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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1387282
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-08 
確定日 2022-08-10 
事件の表示 特願2019−554551「V2X通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月18日国際公開、WO2018/189281、令和 2年 4月30日国内公表、特表2020−513182、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2018年(平成30年)4月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年4月12日,独国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和元年10月 2日 国内書面 提出
令和2年10月28日付け 拒絶理由通知
令和3年 2月 8日 意見書・誤訳訂正書 提出
令和3年 8月26日付け 拒絶査定
令和3年11月 8日 審判請求書・手続補正書 提出

第2 原査定の概要

原査定(令和3年8月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

・(進歩性)この出願の請求項1−18に係る発明は,下記の引用文献1ないし8に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・(明確性)この出願は,特許請求の範囲の請求項5の「前記フィードバック経路(40)は,前記アンテナ(30)のアンテナベース(32)と,前記V2X通信モジュール(20)の出力部と,高周波増幅器の上流と,無線チップ内とのうちの少なくとも1つに接続されている」との記載について,フィードバック信号の検出箇所は,通常,1つの点であるところ,上記の構成では,フィードバック信号の検出箇所が,複数の場合(「少なくとも1つ」)が含まれており,技術的に構成が不明瞭であり,
さらに,フィードバック信号の検出箇所は,通常,ノード(点)であるところ,「高周波増幅器の上流」では,ノード(点)の位置が不明瞭であるから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
また,請求項16の「前記V2X通信モジュール(20)において,複数の階層が実現されていて,前記テストメッセージは,前記V2X通信モジュール(20)において生成され,送信されずに,前記V2X通信モジュール(20)内部のみで複数の階層を介して導かれ,決定された階層に導かれて再び受信される」という記載について,請求項16が引用する請求項2において,V2X通信モジュールとアンテナが接続されることから,アンテナ(つまり,物理層)は,「V2X通信モジュール」に含まれていないもの認められるところ,「V2X通信モジュール(20)内部のみ」には,MAC層からアプリケーション層の何処までが,「V2X通信モジュールのみで複数の階層」に含まれているか不明瞭であるから,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

<引用文献等一覧>
1.米国特許出願公開第2016/0134383号明細書
2.米国特許出願公開第2010/0093282号明細書
3.米国特許出願公開第2012/0257656号明細書
4.米国特許第08520695号明細書
5.特開2016−184867号公報
6.特開2000−041027号公報
7.特開2000−311260号公報
8.米国特許出願公開第2005/0259589号明細書

第3 審判請求時の補正について

1 補正の目的について

審判請求時の補正は,当該補正前の特許請求の範囲から,当該補正前の請求項1および請求項5を削除し,当該補正前の請求項1を引用する当該補正前の請求項2を独立請求項形式に修正する際に,当該補正前の請求項1の「アンテナ(30)」の表記を当該補正前の請求項2の「第1アンテナ(30)」との表記に統一し,当該補正前の請求項3から18を,当該補正後の請求項2から16とし,当該補正前の請求項16の「〜」との記載を,当該補正後の請求項14において,他の引用請求項における記載と整合するように「から」の記載としたものである。

さらに,原査定の理由において,不明瞭とされた当該補正前の請求項16(当該補正後の請求項14)について,不明瞭とされた記載を修正したものである。

したがって,上記補正は,いずれも,請求項の削除,誤記の訂正,または,不明瞭な記載の釈明を目的とするものであるといえる。

新規事項の追加について

また,当該補正後の請求項1は,令和元年10月2日提出の国内書面の特許請求の範囲における,請求項1を引用する請求項2の記載と,請求項1および4を引用する請求項5の記載とに基づくものであり,両者の積集合に該当するものである。そして,請求項1を引用する請求項2と,請求項1および4を引用する請求項5とは,互いに排他的なものではない。さらに,請求項2の「第1アンテナ(30)」と,請求項4および5の「アンテナ(30)」とは,同じ添え字「(30)」を用いていることから,両者が,同じアンテナを示していると解することは自然である。
したがって,「・・・前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていて,
前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットと前記第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)との間に接続され,・・・」との記載,つまり,テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)からフィードバックする事項は,外国語書面の翻訳文である国内書面に記載された事項であり,新規事項を追加するものではないといえる。

3 独立特許要件について

そして,後記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,請求項1ないし16に係る発明は,いずれも,独立特許要件を満たすものである。

4 小括

以上から,審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

第4 本願発明

本願の請求項1ないし16に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明16」という。)は,令和3年11月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項16に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
V2X通信モジュール(20)を備えるV2X通信システム(10)において,
前記V2X通信システム(10)は,前記V2X通信モジュール(20)と接続されている,第1アンテナ(30)及び第2アンテナ(35)を有し,
前記V2X通信モジュール(20)は,連続的に,要求により又は定義された時点にセルフテストを実行するように構成されていて,
各セルフテストは少なくとも
テストメッセージを受信するステップと,
障害を検出するために前記テストメッセージを評価するステップとを備え,
前記第1アンテナ(30)は,前記第1アンテナ(30)に割り当てられるフィードバック経路(40)を有し,
前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていて,
前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットと前記第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)との間に接続され,
前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第2アンテナ(35)を用いて受信するようにも構成されている
ことを特徴とする,V2X通信システム(10)。
【請求項2】
前記V2X通信モジュール(20)は,前記第1アンテナ(30)及び前記第2アンテナ(35)を前記セルフテストの一部において交換するように構成されている
ことを特徴とする,請求項1に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項3】
前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットの出力部と,又はその下流に接続されている
ことを特徴とする,請求項1又は2に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項4】
送信されたテストメッセージは,全部又は一部がV2X動作メッセージである
ことを特徴とする,請求項1から3のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項5】
送信されたテストメッセージは,全部又は一部がV2X動作メッセージと区別可能な専用テストメッセージである
ことを特徴とする,請求項1から4のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項6】
前記専用テストメッセージは,特別のメッセージ形式又は特別のセキュリティ証明書により,そのまま識別される
ことを特徴とする,請求項5に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項7】
前記専用テストメッセージ形式は,変更されたイーサタイプ又は変更されたBTPポートによりそのまま識別される
ことを特徴とする,請求項5に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項8】
前記専用テストメッセージは,チャネル負荷が閾値を超過する場合には送信されない
ことを特徴とする,請求項5から7のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項9】
前記テストメッセージは,低減された送信電力及び/又は減衰器を用いて送信される
ことを特徴とする,請求項1から8のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項10】
前記送信されたテストメッセージの少なくとも一部は,MACエラー,CRCエラー,変調エラー,データレートエラー,過大送信電力,過小送信電力及び/又はセキュリティ証明書エラーによりV2X動作メッセージから乖離する,専用エラーテストメッセージであることと,
評価時に,障害が検出されるか否かを確定する
こととを特徴とする,請求項1から9のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項11】
前記V2X通信モジュール(20)は,評価時に,前記送信されたテストメッセージを前記受信されたテストメッセージと比較することと,
障害は,前記送信されたテストメッセージが前記受信されたテストメッセージと一致するか否か,及び/又はどれほど一致するかに応じて検出される
こととを特徴とする,請求項1から10のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項12】
前記テストメッセージは,他の送信機のメッセージである
ことを特徴とする,請求項1から11のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項13】
前記他の送信機は,無線LAN送信機(50),移動体通信送信機又は料金収受システム(60)である
ことを特徴とする,請求項12に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項14】
前記V2X通信モジュール(20)において,複数の階層が実現されていて,前記テストメッセージは,前記V2X通信モジュール(20)において生成され,送信されずに,
前記複数の階層を介して導かれ,決定された階層に導かれて再び受信される
ことを特徴とする,請求項1から13のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項15】
前記テストメッセージは,前記テストメッセージをMAC層に送ることを妨げるラベルを有する
ことを特徴とする,請求項14に記載のV2X通信システム(10)。
【請求項16】
前記テストメッセージの評価時に,処理時間,受信電界強度,MAC,CRC,受信チャネル及び/又は変調方式は,所定の送信パラメータに対応するか否かが検査されることと,
前記テストメッセージの評価時に,受信電界強度及び/又は処理時間は,予定される数値範囲内にあるか否かが検査されることと
の少なくとも一方を備えることを特徴とする,請求項1から15のいずれか1項に記載のV2X通信システム(10)。」

第5 引用文献

1 引用文献1および引用発明

(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「BACKGROUND
[0001] Vehicle to Vehicle and Vehicle to Infrastructure (collectively, V2X) short range communication systems may be provided for various functions in vehicles, including advanced safety and other critical features in modern vehicles. As vehicles, along with installed V2X systems, age, the risk for failure of these systems increases. Presently, testing or verification mechanisms for V2X systems are lacking that can be conveniently performed on a regular basis without additional external test hardware.」
(当審訳:
背景
[0001] 車両間および車両・インフラ間(総称してV2X)の近距離通信システムは,現代の自動車における高度な安全性やその他の重要な機能を含め,自動車の様々な機能のために提供されることがある。V2Xシステムが搭載された車両が古くなるにつれて,これらのシステムの故障リスクは高まる。現在,V2Xシステムのテストまたは検証メカニズムは,外部テストハードウェアを追加することなく定期的に便利に実行できるものが不足している。)

