少なくする。これに伴って、ロードポート14とバッファとの間の搬送をローカル台車が行い、好ましくはベイ内での搬送をローカル台車が行う割合を高める。そこでローカル台車の台数を増して搬送能力を高めると共に、ローカル台車が走行経路を柔軟に選択できるようにして、ローカル台車が渋滞しないようにする。
[0022] 16はローカル台車で、ローカル軌道20は、ロードポート14の上部から、処理装置12の上部もしくは処理装置12の背面の上部等に渡って、ベイ内に設けられている。ローカル軌道20は例えば縦横の格子状に配置され、例えば支柱24により天井25により支持されるが、クリーンルームの床面等により支持しても良い。またローカル軌道20の下部に、バッファ22が例えば格子状に設けられ、例えば支柱23によりローカル軌道20によって支持されている。そしてローカル台車16は、バッファ22とロードポート14との間で物品10を搬送する。
[0023] 図2に、ローカル軌道20の配置例を示す。インターベイルート30から、ベイ内にイントラベイルート32と増設ルート34とが引き込まれている。増設ルート34は、処理装置12の上部あるいは背面の上部を通り、ロードポート14の上部を通る通常のイントラベイルート32に増設されたルートである。ローカル軌道20は、処理装置12の上部等に格子状に配置され、格子の1枠に例えば1個、あるいは複数個のバッファ22が設けられている。即ち、格子状のローカル軌道20での、軌道により囲まれたスペースに、バッファ22が設けられている。またローカル台車16と天井走行車4とが共にアクセス可能なエリアを移載エリア36と呼び、移載エリア36にはロードポート14とバッファ22とが設けられている。図2では、左右の処理装置12の列の間の通路37上にも、ローカル軌道20を設け、ベイ内の搬送をローカル台車16のみで行えるようにしている。しかしベイの左右のローカル軌道20を接続しないようにしても良い。なお図2の下部に鎖線で示すように、処理装置12’とロードポート14’とが配置されている場合、これに応じて鎖線のローカル軌道20’を追加することが好ましい。この場合、ロードポート14’の向きは、他のロードポート14から、90°あるいは270°変化している。そこでローカル台車16のターンテーブルにより、物品の向きを90°、180°、及び270°回転させることができるようにすることが好ましい。さらにロードポート14,14’等の微妙な向きのずれを補正するように、ターンテーブルの回転角を微修正できるようにすることが好ましい。
[0024] 図3に、ローカル軌道20とローカル台車16とを示す。ローカル軌道20の幅方向の中心に溝21が設けられ、ローカル台車16は車輪18を例えば前後2対、車輪19を例えば前後2対備え、車輪18,19は走行方向が直角である。また走行部40により車輪18を回転させ、走行部41により車輪19を回転させ、車輪18,19の一方を下降させて他方を上昇させ、下降させた車輪を溝21によりガイドして走行させる。このように、ローカル台車16は一対のローカル軌道20,20にガイドされて走行し、格子状に配置されているローカル軌道20の任意の位置から任意の位置へ移動できる。この間に、ローカル台車16は縦横に走行するだけでなく、前後進が自在である。」

6.引用文献6に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0016】又、給電装置24が取り付けられる棚側の支持部材28に、スタッカークレーン5の走行停止位置を検出するための被検出体38cと、スタッカークレーン5の走行速度を規制するための速度調整板38a,38bが取り付けられ、集電装置25が取り付けられるスタッカークレーン側の支持アーム29に、前記被検出体38cを検出する透過型光電センサ39cと、前記速度調整板38a,38bを検出する透過型光電センサ39a,39bが取り付けられている。」

