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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1387112
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-16 
確定日 2022-07-05 
事件の表示 特願2019−506270「分散体並びにこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法及び導電性パターン付構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 9月20日国際公開、WO2018/169012、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)3月15日(優先権主張 平成29年3月16日 平成29年3月16日 平成29年3月16日 平成29年3月16日 平成29年3月16日 平成29年7月27日 平成30年2月13日 平成30年2月13日)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月8日付けで拒絶理由通知がされ、同年9月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年11月6日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月21日付けで意見書が提出され、令和3年5月7日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和3年5月7日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

本願の請求項1、5〜22に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、また、本願の請求項2〜22に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2015/012264号
2.特開2015−8136号公報
3.欧州特許出願公開第3127969号明細書

第3 本願発明
本願請求項1〜21に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明21」という。)は、令和3年8月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜21に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
粒子径が1nm以上50nm以下である酸化銅と、分散剤としてのリン酸基を有する有機化合物と、還元剤としてのヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物とを含み、
前記還元剤の含有量が下記式(1)の範囲であり、
前記分散剤の含有量が下記式(2)の範囲であることを特徴とする分散体。
0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10 (1)
0.0050≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30 (2)」

なお、本願発明2〜8は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9〜21は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分散体を含む導電性パターン付構造体の製造方法の発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2015/012264号)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
「発明を実施するための形態
[0025] まず、本発明の銅及び/又は銅酸化物分散体について詳細に説明する。
[銅及び/又は銅酸化物分散体]
本実施形態の分散体は、分散媒中に、銅及び/又は銅酸化物微粒子を0.50質量%以上60質量%で含有し、さらに少なくとも下記(1)〜(4):
(1)表面エネルギー調整剤、
(2)リン酸基を有する有機化合物、
(3)20℃における蒸気圧0.010Pa以上20Pa未満である溶媒0.050質量%以上10質量%以下、
(4)20℃における蒸気圧20Pa以上150hPa以下である溶媒、を含有する。すなわち、本実施形態の分散体は、少なくとも銅及び/又は銅酸化物微粒子、表面エネルギー調整剤、リン酸基を有する有機化合物、及び分散媒を含有していることを特徴とする。
・・・
[0029][(2)リン酸基を有する有機化合物(分散剤)]
本実施形態の分散体に含まれる分散剤はリン酸基を有する有機化合物である。リン酸基が銅及び/又は銅酸化物微粒子に吸着し、立体障害効果によって凝集を抑制する。
分散剤の数平均分子量は、特に制限はないが、300〜30000であることが好ましい。300以上の方が、得られる分散体の分散安定性が増す傾向があり、また、30000以下の方が、焼成がしやすい。
分散剤の具体例としては、ビックケミー社製の「Disperbyk−142」、「Disperbyk−145」、「Disperbyk−110」、「Disperbyk−111」、「Disperbyk−180」、「Byk−9076」、第一工業製薬製の「プライサーフM208F」、「プライサーフDBS」を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
・・・
[0036][銅及び/又は銅酸化物微粒子]
本実施形態の分散体は銅及び/又は銅酸化物微粒子を含有する。銅及び/又は銅酸化物の具体例としては、銅、酸化第一銅、酸化第二銅、その他の酸化数をもった酸化銅、コア部が銅でありシェル部が酸化銅であるコア/シェル構造を有する粒子が挙げられる。これらは少量の不純物として金属塩及び金属錯体を含んでもよい。その中でも酸化第一銅と酸化第二銅は分散性が優れる傾向にあるので好ましい。酸化第一銅は低温焼結しやすい傾向にあるので特に好ましい。これらを単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
[0037] 本実施形態の分散体に含まれる銅及び/又は銅酸化物微粒子の平均二次粒径には、特に制限はないが、好ましくは500nm以下、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは80nm以下である。平均二次粒径とは、銅及び/又は銅酸化物粒子の一次粒子が複数個集まって形成される凝集体のことである。平均二次粒径が500nm以下であると、基板上に微細パターンを形成しやすい傾向があるので好ましい。
二次粒子を構成する一次粒子の平均一次粒径の好ましい範囲は100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。平均一次粒径が100nm以下の場合、後述する焼成温度を低くすることができる傾向にある。低温焼成が可能になる理由は、金属微粒子の粒径が小さいほど、その表面エネルギーが大きくなり、融点が低下するためと考えられる。
・・・
[0040][銅及び/又は銅酸化物分散体の調製]
銅及び/又は銅酸化物分散体は、前述の銅及び/又は銅酸化物微粒子、分散媒、分散剤、及び表面エネルギー調整剤を、それぞれ所定の割合で混合し、例えば、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、2本ロール法、アトライター、バンバリーミキサー、ペイントシェイカー、ニーダー、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル等を用いて分散処理することにより、調製することができる。
銅及び/又は銅酸化物分散体を調製する際、必要に応じて添加剤を分散体に加えることができる。添加剤としては上述の表面エネルギー調整剤のほか、還元剤、有機バインダ―などを用いることができる。
前述の銅及び/又は銅酸化物、分散剤、分散媒、表面エネルギー調整剤、及びその他の添加剤の濃度によって、分散体の粘度及び表面エネルギーを調整することができる。」