イ 図1


ウ 「Introduction

[0006] FIG. 1 is a block diagram of an exemplary system 10 for testing multiple radio frequency transceivers 25 within a vehicle 11 used for vehicle to vehicle (V2V) and vehicle to infrastructure (V2I) communications (collectively, V2X). The system 10 includes a control unit 15 which is in communication with the transceivers 25, for example, via a first vehicle communication bus 30. The control unit 15 may further be in communication with the vehicle 11, for example, with an in-vehicle computer 20 via a second vehicle communication bus 35. In response to data received from the in-vehicle computer 20, and/or based on other criteria, for example, elapsed time since a previous test, the control unit 15 may initiate testing of the multiple transceivers 25.
[0007] Testing includes initiating and monitoring radio frequency (RF) transmissions between the multiple transceivers 25. Testing the transceivers, as used herein, refers to verifying the operation of the transceivers, by performing transmit and receive operations and monitoring the results. For example, the control unit 15 may instruct a first transceiver 25a to transmit a test signal at a given strength and configure a second transceiver 25b to receive a return signal, derived from the test signal.The control unit 15 may determine, based on characteristics of the return signal, if the transmission path from the first transceiver 25a to the second transceiver 25b is operational.
[0008] For example, the strength of the return signal as measured by the second transceiver 25b may be compared to a predetermined range to determine if the transmission from the first transceiver 25a to the second transceiver 25b is successful, and to obtain an indication of an operational status of the first and second transceivers 25a, 25b. As another example, the transmitted test signal may include a digital test code. Confirming the presence of the digital test code in the return signal may be an indication of a successful test transmission.」
(当審訳:
はじめに

[0006] 図1は,車車間(V2V)通信及び車インフラ間(V2I)(総称してV2X)通信に使用される車両11内の複数の無線周波数トランシーバ25をテストするための例示的なシステム10のブロック図である。システム10は,例えば,第1の車両通信バス30を介してトランシーバ25と通信している制御ユニット15を含む。制御ユニット15は,さらに,車両11と,例えば,第2の車両通信バス35を介して車載コンピュータ20と通信していてもよい。車載コンピュータ20から受信したデータに応答して,及び/又は,他の基準,例えば,前回の試験からの経過時間に基づき,制御ユニット15は,複数のトランシーバ25の試験を開始してもよい。
[0007] テストは,複数のトランシーバ25の間で無線周波数(RF)伝送を開始し監視することを含む。本明細書で使用するトランシーバのテストとは,送受信動作を行い,その結果を監視することによって,トランシーバの動作を確認することをいう。例えば,制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aに対して,所定の強度でテスト信号を送信するように指示し,第2のトランシーバ25bに対して,テスト信号から派生した戻り信号を受信するように構成してもよい。制御ユニット15は,戻り信号の特性に基づいて,第1のトランシーバ25aから第2のトランシーバ25bへの伝送路が動作可能であるか否かを判断してもよい。
[0008] 例えば,第2のトランシーバ25bによって測定された戻り信号の強度を所定の範囲と比較して,第1のトランシーバ25aから第2のトランシーバ25bへの送信が成功したかどうかを判断し,第1及び第2のトランシーバ25a,25bの動作状態の表示を得てもよい。別の例として,送信されたテスト信号は,デジタルテストコードを含んでもよい。戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を確認することは,テスト送信の成功の指標となり得る。)

