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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A44C
管理番号 1387295
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-11 
確定日 2022-08-09 
事件の表示 特願2019−169042「美的仕上げが完全なプラスチック製腕輪」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日出願公開、特開2020− 96787、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和元年9月18日(パリ条約に基づく優先権主張2018年10月3日、欧州特許庁)の出願であって、令和2年11月17日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年2月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、令和3年7月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和3年11月11日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
1.本願の請求項1〜6に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献3〜6に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願の請求項1〜6に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び引用文献3〜6に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・引用文献一覧
1.特開昭52−119358号公報
2.国際公開第2017/118499号
3.特開昭60−4463号公報
4.実願平1−138967号(実開平3−79257号)のマイクロフィルム
5.米国特許第5507685号明細書
6.中国実用新案第207824654号明細書

第3 本願発明
本願の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明6」という。)は、令和3年11月11日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
腕時計(6)又は装飾品のための合成材料によって作られ粗さRpが3μm以下の少なくとも1つのストランド(5a)を有する腕輪(5)を製造する方法であって、
成型又は押し出しによって、前記少なくとも1つのストランド(5a)を形成するように意図された硬度が55〜90ショアの合成材料製のバンド(1)を作る成型又は押し出しステップを有し、
前記少なくとも1つのストランド(5a)を形成するように前記バンド(1)を切断するステップを有し、
その後に前記バンド(1)に対して化学機械的な研磨をする化学機械的研磨ステップを有し、
前記化学機械的研磨ステップは、ディスク研磨装置のタンク内にて動いている摩耗性の混合物内にストランドを浸し、
前記混合物は、さらに、石鹸と摩耗性の付加的な粉末またはペーストの化学的添加剤を含有し、
前記ディスク研磨装置において、回転速度が100〜400回転/分であり、処理時間が1〜5時間である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記化学機械的研磨ステップは、ディスク研磨装置において、回転速度が200〜300回転/分であり、処理時間が2〜4時間であるように行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学機械的研磨ステップは、セラミックス、金属、有機物質又は高分子のチップを含む摩耗性の混合物内にて行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記成型又は押し出しステップによって作られたバンド(1)には、異なる色及び/又は性質を有する材料によって作られた一又は複数のレリーフ領域があることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成型又は押し出しステップによって作られたバンド(1)は、前記少なくとも1つのストランド(5a)の幅に実質的に対応する幅を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成型又は押し出しステップによって作られたバンド(1)は、前記少なくとも1つのストランド(5a)の長さに実質的に対応する幅を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。」

第4 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1について
ア.引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
(ア)「この発明は、熱可塑性合成樹脂より一体成形される時計バンドに関する。・・・とくに近年、時計ケースと、バンドを時計ケースに結合する軸ピンとの間隙は、可及的に小さくする(0.7〜0.8mm程度)傾向にあるため、バンドの軸孔の肉厚を薄く、かつ局部的に大きな応力に耐える強度を有するように形成することが望まれている。」(1頁左下欄9〜同頁右下欄2行 空白行を含まず。以下同様。)
(イ)「この発明は、上記時計バンドの問題を解決するためになされたもので、・・・熱可塑性合成樹脂により成形された時計バンドを提供することが可能となつた。」(2頁左上欄2行〜同欄7行)
(ウ)「第1図はバンドの製造工程を示し、A工程において、発泡剤入り熱可塑性合成樹脂、例えば前述した軟質ポリ塩化ビニル(およびその共重合体)、軟質ポリオレフイン系重合体、ポリウレタンエラストマーなどの樹脂を主体とする軟質プラスチツクスに前記アセテート、アクリル、ビスコースリンター、ナイロン、レイヨンなどの天然または合成繊維の短繊維を混入した材料1と芯棒2とを押出成型機3に供給し、芯棒2の回りに素材1をその発泡剤の一部を発泡させてシート状の半製品4を得る。」(2頁右上欄9行〜同頁左下欄1行)
(エ)「B工程は切断工程を示すもので、A工程で得られた半成品4は、この工程でその長さ方向に直角に切断され、所定形状に仕上げられる。」(2頁左下欄7〜10行)
(オ)「C工程は型付工程を示すもので、この工程においてはシリコンゴム型5が用いられる。シリコンゴム型5内に上記B工程で得られた切断製品4’を挿入し、高周波誘電加熱装置で加圧加熱し前記熱可塑性合成樹脂中の発泡剤を発泡させることによりシリコンゴム型5の内面に切断製品4’側の外表面を圧接させて型付けがなされる。型付工程が終了して後、芯棒2が引き抜かれ軸孔6が形成されたバンド7を得る。」(2頁左下欄11行〜同頁右下欄1行)
(カ)「バンド7は、軸孔6に尾錠を取り付けるなど通常の加工を施して製品化される。これらの工程により成形されるバンド7は、加圧及び発泡剤の膨張により表裏面が型5内面に圧着されるので、表面形状と感触が天然皮革等と酷似し、高級時計バンドの模様、風合を付与される。」(2頁右下欄1〜7行)

