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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1387077
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-07-21 
確定日 2022-07-27 
事件の表示 特願2018−503731「自動化標本堆積システム及び関連する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月13日国際公開、WO2016/164431、平成30年5月31日国内公表、特表2018−513984〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2016年(平成28年)4月6日(パリ条約による優先権主張2015年4月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年3月14日に手続補正書が2通提出され、令和元年12月12日付けで拒絶理由が通知され、令和2年6月16日に意見書及び手続補正書(以下「第1の補正書」という。)が提出され、同年11月13日付けで最後の拒絶理由が通知され(以下「最後の拒絶理由通知」という。)、令和3年2月16日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月15日付けで同年2月16日提出の手続補正書による手続補正が却下(以下、単に「補正却下」という。)されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がされたところ、同年7月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正について(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1〜24の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)


【請求項1】
生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システムであって、
前記1つ以上の基材を受容及び保持するための基材処理領域と、
生体試料の噴霧を標本コンテナから基材の表面に向かって配向する及び方向付けるように構成された噴霧カートリッジであって、該噴霧カートリッジが噴霧ノズルを含み、該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている、該噴霧カートリッジと、
前記噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に対して整列させるように構成された1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリと、
前記基材の前記表面上での蒸発を強化するために前記基材を加熱するように構成された加熱機構と、を備える、前記標本堆積システム。
【請求項2】
前記位置付けアセンブリが、
標本コンテナを操作し、前記基材処理領域へ送達し、
前記標本コンテナを噴霧カートリッジ内に位置付け、ならびに/または前記標本コンテナを前記噴霧カートリッジ内に位置付ける前に前記標本コンテナを撹拌するようにさらに構成される、請求項1に記載の標本堆積システム。
【請求項3】
前記噴霧カートリッジは、生体材料を輸送溶液中に含有する前記標本コンテナを受容及び保持するように構成された装着機構をさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項4】
前記標本コンテナが、輸送溶液中に保管された生体材料を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項5】
前記輸送溶液が、10%〜95%のエタノールを含む、請求項3に記載の標本堆積システム。
【請求項6】
前記基材処理領域が、基材を前記基材処理領域内に移動させるための移動プラットフォームを備える、請求項1〜5のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項7】
前記基材処理領域が、前記プラットフォームに接合され、かつ前記1つ以上の基材を運搬するように構成された基材装填ステーションを備える、請求項6に記載の標本堆積システム。
【請求項8】
個別の基材が、基材カートリッジ内に収容され、前記基材カートリッジが、噴霧堆積プロセス中に生体材料の前記噴霧を含有するための噴霧保定具を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項9】
前記噴霧保定具が、前記噴霧カートリッジの前記噴霧ノズルを受容するための上部開口を含む、請求項8に記載の標本堆積システム。
【請求項10】
前記噴霧保定具が、直方体、円筒、または円錐台形状を有する、請求項8に記載の標本堆積システム。
【請求項11】
前記位置付けアセンブリが、前記標本コンテナを前記基材処理領域に対して移動させて、生体材料を含有する前記標本コンテナのうちの1つを、空の噴霧カートリッジへの送達のために連続してステージングするように構成される、請求項1〜10のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項12】
前記噴霧カートリッジが、
前記標本コンテナを付着するための取付具と、
前記標本コンテナからの前記生体材料の噴霧を方向付けるための前記噴霧ノズルと、
前記噴霧カートリッジのヘッド内の流体ポートであって、前記噴霧ノズルを前記標本コンテナ中の液体と連結するように構成された、前記流体ポートと、を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項13】
前記噴霧カートリッジの前記ヘッドが、空気ポートを備え、前記空気ポートが、圧縮空気を前記噴霧ノズルに送達するように構成される、請求項12に記載の標本堆積システム。
【請求項14】
前記位置付けアセンブリに通信可能に連結された制御装置であって、前記1つ以上の整列アセンブリに、前記基材処理領域の外側に位置付けられた第1の標本コンテナを前記基材処理領域へ移動させる、前記第1の標本コンテナを第1の噴霧カートリッジに挿入する、及び前記第1の噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に整列させるように命令するようにプログラムされた、前記制御装置をさらに備える、請求項1〜13のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項15】
生体標本を基材上に堆積させる方法であって、
生体標本を保持する複数のコンテナを、自動化標本堆積システム内のキャリアアセンブリに送達することと、
前記キャリアアセンブリを前記堆積システムの位置付けアセンブリに向かって移動させることと、
前記複数のコンテナの個別のコンテナを、前記キャリアアセンブリから前記位置付けアセンブリへ連続して移動させることと、
前記位置付けアセンブリをコンテナ受容構成からコンテナ整列構成へ移動させて、前記位置付けアセンブリにある前記個別のコンテナを基材処理領域の上側の整列された位置に移動させることと、
個別の基材を前記基材処理領域へ輸送することと、
前記生体標本を個別の基材の上部表面上に噴霧ノズルを用いて噴霧して、標本支持基材を生成すること、ここで、該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該個別の基材との距離が、該個別の基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されていると、
前記標本支持基材の上部表面上での蒸発を強化するために前記個別の基材を加熱すること、を含む、前記方法。
【請求項16】
前記個別のコンテナを、噴霧ノズルを有する個別の噴霧カートリッジ内に位置付けることをさらに含み、前記生体標本を前記個別の基材の前記上部表面上に噴霧することが、前記生体標本を前記噴霧カートリッジの前記噴霧ノズルから噴霧することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリアアセンブリを移動させることが、前記キャリアアセンブリを回転させて、前記コンテナを前記位置付けアセンブリへ連続して移動させることを含む、請求項15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個別の基材を前記基材処理領域へ輸送することが、前記個別の基材を、前記基材処理領域内の基材装填区画に沿って、その上へと押すこと、または前記個別の基材を基材ステージングデバイスから前記基材処理領域へ運搬することを含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記位置付けアセンブリをコンテナ受容構成からコンテナ整列構成へ移動させることが、コンテナを噴霧カートリッジ内に置くことを含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、顕微鏡スライドであり、前記標本支持基材が、部分波分光分析に好適である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生体標本が、前記複数の個別のコンテナのうちの少なくとも1つの中の輸送溶液中に懸濁される、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生体標本を1つ以上の基材上に堆積させるための自動化標本堆積システムであって、
標本を含有する噴霧カートリッジを基材の表面に対して整列させるように構成された位置付けアセンブリと、
基材を連続して受容及び運搬するための基材装填ステーションと、
前記基材の表面上での蒸発を強化するための加熱機構と、
前記位置付けアセンブリに通信可能に連結された制御装置であって、
(a)前記位置付けアセンブリに、前記噴霧カートリッジを前記基材装填ステーションの上側に位置付け、整列させるように命令する、
(b)圧縮空気供給源に、圧縮空気を、前記標本を前記噴霧カートリッジ上のノズルから前記基材装填ステーションによって運搬される基材に向かって噴霧する様式で前記噴霧カートリッジ内に方向付けるように命令する、ここで、該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積された細胞が重なり合うのを防止するように構成されている
(c)前記加熱機構に、前記基材を加熱するように命令するようにプログラムされた、制御装置と、
前記制御装置に通信可能に連結されたデータベースであって、前記データベースが、標本の取り込み、噴霧堆積、標本の切り替え、基材のインデックス化、及び標本支持基材処理のうちの1つ以上に関して前記制御装置に対する実行可能な指示を記憶する、データベースと、を備える、前記自動化標本堆積システム。
【請求項23】
前記基材が、顕微鏡スライドであり、前記基材が、前記システムの内部環境内への前記標本の過噴霧を阻止するように構成された噴霧保定具を有する基材カートリッジ内に保持される、請求項22に記載の自動化標本堆積システム。
【請求項24】
前記制御装置が、1つ以上の噴霧堆積プログラムを実行するためのプログラム可能プロセッサを備え、前記1つ以上の噴霧堆積プログラムが、細胞型、細胞濃度、及び輸送溶液特性のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて選択される、請求項22または23に記載の自動化標本堆積システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、第1の補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜24の記載は次のとおりである。(以下、各請求項について「本件補正前請求項1」などという。)