エ 図2


オ 「[0023] FIG. 2 is a diagram of an exemplary process 100 for executing a transceiver test of process 100 of the transceivers 25a, 25b. The process 100 begins in a block 105, wherein the control unit 15 receives operational status information such as mentioned above regarding vehicle 11 from the in-vehicle computer 20. The control unit 15, may, for example, receive the status information via the vehicle communication bus 35, which may be a CAN bus or the like. The vehicle 11 operational status may include known vehicle 11 states such as vehicle start, vehicle running, vehicle in motion, vehicle turning off, vehicle off, etc. After receiving the status information, the process 100 continues to a block 110 (or, although not shown in FIG. 2, it is to be understood that the process 100 may end, for example, if the control unit 15 and/or the vehicle 11 are powered off).
[0024] In the block 110, the control unit 15, based on the status information received from the in-vehicle computer 20 and other factors, determines whether one or more conditions are satisfied for initiating the transceiver test of process 100. For example, the control unit 15 may be programmed to initiate the transceiver test of process 100 upon receiving status information that the vehicle 11 is starting. When the control unit 15 receives information indicating to start the test, the process 100 continues in a block 115.
[0025] As another example, the control unit 15 may be programmed to initiate the transceiver test of process 100 regularly, for example every 30 minutes, while the vehicle 11 is running. In this case, when the control unit 15 receives the status information that the vehicle is running, the control unit 15 may determine the elapsed time since the last the transceiver test of process 100 was performed. When the control unit 15 determines that 30 minutes has elapsed since the last the transceiver test of process 100 was performed, a condition is satisfied so that process 100 continues in a block 115. The control unit 15 may also be programmed to initiate the transceiver test of process 100 based on other status information of vehicle 11.
[0026] On the other hand, if based on the status information received from the in-vehicle computer 20, the control unit 15 determines that the one or more conditions for starting the transceiver test of process 100 are not satisfied, the process 100 returns to the block 105.
[0027] In the block 115, the control unit 15 may begin the transceiver test of process 100 by setting the first transceiver 25a in the transmit mode. For example, the control unit 15 may send a command to the first transceiver 25a via the first vehicle communication bus 30. The command may include an instruction to switch from the standby mode or the receive mode to the transmit mode.
[0028] The command may further include an instruction to set the transceiver 25a to transmit at a test frequency. The test frequency may be, for example, a frequency which is in between frequency channels used for V2X transmissions. As another example, the test frequency may a side band of a frequency channel used for V2X transmissions. In this case, if the transceiver 25a typically uses the center frequency of the frequency channel used for V2X transmissions, the test signal can use an upper or lower side band of the channel.
[0029] Further, the command may include an instruction to select a test signal modulation scheme dedicated for test transmissions. For example, the first transceiver 25a may be set to utilize a test amplitude modulation scheme, a test frequency modulation scheme or a test pulse modulation scheme for test transmissions. The test signal modulation scheme may be different from a signal modulation scheme used for regular (non-test) transmissions.
[0030] After receiving the command, the transceiver 25a processor 45a may, based upon the command, set the switch 65a and/or the radio circuitry 50a to generate and transmit an RF signal at the test frequency via the antenna 40a. Once the first transceiver 25a is set to operate in the transmit mode, the process 100 continues in a block 120.
[0031] In the block 120, the control unit 15 continues the transceiver test of process 100 by setting the second transceiver 25b to the receive mode. The control unit 15 sends a command to the second receiver 25b via the first vehicle communication bus 30 to switch from the standby mode or the transmit mode to the receive mode. The command may further include an instruction to set the transceiver 25b to receive an RF signal at a test frequency corresponding to the test frequency of the first transceiver 25a, and/or modulated according to the test signal modulation scheme, as described in the block 115.
[0032] Based upon the command, the processor 45b sets the switch 65b and/or the radio circuitry 50b to receive the RF signal from the antenna 40b at the test frequency. Upon completing a configuration of the second transceiver 25b to operate in the receive mode, the process 100 continues in a block 125.
[0033] In the block 125, the control unit 15 instructs the first transceiver 25a to transmit a first RF test signal. For example, the control unit 15 sends a command to the first transceiver 25a processor 45a via the first vehicle communication bus 30. The command may specify a first predetermined strength for the transmission and a digital test code to be transmitted. The first predetermined strength could be, for example, an output power level determined based on the receive capability of the second and third transceivers 25b, 25c. The output power level for the first transceiver 25should be set at a level that does not overload the second and third transceivers 25b, 25c in the receive mode. Since the transceivers 25a co-exist on the same vehicle 11, the transceivers 25 may be designed to receive a full output from the transmit function of another of the transceivers 25 without overloading. In this case, a highest power level may be used for the transmission.
[0034] The digital test code may be a code reserved for test transmissions. For example, the first RF test signal may include a digital test code at a beginning of the signal.
[0035] The processor 45a communicates the first predetermined strength of the transmission and/or the digital test code to the radio circuitry 50a. The radio circuitry 50a generates the first RF test signal which may include the digital test code. The radio circuitry 50a, via the output amplifier 55a and the antenna 40a, transmits the first RF test signal. The process 100 then continues in a block 130.
[0036] In the block 130, the antenna 40b connected to the second transceiver 25b receives the first RF test signal transmitted from the transceiver 25a. The antenna 40b provides a first return signal, based on the RF test signal, to the pre-amplifier 60b of the second transceiver 25b. The pre-amplifier 60b amplifies and/or filters the first return signal, and inputs a first modified return signal to the radio circuitry 50b. The radio circuitry 50b determines, based on the first modified return signal received from the pre-amplifier 50b, characteristics of the first return signal. The radio circuitry 50outputs a signal or signals to the processor 45b representing the characteristics of the first return signal. The processor 45b sends data to the control unit 15 representing the characteristics of the first return signal.
[0037] For example, the radio circuitry 50b determines a strength of the first return signal and/or verifies the presence of the digital test code in the first return signal. The radio circuitry 50b outputs an analog signal and/or a digital signal corresponding to the determined strength of the first return signal and/or presence of the digital test code in the first return signal to the processor 45b. The processor 45b, upon receiving the analog and/or digital signal, sends data representing the determined strength of the first return signal and/or the presence of the digital test code in the first return signal to the control unit 15, via the vehicle communication bus 30. The process 100 then continues in a block 135.
[0038] In the block 135, the control unit 15 determines, based on the data representing the characteristics of the first return signal, whether a transmission path from the first transceiver 25a to the second transceiver path 25b (first transmission path) is operational.
[0039] For example the control unit 15 compares the determined strength of the first return signal with a first predetermined range. The first predetermined range could be determined empirically, by conducting tests of known good first and second transceivers 25a, 25b in a model vehicle 11 under laboratory conditions. Multiple transmissions from transceiver 25a could be made to transceiver 25b, and the strength of the first return signal measured. The first predetermined range could be established based on this measured data, allowing for expected variations due to manufacturing tolerances, weather conditions etc. The first predetermined range could, for example, be stored in the control unit 15. If the determined strength of the first return signal falls within the first predetermined range, and/or the presence of the digital test code in the first return signal is confirmed, the control unit 15 determines that the first transmission is operational.」
(当審訳:
[0023] 図2は,トランシーバ25a,25bのトランシーバテストプロセス100を実行するための例示的なプロセス100の図である。プロセス100は,ブロック105で始まり,制御ユニット15は,車載コンピュータ20から車両11に関する上述したような動作ステータス情報を受信する。制御ユニット15は,例えば,CANバス等であってもよい車両通信バス35を介して,ステータス情報を受信してもよい。車両11の動作状態には,車両始動,車両走行,車両走行中,車両消灯,車両停止等の既知の車両11の状態が含まれてもよい。状態情報を受信した後,プロセス100はブロック110に続く(又は,図2には示されていないが,例えば,制御ユニット15及び/又は車両11が電源オフである場合,プロセス100は終了してもよいことが理解されよう)。
[0024] ブロック110において,制御ユニット15は,車載コンピュータ20から受信した状態情報及び他の要因に基づいて,プロセス100のトランシーバテストを開始するための1つ以上の条件が満たされているか否かを判断する。例えば,制御ユニット15は,車両11が始動しているというステータス情報を受信すると,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされていてもよい。制御ユニット15がテストを開始することを示す情報を受信すると,プロセス100はブロック115で継続される。
[0025] 別の例として,制御ユニット15は,車両11が走行している間,定期的に,例えば30分ごとに,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされてもよい。この場合,制御ユニット15は,車両が走行中であるという状態情報を受信すると,プロセス100のトランシーバテストが最後に実行されてからの経過時間を判断してもよい。制御ユニット15は,プロセス100のトランシーバテストが最後に実行されてから30分が経過したと判断すると,プロセス100がブロック115で継続するように条件が満たされる。制御ユニット15はまた,車両11の他の状態情報に基づいてプロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされてもよい。
[0026] 一方,車載コンピュータ20から受信したステータス情報に基づいて,制御ユニット15が,プロセス100のトランシーバテストを開始するための1つ以上の条件が満たされていないと判断した場合,プロセス100は,ブロック105に戻る。
[0027] ブロック115において,制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aを送信モードに設定することにより,プロセス100のトランシーバテストを開始してもよい。例えば,制御ユニット15は,第1車両通信バス30を介して,第1トランシーバ25aにコマンドを送信してもよい。コマンドは,待機モード又は受信モードから送信モードへの切り替え指示を含んでもよい。
[0028] コマンドは,トランシーバ25aをテスト周波数で送信するように設定する命令をさらに含んでもよい。テスト周波数は,例えば,V2X送信に使用される周波数チャネルの間にある周波数であってよい。別の例として,テスト周波数は,V2X送信に使用される周波数チャネルのサイドバンドであってもよい。この場合,トランシーバ25aが通常V2X送信に使用される周波数チャネルの中心周波数を使用する場合,テスト信号は,チャネルの上側または下側のサイドバンドを使用することができる。
[0029] さらに,コマンドは,テスト送信専用のテスト信号変調方式を選択する命令を含んでもよい。例えば,第1のトランシーバ25aは,テスト送信のために,テスト振幅変調方式,テスト周波数変調方式,又はテストパルス変調方式を利用するように設定されてもよい。テスト信号変調方式は,通常の(非テスト)送信に使用される信号変調方式と異なっていてもよい。
[0030] コマンドを受信した後,トランシーバ25aのプロセッサ45aは,コマンドに基づいて,アンテナ40aを介してテスト周波数でRF信号を生成して送信するようにスイッチ65a及び/又は無線回路50aを設定してもよい。第1のトランシーバ25aが送信モードで動作するように設定されると,プロセス100はブロック120で継続される。
[0031] ブロック120において,制御ユニット15は,第2のトランシーバ25bを受信モードに設定することにより,工程100のトランシーバテストを継続する。制御ユニット15は,待機モード又は送信モードから受信モードに切り替えるためのコマンドを,第1の車両通信バス30を介して第1のトランシーバ25bに送信する。コマンドは,ブロック115で説明したように,第1のトランシーバ25aの試験周波数に対応する試験周波数でRF信号を受信するように,及び/又は試験信号変調方式に従って変調されるようにトランシーバ25bを設定する命令をさらに含んでもよい。
[0032] コマンドに基づいて,プロセッサ45bは,アンテナ40bからテスト周波数でRF信号を受信するように,スイッチ65b及び/又は無線回路50bを設定する。受信モードで動作するように第2のトランシーバ25bの構成を完了すると,プロセス100はブロック125で継続する。
[0033] ブロック125において,制御ユニット15は,第1トランシーバ25aに第1RFテスト信号の送信を指示する。例えば,制御ユニット15は,第1車両通信バス30を介して第1トランシーバ25aのプロセッサ45aにコマンドを送信する。コマンドは,送信のための第1の所定の強度と,送信されるべきデジタルテストコードとを指定し得る。第1の所定の強度は,例えば,第2及び第3のトランシーバ25b,25cの受信能力に基づいて決定される出力電力レベルであり得る。第1トランシーバ25shの出力電力レベルは,受信モードにおいて第2及び第3トランシーバ25b,25cに過負荷を与えないレベルに設定することが望ましい。なお,トランシーバ25aは同一の車両11に共存しているため,トランシーバ25のうち別のトランシーバの送信機能からの出力を過負荷にならないようにフルで受信するようにしてもよい。この場合,最も高い電力レベルの送信を行うようにしてもよい。
[0034] デジタルテストコードは,テスト送信のために予約されたコードであってもよい。例えば,第1のRFテスト信号は,信号の冒頭にデジタルテストコードを含んでもよい。
[0035] プロセッサ45aは,伝送の第1の所定の強度及び/又はデジタルテストコードを無線回路50aに伝達する。無線回路50aは,デジタルテストコードを含み得る第1のRFテスト信号を生成する。無線回路50aは,出力増幅器55a及びアンテナ40aを介して,第1のRFテスト信号を送信する。その後,プロセス100は,ブロック130において継続する。
[0036] ブロック130において,第2のトランシーバ25bに接続されたアンテナ40bは,トランシーバ25aから送信された第1のRFテスト信号を受信する。アンテナ40bは,RFテスト信号に基づく第1のリターン信号を第2のトランシーバ25bの前置増幅器60bに供給する。前置増幅器60bは,第1のリターン信号を増幅及び/又はフィルタリングし,第1の修正リターン信号を無線回路50bに入力する。無線回路50bは,前置増幅器50bから受信した第1の修正された戻り信号に基づいて,第1の戻り信号の特性を決定する。無線回路50は,第1の戻り信号の特性を表す信号又は信号をプロセッサ45bに出力する。プロセッサ45bは,第1のリターン信号の特性を表すデータを制御ユニット15に送信する。
[0037] 例えば,無線回路50bは,第1の戻り信号の強度を決定し,及び/又は第1の戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を確認する。無線回路50bは,第1の戻り信号の決定された強度及び/又は第1の戻り信号におけるデジタルテストコードの存在に対応するアナログ信号及び/又はデジタル信号をプロセッサ45bに出力する。プロセッサ45bは,アナログ信号及び/又はデジタル信号を受信すると,車両通信バス30を介して,第1の戻り信号の決定された強度及び/又は第1の戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を表すデータを制御ユニット15に送信する。その後,プロセス100は,ブロック135において継続する。
[0038] ブロック135において,制御ユニット15は,第1帰還信号の特性を表すデータに基づいて,第1トランシーバ25aから第2トランシーバ経路25bへの伝送路(第1伝送路)が動作可能であるか否かを判断する。
[0039] 例えば,制御ユニット15は,決定された第1の戻り信号の強度を第1の所定範囲と比較する。第1の所定の範囲は,実験室条件下でモデル車両11において既知の良好な第1及び第2のトランシーバ25a,25bのテストを実施することによって,経験的に決定され得る。トランシーバ25aからの複数の送信がトランシーバ25bになされ,第1の戻り信号の強度が測定され得る。第1の所定の範囲は,この測定されたデータに基づいて,製造公差,気象条件等による予想される変動を許容して確立され得る。第1の所定範囲は,例えば,制御ユニット15に記憶され得る。第1の戻り信号の決定された強度が第1の所定範囲内に入る場合,及び/又は第1の戻り信号におけるデジタルテストコードの存在が確認される場合,制御ユニット15は,第1の送信が動作可能であると判断する。)

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「V2X通信に使用される車両11内の複数の無線周波数トランシーバ25をテストするためのシステム10であって,
システム10は,第1の車両通信バス30を介してトランシーバ25と通信している制御ユニット15を含んでおり,
テストは,複数のトランシーバ25の間で無線周波数(RF)伝送を開始し監視するものであり,
制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aに対して,所定の強度でテスト信号を送信するように指示し,第2のトランシーバ25bに対して,テスト信号から派生した戻り信号を受信するよう構成しており,制御ユニット15は,戻り信号の特性に基づいて,第1のトランシーバ25aから第2のトランシーバ25bへの伝送路が動作可能であるか否かを判断しており,
例えば,第2のトランシーバ25bによって測定された戻り信号の強度を所定の範囲と比較して,第1のトランシーバ25aから第2のトランシーバ25bへの送信が成功したかどうかを判断し,第1及び第2のトランシーバ25a,25bの動作状態の表示を得てもよく,
送信されたテスト信号は,デジタルテストコードを含んでもよく,戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を確認することは,テスト送信の成功の指標となり得るものであり,
トランシーバ25a,25bのトランシーバテストプロセス100において,
例えば,制御ユニット15は,車両11が始動しているというステータス情報を受信すると,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされていてもよく,
別の例として,制御ユニット15は,車両11が走行している間,定期的に,例えば30分ごとに,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされてもよく,
制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aを送信モードに設定することにより,プロセス100のトランシーバテストを開始し,
制御ユニット15は,第2のトランシーバ25bを受信モードに設定し,
制御ユニット15は,第1トランシーバ25aに第1RFテスト信号の送信を指示し,第1のRFテスト信号は,信号の冒頭にデジタルテストコードを含んでもよく,アンテナ40aを介して,第1のRFテスト信号を送信し,
第2のトランシーバ25bに接続されたアンテナ40bは,トランシーバ25aから送信された第1のRFテスト信号を受信し,
制御ユニット15は,第1帰還信号の特性を表すデータに基づいて,第1トランシーバ25aから第2トランシーバ経路25bへの伝送路(第1伝送路)が動作可能であるか否かを判断する
V2X通信システム10。」

