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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06K
管理番号 1387257
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-28 
確定日 2022-07-12 
事件の表示 特願2018− 46840「携帯型情報端末、ゲートシステム、情報処理方法、および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019−159915、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月14日の出願であって、令和3年2月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月16日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年7月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。謄本送達日同年8月3日)がなされ、これに対して同年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年11月22日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ、令和4年5月27日付けで当審により拒絶の理由が通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)され、同年6月2日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。


第2 原査定の概要

原査定(令和3年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1−10
・引用文献等 1

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2016/0048826号明細書


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。


・請求項 2−6、8、10
・備考
「画像生成部」(請求項2)及び「画像生成ステップ」(請求項8、10)において、光学的読取コードを配置した画像を生成する点が不明確である。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3〜6も同様である。


第4 本願発明

本願請求項1〜10に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明10」といい、これらをまとめて、「本願発明」ということがある。)は、令和4年6月2日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜10に記載された、次のとおりのものと認める。(下線部は補正された箇所を示す。)

「 【請求項1】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示部と、
前記表示器の画面の向きを検出する検出部と、
を備え、
前記画像生成部は、前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、制御部において発生された乱数に対応する位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返し、
前記表示部は、前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成部によって前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させる、
携帯型情報端末。
【請求項2】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示部と、
前記表示器の画面の向きを検出する検出部と、
を備え、
前記画像生成部は、前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを画像上に配置する位置の決定に用いる方向を前回設定した方向とは別の方向に設定し、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、今回設定した方向に、前記表示器の画面の中央を中心に、前回設定した位置と対称となる位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返し、
前記表示部は、前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成部によって前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させる、
携帯型情報端末。
【請求項3】
前記光学的読取コードは、乗車券情報を示す、
請求項1、または2に記載の携帯型情報端末。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記画像の表示にかかる操作が行われると、初期画像として、前記光学的読取コードが前記表示器の画面の中央に配置される画像を生成する、
請求項1乃至3の何れかに記載の携帯型情報端末。
【請求項5】
前記表示部は、輝度センサで検出した周囲の明るさが低くなるにつれて、前記画面の輝度を上げる、
請求項1乃至4の何れかに記載の携帯型情報端末。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の携帯型情報端末と、
ゲート装置と、
を備え、
前記ゲート装置は、読取領域に翳された前記携帯型情報端末の前記表示器の画面に表示されている前記光学的読取コードを読み取って通行を制限する、
ゲートシステム。
【請求項7】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像生成ステップで生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示ステップと、
前記表示器の画面の向きを検出する検出ステップと、
をコンピュータが実行し、
前記画像生成ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、制御部において発生された乱数に対応する位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返すステップであり、
前記表示ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成ステップで前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させるステップである、
情報処理方法。
【請求項8】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像生成ステップで生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示ステップと、
前記表示器の画面の向きを検出する検出ステップと、
をコンピュータが実行し、
前記画像生成ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを画像上に配置する位置の決定に用いる方向を前回設定した方向とは別の方向に設定し、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、今回設定した方向に、前記表示器の画面の中央を中心に、前回設定した位置と対称となる位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返すステップであり、
前記表示ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成ステップで前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させるステップである、
情報処理方法。
【請求項9】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像生成ステップで生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示ステップと、
前記表示器の画面の向きを検出する検出ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記画像生成ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、制御部において発生された乱数に対応する位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返すステップであり、
前記表示ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成ステップで前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させるステップである、
情報処理プログラム。
【請求項10】
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成ステップと、
前記画像生成ステップで生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示ステップと、
前記表示器の画面の向きを検出する検出ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記画像生成ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを画像上に配置する位置の決定に用いる方向を前回設定した方向とは別の方向に設定し、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を、今回設定した方向に、前記表示器の画面の中央を中心に、前回設定した位置と対称となる位置に決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返すステップであり、
前記表示ステップは、前記検出ステップで前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間、前記画像生成ステップで前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させるステップである、
情報処理プログラム。」