7.引用文献7に記載された事項について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献7には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【0016】
そこで本発明では、図1に例示したように、移動軸に関する移動データに基づいて自走台車11を走行させ、停止センサ13の作用で停止をさせる点は、従来手法と基本的に同様であるが、自走台車11にセンサユニットSUのセンサボード1を取付ける一方、その台車11の最終停止位置乃至はその近傍の固定系に、前記センサボード1に対向させてマーカ3を設置する構成とした。
【0017】
図1の上記構成により、自走台車11を停止センサ13などの作用で停止させたとき又は停止させるとき、センサユニットSUを起動させることによって、自走台車11の停止位置を、一例として±0.4mmの座標精度で検出できるので、この精度で最終位置出しをすることができる。この理由について次に説明する。」


第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FP」は、本願発明1の「基板を収容するキャリア」に相当し、引用発明の「半導体処理装置などが設けられている処理室1において、天井走行車20が、グリッパ49が半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持している状態で走行し、装置に物品FPを載置する」ことは、「基板を収容するキャリアを、半導体処理装置などが設けられている処理室内で搬送する」という限りにおいて、本願発明1の「基板を収容するキャリアを、前記基板の処理を行う複数の処理装置それぞれにおける移載ポート相互間で搬送する」ことと一致する。

引用発明の「Y方向」は、本願発明1の「第1方向」に相当し、引用発明の「方向に沿って設けられている」ことは、XYZ座標系の各方向は、通常、直線の方向であることが技術常識であるから、本願発明1の「第1方向に直線状に延在する」ことに相当する。したがって、引用発明の「Y方向に沿って設けられているレール10」は、「第1方向に直線状に延在する複数の第1レールを有する走行レール」という限りにおいて、本願発明1の「第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置された走行レール」と一致する。

引用発明の「レール10に沿って+Y方向に走行する複数の天井走行車20」の「走行駆動部21」は、「前記走行レールを前記第1方向に走行可能な走行部」という限りにおいて、本願発明1の「前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能な走行部」と一致する。
引用発明の「グリッパ49」は、「半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持するものであ」るから、本願発明1の「前記キャリアを保持する保持部」に相当し、引用発明の「昇降駆動部47」は、「昇降台48」を「グリッパ49と一体的にZ方向に移動」するものであるから、本願発明1の「前記保持部を昇降させる昇降部」に相当する。よって、引用発明の「ベース部(本体部)41と、移動部42とを備え、移動部42は、ミドル部44及びトップ部45を有し、トップ部45の下方(−Z側)には、昇降駆動部47と、昇降台48と、グリッパ49とが設けられており、昇降台48は、昇降駆動部47の駆動により、グリッパ49と一体的にZ方向に移動し、グリッパ49は、半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持するものであ」る「移載装置40」は、本願発明1の「前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部」に相当する。
したがって、引用発明の「走行駆動部21と、移載装置40とを備え」る「複数の天井走行車20」は、「前記走行レールを前記第1方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車」という限りにおいて、本願発明1の「前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車」と一致する。

引用発明の「移載装置40がレール10よりも下側に位置した状態」は、本願発明1の「前記移載部が前記走行レールよりも下側に位置した状態」に相当する。

引用発明の「X方向」は、本願発明1の「水平方向」に相当し、引用発明の「移載装置40の移動部42」が「ミドル部44」を有することは、「ミドル部44」が「X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動し、ミドル部44に取り付けられているトップ部45は、ミドル部44の移動に伴って、X方向に沿った第1方向D1及び第2方向D2に移動可能であ」り、「トップ部45の下方(−Z側)」には、「昇降駆動部47と、昇降台48と、グリッパ49とが設けられて」いるものであるから、本願発明1の「前記移載部」が、「前記保持部及び前記昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有する」ことに相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「基板を収容するキャリアを、半導体処理装置などが設けられている処理室内で搬送する搬送システムであって、
第1方向に直線状に延在する複数の第1レールを有する走行レールと、
前記走行レールを前記第1方向に走行可能な走行部と、前記キャリアを保持する保持部及び前記保持部を昇降させる昇降部を含む移載部と、を有する複数の台車と、を備え、
前記台車は、前記移載部が前記レールよりも下側に位置した状態で前記走行レールを走行し、
前記移載部は、前記保持部及び前記昇降部を水平方向に移動させるスライドフォークを有する、搬送システム。」