【請求項1】
生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システムであって、
前記1つ以上の基材を受容及び保持するための基材処理領域と、
生体試料の噴霧を標本コンテナから基材の表面に向かって配向する及び方向付けるように構成された噴霧カートリッジと、
前記噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に対して整列させるように構成された1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリと、
前記基材の前記表面上での蒸発を強化するために前記基材を加熱するように構成された加熱機構と、を備える、前記標本堆積システム。
【請求項2】
前記位置付けアセンブリが、
標本コンテナを操作し、前記基材処理領域へ送達し、
前記標本コンテナを噴霧カートリッジ内に位置付け、ならびに/または前記標本コンテナを前記噴霧カートリッジ内に位置付ける前に前記標本コンテナを撹拌するようにさらに構成される、請求項1に記載の標本堆積システム。
【請求項3】
前記噴霧カートリッジは、生体材料を輸送溶液中に含有する前記標本コンテナを受容及び保持するように構成された装着機構をさらに含む、請求項1または2のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項4】
前記標本コンテナが、輸送溶液中に保管された生体材料を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項5】
前記輸送溶液が、10%〜95%のエタノールを含む、請求項3に記載の標本堆積システム。
【請求項6】
前記基材処理領域が、基材を前記基材処理領域内に移動させるための移動プラットフォームを備える、請求項1〜5のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項7】
前記基材処理領域が、前記プラットフォームに接合され、かつ前記1つ以上の基材を運搬するように構成された基材装填ステーションを備える、請求項6に記載の標本堆積システム。
【請求項8】
個別の基材が、基材カートリッジ内に収容され、前記基材カートリッジが、噴霧堆積プロセス中に生体材料の前記噴霧を含有するための噴霧保定具を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項9】
前記噴霧保定具が、前記噴霧カートリッジの噴霧ノズルを受容するための上部開口を含む、請求項8に記載の標本堆積システム。
【請求項10】
前記噴霧保定具が、直方体、円筒、または円錐台形状を有する、請求項8に記載の標本堆積システム。
【請求項11】
前記位置付けアセンブリが、前記標本コンテナを前記基材処理領域に対して移動させて、生体材料を含有する前記標本コンテナのうちの1つを、空の噴霧カートリッジへの送達のために連続してステージングするように構成される、請求項1〜10のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項12】
前記噴霧カートリッジが、
前記標本コンテナを付着するための取付具と、
前記標本コンテナからの前記生体材料の噴霧を方向付けるための噴霧ノズルと、
前記噴霧カートリッジのヘッド内の流体ポートであって、前記噴霧ノズルを前記標本コンテナ中の液体と連結するように構成された、前記流体ポートと、を含む、請求項1〜11のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項13】
前記噴霧カートリッジの前記ヘッドが、空気ポートを備え、前記空気ポートが、圧縮空気を前記噴霧ノズルに送達するように構成される、請求項12に記載の標本堆積システム。
【請求項14】
前記位置付けアセンブリに通信可能に連結された制御装置であって、前記1つ以上の整列アセンブリに、前記基材処理領域の外側に位置付けられた第1の標本コンテナを前記基材処理領域へ移動させる、前記第1の標本コンテナを第1の噴霧カートリッジに挿入する、及び前記第1の噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に整列させるように命令するようにプログラムされた、前記制御装置をさらに備える、請求項1〜13のいずれかに記載の標本堆積システム。
【請求項15】
生体標本を基材上に堆積させる方法であって、
生体標本を保持する複数のコンテナを、自動化標本堆積システム内のキャリアアセンブリに送達することと、
前記キャリアアセンブリを前記堆積システムの位置付けアセンブリに向かって移動させることと、
前記複数のコンテナの個別のコンテナを、前記キャリアアセンブリから前記位置付けアセンブリへ連続して移動させることと、
前記位置付けアセンブリをコンテナ受容構成からコンテナ整列構成へ移動させて、前記位置付けアセンブリにある前記個別のコンテナを基材処理領域の上側の整列された位置に移動させることと、
個別の基材を前記基材処理領域へ輸送することと、
前記生体標本を個別の基材の上部表面上に噴霧して、標本支持基材を生成することと、
前記標本支持基材の上部表面上での蒸発を強化するために前記個別の基材を加熱すること、を含む、前記方法。
【請求項16】
前記個別のコンテナを、噴霧ノズルを有する個別の噴霧カートリッジ内に位置付けることをさらに含み、前記生体標本を前記個別の基材の前記上部表面上に噴霧することが、前記生体標本を前記噴霧カートリッジの前記噴霧ノズルから噴霧することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記キャリアアセンブリを移動させることが、前記キャリアアセンブリを回転させて、前記コンテナを前記位置付けアセンブリへ連続して移動させることを含む、請求項15または16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個別の基材を前記基材処理領域へ輸送することが、前記個別の基材を、前記基材処理領域内の基材装填区画に沿って、その上へと押すこと、または前記個別の基材を基材ステージングデバイスから前記基材処理領域へ運搬することを含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記位置付けアセンブリをコンテナ受容構成からコンテナ整列構成へ移動させることが、コンテナを噴霧カートリッジ内に置くことを含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記基材が、顕微鏡スライドであり、前記標本支持基材が、部分波分光分析に好適である、請求項15〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生体標本が、前記複数の個別のコンテナのうちの少なくとも1つの中の輸送溶液中に懸濁される、請求項15〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
生体標本を1つ以上の基材上に堆積させるための自動化標本堆積システムであって、
標本を含有する噴霧カートリッジを基材の表面に対して整列させるように構成された位置付けアセンブリと、
基材を連続して受容及び運搬するための基材装填ステーションと、
前記基材の表面上での蒸発を強化するための加熱機構と、
前記位置付けアセンブリに通信可能に連結された制御装置であって、
(a)前記位置付けアセンブリに、前記噴霧カートリッジを前記基材装填ステーションの上側に位置付け、整列させるように命令する、
(b)圧縮空気供給源に、圧縮空気を、前記標本を前記噴霧カートリッジ上のノズルから前記基材装填ステーションによって運搬される基材に向かって噴霧する様式で前記噴霧カートリッジ内に方向付けるように命令する
(c)前記加熱機構に、前記基材を加熱するように命令するようにプログラムされた、制御装置と、
前記制御装置に通信可能に連結されたデータベースであって、前記データベースが、標本の取り込み、噴霧堆積、標本の切り替え、基材のインデックス化、及び標本支持基材処理のうちの1つ以上に関して前記制御装置に対する実行可能な指示を記憶する、データベースと、を備える、前記自動化標本堆積システム。
【請求項23】
前記基材が、顕微鏡スライドであり、前記基材が、前記システムの内部環境内への前記標本の過噴霧を阻止するように構成された噴霧保定具を有する基材カートリッジ内に保持される、請求項22に記載の自動化標本堆積システム。
【請求項24】
前記制御装置が、1つ以上の噴霧堆積プログラムを実行するためのプログラム可能プロセッサを備え、前記1つ以上の噴霧堆積プログラムが、細胞型、細胞濃度、及び輸送溶液特性のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて選択される、請求項22または23に記載の自動化標本堆積システム。」

2.補正の適否

(1)本件補正
本件補正は、概略次の補正事項からなる。
ア 本件補正前の請求項1における「噴霧カートリッジ」について、それが「噴霧ノズルを含」む点と、「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」点とについて限定を付加する補正。

イ 本件補正前の請求項15における「噴霧」について、それが「噴霧ノズルを用いて」のものである点と、その「噴霧ノズル」が「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該個別の基材との距離が、該個別の基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」点について限定を付加する補正。

ウ 本件補正前の請求項22における「噴霧カートリッジ上のノズル」について、「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積された細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」点について限定を付加する補正。

(2)本件補正について
本件補正は上記(1)のとおりであり、該各補正された請求項及びそれらを引用する請求項である、補正前の請求項1〜24に記載された発明と補正後の請求項1〜24に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下「本願翻訳文等」という。また、個々にそれぞれ、「本願明細書翻訳文」、「本願図面翻訳文」、「本願図面」という。)の記載に照らし、「噴霧ノズル」については【0047】、図4ほかに、「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積された細胞が重なり合うのを防止するように構成」される点については【0099】、【0102】、【0111】ほかに開示があるから、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

3.独立特許要件について

3−1.進歩性欠如について

(1)本件補正発明
本件補正発明は次のとおりである。ここで、各構成単位冒頭の「A」などは分説番号であり、以下、該各構成単位について「構成A」などという。

「A 生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システムであって、
B 前記1つ以上の基材を受容及び保持するための基材処理領域と、
C 生体試料の噴霧を標本コンテナから基材の表面に向かって配向する及び方向付けるように構成された噴霧カートリッジであって、
C1 該噴霧カートリッジが噴霧ノズルを含み、
C2 該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている、該噴霧カートリッジと、
D 前記噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に対して整列させるように構成された1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリと、
E 前記基材の前記表面上での蒸発を強化するために前記基材を加熱するように構成された加熱機構と、を備える、
F 前記標本堆積システム。」

(2)引用文献1に記載された事項

ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/143981号(以下「引用文献1」という。)には図面と共に次の事項が記載されている(下線は主たる引用箇所を示すべく当審にて付した。以下同様。)。

「[0006] The present invention is related to the discovery of new, improved, and versatile methods and apparatus for quickly and efficiently depositing particles, such as cells, onto substrates in a desired arrangement, and optionally inspecting them.
[0007] In one embodiment, the invention relates to an apparatus for dispensing particles in a liquid medium onto a substrate in a desired two-dimensional pattern.
The apparatus includes a dispenser having an aperture that directs the particles toward a movable target zone on the substrate. The trajectory of the movable target zone is controlled by controlling the location or orientation of the dispenser aperture, the substrate, or both.」
(当審訳:「[0006]本発明は、細胞などの粒子を基板上に所望の配列で迅速かつ効率的に堆積させ、任意に検査するための新規、改良、および汎用性の高い方法と装置の発見に関するものである。
[0007]一実施形態において、本発明は、液体媒体中の粒子を基板上に所望の二次元パターンで吐出するための装置に関するものである。
この装置は、基板上の可動ターゲットゾーンに向けて粒子を導く開口部を有するディスペンサーを含む。移動可能なターゲットゾーンの軌道は、ディスペンサー開口部、基板、またはその両方の位置や向きを制御することによって制御される。」)