2 引用文献2ないし8

(1)引用文献2

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「[0009] The conventional smart antenna systems provide a wireless transceiver's active signal path that is normally open-circuited or shorted when detecting an antenna line failure. The RF signal power is then reflected back towards the power amplifier in the Tx signal processing chain of the corresponding transceiver. If a post-circulator directional coupler is used to couple part of this reflected power to an integrated power detector, the failure may be detected, but the detected reflected power may depend on the distance from the failure point to the directional coupler. Moreover, the reflected signal power may also be detected from the third port of a circulator that is normally placed at the output of the power amplifier. Just using reflected power detection for quality diagnostics is quite limited in fault detection sensitivity and capability to detect signal quality degradation transmitted to the air.」
(当審訳:
[0009] 従来のスマートアンテナシステムでは,アンテナ線の故障を検出すると,無線トランシーバのアクティブ信号経路は通常開回路または短絡される。そして,RF信号の電力は,対応するトランシーバーのTx信号処理チェーンの電力増幅器に向かって反射される。ポストサーキュレータの方向性結合器を使用して,この反射電力の一部を統合電力検出器に結合すれば,故障を検出することができるが,検出された反射電力は故障点から方向性結合器までの距離に依存する可能性がある。さらに,通常は電力増幅器の出力に配置されるサーキュレータの第3のポートからも反射信号電力を検出することができる。反射電力検出による品質診断だけでは,故障検出感度や空気に伝わる信号品質劣化の検出能力にかなり限界がある。)

イ 「[0033] Such exemplary procedure and configuration can facilitate a measurement of the first transceiver module's transmission looped back to the second transceiver module (or vice versa) using, e.g., the antennas associated with the first and second transceiver module, respectively, while the second transceiver module's own transmission can be carried out via an adjacent channel within the same Tx band or, in case of having the same frequency, is shut off or made lower in level during the measurement of the second transceiver module's transmission. In case of an exemplary CDMA system, signals may be separated by use of dedicated code channels, and in LTE separate resource blocks may be used for separate antenna loop paths. The above-described exemplary antenna loop measurement may also be performed in reverse signal direction by activating a measurement in the first transmit chain, by activating the second feedback path in the first transmit chain and by activating the transmission of the RF signal to be measured at the second transceiver module.
[0034] The exemplary delay calibration of the MIMO system may be executed for two transmit chains by first measuring the local feedback loop delay through the first feedback chain as described above for both transmit chains separately, secondly by measuring the inter-antenna loop delays using the second feedback loop separately for both transmit chains being used as the measuring transceiver and thirdly by comparing the measurements. Comparison of the local feedback loop measurements detects if the two transceivers have significant difference in the transmitter to local feedback loop signal paths. Comparison of the two antenna loop measurements indicates mainly the timing offset between the transceiver baseband inputs, because most of the unit-to-unit delay-variable parts of the transmit chain are included in both antenna loop measurements that were executed and because the first local loop measurement, if indicated the same latency for the two transmit-feedback loops, included most of the remaining part of the antenna loop signal path. The timing offset between the baseband inputs of the two transmit chains may be compensated either by using the signal measurement and adjustment blocks of the transceivers, by using some other adjustment in the transceivers or by applying the correction in the common baseband processing unit.
[0035] According to a second exemplary embodiment of the present invention, a multi-transceiver system architecture can be provided for use in a wireless MIMO spatial multiplexing system. The exemplary multi-transceiver system architecture can comprise a first transceiver module and an independently controllable second, third and optional further transceiver module(s) with each transceiver module having an own Tx/Rx antenna and comprising at least one own Tx signal processing chain with each of these signal processing chains being connected to a common baseband processing unit. The baseband processing unit can generate the same baseband signal to each Tx signal processing chain. According to this exemplary embodiment, the multi-transceiver system architecture can comprise a built-in feedback mechanism which facilitates a measurement of amplitude, timing and phase offsets using a signal measurement and adjustment block integrated into a digital predistortion system in the Tx signal processing chain of the second transceiver module.」
(当審訳:
[0033] このような例示的な手順および構成は,例えば,第1および第2のトランシーバモジュールにそれぞれ関連するアンテナを使用して第2のトランシーバモジュールにループバックされた第1のトランシーバモジュールの送信(または逆)の測定を容易にし,第2のトランシーバモジュール自身の送信は,同じTxバンド内の隣接チャネルを介して実施され得る,または同じ周波数を有する場合には第2のトランシーバモジュールの送信の測定中に停止または低レベルにされ得る。例示的なCDMAシステムの場合,信号は専用コードチャネルの使用によって分離されてもよく,LTEでは,別々のリソースブロックが別々のアンテナループパスのために使用されてもよい。また,上述の例示的なアンテナループ測定は,第1の送信チェーンにおける測定を起動し,第1の送信チェーンにおける第2のフィードバック経路を起動し,第2のトランシーバモジュールにおいて測定されるRF信号の送信を起動することによって,信号方向を逆にして実行されてもよい。
[0034] MIMOシステムの例示的な遅延較正は,第1に,両方の送信チェーンについて上記のような第1のフィードバックチェーンを介したローカルフィードバックループ遅延を別々に測定し,第2に,測定トランシーバとして使用される両方の送信チェーンについて第2のフィードバックループを使用してアンテナ間ループ遅延を別々に測定し,第3に測定値を比較することによって2つの送信チェーンについて実行され得る。ローカルフィードバックループの測定値を比較することで,2つのトランシーバが送信機からローカルフィードバックループへの信号経路に大きな違いがあるかどうかを検出する。2つのアンテナループ測定値の比較は,主にトランシーバのベースバンド入力間のタイミングオフセットを示す。これは,実行された両方のアンテナループ測定値に送信チェーンのユニット間遅延可変部分のほとんどが含まれ,最初のローカルループ測定値が,2つの送信フィードバックループについて同じレイテンシを示した場合,アンテナループ信号経路の残りの部分のほとんどが含まれているためである。2つの送信チェーンのベースバンド入力間のタイミングオフセットは,トランシーバの信号測定及び調整ブロックを使用するか,トランシーバにおいて他の何らかの調整を使用するか,又は共通のベースバンド処理ユニットにおいて補正を適用することにより,補償され得る。
[0035] 本発明の第2の例示的な実施形態によれば,ワイヤレスMIMO空間多重化システムで使用するためのマルチトランシーバシステムアーキテクチャを提供することができる。例示的なマルチトランシーバシステムアーキテクチャは,第1のトランシーバモジュールと,独立に制御可能な第2,第3及びオプションのさらなるトランシーバモジュール(複数可)とを備えることができ,各トランシーバモジュールは,独自のTx/Rxアンテナを備え,少なくとも一つの独自のTx信号処理チェーンを含み,これらの信号処理チェーンのそれぞれは共通のベースバンド処理ユニットに接続される。ベースバンド処理ユニットは,各Tx信号処理チェーンに同じベースバンド信号を生成することができる。この例示的な実施形態によれば,マルチトランシーバシステムアーキテクチャは,第2のトランシーバモジュールのTx信号処理チェーンにおけるデジタルプリディストーションシステムに統合された信号測定及び調整ブロックを用いて振幅,タイミング及び位相オフセットの測定を容易にする組み込みフィードバック機構を備えることができる。)

ウ 図3


エ 「[0091] FIG. 3 further shows that the downlink signal processing chain DLCH2 of the second transceiver module TRXM2 comprises a first directional coupling element DCE6, integrated into the downlink signal processing chain DLCH2 of the second transceiver module TRXM2, which is used for coupling out a portion of an RF signal which has been received by the Tx/Rx antenna Ant2 associated with the second transceiver module TRXM2. According to an alternative exemplary embodiment, the directional coupler may be replaced by a signal taken from a third port (load port) of circulator Cir2 or by a signal taken from a sample port of said circulator's load L2. A first switching element SW6, connected to an output terminal of the first directional coupling element DCE6, at which the coupled out signal portion of the received RF signal is supplied, or alternatively to the third port (load port) of circulator Cir2, serves for switchably feeding this received RF signal portion via the at least one uplink signal processing chain ULCH2 of the second transceiver module TRXM2 back to the aforementioned common baseband processing unit BPU.
[0092] In downlink direction of the first transceiver module TRXM1, the second directional coupling element DCE1 is pre-connected to a first circulator Cir1 which serves for directing the signal flow of an RF signal to be transmitted via the downlink signal processing chain DLCH1 of the first transceiver module TRXM1 to the Tx/Rx antenna Ant1 associated with this transceiver module. Furthermore, the downlink direction of the second transceiver module TRXM2, on the other hand, the first directional coupling element DCE6 is post-connected to a second circulator Cir2 which serves for directing the signal flow of an RF signal to be transmitted via the downlink signal processing chain DLCH2 of the second transceiver module TRXM2 to the Tx/Rx antenna Ant2 associated with this second transceiver module.」
(当審訳:
[0091] 図3はさらに,第2のトランシーバモジュールTRXM2のダウンリンク信号処理チェーンDLCH2が,第2のトランシーバモジュールTRXM2のダウンリンク信号処理チェーンDLCH2に組み込まれた第1の方向性結合素子DCE6からなり,第2のトランシーバモジュールTRXM2に関連するTx/RxアンテナAnt2によって受信したRF信号の一部を結合出力するために使用されていることを表している。代替の例示的な実施形態によれば,方向性結合器は,サーキュレータCir2の第3のポート(負荷ポート)から取り出される信号によって,または当該サーキュレータの負荷L2のサンプルポートから取り出される信号によって置き換えられてもよい。受信RF信号の結合されたアウト信号部分が供給される第1の方向性結合素子DCE6の出力端子,または代替的にサーキュレータCir2の第3のポート(ロードポート)に接続された第1のスイッチング素子SW6は,この受信RF信号部分を第2のトランシーバモジュールTRXM2の少なくとも一つのアップリンク信号処理チェーンULCH2を介して前述の共通ベースバンド処理ユニットBPUにスイッチ可能にフィードバックするために機能する。
[0092] 第1のトランシーバモジュールTRXM1のダウンリンク方向において,第2の方向性結合素子DCE1は,第1のトランシーバモジュールTRXM1のダウンリンク信号処理チェーンDLCH1を介して送信されるべきRF信号の信号フローを,このトランシーバモジュールと関連するTx/RxアンテナAnt1に導くために役立つ第1のサーキュレータCir1へ予め接続される。さらに,第2のトランシーバモジュールTRXM2のダウンリンク方向は,一方では,第1の方向性結合素子DCE6が,第2のトランシーバモジュールTRXM2のダウンリンク信号処理チェーンDLCH2を介して送信されるべきRF信号の信号フローをこの第2のトランシーバモジュールと関連するTx/RxアンテナAnt2に向けるために機能する第2の循環器Cir2に後接続される。)

