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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1387269
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-01 
確定日 2022-07-26 
事件の表示 特願2020− 19024「情報処理装置、コンピュータプログラム、情報処理装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月28日出願公開、特開2020− 80169、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年6月11日(優先権主張 平成26年8月11日、平成26年8月11日)を出願日とする特願2015−118437号(以下、「原出願」という。)の一部を令和2年2月6日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和2年 3月 2日 :手続補正書の提出
令和2年11月30日付け :拒絶理由通知
令和3年 2月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年 7月28日付け :拒絶査定(原査定)
令和3年11月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 1月19日付け :前置報告

第2 原査定の概要
原査定(令和3年7月28日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−14に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1,4−7に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1.特開2005−25170号公報
引用文献4.特開2008−275560号公報(周知技術を示す文献)
引用文献5.特開2004−258476号公報(周知技術を示す文献)
引用文献6.特開2013−88176号公報(周知技術を示す文献)
引用文献7.特開2009−169452号公報

第3 本願発明
本願請求項1−14に係る発明(以下、「本願発明1」−「本願発明14」という。)は、令和3年11月1日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1−14に記載された事項により特定される発明であり、このうち、本願発明1、本願発明13及び本願発明14は、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
第1の画像を記憶する第1のメモリ領域と第2の画像を記憶する第2のメモリ領域とを有するメモリと、
画像を表示する表示部と、
ユーザ操作を受け付ける操作受付手段と、
前記第1のメモリ領域に記憶された前記第1の画像から生成した拡大画像に基づいて、前記第1の画像の拡大画像である前記第2の画像を生成して前記第2のメモリ領域に記憶させる拡大制御手段と、
前記表示部に画像を表示する表示制御手段と、を備えた情報処理装置であって、
前記表示制御手段は、前記ユーザ操作に応じて、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が記憶された前記メモリから読み込むメモリ領域を変更して、前記メモリに記憶された前記第1の画像と前記第2の画像のいずれか一方の画像を前記表示部に表示することを特徴とする、
情報処理装置。」

「【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至12のいずれか一項に記載された情報処理装置として動作させるためのコンピュータプログラム。
【請求項14】
第1の画像が記憶される第1のメモリ領域と第2のメモリ領域とを有するメモリと、画像を表示する表示部と、ユーザ操作を受け付ける操作受付手段と、を備えた情報処理装置が実行する制御方法であって、
前記第1のメモリ領域に記憶された前記第1の画像から生成した拡大画像に基づいて前記第1の画像の拡大画像である第2の画像を生成して前記第2のメモリ領域に記憶させる拡大制御工程と、
前記表示部に画像を表示する表示制御工程と、を有し
前記表示制御工程では、前記ユーザ操作に応じて、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が記憶された前記メモリから読み込むメモリ領域を変更して、前記メモリに記憶された前記第1の画像と前記第2の画像のいずれか一方の画像を前記表示部に表示することを特徴とする、
情報処理装置の制御方法。」

また、本願発明2−12は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献
1 引用文献1、引用発明
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1(特開2005−25170号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0055】
図4は携帯電話10の回路構成を示すブロック図である。
【0056】
この携帯電話10には、マイクロプロセッサ(CPU)からなる制御部21が搭載されており、この制御部21の制御の下で、携帯電話10に備えられた各種機能が実行される。・・・(後略)
【0057】
制御部21には、図1に示した表示部12、入力部13、センサ18などがシステムバス22を介して接続されていると共に、画像データ取得部23、記憶装置24、作業用メモリ25、記録媒体読み取り部26、無線部27、伝送制御部28などが接続されている。」

「【0067】
作業用メモリ25は、例えばRAMなどであり、制御部21の処理に必要な各種データを保持しておくためのメモリである。本実施形態において、この作業用メモリ25には、図5に示すように、画像データを記憶しておくための画像記憶領域25aの他、その画像データを表示部12への表示データとして展開するための表示メモリ領域25b、現在の表示倍率を記憶しておくための表示倍率記憶領域25c、X,Yの各軸の位置情報を記憶しておくための位置情報記憶領域25d、表示に関する各種設定情報を記憶しておくための設定情報記憶領域25e、各モード毎に表示倍率が設定された倍率テーブル25fなどが設けられている。」









「【0083】
次に、前記更新後の表示倍率に基づいて当該画像データを拡大/縮小して表示サイズを変更することになるが、その際に、制御部21は、まず、図6に示すように全体画像を表示メモリ領域25bに展開するといった処理を行う(ステップA16)。そして、制御部21は表示倍率の値に応じて当該全体画像から表示部12の画面に表示する部分を切り出し(ステップA17)、表示倍率の値に応じた拡大/縮小処理を行う(ステップA18〜A20)。
【0084】
すなわち、表示倍率の値が「1.0」よりも大きい場合には(ステップA18のYes)、制御部21は前記切り出した画像データに対し、図8および図9に示すように当該表示倍率の値に応じた画素の補間処理を施すことにより、その画像データの表示サイズを拡大する(ステップA19)。一方、表示倍率の値が「1.0」以下の場合には(ステップA18のNo)、制御部21は前記切り出した画像データに対し、図10に示すように当該表示倍率の値に応じた画素の間引き処理を施すことにより、その画像データの表示サイズを縮小する(ステップA20)。」