「[0041] As illustrated in FIG. 1, an apparatus 100 for dispensing particles includes a dispenser 120 for dispensing particles in a liquid medium and a substrate 140 having a planar surface 142 upon which the dispensed particles are deposited.
Planar surface 142 is disposed in a facing relationship to the dispenser 120. The dispenser terminates in an aperture such as nozzle 122, through which particles pass and are directed toward the substrate. A wide variety of apertures can be used, and depending on the dispenser, the aperture can play a relatively active or a passive role in the dispensing and/or directing process. The nozzle 122 of dispenser 120 is separated from the surface 142 by a gap, which is typically filled with a gaseous medium such as air or inert gas. In some embodiments the gap can be maintained at a reduced pressure relative to the atmosphere and possibly at, or at a near vacuum.
・・・
[0043] A wide variety of dispensers 120 can be used for dispensing particles in a liquid medium onto the planar surface of the substrate. In preferred embodiments the dispenser produces a spray, preferably by aerosolizing the liquid. Other techniques of generating sprays are well known in the art, e.g., electrospraying.」
(当審訳:「[0041]図1に示されるように、粒子を分注するための装置100は、液体媒体中に粒子を分注するためのディスペンサー120と、分注された粒子が堆積される平面142を有する基板140を含む。
平面142は、ディスペンサー120と対面する関係で配置される。ディスペンサーは、ノズル122のような開口部で終端し、その開口部を通って粒子が通過し、基板に向けられる。多種多様な開口部を使用することができ、ディスペンサーによっては、開口部は、分注および/または方向付けプロセスにおいて比較的能動的な役割または受動的な役割を果たすことができる。ディスペンサー120のノズル122は、間隙によって表面142から分離されており、この間隙は、典型的には、空気又は不活性ガスなどの気体媒体で満たされている。いくつかの実施形態では、ギャップは、大気に対して低減された圧力で、場合によっては真空で、又は真空に近い状態で維持され得る。
・・・
[0043]液体媒体中の粒子を基板の平面上に吐出するために、多種多様なディスペンサー120を使用することができる。好ましい実施形態では、ディスペンサーは、好ましくは液体をエアロゾル化することによって、スプレーを生成する。スプレーを生成する他の技術は、当技術分野でよく知られており、例えば、静電噴霧がある。」)

「[0044] The dispenser directs droplets of the spray, which contain particles, to a target zone on the surface of the substrate. After a droplet lands on the substrate, the particles can remain dissolved in or suspended in the droplet for a period of time.
After landing, the droplets can change shape or move along the surface of the substrate, depending, for example, on a variety of physical parameters, including the size of the droplet, the droplet's hydrophilicity relative to that of the surface, and forces acting on the deposited droplet. Forces on a droplet can include, for example, shear forces upon landing on a moving substrate and centrifugal forces following landing on a substrate that is rotating. Deposited droplets can also come into contact with each other, joining to produce larger droplets, or dispersing across the surface of the substrate as a film. Particles in the droplets or in the film can, according to their chemical and physical properties as well as those of both the liquid and the surface, come to be deposited on the surface. As particles settle toward the surface they can come into contact with each other, possibly interacting with each other. If these interactions are strong it can be desirable to lower the concentration of particles in the liquid medium, or make other adjustments, to decrease the chance of interactions between particles and to enhance the desired and timely deposition of the particles on the substrate in the desired pattern.
・・・
[0047] It is not essential to the invention that particles remain surrounded by liquid for the duration of the deposition process. Particles can become partially or fully desolvated while exiting, or after exiting, the aperture of the dispenser. For example, droplets can break apart in flight owing to various forces such as electrostatic repulsion forces, in the case of electrospraying, or aerodynamic drag forces. In addition, liquid can evaporate from the droplet or from the film, leaving partially or fully desolvated particles.」
(当審訳:「[0044]ディスペンサーは、粒子を含むスプレーの液滴を、基板表面のターゲットゾーンに向ける。液滴が基板上に着地した後、粒子は一定期間、液滴に溶解したまま、又は液滴に浮遊したままであることができる。
着地後、液滴は、例えば、液滴のサイズ、表面に対する液滴の親水性、付着した液滴に作用する力などの様々な物理的パラメータに応じて、形状を変えたり、基板の表面に沿って移動したりすることができる。液滴に作用する力としては、例えば、動いている基板に着地した際のせん断力、回転している基板に着地した際の遠心力などが考えられる。また、付着した液滴は互いに接触し、結合してより大きな液滴となったり、膜となって基板表面に分散したりすることもある。液滴や膜中の粒子は、その化学的・物理的特性や、液体と表面の両方の特性によって、表面に堆積するようになる。粒子が表面に向かって沈降するとき、それらは互いに接触し、場合によっては相互作用することがある。この相互作用が強い場合は、液体媒体中の粒子濃度を下げるか、その他の調整を行うことで、粒子間の相互作用の機会を減らし、基板上に粒子を所望のパターンで適時に堆積させることが望ましいことがある。
・・・
[0047]粒子が堆積プロセスの間、液体によって囲まれたままであることは、本発明にとって本質的なことではない。粒子は、ディスペンサーの開口部から出る間、または出た後、部分的または完全に脱溶媒されることができる。例えば、液滴は、静電噴霧の場合には静電反発力、空気力学的抗力などの様々な力によって、飛行中にばらばらになることがある。また、液滴や膜から液体が蒸発し、部分的または完全に脱溶媒された粒子が残ることがある。」)

「[0053] The dispenser can be adjustable in the flow rate with which it dispenses liquid from the aperture and in the average size of droplets that are emitted from the aperture and of droplets that reach the surface of the substrate. The volume of liquid reaching the substrate per unit time depends in part on both the size and number of droplets in the gap between the aperture and substrate. The faster that a dispenser emits droplets or particles, the greater the number of particles that will be present in the gap at a given time.
[0054] Preferably, the dispenser is configured to produce and maintain during operation a substantial multiplicity of drop lets in the gap between the aperture and the substrate. Often, thin film formation can best be achieved by distributing a relatively large number of droplets of relatively small size over the substrate. In order to achieve the desired deposition in a relatively short period of time, it is desirable that the relatively large number of small droplets be emitted from the dispenser fairly quickly, with the result that it is desirable to have a substantial multiplicity of droplets in flight across the gap, at any one time. Spraying dispensers, such as aerosol-type dispensers are well-suited to producing such a substantial multiplicity of droplets. In contrast, some dispensing technologies tend to be configured to produce droplets that are relatively too large to be useful, or are produced too slowly to achieve substrate coverage in a desirable period of time.
Accordingly, a dispenser capable of maintaining, during operation, a substantial multiplicity of droplets in the gap is preferred. Further preferred is a dispenser that is additionally capable of producing a relatively disperse distribution of droplets.」
(当審訳:「[0053]ディスペンサーは、開口部から液体を吐出する流量、開口部から吐出される液滴の平均サイズ、基板表面に到達する液滴の平均サイズを調整することが可能である。単位時間当たりに基板に到達する液量は、開口部と基板の隙間にある液滴の大きさと数に依存する部分がある。液滴や粒子の吐出速度が速いほど、ある時点で間隙に存在する粒子の数は多くなる。
[0054] 好ましくは、ディスペンサーは、開口部と基板との間の間隙に実質的な多数の滴を生成し、動作中に維持するように構成されている。多くの場合、薄膜形成は、比較的小さなサイズの比較的多数の液滴を基板上に分散させることによって最もよく達成することができる。比較的短時間で所望の堆積を達成するために、比較的多数の小さな液滴がかなり迅速にディスペンサーから放出されることが望ましく、その結果、任意の一度に、間隙を横切って飛行中の液滴のかなりの多重度を有することが望まれる。エアゾール式ディスペンサーなどの噴霧式ディスペンサーは、このような多数の液滴を生成するのによく適している。対照的に、いくつかのディスペンサー技術は、有用であるには比較的大きすぎる液滴を生成するように構成される傾向があり、または望ましい期間内に基板被覆を達成するにはあまりにもゆっくりと生成される。
従って、動作中に、間隙内の液滴の実質的な多重性を維持することができるディスペンサーが好ましい。さらに好ましいのは、さらに液滴の比較的分散した分布を生成することができるディスペンサーである。」)

「[0055] The dispenser can be configured to produce droplets, such as by aerosolization, either immediately before emission through the aperture or at some time or distance beforehand. In some embodiments, the preparation of a suitable gaseous suspension of particle-containing droplets can be achieved in a preliminary step or in a preliminary compartment or antechamber, and the suspension is then delivered to the dispenser.
[0056] By way of example, the sample dispenser 120 can transport a biological material to be dispensed through one or more conduits 124 to a nozzle 122 configured to generate a spray 126 containing a random dispersion of droplets (e.g., micro-droplets) of the biological sample. The random dispersion of the biological sample in the spray 126 and the controlled movement of the nozzle 122 and substrate 140 can be effective to generate a substantially uniform distribution of the biological material on the surface 142. In a preferred embodiment, the dispenser is preferably configured to dispense biological particles, e.g., blood cells, on the surface of the substrate so as to form a substantially uniform layer, preferably a mono layer. This uniformity can allow for one or more post-deposition processes (e.g., labeling, imaging, etc.), as discussed otherwise herein. The dispenser is further preferably configured to achieve a monolayer. The dispenser is also preferably configured to achieve a packing density of at least about 10%, preferably at least about 50%, and more preferably about 70% or more. This arrangement of particles on the surface 142 facilitates the rapid and sensitive downstream processing and/or analysis. In various aspects, the apparatus 100 can dispense a cell solution or suspension on the surface 142 of the substrate 140 and form a substantially uniform layer on the substrate so as to enable rapid, simple, and sensitive detection of cells and/or sub-cellular components (e.g., proteins, nucleic acids, sub-cellular complexes), with limited or no selective cell loss or sample enrichment prior to deposition on the surface of the substrate 140. As will be discussed in detail below, various post-deposition processing steps can additionally be performed to analyze a biological sample disposed on the substrate in accordance with the teachings herein.」
(当審訳:「[0055]ディスペンサーは、エアロゾル化などによる液滴の生成を、開口部から放出する直前、または予めある時間または距離で行うように構成することができる。いくつかの実施形態では、粒子含有液滴の適切な気体懸濁液の調製は、予備段階又は予備区画若しくは別室で達成することができ、その後、懸濁液はディスペンサーに送達される。
[0056] 例として、サンプルディスペンサー120は、生体サンプルの液滴(例えば、マイクロ液滴)のランダム分散を含むスプレー126を生成するように構成されたノズル122に1つ以上の導管124を通して分与されるべき生体材料を搬送することができる。スプレー126中の生物学的試料のランダムな分散と、ノズル122及び基板140の制御された移動とは、表面142上に生物学的材料の実質的に均一な分布を生成するのに有効であり得る。好ましい実施形態では、ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出するように構成されていることが好ましい。この均一性は、本明細書において別途議論されるように、1つ以上の堆積後の処理(例えば、標識化、画像化など)を可能にし得る。ディスペンサーは、さらに好ましくは、単層を達成するように構成される。ディスペンサーはまた、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは約70%以上の充填密度を達成するように構成される。表面142上の粒子のこのような配置は、迅速かつ高感度な下流処理及び/又は分析を容易にする。様々な態様において、装置100は、基板140の表面142上に細胞溶液又は懸濁液を分注し、基板140の表面への堆積の前に選択的細胞損失又はサンプル濃縮を制限又は全く行わずに、細胞及び/又は細胞下成分(例えば、タンパク質、核酸、細胞下複合体)の迅速、単純、かつ高感度の検出を可能にするように、実質的に均一な層を形成させ得る。以下で詳細に説明するように、本明細書の教示に従って基板上に配置された生体試料を分析するために、様々な堆積後処理ステップを追加で実行することができる。」)

