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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1387036
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-05 
確定日 2022-07-25 
事件の表示 特願2019−116590「着用可能電子機器のための竜頭入力」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年11月 7日出願公開、特開2019−194892、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年9月3日 米国、2013年9月3日 米国、2013年9月3日 米国、2013年9月3日 米国、2013年9月3日 米国)を国際出願日とする出願である特願2016−537945号の一部を平成30年5月8日に新たな特許出願としたものである特願2018−90084号の、更にその一部を令和元年6月24日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 元年11月 6日 :手続補正書の提出
令和 2年 9月29日付け:拒絶理由通知書
令和 2年12月28日 :意見書の提出
令和 3年 3月10日付け:拒絶査定
令和 3年 7月 5日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 4年 2月 2日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年 5月 6日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和3年3月10日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1〜10に係る発明は、以下の引用文献A,Bに記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特開2001−202178号公報
引用文献B:特表2010−515978号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年2月2日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1〜10に係る発明は、以下の引用文献1〜5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2001−202178号公報(拒絶査定時の引用文献A)
引用文献2:特表2010−515978号公報(拒絶査定時の引用文献B)
引用文献3:特開2012−27797号公報
引用文献4:特開2004−178584号公報
引用文献5:特表2012−531607号公報

第4 本願発明
本願請求項1〜9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明9」という。)は、令和4年5月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりの発明である。

「【請求項1】
コンピュータによって実行される方法であって、
電子機器の物理的な竜頭に関連付けられる竜頭位置情報を受信することと、
前記受信した竜頭位置情報に基づいて前記物理的な竜頭の回転が生じたと判定することと、
前記物理的な竜頭の前記回転が生じたと判定したことに応じて、前記電子機器のタッチ感知ディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールすることと、
前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしている間に、前記物理的な竜頭の前記回転が停止したと判定することと、
前記物理的な竜頭の前記回転が停止したことと、前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューが、前記コンテンツの前記所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの前記端を超えてスクロールするように、スクロールしたこととを判定したことに応じて、前記コンテンツの前記所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの前記端により近づくように、前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューを前記第1の方向と異なる第2の方向にスクロールすることと、
を含む、コンピュータによって実行される方法。」

なお、本願発明2〜6は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7〜9は、方法の発明である請求項1〜6のいずれかを引用する形式のプログラムの発明又は「電子機器」の発明である。

第5 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1、引用発明1
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献1(特開2001−202178号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0087】(携帯機器のハードウエア構成について)図1Aには、携帯機器1の外観図が概略的に示されている。本例の携帯機器1は、装着者の腕等に装着可能となるように、小型且つ軽量に形成されており、具体的には、装着者の腕に装着される図示しない腕装着部と、この腕装着部に接続された例えばLCDディスプレイ等にて形成される表示手段としての表示部13と、表示部13の上下左右に形成されて表示画面の各種の操作を行なう操作手段としての操作部14と、を有している。
【0088】操作部14は、回転入力部であるリューズ14Aと、リューズ14Aの上方にあるズームインボタン14B、リューズの下方にあるズームアウトボタン14C、表示部の下方にあるファンクションボタン14D、録音ボタン14Eを形成している。
【0089】リューズ14Aは、図1Aの矢印R又はS方向に回転させる回転操作と、T方向で押し引き可能な押す操作と、の2つの操作が可能な構成としている。この回転操作により、カーソルの上下方向(U、V)の移動を行い、カーソルが画面の上端又は下端にくると、画面の上方向(U)又は下方向(V)へのスクロールが可能となる。
【0090】ズームインボタン14Bは、スケジュール表示モード内における、5時間モード、12時間モード、1週間モード、1ヶ月モード、1年モードへとモード切換を行なうものであり、戻る場合には、ズームアウトボタン14Cを操作する。また、ズームアウトボタン14Cは、アイコンの選択を行い、下位メニュー画面を表示するものである。ズームインボタン14Bとズームアウトボタン14Cを同時に押すと、いかなる画面であっても、現在の時刻を表示する1日5時間のスケジュール表示モードに戻ることができる。
【0091】さらに、携帯機器1は、図2に示すように、携帯機器1の制御を司どるCPU18を有し、そのバスラインには、操作部14及び表示部13が接続される。なお、図3、4に示す表示制御部の機能は、CPU18の表示駆動機能および表示部13内の図示しない表示用インターフェースにより実現される。」