イ.引用文献1から理解できる技術的事項
(ア)上記ア(カ)において、製品化されるのは、上記ア(イ)に示す時計バンドであると明らかであるから、引用文献1には、時計バンドを製造する方法が記載されている。
(イ)上記ア(ウ)の記載より、押出成型機3に材料を供給し、半製品4を得ているのであるから、半製品4は、押出による押出成型工程により作られているといえる。また、この押出成型工程はバンド7を得るための工程であるといえる。
(ウ)上記ア(エ)及びア(オ)の記載より、B工程で切断された半製品4からC工程を経てバンド7が得られ、さらに上記ア(カ)の記載より、このバンド7に尾錠を取り付けるなどの加工を施して、時計バンドとなり(上記(ア)参照)、製品化されることがわかる。

ウ.引用発明1
上記ア(ア)〜(カ)及びイ(ア)〜(ウ)並びに図面の記載を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

・引用発明1
「時計ケースに結合する発泡剤入り熱可塑性合成樹脂と短繊維によって作られるバンド7を有する時計バンドを製造する方法であって、
押出によって、前記バンド7を得るように発泡剤入り熱可塑性合成樹脂と短繊維製の半製品4を得る押出成型工程を有し、
前記バンド7の所定形状に仕上げるように前記半製品4を切断する工程を有する
方法。」

(2)引用文献2について
ア.引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、アクサン記号等は省略した。和訳は、引用文献2のパテントファミリーである特表2019−501803号公報(以下「Family」という)の記載等を参考にして当審が作成した。
(ア)「[0001] La presente invention se rapporte au domaine de l'horlogerie et de la bijouterie. Plus particulierement, elle se rapporte a un procede d'extrusion ou de co-extrusion pour realiser des bracelets ou des bijoux fantaisies et aux bracelets ou bijoux fantaisies obtenus par ce procede.」
(本発明は、腕時計製造および宝石の分野に関する。より具体的には、リストバンドまたは模造宝石類を製造するための押し出しまたは共押し出し方法、および本方法によって得られるリストバンドまたは模造宝石類に関する。(Familyの段落[0001]を参照))

(イ)「[0011] La figure 5 represente une vue schematique de deux extrudats issus de la filiere. Selon l'invention, le bracelet est extrude dans le sens transversal du bracelet. La figure 6 represente une vue en perspective de ces memes extrudats avec a une ou a chaque extremite laterale une structure tubulaire creuse.」
(図5は、ダイプレートから出現する2つの押し出し成形品の概略図である。本発明によれば、リストバンドはリストバンドの横断方向に押し出される。図6は、図5と同一の押し出し成形品の斜視図であり、中空の管状構造を1つのまたは各々の横側端部に備える。(Familyの段落[0010]を参照))

(ウ)「[0012] La figure 7 represente une vue schematique des extrudeuses en amont de la filiere de co-extrusion. Les figures 8 et 9 presentent une vue du dessus des bracelets ainsi obtenus avec des rayures transversales et longitudinales respectivement.」
(図7は、共押し出しダイプレート上流の押し出し機の概略図である。図8及び9は、前述の方法で得られた、横断方向又は長手方向に縞模様を有するリストバンドの上面図を示す。(Familyの段落[0010]を参照))