「[0057] The arrangement of particles on the surface of the substrate can be controlled by the system in a variety of ways. For example, the fluid dispersion rate, fluid dispersion location, fluid dispersion pressure, and relative motion of the substrate and particle dispenser can be controlled so as to deposit a particle mono layer having a desired packing density. In various embodiments, the mono layer can comprise at least about 106 cells disposed on the surface. By way of another example, the cellular monolayer can comprise at least about 109 cells disposed on the surface.
・・・
[0059] More specifically, the arrangement of the particles on the surface of the substrate can be controlled in some aspects of the invention by translational or rotational movement of the substrate, the aperture (e.g., nozzle) of the dispenser, or both. With reference still to FIG. 1, it will be appreciated that the substrate 140 and the nozzle 122 can be configured to move relative to one another such that the spray 126 generated by the nozzle 122 can be sequentially directed to various portions of the surface 142 of the substrate 140. By way of example, the controller 130 can direct a scanner 132 to translate the nozzle 122 in the x-y plane relative to the surface 142. Various motions of the nozzle 122 in the x-y plane are possible. By way of non-limiting examples, the nozzle 122 can move in the x-y plane in a grid pattern, in straight lines, in a circle or in a spiral. Moreover, although the above description indicates that the nozzle 122 moves over a stationary substrate 140, it should be understood that it is the relative movement that results in the distribution of the sample on the substrate 140, as discussed in detail below. As such, it should be appreciated that a scanner could alternatively be coupled to the substrate 140 such that the nozzle 122 remains stationary while the substrate 140 moves relative thereto, again moving the nozzle relative to the substrate, such as in the x-y plane, and such as in a grid pattern, in straight lines, in a circle or in a spiral. Likewise, both the nozzle 122 and substrate 140 can be moved by one or more scanners to produce the relative movement. The one or more scanners can be connected to one or more controllers that control and coordinate their motions to produce the desired displacement of the nozzle relative to the substrate. Alternatively, the nozzle 122 can be fixed in the x-y plane but configured to pivot and thereby dispense the sample along different angular directions toward the substrate surface 142. In one aspect, the substrate can be configured to rotate as the cell dispenser dispenses the biological fluid. Finally, the dispenser can be configured to pass over a given area of the substrate more than once.
[0060] It will be appreciated that various controlled movements of the particle dispenser and substrate can be used to achieve the desired uniform distribution on the substrate. With reference now to FIGS. 2A and 2B, another exemplary embodiment of apparatus 200 in accordance with the present teachings is depicted. The apparatus 200 of FIGS. 2A and 2B is substantially similar to that of FIG. 1 but differs in that the substrate 240 is configured to rotate about a central axis (A) substantially perpendicular to the surface 242 of the substrate 240, while the nozzle 222 of the sample dispenser 220 is configured to translate along a single axis (e.g., the x-axis). As shown in FIG. 2A, for example, the substrate 240 can be coupled to a motor 260 such that the substrate 240 can rotate as the nozzle 222 directs the spray 226 to the surface 242. Though the substrate 240 depicted in FIG. 2A is coupled to a shaft 262 of the motor 260, it will be appreciated that the substrate 240 can be releasably coupled to a motor 260 using a variety of configurations including any of mechanical, magnetic, or vacuum coupling, for example. By way of example, a vacuum can be applied through the shaft 262 to the bottom surface of the substrate 240. Alternatively, the substrate 240 can be disposed on a rotating platform, for example.」
(当審訳:「[0057]基板表面上の粒子の配列は、システムによって様々な方法で制御することができる。例えば、流体分散速度、流体分散位置、流体分散圧力、および基板と粒子ディスペンサーの相対運動を制御して、所望の充填密度を有する粒子単層を堆積させることができる。様々な実施形態において、単層は、表面上に配置された少なくとも約106個の細胞から構成され得る。別の例として、細胞単層は、表面上に配置された少なくとも約109個の細胞から構成され得る。
・・・
[0059]より具体的には、基板表面上の粒子の配置は、本発明のいくつかの態様において、基板、ディスペンサーの開口部(例えば、ノズル)、又はその両方の並進又は回転運動によって制御することができる。図1をなお参照すると、ノズル122によって生成されたスプレー126が基板140の表面142の様々な部分に順次向けられるように、基板140およびノズル122が互いに相対的に動くように構成され得ることが理解されよう。一例として、コントローラ130は、表面142に対してx-y平面内でノズル122を並進させるようにスキャナ132に指示することができる。x-y平面におけるノズル122の様々な運動が可能である。非限定的な例として、ノズル122は、x-y平面内を格子状に、直線状に、円状に、または螺旋状に移動することが可能である。さらに、上記の説明は、ノズル122が静止した基板140上を移動することを示しているが、以下で詳細に議論するように、基板140上のサンプルの分布をもたらすのは相対的な移動であることを理解すべきである。このように、ノズル122が静止したままである一方、基板140がそれに対して相対的に移動し、再びノズルを基板に対して、例えばx-y平面内で、例えばグリッドパターン、直線、円または螺旋で移動させるように、スキャナを基板140に代替的に結合し得ることを理解されたい。同様に、ノズル122及び基板140の両方は、相対的な移動を生じさせるために1つ以上のスキャナーによって移動させることができる。1つ以上のスキャナは、基板に対するノズルの所望の変位を生成するためにそれらの運動を制御及び調整する1つ以上のコントローラに接続され得る。代替的に、ノズル122は、x-y平面において固定され得るが、ピボットするように構成され、それによって、基板表面142に向かって異なる角度方向に沿って試料を分注することができる。ある態様では、基板は、細胞分注機が生物学的流体を分注する際に回転するように構成され得る。最後に、ディスペンサーは、基板の所定の領域を複数回通過するように構成することができる。
[0060]粒子ディスペンサーと基板の様々な制御された動きを使用して、基板上で所望の均一分布を達成できることが理解されるであろう。ここで図2A及び図2Bを参照すると、本教示に従った装置200の別の例示的な実施形態が描かれている。
図2A及び2Bの装置200は、図1のものと実質的に類似しているが、基板240が基板240の表面242に実質的に垂直な中心軸(A)を中心に回転するように構成されている一方で、サンプルディスペンサー220のノズル222が単一の軸(例えば、X軸)に沿って並進するように構成されている点が異なっている。図2Aに示すように、例えば、ノズル222がスプレー226を表面242に向ける際に基板240が回転できるように、基板240をモータ260に結合させることができる。図2Aに描かれた基板240は、モータ260のシャフト262に結合されているが、基板240は、例えば機械的結合、磁気結合、又は真空結合のいずれかを含む様々な構成を使用してモータ260に解放可能に結合できることが理解されよう。一例として、真空をシャフト262を通して基板240の底面に印加することができる。あるいは、基板240は、例えば、回転プラットフォーム上に配置することができる。」

「[0063] In some embodiments, the particle deposition apparatus 200 of FIGS. 2A and 2B can be used for dispensing one or more biological materials on multiple substrates or can be disposed of after a single use. For example, after delivering a biological material through the nozzle 222 to the substrate 240, the substrate 240 can be removed from the enclosure 250 for further post-deposition processing and the enclosure 250 and nozzle 222 (and any portion of the apparatus 200 that contacts the biological fluid) can be disposed of. Optionally, the substrate 240, enclosure 250, and nozzle 222 can be packaged (e.g., in paper, cardboard, plastic or a combination of these) and ready for sale to the end user such that the end user can simply couple the substrate 240 to the motor 260 and the nozzle 222 to an air supply 229 and a reservoir 227 containing the sample to be dispensed, for example. Additionally or alternatively, in some aspects, the apparatus 200 or portions thereof can be suitable for a limited number of uses and subsequent sterilizations, or can be a durable device suitable for many repeated uses and sterilizations. By way of example, all or a portion of the apparatus 200 can be sterilized by autoclaving, gamma irradiation, ethylene oxide sterilization, or sterilization by other gas or radiation means.」
(当審訳:「 [0063]いくつかの実施形態では、図2A及び図2Bの粒子堆積装置200は、複数の基板上に1つ又は複数の生物材料を分注するために使用することができ、又は1回の使用後に廃棄することができる。例えば、ノズル222を通して基板240に生体材料を送達した後、基板240は、さらなる堆積後処理のために筐体250から取り外すことができ、筐体250及びノズル222(及び生体流体に接触する装置200の任意の部分)は、廃棄することができる。任意選択で、基板240、筐体250、及びノズル222は、(例えば、紙、段ボール、プラスチック、又はこれらの組み合わせで)包装され、エンドユーザが、例えば、基板240をモータ260に、ノズル222を空気供給229及び分注されるべき試料を含むリザーバ227に単に結合できるようにエンドユーザに売る準備ができるようにすることができる。加えて又は代替的に、いくつかの態様において、装置200又はその一部は、限られた回数の使用及びその後の滅菌に適することができ、又は多くの繰り返しの使用及び滅菌に適した耐久性のある装置とすることができる。例として、装置200の全てまたは一部は、オートクレーブ滅菌、ガンマ線照射、エチレンオキサイド滅菌、または他のガスまたは放射線手段による滅菌によって滅菌することが可能である。」)

