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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1387232
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-20 
確定日 2022-07-06 
事件の表示 特願2019−548323「動的グラフィックコード実施方法及び機器」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日国際公開、WO2019/007289、令和 2年 8月13日国内公表、特表2020−524316、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2018年6月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年7月3日(以下,「優先日」という。) 中国)を国際出願日とする出願であって、令和3年1月6日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年4月1日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和3年6月22日付けで拒絶査定(原査定)がされた。これに対し、令和3年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに手続補正がされ、令和4年5月13日付けで当審より拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がされ、令和4年5月24日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和4年5月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
経時的に更新されるグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施方法であって、
グラフィックコードを表示する場合に、装置とブロッキングオブジェクトとの間の距離を検出するために距離センサを呼び出すことと、
前記距離が設定距離範囲内である場合に、前記グラフィックコードの更新を停止することと、
を含み、
前記グラフィックコードの更新を停止した後で、前記装置と前記ブロッキングオブジェクトとの間の前記距離が、前記設定距離範囲内にないことが検出された場合に、前記グラフィックコードの更新を回復することを更に含む、
方法。
【請求項2】
前記グラフィックコードの更新が停止されてからの時間期間が、設定時間期間に達した場合に、前記グラフィックコードの更新を回復することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフィックコードの更新の回復が、
次の更新時刻が到来した場合に、前記グラフィックコードを更新することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記グラフィックコードの更新の停止が、
サーバ更新モードにおいて、前記グラフィックコードの更新時刻が到来した場合に、更新要求をサーバに送信しないことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
経時的に更新されるグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施機器であって、
グラフィックコードを表示する場合に、装置とブロッキングオブジェクトとの間の距離を検出するために距離センサを呼び出すように構成された距離検出ユニットと、
前記距離が設定距離範囲内である場合に、前記グラフィックコードの更新を停止するように構成された更新停止ユニットと、
を含み、
前記グラフィックコードの更新を停止した後で、前記装置と前記ブロッキングオブジェクトとの間の距離が、前記設定距離範囲内にないことが検出された場合に、前記グラフィックコードの更新を回復するように構成された第1の回復ユニットを更に含む、
機器。
【請求項6】
前記グラフィックコードの更新が停止されてからの時間期間が、設定時間期間に達した場合に、前記グラフィックコードの更新を回復するように構成された第2の回復ユニットを更に含む、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記第1の回復ユニット又は前記第2の回復ユニットによる前記グラフィックコードの更新の回復が、
次の更新時刻が到来した場合に、前記グラフィックコードを更新することを含む、請求項5又は6に記載の機器。
【請求項8】
前記更新停止ユニットが、サーバ更新モードにおいて、前記グラフィックコードの更新時刻が到来した場合に、更新要求をサーバに送信しないように構成される、請求項5に記載の機器。
【請求項9】
プロセッサと、
マシン実行可能命令を格納するように構成されたメモリと、
を含む、経時的に更新されるグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施機器であって、
動的グラフィックコード実施制御ロジックに対応する、前記メモリに格納された前記マシン実行可能命令を読み出し且つ実行することによって、前記プロセッサが、
グラフィックコードを表示する場合に、装置とブロッキングオブジェクトとの間の距離を検出するために距離センサを呼び出すことと、
前記距離が設定距離範囲内である場合に、前記グラフィックコードの更新を停止することと、
前記グラフィックコードの更新を停止した後で、前記装置と前記ブロッキングオブジェクトとの間の前記距離が、前記設定距離範囲内にないことが検出された場合に、前記グラフィックコードの更新を回復することと
を行うように構成される、機器。」


第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由において引用した、本願の優先日前に既に公知である、特開2016−110634号公報(以下、これを「引用文献1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
以下、本発明を具現化した第1実施形態について、図面を参照して説明する。
(携帯型情報コード表示装置の概要)
まず、携帯型情報コード表示装置10の概要について説明する。図1、図2等で示す携帯型情報コード表示装置(以下、単に表示装置ともいう)10は、ユーザによって把持されつつ使用される構成をなしている。この表示装置10は、例えば、ユーザによって携帯されて様々な場所で用いられる携帯型の情報端末として構成されており、バーコードや二次元コードなどの情報コードCを生成して表示する機能を有している。なお、表示装置10は、携帯電話機、スマートフォン、ウェアラブル端末などの表示器を有する携帯型の情報機器であればよく、表示機能以外の他の機能は特に限定されない。
【0031】
表示装置10は、例えば、樹脂材料や金属材料などからなる筐体によって外郭が形成されている。また、筐体には、画像を表示可能な表示部12や、外部からの情報入力操作を行うための操作部13(タッチパネル等)などが組み付けられており、これらが一体化した機器構造となっている。
【0032】
図2に示すように、表示装置10は、主に、制御回路11、表示部12、操作部13、メモリ14、三軸センサ15、通信部16、時計部17等から構成されている。なお、これらは、図略のプリント配線板に実装あるいは筐体内に内装されている。