「【0121】(スクロール)図7に示すように、リューズを回転させて、画面をスクロールさせる。ここで、リューズの回転とスクロールの速さが一致するようにしている。
【0122】ここで、スクロール処理を行なうには、先ず、図23Aに示すように、リューズを回転させ(S100)、処理A(S101)によって、回転方向を決定する。
【0123】即ち、S101の処理Aでは、先ず、回転方向が上回転か下回転かを判断する(S110)。次いで、上方向に回転した場合には、上方向に回転した分の回転量例えば回転角度、回転数等を検出する(S111a)。次いで、検出した回転量に対する表示画面上でのスクロール移動量を、予め記憶部等にて用意されている回転量−スクロール移動量変換テーブル等を用いて算出する(S112a)。その後、算出されたスクロール移動量の分だけ、表示制御部にて表示画面の移動処理、即ち表示画面の更新処理を行なう(S113a)。このようにすることで、表示画面スクロール処理(S102)に到達できる。
【0124】尚、このスクロール処理に係る表示画面の更新処理にあっては、スクロールにより上方向に移動した分Yが、表示画面の横方向のサイズY1よりも少ない場合には、更新する必要のない旧データの表示領域Y1−Y分は、一旦状態を保持して表示画像を残しておき、新規に表示される領域Yの部分のみを追加するような更新処理を行なうことが好ましい。こうすると、スクロール時の処理速度の向上等を図ることができる。また、S110で、下方向に回転した場合には、S111b〜S113bに示すように、S111a〜S113a同様の処理を行なう。尚、S112bでは、回転量−スクロール移動量変換テーブルを下回転用に専用に設けているが、上回転用のものを兼用しても良い。
【0125】そして、スクロール処理に関する表示処理を行う(S102)。その後、リューズ14Aの回転が停止したかを確認し(S103)、B処理を行なう(S104)。」

(図1A)「



(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「装着者の腕に装着される腕装着部と、表示部13と、表示部13の上下左右に形成されて表示画面の各種の操作を行なう操作手段としての操作部14と、を有する携帯機器1であって、
操作部14は、回転入力部であるリューズ14Aを形成し、リューズ14Aは、R又はS方向に回転させる回転操作が可能な構成としており、この回転操作により、カーソルの上下方向(U、V)の移動を行い、カーソルが画面の上端又は下端にくると、画面の上方向(U)又は下方向(V)へのスクロールが可能となり、
制御を司どるCPU18を有する携帯機器1におけるスクロール処理の方法であって、
リューズを回転させ、
回転方向が上回転か下回転かを判断し、次いで、上方向に回転した場合には、上方向に回転した分の回転量例えば回転角度、回転数等を検出し、次いで、検出した回転量に対する表示画面上でのスクロール移動量を、予め記憶部等にて用意されている回転量−スクロール移動量変換テーブル等を用いて算出し、その後、算出されたスクロール移動量の分だけ、表示制御部にて表示画面の移動処理、即ち表示画面の更新処理を行なう、
スクロール処理の方法。」

