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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1387037
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-05 
確定日 2022-01-04 
事件の表示 特願2018−500991「内視鏡及び内視鏡の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日国際公開、WO2017/145467、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、2016年(平成28年)11月22日(優先権主張 平成28年2月25日)を国際出願日とする出願であって、令和2年11月2日付けで拒絶理由が通知され、令和3年3月5日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月7日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、同年7月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年4月7日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1−6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、並びに、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2014−180512号公報
2.実願昭57−177998号(実開昭59−82002号)のマイクロフィルム
3.特開平10−288388号公報
4.特開2007−113196号公報

第3 本願発明
本願請求項1−7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明7」という。)は、令和3年3月5日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりの発明である。

「 【請求項1】
一列に並べられた複数の環状の駒を有し、隣り合う二つの前記駒が互いに回動可能に連結された湾曲部と、前記湾曲部の一方の端部に配置された基端駒と連結される接続環を有する軟性部と、を含む挿入部と、
前記基端駒と前記接続環とを連結する少なくとも一つの連結部材と、
を備え、
前記接続環は、前記基端駒に内嵌する連結部を有し、
前記基端駒には、当該基端駒の端から軸方向に延びる少なくとも一つの切り欠きが設けられており、
前記連結部の外周面には、前記基端駒との嵌合に伴って前記切り欠きのそれぞれに挿し込まれ、前記基端駒と前記接続環との軸まわりの相対回転に対して前記基端駒と回転方向に係合する少なくとも一つの突起であって、前記接続環と一体に形成された突起が設けられており、
前記連結部材は、前記基端駒及び前記連結部に着脱可能に装着され、前記基端駒と前記接続環との軸方向の相対移動に対して前記基端駒及び前記連結部と軸方向にそれぞれ係合するものであって、
弾性変形可能な帯板部と、前記帯板部の両端からそれぞれ延設された一対の係止部とを有し、
前記基端駒には、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第1の係合孔が設けられており、
前記連結部には、前記一対の第1の係合孔と重なり、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第2の係合孔が設けられており、
前記帯板部は、前記基端駒の外周面上に配置され、
前記一対の係止部は、重なり合った二組の前記第1の係合孔及び前記第2の係合孔の組に挿通されて前記連結部の内周面にそれぞれ係合し、前記帯板部との間に前記基端駒及び前記連結部を綴じ込んでおり、
前記一対の係止部のうち一方の係止部の延設長さは他方の係止部の延設長さよりも大きい内視鏡。」

なお、本願発明2−7の概要は以下の通りである。

本願発明2−6は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明7は、本願発明1の製造方法の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2014−180512号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「【0022】
[第1実施形態]
図1において、内視鏡2は、体内に挿入される挿入部10と、挿入部10の基端部分に連設された操作部11と、操作部11に連設されたユニバーサルコード12とを備える。ユニバーサルコード12は、内視鏡2と、内視鏡2で撮影した画像信号を処理するプロセッサ装置(図示せず)、及び内視鏡2に導光される照明光を発光する光源装置(図示せず)とを接続するもので、画像信号や制御信号を送信するための信号ケーブル38(図3参照)や、照明光を導光するライトガイドなどが配設されている。
【0023】
挿入部10は、先端部13と、先端部13の基端に連設された湾曲自在な湾曲部14と、湾曲部14の基端に連設された可撓性を有する軟性部15とを有する。軟性部15は先端部13を体内の目的の位置に到達させるために数mの長さをもつ。この挿入部10では、後述する第1及び第2クリップ61,62を用いて湾曲部14と軟性部15とが接合される。
【0024】
湾曲部14は、複数個(例えば、16個)の湾曲駒20を直列に連結したものであり、先頭の湾曲駒20は先端部13に固定され、後端の湾曲駒20は軟性部15に固定されている。」

イ 「【0031】
図4及び図5に示すように、湾曲駒20は、金属製であり、複数の湾曲駒20は、各湾曲駒20の回動中心となる、連結ピン43によって連結されている。以下では、説明の都合上、複数の湾曲駒20のうち、湾曲部14の最も先端側に位置するものを湾曲駒20A、湾曲部14の最も基端側に位置するものを湾曲駒20Bとする。湾曲駒20Bは、軟性部15の接続管57Aと連結される。」