第5 引用例

1 引用例に記載された事項及び引用発明
(1)原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、米国特許出願公開第2016/0048826号明細書(2016年2月18日公開。以下、これを「引用例」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「[0011]The present disclosure describes stabilizing and/or centering a code that is displayed on a user device to facilitate scanning by a code scanner. The user device may be a mobile device, such as a mobile phone, smart watch, or a tablet. The code displayed on the user device, i.e., the on-screen code, is adjusted in response to motion detected by sensors in the user device. The on-screen code may be a barcode, such as a QR code. The on-screen code can be used, for example, to make a payment, identify a user, enable a digital wallet experience at the time of payment, improve payment security, gain entry at an event, or check-in at an airport. The on-screen code is placed in front of a code scanner that scans the on-screen code.

…中略…

[0013]The systems and methods described herein stabilize an on-screen code to facilitate scanning by a code scanner.An application displays a code on a mobile device as an on-screen code. The user holds the display of the mobile device in front of a code scanner so that the display is facing the code scanner for scanning of the on-screen code. A code stabilization application or module assists in stabilizing the on-screen code through changing the position, shape (e.g., to a trapezoid shape), and/or size of the on-screen code based on data and/or measurements from sensors.The sensors may comprise gyroscopes, accelerometers, and/or cameras. The code stabilization application stabilizes the on-screen code for easy scan-ability to speed up the scanning process.
[0014]For example, when the user moves the mobile device to the right relative to the code scanner, the application detects the movement and adjusts the on-screen code to the left. If the user moves the mobile device towards or away from the code scanner, the application adjusts the size of the on-screen code. Similarly, if the user tilts the mobile device relative to the code scanner, the application adjusts the size and/or shape of the on-screen code to counter this movement.

(当審訳)
[0011]本開示は、ユーザ装置に表示されるコードを安定化および/または中心に位置させて、コードスキャナによるコード走査を容易にすることについて記載する。ユーザ装置は、携帯電話、スマートウォッチ、又はタブレットのような携帯デバイスであってよい。ユーザ装置上に表示されたコード、すなわち、オンスクリーン・コードは、ユーザ装置内のセンサによって検出された動きに応答して調節される。オンスクリーン・コードは、QRコードのようなバーコードであってもよい。オンスクリーン・コードは、例えば、支払を行ったり、ユーザを識別したり、代金支払いの際に電子財布を可能にしたり、支払をセキュアにしたり、イベントのエントリや、空港でのチェックインに使用することができる。オンスクリーン・コードは、コードを読み取るコードスキャナの前に配置される。

…中略…

[0013]本明細書に記載のシステムおよび方法は、オンスクリーン・コードを安定化させ、コードスキャナによる走査を容易にする。アプリケーションは、モバイルデバイス上にオンスクリーン・コードとしてコードを表示する。ユーザは、コードスキャナの前にモバイルデバイスのディスプレイを保持して、オンスクリーン・コードをスキャンするコードスキャナーにディスプレイを対向させる。符号化アプリケーションまたはモジュールは、オンスクリーン・コードの位置、形状(例えば、台形の形状に)、および/またはセンサからのデータおよび/又は測定値に基づいて、画面上のコードのサイズを変更して画面上のコードの安定化を支援する。センサは、ジャイロスコープ、加速度計、および/またはカメラを含んでいてもよい。符号化アプリケーションは、スキャン能力を容易化にするために、オンスクリーン・コードを安定化し、走査プロセスをスピードアップする。
[0014]例えば、ユーザが、コードスキャナに対して相対的に右方向にユーザ装置を移動するとき、アプリケーションはその動きを検出し、左へオンスクリーン・コードを調整する。ユーザが、モバイル装置をコードスキャナに近付けたり遠ざけたりすると、アプリケーションは、オンスクリーン・コードのサイズを調整する。同様に、ユーザが、移動デバイスコードスキャナに対して相対的に傾斜した場合、この移動に対抗して、アプリケーションは、オンスクリーン・コードの大きさおよび/または形状を調整する。」

B 「[0031]In various embodiments, mobile device 120 includes one or more sensors 140, such as motion sensors 142 and/or cameras 144. Motion sensors 142 can monitor, detect, and/or measure movement, velocity, acceleration of mobile device 120, such as translational motion, translational velocity, translational acceleration, rotation, angular velocity, and angular acceleration. Motion sensors 142 may comprise one or more gyroscopes and/or one or more accelerometers. Thus, motion sensors 142 are configured to detect when mobile device 120 has been tilted on any axis, moved left or right, forward or backwards, and up or down by user 102. Motion sensors 142 may be accessed by code stabilization application 124.