(2)引用文献3

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 図1


イ 「[0047] FIG. 1 is a circuit diagram of a transceiver according to an example embodiment of inventive concepts.
[0048] Referring to FIG. 1, a transceiver 100 includes a baseband processor 110, a transmitter circuit 130, a receiver circuit 150, an antenna 175, and a loopback switch 182.
[0049] The baseband processor 110 includes a demodulator 114 configured to demodulate received digital signals IRX and QRX from the receiver circuit 150. The baseband processor 110 further includes a modulator 112 configured to modulate signals to be transmitted to generate transmission digital signals ITX and QTX. The baseband processor 110 outputs the transmission digital signals ITX and QTX to the transmission circuit 130.
[0050] The baseband processor 110 is also configured to detect carrier leakage in response to a received digital signal from the receiver circuit 150, and to generate calibration codes CODE_I and CODE_Q according to the detected carrier leakage. The transceiver 100 may suppress (e.g., minimize DC offset) of the transmitter circuit 130 based on the generated calibration codes CODE_I and CODE_Q.
[0051] Still referring to FIG. 1, in a normal mode the transmitter circuit 130 up-converts the transmission digital signals ITX and QTX from the baseband processor 110 to generate a first transmission signal.
[0052] In a calibration mode, the transmitter circuit 130 performs a digital-to-analog conversion (DAC) operation on the calibration codes CODE_I and CODE_Q, without use of the transmission digital signals ITX and QTX, to generate calibration signals S1_1 and S1_Q. The transmitter circuit 130 is configured to change a DC bias of a mixer having a differential structure and control leakage of a carrier signal in response to the generated calibration signals S1_I and S1_Q, and output a carrier signal generated by an oscillator as a second transmission signal.
[0053] In more detail with regard to FIG. 1, the transmitter circuit 130 includes a first digital-to-analog converter (DAC) 131, a first low-pass filter (LPF) 132, a second DAC 134, a first mixer 135, a third DAC 136, a second LPF 137, a fourth DAC 139, and a second mixer 140. The first and second mixers 135 and 140 are connected to a transmission amplifier 160 at node N1.
[0054] The first DAC 131 performs a DAC operation on the I-path transmission digital signal ITX from the baseband processor 110. In the normal mode, the first LPF 132 performs an LPF operation on an output signal of the first DAC 131 to generate a first low-pass filtered transmission signal. In the calibration mode, however, the first LPF 132 is disabled in response to a calibration mode signal CAL_MOD, and the second DAC 134 performs a DAC operation on the I-path calibration code CODE_I to generate an I-path calibration signal S1_I.
[0055] Still referring to the transmitter circuit 130 in FIG. 1, in the normal mode, the first mixer 135 mixes the first low-pass filtered transmission signal with an I-path transmission local oscillator signal LOITX to generate the first I-path transmission signal. In the calibration mode, however, the first mixer 135 may change the DC bias of the mixer having the differential structure in response to or based on the I-path calibration signal S1_I to control the leakage of the carrier signal, and output the carrier signal as a second I-path transmission signal.
[0056] Still referring to the transmission circuit 130 in FIG. 1, the third DAC 136 performs a DAC operation on the Q-path transmission digital signal QTX. In the normal mode, the second LPF 137 performs an LPF operation on an output signal of the third DAC 136 to generate a second low-pass filtered transmission signal. In the calibration mode, however, the LPF 137 is disabled in response to the calibration mode signal CAL_MOD, and the fourth DAC 139 performs a DAC operation on the Q-path calibration code CODE_Q to generate the Q-path calibration signal S1_Q.
[0057] In the normal mode, the second mixer 140 mixes the second transmission signal with a Q-path transmission local oscillator signal LOQTX to generate a first Q-path transmission signal. In the calibration mode, however, the second mixer 140 controls the leakage of the carrier signal in response to the Q-path calibration signal S1_Q, and outputs the carrier signal as a second Q-path transmission signal.
[0058] Each of the first and second mixers 135 and 140 outputs a transmission signal via output node N1.
[0059] Still referring to FIG. 1, a transmission amplifier 160 is between the output node N1 of the transmitter circuit 130 and a terminal (e.g., a node N2) of a transceiving selection switch 170. The transmission amplifier 160 amplifies the transmission signal (e.g., first or second transmission signal) output from the transmitter circuit 130.
[0060] The transceiver 100 further includes a local oscillator 120 configured to generate the local oscillator signals LOITX and LOQTX to the transmitter circuit 130.
[0061] A loopback switch 182 is connected between the output of the transmission amplifier 160 and the input of the receiver circuit 150. The loopback switch 182 selectively connects an output terminal of the transmission amplifier 160 with the input terminal of the receiver circuit 150. For example, in the calibration mode the loopback switch 182 electrically connects an output terminal of the transmission circuit 130 with an input terminal of the receiver circuit 150. As a result, in the calibration mode, the second transmission signal output from the transmission circuit 130 is transmitted to the receiver circuit 150.
[0062] As mentioned above the transceiver 100 also includes a receiver circuit 150. In the normal mode, the receiver circuit 150 down-converts a received signal RXI received from the antenna 175 and generates a first received digital signal. In the calibration mode, however, the receiver circuit 150 down-converts the second transmission signal received from the transmission circuit 130 via the loopback switch 182 and generates a second received digital signal.
[0063] As shown in FIG. 1, the receiver circuit 150 includes a third mixer 153, a third LPF 152, a first ADC 151, a fourth mixer 156, a fourth LPF 155, and a second ADC 154. The third and fourth mixers 153 and 156 are connected to the receiving amplifier 160 at the node N4.
[0064] In the normal mode, the third mixer 153 mixes the receiving signal RXI with the I-path receiving local oscillator signal LOIRX to generate a first I-path receiving signal. In the calibration mode, however, the third mixer 153 mixes the second transmission signal output from the transmission circuit 130 with the I-path receiving local oscillator signal LOIRX to generate a second I-path receiving signal.
[0065] The third LPF 152 then performs an LPF operation on an output signal from the third mixer 153. The first ADC 151 performs an ADC operation on an output signal from the third LPF 152 to generate an I-path receiving digital signal IRX.
[0066] In the normal mode, the fourth mixer 156 mixes the receiving signal RXI from the antenna 175 with the Q-path receiving local oscillator signal LOQRX to generate a first Q-path receiving signal. In the calibration mode, however, the fourth mixer 156 mixes the second transmission signal from the transmission circuit 130 with the Q-path receiving local oscillator signal LOQRX to generate a second Q-path receiving signal.
[0067] The fourth LPF 155 performs an LPF operation on an output signal from the fourth mixer 156. The second ADC 154 performs an ADC operation on an output signal from the fourth LPF 155 to generate a Q-path receiving digital signal QRX.
[0068] The local oscillator 120 generates the receiving local oscillator signals LOIRX and LOQRX.
[0069] As mentioned above, the transmitter circuit 130 is configured to change a bias of the mixer and control the leakage of the carrier signal. In one example, the baseband processor 110 detects carrier leakage in response to a second received digital signal from the receiver circuit 150, and generates calibration codes CODE_I and CODE_Q. The transceiver 100 then suppresses (e.g., minimizes) DC offset of the transmitter circuit 130 based on the generated calibration codes CODE_I and CODE_Q.
[0070] Still referring to FIG. 1, the transceiver 100 includes a transceiving selection switch 170 between the output terminal of the transmitter circuit 130 (or transmission amplifier 160) and the input terminal of the receiver circuit 150 (or receiving amplifier 165). The transceiving selection switch 170 is configured to selectively connect the antenna 175 with the output terminal of the transmission amplifier 160 or the input terminal of the receiving amplifier 165 in response to a transceiving selection signal TR_MOD.
[0071] The transmission amplifier 160 is between an output node N1 of the transmitter circuit 130 and a terminal (e.g., a node N2) of the transceiving selection switch 170. The transmission amplifier 160 amplifies the first transmission signal or the second transmission signal output from the transmitter circuit 130. The transmission amplifier 160 may be a power amplifier.
[0072] The receiving amplifier 165 is between a terminal (e.g., node N3) of the transceiving selection switch 170 and the input terminal of the receiver circuit 150. The receiving amplifier 165 may be a low-noise amplifier.
[0073] The loopback switch 182 is between an output node of the transmission amplifier 160 and an output node N4 of the receiving amplifier 165.
[0074] In the transceiver 100 of FIG. 1, the loopback switch 182 and the first and second LPFs 132 and 137 operate in response to the calibration mode signal CAL_MOD. In one example, when the calibration mode signal CAL_MOD is enabled, the loopback switch 182 turns on, and the first and second LPFs 132 and 137 are disabled.
[0075] In the transceiver 100 of FIG. 1, the transceiving selection switch 170, which selectively combines the output terminal of the transmitter circuit 130 and the input terminal of the receiver circuit 150 with the antenna 175, operates in response to a transceiving mode signal TR_MOD. For example, when the transceiving mode signal TR_MOD is in a logic high state, the transceiving selection switch 170 combines the output from the transceiver circuit 130 with the antenna 175. When the transceiving mode signal TR_MOD is in a logic low state, the transceiving selection switch 170 combines the input to the receiver circuit 150 with the antenna 175.

