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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60N |
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管理番号 | 1387172 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-09-13 |
確定日 | 2022-08-16 |
事件の表示 | 特願2017−118033号「車両用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成31年1月10日出願公開、特開2019−1319号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年6月15日の出願であって、令和2年11月19日付けで拒絶理由が通知され、令和3年1月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月22日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)され、これに対して、同年9月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の以下の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・請求項 1、3−5 ・引用文献等 1 ・請求項 2 ・引用文献等 1−2 ・引用文献等一覧 1:実願昭60−168224号(実開昭62−75737号)のマイクロフィルム 2:特開2007−61297号公報(周知技術を示す文献) 以下それぞれ引用文献1及び引用文献2という。 第3 本願発明 本願の請求項1〜4に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」〜「本願発明4」という。)は、令和3年9月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりの発明である。 「 【請求項1】 前部が左右の可動部を含んで構成され、前記左右の可動部によって着座乗員の左右の大腿部をそれぞれ支持すると共に、前記左右の可動部が互いに分割され且つ後端部を中心として上下に回動可能とされたシートクッションと、 前記シートクッションに設けられ、駆動源の駆動力又は手動操作により前記左右の可動部を連動させずに個別に上下に回動可能とされた調整機構と、 を備え、 前記左右の可動部の後方で前記シートクッションの本体部を構成するクッション本体部の上面と、前記左右の可動部の上面とが面一状となる位置が、前記左右の可動部の標準位置とされており、 前記左右の可動部は、前記調整機構によって前記標準位置よりも下側へ回動可能とされており、 前記左右の可動部が前記標準位置に位置し且つ前記着座乗員がAM50ダミーである場合、前記AM50ダミーの左右の大腿部において、前記AM50ダミーのヒップポイントから膝関節の中心までの間の部位のうち、前記ヒップポイント側の4割の部位が前記クッション本体部に支持されるように構成されている車両用シート。 【請求項2】 前記調整機構は、前記駆動源の駆動力によって送りねじ機構を駆動する左右のアクチュエータにより前記左右の可動部を回動させる請求項1に記載の車両用シート。 【請求項3】 前記左右の可動部は、前記調整機構によって前記標準位置よりも上側へ回動可能とされている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。 【請求項4】 前記シートクッションは、前記左右の可動部及び前記クッション本体部の左右両側に配置され、前記標準位置に位置する前記左右の可動部及び前記クッション本体部よりも上方側へ凸をなす左右のサイドサポート部を有しており、前記左右のサイドサポート部と前記左右の可動部とが分割されている請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。」 第4 引用文献、引用文献に記載された事項、引用発明等 1 引用文献1について (1)引用文献1に記載された事項 本願の出願前に頒布され、原査定で引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様である。)。 (1a) 「この考案はかかる問題点を解決すべくなされたものであり、乗員の大腿部支持を十分に行うことができるとともに、乗員の大腿部にクッション感を与えることができるサイサポート装置付車両用シートを提供することを目的とする。」(明細書3ページ17行〜4ページ1行) (1b) 「この考案にかかる一実施例を第1図ないし第4図に基づいて説明する。図中、(11)は自動車座席で、シートクッション(12)とシートバック(13)とからなる。このシートクッション(12)は表皮部材(14)により被包されたクッション部材(15)が外枠フレーム(16)上に載置され、前記クッション部材(15)下にサイサポート装置(17)が装着される。このクッション部材(15)はサイ支持部(18)が前記サイサポート装置(17)によって持ち上げられる。すなわち、外枠フレーム(16)上にクッション部材(15)を支持するクッション支持部材(19)が装着され、このクッション支持部材(19)のサイ支持部(18)側にはサイサポート装置(17)の可動プレート(20)がクッション支持部材(19)の下面に当接する。この可動プレート(20)は左右一対からなり、それぞれ独自に可動する。そして、可動プレート(20)の後端部には可動プレート(20)を支持する回動軸(21)が設けられ、この回動軸(21)の回転によって各可動プレート(20)の前端部が回動し、クッション支持部材(19)、すなわちクッション部材(15)のサイ支持部(18)を持ち上げる。この可動プレート(20)の回動軸(21)はクッション部材(15)のサイ支持部(18)と尻部支持部(22)との境界下に設けられ、外枠フレーム(16)に横架してシートクッション(12)の左右側面に突出する。 