(当審訳)
[0031]様々な実施形態において、モバイルデバイス120は、1つまたは複数のセンサ140、動きセンサ142および/またはカメラ144などを備えている。動きセンサ142は、モバイルデバイス120の並進運動によって、並進速度、並進加速度、回転角度、角速度、角加速度等を監視、検出、および/または測定することができる。動きセンサ142は、1つ以上のジャイロスコープおよび/または1つ以上の加速度計を含んでもよい。それ故、動きセンサ142は、モバイルデバイス120がユーザによって任意の軸で傾けられたり、上下前後左右に移動されたりすることを検出するように構成される。動きセンサ142は、符号化アプリケーション124によってアクセスされてもよい。」

C 「[0058]At step 310, code stabilization application 124, which can use various known image stabilization methods, adjusts the on-screen code in response to the movements that are detected by sensors 140. In an embodiment, the on-screen code is adjusted by redisplaying the on-screen code on the display at an adjusted position, adjusted shape, and/or adjusted size such that the on-screen code is stable relative to code scanner/reader 150, The on-screen code is adjusted such that the code remains the same from the perspective of code scanner/reader 150.

(当審訳)
[0058]ステップ310では、種々の公知の画像安定化方法を使用することができるが、符号化アプリケーション124は、センサ140によって検出された動きに応じてオンスクリーン・コードを調整する。一実施形態では、オンスクリーン・コードは、調整された位置、調整された形状、および/または調整されたサイズの該オンスクリーン・コードをディスプレイ上に再表示することによって調整され、これにより、該オンスクリーン・コードはコードスキャナー150に対して相対的に安定化する。オンスクリーン・コードは調整され、コードスキャナ/リーダ150の観点から同一のままに留まる。」

D 「[0064]In another embodiment, code stabilization application 124 adjusts the on-screen code for a predetermined time period, then resets, and again starts adjusting the on-screen code. When code scanner 150 is not able to scan the on-screen code at a first stabilized position, the on-screen code is stabilized at a second stabilized position after a predetermined time period. The predetermined time period may be the average time it takes for a scan to occur when the on-screen code is positioned in a correct orientation. For example, if code stabilization application 124 is stabilizing the on-screen code at a position that is out of scanning range, by providing a restart of the adjustment after a predetermined time period, the on-screen code can be re-centered on mobile device 120 and stabilized at a new position. Thus, code stabilization application 124 has a self-correcting mechanism.

(当審訳)
[0064]別の実施形態では、符号化アプリケーション124は、予め定められた期間の間、オンスクリーン・コードを調整し、一旦リセットして、再びオンスクリーン・コードの調整を開始する。コードスキャナ150が、最初の安定化位置におけるオンスクリーン・コードが読み取ることができない場合、予め定められた所定期間後に、オンスクリーン・コードは第2の安定化位置に安定化される。予め定められた所定期間は、オンスクリーン・コードが正しい向きに定位されてスキャンされるまでにかかる時間の平均時間であって良い。例えば、符号化アプリケーション124が、ある位置でオンスクリーン・コードを安定化させる場合、調整を再スタートをすることによって、予め定められた期間の後、オンスクリーン・コードは、再度モバイルデバイス120の中央に再調整され、新しい位置で安定化される。このようにして、符号化アプリケーション124は、自己修正機構を具有する。」