ウ 「【0037】
次に、図6〜図9を参照しながら、円筒状部品である湾曲駒20B(第1円筒状部品)と、接続管57A(第2円筒状部品)とを接合して湾曲部14と軟性部15とを連結する構造、及び接合方法について説明する。なお、円筒状部品とは、略円筒状の部品を含む。本実施形態では、2つの第1及び第2クリップ61,62(接合部品)を用いて湾曲駒20Bと、接続管57Aとが接合される。
【0038】
湾曲駒20Bは、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bが形成されている。第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bは、湾曲駒20の筒心方向において同じ位置、且つ周方向において互いに異なる位置に配される。また、湾曲駒20Bは、上述したように、先端側に連結用の舌片44が形成される。第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bは、湾曲駒20Bの外周面65aから内周面65bへ貫通する矩形状の貫通孔である。湾曲駒20Bの基端側端縁には、均等な幅で湾曲駒20Bの筒心方向に切り欠かれた4つの周方向移動規制切り欠き66が形成されている。
【0039】
接続管57Aは、内周面67bが湾曲駒20Bの外周面65aに筒心方向から挿入されて嵌合し、この嵌合状態で、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bと連通する位置に配される第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bが形成されている。第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bは、接続管57Aの筒心方向において同じ位置、且つ周方向において互いに異なる位置に配される。なお、接続管57Aの外周面67aには、上述したように外皮58が被覆されるが、これら、第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bと第1及び第2クリップ61,62が取り付けられるスペースには、被覆されないように外皮58が形成されている。また、接続管57Aの内周面67bには、第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bよりも基端側に配され、均等な幅で接続管57Aの筒心方向に突出する4つの周方向移動規制突起70が形成されている。これらの周方向移動規制突起70は、湾曲駒20Bの周方向移動規制切り欠き66と同じ幅に形成されている。接続管57A及び湾曲駒20Bの嵌合状態で、周方向移動規制突起70は、周方向移動規制切り欠き66に嵌合する。」

エ 「【0041】
図9に示すように、第1クリップ61は、第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bが配される位置に取り付けられ、第2クリップ62は、第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bが配される位置に取り付けられる。なお、図9では省略しているが、湾曲駒20B内には、上述したように、信号ケーブル38、ライトガイド、鉗子チャンネル24、送気・送水チャンネルなどが挿通されている。
【0042】
第1クリップ61は、弾性を有し、円弧状に湾曲した板状の弾性部71と、弾性部71の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部72a,72bと、貫通部72a,72bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部73a,73bとを有する。なお、ここでいう円弧状とは略円弧状であることを含む。第1クリップ61は、金属板を折り曲げ加工することにより形成されている。また、第1クリップ61の幅は、湾曲駒20B及び接続管57Aの筒心方向における第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bの長さと同じ寸法に形成されている。なお、ここでいう、第1クリップ61の幅が第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bの筒心方向長さと同じとは、筒心方向長さよりも少し短いほぼ同じ長さである場合を含む。
【0043】
第1クリップ61が湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられたとき、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bを連通させた湾曲駒20B及び接続管57Aの嵌合状態で、接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部71が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔63a,68aを貫通部72aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔63b,68bを貫通部72bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部73a,73bが配される。
【0044】
第2クリップ62は、第1クリップ61と同様に形成され、弾性を有し、円弧状に湾曲した板状の弾性部74と、弾性部74の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部75a,75bと、貫通部75a,75bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部76a,76bとを有し、第1クリップ61と同様に機能する。なお、ここでいう円弧状とは略円弧状であることを含む。第2クリップ62は、第1クリップ61と同様に金属板を折り曲げ加工することにより形成されている。また、第2クリップ62の幅は、湾曲駒20B及び接続管57Aの筒心方向における第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bの長さと同じ寸法に形成されている。なお、ここでいう、第2クリップ62の幅が第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bの筒心方向長さと同じとは、筒心方向長さよりも少し短いほぼ同じ長さである場合を含む。
【0045】
第2クリップ62が湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられたとき、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bを連通させた湾曲駒20B及び接続管57Aの嵌合状態で、接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部74が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔64a,69aを貫通部75aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔64b,69bを貫通部75bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部76a,76bが配される。」

オ 「【0047】
また、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bと、これらを貫通する貫通部72a,72b,75a,75bは筒心方向において同じ長さに形成されているため、湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向に相対移動しようとするとき、第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bと貫通部72a,72bとが当接し、第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bと貫通部75a,75bとが当接するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向にずれることを規制する。また、周方向移動規制突起70と周方向移動規制切り欠き66とが嵌合するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが周方向に相対回転することを規制する。
【0048】
第1及び第2クリップ61,62を用いて湾曲駒20Bと接続管57Aとを接合して湾曲部14と軟性部15とを連結する組立工程について説明する。先ず、図10(A)に示すように、第1及び第2クリップ61,62を取り付ける前に、接続管57Aの内周面67bに湾曲駒20Bの外周面65aを嵌合させるとともに、さらに周方向移動規制突起70と周方向移動規制切り欠き66とを嵌合させる。このとき、湾曲部14及び軟性部15には、操作ワイヤ45、コイルパイプ47等が挿通された状態となっている。
【0049】
そして、第1及び第2クリップ61,62を、外周面67aに沿って湾曲させた状態(2点鎖線に示す状態)から弾性部71,74を撓ませて、外周面67aよりも若干小さい屈曲半径となるように撓ませた状態(実線で示す状態)にする。作業者は例えば、一対の貫通部72a,72b及び一対の貫通部75a,75bが互いに近接する方向に指で力を加えて撓ませる。このとき、第1及び第2クリップ61,62は、第1連結用貫通孔63a,63bの間隔、及び第1連結用貫通孔64a,64bの最大間隔DMよりも全長Lが長く形成されているため、弾性部71,74の撓み変形により、一対の抜け止め部73a,73bの間隔、及び一対の抜け止め部76a,76bの間隔が、第1連結用貫通孔63a,63b及び第1連結用貫通孔64a,64bの間隔よりも小さくなるように撓ませる。
【0050】
図10(B)に示すように、上述のように弾性部71,74を撓ませて湾曲した状態を保ったまま、連通する第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部73a,73bの先端を挿入するとともに、連通する第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部76a,76bの先端を挿入する工程を行う。
【0051】
連通する第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bへの一対の抜け止め部73a,73b及び一対の抜け止め部76a,76bの挿入完了後、作業者は、第1及び第2クリップ61,62から指を離し、弾性部71,74を撓ませる力を解放する工程を行う。弾性を有する弾性部71,74の復元力により、弾性部71,74が外周面67aに沿って密着する状態となり、図9に示す状態のように、弾性部71,74が接続管57Aの外側且つ外周面67aに沿って配され、一対の抜け止め部73a,73b及び一対の抜け止め部76a,76bが湾曲駒20Bの内側且つ湾曲駒20Bの内周面65bに沿って配される状態となる。これにより、第1及び第2クリップ61,62が湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられ、両者が接合される。
【0052】
以上のように、第1及び第2クリップ61,62を撓ませて第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bに挿入した後、撓ませる力を解放するという容易な組立作業で、湾曲部14と軟性部15とを連結させることができる。」