「[0069] With reference now to FIG. 4, another exemplary embodiment of a particle deposition apparatus 400 in accordance with the present teachings is depicted. The apparatus 400 has a top endwall containing a port 453 to which a reservoir 427 (e.g., specimen collection tube) containing a sample can be coupled, while the sidewall 450 contains a port 459 through which an extendable arm 432 of the sample dispenser system 420 can be disposed. As shown in FIG. 4, the extendable arm 432 can additionally include a lumen through which compressed air can be delivered to the nozzle 422 for aerosolizing the sample. As such, a sample contained within the reservoir 427 can be delivered to the nozzle 422 disposed within the enclosure 450 via a flexible tube 455, while the arm 432 can be extended so as to move the nozzle 422 (e.g., radially) over a rotating substrate 440.」
(当審訳:「[0069]ここで図4を参照すると、本教示に従った粒子堆積装置400の別の例示的な実施形態が描かれている。装置400は、試料を含むリザーバ427(例えば、試料採取管)が結合され得るポート453を含む上部端壁を有し、一方、側壁450は、試料ディスペンサシステム420の伸縮可能なアーム432が配置され得るポート459を含む。図4に示すように、伸長可能なアーム432は、さらに、サンプルをエアロゾル化するために圧縮空気をノズル422に供給することができる内腔を含むことができる。このように、リザーバ427内に含まれる試料は、可撓性チューブ455を介して筐体450内に配置されたノズル422に送達され得る一方、アーム432は、回転基板440上でノズル422を(例えば、半径方向に)動かすように伸長することができる。」)

イ 引用発明
上記アの記載事項から、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。ここで、分説番号については上記(1)のとおり。各構成単位末尾の括弧内には、認定の根拠となった記載箇所を段落番号で示した。

「a 細胞などの粒子を基板上に所望の配列で迅速かつ効率的に堆積させ、任意に検査するための装置であって、([0006])
b 基板を回転可能に、基板と機械的結合、磁気結合、又は真空結合のいずれかを含む様々な構成を使用して解放可能に結合されるモータのシャフト又は回転プラットフォームを備え、結合は、例えば、真空をシャフトを通して基板の底面に印加する、又は、基板を回転プラットフォーム上に配置することで行われ、([0060])
c 液体媒体中の細胞などの粒子を基板の表面上に吐出するために、リザーバとノズルを備え、リザーバからノズルに送達された試料を静電噴霧などにより、液体をエアロゾル化することによって、スプレーを生成するディスペンサーであって、([0006]、[0041]、[0043]、[0063]、[0069])
c3 ノズルを通して基板に生体材料を送達した後、ノズル及び生体流体に接触する装置の任意の部分は、廃棄することができ、ノズルはエンドユーザがノズルを空気供給及び分注されるべき試料を含むリザーバに単に結合できるようにエンドユーザに売ることができるようにされ、([0063])
c2 ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出するように構成されており、([0056])
c4 ディスペンサーのノズルは基板の表面から間隙によって分離されており、([0041])
c5 単位時間当たりに基板に到達する液量は、開口部と基板の間隙にある液滴の大きさと数に依存し、
ディスペンサーは、開口部から液体を吐出する流量、開口部から吐出される液滴の平均サイズ、基板表面に到達する液滴の平均サイズを調整することが可能であり([0053])、
d 基板が基板の表面に実質的に垂直な中心軸を中心に回転するように構成されている一方で、ディスペンサーのノズルが単一の軸(例えば、X軸)に沿って並進するように構成され、ノズルがスプレーを基板表面に向ける際に基板が回転できるように、基板をモータに結合させることができるものであり、ノズルはスキャナによって移動させることができるものであり、([0059]、[0060])
e ディスペンサーからスプレーされた液滴は基板に着地後結合して大きな液滴や膜となることがあり、液滴や膜から液体が蒸発し、部分的または完全に脱溶媒された粒子が残ることがある、([0044]、[0047])
f 装置。」

(3)その他の引用文献の記載事項

ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2007/069586号(以下「引用文献2」という。)には次の事項が記載されている。

「[0050] 本発明のマイクロチップを用いた使用方法は、上記のいずれかに記載のマイクロチップを用いたサンプル分析方法であって、
分析対象物質を含んだ分析サンプルを、前記流路を利用して、所望の電気泳動等で分離した後、前記基板部を冷却し、分析サンプルの氷点以下の所定の低温度条件を達成し、該流路内に保持されている電気泳動等の分離済みの分析サンプルとリザーバ液を凍結させる操作を施す冷却工程と、
前記基板部を前記所定の低温度に冷却保持して、電気泳動等の分離済みの分析サンプルは凍結状態を保持した状態を維持しつつ、該流路内に付着している状態で、かつ蓋リザーバ部内の凍結したリザーバ液は、該蓋部に付着させて該流路内から離脱させるため、基板部上面と蓋部下面とを密着させ、所定の配置で接着状態を達成している接着力を開放する操作を施すため、基板部の上面から蓋部の下面を剥離するため、蓋部の端部に外力を印加し、基板部から蓋部を剥離・除去する操作を実施する蓋部剥離工程と、
前記剥離工程を終了した後、前記基板部を加熱し、該流路内に保持され、かつ、露出されている電気泳動等の分離済みの分析サンプルに対して、含まれる溶媒を乾燥させる操作を施す加熱工程を有し、これら一連の工程を実施することを特徴とする。
[0051] 上記マイクロチップを用いて上記サンプル分析方法を行うことにより、分析サンプルの分離・凍結後、前記蓋部を前記基板部から簡便に除去でき、さらに、前記基板部の加熱により、露出された分析対象物質の分離状態を保持したままで、短時間に分析サンプルを液体状態から乾燥状態にすることができる。前記乾燥後の分離済み分析対象物質は、所望の更なる分析操作で分析することができる。
・・・
[0053] 上記マイクロチップを用いて上記サンプル分析方法を行うことにより、蓋部剥離工程は複雑になるが、乾燥工程を再現性よく行うことができる。なぜなら、冷却した前記基板部から前記蓋部を除去する際に、前記基板部周囲のガス雰囲気の水分量を減らすことで、前記基板部に付着する霜の量を減少させられるからである。よって、前記基板部表面の霜が前記基板の加熱時に融解して前記流路内に流れ込み、分析対象物質の分離状態を崩すことを防止できる。加えて、付着した霜の乾燥にかかる時間も短くなる。したがって、分析サンプルの分離・凍結後、霜の付着を防止しつつ前記基板部から前記蓋部を除去でき、さらに、露出された分析対象物質の分離状態を保持したままで前記基板部の加熱を実施し、短時間に分析サンプルを液体状態から乾燥状態にすることができる。」

イ 引用文献3の記載事項
原査定の拒絶理由において提示された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2013−122462号公報(以下「引用文献3」という。)には次の事項が記載されている。

「【0018】
本発明の一つの態様により、バイオポリマーセンサーの製造方法が提供される。一つの実施態様においては、その方法には、バイオポリマーを提供する工程、そのバイオポリマーを加工してバイオポリマーマトリックス溶液を得る工程、生物学的物質またはその他の物質をそのバイオポリマーマトリックスの中に包埋させる工程、基材を提供する工程、包埋された生物学的物質を含むマトリックス溶液をその基材の上にキャストする工程、および包埋された生物学的物質を含むバイオポリマーマトリックス溶液を乾燥させて、その基材の上に固化したバイオポリマーセンサーを形成させる工程が含まれる。所望されるセンサーのタイプに応じて、バイオポリマー中、またはバイオポリマーマトリックス中に、生物学的物質に代えるかまたはそれに加えて、他の物質を包埋させてもよい。
・・・
【0020】
一つの実施態様においては、その生物学的物質は、赤血球(ヘモグロビン)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、フェノールスルホンフタレイン、またはそれらの組み合わせである。また別の実施態様においては、その生物学的物質は、以下のものである:核酸、色素、細胞、抗体、酵素、たとえば、ペルオキシダーゼ、リパーゼ、アミロース、オルガノホスフェートデヒロドゲナーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼ、グルコースオキシダーゼ、ラッカーゼ、細胞、ウイルス、タンパク質、ペプチド、小分子、薬剤、(たとえば、薬剤、色素、アミノ酸、ビタミン、抗酸化剤)、DNA、RNA、RNAi、脂質、ヌクレオチド、アプタマー、炭水化物、発色団、発光性有機化合物、たとえばルシフェリン、カロチン、および発光性無機化合物、化学色素、抗生物質、抗真菌剤、抗ウイルス薬、集光性化合物、たとえばクロロフィル、バクテリオロドプシン、プロトロドプシン(protorhodopsin)、およびポルフィリン、ならびに関連する電子的に活性な化合物、またはそれらの組み合わせ。」