(エ)「[0022] La presente invention se rapporte a un procede de fabrication de bracelets pour montres ou de bijoux fantaisies par extrusion de matiere plastique.」
(本発明は、プラスチック素材を押し出すことによって、腕時計または模造宝石類のリストバンドを製造する方法に関する。(Familyの段落[0012]を参照))

(オ)「[0023] Le procede peut consister a fabriquer un extrudat ayant une largeur correspondant a la largeur du bracelet ou a fabriquer un extrudat ayant une largeur correspondant a la longueur d'un brin ou des deux brins du bracelet.」
(本方法は、リストバンドの幅に対応する幅を有する押し出し成形品の製造からなっていてもよく、リストバンドの1つのストランドまたは2つのストランドの長さに対応する幅を有する押し出し成形品の製造からなっていてもよい。(Familyの段落[0013]を参照))

(カ)「[0026] Pour faciliter l'assemblage ulterieur du bracelet au boitier de montre, il est avantageux de fabriquer un extrudat 6 de largeur correspondant a la longueur d'un brin avec a une ou a chaque extremite laterale de l'extrudat une structure tubulaire creuse en saillie 7 comme represente aux figures 5 et 6. Les structures tubulaires creuses forment des trous debouchants 9 destines a recevoir respectivement une barrette permettant l'accroche a une boite de montre avec des cornes 14 comme montre a la figure 15 et a une boucle 15 comme montre a la figure 16. Il est egalement envisageable de realiser un extrudat 6 possedant a une seule extremite laterale une structure tubulaire creuse en saillie 7. Dans ce cas, cette derniere forme un trou debouchant destine a recevoir la barrette permettant l'accroche a la boite de montre avec des cornes 14 (figure 15). Il est en outre envisageable de realiser les deux brins du bracelet partant d'une seule bande avec une structure tubulaire a une extremite laterale et deux structures tubulaires situees a proximite du centre de la bande et d'effectuer ulterieurement les decoupes necessaires pour obtenir les deux brins.」
(腕時計ケースを有するリストバンドを後で組み立てることを容易にするために、図5および6に示すように、押し出し成形品6を、押し出し成形品の1つのまたは各々の横側端部において、中空の管状の突出構造7を有する1つのストランドの長さに対応する幅で製造することは有利である。中空の管状構造は、出現する穴9を形成する。穴9は、それぞれバーを受容するように設計される。バーによって、中空の管状構造は図15に示すように腕時計ケースに尖点14で取り付けられ、図16に示すようにバックル15に取り付けられる。中空の管状の突出構造7を1つの横側端部のみに有する押し出し成形品6を製造することも同様に考察可能である。本事例では、管状の突出構造7はバーを受容する出現穴を形成するように設計され、腕時計ケースに尖点14で取り付けることが可能になる(図15)。さらに、リストバンドの2つのストランドを単一のバンドから次のように製造することも考察可能である。すなわち、1つの横側端部に管状構造を備え、バンドの中心近くに配置される2つの管状構造を備え、その後必要な切断を行い、2つのストランドを得ることも考察可能である。(Familyの段落[0016]を参照))

(キ)「[0033] De preference, la matiere choisie a une durete shore A comprise entre 55 et 75, des zones de durete differente pouvant etre combinees afin d'ameliorer le confort et l'ergonomie du bracelet comme deja mentionne.」
(好ましくは、すでに述べたように、選択した素材は55から75の間のショアA硬さを有する。異なる硬さの区域を組み合わせて、リストバンドの快適さおよびエルゴノミクスを改善することが可能である。(Familyの段落[0023]を参照))

