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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1387296
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-11 
確定日 2022-06-21 
事件の表示 特願2019−538660「動的スペースバー」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月16日国際公開、WO2018/147910、令和 2年 2月27日国内公表、特表2020−506467、請求項の数(18)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年10月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年 2月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 元年 9月12日 :手続補正書の提出
令和 2年10月27日付け :拒絶理由通知
令和 3年 2月 3日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 7月 5日付け :拒絶査定
令和 3年11月11日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 7月 5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1−2,13−14に係る発明は、以下の引用文献1−3に基づいて、請求項3,15に係る発明は、以下の引用文献1−4に基づいて、請求項4−12,16−18に係る発明は、以下の引用文献1−5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許第09019207号明細書
2.米国特許出願公開第2015/0277598号明細書
3.米国特許出願公開第2014/0310213号明細書
4.特開2013−098826号公報
5.特開2014−052864号公報

第3 本願発明

本願請求項1−18に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明18」という。)は、令和 3年 2月 3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−18に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
コンピュータにより実現される方法であって、
タッチキーボードおよびトラックパッドを含むコンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップを含み、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップは、完全な単語がカーソルの位置よりも前にあると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上のタッチ入力を受け付けるステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づくとともに、完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップと、
前記コンピューティングデバイスのディスプレイに出力するために、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記スペースバーの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記スペースバーの選択の表示を提供するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップは、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が、ドラッグ操作ではなく、タップ操作であると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップは、さらに、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が、ドラッグ操作ではなく、タップ操作であると判断することに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップは、前記タッチキーボードの予め定められた数のホームキーにユーザの指がタッチしていると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップは、さらに、前記タッチキーボードの前記予め定められた数のホームキーに前記ユーザの指がタッチしていると判断することに基づく、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップは、前記トラックパッドの片側でユーザの手のひらが前記タッチキーボードの一部にタッチしていると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップは、さらに、前記トラックパッドの片側で前記ユーザの手のひらが前記タッチキーボードの一部にタッチしていると判断することに基づく、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記タッチキーボードおよび前記トラックパッドは、タッチ入力装置上に示される輪郭によって識別される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記コンピューティングデバイスの前記ディスプレイと前記タッチ入力装置とは別個である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タッチキーボードは、前記スペースバーの画像を描画し、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力を受け付けるステップは、前記描画されたスペースバーの画像内の位置における前記タッチ入力を受け付けないステップを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記描画されたスペースバーの画像は、前記タッチキーボードの下に隣接している、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記コンピューティングデバイスのさらなるコンテキストを判断するステップと、
前記トラックパッド上のさらなるタッチ入力を受け付けるステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記さらなるコンテキストに基づいて、前記トラックパッド上の前記さらなるタッチ入力が前記トラックパッドの選択であると特定するステップと、
前記コンピューティングデバイスの前記ディスプレイに出力するために、前記トラックパッド上の前記さらなるタッチ入力が前記トラックパッドの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記トラックパッドの選択の表示を提供するステップとを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記スペースバー上の別のタッチ入力を受け付けるステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記トラックパッド上の前記さらなるタッチ入力が前記トラックパッドの選択であると特定することに基づいて、前記スペースバー上の前記別のタッチ入力が前記トラックパッドの選択であると特定するステップと、
前記コンピューティングデバイスの前記ディスプレイに出力するために、前記スペースバー上の前記別のタッチ入力が前記トラックパッドの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記トラックパッドの選択のさらなる表示を提供するステップとを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記コンピューティングデバイスの前記さらなるコンテキストを判断するステップは、単語の接頭語が前記カーソルの前にあると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上の前記さらなるタッチ入力がトラックパッドの選択であると特定するステップは、さらに、単語の接頭語が前記カーソルの前にあると判断することに基づく、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記トラックパッド上の前記タッチ入力を受け付けることに基づいて、かつ、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記スペースバーの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、トラックパッドジェスチャに関連する操作を行わないステップを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1つ以上のコンピュータと、
命令を格納した1つ以上の記憶装置とを備え、前記命令は、前記1つ以上のコンピュータによって実行されると、前記1つ以上のコンピュータに動作を実行させるよう動作可能であり、前記動作は、
タッチキーボードおよびトラックパッドを含むコンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断することを含み、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断することは、完全な単語がカーソルの位置よりも前にあると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上のタッチ入力を受け付けることと、
前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づくとともに、完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定することと、
前記コンピューティングデバイスのディスプレイに出力するために、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記スペースバーの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記スペースバーの選択の表示を提供することとを含む、システム。
【請求項14】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断することは、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が、ドラッグ操作ではなく、タップ操作であると判断することを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定することは、さらに、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が、ドラッグ操作ではなく、タップ操作であると判断することに基づく、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断することは、前記タッチキーボードの予め定められた数のホームキーにユーザの指がタッチしていると判断することを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定することは、さらに、前記タッチキーボードの前記予め定められた数のホームキーに前記ユーザの指がタッチしていると判断することに基づく、請求項13または14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断することは、前記トラックパッドの片側でユーザの手のひらが前記タッチキーボードの一部にタッチしていると判断することを含み、
前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定することは、さらに、前記トラックパッドの片側で前記ユーザの手のひらが前記タッチキーボードの一部にタッチしていると判断することに基づく、請求項13〜15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記タッチキーボードおよび前記トラックパッドは、タッチ入力装置上に示される輪郭によって識別される、請求項13〜16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許第09019207号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審にて付与。以下同様。)