「【0029】
次いで、ステップ16において、そのバイオポリマーマトリックス溶液に生物学的物質を添加する。図示した例においては、添加される生物学的物質は、生物学的に活性な物質であるが、それは、得られるバイオポリマーセンサーによって検出したい物質に基づいて選択される。別の言い方をすれば、添加される特定の生物学的に活性な物質は、製造されるバイオポリマーセンサーの所望の検知機能およびそのバイオポリマーセンサーが使用される環境に依存する。本出願の全体を通じて、「生物学的物質」、「生物学的に活性な物質」、および「有機物質」という用語は、バイオポリマーマトリックス溶液に添加し、その結果得られるバイオポリマーセンサーによって物質の検出を容易とするような、物質を指すのに使用してよい。生物学的に活性な物質の例については、以下において説明する。
【0030】
ステップ18において、バイオポリマーセンサーを製造する際のモールドとして機能する基材を提供する。これに関しては、その基材が光学デバイスであってよく、また場合によっては、製造されるバイオポリマーセンサーの上にさらに光学的な表面特徴を有していてもよい。次いで、本発明の方法に従って、ステップ20において、そのバイオポリマーマトリックス水溶液を基材の上にキャストする。
【0031】
ステップ22において、添加された生物学的物質を含む、キャストしたバイオポリマーマトリックスを乾燥させて、バイオポリマーマトリックス水溶液を固相に転移させる。これに関しては、生物学的物質を含むバイオポリマーマトリックス水溶液を、24時間などある一定時間かけて乾燥させてよく、場合によっては、バイオポリマーマトリックス水溶液の乾燥を促進させるために、弱い加熱を加えてもよい。他の乾燥法、たとえば、等温乾燥、ローラー乾燥、スプレー乾燥および加熱技術を使用してもよい。乾燥させると、包埋された生物学的物質を含むバイオポリマーセンサーが、基材の表面上に形成される。バイオポリマー膜の厚みは、基材に塗布した(生物学的物質を含む)バイオポリマーマトリックス溶液の体積に依存する。」

ウ 引用文献4の記載事項
上記補正却下において提示され、本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2001/088179号(以下「引用文献4」という。)には次の事項が記載されている。

(ア)1頁5行〜2頁24行には、段落ごとに順に以下のア1〜ア5の記載がある。
(ア1)「The present invention relates generally to methods for the use in the pathological test of cancer such as cervical cancer. More particularly, the present invention provides the methods for automatic slide preparation by spreading sample cells evenly on the slides, which is critical for the accurate diagnosis.」
(当審訳:「本発明は、一般に子宮頸がんなどのがんの病理検査に使用する方法に関するものである。より詳細には、本発明は、正確な診断のために重要な、試料細胞をスライド上に均一に広げることによる自動スライド作製の方法を提供するものである。」)

(ア2)「The traditional methods of spreading test specimens on the slide (300) for the cancer diagnosis test were proceeded as described in the figure 1. In the traditional methods, sampling was done by collecting the cells from the patient's cervix with cotten swabs or brushes. After cells have been collected, they were spreaded onto the slides. Then, the slides(300) were inserted into the fixation solution in the fixation container (100) to fix the cells(l0) and sent to pathology laboratory. Clinical pathologist took out the sample slides, dried and labeled the slides with the name and the registration number of the patients. Many labeled slides(300) placed in the staining racks (40) were inserted into the staining solution, were taken out and covered with cover glass(500) for the observation of the stained cells. The slides prepared as described above were examined in the pathology laboratory.」
(当審訳:「従来のがん診断検査用スライド(300)上に検体を広げる方法は、図1のように進められていた。従来の方法では、サンプリングは、患者の子宮頸部からコットン製の綿棒やブラシで細胞を採取することで行われていた。採取した細胞は、スライドに広げられる。その後、スライド(300)を固定容器(100)内の固定液に挿入して細胞(l0)を固定し、病理検査室へ送付した。臨床病理医は、サンプルスライドを取り出し、乾燥させ、患者の名前と登録番号をラベル付けした。染色ラック(40)に入れたラベル付きスライド(300)を染色液に浸し、取り出してカバーガラス(500)で覆い、染色された細胞を観察した。以上のようにして作製したスライドを病理検査室で検査した。」)

(ア3)「The disadvantage of the prior art process is in overlapping of sample cells due to uneven distribution of cells over the slides(300) preventing the accurate microscopic observation and causing the erroneous diagnosis of the cancer. Other disadvantages in former processes are the inconvenience of collecting and transferring of the cells into the slides, the high misdiagnosis rate due to uneven distribution of cells in the slides and the laborous work done by clinical pathologist, such as drying the slides, labeling and staining slides after placing in the staining rack. At present time, the procedure utilized for spreading cells in many of domestic hospital costs a lot and requires the imported test equipments, since it is done exactly same as in foreign countries. The process is not automated so that it can not save the time and effort.」
(当審訳:「先行技術のプロセスの欠点は、スライド(300)上に細胞が不均一に分布しているため、試料細胞が重なり、正確な顕微鏡観察ができず、癌の誤診を引き起こすことであった。その他の欠点としては、細胞の採取とスライドへの移し替えの不便さ、スライド内の細胞の偏在による高い誤診率、臨床病理医によるスライドの乾燥、ラベル付け、染色ラックに入れた後の染色などの手間のかかる作業などがある。現在、国内の多くの病院で行われている細胞散布は、海外と全く同じ手順で行われているため、検査機器の輸入が必要であり、コストもかかっています。また、自動化されていないため、手間と時間を省くことができません。」)

(ア4)「To overcome those limitations of the prior art processes, the present invention provides an improved method of spreading test sample cells on the slides for cancer diagnostic examination comprising the steps of putting the collected cervical cells into funnel-type fixation container for the fixation (Fixation step make the cells maintain their morphology, even the cells are dead.), putting the fixation container containing the cells on the separated machinery system followed by sucking the cells precipitated in the bottom of fixation container with the sucking tubes attached in the machinery system, and spreading the sucked cells onto slides fed automatically.」
(当審訳:「先行技術のプロセスのこれらの限界を克服するために、本発明は、採取した子宮頸部細胞を固定するための漏斗型固定容器に入れるステップ(固定ステップは、細胞が死んでいてもその形態を維持させる)、細胞を入れた固定容器を分離した機械システムに載せ、機械システムに取り付けられた吸引管で固定容器底部に沈殿した細胞を吸引するステップ、及び自動的に供給されるスライドに吸引した細胞を撒布するステップ、を含む癌診断検査用スライドに試験サンプル細胞を撒布する改良方法を提供している。」)

(ア5)「The advantage of the present invention is in improving uniform spreading of thicker cells in the slides compared to former processes without overlapped layers of cells, which contributes to lower the erroneous diagnosis rate, and automating the slide preparation process, which save laborous work done by clinical pathologist, such as drying the slides out of fixation container, labeling and staining them after placing in the staining rack.」
(当審訳:「本発明の利点は、従来の工程に比べ、細胞の重なりなしにスライド内の厚い細胞の均一な広がりを改善して誤診率の低下に寄与すること、及び、スライド作成工程を自動化し、固定容器から出したスライドの乾燥、ラベル付け、染色ラックに入れた後の染色など臨床病理医の労力を軽減することである。」)

(イ)3頁23行〜4頁13行
「In the process of pathological cancer test comprising spreading sample cells collected from the patient's cervix on the slides for cancer diagnostic, putting into fixation solution, drying and staining the slides placed in the rack followed by examination of prepared slides, the preferred embodiments of this invention comprises the steps of putting the collected cervical cells(10) into funnel-type fixation container(l) for the fixation, the steps of sucking the cells(10) precipitated in the bottom of fixation container (1) with the sucking tubes(2) and spreading the sucked cells onto slides(3), the steps of placing many slides(3) spreaded with cells in the staining racks (4), the steps of inserting racks (4) with slides into the staining solution for staining, the steps of covering the cells on the slides with cover slides for protection, and the step of examining the stained cells under the microscope. Another preferred embodiment of this invention comprises the steps of putting the collected cervical cells(10) into funnel-type fixation container(l) for the fixation, the steps of collecting the cells(10) in the spraying container and spraying the sucked cells onto slides(3) for the even distribution of the cells, the steps of inserting the slides (4) into the rack for staining in an automatic way, drying and examining the stained cells.」
(当審訳:「患者の子宮頸部から採取したサンプル細胞を癌診断用スライドに広げ、固定液に入れ、ラックに入れたスライドを乾燥・染色し、調製したスライドを検査する病理癌検査の工程において、本発明の好ましい実施形態は、採取した子宮頸部細胞(10)を固定用漏斗型固定容器(l)に入れるステップと、固定するステップとから成ることを特徴とする。固定容器(1)の底に沈殿した細胞(10)を吸引管(2)で吸引してスライド(3)に広げるステップ、細胞を広げた多数のスライド(3)を染色ラック(4)に入れるステップ、スライドを入れたラック(4)を染色液に挿入して染色するステップ、スライド上の細胞をカバースライドで覆って保護するステップ、染色した細胞を顕微鏡で検査するステップからなることを特徴とする。本発明の別の好ましい実施形態は、採取した子宮頸部細胞(10)を固定するために漏斗型固定容器(l)に入れるステップと、細胞(10)をスプレー容器に集め、吸い取った細胞をスライド(3)にスプレーして細胞を均一にするステップと、スライド(4)を自動で染色用ラックに挿入し、染色した細胞を乾燥し検査するステップとを含むことを特徴としている。」)

(ウ)5頁3〜8行
「Another preferred embodiments of this invention comprise the steps of putting the collected cervical cells(10) into funneltype fixation container(l) for the fixation, the steps of collecting the cells(10) in the spraying container and spraying the sucked cells onto slides(3) for the even distribution of the cells without overlapping, which enable the pathologist to examine more cells selectively under the microscope for accurate diagnosis.」
(当審訳:「本発明の別の好ましい実施形態は、採取した子宮頸部細胞(10)を漏斗型固定容器(l)に入れ固定するステップと、細胞(10)をスプレー容器に採取し、吸引した細胞をスライド(3)にスプレーして重ならないように均一に分布させるステップからなり、これにより病理医は顕微鏡で多くの細胞を選択的に観察し、正確に診断することができる。」)