(ク)「REVENDICATIONS
1. Procede de fabrication d'un bracelet(4) de montre(3) ou de bijou comportant les etapes de:
- mise a disposition d'un premier materiau synthetique,
- mise a disposition d'une ligne d'extrusion(1) avec une filiere(2) pour fabriquer un extrudat(6) a partir du premier materiau,
caracterise en ce qu'il comporte au moins une des etapes suivantes:
- mise a disposition d'un ou plusieurs materiaux additionnels se distinguant du premier materiau par leurs proprietes
- mise a disposition d'une filiere (2) ayant un profil particulier selectionne parmi un profil circulaire, un profil ovale, un profil bombe et un profil avec des zones en saillie (5),
- et dans lequel ledit un ou plusieurs des materiaux additionnels forme un renfort integre lors de l'extrusion au travers de la filiere (2) et dans lequel le renfort (8) est integre au niveau d'une ou des deux extremites laterales de la filiere (2) lorsque l'extrudat (6) a une largeur correspondant a la longueur d'un ou deux brins du bracelet (4), ledit extrudat (6) ayant a une ou a chacune de ses extremites laterales une structure tubulaire creuse.」
([請求項1]腕時計(3)又は宝石用のリストバンド(4)の製造方法であって、
−第1の合成素材を提供するステップと、
−前記第1の素材から押し出し成形物(6)を作成するためのダイプレート(2)を有する押し出しライン(1)を提供するステップと、
を含む製造方法であって、前記製造方法は、
−前記第1の素材とは特性が異なる1又は複数の追加素材を提供するステップと、
−円形輪郭、楕円形輪郭、湾曲輪郭、及び突出領域を備えた輪郭から選択された特定の輪郭(5)を有するダイプレート(2)を提供するステップと、
−前記1又は複数の追加素材は、ダイプレート(2)を介した押し出し中に一体化される補強材であり、前記補強材(8)は、押し出し時(6)にダイプレート(2)の一方又は両方の側端に一体化され、前記押出物(6)は、リストバンド(4)の1つ又は2つのストランドの長さに対応する幅を有し、その側端の一方又はそれぞれに中空の管状構造を有する
ことを特徴とする製造方法。(Familyの請求項1を参照))

イ.引用文献2から理解できる技術的事項
(ア)上記ア(ア)〜ア(カ)並びに図5、6、8、9の記載、特に、ア(エ)の「本発明は、プラスチック素材を押し出すことによって、腕時計または模造宝石類のリストバンドを製造する方法に関する。」及びア(カ)の「リストバンドの2つのストランドを単一のバンドから次のように製造することも考察可能である。すなわち、1つの横側端部に管状構造を備え、バンドの中心近くに配置される2つの管状構造を備え、その後必要な切断を行い、2つのストランドを得ることも考察可能である。」という記載から、「腕時計のための、プラスチック素材によって作られ少なくとも1つのストランドを有するリストバンド(4)を製造する方法」が理解できる。

(イ)上記ア(ア)〜ア(キ)、ア(ク)並びに図5、6、8、9の記載、特に、ア(エ)の「本発明は、プラスチック素材を押し出すことによって、腕時計または模造宝石類のリストバンドを製造する方法に関する。」、ア(カ)の「リストバンドの2つのストランドを単一のバンドから次のように製造することも考察可能である。すなわち、1つの横側端部に管状構造を備え、バンドの中心近くに配置される2つの管状構造を備え、その後必要な切断を行い、2つのストランドを得ることも考察可能である。」、ア(キ)の「素材は55から75の間のショアA硬さを有する。」及び(ク)の「押出物(6)」という記載から、「押し出しによって、前記少なくとも1つのストランドを得るように意図された、硬度が55〜75のショアA硬さを有するプラスチック素材の押出物(6)を作る押し出しステップを有する」ことが理解できる。

(ウ)上記ア(ア)〜ア(カ)、ア(ク)並びに図5、6、8、9の記載、特に、ア(カ)の「リストバンドの2つのストランドを単一のバンドから次のように製造することも考察可能である。すなわち、1つの横側端部に管状構造を備え、バンドの中心近くに配置される2つの管状構造を備え、その後必要な切断を行い、2つのストランドを得ることも考察可能である。」及びア(ク)の「前記押出物(6)は、リストバンド(4)の1つ又は2つのストランドの長さに対応する幅を有し」という記載から、「少なくとも1つのストランドを形成するように押出物(6)を切断するステップを有する」ことが理解できる。

ウ.引用発明2
上記ア(ア)〜(ク)及びイ(ア)〜(ウ)並びに図面の記載を総合すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