・・・中略・・・
【0036】
三軸センサ15及び制御回路11は、「方向検出部」の一例に相当し、表示部12が向く方向が所定の向きであることを検出可能に構成されている。この三軸センサ15は、公知の加速度センサなどによって構成され、本構成では表示装置10において互いに直交する所定の三方向のそれぞれの加速度を測定する構成をなしている。具体的には、図4、図7等で示すように、表示装置10の所定の長手方向をY軸方向とし、表示装置10の厚さ方向(長手方向と直交する方向であり、表示部12側の表面とその反対の裏面とが対向する方向)をZ軸方向(図示略)とし、これらY軸方向及びZ軸方向と直交する幅方向をX軸方向としている。また、Z軸方向の一方側(表示部12によって表示する側)がZ軸正側であり、これと反対の他方側がZ軸負側である。具体的には、例えば表示部12を構成する各表示素子を覆う構成で透明板が配置され、その透明板の外面(表面)と直交する方向がZ軸方向となっている。そして、Z軸正側の方向が、「表示部12が向く方向」となっている。なお、三軸の加速度センサによって所定方向の加速度や鉛直方向を特定する技術は公知であるので詳細な省略するが、例えば、特開2003−302419号公報、特開2007−325722号公報などに示される方法のほか、公知の様々な方法を用いることができる。このような構成により、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の加速度がそれぞれどの程度であるかを測定することができ、例えば、表示装置10においてどの向きが鉛直方向であるかを特定できるようになっている。」

B 「【0086】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態に係る表示装置10のハードウェア構成は第1実施形態と同一である。よって、ハードウェア構成の詳細な説明は省略する。
【0087】
第3実施形態では、携帯型情報コード表示装置10の構成において、表示部12に情報コードCを切り替わる静止画の一部として表示する構成を例示したが、本構成では、情報コードCを動画の一部として表示しており、この動画の流れを図13の(A)〜(F)で例示している。この例では、図13(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)の順に画面が変化するようになっており、情報コードCのコード領域内の図柄が次第に変化するように表示がなされる。具体的には、図13(A)の画像P21ようにコード領域の左側から入り込んだボールが図13(B)、(C)の画像P22,P23のように移動するように動画表示がなされ、図13(D)〜(F)の画像P24,P25,P26のように、縦長に立った状態で止まるように動画表示がなされている。また、コード領域内の明色セル及び暗色セルは、3つの位置検出パターンの付近を除き、明色セルの濃度が次第に変化するようになっており、図13(A)の画像P21では、明色セルの位置が黒色で表され、その位置の濃度が次第に減少して図13(B)の画像P22のように明色セルが現れるようになっている。更に、図13(C)の画像P23のように、次第に明色セルの濃度が増大し、その後図13(D)の画像P24のように明色セルの位置が黒色で表されるように動画表示がなされる。その後、次第に明色セルの濃度が低下して、図13(E)の画像P25のように明色セルが浮かび上がり、その後、更に明色セルの濃度が次第に低下して、図13(F)の画像P26のように、明色セルが白色で表わされるように変化する。
【0088】
このように動画表示がなされるため、表示部12の向きが「所定の向き」であることが検出されていない間は、情報コードCが読取可能な状態(図13(B)(C)(E)(F)の状態)と、読取不能な状態(図13(A)(D)の状態)とに変化するように表示がなされる。なお、図13(B)(C)(E)(F)の状態では、ラグビーボールの位置については、公知の誤り訂正方法で誤り訂正が可能となっており、明色セル及び暗色セルによってコード領域内に記録されたデータを支障なく解読することができるようになっている。
【0089】
そして、このような動画表示が行われている最中に、第1実施形態のS2と同様の方法で、表示部12の向きが「所定の向き」であるか否かの判断処理が行われ、表示部12が「所定の向き」であると判断される場合には、表示部12において情報コードCを読取装置20によって読み取り可能となるように表示する。このときの表示は、例えば、図13(B)(C)(E)(F)のようにボールと重ねられて表示される情報コードCのみを抽出した、情報コードCのみの画像を連続的な静止画像として固定(維持)表示してもよく、図13(B)(C)(E)(F)のいずれかの画像(ボールの部分を誤り訂正によって訂正してデータを解読できる画像)を静止画像として連続的に固定(維持)表示してもよい。このように、情報コードCのみの画像、或いはコード領域内の一部が絵柄や記号などによって誤り訂正可能な形で表された情報コードCの画像を一定時間表示すれば、その一定時間の間に、このような表示画面の表示部12が読取装置20に向かって翳されている場合、読取装置20が情報コードCを確実に読み取ることができる。
【0090】
以上のように本構成では、表示制御部に相当する制御回路11が、表示部12での表示状態を、「情報コードCが読取可能状態となった表示状態」と、「情報コードCのコード領域内が読取不能な構成となった表示状態」とに変化させ得る構成となっている。このように変化させ得る構成とすれば、情報コードCのみを連続的に表示する構成では実現し得ない変化に富んだ意匠性の高い動的表示が可能となる。」