(当審訳:
[0047] 図1は,発明的概念の例示的な実施形態によるトランシーバの回路図である。
[0048] 図1を参照すると,トランシーバ100は,ベースバンドプロセッサ110と,送信回路130と,受信回路150と,アンテナ175と,ループバックスイッチ182とを含む。
[0049] ベースバンドプロセッサ110は,受信回路150からの受信デジタル信号IRXおよびQRXを復調するように構成された復調器114を含む。ベースバンドプロセッサ110は,送信デジタル信号ITXおよびQTXを生成するために送信される信号を変調するように構成された変調器112をさらに含む。ベースバンドプロセッサ110は,送信デジタル信号ITXおよびQTXを送信回路130に出力する。
[0050] また,ベースバンドプロセッサ110は,受信回路150からの受信デジタル信号に応答してキャリアリークを検出し,検出されたキャリアリークに従って校正コードCODE_I及びCODE_Qを生成するように構成される。トランシーバ100は,生成された較正コードCODE_IおよびCODE_Qに基づいて送信回路130の抑圧(例えば,DCオフセットを最小化)することができる。
[0051] まだ図1を参照すると,通常モードでは,送信回路130は,ベースバンドプロセッサ110からの送信デジタル信号ITXおよびQTXをアップコンバートして,第1の送信信号を生成する。
[0052] 較正モードでは,送信回路130は,送信デジタル信号ITXおよびQTXを使用せずに,較正コードCODE_IおよびCODE_Qに対してデジタル-アナログ変換(DAC)動作を実行し,較正信号S1_1およびS1_Qを生成する。送信回路130は,生成されたキャリブレーション信号S1_I,S1_Qに応じて,差動構造を有するミキサーのDCバイアスを変化させてキャリア信号の漏れを抑制し,発振器で生成したキャリア信号を第2の送信信号として出力するように構成される。
[0053] 図1に関してより詳細に説明すると,送信回路130は,第1のデジタル・アナログ変換器(DAC)131,第1のローパスフィルタ(LPF)132,第2のDAC134,第1のミキサ135,第3のDAC136,第2のLPF137,第4のDAC139,および第2のミキサ140を含んでいる。第1及び第2のミキサ135及び140は,ノードN1において伝送増幅器160に接続される。
[0054] 第1DAC131は,ベースバンドプロセッサ110からのIパス伝送デジタル信号ITXに対してDAC演算を行う。通常モードでは,第1LPF132は,第1DAC131の出力信号に対してLPF演算を行い,第1ローパスフィルタリングされた伝送信号を生成する。しかし,較正モードでは,較正モード信号CAL_MODに応答して第1LPF132は無効化され,第2DAC134はIパス較正コードCODE_I上でDAC演算を行い,Iパス較正信号S1_Iを生成する。
[0055] なお,図1の送信回路130を参照すると,通常モードでは,第1ミキサ135は,第1ローパスフィルタリングされた送信信号とIパス送信局部発振信号LOITXとを混合して,第1Iパス送信信号を生成している。しかし,キャリブレーションモードでは,第1ミキサー135は,Iパスキャリブレーション信号S1_Iに応答して,またはIパスキャリブレーション信号S1_Iに基づいて,差動構造を有するミキサーのDCバイアスを変化させてキャリア信号の漏洩を抑制し,キャリア信号を第2Iパス伝送信号として出力してもよい。
[0056] なお,図1の送信回路130を参照すると,第3のDAC136は,Qパス送信デジタル信号QTXに対してDAC演算を実行する。通常モードでは,第2のLPF137は,第3のDAC136の出力信号に対してLPF演算を行い,第2のローパスフィルタリングされた伝送信号を生成する。一方,校正モードでは,校正モード信号CAL_MODに応答してLPF137を無効化し,第4のDAC139がQパス校正コードCODE_Qに対してDAC演算を行って,Qパス校正信号S1_Qを発生させる。
[0057] 通常モードでは,第2ミキサ140は,第2送信信号とQパス送信局部発振信号LOQTXとを混合して,第1Qパス送信信号を生成する。一方,校正モードでは,第2ミキサ140は,Qパス校正信号S1_Qに応答して搬送波信号の漏洩を制御し,搬送波信号を第2Qパス伝送信号として出力する。
[0058] 第1及び第2のミキサ135,140の各々は,出力ノードN1を介して送信信号を出力する。
[0059] なお,図1を参照すると,送信回路130の出力ノードN1と送受信選択スイッチ170の端子(例えば,ノードN2)の間には,送信増幅器160が設けられている。送信アンプ160は,送信回路130から出力される送信信号(例えば,第1送信信号又は第2送信信号)を増幅する。
[0060] トランシーバ100は,送信回路130に対する局部発振器信号LOITXおよびLOQTXを生成するように構成された局部発振器120をさらに含む。
[0061] 送信増幅器160の出力と受信回路150の入力との間には,ループバックスイッチ182が接続されている。ループバックスイッチ182は,送信増幅器160の出力端子と受信回路150の入力端子とを選択的に接続する。例えば,キャリブレーションモードでは,ループバックスイッチ182は,送信回路130の出力端子と,受信回路150の入力端子とを電気的に接続する。その結果,キャリブレーションモードでは,送信回路130から出力される第2送信信号が受信回路150に送信される。
[0062] 上述したようにトランシーバ100はまた,受信回路150を含む。通常モードでは,受信回路150は,アンテナ175から受信した受信信号RXIをダウンコンバートし,第1の受信デジタル信号を生成する。一方,キャリブレーションモードでは,受信回路150は,ループバックスイッチ182を介して送信回路130から受信した第2の送信信号をダウンコンバートし,第2の受信ディジタル信号を生成する。
[0063] 図1に示すように,受信回路150は,第3ミキサ 153,第3LPF 152,第1ADC 151,第4ミキサ 156,第4LPF 155,および第2ADC 154を含む。第3ミキサ 153及び第4ミキサ 156は,ノードN4で受信アンプ160に接続されている。
[0064] 通常モードでは,第3ミキサ153は,受信信号RXIとIパス受信局部発振信号LOIRXとを混合して,第1Iパス受信信号を生成する。一方,キャリブレーションモードでは,第3ミキサ153は,伝送回路130から出力される第2伝送信号とIパス受信局部発振信号LOIRXとを混合し,第2Iパス受信信号を生成する。
[0065] そして,第3LPF152は,第3ミキサ153からの出力信号に対してLPF演算を行う。また,第1ADC151は,第3LPF152からの出力信号に対してADC演算を行い,Iパス受信デジタル信号IRXを生成する。
[0066] 通常モードでは,第4ミキサ156は,アンテナ175からの受信信号RXIとQパス受信局部発振信号LOQRXとを混合して,第1Qパス受信信号を生成する。一方,キャリブレーションモードでは,第4ミキサ156は,送信回路130からの第2送信信号とQパス受信局部発振器信号LOQRXとを混合し,第2Qパス受信信号を生成する。
[0067] 第4LPF155は,第4ミキサ156からの出力信号に対してLPF演算を行う。第2ADC154は,第4LPF155からの出力信号に対してADC演算を行い,Qパス受信デジタル信号QRXを生成する。
[0068] 局部発振器120は,受信局部発振器信号LOIRX及びLOQRXを生成する。
[0069] 上述したように,送信回路130は,ミキサーのバイアスを変更し,搬送波信号の漏れを制御するように構成される。一実施例では,ベースバンドプロセッサ110は,受信回路150からの第2の受信デジタル信号に応答してキャリアリークを検出し,較正コードCODE_I及びCODE_Qを生成する。そして,トランシーバ100は,生成された較正コードCODE_I及びCODE_Qに基づいて送信回路130のDCオフセットを抑制する(例えば,最小化する)。
[0070] なお図1を参照すると,トランシーバ100は,送信回路130(または送信増幅器160)の出力端子と受信回路150(または受信増幅器165)の入力端子との間に,トランシーバ選択スイッチ170を含んでいる。) 送受信選択スイッチ170は,送受信選択信号TR_MODに応答して,アンテナ175を送信アンプ160の出力端子または受信アンプ165の入力端子に選択的に接続するように構成される。
[0071] 送信アンプ160は,送信回路130の出力ノードN1と,送受信選択スイッチ170の端子(例えば,ノードN2)の間にある。送信アンプ160は,送信回路130から出力される第1送信信号又は第2送信信号を増幅する。送信増幅器160は,電力増幅器であってもよい。
[0072] 受信アンプ165は,送受信選択スイッチ170の端子(例えば,ノードN3)と受信回路150の入力端子との間に設けられる。受信増幅器165は,低雑音増幅器であってもよい。
[0073] ループバックスイッチ182は,送信増幅器160の出力ノードと受信増幅器165の出力ノードN4との間にある。
[0074] 図1のトランシーバ100では,ループバックスイッチ182と第1及び第2LPF132,137は,較正モード信号CAL_MODに応答して動作する。一例では,較正モード信号CAL_MODがイネーブルになると,ループバック・スイッチ182はオンになり,第1および第2のLPF132および137はディセーブルになる。
[0075] 図1のトランシーバ100において,送信回路130の出力端子と受信回路150の入力端子とを選択的にアンテナ175で結合するトランシーバ選択スイッチ170は,トランシーバモード信号TR_MODに応答して動作する。例えば,送受信モード信号TR_MODがロジックハイの状態のとき,送受信選択スイッチ170は,送信回路130からの出力とアンテナ175とを結合する。また,トランシーバモード信号TR_MODがロジックローの状態のとき,トランシーバ選択スイッチ170は,受信回路150への入力をアンテナ175に結合する。)

(3)引用文献4

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 表10(第44欄53行〜第45欄32行)



