ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K |
---|---|
管理番号 | 1387095 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-08-02 |
確定日 | 2022-06-28 |
事件の表示 | 特願2019−545419「補修機能付き塗布装置および部品実装システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月 4日国際公開、WO2019/064341、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2017年9月26日を国際出願日とする出願であって、令和2年1月17日に手続補正がされ、令和2年12月4日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年1月18日に手続補正がされ、令和3年6月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年8月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和4年4月12日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和4年5月13日に手続補正がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(令和3年6月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 「本願の下記の請求項に係る発明は、下記の引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1ないし4、6、7 ・引用文献等1、2 ・請求項5 ・引用文献等1ないし5 引用文献等一覧 1.特開2005−347387号公報 2.特開2015−109397号公報 3.特開2007−222762号公報(周知の技術を示す文献) 4.特開2002−166211号公報(周知の技術を示す文献) 5.特開2000−244107号公報(周知の技術を示す文献)」 第3 本願発明 本願請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、令和4年5月13日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である(下線は、補正個所を示す。)。 「【請求項1】 液材を基板に塗布する塗布部と、 前記基板上の所定箇所に塗布または印刷された前記液材の量が不足して前記液材が塗布されていない前記液材の不足部分がある場合に、前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される前記液材の不足部分の前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上の前記液材の不足部分に塗布して補修する制御を行う制御部とを備える、補修機能付き塗布装置。 【請求項2】 前記制御部は、前記基板上の前記所定箇所に塗布または印刷された前記液材の検査により取得される前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を塗布して補修する制御を行うように構成されている、請求項1に記載の補修機能付き塗布装置。 【請求項3】 前記制御部は、前記基板上の前記所定箇所に塗布または印刷された前記液材の検査により取得される前記液材の不足位置および前記不足位置における前記液材の不足量に基づいて、前記塗布部により前記所定箇所における前記不足位置を補修する制御を行うように構成されている、請求項2に記載の補修機能付き塗布装置。 【請求項4】 前記塗布部に加えて、前記基板上の前記所定箇所に塗布または印刷された前記液材の不足量および前記液材の不足位置を検査する検査部をさらに備え、 前記制御部は、前記検査部により前記液材の検査を行うとともに、前記塗布部により前記液材を塗布して補修する制御を行うように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の補修機能付き塗布装置。 【請求項5】 前記塗布部は、前記液材が吐出されるノズルを含み、 前記制御部は、前記基板上の前記所定箇所に塗布または印刷された前記液材の不足量に応じて、前記ノズルの先端部と前記基板とのクリアランスを調節する制御を行うように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の補修機能付き塗布装置。 【請求項6】 液材を基板に塗布する塗布部と、前記基板上の所定箇所に塗布または印刷された前記液材の量が不足して前記液材が塗布されていない前記液材の不足部分がある場合に、前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される前記液材の不足部分の前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上の前記液材の不足部分に塗布して補修する制御を行う制御部とを含む補修機能付き塗布装置と、 前記補修機能付き塗布装置の下流に配置され、前記補修機能付き塗布装置から搬出された前記基板に部品を実装する部品実装装置とを備える、部品実装システム。」 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、基板における基板電極上に接合材料を供給し、上記基板電極と電子部品における電極とを上記接合材料を介して接合することにより、当該電子部品が上記基板に実装された部品実装済み基板の製造を行なう部品実装済み基板製造方法及び製造装置、並びに、接合材料の供給状態異常修正方法に関する。」 