C 「【図1】



D 「【図2】



E 「【図13】





F 上記Bには「第4実施形態」として、“携帯型情報コード表示装置10における、情報コードCを動画の一部として表示する方法”が記載されている。

G 上記Bの段落【0086】には、「第4実施形態に係る表示装置10のハードウェア構成は第1実施形態と同一である」と記載され、また、上記Aには「第1実施形態」として、“表示装置10は、バーコードや二次元コードなどの情報コードCを生成して表示する機能を有し、主に、制御回路11、表示部12、操作部13、メモリ14、三軸センサ15、通信部16、時計部17等から構成され、また、三軸センサ15及び制御回路11は、表示部12が向く方向が所定の向きであることを検出可能に構成され”ることが記載されている。
してみると、引用文献1には「第4実施形態」として、“表示装置10は、バーコードや二次元コードなどの情報コードCを生成して表示する機能を有し、主に、制御回路11、表示部12、操作部13、メモリ14、三軸センサ15、通信部16、時計部17等から構成され、また、三軸センサ15及び制御回路11は、表示部12が向く方向が所定の向きであることを検出可能に構成され”ることが記載されているといえる。

H 上記Bの段落【0087】及び図13(上記E)には、“情報コードCのコード領域内の左側から入り込んだボールが移動し縦長に立った状態で止まるように画像P21→P22→P23→P24→P25→P26と変化する動画表示がなされる”ことが記載され、さらに、段落【0088】には、「なお、図13(B)(C)(E)(F)の状態では、ラグビーボールの位置については、公知の誤り訂正方法で誤り訂正が可能となっており、明色セル及び暗色セルによってコード領域内に記録されたデータを支障なく解読することができるようになっている」と記載されている。
してみると、引用文献1には、“情報コードCのコード領域内の左側から入り込んだボールが移動し縦長に立った状態で止まるように画像P21→P22→P23→P24→P25→P26と変化する動画表示がなされるものであって、また、ラグビーボールの位置については、公知の誤り訂正方法で誤り訂正が可能となっており、画像P22、P23、P25、P26では、明色セル及び暗色セルによってコード領域内に記録されたデータを支障なく解読することができるようになって”いることが記載されているといえる。

I さらに、上記Bの段落【0087】及び図13(上記E)には、“画像P21では、明色セルの位置が黒色で表され、その位置の濃度が次第に減少して画像P22では明色セルが現れる、更に、画像P23では、次第に明色セルの濃度が増大し、その後画像P24では明色セルの位置が黒色で表されるように動画表示がなされ、その後、次第に明色セルの濃度が低下して、画像P25では明色セルが浮かび上がり、その後、更に明色セルの濃度が次第に低下して、画像P26では、明色セルが白色で表わされるように変化するものであ”ることが記載されている。

J 上記Bの段落【0089】には、“表示部12の向きが「所定の向き」であるか否かの判断処理を行”うことが記載されている。

K さらに、上記Bの段落【0089】及び図13(上記E)には、“表示部12が「所定の向き」であると判断される場合には、画像P22、P23、P25、P26のいずれかの画像(ボールの部分を誤り訂正によって訂正してデータを解読できる画像)を静止画像として連続的に固定(維持)表示”することが記載されている。