イ 「Table 10, above, identifies some sub-message types. This table provides examples of sub-messages. Some of these sub-messages are described in more detail elsewhere in this document. The Type 0 message is not a sub-message; it has been described extensively, above. The Type 1 Vehicle Core Data sub-message provides essentially the same fields, as a sub-message as the basic Type 0 message. Type 63 is a Null message, used as filler or pad. It contains two fields: the sub-message type and a length field.
The Type 62 is a test message; it is to be ignored. It may contain whatever data is desired for system testing; actual V2V transponders should ignore the contents past the length field.」(第45欄34〜47行)
(当審訳:
上記の表10では,いくつかのサブメッセージの種類を特定しています。この表は,サブメッセージの例を示している。これらのサブメッセージのいくつかは,この文書の他の箇所でより詳細に記述されている。タイプ 0 メッセージはサブメッセージではなく,上記で詳細に説明されている。Type 1 Vehicle Core Data サブメッセージは,基本的な Type 0 メッセージと同じフィールドを提供する。Type 63 は Null メッセージであり,フィラーやパッドとして使用される。サブメッセージのタイプと長さのフィールドの2 つのフィールドを持つ。
Type 62 はテストメッセージであり,無視される。実際の V2V トランスポンダは length フィールド以降の内容を無視する。)

(4)引用文献5

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0032】
例えば,試験サーバ装置11は,通信品質測定部225により,バックボーンネットワークB1の帯域の使用率(トラフィックの状況)を検出する。そして,試験サーバ装置11は,通信品質測定部225により,検出された帯域の使用率に試験により増加する(と予想される)使用率を加えた値が最大限度に対して所定値(例えば,70%の値など)を超える場合には,通信品質測定の試験を行わないことを判定する。これにより,バックボーンネットワークB1に流れるトラフィックの負荷が大きいときには,バックボーンネットワークB1のトラフィックを試験によりさらに増加させることが回避される。一方,試験サーバ装置11は,通信品質測定部225により,検出された帯域の使用率に試験により増加する(と予想される)使用率を加えた値が最大限度に対して所定値以下である場合には,通信品質測定の試験を行うことを判定する。」

(5)引用文献6

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献6には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0034】BER測定は,図1に示す交換機1内に具備されるBER測定装置3によって行われる。BER測定装置3内のBER試験パタン生成回路6から出力される試験パタンが,ディジタル加入者回線終端装置4を経由して端末2に送信され,端末2でのループバックにより交換機1に折り返され,ディジタル加入者回線終端装置4を経由してBER試験パタン比較装置7に送られ,BER試験パタン比較装置7が,BER試験パタン生成回路6から送出した試験パタンと端末2において折り返された試験パタンとを比較することにより,ビットエラーの有無を検出してビットエラー数を計数するものである。この測定方法の原理は,従来の方法と同様である。
【0035】上記の設定後にBER試験パタン生成回路6より図2に示すBER測定テストパタンフレームをディジタル加入者回線終端装置4の回線信号フレームのペイロードに挿入する。BER測定テストパタンフレームは,BER試験パタン同期パタンとランダムパタンから構成されており,各フレームにおいて同一テストパタンフレームである。ディジタル加入者回線終端装置4の回線信号フレームは,回線信号同期パタンと,ペイロードと,端末側においてビットエラーの有無を検出するためのCRCビットから構成される。
【0036】BER測定テストパタンフレームが挿入されたディジタル加入者回線信号フレームは,メタリック回線15を介して端末2に送られ,端末2内のドライバ/レシーバ8とディジタル回路9において所望の処理を行った後,図2に示すBER測定テストパタンフレームが抽出される。」

(6)引用文献7

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献7には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0139】有料道路4に車両が侵入する時,または離脱する時,ETC専用レーンにて路側機器と車両との間の送受信に基づいて利用が可能か否か検査が実行されるが,この時にエラーが発生すると,ETCシステムは利用できない。またETCユニットB内部の自己診断機能によりエラーが検出された場合には,同ユニットBは利用できない。
【0140】したがって,この実施例においては上述のようなエラーが検出された時,ETCエラー信号と共にエラーコード信号をディスプレイユニット45側へ出力し,このディスプレイユニット45側ではエラーコードを読取って,対応するエラーメッセージを表示するものである。なお,エラーメッセージを音声にて乗員に報知する報知手段を設けてもよいことは勿論である。」

(7)引用文献8

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献8には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 図2a


イ 「[0033] Logical Services Loopback
[0034] FIG. 2a is a block diagram illustrating a system configured to perform logical services loopback in accordance with one embodiment of the present invention. As can be seen, the system includes a conventional Ethernet switch 205, a logical services loopback module 210, and a processor 215. The system can be implemented, for example, at a switching node of a customer's site, where a wide area network (e.g., Internet) is coupled to the customer's local area network (as shown in FIG. 2a). Alternatively, the system can be implemented at any location in a metro area network. Generally stated, the system can be implemented at any station on a network. Numerous applications will be apparent in light of this disclosure.
[0035] In operation, multiple loopback addresses are provisioned (e.g., via software), thereby forming static address entries in the switch 205. In one embodiment, switch 205 is a 10/100 Mbps Ethernet switch. Frames matching these static entry addresses are identified by the switch 205, and forwarded to the logical services loopback module 210. The logical services loopback module 210 can be implemented, for example, with programmable logic (FPGA) or a purpose-built integrated circuit (ASIC). Alternatively, module 210 can be implemented using a microcontroller configured with a microprocessor, I/O ports, memory, and a number of processes for carrying out the loopback functionality as described herein. In one particular embodiment, the logical services loopback module 210 is a Spartan II FPGA configured to provide loopback functionality as described herein.
[0036] In any case, the logical services loopback module 210 is configured to use the station loopback MAC address as the source address in looped frames. In more detail, the logical services loopback module 210 receives incoming Ethernet frames provided by the switch 205 (e.g., based on destination loopback MAC addresses included in incoming Ethernet frames to be looped back), extracts the source address from each frame, and generates a new frame by inserting the source address into the destination address location. The station loopback MAC address is then inserted in the source address location of the new frame. The data portion of the new frame remains unchanged (as compared to the original incoming frame), and a frame check sequence (FCS) is calculated and appended to the end of the new frame. The new frame is then provided back to the switch 205 for loopback. Note that logical services loopback as described herein will work at full line rate and with any size frame.」
(当審訳:
[0033] 論理サービスループバック
[0034] 図2aは,本発明の一実施形態に従って論理サービスループバックを実行するように構成されたシステムを示すブロック図である。見て分かるように,このシステムは,従来のイーサネットスイッチ205,論理サービスループバックモジュール210,およびプロセッサ215を含む。システムは,例えば,広域ネットワーク(例えば,インターネット)が顧客のローカルエリアネットワークに結合されている(図2aに示すように)顧客のサイトのスイッチングノードで実施することができる。あるいは,本システムは,メトロエリア・ネットワーク内の任意の場所で実施することができる。一般的に言えば,本システムは,ネットワーク上の任意のステーションで実装することができる。多数のアプリケーションが,本開示に照らして明らかになるであろう。
[0035] 動作において,複数のループバックアドレスが(例えば,ソフトウェアを介して)プロビジョニングされ,それによってスイッチ205に静的アドレスエントリが形成される。一実施形態では,スイッチ205は,10/100Mbpsイーサネットスイッチである。これらの静的エントリアドレスに一致するフレームは,スイッチ205によって識別され,論理サービスループバックモジュール210に転送される。論理サービスループバックモジュール210は,例えば,プログラマブルロジック(FPGA)または専用集積回路(ASIC)で実装することができる。あるいは,モジュール210は,マイクロプロセッサ,I/Oポート,メモリ,および本明細書に記載されるループバック機能を遂行するための多数のプロセスを用いて構成されたマイクロコントローラを用いて実装することができる。ある特定の実施形態では,論理サービスループバックモジュール210は,本明細書に記載されるようなループバック機能を提供するように構成されたSpartan II FPGAである。
[0036] いずれにしても,論理サービスループバックモジュール210は,ループされたフレームにおけるソースアドレスとして局ループバックMACアドレスを使用するように構成される。より詳細には,論理サービスループバックモジュール210は,スイッチ205によって提供される着信イーサネットフレームを受信し(例えば,ループバックされる着信イーサネットフレームに含まれる宛先ループバックMACアドレスに基づいて),各フレームからソースアドレスを抽出し,ソースアドレスを宛先アドレス位置に挿入して,新しいフレームを生成する。その際,局のループバックMACアドレスは,新フレームの送信元アドレス位置に挿入される。新しいフレームのデータ部分は(元の受信フレームと比較して)変更されず,フレームチェックシーケンス(FCS)が計算されて新しいフレームの末尾に付加される。その後,新しいフレームは,ループバックのためにスイッチ205に提供される。本明細書で説明する論理サービスループバックは,フルラインレートで,かつ任意のサイズのフレームで動作することに留意されたい。)

第6 対比・判断

1 本願発明1と引用発明について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明は,「V2X通信に使用される車両11内の複数の無線周波数トランシーバ25をテストするためのシステム10であ」るとされている。

ここで,引用発明の「無線周波数トランシーバ25」は,「V2X通信に使用される」通信モジュールであるから,本願発明1の「V2X通信モジュール」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「V2X通信モジュール(20)を備えるV2X通信システム(10)」という点で共通しているといえる。

イ 上記第5の1(1)イの図1より,第1のトランシーバ25aは,アンテナ40aに接続され,第2のトランシーバ25bはアンテナ40bに接続されていると認められる。

上記アで述べたように,引用発明の「第1のトランシーバ25a」および「第2のトランシーバ25b」は,いずれも,本願発明1の「V2X通信モジュール」に相当する。

また,引用発明の「アンテナ40a」および「アンテナ40b」は,それぞれ,本願発明1の「第1アンテナ(30)」および「第2アンテナ(35)」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記V2X通信システム(10)は,前記V2X通信モジュール(20)と接続されている,第1アンテナ(30)及び第2アンテナ(35)を有し」ている点で共通しているといえる。