「【0044】 (第1実施形態) 本発明の第1の実施形態にかかる部品実装済み基板製造装置101(以降、基板製造装置101という)の模式的な構成を示す模式構成図を図1に示す。図1に示すように、基板製造装置101は、接合材料の一例である半田(クリーム半田)の供給工程を行なう接合材料供給装置の一例である塗布装置10と、基板3への電子部品1の実装(接合)を行なう部品実装工程を行なう部品実装装置20と、電子部品1を基板3に接合する半田に対して、加熱溶融を行ない、その後冷却固化することで、当該接合位置を固定し、電子部品1を基板3に実装するリフロー工程を行なうリフロー装置30とを備え ている。また、このような基板製造装置101においては、塗布装置10に供給された基板3に対して、上記半田の供給工程を行ない、その後、この基板3が部品実装装置20に搬送されて、上記部品実装工程が行なわれ、さらにその後、この基板3がリフロー装置30に搬送されて、上記リフロー工程が行なわれ、部品実装済み基板として製造されることとなる。なお、本第1実施形態においては、上記接合材料が例えば半田である場合について説明するが、このような接合材料はその他様々な材質に適用することができる。 【0045】 図1に示すように、塗布装置10は、供給された基板3を解除可能に保持する保持テーブル11と、この保持テーブル11により保持された基板3に対して、半田の塗布供給を行ない、基板3上に半田部6を形成する接合材料供給ヘッドの一例である塗布ヘッド13と、基板3上に供給された半田の供給状態の測定を行なう供給状態測定部15と、上記供給された半田を基板3上から吸引することで除去する供給材料除去部の一例である半田吸引部16とを備えている。また、塗布装置10には、保持テーブル11に保持された基板3の表面沿いの方向に、塗布ヘッド13の移動を行なう移動装置(図示しない)が備えられており、供給状態測定部15及び半田吸引部16は塗布ヘッド13に固定されて、上記移動装置による移動が可能と構成されている。さらに、塗布装置10には、上記夫々の構成部の動作を互いに関連付けながら統括的な制御を行なう塗布制御部19が備えられている。」 図1 ![]() 「【0050】 図3に示すように、基板3における部品実装位置Pには、実装される電子部品1が有する夫々の電極2の配置と合致するように、複数の基板電極5が形成されており、例えば、図3の基板3には、2個の基板電極5が形成されている。このような基板3が基板製造装置101の塗布装置10に供給されると、保持テーブル11によりこの基板3が保持されるとともに、基板3における夫々の基板電極5と塗布ヘッド13との位置合わせが行なわれる。その後、図3に示すように、塗布ヘッド13により夫々の基板電極5上に、所定の量の半田が塗布供給されて、夫々の基板電極5上に半田部6が形成される(図2のステップS1)。この塗布ヘッド13による半田の供給量の制御は、塗布制御部19において、予め設定された所定の供給量となるように行なわれる。 【0051】 次に、図4に示すように、夫々の半田部6が形成された基板電極5の上方に、供給状態測定部15が位置されるように、塗布ヘッド13の移動が行なわれる。その後、夫々の基板電極5上への半田の供給状態の測定が行なわれる(ステップS2)。供給状態測定部15は、例えば、基板電極5上に塗布供給されて形成された半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで、半田の供給状態として、半田の供給量(あるいは体積)を測定する機能を有している。このような機能を有する供給状態測定部15により測定された供給量のデータが、塗布制御部19において、予め設定された半田の供給量の許容範囲のデータの範囲内にあるかどうかが判断される。なお、上記許容範囲のデータは、半田部6を介しての電子部品1の基板3への実装が正常に行なうことができるかどうかに基づいて決定されるデータであり、対象電子部品1や半田の種類等を考慮しながら決定されるものである。 【0052】 塗布制御部19において、測定された半田の供給量が上記許容範囲内に入っていないと判断された場合には、半田部6の形成(すなわち、半田の塗布供給状態)に異常があるものと判断される(ステップS3)。例えば、上記許容範囲を超過していると判断された場合には、塗布制御部19において、半田の供給状態修正処理が実施される(ステップS4)。なお、ステップS3における判断は、個々の半田部6毎に行なわれ、異常であると判断された各々の半田部6毎に上記供給状態修正処理が実施されることとなる。 【0053】 具体的には、図4に示すように、図示右側の基板電極5上に形成された半田部6における半田の供給量が上記許容範囲を超過していると判断されるような場合には、図5に示すように、半田吸引部16と当該半田部6との位置合わせが行なわれ、半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去される。この吸引除去の後、図6に示すように、塗布ヘッド13と当該基板電極5との位置合わせが行なわれて、塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれる。本第1実施形態においては、この半田の吸引除去処理と新たな半田の塗布供給処理とが、上記半田の供給状態修正処理の一例となっている。 【0054】 なお、この供給状態修正処理の説明においては、具体例として、半田の供給量が上記許容範囲を超過しているような場合について説明したが、逆に半田の供給量が上記許容範囲を下回っているような場合であっても、同様な手順にて、上記供給状態修正処理を実施することができる。