(2)上記(1)の記載事項A〜Dより、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「オンスクリーン・コードを安定化させ、コードスキャナによる走査を容易にし、アプリケーションによって、モバイルデバイス上にオンスクリーン・コードが表示されるシステムであって、
符号化アプリケーションまたはモジュールは、センサからの測定値に基づいて、オンスクリーン・コードの位置、形状を変更して画面上のコードの安定化を支援し、
センサは、ジャイロスコープ、加速度計、および/またはカメラを含み、([0013])
携帯電話、スマートウォッチ、又はタブレットのような携帯デバイスであってよいユーザ装置上に表示されたオンスクリーン・コードは、ユーザ装置内のセンサによって検出された動きに応答して調節され、QRコードのようなバーコードであってもよく、([0011])
ユーザが、コードスキャナに対して相対的に右方向にユーザ装置を移動するとき、アプリケーションはその動きを検出し、左へオンスクリーン・コードを調整し、([0014])
ユーザ装置は、1つまたは複数のセンサ、動きセンサおよび/またはカメラなどを備え、動きセンサは、ユーザ装置の並進運動によって、並進速度、並進加速度、回転角度、角速度、角加速度等を監視、検出、および/または測定することができ、([0031])
符号化アプリケーションは、センサによって検出された動きに応じてオンスクリーン・コードを調整し、オンスクリーン・コードは、調整された位置、調整された形状、および/または調整されたサイズの該オンスクリーン・コードをディスプレイ上に再表示することによって調整され、これにより、該オンスクリーン・コードはコードスキャナーに対して相対的に安定化し、([0058])
符号化アプリケーションは、予め定められた期間の間、オンスクリーン・コードを調整し、一旦リセットして、再びオンスクリーン・コードの調整を開始し、コードスキャナが、最初の安定化位置におけるオンスクリーン・コードが読み取ることができない場合、予め定められた所定期間後に、オンスクリーン・コードは第2の安定化位置に安定化され、
符号化アプリケーションが、ある位置でオンスクリーン・コードを安定化させる場合、調整を再スタートをすることによって、予め定められた期間の後、オンスクリーン・コードは、再度モバイルデバイス120の中央に再調整され、新しい位置で安定化される([0064])
システム。」


第6 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「モバイルデバイス上にオンスクリーン・コードが表示されるシステム」は、「携帯電話、スマートウォッチ、又はタブレットのような携帯デバイスであってよいユーザ装置」を有し、当該「ユーザ装置」は、本願発明1の「携帯型情報端末」に相当する。

イ 引用発明の「QRコードのようなバーコードであってもよ」い「オンスクリーン・コード」は、本願発明1の「光学的読取コード」に相当する。
引用発明は、「携帯デバイスであってよいユーザ装置上」に「オンスクリーン・コード」を表示するものであるから、当該「オンスクリーン・コード」を配置した画像を生成する手段を有することは明らかであるから、引用発明と本願発明1とは、“光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成部”を備える点で一致する。

ウ 引用発明の「ユーザ装置」の「ディスプレイ」は、本願発明1の「表示部」に相当し、引用発明は、上記イの認定のとおり、「携帯デバイスであってよいユーザ装置上」に「オンスクリーン・コード」を表示することから、引用発明と本願発明1とは、“前記画像生成部が生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示部”を備える点で一致する。

エ 引用発明の「ユーザ装置は、1つまたは複数のセンサ、動きセンサおよび/またはカメラなどを備え、動きセンサは、ユーザ装置の並進運動によって、並進速度、並進加速度、回転角度、角速度、角加速度等を監視、検出、および/または測定することができ」、また、当該「ユーザ装置」は、「携帯電話、スマートウォッチ、又はタブレットのような携帯デバイスであってよい」ことから、当然に「ユーザ装置」の「ディスプレイ」の画面の向きを検出するものと認められ、上記ウの認定と合わせ、引用発明と本願発明1とは、“前記表示器の画面の向きを検出する検出部”を備える点で一致する。