「【0089】
このようにして、表示倍率の値に応じて当該画像データが拡大あるいは縮小されると、制御部21はその拡大/縮小後の画像データを表示部12の表示画面に再表示する(ステップA21)。」





(2)引用発明
上記「(1)」から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「携帯電話10には、制御部21が搭載されており、
制御部21には、表示部12、入力部13が接続されていると共に、作業用メモリ25が接続されており、
作業用メモリ25には、画像データを記憶しておくための画像記憶領域25aの他、その画像データを表示部12への表示データとして展開するための表示メモリ領域25bが設けられ、
制御部21は、
全体画像を表示メモリ領域25bに展開するといった処理を行い、表示倍率の値に応じて当該全体画像から表示部12の画面に表示する部分を切り出し、表示倍率の値に応じた拡大/縮小処理を行い、
表示倍率の値が「1.0」よりも大きい場合には、前記切り出した画像データに対し、当該表示倍率の値に応じた画素の補間処理を施すことにより、その画像データの表示サイズを拡大する一方、表示倍率の値が「1.0」以下の場合には、前記切り出した画像データに対し、当該表示倍率の値に応じた画素の間引き処理を施すことにより、その画像データの表示サイズを縮小し、その拡大/縮小後の画像データを表示部12の表示画面に再表示する、
携帯電話10。」

2 引用文献4、引用文献5、周知技術1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献4(特開2008−275560号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0027】
次に、距離計測部110は、自車位置から案内交差点までの距離が一定距離以下に到達したか否かを判定する(ステップS105)。一定距離は、交差点拡大図を表示するタイミングを決定するために予め設定されるものであり、複数の値を設定することができる。例えば、700m、500m、300mである。案内交差点までの距離が一定距離以下になったとき、交差点拡大図生成部130は、案内交差点の拡大図を生成する(ステップS106)。交差点拡大図は、案内交差点の中心部を一定のスケールで拡大したものをリアルタイムで生成しても良いし、あるいは予め交差点拡大図のデータをメモリ等に保存しておき、そこから対応する交差点拡大図を読み出すようにしてもよい。」

(2)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献5(特開2004−258476号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0006】
画像全体を拡大したデータを予め作成しておき、ユーザが指示した時点で必要な部分だけを切り出して表示するという手法も考えられるが、画像全体のデータを保持するのにメモリを消費するという問題がある。」

(3)周知技術1
上記「(1)」−「(2)」から、引用文献4−5には次の周知技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められる。

「拡大画像を予めメモリに用意しておくこと」

3 引用文献6、周知技術2
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献6(特開2013−88176号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0018】
(前略)・・・。その結果、表示すべき部分拡大地図(変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図)が拡大地図生成バッファ内に生成されている拡大地図の領域(所定領域)に含まれていることが検出された場合(ステップS120にてYes)は、処理はステップS150へ進む。選択手段104により、変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図の画像が拡大地図生成バッファ109から読み出され(選択され)、重ね合わせ処理部70により、広域地図と合成される(ステップS150)。変更後の一部の領域を拡大した部分拡大地図が上記所定領域に含まれていないことが検出された場合(ステップS120のNo)、広域地図生成バッファ60から、広域地図内の当該場所の部分(変更後の一部の領域)の画像を読み出して、ラスタ画像拡大処理部102で拡大した画像を選択処理部104が選択し、これを部分拡大画像とする。この部分拡大画像が重ね合わせ処理部70によって広域地図に重畳されることにより合成処理される(ステップS130)。すなわち、拡大地図画面が広域地図画面に重畳されて表示される。その処理と並行して、当該場所(変更後の一部の領域)を含む別の所定領域を拡大した別の拡大地図を拡大地図生成処理部101で生成する(ステップS140)。」

(2)周知技術2
上記「(1)」から、引用文献6には次の周知技術(以下、「周知技術2」という。)が記載されていると認められる。

「拡大画像をバッファから読み出して重畳する処理や、拡大画像を元の画像から生成して重畳する処理」

4 引用文献7、技術事項1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献7(特開2009−169452号公報)には、次の事項が記載されている。

「【0121】
ステップS73では、所定期間内に入力が検出されなかった場合、拡大画面非表示制御部24が、拡大表示領域102による表示を消去する。そして、ステップS74の処理に進む。」

(2)周知技術3
上記「(1)」から、引用文献7には次の技術事項(以下、「技術事項1」という。)が記載されていると認められる。

「所定期間内に入力が検出されなかった場合は、必要のない拡大画面を表示しないようにすること」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「表示部12」は「拡大/縮小後の画像データ」を表示するから、本願発明1の「画像を表示する表示部」に相当する。