(第4欄第7行−第17行)
「FIG. 1A is an exemplary diagram of a system 100 for acquiring user input for a computing device by means of a keyboard 104 comprising a region for a spacebar, integrated with a trackpad 102 that is configured to control movement of a cursor on a display 106. In FIG. 1A, the system 100 integrates the trackpad with a portion of the keyboard, in particular with the spacebar key. Merging the spacebar and a region of the trackpad into a single area is space-efficient, and moreover saves effort on the part of the user by, for example, obviating the need to physically move between the keyboard and the trackpad.」
(当審訳:
図1Aは、ディスプレイ106上のカーソルの動きを制御するように構成されたトラックパッド102と一体化された、スペースバーのための領域を備えるキーボード104によってコンピューティングデバイスのためのユーザ入力を取得するためのシステム100の例示的な図である。図1Aにおいて、システム100は、トラックパッドをキーボードの一部、特にスペースバーキーと一体化する。スペースバーとトラックパッドの領域とを単一の領域に統合することは、スペース効率がよく、さらに、例えば、キーボードとトラックパッドとの間で物理的に移動する必要性をなくすことによって、ユーザ側の労力を節約する。)

(第4欄第32行−第46行)
「The system 100 includes a keyboard 104. The keyboard 104 may be configured, for example, to enter text or characters in the context of a software application. For example, the keyboard 104 may be configured to type words in a document in a word processing application. In this example implementation, the keyboard 104 does not include a spacebar.
In the system 100, the trackpad 102 is integrated with the keyboard 104 such that the region of the keyboard 104 normally comprising the spacebar includes a portion of the trackpad 102, which may be referred to as an upper region or the spacebar region 108. The portion of the trackpad 102 that extends into or occupies the portion of the keyboard normally reserved for the spacebar is the spacebar region 108 of the trackpad 102. Any portion of the trackpad not occupying the spacebar region may be referred to as the lower region 110.」
(当審訳:
システム100はキーボード104を含む。キーボード104は、例えば、ソフトウェアアプリケーションのコンテキストにおいてテキストまたは文字を入力するように構成され得る。例えば、キーボード104は、文書処理アプリケーションにおいて文書内の単語をタイプするように構成することができる。この例示的な実装形態では、キーボード104はスペースバーを含まない。
システム100において、トラックパッド102は、通常スペースバーを含むキーボード104の領域が、上部領域又はスペースバー領域108と呼ばれ得るトラックパッド102の一部を含むように、キーボード104と一体化される。通常スペースバーのために確保されているキーボードの部分の中に延在するかまたは占有するトラックパッド102の部分は、トラックパッド102のスペースバー領域108である。スペースバー領域を占有しないトラックパッドの任意の部分は、下部領域110と称され得る。)

(第4欄第64行−第5欄第8行)
「Other possible implementations of the system 100 exist other than that depicted in FIG. 1A, such as an example implementation in which the entire trackpad 102 may function as both the spacebar and the trackpad. In this example implementation, the entire trackpad region 102 may be configured to function equivalently to the upper region 108 described above. For example, a user 112 could enter spacebar keystrokes or trackpad gestures (e.g., click gestures and tracking gestures) to any portion of the trackpad 102, and the system 100 would, as described in further detail below, determine whether to handle the input as a spacebar keystroke or as trackpad input.」
(当審訳:
トラックパッド102全体がスペースバー及びトラックパッドの両方として機能することができる例示的な形態など、図1Aに示すもの以外のシステム100の他の可能な実装形態が存在する。この例示的な実装形態では、トラックパッド領域102全体は、上述の上部領域108と同等に機能するように構成され得る。例えば、ユーザ112は、トラックパッド102の任意の部分にスペースバーキーストローク又はトラックパッドジェスチャ(例えば、クリックジェスチャ及び追跡ジェスチャ)を入力することができ、システム100は、以下で更に詳細に説明するように、入力をスペースバーキーストローク又はトラックパッド入力として扱うかどうかを決定する。)