オ 引用発明は、「オンスクリーン・コードを安定化させ、コードスキャナによる走査を容易に」するものであるとともに、「センサからの測定値に基づいて、オンスクリーン・コードの位置、形状(例えば、台形の形状に)を変更して画面上のコードの安定化を支援」するものであって、「ユーザが、コードスキャナに対して相対的に右方向にユーザ装置を移動するとき、アプリケーションはその動きを検出し、左へオンスクリーン・コードを調整」し、「符号化アプリケーション」が「センサによって検出された動きに応じてオンスクリーン・コードを調整し、オンスクリーンコードは、調整された位置、調整された形状、および/または調整されたサイズの該オンスクリーン・コードをディスプレイ上に再表示することによって調整され、これにより、該オンスクリーン・コードはコードスキャナーに対して相対的に安定化」するものである。
上記イ〜エの認定を踏まえると、少なくとも“前記画像生成部”が、“前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返”しているといえる。
また、引用発明は、「符号化アプリケーション」が、「予め定められた期間の間、オンスクリーン・コードを調整し、一旦リセットして、再びオンスクリーン・コードの調整を開始し、コードスキャナが、最初の安定化位置におけるオンスクリーン・コードが読み取ることができない場合、予め定められた所定期間後に、オンスクリーン・コードは第2の安定化位置に安定化され」ることから、“所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理”が行われているといえ、以上を総合すると、引用発明と本願発明1とは、下記の点(相違点1、2)で相違するものの、“前記画像生成部は、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返”す点では一致するといえる。

カ 引用発明は、「符号化アプリケーションは、予め定められた期間の間、オンスクリーン・コードを調整し、一旦リセットして、再びオンスクリーン・コードの調整を開始し、コードスキャナが、最初の安定化位置におけるオンスクリーン・コードが読み取ることができない場合、予め定められた所定期間後に、オンスクリーン・コードは第2の安定化位置に安定化され」るものであるから、上記イおよびウの認定を踏まえると、引用発明と本願発明1とは、下記の点(相違点2)で相違するものの、“前記表示部は、前記画像生成部によって前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させる”点で一致する。

キ 以上、ア〜カの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
光学的読取コードを配置した画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した前記画像を表示器の画面に表示させる表示部と、
前記表示器の画面の向きを検出する検出部と、
を備え、
前記画像生成部は、所定の時間経過する毎に、前記光学的読取コードを前記画像上に配置する位置を決定し、ここで決定した位置に前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理を繰り返し、
前記表示部は、前記画像生成部によって前記画像が生成される毎に、生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させる、携帯型情報端末。

〈相違点1〉
本願発明1の「画像生成部」が決定する、「光学的読取コード」を配置する位置が、「制御部において発生された乱数に対応する位置」であるのに対し、引用発明の「オンスクリーン・コード」が表示される位置が乱数に対応する位置ではない点。