L 上記Bの段落【0090】には、「情報コードCのみを連続的に表示する構成では実現し得ない変化に富んだ意匠性の高い動的表示が可能となる」ことが記載されている。

イ 上記AないしLの記載内容(特に、下線部を参照)からすると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「携帯型情報コード表示装置10における、情報コードCを動画の一部として表示する方法において、
表示装置10は、バーコードや二次元コードなどの情報コードCを生成して表示する機能を有し、主に、制御回路11、表示部12、操作部13、メモリ14、三軸センサ15、通信部16、時計部17等から構成され、また、三軸センサ15及び制御回路11は、表示部12が向く方向が所定の向きであることを検出可能に構成されおり、
情報コードCのコード領域内の左側から入り込んだボールが移動し縦長に立った状態で止まるように画像P21→P22→P23→P24→P25→P26と変化する動画表示がなされるものであって、また、ラグビーボールの位置については、公知の誤り訂正方法で誤り訂正が可能となっており、画像P22、P23、P25、P26では、明色セル及び暗色セルによってコード領域内に記録されたデータを支障なく解読することができるようになっており、
画像P21では、明色セルの位置が黒色で表され、その位置の濃度が次第に減少して画像P22では明色セルが現れる、更に、画像P23では、次第に明色セルの濃度が増大し、その後画像P24では明色セルの位置が黒色で表されるように動画表示がなされ、その後、次第に明色セルの濃度が低下して、画像P25では明色セルが浮かび上がり、その後、更に明色セルの濃度が次第に低下して、画像P26では、明色セルが白色で表わされるように変化するものであって、
表示部12の向きが「所定の向き」であるか否かの判断処理を行い、
表示部12が「所定の向き」であると判断される場合には、画像P22、P23、P25、P26のいずれかの画像(ボールの部分を誤り訂正によって訂正してデータを解読できる画像)を静止画像として連続的に固定(維持)表示し、
情報コードCのみを連続的に表示する構成では実現し得ない変化に富んだ意匠性の高い動的表示が可能となる、
情報コードCを動画の一部として表示する方法。」


第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「情報コードC」は、「コード領域内の左側から入り込んだボールが移動し縦長に立った状態で止まるように画像P21→P22→P23→P24→P25→P26と変化する動画表示がなされるものであ」るから、「情報コードC」は、経時的に表示が変化する動的なグラフィックコードといえる。
してみると、引用発明の「情報コードC」と、本願発明1の「経時的に更新されるグラフィックコード」とは、後記の点で相違するものの、“経時的に表示が変化するグラフィックコード”の点では共通する。
そして、引用発明の「情報コードCを動画の一部として表示する方法」と、本願発明1の「経時的に更新されるグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施方法」とは、後記の点で相違するものの、“経時的に表示が変化するグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施方法”の点では共通する。

イ 引用発明の「情報コードCを動画の一部として表示する方法」においては、「表示部12が「所定の向き」であるか否かの判断処理を行」うものであり、また、「表示装置10」の「三軸センサ15及び制御回路11」は、「表示部12が向く方向が所定の向きであることを検出可能に構成され」るものであって、さらに、「表示部12」は「表示装置10」に設けられるものであり、「表示部12が向く方向」は、「表示装置10」が向く方向と認められる。したがって、引用発明では、「情報コードC」を表示する場合に、「表示装置10」の状態(「向き」)を検出するために「三軸センサ15及び制御回路11」を呼び出しているといえる。
してみると、引用発明の「表示装置10」は、本願発明1の「装置」に相当し、また、引用発明の「三軸センサ15及び制御回路11」と、本願発明1の「距離センサ」とは、後記の点で相違するものの、“センサ”の点では共通する。
そして、引用発明の「表示部12の向きが「所定の向き」であるか否かの判断処理を行」うことと、本願発明1の「グラフィックコードを表示する場合に、装置とブロッキングオブジェクトとの間の距離を検出するために距離センサを呼び出すこと」とは、後記の点で相違するものの、“グラフィックコードを表示する場合に、装置の状態を検出するためにセンサを呼び出すこと”の点では共通する。