図4B」

(第9欄第48行−第10欄第15行)
「FIG. 4B is a flowchart illustrating example operations of the system of FIG. 1A, in particular a possible process 450 for distinguishing spacebar keystrokes from trackpad input. Note that FIG. 4B depicts one possible implementation of the process 450, but that the steps of the process 450 can additionally be implemented in a different order than the order shown. The process depicted in FIG. 4B may be carried out, for example, in the trackpad processor module 208, if present, or in the keyboard processor module 210, if present, or in the CPU 214, if present, or by other means, such as, for example, by software or by a combination of the above.
The process 450 as depicted in FIG. 4B begins with input 402 to the trackpad 102 by the user 112. The input may be provided in the form of touching, tapping or pressing the surface of the trackpad 102 with a fingertip, or sliding or dragging one or more fingertips across the surface of the trackpad 102. For example, the user 112 may tap the trackpad 102.
Given the initial input 402, the process determines 404 whether the input 402 was applied to the spacebar region 108 of the trackpad 102. For example, the process may determine whether the input by the user 112 was a tap, touch, press, slide or drag located at least partly within the spacebar region 108 of the trackpad 102.
The process 450 determines 404 whether the input 402 was applied to the spacebar region 108. If the process 450 determines that the input 402 was not applied to the spacebar region 108, the input is passed to the trackpad input handler 416 to be processed as trackpad input. The trackpad input handler may be included within the same processor as the process 450, or the input may be passed to a separate processor such as the trackpad input processor 208 or the CPU 214.
If the process 450 determines 404 that the input 402 was applied to the spacebar region 108, the input is examined further within this process 450.」
(当審訳:
図4Bは、図1Aのシステムの例示的な動作、特に、スペースバーキーストロークをトラックパッド入力から区別するための可能なプロセス450を示すフローチャートである。図4Bは、プロセス450の1つの可能な実装形態を示すが、プロセス450のステップは、示される順序とは異なる順序でさらに実装され得ることに留意されたい。図4Bに示すプロセスは、例えば、もしあればトラックパッド・プロセッサ・モジュール208内で、もしあればキーボード・プロセッサ・モジュール210内で、もしあればCPU214内で、または他の手段によって、例えばソフトウェアによって、または上記の組合せによって実行することができる。
図4Bに示すプロセス450は、ユーザ112によるトラックパッド102への入力402から始まる。入力は、トラックパッド102の表面を指先でタッチする、タップする、若しくは押す、又はトラックパッド102の表面にわたって1つ以上の指先をスライドさせる、若しくはドラッグする形態で提供され得る。例えば、ユーザ112はトラックパッド102をタップしてもよい。
初期入力402が与えられると、プロセスは、入力402がトラックパッド102のスペースバー領域108に適用されたかどうかを判定する(404)。例えば、プロセスは、ユーザ112による入力が、トラックパッド102のスペースバー領域108内に少なくとも部分的に位置するタップ、タッチ、押圧、スライド、又はドラッグであったかどうかを判定してもよい。プロセス450は、入力402がスペースバー領域108に適用されたかどうかを判定する(404)。プロセス450が、入力402がスペースバー領域108に適用されなかったと判定した場合、入力はトラックパッド入力ハンドラ416に渡され、トラックパッド入力として処理される。トラックパッド入力ハンドラは、プロセス450と同じプロセッサ内に含まれてもよく、又は入力は、トラックパッド入力プロセッサ208又はCPU214などの別個のプロセッサに渡されてもよい。
プロセス450が、入力402がスペースバー領域108に適用されたと判定した場合(404)、入力は、このプロセス450内でさらに検査される。)

(第10欄第51行−第61行)
「The process 450 determines 408 the context of the input 402. The context of the input may be, for example: The application context, for example, what program is running or what window is currently active; the input context within the operating system or any currently active software window, for example, whether the user is typing in a text entry field, or moving the cursor around the display; or other measures of context. For example, a user who supplies the aforementioned input 402 to the trackpad 102 while typing a sentence in a word processing program would be operating in the context of text entry.」
(当審訳:
プロセス450は、入力402のコンテキストを決定する(408)。入力のコンテキストは、例えば、アプリケーションコンテキスト、例えば、どのプログラムが実行されているか、またはどのウィンドウが現在アクティブであるか、オペレーティングシステムまたは任意の現在アクティブなソフトウェアウィンドウ内の入力コンテキスト、例えば、ユーザがテキスト入力フィールドをタイプしているか、またはディスプレイの周りでカーソルを移動させているか、またはコンテキストの他の尺度であり得る。例えば、ワードプロセッシングプログラムで文をタイプしている間に、前述の入力402をトラックパッド102に供給するユーザは、テキスト入力のコンテキストで動作している。」