2 引用文献2、引用発明2
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献2(特表2010−515978号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0113】
図5は、ある実施形態に基づいてリストをスクロールする方法500を示すフローチャートである。この方法500は、リストの末端に到達したという簡単な視覚指示子をユーザに与える。
【0114】
装置のタッチスクリーンディスプレイ上又はその付近でオブジェクトの移動が検出される(502)。ある実施形態では、オブジェクトは、指である。ある実施形態では、装置は、ポータブルマルチファンクション装置である。
【0115】
移動を検出するのに応答して、タッチスクリーンディスプレイに表示されるアイテムのリストが第1方向にスクロールされる(504)。ある実施形態では、リストは、図6A−6Dに示すe−メールメッセージのリストである。ある実施形態では、アイテムのリストは、インスタントメッセージ会話のリスト、好きな電話番号のリスト、連絡先情報のリスト(時々、連絡先リスト又はアドレス帳リストとも称される)、ラベルのリスト、e−メールフォルダのリスト、e−メールアドレスのリスト、物理的アドレスのリスト、着信音のリスト、アルバム名のリスト、又はブックマークのリストである。ある実施形態では、第1方向は、垂直方向であり、ある実施形態では、第1方向は、水平方向である。ある実施形態では、リストの末端に到達する前にリストを第1方向にスクロールすることは、オブジェクトの移動スピードに対応する関連スクロールスピードを有する(506)。ある実施形態では、リストは、摩擦を有する運動の方程式のシミュレーションに基づいてスクロールされる(508)。
【0116】
タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近でオブジェクトがまだ検出されている間にリストを第1方向にスクロールする間にリストの末端に到達した場合には(例えば、リストの末端に到達すると)、リストの末端を越えるエリアが表示される(510−イエス、514)。ある実施形態では、リストは、最初のアイテム及び最後のアイテムを有し、そして末端は、最初のアイテム又は最後のアイテムのいずれかである。例えば、図6Bにおいて、Aaron Jonesからのe−メール3534は、最初のアイテムであり、従って、e−メールの対応リストの末端である。ある実施形態では、リストの末端を越えるエリアはホワイトである(516)。ある実施形態では、アイテムのリストが背景を有し、そしてリストの末端を越えるエリアは、背景と視覚上差がない(518)。例えば、図6Cにおいて、リストされたe−メールの背景及びエリア3536の両方がホワイトである。
【0117】
タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近でオブジェクトがもはや検出されなくなった後に、アイテムのリストは、第1方向とは逆の第2方向にスクロールされ、やがて、リストの末端を越えるエリアがもはや表示されなくなる(520)。ある実施形態では、リストは、制動運動を使用して第2方向にスクロールされる(522)。ある実施形態では、リストを第1方向にスクロールすることから、リストの末端を越えるエリアがもはや表示されなくなるまでリストを第2方向にスクロールすることへの切り換えは、リストの末端が、見掛け上、タッチスクリーンディスプレイの縁又はタッチスクリーンディスプレイに表示される縁に弾力で取り付けられるようにする(524)。」

(2)上記(1)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「装置のタッチスクリーンディスプレイ上でオブジェクトの移動が検出され、オブジェクトは、指であり、
移動を検出するのに応答して、タッチスクリーンディスプレイに表示されるアイテムのリストが第1方向にスクロールされ、
タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近でオブジェクトがまだ検出されている間にリストを第1方向にスクロールする間にリストの末端に到達した場合には、リストの末端を越えるエリアが表示され、
タッチスクリーンディスプレイ上でオブジェクトがもはや検出されなくなった後に、アイテムのリストは、第1方向とは逆の第2方向にスクロールされ、やがて、リストの末端を越えるエリアがもはや表示されなくなる、
リストをスクロールする方法500。」

3 引用文献3
(1)当審拒絶理由にて引用された引用文献3(特開2012−27797号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0031】
図4は本実施形態の一覧表示画面においてスクロールを行い画面端部まで到達した場合にスクロールが跳ね返る処理を示す模式図である。
【0032】
図4(a)は、図3(a)〜(c)の状態を経て更に図3(c)よりちょうど1行分下にスクロールし、上端に到達した状態を示しており、画像0:1が全ての画像における先頭画像であり、0行目が上端となる。
【0033】
図4(b)は、図3(a)〜(c)及び図4(a)の状態を経て更に下にスクロールした状態を示しており、先頭画像を含む0行目が最上段となる位置から規定量だけ下にスクロールを行う。ここで、図4(a)から図4(b)までの状態を跳ね返り(行き)中と呼ぶ。
【0034】
図4(c)は、図3(a)〜(c)及び図4(a)〜図4(b)の状態を経た後、上に跳ね返って反対方向にスクロールし、図4(a)と同じ位置で停止した状態を示している。ここで、図4(b)から図4(c)までの状態を跳ね返り(戻り)中と呼ぶ。」

(2)上記(1)から、引用文献3には、次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「一覧表示画面においてスクロールを行い画面端部まで到達した場合にスクロールが跳ね返る処理の方法であって、
上端に到達した状態を経て更に下にスクロールした状態において、先頭画像を含む0行目が最上段となる位置から規定量だけ下にスクロールを行い、
上端に到達した状態を経て更に下にスクロールした状態を経た後、上に跳ね返って反対方向にスクロールし、上端に到達した状態と同じ位置で停止する、
方法。」

4 周知技術
(1)引用発明2及び引用文献3記載事項について、次のことがいえる。

ア 引用発明2の「タッチスクリーンディスプレイに表示されるアイテムのリストが第1方向にスクロールされ」ること、及び、引用文献3記載事項の「一覧表示画面においてスクロールを行う」ことは、いずれも、電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを特定の方向にスクロールすることである。