カ 「【0053】
一方、メンテナンスや修理のため、湾曲部14と軟性部15との分解作業を行うときは、先ず、アングルゴム53の位置をずらし、第1及び第2クリップ61,62を露呈させる状態にする。そして、第1及び第2クリップ61,62の弾性部71,74を工具などで切断することにより、湾曲駒20Bと接続管57Aとの接合を解除して分離することができる。このため、第1及び第2クリップ61,62以外の部品を傷つけることなく、簡単に分解作業を行うことができる。そして、各部品のメンテナンス又は修理後、第1及び第2クリップ61,62を除く、湾曲部14や軟性部15の大部分を再利用することができる。また、第1及び第2クリップ61,62は、分解作業ごとに使い捨てにされるが、安価な部品であるため、メンテナンスや修理後の再組み立ての際、新品の第1及び第2クリップ61,62を用いたとしても部品交換のコストを少なくすることができる。」

(2)引用文献1の図面
引用文献1には次の図面がある。

ア 【図1】


イ 【図5】


ウ 【図6】


エ 【図7】


オ 【図8】


カ 【図9】


キ 【図10】


(3)引用文献1に記載されているに等しい事項
ア 上記「(2)」「イ」より、湾曲駒20は環状であることが看取される。

イ 上記「(2)」の「カ」及び「キ」より、第1クリップ61の一対の抜け止め部73a,73bの長さは互いに等しいこと、第2クリップ62の一対の抜け止め部76a,76bの長さは互いに等しいことが看取される。

(4)引用発明
したがって、上記(3)も踏まえると、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「体内に挿入される挿入部10を備える内視鏡2であって、
挿入部10は、湾曲自在な湾曲部14と、湾曲部14の基端に連設された可撓性を有する軟性部15とを有し、
湾曲部14は、複数個の環状の湾曲駒20を直列に連結したものであり、複数の湾曲駒20は各湾曲駒20の回動中心となる連結ピン43によって連結され、
複数の湾曲駒20のうち最も基端側に位置する湾曲駒20Bは、軟性部15の接続管57Aと、第1及び第2クリップ61,62を用いて連結され、
湾曲駒20Bは、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bが形成され、基端側端縁には湾曲駒20Bの筒心方向に切り欠かれた4つの周方向移動規制切り欠き66が形成され、
接続管57Aは、第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bが形成され、接続管57Aの内周面67bには接続管57Aの筒心方向に突出する4つの周方向移動規制突起70が形成され、
接続管57Aの内周面67bが湾曲駒20Bの外周面65aに筒心方向から挿入されて嵌合し、この嵌合状態で、第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bは第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bと連通し、周方向移動規制突起70は周方向移動規制切り欠き66に嵌合し、
周方向移動規制突起70と周方向移動規制切り欠き66とが嵌合するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが周方向に相対回転することを規制し、
第1クリップ61は、弾性を有し円弧状に湾曲した板状の弾性部71と、弾性部71の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部72a,72bと、貫通部72a,72bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部73a,73bとを有し、一対の抜け止め部73a,73bの長さは互いに等しく、
第1クリップ61が湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられたとき、接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部71が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔63a,68aを貫通部72aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔63b,68bを貫通部72bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部73a,73bが配され、
第2クリップ62は、弾性を有し円弧状に湾曲した板状の弾性部74と、弾性部74の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部75a,75bと、貫通部75a,75bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部76a,76bとを有し、一対の抜け止め部76a,76bの長さは互いに等しく、
第2クリップ62が湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられたとき、接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部74が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔64a,69aを貫通部75aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔64b,69bを貫通部75bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部76a,76bが配され、
湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向に相対移動しようとするとき、第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bと貫通部72a,72bとが当接し、第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bと貫通部75a,75bとが当接するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向にずれることを規制し、
第1及び第2クリップ61,62を用いて湾曲部14と軟性部15とを連結する組立工程では、弾性部71,74を撓ませて湾曲した状態を保ったまま、連通する第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部73a,73bの先端を挿入するとともに、連通する第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部76a,76bの先端を挿入し、
湾曲部14と軟性部15との分解作業を行うときは、第1及び第2クリップ61,62の弾性部71,74を工具などで切断し、第1及び第2クリップ61,62は分解作業ごとに使い捨てにされる、
内視鏡2。」