「[0072]
[表1]

[0073] 上記表中の略号等の意味は以下のとおりである:
銅酸化物:酸化第一銅又は酸化第二銅の含有率、単位はwt%
BuOH:n−ブタノールの含有率、単位はwt%
H2O:水の含有率、単位はwt%
BYK:Disperbyk−145の含有率、単位はwt%
PG:1,2−プロピレングリコールの含有率、単位はwt%
S611:サーフロンS−611の含有率、単位はwt%
粒径:平均二次粒径、単位はnm
印刷:A…印刷良好、B…印刷不良
膜厚:単位はμm
比抵抗:体積抵抗率、単位は10−6Ω・cm
移動度:半導体の移動度、単位は10−2cm2/(V・s)」

(2)上記(1)には、以下の事項が記載されているといえる。
ア [0025]によれば、分散体は、分散媒中に、銅及び/又は銅酸化物微粒子を0.50質量%以上60質量%で含有し、さらに少なくとも下記(1)〜(4):
(1)表面エネルギー調整剤、
(2)リン酸基を有する有機化合物、
(3)20℃における蒸気圧0.010Pa以上20Pa未満である溶媒0.050質量%以上10質量%以下、
(4)20℃における蒸気圧20Pa以上150hPa以下である溶媒、を含有するものである。

イ [0037]によれば、銅及び/又は銅酸化物微粒子の一次粒子の平均一次粒径の範囲は100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。

ウ [0040]によれば、分散体には、添加剤として還元剤を含有するものである。

エ [0072]の[表1]の各実施例における「酸化銅」の欄の数値、「BYK」の欄の数値は、同[0073]の記載によれば、それぞれ、酸化第一銅又は酸化第二銅の含有率であって単位はwt%、Disperbyk−145の含有率であって単位はwt%である。
また、上記酸化第一銅又は酸化第二銅は、[0036]の記載によれば、銅酸化物であるといえる。
さらに、上記Disperbyk−145は、[0029]の記載によれば、分散剤であって、当該分散剤はリン酸基を有する有機化合物であるといえる。
そうすると、[表1]における「BYK」で示されるリン酸基を有する有機化合物である分散剤の質量/「銅酸化物」で示される酸化第一銅又は酸化第二銅の質量を、実施例2から実施例8まで順に計算すると、2.0/10=0.20、8.0/40=0.20、0.20/1.0=0.20、8.0/10=0.80、15/10=1.5、6.0/30=0.20、10/50=0.20となるから、リン酸基を有する有機化合物である分散剤の質量/酸化第一銅又は酸化第二銅からなる銅酸化物微粒子の質量は、0.20〜1.50である。

(3)以上によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「分散媒中に、銅酸化物微粒子を0.50質量%以上60質量%で含有し、さらに少なくとも下記(1)〜(4):
(1)表面エネルギー調整剤、
(2)リン酸基を有する有機化合物、
(3)20℃における蒸気圧0.010Pa以上20Pa未満である溶媒0.050質量%以上10質量%以下、
(4)20℃における蒸気圧20Pa以上150hPa以下である溶媒、を含有し、
銅酸化物微粒子の一次粒子の平均一次粒径の範囲は100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下であり、
添加剤として還元剤を含有し、
リン酸基を有する有機化合物である分散剤の質量/酸化第一銅又は酸化第二銅からなる銅酸化物の質量は0.20〜1.50である分散体。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015−8136号公報)には、次の事項が記載されている

「【請求項1】
金属ナノ粒子分散物であって、
溶媒と;
金属ナノ粒子の上に形成された酸化物を含む複数の金属ナノ粒子と;
酸化物と反応し、堆積させ加熱するプロセスを用いて金属ナノ粒子分散物から作ることができる金属膜の導電性を、同じ堆積させ加熱するプロセスを用い、還元剤を用いない以外は同じナノ粒子組成物から作ることができる金属膜の導電性と比較して顕著に上げるのに十分な量の還元剤と
を含む成分を混合することによって作られる、金属ナノ粒子分散物。
【請求項2】
金属ナノ粒子が、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、InおよびNiからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む、請求項1に記載の分散物。」