・引用発明2
「腕時計のための、プラスチック素材によって作られ少なくとも1つのストランドを有するリストバンド(4)を製造する方法であって、
押し出しによって、前記少なくとも1つのストランドを得るように意図された、硬度が55〜75のショアA硬さを有するプラスチック素材の押出物(6)を作る押し出しステップを有し、
前記少なくとも1つのストランドを形成するように前記押出物(6)を切断するステップを有する
方法。」

(3)引用文献3について
ア.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「ステアリングホイールを回転するために運転者の手と接触する機会の多い表面を粗面化された凹凸状表面をもつ樹脂部とするのが好ましい。樹脂部の粗面化された表面の凹凸は、顕微鏡観察による凹部の底と凸部の頂上までの高さが平均で0.01〜1.0mmの表面粗さの範囲が好ましい。この表面の凹凸は表面に研磨粒を衝突させたりして、その樹脂表面部を削り取ることにより形成できる。また、サンド、グリット等の研磨材を樹脂表面に吹き付けてもよいし、バレル研磨等の方法で研磨材とステアリングホイールを一体的にバレル中で回転させて樹脂部表面を破壊し粗面化して、凹凸を形成してもよい。」(2頁右上欄8行〜同頁左下欄1行)

(4)引用文献4について
ア.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「各種の産業分野で使用される金属製品、プラスチック製品、セラミックス製品等は、表面研磨(バリ取り、スケール落とし、光沢研磨等)のためにバレル研磨機が使用されている。」(明細書1頁最下行〜2頁3行)
(イ)「研磨槽1内に、製品を、研磨材や薬品添加物等とともに投入し、振動発生機4で研磨槽1を高振動で振動させれば、製品や研磨材は研磨空間内を垂直方向に回転をしつつ研磨槽1内を周方向に旋回を続け、研磨作業を行う。」(明細書2頁13〜17行)

(5)引用文献5について
ア.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。和訳は、当審が作成した。
(ア)「Methods for automatically finishing the surface of workpieces employ a tub into which workpieces and finishing media are loaded. The tub is moved to impart motion to its contents, and the resulting contacts between the media and workpieces remove portions of the surfaces of the workpieces. Automatic finishing methods include rotary barrel finishing, vibratory barrel finishing, centrifugal barrel finishing and centrifugal disk finishing.」(明細書1欄23〜30行)
(加工対象物の表面を仕上げ加工する方法は、加工対象物および仕上げ媒体が搭載されている槽を使用する。槽は、その内容物に運動を与えるために動かされ、媒体と加工対象物との間の接触が、加工対象物の表面部分を除去する。自動仕上げ方法は、回転バレル研磨、振動バレル研磨、遠心バレル研磨、遠心ディスク研磨が挙げられる。)

(イ)「The present invention resides in a process for finishing the surfaces of objects or workpieces made of plastic, ceramic and/or metallic material. Surface roughness is measured normal to the nominal surface of a workpiece. A surface roughness of less than 1 microinch is produced using the present invention.」(明細書6欄37〜42行)
(本発明は、プラスチック、セラミック及び/又は金属材料製の物品即ち加工対象物の表面を仕上げるための方法である。表面粗さは、加工対象物の表面に垂直に測定される。1マイクロインチ未満の表面粗さが、本発明を用いて製作される。)

(ウ)「As described below, a multiple step operation using a centrifugal barrel finisher, a vibratory finisher, conventional finishing media and abrasive coated compressed felt chunks is possible. An important advantage of the present invention is production of a finely polished surface with minimal workpiece material removal. The multi-step nature of the present invention greatly reduces the overall workpiece finishing time. Since the use of multiple steps avoids the need to rely on abrasive breakdown, consistent and simple control of a finishing process is possible.」(明細書6欄43〜53行)
(以下に説明するように、研磨材によって被覆された圧縮フェルト塊と、従来型の仕上げ媒体を用いた、遠心バレル仕上げ及び振動仕上げによる複数ステップの工程が行われる。本発明の重要な利点は、精密に研磨された表面が、最小の加工物材料除去によって製作されることである。本発明の多工程の特質は、加工対象物の全体的な加工時間を著しく短縮することである。多工程を使用することにより、研削材の破壊に依存する必要性を回避できるとともに、仕上げ工程の一貫性及び簡単な制御が可能になる。)