イ 引用発明2の「タッチスクリーンディスプレイ上又はその付近でオブジェクトがまだ検出されている間にリストを第1方向にスクロールする間にリストの末端に到達した場合には、リストの末端を越えるエリアが表示され」ること、及び、引用文献3記載事項の「上端に到達した状態を経て更に下にスクロールした状態において、先頭画像を含む0行目が最上段となる位置から規定量だけ下にスクロールを行」うことは、いずれも、電子機器のディスプレイ上に表示されたビューが、コンテンツ(表示内容)の所定部分がディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールした状態である。

ウ 引用発明2の「アイテムのリストは、第1方向とは逆の第2方向にスクロールされ、やがて、リストの末端を越えるエリアがもはや表示されなくなる」こと、及び、引用文献3記載事項の「上端に到達した状態を経て更に下にスクロールした状態を経た後、上に跳ね返って反対方向にスクロールし、上端に到達した状態と同じ位置で停止する」ことは、いずれも、上記イのコンテンツの所定部分が、ディスプレイの端により近づくように、電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを上記アの特定の方向と異なる方向にスクロールすることである。ここで、特定の方向、異なる方向を、それぞれ「第1の方向」、「第2の方向」と称することは任意である。

エ 上記ウの異なる方向のスクロールは、コンテンツの所定部分が表示されたことを受けてなされるから、当該スクロールは、電子機器のディスプレイ上に表示されたビューが、コンテンツの所定部分がディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしたことを判定したことに応じてなされることが明らかである。

(2)上記(1)から、引用発明2及び引用文献3記載事項は、
「電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールし、
電子機器の前記ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしたことを判定したことに応じて、前記コンテンツの前記所定部分が前記ディスプレイの前記端により近づくように、前記電子機器の前記ディスプレイ上に表示された前記ビューを前記第1の方向と異なる第2の方向にスクロールすること」
である点で共通しており、このような事項は、周知技術であるといえる。

第6 当審拒絶理由について(引用発明1との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明1の「スクロール処理の方法」が、「携帯機器1」の「制御を司どるCPU18」で実行されることは明らかである。また、このことから、「携帯機器1」は、コンピュータの一種であるといえる。
よって、引用発明1と本願発明1とは、後述する相違点は別として、
「コンピュータによって実行される方法」
である点で一致している。

(イ)引用発明1の「携帯機器1」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。また、引用発明1の「携帯機器1」の「操作部14」における「リューズ14A」は「回転操作が可能な構成」であるから、物理的に回転可能であり、本願発明1の「物理的な竜頭」に相当する。
また、引用発明1は、「リューズを回転させ、回転方向が上回転か下回転かを判断し、次いで、上方向に回転した場合には、上方向に回転した分の回転量例えば回転角度、回転数等を検出し、次いで、検出した回転量に対する表示画面上でのスクロール移動量を、予め記憶部等にて用意されている回転量−スクロール移動量変換テーブル等を用いて算出し、その後、算出されたスクロール移動量の分だけ、表示制御部にて表示画面の移動処理、即ち表示画面の更新処理を行なう」との構成を備えるものである。
ここで、「リューズ」について「検出」される「回転量例えば回転角度、回転数」のうちの「回転角度」は、回転位置であるということができ、本願発明1の「物理的な竜頭に関連付けられる竜頭位置情報」に相当する。
また、上記「検出」の実行主体は、「回転角度」等を受信し、「回転角度」に基づいて、「リューズ」の「上回転」又は「下回転」が生じたと判定するといえる。
以上のことから、引用発明1は、本願発明1の
「電子機器の物理的な竜頭に関連付けられる竜頭位置情報を受信することと、
前記受信した竜頭位置情報に基づいて前記物理的な竜頭の回転が生じたと判定すること」
に相当する構成を備えるものである。