2.引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(実願昭57−177998号(実開昭59−82002号)のマイクロフィルム)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「以下、本考案の第1の実施例を第1図乃至第5図を参照して説明する。第1図中1は内視鏡である。この内視鏡1は挿入部2と操作部3とからなる。挿入部2は、可撓管部4の先端に湾曲管部5を介して先端構成部6が設けられている。操作部3にはユニバーサルコード7が連結されているとともに、接眼部8および上記湾曲管部5を湾曲操作する操作ノブ9などが設けられている。
上記湾曲管部5は、第2図に示すように管体である多数の節輪10・・・を上下左右方向に回動自在に連結して構成されている。最後端に位置する節輪10は、先端側に位置する小径部11と後端側に位置する大径部12とがテーパ部12aによって連設されている。大径部12の周壁には、周方向に180度ずれて径方向内 側に突出した一対の突起13,13がたとえばプレス加工などによって成形されている。
また、上記可撓管部4は第3図に示すようにフレックス14にブレード15を被嵌させて構成され、上記フレックス14の先端には管体である接続管16が接続固定されている。この接続管16は大径部17と外径寸法が上記節輪10の大径部12の内径寸法とほぼ等しい小径部18を有し、大径部17を上記フレックス14の先端部に外嵌させている。」(明細書第3頁第8行−第4頁第13行)

イ 「そして、接続管16と最後端の節輪10とは以下のごとく接続される。つまり、節輪10の大径部17に形成された一対の突起13,13を接続管16の係合孔20,20が連続形成された一対の切欠溝19,19に対応させて嵌合させ、節輪10の大径部12内に接続管16の小径部18を押し込む。」(明細書第5頁第3行−同頁第9行)

ウ 「したがって、突起13,13と係合孔20,20との係合により、節輪10と接続管16とは、軸方向引張力と圧縮力および周方向の回転力に対してずれ動くことなく接続されることになる。」(明細書第5頁第12行−第5頁第16行)

エ 「第8図乃至第10図は本考案の第3の実施例を示し、この実施例においては節輪10大径部12に切欠溝19およびこの他端に連続する係合孔20を形成する一方、接続管16の小径部18に径方向外側に突出する軸状の突起13aをたとえばプレス加工などで形成したもので、このような構成においても第1の実施例同様の節輪10と接続管16との接続を容易に行なえる。」(明細書第6頁第11行−同頁第19行)

(2)引用文献2の図面
引用文献2には次の図面がある。

ア 第8図


イ 第9図


(3)引用文献2に記載の技術
したがって、上記引用文献2には次の技術が記載されていると認められる。

「内視鏡1の挿入部2において、湾曲管部5の最後端に位置する節輪10を先端側に位置する小径部11と後端側に位置する大径部12で構成し、大径部12に切欠溝19およびこの他端に連続する係合孔20を形成し、可撓管部4先端の接続管16を大径部17と小径部18で構成し、小径部18に径方向外側に突出する軸状の突起13aを形成し、節輪10の大径部12内に接続管16の小径部18を押し込み、突起13,13と係合孔20,20との係合により、節輪10と接続管16とを周方向の回転力に対してずれ動くことなく接続する技術。」

3.引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開平10−288388号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「【0012】本発明の配管用ダクトDの分解斜視図を図1に、および、配管用ダクトDの縦断面図を図2に示す。当該配管用ダクトDは、底縁部1を有し、且つ、配管方向Xに沿って設けた側壁部材2どうしを複数の受け部材3で連結してあるダクト本体4と、当該ダクト本体4に対して着脱自在に取付け可能な底蓋部材5、および、前記ダクト本体4に対して着脱自在に取付け可能な上蓋部材6とから構成する。」

イ 「【0013】本発明の配管用ダクトDは、特に底蓋部材5に特徴を有する。当該底蓋部材5は、配管方向Xに沿った両側に、一対の前記底縁部1に対して外方から接当可能な接当辺部9を有しており、前記ダクト本体4に対して下方外方から取付け自在に構成してある。当該底蓋部材5には、配管方向Xに沿った両端部に第1係止部10および第2係止部11を設けてある。これらの第1係止部10および第2係止部11は、前記ダクト本体4の受け部材3に係止するための部材である。図1および図3に示すごとく、前記第1係止部10の先端部および前記第2係止部11の先端部には、前記受け部材3に係止させるために、前記底蓋部材5の面方向と略平行に延出した第1係止片12および第2係止片13を設けてある。これら第1係止片12および第2係止片13は、一対の側壁部材2どうしの間に容易に挿入できるよう先細状に形成してある。図3には、底蓋部材5の側面図および平面図を示すが、当該図3から明らかなごとく、配管方向Xに沿った前記第1係止片12の長さ、および前記第2係止片13の長さは、互いに異ならせて構成してある。つまり、前記底蓋部材5を前記ダクト本体4に取り付ける際には、図4に示すごとく、底蓋部材5を撓ませた状態で、隣接する受け部材3どうしの間に取付ける必要がある。その際、本構成のごとく、例えば、前記第2係止片13の長さを短く形成しておけば、先に、前記第1係止片12を一方の受け部材3に係止させたのち、第2係止片13をもう一方の受け部材3に係止させることとすれば、底蓋部材5を撓ませる量が僅かとなって、底蓋部材5の取り付け作業が容易となる。」