また、図2のステップS3において、半田の供給量が上記許容範囲内にあると判断される場合には、上記供給状態修正処理が実施されることがなく、次に手順(すなわち、ステップS5)が施されることとなる。」 図3 ![]() 図4 ![]() 図5 ![]() 図6 ![]() 「【0057】 なお、上記夫々の手順の説明においては、基板3に1個の電子部品1が実装されるような場合について説明したが、電子部品1の実装個数はこのような場合にのみ限られるものではなく、複数あるいは多数の電子部品1が基板3に実装されるような場合であってもよい。複数の電子部品1が実装されるような場合にあっては、夫々の電子部品1の部品実装位置Pにおける各々の基板電極5上に形成された半田部6について、個別かつ順次上記測定が行なわれることとなり、複数の異常箇所が検出された場合には、その全ての箇所について、上記半田の供給状態修正処理が施された後、塗布装置10から部品実装装置20への基板3の搬送が行なわれることとなる。」 「【0060】 また、本第1実施形態の基板製造装置101においては、半田の供給装置として、塗布装置10が備えられるような場合について説明したが、本実施形態はこのような場合についてのみ限定されるものではない。このような場合に代えて、半田の供給手段として、スクリーン印刷等の手段を適用することもできる。なお、このようにスクリーン印刷が適用されるような場合であっても、塗布装置10における塗布ヘッド13と同様な機能を有する接合材料供給装置、さらに、供給状態測定部15及び半田吸引部16が備えられる必要がある。ただし、この場合これらの構成が、スクリーン印刷装置に備えられる場合、あるいは部品実装装置20に備えられる場合のいずれの場合であってもよい。」 (2)よって、引用文献1には、次の技術事項が記載されている。 ア 段落【0044】より、「半田(クリーム半田)の供給工程を行なう接合材料供給装置」「である塗布装置10」との技術事項を読み取ることができる。 イ 段落【0045】より、「塗布装置10は、」「基板3に対して、半田の塗布供給を行ない、基板3上に半田部6を形成する」「塗布ヘッド13と、基板3上に供給された半田の供給状態の測定を行なう供給状態測定部15と、上記供給された半田を基板3上から吸引する」、「半田吸引部16とを備え」、「さらに、塗布装置10には、」「塗布制御部19が備えられ」るとの技術事項を読み取ることができる。 ウ 段落【0050】、【0051】より、「塗布ヘッド13により夫々の基板電極5上に、所定の量の半田が塗布供給されて、夫々の基板電極5上に半田部6が形成され」、「(ステップS1)」、「供給状態測定部15」で「夫々の基板電極5上への半田の供給状態の測定が行なわれ」「(ステップS2)」、「供給状態測定部15は、」「基板電極5上に塗布供給されて形成された半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで、半田の供給状態として、半田の供給量(あるいは体積)を測定する機能を有し」、「供給状態測定部15により測定された供給量のデータが、塗布制御部19において、予め設定された半田の供給量の許容範囲のデータの範囲内にあるかどうかが判断され」るとの技術事項を読み取ることができる。 エ 段落【0052】ないし【0054】より、「塗布制御部19において、測定された半田の供給量が上記許容範囲内に入っていないと判断された場合には、半田部6の形成(すなわち、半田の塗布供給状態)に異常があるものと判断され」「(ステップS3)」、「上記許容範囲を超過していると判断された場合には、塗布制御部19において、半田の供給状態修正処理が実施され」「(ステップS4)」、「半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去され」、「この吸引除去の後、」「塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれ」、「逆に半田の供給量が上記許容範囲を下回っているような場合であっても、同様な手順にて、上記供給状態修正処理を実施する」との技術事項を読み取ることができる。 オ 段落【0060】より、「半田の供給装置として」、「塗布装置10」に「代えて、半田の供給手段として、スクリーン印刷等の手段を適用することもできる。」との技術事項を読み取ることができる。 (3)よって、引用文献1に記載された部品実装済み基板の製造装置が備える「塗布装置10」に着目し、これを発明として捉えると、引用文献1には次の発明(以下、引用発明1という。)が記載されているものと認められる。 「半田(クリーム半田)の供給工程を行なう接合材料供給装置である塗布装置10であって、 塗布装置10は、基板3に対して、半田の塗布供給を行ない、基板3上に半田部6を形成する塗布ヘッド13と、基板3上に供給された半田の供給状態の測定を行なう供給状態測定部15と、上記供給された半田を基板3上から吸引する、半田吸引部16とを備え、さらに、塗布装置10には、塗布制御部19が備えられ、 塗布ヘッド13により夫々の基板電極5上に、所定の量の半田が塗布供給されて、夫々の基板電極5上に半田部6が形成され、(ステップS1)、供給状態測定部15で夫々の基板電極5上への半田の供給状態の測定が行なわれ(ステップS2)、供給状態測定部15は、基板電極5上に塗布供給されて形成された半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで、半田の供給状態として、半田の供給量(あるいは体積)を測定する機能を有し、供給状態測定部15により測定された供給量のデータが、塗布制御部19において、予め設定された半田の供給量の許容範囲のデータの範囲内にあるかどうかが判断され、 塗布制御部19において、測定された半田の供給量が上記許容範囲内に入っていないと判断された場合には、半田部6の形成(すなわち、半田の塗布供給状態)に異常があるものと判断され(ステップS3)、上記許容範囲を超過していると判断された場合には、塗布制御部19において、半田の供給状態修正処理が実施され(ステップS4)、半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去され、この吸引除去の後、塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれ、逆に半田の供給量が上記許容範囲を下回っているような場合であっても、同様な手順にて、上記供給状態修正処理を実施し、 半田の供給装置として、塗布装置10に代えて、半田の供給手段として、スクリーン印刷等の手段を適用することもできる、 塗布装置10。