(4)本件補正発明と引用発明との対比

ア 構成aの「細胞などの粒子」、「基板」はそれぞれ、構成Aの「生体試料」、「1つ以上の基材」に相当する。
よって、構成aの「細胞などの粒子を基板上に所望の配列で迅速かつ効率的に堆積させ、任意に検査するための装置」及び同義の構成fの「装置」は、それぞれ、構成Aの「生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システム」及び構成Fの「標本堆積システム」に相当する。

イ(ア)構成bにおいて、基板と「モータのシャフトまたは回転プラットフォーム」とが「基板を回転可能に、」「機械的結合、磁気結合、又は真空結合のいずれかを含む様々な構成を使用して解放可能に結合される」こと、「真空をシャフトを通して基板の底面に印加する」こと、及び「基板を回転プラットフォーム上に配置すること」は、モータのシャフトや回転プラットフォームが基板と「解放可能」すなわち着脱可能に結合することであり、ここでの「結合」は基板(基材)からみて構成Bの「保持」されていることに相当するといえる。
(イ)構成bの「回転プラットフォーム」が構成Bの「基材を受容及び保持するための基材処理領域」に相当し、「基板を回転プラットフォーム上に配置する」ことが構成Bの「受容及び保持」に相当することは明らかである。
(ウ)また、構成bにおいて「シャフト」も、「例えば、真空をシャフトを通して基板の底面に印加する」などの形態で「基板」を着脱可能に結合(保持)するのであるから、「シャフト」が「基板」を結合(保持)することは、構成Bの基板を「保持」することに相当し、該「シャフト」が基板(基材)の結合対象となる部位(面)を備えることが明らかであり、当該部位(面)が基板(基材)を結合させている状態は構成Bの「受容」に相当し、当該部位(面)は構成Bの「基材処理領域」に相当するといえる。

ウ(ア)構成cの「スプレー」、「リザーバ」、「ノズル」はそれぞれ、構成Cの「噴霧」、「標本コンテナ」、構成C1の「噴霧ノズル」に相当する。
(イ)構成cで、前記スプレーが「液体媒体中の細胞などの粒子を基板の表面上に吐出するため」のものであること、すなわち、スプレーが基板の表面上に対して行われることは、構成Cの「生体試料の噴霧を・・・基材の表面に向かって配向する及び方向付ける」ことに相当する。
(ウ)構成cで、「スプレー」が「リザーバからノズルに送達された試料を静電噴霧などにより、液体をエアロゾル化することによって、」「生成」されることは、構成Cで「噴霧」が「標本コンテナから」行われることに相当する。
(エ)構成c3における、「ノズル及び生体流体に接触する装置の任意の部分は、廃棄することができ」ること、及び「ノズルはエンドユーザがノズルを空気供給及び分注されるべき試料を含むリザーバに単に結合できるようにエンドユーザに売ることができる」ことは、少なくとも「ノズル」が装置やそのリザーバに着脱可能であり、個別に廃棄・販売購入可能な独立した製品としてユニット化(独立要素化)されていることと理解される。
よって、構成Cの「噴霧カートリッジ」の「カートリッジ」なる名称が、プリンターのインクカートリッジのように装置本体に対し着脱・交換可能な独立した製品であることを意味するとしても、構成c及びc3における、ディスペンサの着脱・廃棄・販売購入可能「ノズル」部分は、構成Cほかの「噴霧カートリッジ」にも相当するといえる。

エ(ア)構成c2の「実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出するように構成され」ることについて、生体粒子が単層を形成するとは、生体粒子が複数層を形成、すなわち重なり合うのではなく、1層、すなわち重なり合うことなく並ぶ状態を意味することが明らかであるから、構成C2の「該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」ことに相当する。
(イ)構成c4・c5の「間隙」(「基板の表面から」「ディスペンサーのノズル」の「間隙」、及び「開口部と基板の間隙」)は、構成C2の「該噴霧ノズルと該基材との距離」に相当する。

オ(ア)構成dの、「ノズルがスプレーを基板表面に向ける際に基板が回転できるように、基板をモータに結合させ」て、「基板が基板の表面に実質的に垂直な中心軸を中心に回転するように構成されている一方で、ディスペンサーのノズルが単一の軸(例えば、X軸)に沿って並進するように構成され」るとの技術事項において、「ディスペンサーのノズル」は基板に対し「ノズルがスプレーを基板表面に向け」つつ「ディスペンサーのノズルが単一の軸(例えば、X軸)に沿って並進する」のであるから、「ディスペンサーのノズル」は基板に対し「ノズルがスプレーを基板表面に向」くという位置関係を保ったまま並進動作をするものといえる。
よって、「ディスペンサーのノズルが単一の軸(例えば、X軸)に沿って並進するように構成され」ていることは、構成Dの「噴霧カートリッジ」が「前記基材の前記表面に対して整列させるように構成され」ていることに相当するといえる。
(イ)「整列」の相当性について上記(ア)のとおりであるから、構成dの「ノズルを移動させる」「スキャナ」は、構成Dの「1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリ」に相当する。

カ 構成eで、「ディスペンサーからスプレーされた液滴」が「基板に着地後結合して大きな液滴や膜となることがあ」るところ、その「液滴や膜から液体が蒸発」することは、、構成Eの「基材の前記表面上での蒸発」に相当する。

(5)一致点・相違点
上記(4)のとおりであるから、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。

ア 一致点
「A 生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システムであって、
B 前記1つ以上の基材を受容及び保持するための基材処理領域と、
C 生体試料の噴霧を標本コンテナから基材の表面に向かって配向する及び方向付けるように構成された噴霧カートリッジであって、
C1 該噴霧カートリッジが噴霧ノズルを含み、
C2’ 該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている、該噴霧カートリッジと、
D 前記噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に対して整列させるように構成された1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリを備え、
E’ 前記基材の前記表面上での蒸発を生じる、
F 前記標本堆積システム。」

イ 相違点

(ア)相違点1(構成C2)
「基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成」することが、本件補正発明では「噴霧カートリッジ」の「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離」によってされているのに対し、引用発明では「ディスペンサー」のいずれの手段やパラメータが関与するか明示的でない点。

(イ)相違点2(構成E)
基材の表面上での蒸発について、本件補正発明は、「前記基材の前記表面上での蒸発を強化するために前記基材を加熱するように構成された加熱機構」を備えるのに対し、引用発明では積極的に該蒸発を行わせる機構を備えない点。

(6)相違点の検討

ア 相違点1について
(ア)構成c2において、「ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出するように構成されて」いるのであり、該「吐出」は構成c・c3よれば「ディスペンサーのノズル」によって行われるのであるから、ノズルの構成、すなわち設計が「実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」ために不可欠であることが明らかである。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「該噴霧ノズルの設計・・・が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」点について実質的に相違しない。

(イ)構成c4によれば、「ディスペンサーのノズルは基板の表面から間隙によって分離されており」、構成c5によれば「単位時間当たりに基板に到達する液量は、開口部と基板の間隙にある液滴の大きさと数に依存」するのであって、ここでの「開口部と基板の間隙にある液滴の大きさ」は、構成c5で「ディスペンサー」が「開口部から吐出される液滴の平均サイズ、基板表面に到達する液滴の平均サイズを調整す」ることによって調整され得、「開口部と基板の間隙にある液滴の」「数」は、「開口部から液体を吐出する流量」及び「開口部から吐出される液滴の平均サイズ」に依存するほか、同じ流量とサイズでも、前記間隙が長ければ該間隙内に存在する液滴の数が多くなることから、前記間隙の距離にも依存する変数であることが明らかである。
そうすると、引用発明においても、「実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」にあたり調整される「開口部から液体を吐出する流量、開口部から吐出される液滴の平均サイズ、基板表面に到達する液滴の平均サイズ」は、ノズルと基板の表面との前記「間隙」の距離に合わせて調整されるべきもの、言い換えると、「開口部から液体を吐出する流量、開口部から吐出される液滴の平均サイズ、基板表面に到達する液滴の平均サイズ」及び前記間隙の距離との組み合わせにより、「実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」という機能が実現されるべきこと、が明らかであるといえる。
よって、本件補正発明と引用発明とは、「噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」点について実質的に相違しない。

(ウ)上記(ア)、(イ)について、逆にいえば、引用発明において「ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出するように構成されて」いるということは、ノズルの設計及びノズルと基板との距離が、「ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」という機能を果たすように構成されている、ということに外ならない。
よって、このことからも、相違点1に係る構成C2の「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」ことは、実質的な相違点とはいえない。

(エ)さらに、日常的に用いられる塗料や薬剤等のスプレー(噴霧器)において、所望の塗布状態(厚塗り、広範囲に薄く、など)に応じて、スプレーの噴射角(広がり角)の設定を変更したり、スプレーと塗布対象との距離を変更したりすることが行われており、このことから、前記噴射角や距離を、所望の塗布状態となるように構成(調整・変更)することは、技術常識であるといえる。
よって、仮に相違点1が実質的なものであるとしても、引用発明において相違点1の構成とすることは、技術常識に基づいて当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について
(ア)基板(基材)上の試料溶液の溶媒を分析・処理に先立ち蒸発させる際に、基板(基材)の加熱により蒸発を促進することは、原査定において示した上記(3)で挙げた引用文献2、3のほか、同じく本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2003−527856号公報にも下記(イ)のとおり記載されるように、周知である。
また、これら具体的な文献を挙げるまでもなく、媒体上の溶液溶媒の蒸発乾燥の促進のために媒体の加熱を行うことは日常的に見聞する慣用技術であり、技術常識であるといえる。
そして、これら加熱に際し何らかの加熱機構を要することは自明である。
以上のとおりであるから、引用発明において、構成eにおいて生体粒子を含む液滴をスプレーされた基板上の液滴や膜から液体を蒸発させるに際し、何らかの加熱機構を用いて基板や液滴等自体を加熱して蒸発促進を行うことは、周知・慣用技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到できたことである。