(2)引用文献3の図面
引用文献3には次の図面がある。

ア 【図1】


イ 【図4】


(3)引用文献3に記載の技術
したがって、上記引用文献3には次の技術が記載されていると認められる。

「配管用ダクトDのダクト本体4に対して着脱自在に取付け可能であり、両端部に設けた第1係止部10および第2係止部11をダクト本体4の受け部材3に係止する底蓋部材5において、第1係止片12の長さおよび第2係止片13の長さを互いに異ならせて構成し、第1係止片12を一方の受け部材3に係止させたのち短く形成した第2係止片13をもう一方の受け部材3に係止させることで、底蓋部材5を撓ませる量を僅かとして、底蓋部材5の取り付け作業を容易にする技術。」

4.引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2007−113196号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 「【0011】
本発明は、図1に示すように、ロールスクリーン1の先端には硬質性芯材2を包み込んだ係止部3が形成してある。この係止部3は硬質性芯材2を直接ロールスクリーン1の先端縁に縫い糸によって縫着してもよいし、ホッチキス止9で簡易に固着できる(図5参照)。また両面テープによって仮止めした後、縫い糸によって縫着する。他方、巻取軸4の外周面に長手方向に沿って係止溝5と係合溝7が穿ってある。この係止溝5には溝幅の中心より片側(係合溝側)に寄った位置に開口部6がこの溝幅より狭く形成され、この係止溝5の内部は係合溝7側の奥行きが浅く、この反対側の奥行きが長く形成してある。
【0012】
巻取軸4に形成した係止溝5の開口部6の係合溝7側縁に掛止する掛片8aを有すると共に係止溝5を閉塞する蓋片8c有し、この蓋片8cの反対側端に係合溝7の係合部7aに係合する鍵部8bを有する蓋体8を合成樹脂で形成してある。
【0013】
本発明のロールスクリーンの脱着方法について説明する。
図2に示すようにロールスクリーン1の先端に保持した硬質性の係止部3を巻取軸4の係止溝5の開口部6から奥行きの長い方に完全に挿入して嵌合する。この開口部6に蓋体8の掛片8aを挿入して開口部6の縁に掛片8a引っ掛け,図2の反時計方向に蓋体8を回動して開口部6を蓋片8cで閉塞する。これによってロールスクリーン1の先端を固定する。
【0014】
回動して巻取軸4の係止溝5を閉塞した蓋体8の他端に設けた鍵部8bを巻取軸4に穿った係合溝7の係合部7aに係合することにより蓋体8を巻取軸4に強固に固定することができる。」

(2)引用文献4の図面
引用文献4には次の図面がある。

ア 【図2】


イ 【図3】


(3)引用文献4に記載されているに等しい事項
ア 上記「(2)」の「ア」及び「イ」より、掛片8aの延設長さは鍵部8bの延設長さより大きいことが看取される。

(4)引用文献4に記載の技術
したがって、上記(3)も踏まえると、上記引用文献4には次の技術が記載されていると認められる。

「掛片8a、蓋片8c、鍵部8bを有し、掛片8aの延設長さは鍵部8bの延設長さより大きい蓋体8を、掛片8aを巻取軸4に形成した係止溝5の開口部6の縁に引っ掛け、鍵部8bを巻取軸4に穿った係合溝7の係合部7aに係合することにより、巻取軸4に強固に固定し、開口部6を蓋片8cで閉塞することによってロールスクリーン1の先端を固定する、技術。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明において、「挿入部10は、湾曲自在な湾曲部14と、湾曲部14の基端に連設された可撓性を有する軟性部15とを有し、湾曲部14は、複数個の環状の湾曲駒20を直列に連結したものであり、複数の湾曲駒20は各湾曲駒20の回動中心となる連結ピン43によって連結され、複数の湾曲駒20のうち最も基端側に位置する湾曲駒20Bは、軟性部15の接続管57Aと、第1及び第2クリップ61,62を用いて連結され」る。よって、引用発明の「湾曲駒20」、「湾曲部14」、「湾曲駒20B」、「接続管57A」、「軟性部15」は、それぞれ、本願発明1の「一列に並べられた複数の環状の駒」、「湾曲部」、「基端駒」、「接続環」、「軟性部」に相当し、引用発明の「挿入部10」は、本願発明1の「一列に並べられた複数の環状の駒を有し、隣り合う二つの前記駒が互いに回動可能に連結された湾曲部と、前記湾曲部の一方の端部に配置された基端駒と連結される接続環を有する軟性部と、を含む挿入部」に相当する。