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、基板に設けられたランドにはんだペーストを使用して電子部品を実装する電子部品実装方法及び電子部品実装システムに関するものである。」 「【0020】 図3(b)に示すように、本実施の形態で実装対象となる基板4には、面積が異なる複数のランド5が設けられている。パターン孔22aは、基板4に設けられた複数のランド5のうち、比較的面積の大きな複数の第1のランド5Aの形状・位置に対応して設けられている。その一方で、パターン孔22aは複数のランド5のうち第1のランド5A以外の複数の第2のランド5Bに対応して設けられていない。第2のランド5Bは比較的面積が小さい。したがって、スクリーン印刷装置M2では、第1のランド5AにはんだPAを供給する。」 図3 ![]() 「【0044】 このようにはんだ塗布装置M3では、複数のランド5のうち第1のランド5A以外の複数の第2のランド5Bに対してはんだペーストを吐出する吐出口39を備えた塗布手段を用いてはんだペーストを供給する(ST3:第2のはんだペースト供給工程)。以上の工程を経て、全てのランド5A,5BにははんだPA,PBが供給される。なお、スクリーン印刷による方法でもはんだ量が不足する第1のランド5Aが存在する場合、ディスペンサ37は該当する第1のランド5Aの上方まで移動し、はんだ部PAa上に不足するはんだPBを追加塗布するようにしてもよい。これにより図8(d),(e)に示すように、はんだ部PAaの上面にはんだ部PBaが形成され、第1のランド5Aに対するはんだPAの供給不足を補うことができる。」 図8 ![]() よって、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「基板に設けられたランドにはんだペーストを使用して電子部品を実装する電子部品実装方法であって、 基板4には、面積が異なる複数のランド5が設けられ、スクリーン印刷装置M2では、比較的面積の大きな複数の第1のランド5AにはんだPAを供給し、スクリーン印刷による方法でもはんだ量が不足する第1のランド5Aが存在する場合、ディスペンサ37は該当するランド5Aの上方まで移動し、はんだ部PAa上に不足するはんだPBを追加塗布するようにしてもよく、これによりはんだ部PAaの上面にはんだ部PBaが形成され、第1のランド5Aに対するはんだPAの供給不足を補うことができる」技術。 3.引用文献3について 原査定において、周知の技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0021】 ペースト塗布装置10の制御部は、基板1に前述の如くにペーストを塗布するに際し、昇降ヘッド18を原位置から下降させつつノズル22を基板1の塗布開始点の真上に向けて移動させ、レーザセンサ30の検出結果(ノズル22と基板1との距離)によるサーボモータ19のフィードバック制御により、ディスペンサ20の高さを予め測定された高さ(ノズル22と基板1との距離B)に保つように制御する。これにより、ディスペンサ20のノズル22から吐出されて基板1に塗布されるペーストの塗布巾や塗布高さを一定にする。図2は、原位置にあるディスペンサ20のノズル22がステージ14に対する距離をAとし、このディスペンサ20のノズル22が基板1の塗布開始点に対する距離をBに設定制御され、塗布終了後に再び原位置に復帰制御されることを示す。」 図1 ![]() 図2 ![]() 4.引用文献4について 原査定において、周知の技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0005】 【発明が解決しようとする課題】さて、上記のような構成を有する塗布ユニットを用いてシール剤の塗布を行うにあたり、ノズル3の先端部(吐出口)と基板2の上面との間に形成する上記所定の間隙を精度高く設定する必要がある。すなわち、ノズル3の高さ位置が基板2に対するシール剤5の塗布量に大きく影響するため、当該ノズル3の高さ位置の設定が非常に重要となる。」 図7 ![]() 5.引用文献5について 原査定において。周知の技術を示す文献として引用された上記引用文献5には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。 「【0003】図4に示すように、ディスペンサ1で半田の量を精度良く吐出するには、半田粘度の均一化、ノズル4径の最適化、プリント基板2とノズル4との間隔の均一化を行う必要があり、近年プリント基板2の大型化に伴いプリント基板2の反りが大きくなってきたことから特にプリント基板2とノズル4との間隔を高精度で制御することが重要となってきた。」 図4 ![]() 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と、引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明1における「塗布ヘッド13」は、「基板3に対して、半田の塗布供給を行な」うから、本願発明1における「液材を基板に塗布する塗布部」に相当する。 