(6)引用文献6について
ア.引用文献6の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。和訳は、当審が作成した。
(ア)「


(振動ミルは自転車、アルミダイカスト、亜鉛ダイカスト、家具金属一般、服金属一般、鞄金具、メガネ用アクセサリ、時計部品、錠、電子の部品、各種宝飾品、宝石および粉末冶金、樹脂などに、ステンレス、鉄、銅、亜鉛、アルミ、マグネシウム合金などの材質にプレス、圧力鋳造、鋳造、鍛造を経ることに対して、線材、セラミック、玉、珊瑚、合成樹脂、プラスチック、セラミックなどの材質物品の表面研磨、面取、除去バリ、錆落とし、粗ラップに対し、精密に研磨して、光沢が輝いている。)

第5.対比・判断
(1)引用文献1を主引例とする原査定の理由について
ア.本願発明1と引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「発泡剤入り熱可塑性合成樹脂と短繊維」は、本願発明1の「合成材料」に相当するから、引用発明1の「時計ケースに結合する発泡剤入り熱可塑性合成樹脂と短繊維によって作られる」ことは、本願発明1の「腕時計(6)又は装飾品のための合成材料によって作られ」ることに相当する。また、引用発明1の「バンド7」は、本願発明1の「少なくとも1つのストランド(5a)」に相当し、同様に、「時計バンド」は「腕輪(5)」に相当する。
引用発明1の「押出」は、本願発明1の「成型又は押し出し」に相当し、以下同様に、「得るように」は「形成するように意図された」に、「半製品4」は「バンド(1)」に、「得る」ことは「作る」ことに、「押出成型工程」は「成型又は押し出しステップ」に、それぞれ相当する。
引用発明1の「所定形状に仕上げる」ことは、本願発明1の「形成する」ことに相当し、同様に、「切断する工程」は「切断するステップ」に相当する。

イ.本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点
前記アより、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
・一致点
「腕時計又は装飾品のための合成材料によって作られ少なくとも1つのストランドを有する腕輪を製造する方法であって、
成型又は押し出しによって、前記少なくとも1つのストランドを形成するように意図された合成材料製のバンドを作る成型又は押し出しステップを有し、
前記少なくとも1つのストランドを形成するように前記バンドを切断するステップを有する
方法。」

・相違点1
本願発明1は、ストランドの粗さRpが3μm以下であるのに対し、引用発明1ではバンド7の粗さRpが特定されていない点。

・相違点2
本願発明1は、合成材料製のバンド(1)の硬度が55〜90ショアであるのに対し、引用発明1では、発泡剤入り熱可塑性合成樹脂と短繊維製の半製品4の硬度が特定されていない点。

・相違点3
本願発明1は、切断するステップの後に
「その後に前記バンド(1)に対して化学機械的な研磨をする化学機械的研磨ステップを有し、
前記化学機械的研磨ステップは、ディスク研磨装置のタンク内にて動いている摩耗性の混合物内にストランドを浸し、
前記混合物は、さらに、石鹸と摩耗性の付加的な粉末またはペーストの化学的添加剤を含有し、
前記ディスク研磨装置において、回転速度が100〜400回転/分であり、処理時間が1〜5時間である」
という「化学機械的研磨ステップ」を有するのに対し、
引用発明1は、「化学機械的研磨ステップ」を有していない点。

ウ.相違点についての判断
(ア)事案に鑑み、まず上記相違点3について検討する。
上記第4(3)〜(6)のとおり、引用文献3〜6に記載されるように、様々な技術分野において、その技術の目的などに応じて化学機械的研磨を施すこと自体は、本願の優先日前において知られていたといえる。
しかし、「腕時計又は装飾品のための」「合成材料」製のバンドを「成型又は押し出し」で製造し、さらにそれを切断した「バンド」に対して「化学機械的研磨」を行うことは、引用文献3〜6に記載されておらず、示唆されてもいない。
さらに、その「化学機械的研磨」が、「ディスク研磨装置」を用い、「回転速度が100〜400回転/分であり、処理時間が1〜5時間である」処理条件によって行われることも、引用文献3〜6に記載されておらず、示唆されてもいないから、仮に、引用発明に引用文献3〜6に記載された技術を適用したとしても、上記相違点3の本願発明1の発明特定事項を得ることはできない。
したがって、引用文献1に記載された引用発明1と、引用文献3〜6に記載された技術とに基づいて、相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは言えない。