〈相違点2〉
本願発明1は、「画像生成部」の「前記光学的読取コードを配置した前記画像を生成する処理」や、「表示部」の「生成された前記画像を前記表示器の画面に表示させる」ことが、「前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間」に行われるものであるのに対し、引用発明は、「ディスプレイ」が、「予め定めた向きであることが検出されている間」に、画像の生成処理や表示がなされることが特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1及び2についてまとめて検討する。
本願発明は、画像を制御する携帯型情報端末に関し(【0001】)、従来、自動改札システムにおいて、利用者が携帯端末から行った乗車予約に対し、当該携帯端末にセンター装置から受信した乗車情報を含むQRコード(登録商標)のような光学的読取コードが当該携帯端末に表示され、利用者が当該携帯端末に表示された光学的読取コードを、読取部を有する自動改札機に読み取らせ、自動改札機は、光学的読取コードに含まれる乗車情報に基づいて利用者の通行の可否を行う技術があることを背景とし(【0002】)、自動改札システム(ゲートシステム)では、自動改札機(ゲート装置)に携帯端末(携帯型情報端末)に表示された光学的読取コードを読み取らせる際、利用者は、携帯端末の画面を読取部に対向させる(下側に向ける)ので、画面を見ながら翳すことができないため、利用者が、携帯端末に光学的読取コードが読取部の適正な位置からズレてしまい、表示させて翳した光学的読取コードを読取部に読み取らせることができず(【0004】)、利用者は、読取部が光学的読取コードを読み取れないと、光学的読取コードが携帯端末の画面に表示されているかなど確認して、繰り返し読取部に携帯端末を翳すことにより、自動改札システムでは、光学的読取コードの読み取りに時間がかかってしまい、改札処理のスループットが低下してしまうことを解決しようとする課題とし(【0005】)、光学的読取コードの読み取りにかかる時間の増加を抑制する技術を提供することを目的としたものである。(【0006】)
一方、引用発明は、「オンスクリーン・コードを安定化させ、コードスキャナによる走査を容易にし、アプリケーションによって、モバイルデバイス上にオンスクリーン・コードが表示されるシステムであって、」「符号化アプリケーションまたはモジュールは、センサからの測定値に基づいて、オンスクリーン・コードの位置、形状(例えば、台形の形状に)を変更して画面上のコードの安定化を支援」するものであり、そのため、「符号化アプリケーションは、センサによって検出された動きに応じてオンスクリーン・コードを調整し、オンスクリーン・コードは、調整された位置、調整された形状、および/または調整されたサイズの該オンスクリーン・コードをディスプレイ上に再表示することによって調整され、これにより、該オンスクリーン・コードはコードスキャナーに対して相対的に安定化」されるものである。
さらにまた、引用発明は、「予め定められた期間の間、オンスクリーン・コードを調整し、一旦リセットして、再びオンスクリーン・コードの調整を開始し、コードスキャナが、最初の安定化位置におけるオンスクリーン・コードが読み取ることができない場合、予め定められた所定期間後に、オンスクリーン・コードは第2の安定化位置に安定化され」るものでもあって、例えば、「ユーザが、コードスキャナに対して相対的に右方向にユーザ装置を移動するとき、アプリケーションはその動きを検出し、左へオンスクリーン・コードを調整」するので、もし、引用発明において、「オンスクリーン・コード」をランダムな位置に表示してしまうと、「オンスクリーン・コードを調整し」て「コードスキャナーに対して相対的に安定化」することができなくなることは明らかであり、してみれば、引用発明において、「前記検出部によって、前記表示器の画面が予め定めた向きであることが検出されている間」に「乱数に対応する位置」に「オンスクリーン・コード」、すなわち「光学的読取コード」を表示することには阻害要因があるといわざるを得ず、当業者といえども、引用発明において相違点1及び2に係る構成を想起することは容易とはいえない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、少なくとも、「前記光学的読取コードを画像上に配置する位置の決定に用いる方向を前回設定した方向とは別の方向に設定し、」「今回設定した方向に、前記表示器の画面の中央を中心に、前回設定した位置と対称となる位置に決定」する点(以下、「相違点3」という。)で引用発明とは異なるものの、当該点は、引用例には記載されておらず、また、引用例に記載された引用発明から当該相違点3を導き出す動機付けを有さず、したがって、本願発明1と同様、引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明3〜6について
本願発明3〜6は、少なくとも請求項1または請求項2を直接または間接的に引用するものであって、本願発明1の上記相違点1および2並びに本願発明2の上記相違点3に係る構成を備えるものであるから、本願発明1及び2と同じ理由により、当業者であっても、引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

4 本願発明7、9について
本願発明7および9は、本願発明1とカテゴリー表現のみ異なるものであって、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

5 本願発明8、10について
本願発明8および10は、本願発明2とカテゴリー表現のみ異なるものであって、本願発明2と同じ理由により、当業者であっても、引用例に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断

令和4年6月2日付けの補正により、補正後の請求項1〜10は、上記第4に示したとおりのものとなり、上記第6で示したとおり、補正後の請求項1〜10に係る発明は、原査定における引用文献1(上記第5の引用例)に記載された引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第8 当審拒絶理由通知についての判断

1 特許法36条6項2号について
当審では、請求項2−6の「画像生成部」、及び請求項8、10の「画像生成ステップ」において、光学的読取コードを配置した画像を生成する点が不明確であるとの拒絶の理由を通知しているが、上記第4に示したとおりに補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第9 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-29 
出願番号 P2018-046840
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06K)
P 1 8・ 121- WY (G06K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 山澤 宏
山崎 慎一
発明の名称 携帯型情報端末、ゲートシステム、情報処理方法、および情報処理プログラム  
代理人 弁理士法人 楓国際特許事務所  

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