ウ 引用発明は「表示部12が「所定の向き」であると判断される場合には、P22、P23、P25、P26のいずれかの画像(ボールの部分を誤り訂正によって訂正してデータを解読できる画像)を静止画像として連続的に固定(維持)表示する」ものであるから、「表示装置10」の状態が所定の条件(「所定の向き」)である場合に、「情報コードC」の表示の変化を停止するものといえる。
してみると、引用発明の「表示部12が「所定の向き」である」ことと、本願発明1の「前記距離が設定距離範囲内である」こととは、後記の点で相違するものの、“装置が所定の条件である”ことの点では共通する。
そして、引用発明の「表示部12が「所定の向き」であると判断される場合には、P22、P23、P25、P26のいずれかの画像(ボールの部分を誤り訂正によって訂正してデータを解読できる画像)を静止画像として連続的に固定(維持)表示」することと、本願発明1の「前記距離が設定距離範囲内である場合に、前記グラフィックコードの更新を停止すること」とは、後記の点で相違するものの、“装置が所定の条件である場合に、前記グラフィックコードの表示の変化を停止すること”の点では共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、以下の一致点と相違点とがある。

〈一致点〉
「経時的に表示が変化するグラフィックコードを表示する動的グラフィックコード実施方法であって、
グラフィックコードを表示する場合に、装置の状態を検出するためにセンサを呼び出すことと、
装置が所定の条件である場合に、前記グラフィックコードの表示の変化を停止することと、
を含む、
方法。」

〈相違点1〉
「経時的に表示が変化するグラフィックコード」が、本願発明1では、「経時的に更新されるグラフィックコード」であるのに対して、引用発明では、「コード領域内の左側から入り込んだボールが移動し縦長に立った状態で止まるように」変化する「情報コードC」である点。

〈相違点2〉
本願発明1では、「装置の状態」が「装置とブロッキングオブジェクトとの間の距離」であって、「センサ」が「距離センサ」であって、さらに、「装置が所定の条件である場合」が、「前記距離が設定距離範囲内である場合」であるのに対して、引用発明では、「装置の状態」が「所定の向き」であって、「センサ」が「三軸センサ15及び制御回路11」であって、「装置が所定の条件である場合」が、「表示装置10」が「所定の向き」である場合である点。

〈相違点3〉
本願発明1では、「前記グラフィックコードの更新を停止した後で、前記装置と前記ブロッキングオブジェクトとの間の前記距離が、前記設定距離範囲内にないことが検出された場合に、前記グラフィックコードの更新を回復することを更に含む」ものであるのに対して、引用発明では、その旨の特定がされていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点1について判断する。
引用発明の「情報コードC」は、同一の「情報コードC」に対して移動する「ボール」が重なって表示されることで、「情報コードCのみを連続的に表示する構成では実現し得ない変化に富んだ意匠性の高い動的表示が可能となる」ものである。ここで、グラフィックコードを更新しても、グラフィックコードの明色セルと暗色セルの配置が変わるだけであって、変化に富んだ意匠性の高い動的表示になるとは認められない。してみると、引用発明の「情報コードC」を、「更新されるグラフィックコード」とする理由が存在しない。
さらに、本願発明1の上記相違点1に係る構成が周知の技術であるとも認められない。
したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4は、本願発明1を更に限定したものであるので、同様に、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1の「方法」を「機器」の観点から記載したものに過ぎず、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明6ないし8について
本願発明6ないし8は、本願発明5を更に限定したものであるので、同様に、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 本願発明9について
本願発明9は、本願発明1の「方法」を、「マシン実行可能命令」を実行する「プロセッサ」を含む「機器」の観点から記載したものに過ぎず、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1〜11について、引用文献1(上記第3の引用文献1)に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。

<特許法29条2項について>
上記第4(1)に示した相違点1は、原査定の引用文献1には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1〜9は、当業者であっても、原査定における引用文献1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について
1 特許法36条6項2号明確性)について
当審では、概ね、「請求項1、5、9の記載に「前記距離範囲内」とあるが、「前記」に対応する記載がなく、また、単に「距離範囲内」であるとしても技術的に意味が不明であり、請求項1、5、9の記載は不明確である」、また、「さらに、請求項4の記載に「含あむ」とあるが、日本語として不明であり、請求項4の記載は不明確である」と拒絶の理由を通知しているが、令和4年5月24日付けの手続補正書において、請求項1、5、9の記載は「前記設定距離範囲内」と補正され、また、請求項4は「含む」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-24 
出願番号 P2019-548323
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06K)
P 1 8・ 537- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 須田 勝巳
山澤 宏
発明の名称 動的グラフィックコード実施方法及び機器  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  
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