【背景技術】
・・・
【0004】
しかし、金属ナノ粒子インクを含むほとんどの金属ナノ粒子分散物は、空気に安定ではない。ほとんどの金属ナノ粒子分散物は、簡単に酸化し、保存するとき、冷温環境または減圧状態であっても、金属ナノ粒子表面に特定の酸化度の金属酸化物を生成することがある。これにより、熟成した金属ナノ粒子インクでは、導電性が顕著に下がることがある。」

「【課題を解決するための手段】
・・・
【0008】
本開示のさらに別の実施形態は、ナノ粒子分散物に関する。ナノ粒子分散物は、溶媒と;銀および酸化物を含む複数の金属ナノ粒子と、還元剤とを含む成分を混合することによって作られる。還元剤は、ナノ粒子分散物の合計重量を基準として、濃度が約0.01重量%〜約5重量%の範囲の濃度である。」

「【0019】
還元剤と混合する前に、金属ナノ粒子は、表面酸化物を含んでいてもよい。酸化物は、分散物の熟成中に作られてもよく、ナノ粒子分散物を用いて作成された膜の導電性が部分的または完全に失われることがある。
【0020】
金属ナノ粒子から酸化剤を除去することができ、および/またはナノ粒子から作られた膜の導電性を上げることができる任意の適切な還元剤を使用することができる。いくつかの実施形態では、還元剤化合物は、ヒドラジン化合物を含んでいてもよい。・・・」

「【0055】
(実施例1:処理した熟成銀ナノ粒子インク)
比較例3で使用したのと同じ熟成した銀ナノ粒子3gに、十分に混合しつつ、少量のフェニルヒドラジンを加えた(0.01g、約0.3wt%)。この得られたインクから、スピンコーティングによって薄膜を調製した。コーティングした膜を115〜120℃で15分アニーリングした後、得られたAg膜は、4プローブ法を用いて測定すると、約3.8×104S/cmの導電性を示した。
【0056】
まとめると、上の実施例は、少量の還元剤を加えることが、空気中の酸素によって酸化した、熟成した金属ナノ粒子インクの導電性を回復する有効な様式であることを明らかに示す。この方法によって、熟成した銀ナノ粒子インクが、低い処理温度で新しく調製した銀ナノ粒子インクとほぼ同程度の高い導電性を達成することができる。さらに、この方法は、銀ナノ粒子インクの貯蔵寿命を延ばし、廃棄物を減らすことによって製造費用を顕著に減らす可能性を有する。」

(2)上記(1)の【請求項1】、【請求項2】、【0008】、【0020】によれば、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「金属ナノ粒子分散物であって、
溶媒と;
金属ナノ粒子の上に形成された酸化物を含む複数の金属ナノ粒子と;
酸化物と反応し、堆積させ加熱するプロセスを用いて金属ナノ粒子分散物から作ることができる金属膜の導電性を、同じ堆積させ加熱するプロセスを用い、還元剤を用いない以外は同じナノ粒子組成物から作ることができる金属膜の導電性と比較して顕著に上げるのに十分な量の還元剤と
を含む成分を混合することによって作られる、金属ナノ粒子分散物であって、
金属ナノ粒子が、Al、Ag、Au、Pt、Pd、Cu、Co、Cr、InおよびNiからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含み、
還元剤は、ナノ粒子分散物の合計重量を基準として、濃度が約0.01重量%〜約5重量%の範囲の濃度であり、
還元剤化合物は、ヒドラジン化合物を含んでいる、金属ナノ粒子分散物。」

なお、引用文献3は、原査定において、請求項2〜22に係る発明に対して引用されている文献であるから摘記は省略した。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「銅酸化物微粒子」の「一次粒子の平均一次粒径の範囲は100nm以下、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下」である。
一方、本願発明1の「粒子径」について、本願明細書の【0078】には、「粒子径とは、酸化銅粒子及び銅粒子の一次粒子の平均粒子径である」と記載されているから、本願発明1の「酸化銅」の一次粒子の平均粒子径は、「1nm以上50nm以下」であり、当該「酸化銅」は、粒子であるといえる。
そうすると、引用発明1の「銅酸化物微粒子」は、「酸化銅」に相当し、両者は、一次粒子の平均粒子径である「粒子径」が、「1nm以上50nm以下」である点で共通する。