イ 引用発明1における「塗布装置10」または「スクリーン印刷」による「半田の供給量が」、「予め設定された半田の供給量の」「許容範囲を下回っているような場合」が、本願発明1における「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷された前記液材の量が不足して前記液材が塗布されていない前記液材の不足部分がある場合」に相当する。 ウ 引用発明1では、「塗布装置10に」「塗布制御部19が備えられ」、「供給状態測定部15は、基板電極5上に塗布供給されて形成された半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで、半田の供給状態として、半田の供給量(あるいは体積)を測定する機能を有し、供給状態測定部15により測定された供給量のデータが、塗布制御部19において、予め設定された半田の供給量の許容範囲のデータの範囲内にあるかどうかが判断され」、「塗布装置10」または「スクリーン印刷」による「半田の供給量が」、「予め設定された半田の供給量の」「許容範囲を下回っているような場合」に、「塗布制御部19において、半田の供給状態修正処理が実施され(ステップS4)、半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去され、この吸引除去の後、塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれ」る。 よって、引用発明1における「塗布制御部19」と、本願発明1における「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される前記液材の不足部分の前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上の前記液材の不足部分に塗布して補修する制御を行う制御部」とは、「前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の」「形状」に「基づいて取得される前記液材の不足部分の前記液材の不足量」「に基づいて、前記塗布部により前記液材を」「前記基板上」「に塗布して補修する制御を行う制御部」の点で一致する。 しかしながら、 (ア)本願発明1では、前記液材の不足部分の前記液材の不足量が「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される」のに対し、引用発明1では、「半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで」、「半田の供給量(あるいは体積)を測定」している点で相違する。 また、 (イ)本願発明1では、前記塗布部により前記液材を前記基板上に塗布して補修する制御が、「前記液材の不足部分の前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上の前記液材の不足部分に塗布して補修する制御」であるのに対し、引用発明1では、「半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去され、この吸引除去の後、塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれ」る制御である点でも相違する。 エ 引用発明1における「半田」の「供給状態修正処理」を「実施する」「塗布装置10」が、本願発明1における「補修機能付き塗布装置」に相当する。 よって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「液材を基板に塗布する塗布部と、 前記基板上の所定箇所に塗布または印刷された前記液材の量が不足して前記液材が塗布されていない前記液材の不足部分がある場合に、前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の形状に基づいて取得される前記液材の不足部分の前記液材の不足量に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上に塗布して補修する制御を行う制御部とを備える、 補修機能付き塗布装置。」 (相違点1) 本願発明1では、前記液材の不足部分の前記液材の不足量が「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される」のに対し、引用発明1では、「半田部6の3次元的な画像を取得して当該画像を分析することで」、「半田の供給量(あるいは体積)を測定」している点。 (相違点2) 本願発明1では、前記塗布部により前記液材を前記基板上に塗布して補修する制御が「前記液材の不足部分の前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて、前記塗布部により前記液材を前記基板上の前記液材の不足部分に塗布して補修する制御」であるのに対し、引用発明1では、「半田吸引部16によりこの基板電極5上に供給された半田が吸引除去され、この吸引除去の後、塗布ヘッド13により、上記所定量の半田の塗布供給が新たに行なわれ」る制御である点。 (2)相違点についての判断 ア まず、相違点1について検討する。 引用文献2に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。 