(イ)特表2003−527856号公報の記載事項
「【0279】
染色すべき細胞集団は、RPMI1640培地1mlあたり細胞500、000個の濃度で再懸濁した。容量200μlを、表面を滅菌した顕微鏡スライドガラス上に滴下して、スライドガラスを100mmTC皿において湿潤大気中で37℃で、細胞が堅固に接着するまでインキュベートした。培地を除去して、細胞を、加熱ブロック上で37℃で30分間風乾させて固定した後、4%w/vパラホルムアルデヒド(シグマ)のPBS溶液によって1時間後固定した。」

(7)請求人の主張について
ア 審判請求書において請求人は相違点1について、令和3年3月15日付け補正却下における引用文献4(国際公開第2001/088179号;本審決の上記(3)ウに挙げた引用文献4)、同引用文献9(特表平06−504115号公報)との相違事項を主張するが、相違点1の容易想到性については上記(6)アで説示したとおりである。

イ また、仮に、請求人の前記主張が、本件補正発明と引用発明とが、後者が「基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成」を備えない、との趣旨であるとしても、引用発明が構成c2として、当該構成に相当する構成を備えることは、上記(4)エで説示したとおりである。

ウ(ア)さらに、上記イについて、仮に引用発明の構成c2が「基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成」することに相当すると直ちにはいえない、または相当しないとしても、以下のとおりである。
(イ)引用文献4(特に上記(3)ウの下線部参照)には、引用発明と同様に、《生体細胞(子宮頸部細胞)をスライド(基板)上に広げ(堆積し)るシステムにおいて、「細胞の重なりなしにスライド内の厚い細胞の均一な広がりを改善」すべく、「細胞をスプレー容器に採取し、吸引した細胞をスライドにスプレーして重ならないように均一に分布させる」こと》(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。
(ウ)よって、引用発明の構成c2の「ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」との構成における「単層を形成」することを、生体粒子が重なり合わないように分布させることを意味すると理解することは、前記引用文献4記載事項を参照することで、当業者にとって容易であるといえる。
(エ)また、引用発明の構成c2の「ディスペンサーは、実質的に均一な層、好ましくは単層を形成するように、生体粒子、例えば血球を基板の表面上に吐出する」との構成について、引用文献4記載事項を参照することで、「基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように」することとして具体化することも、当業者が容易になし得たことである。
(オ)そして、上記(ウ)・(エ)において、「基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成」することを「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離」によってノズル(スプレー)と基板との距離により行う点については、上記(6)アで説示したとおり、「細胞が重なり合うのを防止するように」噴霧(スプレー)されることで充足される事項である。よって、上記(ア)の前提においても、引用発明において相違点1の構成とすることは、引用文献4記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(8)小括
上記(4)〜(6)において検討したように、本件補正発明は、引用発明及び周知・慣用の技術事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

3−2.実施可能要件について

(1)構成C2についての本願翻訳文等における根拠記載

ア 本件補正により「噴霧カートリッジ」について、構成C2に対応する「該噴霧ノズルの設計及び該噴霧ノズルと該基材との距離が、該基材上に堆積される細胞が重なり合うのを防止するように構成されている」との技術事項が加入された。
この技術事項は、審判請求書における主張、及び当審によれば、本願翻訳文等における下記イの記載が根拠となるもの、根拠となり得るものである。

イ 構成C2加入の根拠記載
「【0087】種々の配置において、噴霧堆積プロセスは、各試料のために最適化され得る。以下のように、噴霧堆積パラメータ(例えば、基材からの噴霧ノズルの距離、空気圧、空気流速、ノズル設計、噴霧当たりの体積、総体積、乾燥温度、空気乾燥時間)は、細胞型、細胞濃度、及び輸送液または懸濁液特性等の種々の試料特性の関数であり得る:」

「【0093】
1d.ノズル設計:生体試料は、重なり合っていない細胞の均一な層を生み出す様式で基材表面上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、細胞堆積は、基材の表面上に堆積された他の細胞から単離された(例えば、分離された、接触していない)細胞を生み出すように設計され得る。したがって、本システムは、特定の試料の種類を均一に堆積させるのに好適な個別のノズル設計を提供し得る。」

「【0098】
生体試料の調製及び堆積は、細胞濃度に基づいて変動し得る。上述の通り、本システムは、各試料を堆積前に定量的に評価するための機構及びプロセスステップを備え得る。細胞濃度に基づいて変動され得るパラメータの例としては、以下のものが挙げられ得る:
【0099】
2a.噴霧ノズルと基材表面との間の距離:噴霧ノズルと基材との間の距離は、種々の細胞濃度に関して変動され得る。特定の実施形態では、距離は、基材表面上の退けられた細胞の重なりを防止するように調節され得る。
・・・
【0102】
2d.ノズル設計:生体試料は、重なり合っていない細胞の均一な層を生み出す様式で基材表面上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、細胞堆積は、基材の表面上に堆積された他の細胞から単離された(例えば、分離された、接触していない)細胞を生み出すように設計され得る。したがって、本システムは、標本コンテナ内の多様な濃度を有する試料に由来する細胞を、均一に堆積させるのに好適な個別のノズル設計を提供し得る。
・・・
【0111】
3d.ノズル設計:生体試料は、重なり合っていない細胞の均一な層を生み出す様式で基材表面上に堆積され得る。液体組成の変動は、噴霧パターンに影響を及ぼす場合があり、これは、基材表面上に試料の均一な堆積を生み出すようにノズル設計を変動させることによって対処され得る。」

「【0116】
上記に説明される噴霧堆積パラメータ、及び他のパラメータ(例えば、液体温度、生体試料温度等)は、システムの使用者が、特定の生体試料中の細胞または液体の種類に好適な噴霧堆積プログラムを選択及び/または最適化し得るように、予めプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、システム100は、試料の噴霧堆積がプログラム基準を満たしているか(例えば、十分な細胞が堆積されている、重なり合っている細胞がない等)を判定するために、標本支持基材をスクリーニングし得る。かかるスクリーニング方法としては、レーザー及び/または分光写真技法による標本支持スライドのスクリーニングが挙げられ得る。」

(2)構成C2が実施可能要件を充足しないこと
特許法36条4項1号は、発明の詳細な説明の記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなければならないことを規定するものであり、同号の要件を充足するためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に発明の構成等の記載があることを要する。

しかし、上記(1)イの記載事項はいずれも定性的かつ抽象的であり、構成C2に係る装置発明としての構成を、期待される作用効果を掲げて希望的に記載するにとどまり、特段の設計や調整の指針の開示もない。
当該構成C2は上記3−1.(5)イで認定した相違点1に係る構成であるところ、仮に、構成C2が、上記3−1.(6)アで説示したように、引用発明において実質的に達成されている、又は、一般的なスプレー(噴霧)技術に照らし容易想到である、とはいえず、ノズルの特段の設計やノズルと基材との距離に特段の調整を要するとした場合、該設計や調整について前記のとおり具体的開示がないことから、当業者が当該作用効果を得ようとする場合、過度な試行錯誤を強いられることとなる。
よって、本願翻訳文等は,当業者が本件補正発明を実施できるように明確に記載されていないといえ、この出願は、発明の詳細な説明の記載について特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)小括
以上(1)・(2)のとおりであるから、この出願は、発明の詳細な説明の記載について特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
上記3.において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第1の補正書により補正された、上記第2の1.(2)に示した本件補正前請求項1のとおりである。
これを分説すると次のとおりである。(分説番号は、本件補正発明と一致又は実質的に一致する構成については同番号とした。)

「A 生体材料を1つ以上の基材上に堆積させるための標本堆積システムであって、
B 前記1つ以上の基材を受容及び保持するための基材処理領域と、
C 生体試料の噴霧を標本コンテナから基材の表面に向かって配向する及び方向付けるように構成された噴霧カートリッジと、
D 前記噴霧カートリッジを前記基材の前記表面に対して整列させるように構成された1つ以上の整列アセンブリを含む位置付けアセンブリと、
E 前記基材の前記表面上での蒸発を強化するために前記基材を加熱するように構成された加熱機構と、を備える、
F 前記標本堆積システム。」

2.原査定の拒絶理由
本願発明について、最後の拒絶理由通知により通知された原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。

(1)拒絶の理由
この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2〜4の記載により裏付けられる周知技術にに基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2)引用文献等
1.国際公開第2014/143981号(上記第2の補正却下における引用文献1と同じ)
2.国際公開第2007/069586号(同引用文献2と同じ)
3.特開2007−64901号公報
4.特開2013−122462号公報(同引用文献3と同じ)

3.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献の記載事項は、上記第2の3−1.(2)・(3)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は、本件補正発明の発明特定事項から、構成C1・C2を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は上記相違点2のみである。
そして、相違点2の容易想到性については、上記第2の3−1.(6)イで説示したとおりである。
よって、本願発明は引用発明及び周知・慣用の技術事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知・慣用の技術事項並びに技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 井上 博之
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-28 
結審通知日 2022-03-01 
審決日 2022-03-14 
出願番号 P2018-503731
審決分類 P 1 8・ 536- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 渡戸 正義
樋口 宗彦
発明の名称 自動化標本堆積システム及び関連する方法  
代理人 石川 徹  
代理人 石川 徹  
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