(イ)引用発明の「第1及び第2クリップ61,62」は、「湾曲駒20B」を「軟性部15の接続管57A」と「連結」するから、本願発明1の「前記基端駒と前記接続環とを連結する少なくとも一つの連結部材」に相当する。

(ウ)引用発明において、「接続管57Aの内周面67bが湾曲駒20Bの外周面65aに筒心方向から挿入されて嵌合」している。引用発明の「接続管57A」の「湾曲駒20B」に外嵌する部分は本願発明1の「連結部」に相当し、また、引用発明の「接続管57Aの内周面67bが湾曲駒20Bの外周面65aに筒心方向から挿入されて嵌合」する点と、本願発明1の「前記接続環は、前記基端駒に内嵌する連結部を有」する点とは、「前記接続環は、前記基端駒に」嵌合「する連結部を有」する点で共通する。

(エ)引用発明において、「湾曲駒20B」は「基端側端縁には湾曲駒20Bの筒心方向に切り欠かれた4つの周方向移動規制切り欠き66が形成され」る。引用発明の「4つの周方向移動規制切り欠き66」は本願発明1の「当該基端駒の端から軸方向に延びる少なくとも一つの切り欠き」に相当し、引用発明の「湾曲駒20B」に「4つの周方向移動規制切り欠き66が形成され」る点は、本願発明1の「前記基端駒には、当該基端駒の端から軸方向に延びる少なくとも一つの切り欠きが設けられて」いる点に相当する。

(オ)引用発明において、「接続管57Aの内周面67bには接続管57Aの筒心方向に突出する4つの周方向移動規制突起70が形成され、接続管57Aの内周面67bが湾曲駒20Bの外周面65aに筒心方向から挿入されて嵌合し、この嵌合状態で、」「周方向移動規制突起70は周方向移動規制切り欠き66に嵌合し、周方向移動規制突起70と周方向移動規制切り欠き66とが嵌合するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが周方向に相対回転することを規制」している。よって、引用発明の「4つの周方向移動規制突起70」は本願発明1の「前記基端駒との嵌合に伴って前記切り欠きのそれぞれに挿し込まれ、前記基端駒と前記接続環との軸まわりの相対回転に対して前記基端駒と回転方向に係合する少なくとも一つの突起であって、前記接続環と一体に形成された突起」に相当し、引用発明の「接続管57Aの内周面67b」に「4つの周方向移動規制突起70が形成され」る点と、本願発明1の「前記連結部の外周面には、前記基端駒との嵌合に伴って前記切り欠きのそれぞれに挿し込まれ、前記基端駒と前記接続環との軸まわりの相対回転に対して前記基端駒と回転方向に係合する少なくとも一つの突起であって、前記接続環と一体に形成された突起が設けられ」る点とは、「前記連結部の」「周面には、前記基端駒との嵌合に伴って前記切り欠きのそれぞれに挿し込まれ、前記基端駒と前記接続環との軸まわりの相対回転に対して前記基端駒と回転方向に係合する少なくとも一つの突起であって、前記接続環と一体に形成された突起が設けられ」る点で共通する。

(カ)引用発明において、「第1クリップ61」及び「第2クリップ62」は「湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付けられ」、「湾曲部14と軟性部15との分解作業を行うときは、第1及び第2クリップ61,62の弾性部71,74を工具などで切断し、第1及び第2クリップ61,62は分解作業ごとに使い捨てにされる」。ここで、「湾曲部14と軟性部15との分解作業を行うとき」、「第1及び第2クリップ61,62」は、それ自体の破壊を伴うものの、取り外し可能であるから、「第1及び第2クリップ61,62」は「湾曲駒20B及び接続管57A」に着脱可能に装着されるといえる。よって、引用発明は本願発明1の「前記連結部材は、前記基端駒及び前記連結部に着脱可能に装着され」に相当する構成を具備する。

(キ)引用発明において、「第1クリップ61は、弾性を有し円弧状に湾曲した板状の弾性部71と、弾性部71の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部72a,72bと、貫通部72a,72bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部73a,73bとを有し」、「第2クリップ62は、弾性を有し円弧状に湾曲した板状の弾性部74と、弾性部74の周方向における両端から円弧中心に向かって屈曲する一対の貫通部75a,75bと、貫通部75a,75bから互いに離反する方向に向かって屈曲する一対の抜け止め部76a,76bとを有し」、「湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向に相対移動しようとするとき、第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bと貫通部72a,72bとが当接し、第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bと貫通部75a,75bとが当接するため、湾曲駒20B及び接続管57Aが筒心方向にずれることを規制」する。よって、引用発明の「弾性部71」及び「弾性部74」、「一対の抜け止め部73a,73b」及び「一対の抜け止め部76a,76b」は、それぞれ、本願発明1の「弾性変形可能な帯板部」、「前記帯板部の両端からそれぞれ延設された一対の係止部」に相当し、また、引用発明は本願発明1の「前記連結部材は」「前記基端駒と前記接続環との軸方向の相対移動に対して前記基端駒及び前記連結部と軸方向にそれぞれ係合するものであって、弾性変形可能な帯板部と、前記帯板部の両端からそれぞれ延設された一対の係止部とを有し」に相当する構成を具備する。