(ウ)引用発明1では、「リューズ14Aは、R又はS方向に回転させる回転操作が可能な構成としており、この回転操作により、カーソルの上下方向(U、V)の移動を行い、カーソルが画面の上端又は下端にくると、画面の上方向(U)又は下方向(V)へのスクロールが可能とな」ることから、上記(イ)で述べた引用発明1の構成において、「リューズ」を「上方向に回転した場合」に、「上方向に回転した分の回転量例えば回転角度、回転数等を検出し、次いで、検出した回転量に対する表示画面上でのスクロール移動量を」「算出し」、「その後、算出されたスクロール移動量の分だけ、表示制御部にて表示画面の移動処理、即ち表示画面の更新処理を行なう」ことによってなされる「スクロール」の方向は、「リューズ」を「上方向に回転した」ことに対応した、「上方向(U)又は下方向(V)」のいずれかの方向であること(具体的には、「上方向(U)」であると考えられる。)が明らかである。
したがって、引用発明1は、「リューズ」の「上回転」又は「下回転」が生じたと判定したことに応じて、「表示画面」を「リューズ」の回転方向に対応した方向にスクロールするものであるといえる。
ここで、「表示画面」は、「携帯機器1」の「表示部13」上の表示であることが明らかであり、本願発明1の「表示されたビュー」に相当し、「表示部13」と本願発明1の「タッチ感知ディスプレイ」とは、「ディスプレイ」である点で共通している。また、上記スクロールの方向を、「第1の方向」と称することは任意である。
以上の点について、上記(イ)で検討した点も踏まえると、引用発明1と、本願発明1の
「前記物理的な竜頭の前記回転が生じたと判定したことに応じて、前記電子機器のタッチ感知ディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールすること」
とは、
「前記物理的な竜頭の前記回転が生じたと判定したことに応じて、前記電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールすること」
という点で共通する。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
「コンピュータによって実行される方法であって、
電子機器の物理的な竜頭に関連付けられる竜頭位置情報を受信することと、
前記受信した竜頭位置情報に基づいて前記物理的な竜頭の回転が生じたと判定することと、
前記物理的な竜頭の前記回転が生じたと判定したことに応じて、前記電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールすることと、
を含む、コンピュータによって実行される方法。」

ウ また、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の「電子機器」の「ビュー」が「表示され」るのは、「タッチ感知ディスプレイ」であるのに対して、引用発明1の「携帯機器1」の「表示画面」が表示される「表示部13」について、その方式が「タッチ感知」式のものであるとは特定されない点。

(相違点2)
本願発明1は、
「前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしている間に、前記物理的な竜頭の前記回転が停止したと判定することと、
前記物理的な竜頭の前記回転が停止したことと、前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしたこととを判定したことに応じて、前記コンテンツの前記所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの前記端により近づくように、前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューを前記第1の方向と異なる第2の方向にスクロールすること」
を含むのに対して、引用発明1は、そのような処理を含むものではない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
本願発明1の相違点2に係る構成のうちの、特に「前記電子機器の前記タッチ感知ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記タッチ感知ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしている間に、前記物理的な竜頭の前記回転が停止したと判定すること」との事項については、引用文献1〜5のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
上記第5の4(2)のとおり、
「電子機器のディスプレイ上に表示されたビューを第1の方向にスクロールし、
電子機器の前記ディスプレイ上に表示された前記ビューが、コンテンツの所定部分が前記ディスプレイの端を超えてスクロールするように、スクロールしたことを判定したことに応じて、前記コンテンツの前記所定部分が前記ディスプレイの前記端により近づくように、前記電子機器の前記ディスプレイ上に表示された前記ビューを前記第1の方向と異なる第2の方向にスクロールすること」
は周知技術といえるものの、上記事項に対応する部分を含むものではない。
また、引用発明2は、「装置のタッチスクリーンディスプレイ上でオブジェクトの移動が検出され、オブジェクトは、指であり」、「タッチスクリーンディスプレイ上でオブジェクトがもはや検出されなくなった後に、アイテムのリストは、第1方向とは逆の第2方向にスクロールされ」るものであるが、このことから直ちに上記事項が容易に想到し得るとすることはできない。
なお、引用文献4,5は、いずれも、腕時計等においてタッチ感知ディスプレイを用いることを開示するものであって(引用文献4について段落【0021】等、引用文献5について段落【0041】〜【0042】等を参照。)、上記事項とは無関係である。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1〜5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2〜9について
本願発明2〜6は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明7〜9は、方法の発明である請求項1〜6のいずれかを引用する形式のプログラムの発明又は「電子機器」の発明であるから、いずれも、相違点2に対応する発明特定事項を含む。そうすると、本願発明2〜9も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜5に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 小括
以上のとおりであるから、当審拒絶理由は解消した。

第7 原査定についての判断
令和4年5月6日に提出された手続補正書により補正された請求項1〜9は、相違点2に係る技術的事項を有するものとなった。
そして、当該技術的事項は、原査定における引用文献A,B(引用文献1,2)には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1〜9は、当業者であっても、原査定における引用文献A,Bに基づいて容易に発明をすることができたものではない。
よって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-12 
出願番号 P2019-116590
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 富澤 哲生
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 着用可能電子機器のための竜頭入力  
代理人 特許業務法人大塚国際特許事務所  

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