【相違点1】
「搬送システム」に関し、本願発明1では、「前記基板の処理を行う複数の処理装置それぞれにおける移載ポート相互間で搬送する」ものであるのに対し、引用発明では、「半導体処理装置などが設けられている処理室1において、天井走行車20が、グリッパ49が半導体ウエハの搬送容器(FOUP)などの物品FPを把持している状態で走行し、装置に物品FPを載置する」ものである点。

【相違点2】
「走行レール」に関し、本願発明1では、「第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置され」ており、「所定の工程の処理を実施する第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記所定の工程とは異なる工程の処理を実施する第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されて」いるのに対し、引用発明では、「Y方向に沿って設けられている複数のレール10」であって、かかる構成を備えていない点。

【相違点3】
「複数の台車」の「走行部」に関し、本願発明1では、「走行部」が「前記走行レールを前記第1方向及び前記第2方向に走行可能」であるのに対し、引用発明では、「天井走行車20」の「走行駆動部21」が「レール10に沿って+Y方向に走行する」ものである点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
上記「第5 2.」に示したように、引用文献2には、貯蔵倉庫建物、小型倉庫、流通倉庫、ガレージ、船舶などの環境で使用されるシステムにおいて、X方向に延在するオープンボックスビーム25と、Y方向に延在し交差するオープンボックスビーム26とを含むグリッドを備え、X方向及びY方向に直線的に移動可能な移送ユニット30は、ボックスビーム25及び26の下面の開口スロット31を通って延びるスピンドル27によって、平行で隣接するビーム25及び26の対から吊り下げられることが記載されている(以下、「引用文献2に記載された事項」という。)。

ところで、引用発明は、半導体処理装置などが設けられている処理室1において用いられるものであるが、半導体処理装置がどのように配置されているものかは特定されていない。
また、半導体処理装置などが設けられている処理室に、基板の処理を行う複数の処理装置を処理装置群として設けることは、引用文献3及び4に例示されるように周知技術といえるものの、複数の処理装置がどのように配置されているかまでは周知技術とはいえない。
そうすると、引用発明において、複数の処理装置が配置されていたとしても、Y方向に沿って設けられているレール10に対して当該複数の処理装置がどのように配置されているかは不明であるから、レール10に沿って+Y方向に走行する天井走行車20を、Y方向と直交する方向に移動させる動機付けは無いというべきである。
してみれば、引用発明に対し、引用文献2に記載された事項を採用する動機付けは無いから、引用発明に対し、引用文献2に記載された事項を採用して、上記相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことではない。

したがって、上記相違点1及び3について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び引用文献3〜4に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明2〜7について
本願発明2〜7は、本願発明1を減縮したものであって、本願発明1の「走行レール」が「第1方向に直線状に延在する複数の第1レールと、前記第1方向に直交する第2方向に延在する複数の第2レールと、を有し、複数の前記第1レールと複数の前記第2レールとが同一面上に格子状に配置され」ており、「所定の工程の処理を実施する第1の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第1の停止位置に前記台車が乗り入れ自在であり、且つ、前記第1の停止位置から前記所定の工程とは異なる工程の処理を実施する第2の処理装置群における各前記移載ポートの直上に前記移載部が配置される第2の停止位置へ前記台車が乗り入れ自在に配置されて」いる点と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明並びに引用文献2に記載された事項及び引用文献3〜4に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-03-14 
出願番号 P2018-502587
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65G)
P 1 8・ 561- WY (B65G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 尾崎 和寛
中村 大輔
発明の名称 搬送システム  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 安田 亮輔  
代理人 阿部 寛  
代理人 黒木 義樹  

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