イ 引用発明1の「リン酸基を有する有機化合物」は、「分散剤」であるから、本願発明1の「分散剤としてのリン酸基を有する有機化合物」に相当する。

ウ 引用発明1の「リン酸基を有する有機化合物である分散剤の質量/酸化第一銅又は酸化第二銅からなる銅酸化物の質量」は、本願発明1の「(分散剤質量/酸化銅質量)」に相当し、両者は、0.20≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30の範囲で共通する。

エ 以上から、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
<一致点>
「粒子径が1nm以上50nm以下である酸化銅と、分散剤としてのリン酸基を有する有機化合物と、還元剤とを含み、
前記分散剤の含有量が下記式(2)の範囲である分散体。
0.2≦(分散剤質量/酸化銅質量)≦0.30 (2)」

<相違点>
相違点1:「還元剤」について、本願発明1は、「ヒドラジン及び/又はヒドラジン水和物」であるのに対し、引用発明1は、そのような構成を備えているか不明である点
相違点2:「前記還元剤の含有量」について、本願発明1は、「0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10」の「範囲である」のに対し、引用発明1は、そのような構成を備えているか不明である点。

(2)相違点についての判断
ア 事案に鑑み相違点2から検討する。
(ア)相違点2に係る本願発明1の構成は、本願明細書【0066】の「還元剤の含有量は、下記式(1)の範囲を満たす。還元剤の質量比率が0.0001以上だと分散安定性が向上し、かつ銅膜の抵抗が低下する。また、0.1以下だと分散体の長期安定性が向上する。
0.0001≦(還元剤質量/酸化銅質量)≦0.10 (1)」との記載から、分散体の分散安定性の向上、銅膜の抵抗低下、及び、分散体の長期安定性の向上を考慮して特定されているものである。
一方、引用発明1の「分散体」は、「添加剤として還元剤を含有し」ているものの、引用文献1には、分散体の分散安定性の向上、銅膜の抵抗低下、及び、分散体の長期安定性の向上を考慮して、「銅酸化物微粒子」に対する、「還元剤」の質量を所定の範囲にすることは、記載も示唆もされていない。
また、引用文献2、3のいずれにも、分散体の分散安定性の向上、銅膜の抵抗低下、及び、分散体の長期安定性の向上を考慮して、「銅酸化物微粒子」に対する、「還元剤」の質量を所定の範囲にすることは、記載も示唆もされていない。

(イ)さらに、引用発明2の「金属ナノ粒子の上に形成された酸化物を含む複数の金属ナノ粒子」は、引用文献2(上記第4 2(1))の【0004】の「ほとんどの金属ナノ粒子分散物は、簡単に酸化し、保存するとき、冷温環境または減圧状態であっても、金属ナノ粒子表面に特定の酸化度の金属酸化物を生成することがある」との記載、及び、同【0056】の「実施例は、少量の還元剤を加えることが、空気中の酸素によって酸化した、熟成した金属ナノ粒子インクの導電性を回復する有効な様式であることを明らかに示す」との記載によれば、金属ナノ粒子の表面に空気中の酸素によって酸化された酸化膜が形成されているものである。
一方、本願発明1の「粒子径が1nm以上50nm以下である酸化銅」は、粒子自体が酸化銅であって、粒子の表面に酸化膜が形成されているものではない。
したがって、引用発明2の「金属ナノ粒子の上に形成された酸化物を含む複数の金属ナノ粒子」は、本願発明1の「酸化銅」に相当しない。

(ウ)以上によれば、引用発明1に引用発明2及び引用文献3に記載された発明を適用しても、相違点2に係る本願発明1の構成を得ることはできない。
したがって、引用発明1に引用発明2及び引用文献3に記載された発明を適用し、相違点2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ 小括
よって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

2 本願発明2〜21について
本願発明2〜8は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明9〜21は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の分散体を含む導電性パターン付構造体の製造方法の発明であり、いずれも相違点2に係る本願発明1の構成を有しているから、本願発明1と同様の理由により、本願発明2〜21は、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。

第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1〜21は、いずれも相違点2に係る本願発明1の構成を有するものとなっており、上記第5で検討したとおり、本願発明1〜21は、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではないから、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-22 
出願番号 P2019-506270
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 棚田 一也
河本 充雄
発明の名称 分散体並びにこれを用いた導電性パターン付構造体の製造方法及び導電性パターン付構造体  
代理人 三橋 真二  
代理人 三間 俊介  
代理人 中村 和広  
代理人 齋藤 都子  
代理人 青木 篤  
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