(ク)引用発明において、「湾曲駒20Bは、第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64bが形成され」、「接続管57Aは、第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bが形成され」、「第1及び第2クリップ61,62を用いて湾曲部14と軟性部15とを連結する組立工程では」「連通する第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部73a,73bの先端を挿入するとともに、連通する第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bから湾曲駒20Bの内側へ一対の抜け止め部76a,76bの先端を挿入」する。よって、引用発明の「第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b」、「第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69b」は、それぞれ、本願発明1の「前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第1の係合孔」、「前記一対の第1の係合孔と重なり、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第2の係合孔」に相当し、また、引用発明は本願発明1の「前記基端駒には、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第1の係合孔が設けられており、前記連結部には、前記一対の第1の係合孔と重なり、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第2の係合孔が設けられており」に相当する構成を具備する。

(ケ)引用発明の「接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部71が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔63a,68aを貫通部72aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔63b,68bを貫通部72bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部73a,73bが配され」、「接続管57Aの外周面67aに沿って弾性部74が配され、連通する第1及び第2連結用貫通孔64a,69aを貫通部75aが貫通し、連通する第1及び第2連結用貫通孔64b,69bを貫通部75bが貫通し、湾曲駒20Bの内周面65bに沿って抜け止め部76a,76bが配され」る点と、本願発明1の「前記帯板部は、前記基端駒の外周面上に配置され、前記一対の係止部は、重なり合った二組の前記第1の係合孔及び前記第2の係合孔の組に挿通されて前記連結部の内周面にそれぞれ係合し、前記帯板部との間に前記基端駒及び前記連結部を綴じ込」む点とは、「前記帯板部は」「外周面上に配置され、前記一対の係止部は、重なり合った二組の前記第1の係合孔及び前記第2の係合孔の組に挿通されて」「内周面にそれぞれ係合し、前記帯板部との間に前記基端駒及び前記連結部を綴じ込」む点で共通する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点1−2があるといえる。

【一致点】
「一列に並べられた複数の環状の駒を有し、隣り合う二つの前記駒が互いに回動可能に連結された湾曲部と、前記湾曲部の一方の端部に配置された基端駒と連結される接続環を有する軟性部と、を含む挿入部と、
前記基端駒と前記接続環とを連結する少なくとも一つの連結部材と、
を備え、
前記接続環は、前記基端駒に嵌合する連結部を有し、
前記基端駒には、当該基端駒の端から軸方向に延びる少なくとも一つの切り欠きが設けられており、
前記連結部の周面には、前記基端駒との嵌合に伴って前記切り欠きのそれぞれに挿し込まれ、前記基端駒と前記接続環との軸まわりの相対回転に対して前記基端駒と回転方向に係合する少なくとも一つの突起であって、前記接続環と一体に形成された突起が設けられており、
前記連結部材は、前記基端駒及び前記連結部に着脱可能に装着され、前記基端駒と前記接続環との軸方向の相対移動に対して前記基端駒及び前記連結部と軸方向にそれぞれ係合するものであって、
弾性変形可能な帯板部と、前記帯板部の両端からそれぞれ延設された一対の係止部とを有し、
前記基端駒には、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第1の係合孔が設けられており、
前記連結部には、前記一対の第1の係合孔と重なり、前記一対の係止部がそれぞれ挿通される一対の第2の係合孔が設けられており、
前記帯板部は、外周面上に配置され、
前記一対の係止部は、重なり合った二組の前記第1の係合孔及び前記第2の係合孔の組に挿通されて内周面にそれぞれ係合し、前記帯板部との間に前記基端駒及び前記連結部を綴じ込んでいる、内視鏡。」

【相違点1】
本願発明1は、
「連結部」は、「前記基端駒に『内』嵌」し、
「突起」は、「前記連結部の『外』周面」に「設けられ」、
「帯板部」は、「『前記基端駒の』外周面上に配置され」、
「一対の係止部」は、「『前記連結部の』内周面にそれぞれ係合」するのに対し、
引用発明は、
「連結部」(「接続管57A」の「湾曲駒20B」に外嵌する部分)は、「基端駒」(「湾曲駒20B」)に『外』嵌し、
「突起」(「周方向移動規制突起70」)は、「連結部」の「『内』周面67b」に設けられ、
「帯板部」(「弾性部71」)は、「『接続管』」(「接続管57A」)の「外周面67a」に配置され、
「一対の係止部」(「抜け止め部73a,73b」)は、「『基端駒』」(「湾曲駒20B」)の「内周面65b」に沿って配される点。