ウ 引用発明は,「トランシーバ25a,25bのトランシーバテストプロセス100において,例えば,制御ユニット15は,車両11が始動しているというステータス情報を受信すると,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされていてもよく,別の例として,制御ユニット15は,車両11が走行している間,定期的に,例えば30分ごとに,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされてもよ」いとされている。

ここで,引用発明の「制御ユニット15は,車両11が走行している間,定期的に,例えば30分ごとに,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされて」いることは,本願発明1の「前記V2X通信モジュール(20)は,連続的に,」「セルフテストを実行するように構成されてい」ることに相当する。

また,引用発明の「制御ユニット15は,車両11が始動しているというステータス情報を受信すると,プロセス100のトランシーバテストを開始するようにプログラムされてい」ることは,本願発明1の「前記V2X通信モジュール(20)は,」「定義された時点にセルフテストを実行するように構成されてい」ることに相当する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記V2X通信モジュール(20)は,連続的に,」「又は定義された時点にセルフテストを実行するように構成されてい」る点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,選択的構成として,「V2X通信モジュール(20)は,」「要求により」「セルフテストを実行するように構成されてい」るのに対し,引用発明では,V2X通信モジュールが要求によりセルフテストを実行するように構成されていない点で一応相違している。

エ 引用発明は,「制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aに対して,所定の強度でテスト信号を送信するように指示し,第2のトランシーバ25bに対して,テスト信号から派生した戻り信号を受信するよう構成しており,制御ユニット15は,戻り信号の特性に基づいて,第1のトランシーバ25aから第2のトランシーバ25bへの伝送路が動作可能であるか否かを判断しており,」「送信されたテスト信号は,デジタルテストコードを含んでもよく,戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を確認することは,テスト送信の成功の指標となり得るものであ」るとされている。

ここで,引用発明の「第2のトランシーバ25bに対して,テスト信号から派生した戻り信号を受信するよう構成して」いることは,本願発明1の「テストメッセージを受信する」ことに相当する。

また,引用発明の「送信されたテスト信号は,デジタルテストコードを含んでもよく,戻り信号におけるデジタルテストコードの存在を確認することは,テスト送信の成功の指標となり得る」ことは,本願発明1の「障害を検出するために前記テストメッセージを評価する」ことに相当する。

さらに,引用発明の「制御ユニット15は,第1のトランシーバ25aに対して,所定の強度でテスト信号を送信するように指示」することは,本願発明1の「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信」「するように構成されていて」ことに相当する。

そして,引用発明の「第2のトランシーバ25bに対して,テスト信号から派生した戻り信号を受信するよう構成して」いることは,本願発明1の「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第2アンテナ(35)を用いて受信するようにも構成されていること」に相当する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「各セルフテストは少なくとも
テストメッセージを受信するステップと,障害を検出するために前記テストメッセージを評価するステップとを備え,」「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信」「するように構成されていて,」「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第2アンテナ(35)を用いて受信するようにも構成されている」点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,「前記第1アンテナ(30)は,前記第1アンテナ(30)に割り当てられるフィードバック経路(40)を有し,」「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていて,
前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットと前記第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)との間に接続され」ているのに対して,
引用発明では,「フィードバック経路」を備えておらず,テストメッセージの送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていない点で相違している。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「 V2X通信モジュール(20)を備えるV2X通信システム(10)において,
前記V2X通信システム(10)は,前記V2X通信モジュール(20)と接続されている,第1アンテナ(30)及び第2アンテナ(35)を有し,
前記V2X通信モジュール(20)は,連続的に,又は定義された時点にセルフテストを実行するように構成されていて,
各セルフテストは少なくとも
テストメッセージを受信するステップと,
障害を検出するために前記テストメッセージを評価するステップとを備え,
前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信するように構成されていて,
前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第2アンテナ(35)を用いて受信するように構成されている
ことを特徴とする,V2X通信システム(10)。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明1では,選択的構成として,「V2X通信モジュール(20)は,」「要求により」「セルフテストを実行するように構成されてい」るのに対し,引用発明では,V2X通信モジュールが要求によりセルフテストを実行するように構成されていない点。

(イ) 相違点2

本願発明1では,「前記第1アンテナ(30)は,前記第1アンテナ(30)に割り当てられるフィードバック経路(40)を有し,」「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていて,前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットと前記第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)との間に接続され」ているのに対して,引用発明では,「フィードバック経路」を備えておらず,テストメッセージの送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていない点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,相違点2について検討する。

本願発明1の相違点2に係る「前記第1アンテナ(30)は,前記第1アンテナ(30)に割り当てられるフィードバック経路(40)を有し,」「前記V2X通信モジュール(20)は,前記テストメッセージを,前記第1アンテナ(30)を用いて送信し,送信後,前記フィードバック経路(40)を介して再び受信するように構成されていて,
前記フィードバック経路(40)は,前記V2X通信モジュール(20)のフロントエンドユニットと前記第1アンテナ(30)又は前記第1アンテナ(30)のアンテナベース(32)との間に接続され」ている構成について,引用文献1ないし8には,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

特に,上記第5の2(1)イに示したように,引用文献2の段落0035には,「マルチトランシーバシステムアーキテクチャは,第2のトランシーバモジュールのTx信号処理チェーンにおけるデジタルプリディストーションシステムに統合された信号測定及び調整ブロックを用いて振幅,タイミング及び位相オフセットの測定を容易にする組み込みフィードバック機構を備える」との記載があるものの,関連する図3(上記第5の2(1)ウ)および段落0091(上記第5の2(1)エ)の「サーキュレータCir2の第3のポート(ロードポート)に接続された第1のスイッチング素子SW6は,この受信RF信号部分を第2のトランシーバモジュールTRXM2の少なくとも一つのアップリンク信号処理チェーンULCH2を介して前述の共通ベースバンド処理ユニットBPUにスイッチ可能にフィードバックするために機能する」という記載に鑑みれば,「フィードバック機構」として機能している「第1のスイッチング素子SW6」は,「第1のトランシーバモジュールTRXM1」からアンテナAnt1を介して送信し,アンテナAnt2で受信した信号を「共通ベースバンド処理ユニットBPUにスイッチ可能にフィードバックするために機能」しているものであり,第2のトランシーバモジュールTRXM2からアンテナAnt2で送信した信号を第2のトランシーバモジュールTRXM2自身にフィードバックするものではないから,テストメッセージを,アンテナを用いて送信し,送信後,フィードバック経路を介して再び受信するように構成されたものとはいえない。

また,上記第5の2(2)イに示したように,引用文献3の段落0061には,「送信増幅器160の出力と受信回路150の入力との間には,ループバックスイッチ182が接続されている。ループバックスイッチ182は,送信増幅器160の出力端子と受信回路150の入力端子とを選択的に接続する。例えば,キャリブレーションモードでは,ループバックスイッチ182は,送信回路130の出力端子と,受信回路150の入力端子とを電気的に接続する。その結果,キャリブレーションモードでは,送信回路130から出力される第2送信信号が受信回路150に送信される。」との記載があるものの,「ループバックスイッチ182」は,「キャリブレーションモード」で使用するものであって,テストメッセージを,アンテナを用いて送信し,送信後,フィードバック経路を介して再び受信するように構成されたものではない。

さらに,上記第5の2(6)アに示したように,引用文献7の段落0140には,「エラーが検出された時,ETCエラー信号と共にエラーコード信号をディスプレイユニット45側へ出力し,このディスプレイユニット45側ではエラーコードを読取って,対応するエラーメッセージを表示」したり,「エラーメッセージを音声にて乗員に報知」したりすることは記載されているものの,テストメッセージを,アンテナを用いて送信し,送信後,フィードバック経路を介して再び受信するように構成されたものではない。

そして,上記第5の2(7)イに示したように,引用文献8の段落0036には,「論理サービスループバックモジュール210は,スイッチ205によって提供される着信イーサネットフレームを受信し(例えば,ループバックされる着信イーサネットフレームに含まれる宛先ループバックMACアドレスに基づいて),各フレームからソースアドレスを抽出し,ソースアドレスを宛先アドレス位置に挿入して,新しいフレームを生成する。」「新しいフレームは,ループバックのためにスイッチ205に提供される。」との記載があるものの,テストメッセージを,アンテナを用いて送信し,送信後,フィードバック経路を介して再び受信するように構成されたものではない。

したがって,引用発明および引用文献2ないし8の記載に基づいて,当業者は本願発明1の相違点2に係る構成を容易に想到することができない。

エ 小括

したがって,上記相違点1について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ないし8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明16について

本願発明2ないし本願発明16は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ないし8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について

進歩性について

上記第6で述べたように,本願発明1ないし本願発明16は,いずれも,本件補正後の本願発明1ないし本願発明16は,原査定において引用された引用文献1ないし8に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

明確性について

(1)請求項5について

原査定において不明瞭であるとされた本件補正前の請求項5は,審判請求時の補正により削除されたから,本件補正前の請求項5に係る原査定の理由(明確性)は解消した。

(2)請求項16について

原査定において不明瞭であるとされた本件補正前の請求項16は,審判請求時の補正により請求項1および5が削除されたため,繰り上がって請求項14となっている。

原査定で,不明瞭であるとされた「前記V2X通信モジュール(20)内部のみで」との記載を削除して,「前記複数の階層を介して」との記載に変更し,複数の階層が,V2X通信モジュール(20)において実現された複数の階層であることが明確となったので,本件補正前の請求項16(審判請求時の補正後の請求項14)に係る原査定の理由(明確性)は解消した。

3 小括

したがって,原査定の理由(進歩性および明確性)は,いずれも維持することはできない。

第8 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-07-26 
出願番号 P2019-554551
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 野崎 大進
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 V2X通信システム  
代理人 中村 真介  
代理人 鈴木 友子  
代理人 江崎 光史  
代理人 鍛冶澤 實  
代理人 石田 大成  

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