この回動軸(21)の左右突出部には操作ハンドル(30)が取付けられ、操作ハンドル(30)を乗員が操作することによって回動軸(21)が回動し、回動軸(21)を回動中心として可動プレート(20)の前端部が図示上下に回動する。然して、クッション部材(15)のサイ支持部(18)はその両側及び中央に奥行き方向の切欠き部(23)が設けられ、左右サイ支持部(18a)、(18b)を形成する。このサイ支持部(18)の切欠き部(23)に対応するクッション支持部材(19)の箇所にも、切欠きが形成され、クッション支持部材(19)下面の可動プレート(20)が上下動すると、クッション支持部材(19)とサイ支持部(18)とが持ち上げられる。このサイ支持部(18)等からなるクッション部材(15)は表皮部材(14)により被包される。」(明細書4ページ20行〜7ページ3行) (1c) 「サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)を動作させた際には、左右サイ支持部(18a)、(18b)がそれぞれ持ち上がって乗員の大腿部を確実に支持する。」(明細書8ページ3行〜6行) (1d) 第1〜4図は、次のとおりである。 (2)引用文献1から認定できる事項 上記(1)の記載ないし図面から、以下の事項が認定できる。 ア 第1〜3図を併せて参照すると、「(11)は自動車座席で、シートクッション(12)とシートバック(13)とからなる。このシートクッション(12)は表皮部材(14)により被包されたクッション部材(15)が外枠フレーム(16)上に載置され、前記クッション部材(15)下にサイサポート装置(17)が装着される。」ことから、「サイサポート装置(17)」、「シートクッション(12)」、「(11)は自動車座席」に着目すると、シートクッション(12)に装着されたサイサポート装置(17)と、シートクッション(12)とを備えた、自動車座席(11)が認定できる。 イ 「この可動プレート(20)は左右一対からなり、それぞれ独自に可動する。」ことは、この各可動プレート(20)、(20)は左右一対からなり、それぞれ独自に可動することとして認定できる。 そして、第1〜4図を併せて参照すると、この「それぞれ独自に可動する」という動作に対応している「可動プレート(20)の後端部には可動プレート(20)を支持する回動軸(21)が設けられ、この回動軸(21)の回転によって各可動プレート(20)の前端部が回動し、クッション支持部材(19)、すなわちクッション部材(15)のサイ支持部(18)を持ち上げる。」は、「各可動プレート(20)、(20)の後端部には各可動プレート(20)、(20)をそれぞれ支持する各回動軸(21)、(21)が設けられ、この各回動軸(21)、(21)の回転によって各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動し、クッション支持部材(19)、すなわちクッション部材(15)のサイ支持部(18)を持ち上げる。」として認定でき、同様の動作に対応している「操作ハンドル(30)を乗員が操作することによって回動軸(21)が回動し、」は、「各操作ハンドル(30)、(30)を乗員が操作することによって各回動軸(21)、(21)が回動し、」として認定できる。 ウ 「このシートクッション(12)は表皮部材(14)により被包されたクッション部材(15)が外枠フレーム(16)上に載置され、」、「クッション部材(15)のサイ支持部(18)はその両側及び中央に奥行き方向の切欠き部(23)が設けられ、左右サイ支持部(18a)、(18b)を形成する。」及び「このサイ支持部(18)等からなるクッション部材(15)は表皮部材(14)により被包される。」から、「左右サイ支持部(18a)、(18b)」は、シートクッション(12)が有するクッション部材(15)を構成している部材であり、表皮部材(14)により被包されたものであることが明らかであるし、第3図及び第4図から、シートクッション(12)の前部で各可動プレート(20)(20)の上方に位置していることも明らかであるから、シートクッション(12)が有する、シートクッション(12)の前部で各可動プレート(20)(20)の上方に位置している、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が認定できる。 エ 「サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)を動作させた際には、左右サイ支持部(18a)、(18b)がそれぞれ持ち上がって乗員の大腿部を確実に支持する。」、「この回動軸(21)の回転によって各可動プレート(20)の前端部が回動し、クッション支持部材(19)、すなわちクッション部材(15)のサイ支持部(18)を持ち上げる。」及び第4図から、サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)(20)の前端部が回動し、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が、後端部を回転中心として、それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する、シートクッション(12)が認定できる。 オ 「クッション部材(15)のサイ支持部(18)と尻部支持部(22)」及び「このサイ支持部(18)等からなるクッション部材(15)は表皮部材(14)により被包される。」から、上記ウで述べたサイ支持部(18)である左右サイ支持部(18a)、(18b)と同様に、「尻部支持部(22)」も、表皮部材(14)により被包された尻部支持部(22)として特定でき、第2図及び第4図において、これらの部材(左右サイ支持部(18a)、(18b)及び尻部支持部(22))に着目すると、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が持ち上がる前には、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の後方に設けられた、尻部支持部(22)の上面と、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の上面とが、面一状となっていることが認定できる。 (3)引用文献1に記載された発明 上記(1)、(2)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「左右一対からなり、それぞれ独自に可動する各可動プレート(20)、(20)の後端部には、各可動プレート(20)、(20)をそれぞれ支持する各回動軸(21)、(21)が設けられ、各操作ハンドル(30)、(30)を乗員が操作することによって各回動軸(21)、(21)が回動し、この各回動軸(21)、(21)の回転によって各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動する、シートクッション(12)に装着されたサイサポート装置(17)と、 シートクッション(12)の前部で各可動プレート(20)、(20)の上方に位置している、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)を有し、サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動し、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が、後端部を回転中心として、それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する、シートクッション(12)とを備え、 表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が持ち上がる前には、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の後方に設けられた尻部支持部(22)の上面と、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の上面とが、面一状となっている、 自動車座席(11)。」 2 引用文献2について 本願の出願前に頒布され、原査定で引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【0025】 また、図10および図11に示すように、上記アームレスト9の揺動変位を検出するセンサ27と、サイドシート2,3のシートクッション5に設けられたサイドサポート部18,18を、仮想線で示す倒伏状態と実線で示す起立状態とに変位させるように駆動する左右一対のアクチュエータ28,28と、このアクチュエータ28,28に上記センサ27の検出信号に対応した制御信号を出力する制御手段29とを有するサポート形状変更手段を設けた構造としてもよい。上記アクチュエータ28は、上記サイドサポート18を押動するねじ軸30と、このねじ軸30を回転駆動して伸縮させる駆動モータ31とを有し、上記サイドサポート部18,18の下面には、上記ねじ軸30の先端部が当接する金属板等からなる当て板32が取り付けられている。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「シートクッション(12)」、「乗員の左右の大腿部」は、それぞれ、本願発明1の「シートクッション」、「着座乗員の左右の大腿部」に相当する。 引用発明の「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)」は、「後端部を回転中心として、それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する」から、可動部であり、本願発明1の「左右の可動部」に相当する。 そして、引用発明の「シートクッション(12)」は、「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)」(左右の可動部)が、「後端部を回転中心として、それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する」から、左右の可動部が互いに分割され且つ後端部を中心として上下に回動可能とされた「シートクッション(12)」であることが明らかである。 これらのことから、引用発明の「シートクッション(12)の前部で各可動プレート(20)、(20)の上方に位置している、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)を有し、サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動し、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が、後端部を回転中心として、それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する、シートクッション(12)」は、本願発明1の「前部が左右の可動部を含んで構成され、前記左右の可動部によって着座乗員の左右の大腿部をそれぞれ支持すると共に、前記左右の可動部が互いに分割され且つ後端部を中心として上下に回動可能とされたシートクッション」に相当する。 イ 引用発明の「各操作ハンドル(30)、(30)を乗員が操作すること」は、本願発明1の「手動操作」に相当する。 引用発明の「サイサポート装置(17)」の「各可動プレート(20)、(20)」は、「各可動プレート(20)、(20)の後端部には、各可動プレート(20)、(20)をそれぞれ支持する各回動軸(21)、(21)が設けられ」、「各回動軸(21)、(21)の回転によって各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動」するから、当該「各可動プレート(20)、(20)の前端部」が上下に回動することが明らかであるし、「それぞれ独自に可動する」から、本願発明1の「個別に上下に回動可能とされた調整機構」に相当する。 引用発明の「サイサポート装置(17)」は、「シートクッション(12)に装着された」ものであるから、引用発明の「サイサポート装置(17)」の「各可動プレート(20)、(20)」も、「シートクッション(12)に装着された」ものであることが明らかである(第4図も参照。)