(イ)引用発明の「入力部13」は、本願発明1の「ユーザ操作を受け付ける操作受付手段」に相当する。

(ウ)引用発明の「制御部21」は、「全体画像を表示メモリ領域25bに展開するといった処理を行い、表示倍率の値に応じて当該全体画像から表示部12の画面に表示する部分を切り出し、表示倍率の値に応じた拡大」「処理を行」うことからみて、「全体画像」のうちの「切り出し」た部分の画像に基づいて「拡大」「後の画像データ」を生成する機能を有しているといえるから、該「全体画像」及び該「拡大」「後の画像データ」は、それぞれ、本願発明の「第1の画像」及び「第2の画像」に相当し、該「全体画像」が展開された「表示メモリ領域25b」は、本願発明の「第1の画像を記憶する第1のメモリ領域」に相当することを踏まえると、該「制御部21」のうちの当該機能を発揮する構成と本願発明1の「拡大制御手段」は、「前記第1の画像から生成した画像に基づいて、前記第1の画像の拡大画像である前記第2の画像を生成」する「拡大制御手段」である点で共通している。

(エ)さらに、引用発明の「制御部21」は、「その拡大/縮小後の画像データを表示部12の表示画面に再表示する」機能を有するから、該「制御部21」のうちの当該機能を発揮する構成は、本願発明1の「前記表示部に画像を表示する表示制御手段」に相当する。

(オ)引用発明の「携帯電話10」は、本願発明1の「情報処理装置」に対応する。

イ 上記アから、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「第1の画像を記憶する第1のメモリ領域を有するメモリと、
画像を表示する表示部と、
ユーザ操作を受け付ける操作受付手段と、
第1の画像から生成した画像に基づいて、前記第1の画像の拡大画像である第2の画像を生成する拡大制御手段と、
前記表示部に画像を表示する表示制御手段と、を備えた情報処理装置。」

<相違点>
(相違点1)
「メモリ」に関して、本願発明1では、さらに「第2の画像を記憶する第2のメモリ領域」を有するのに対して、引用発明では「拡大後の画像データ」を記憶している領域が不明な点。

(相違点2)
「拡大制御手段」に関し、本願発明1では「前記第1のメモリ領域に記憶された前記第1の画像から生成した拡大画像に基づいて、前記第1の画像の拡大画像である前記第2の画像を生成して前記第2のメモリ領域に記憶させる」のに対して、引用発明では「全体画像を表示メモリ領域25bに展開するといった処理を行い、表示倍率の値に応じて当該全体画像から表示部12の画面に表示する部分を切り出し、表示倍率の値に応じた拡大」「処理を行」うものであって、その具体的な拡大処理が「表示倍率の値が「1.0」よりも大きい場合には、前記切り出した画像データに対し、当該表示倍率の値に応じた画素の補間処理を施すことにより、その画像データの表示サイズを拡大する」ことにとどまり、「拡大後の画像データ」を記憶している領域も不明な点。

(相違点3)
本願発明1の「前記表示制御手段は、前記ユーザ操作に応じて、前記第1の画像と前記第2の画像との両方が記憶された前記メモリから読み込むメモリ領域を変更して、前記メモリに記憶された前記第1の画像と前記第2の画像のいずれか一方の画像を前記表示部に表示する」のに対し、引用発明の「制御部21」はそのような制御を行う構成を有するか不明な点。

(2)判断
事案に鑑み、先に相違点3について検討する。引用文献1には、「全体画像」と、「拡大/縮小後の画像」とのいずれか一方を選択的に表示することについては記載されていないから、ユーザ操作によって読み込むメモリ領域を変更することで、記憶された2つの画像の一方を表示することは想定されていないといえる。そうすると、周知技術1−2及び技術事項1を参照しても、「前記第1の画像と前記第2の画像との両方が記憶された前記メモリから読み込むメモリ領域を変更して、前記メモリに記憶された前記第1の画像と前記第2の画像のいずれか一方の画像」を表示することは、当業者であっても想到し得ない。
また、前置報告にて引用された特開平9−274653号公報により、「複数の画像のそれぞれを、別のメモリに配置するか、同じメモリの異なる領域に配置する」ことが適宜選定される事項であったとしても、上記判断に影響はない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明並びに周知技術1−2及び技術事項1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2−12について
本願発明2−12は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明並びに周知技術1−2及び技術事項1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明13−14について
本願発明13は、本願発明1−12に係る発明のカテゴリー違いの発明であるといえるから、本願発明1−12に対して上述したとおり、引用発明並びに周知技術1−2及び技術事項1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
本願発明14は、本願発明1のカテゴリー違いの発明であるといえるから、本願発明1に対して上述したとおり、引用発明並びに周知技術1−2及び技術事項1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
上記「第5 対比・判断」で示したとおり、本願発明1−14は、拒絶査定において引用された引用文献1、3−7に基づいて、容易に発明できたものとはいえないから、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-12 
出願番号 P2020-019024
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 宮下 誠
富澤 哲生
発明の名称 情報処理装置、コンピュータプログラム、情報処理装置の制御方法  
代理人 鈴木 正剛  

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