(イ)上記のとおり、当業者が相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえないから、相違点1、2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1と、引用文献3〜6に記載された技術とに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

エ.本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、いずれも請求項1を引用して発明を特定しているから、引用発明1との間に上記相違点3を有している。
上記のとおり、当業者が相違点3に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえないから、本願発明2〜6も、引用発明1と、引用文献3〜6に記載された技術とに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用文献2を主引例とする原査定の理由について
ア.本願発明1と引用発明2との対比
本願発明1と、引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明2の「腕時計」は、本願発明1の「腕時計(6)又は装飾品」に相当し、以下同様に、「プラスチック素材」は「合成材料」に、「リストバンド(4)」は「腕輪(5)」にそれぞれ相当する。
(イ)引用発明2の「押し出し」は、本願発明1の「成型又は押し出し」に相当し、同様に、「得るように」は「形成するように」に相当する。また、引用発明2の「硬度が55〜75のショアA硬さを有するプラスチック素材」は、本願発明1の「硬度が55〜90ショアの合成材料製」に相当する。さらに、引用発明2の「押出物(6)」は、本願発明1の「バンド(1)」に相当し、同様に、「押し出しステップ」は「成型又は押し出しステップ」に相当する。

イ.本願発明1と引用発明2との一致点及び相違点
前記アより、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点がある。
・一致点
「腕時計又は装飾品のための合成材料によって作られ少なくとも1つのストランドを有する腕輪を製造する方法であって、
成型又は押し出しによって、前記少なくとも1つのストランドを形成するように意図された硬度が55〜90ショアの合成材料製のバンドを作る成型又は押し出しステップを有し、
前記少なくとも1つのストランドを形成するように前記バンドを切断するステップを有する
方法。」

・相違点1’
本願発明1は、ストランドの粗さRpが3μm以下であるのに対し、引用発明2では、ストランドの粗さRpが特定されていない点。

・相違点3’
本願発明1は、切断するステップの後に
「その後に前記バンド(1)に対して化学機械的な研磨をする化学機械的研磨ステップを有し、
前記化学機械的研磨ステップは、ディスク研磨装置のタンク内にて動いている摩耗性の混合物内にストランドを浸し、
前記混合物は、さらに、石鹸と摩耗性の付加的な粉末またはペーストの化学的添加剤を含有し、
前記ディスク研磨装置において、回転速度が100〜400回転/分であり、処理時間が1〜5時間である」
という「化学機械的研磨ステップ」を有するのに対し、
引用発明2は、「化学機械的研磨ステップ」を有していない点。

ウ.相違点についての判断
(ア)事案に鑑みまず上記相違点3’について検討する。
相違点3’は、上記「相違点3」と同じ技術的内容である。したがって、上記「相違点3」について検討した前記(1)ウ(ア)に示す理由と同様に、相違点3’に係る本願発明1の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、引用文献2に記載された引用発明2と、引用文献3〜6に記載された技術とに基づいて、相違点3’に係る本願発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは言えない。

(イ)上記のとおり、当業者が相違点3’に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえないから、相違点1’について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明2と、引用文献3〜6に記載された技術とに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

エ.本願発明2〜6について
本願発明2〜6は、いずれも請求項1を引用して発明を特定しているから、引用発明2との間に上記相違点3’を有している。
上記のとおり、当業者が相違点3’に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとはいえないから、本願発明2〜6も、引用発明2と、引用文献3〜6に記載された技術項とに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとは言えない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-20 
出願番号 P2019-169042
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A44C)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 長馬 望
冨永 達朗
発明の名称 美的仕上げが完全なプラスチック製腕輪  
代理人 小池 勇三  
代理人 山川 茂樹  
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