。 これらのことと、上記アで述べた「サイサポート装置(17)の各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動し」、「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)」(左右の可動部)が、「それぞれ持ち上がって乗員の左右の大腿部を確実に支持する」ことを踏まえると、引用発明の「左右一対からなり、それぞれ独自に可動する各可動プレート(20)、(20)の後端部には、各可動プレート(20)、(20)をそれぞれ支持する各回動軸(21)、(21)が設けられ、各操作ハンドル(30)、(30)を乗員が操作することによって各回動軸(21)、(21)が回動し、この各回動軸(21)、(21)の回転によって各可動プレート(20)、(20)の前端部が回動する、シートクッション(12)に装着されたサイサポート装置(17)」における「各可動プレート(20)、(20)」は、本願発明1の「前記シートクッションに設けられ、駆動源の駆動力又は手動操作により前記左右の可動部を連動させずに個別に上下に回動可能とされた調整機構」に相当する。 ウ 引用発明の「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の後方に設けられた尻部支持部(22)」は、尻部を支持するから、「シートクッション(12)」の本体部であることが明らかであり、上記アで述べた、引用発明の「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)」が、本願発明1の「左右の可動部」に相当することを踏まえると、本願発明1の「前記左右の可動部の後方で前記シートクッションの本体部を構成するクッション本体部」に相当する。 このことと、上記アを踏まえると、引用発明の「表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)が持ち上がる前には、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の後方に設けられた尻部支持部(22)の上面と、表皮部材(14)により被包された左右サイ支持部(18a)、(18b)の上面とが、面一状となっている」ことは、本願発明1の「前記左右の可動部の後方で前記シートクッションの本体部を構成するクッション本体部の上面と、前記左右の可動部の上面とが面一状となる位置が、前記左右の可動部の標準位置とされて」いることに相当する。 以上から、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「前部が左右の可動部を含んで構成され、前記左右の可動部によって着座乗員の左右の大腿部をそれぞれ支持すると共に、前記左右の可動部が互いに分割され且つ後端部を中心として上下に回動可能とされたシートクッションと、 前記シートクッションに設けられ、駆動源の駆動力又は手動操作により前記左右の可動部を連動させずに個別に上下に回動可能とされた調整機構と、 を備え、 前記左右の可動部の後方で前記シートクッションの本体部を構成するクッション本体部の上面と、前記左右の可動部の上面とが面一状となる位置が、前記左右の可動部の標準位置とされている車両用シート。」 <相違点1> 本願発明1では、「前記左右の可動部は、前記調整機構によって前記標準位置よりも下側へ回動可能とされて」いるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。 <相違点2> 本願発明1では、「前記左右の可動部が前記標準位置に位置し且つ前記着座乗員がAM50ダミーである場合、前記AM50ダミーの左右の大腿部において、前記AM50ダミーのヒップポイントから膝関節の中心までの間の部位のうち、前記ヒップポイント側の4割の部位が前記クッション本体部に支持されるように構成されている」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。 (2)判断 上記各相違点について以下検討する。 ア 上記相違点1に係る本願発明1の構成及び上記相違点2に係る本願発明1の構成は、いずれも、引用文献1にも引用文献2にも記載も示唆もされていない。 また、引用文献1及び引用文献2には、これらの構成が容易想到といえる根拠も記載も示唆もされていない。 イ したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1、2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ そして、本願発明1は、「着座乗員の左右の脚部の疲労を個別に軽減することができる」(本願明細書の段落【0018】)という格別に顕著な作用効果を奏するものである。 2 本願発明2〜4について 本願発明2〜4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに請求項2〜4の発明特定事項を付加して限定したものであるから、上記1と同じ理由により、引用発明び引用文献1、2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 まとめ 上記1、2のとおりであるから、本願発明1〜4は、引用発明及び引用文献1、2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、原査定を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-08-02 |
出願番号 | P2017-118033 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60N)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 出口 昌哉 |
発明の名称 | 車両用シート |
代理人 | 中島 淳 |
代理人 | 福田 浩志 |
代理人 | 加藤 和詳 |