「基板に設けられたランドにはんだペーストを使用して電子部品を実装する電子部品実装方法であって、 基板4には、面積が異なる複数のランド5が設けられ、スクリーン印刷装置M2では、比較的面積の大きな複数の第1のランド5AにはんだPAを供給し、スクリーン印刷による方法でもはんだ量が不足する第1のランド5Aが存在する場合、ディスペンサ37は該当するランド5Aの上方まで移動し、はんだ部PAa上に不足するはんだPBを追加塗布するようにしてもよく、これによりはんだ部PAaの上面にはんだ部PBaが形成され、第1のランド5Aに対するはんだPAの供給不足を補うことができる」技術。 イ そこで検討すると、引用文献2に記載された技術には、上記相違点1に係る、前記液材の不足部分の前記液材の不足量が「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される」構成は示されていない。 ウ また、引用文献3ないし5には、ディスペンサで半田の量を精度良く吐出するためには、プリント基板とノズルとの間隔を高精度で制御することが重要である、という周知技術が示されているものの、上記相違点1に係る本願発明1の構成は何ら示されていない。 エ さらに、引用発明1では、半田の供給量の測定を「3次元的な画像」を取得して行っており、これを敢えて本願発明1のように「平面視の二次元の基準形状と」「実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて」行うことは、当業者に動機付けられないことである。 オ したがって、相違点1は、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (3)まとめ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献2に記載された技術的及び周知技術(引用文献3ないし5)に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2ないし5について 本願発明2ないし5に係る請求項2ないし5は、請求項1を引用しているから、本願発明2ないし5も、本願発明1と同じく、前記液材の不足部分の前記液材の不足量が「前記基板上の所定箇所に塗布または印刷される前記液材の平面視の二次元の基準形状と前記基板上の所定箇所に実際に塗布または印刷された前記液材の平面視の二次元の形状との比較に基づいて取得される」構成(上記相違点1に係る本願発明1の構成)を備えるものである。 よって、本願発明2ないし5も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2に記載された技術的及び周知技術(引用文献3ないし5)に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3.本願発明6について 「部品実装システム」に係る本願発明6は、本願発明1の「補修機能付き塗布装置」に「前記補修機能付き塗布装置の下流に配置され、前記補修機能付き塗布装置から搬出された前記基板に部品を実装する部品実装装置」を付加したものであるが、引用文献1には、「半田の供給状態修正処理が施された後、塗布装置10から部品実装装置20への基板3の搬送が行なわれ」、「基板3への電子部品1の実装(接合)を行なう部品実装工程を行なう部品実装装置20」を備えることが記載されており(段落【0044】、【0057】)、当該「部品実装装置20」は、本願発明6でいう「部品実装装置」に相当するものである。 以上のことを踏まえると、本願発明6と引用文献1に記載された発明との相違点は、上記「1.(1)」に記載した相違点1及び相違点2と同じである。 そして、上記相違点1が当業者であっても容易になし得たことでないことは、上記「1.」「(2)」に記載したとおりである。 したがって、本願発明6は、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明1、引用文献2に記載された技術的及び周知技術(引用文献3ないし5)に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定について 本願発明1ないし6(請求項6が削除されたため、原査定における請求項1ないし5、7に対応する。)が、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、容易に発明できたものとはいえないことは、上記「第6」で述べたとおりである。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 当審拒絶理由について 特許法第36条第6項第2号について 当審では、請求項2の「前記液材の不足量に基づいて」との記載、請求項4の「前記液材を検査する検査部」との記載及び請求項6記載の記載が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、令和4年5月13日の手続補正において、請求項2の当該記載は「前記液材の不足量および前記液材の不足位置に基づいて」と補正され、請求項4の当該記載は「前記液材の不足量および前記液材の不足位置を検査する検査部」とそれぞれ補正され、また、請求項6が削除された結果、この拒絶の理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-06-14 |
出願番号 | P2019-545419 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H05K)
P 1 8・ 121- WY (H05K) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
井上 信一 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 清水 稔 |
発明の名称 | 補修機能付き塗布装置および部品実装システム |
代理人 | 宮園 博一 |