【相違点2】
本願発明1は、「前記一対の係止部のうち一方の係止部の延設長さは他方の係止部の延設長さよりも大きい」のに対し、
引用発明は、「一対の係止部」(「抜け止め部73a,73b」及び「抜け止め部76a,76b」)の長さは互いに等しい点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。
上記「第4」「3.」「(3)」のとおり、引用文献3には「配管用ダクトDのダクト本体4に対して着脱自在に取付け可能であり、両端部に設けた第1係止部10および第2係止部11をダクト本体4の受け部材3に係止する底蓋部材5において、第1係止片12の長さおよび第2係止片13の長さを互いに異ならせて構成し、第1係止片12を一方の受け部材3に係止させたのち短く形成した第2係止片13をもう一方の受け部材3に係止させることで、底蓋部材5を撓ませる量を僅かとして、底蓋部材5の取り付け作業を容易にする技術。」が記載されており、また、上記「第4」「4.」「(4)」のとおり、引用文献4には、「掛片8a、蓋片8c、鍵部8bを有し、掛片8aの延設長さは鍵部8bの延設長さより大きい蓋体8を、掛片8aを巻取軸4に形成した係止溝5の開口部6の縁に引っ掛け、鍵部8bを巻取軸4に穿った係合溝7の係合部7aに係合することにより、巻取軸4に強固に固定し、開口部6を蓋片8cで閉塞することによってロールスクリーン1の先端を固定する、技術。」が記載されており、これらは、「蓋」に関する技術である。
一方、引用発明は、板状の弾性部71,74と一対の抜け止め部73a,73b,76a,76bとを有し一対の抜け止め部73a,73b,76a,76bを連通する第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bに挿入することで湾曲部14と軟性部15とを連結する第1及び第2クリップ61,62に関するものであり、その「第1及び第2クリップ61,62」を「湾曲部14」の「湾曲駒20B」及び「軟性部15」の「接続管57A」に取り付ける際の仕様として、上記「第4」「1.」「(1)」「オ」には、作業者は一対の貫通部72a,72b及び一対の貫通部75a,75bが互いに近接する方向に指で力を加えて第1及び第2クリップ61,62の弾性部71,74を外周面67aよりも若干小さい屈曲半径となるように撓ませた状態にし、弾性部71,74を撓ませて湾曲した状態を保ったまま連通する第1連結用貫通孔63a,63b及び第2連結用貫通孔68a,68bに一対の抜け止め部73a,73bの先端を挿入するとともに連通する第1連結用貫通孔64a,64b及び第2連結用貫通孔69a,69bに一対の抜け止め部76a,76bの先端を挿入し、挿入完了後に作業者は第1及び第2クリップ61,62から指を離し弾性部71,74を撓ませる力を解放して弾性部71,74の復元力により第1及び第2クリップ61,62を湾曲駒20B及び接続管57Aに取り付け湾曲部14と軟性部15とを連結することが記載されている。
このような取り付け仕様のもと、引用発明においては、「一対の抜け止め部73a,73bの長さは互いに等しく」、「一対の抜け止め部76a,76bの長さは互いに等しく」しているのであり、これを「73a,73b」、「76a,76b」のうち一方の抜け止め部の延設長さを他方の抜け止め部の延設長さよりも大きくすると、上記取り付け仕様を実施することが困難になることから、引用発明において、「一対の抜け止め部73a,73bの長さは互いに等しく」及び「一対の抜け止め部76a,76bの長さは互いに等しく」しているのを「73a,73b」、「76a,76b」のうち一方の抜け止め部の延設長さは他方の抜け止め部の延設長さよりも大きくするという動機は生じず、むしろ阻害要因があるといえる。
してみれば、引用文献3及び4に記載の技術から「蓋」を取り付ける際には「一対の係止部のうち一方の係止部の延設長さは他方の係止部の延設長さよりも大きい」とすることは周知技術といえても、それを「蓋」ではない「板状の弾性部71,74と一対の抜け止め部73a,73b,76a,76bとを有し一対の抜け止め部73a,73b,76a,76bを連通する第1連結用貫通孔63a,63b,64a,64b及び第2連結用貫通孔68a,68b,69a,69bに挿入することで湾曲部14と軟性部15とを連結する第1及び第2クリップ61,62」に即座に適用することはなく、ましてや、引用発明は上記取り付け仕様のもと「一対の抜け止め部73a,73bの長さは互いに等しく」及び「一対の抜け止め部76a,76bの長さは互いに等しく」しているものであり、それを「73a,73b」、「76a,76b」のうち一方の抜け止め部の延設長さを他方の抜け止め部の延設長さよりも大きくすることには、上記のとおり、むしろ阻害要因があるといえる。

イ そして、本願発明1は上記相違点2に係る構成を採用することにより、「湾曲部11及び軟性部12に収容される各種の内蔵物(電線群47、チャネル48、一対のライトガイド49、及び送気送水チューブ50)との干渉を抑制して、クリップ200の装着の作業性を高めることができる。」(本願明細書の段落【0143】)という有利な効果を奏するものである。

ウ したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された事項、並びに、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2−7について
本願発明2−7は、本願発明1の上記相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された事項、並びに、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−7は、当業者であっても引用発明、引用文献2に記載された事項、並びに、引用文献3及び4に記載された周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-12-13 
出願番号 P2018-500991
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 蔵田 真彦
伊藤 幸仙
発明の名称 内視鏡及び内視鏡の製造方法  
代理人 特許業務法人航栄特許事務所  

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