(第11欄第18行−第24行)
「If the process 450 determines 408 that the input 402 is not supplied in the context of text entry, the input 402 may be passed to the trackpad input handler 416 to be processed as trackpad input as described above.
If the process 450 determines 408 that the input 402 is supplied in the context of text entry, this process 400 examines the input 402 further.」
(当審訳:
プロセス450が、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されないと判定する(408)場合、入力402は、上記のようにトラックパッド入力として処理されるようにトラックパッド入力ハンドラ416に渡され得る。
プロセス450が、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されると判定した場合(408)、このプロセス400は、入力402をさらに検査する。)

(第11欄第39行−第45行)
「If the process 450 determines 410 that the input 402 is short, then the process 400 may send a single space character 412 (or, for example, a single spacebar keystroke) to the system, for example, to the keyboard processor module 210 or the CPU 214 or by other means to the system so as to reflect the recognition of the input 402 by the user 112 as a press of the spacebar.」
(当審訳:
プロセス450が、入力402が短いと判定する(410)場合、プロセス400は、単一のスペース文字412(または、例えば、単一のスペースバーキーストローク)をシステムに、例えば、キーボードプロセッサモジュール210もしくはCPU214に、または他の手段によってシステムに送信して、ユーザ112による入力402の認識をスペースバーの押下として反映することができる。)

(第16欄第1行−第7行)
「Method steps may be performed by one or more programmable processors executing a computer program to perform functions by operating on input data and generating output. Method steps also may be performed by, and an apparatus may be implemented as, special purpose logic circuitry, e.g., an FPGA (field programmable gate array) or an ASIC (application-specific integrated circuit).」
(当審訳:
方法ステップは、入力データを操作し、出力を生成することによって機能を実行するコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラマブルプロセッサによって実行され得る。方法ステップはまた、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)によって実行されてもよく、装置は、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)として実装されてもよい。)

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ユーザ入力を取得するためのシステム100において、
トラックパッドをキーボードの一部、特にスペースバーキーと一体化し、
キーボード104はスペースバーを含まず、
トラックパッド102は、上部領域又はスペースバー領域108を含み、
ユーザ112によるトラックパッド102への入力402について、
入力402がトラックパッド102のスペースバー領域108に適用されたかどうかを判定し、
入力402がスペースバー領域108に適用されなかったと判定した場合、トラックパッド入力として処理し、
入力402がスペースバー領域108に適用されたと判定した場合(404)、入力は、さらに検査され、
入力402のコンテキストを決定し、
入力のコンテキストは、ユーザがテキスト入力フィールドをタイプしているか、またはディスプレイの周りでカーソルを移動させているかであり、
入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されないと判定する(408)場合、トラックパッド入力として処理され、
入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されると判定した場合(408)、このプロセス400は、入力402をさらに検査され、
入力402が短いと判定する(410)場合、単一のスペース文字412を送信する、
プログラマブルプロセッサによって実行される方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(米国特許出願公開第2015/0277598号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。

「[0027]Specifically, portable information handling system 200-1 in FIG. 2A shows first body 202 rotated with respect to second body 204 about 90°, representing a typical laptop-style configuration where first body 202 includes a keyboard and a touch pad and second body 204 includes a display device. In portable information handling system 200-1, first body 202, including the keyboard and the touch pad, are operated by a user in line-of-sight operation, since the input devices are visible to a user viewing the display. Accordingly, in portable information handling system 200-1 the keyboard may be activated for normal use and the touch pad may be activated for line-of-sight operation where certain portions of the touch pad may be deactivated to accommodate resting areas for palms or hands of the user, while other portions may be activated for line-of-sight touch operation (i.e., as a mouse device).
[0028]In portable information handling system 200-2 in FIG. 2A, first body 202 is rotated about 340° about second body 204 such that portable information handling system 200-2 may rest on the edges of first body 202 and second body 204, for example, for viewing the display included in second body 204. In portable information handling system 200-3, first body 202 is rotated about 270° about second body 204 and may represent a configuration for similar use as portable information handling system 200-2. It is noted that first body 202, including the keyboard, rests with the operational surface of the keyboard and the touch pad down. In various embodiments, the keyboard in portable information handling system 200 may be a solid-state multi-layer keyboard, also referred to as a non-travel keyboard, in which the keys do not physically move with respect to other portions of the keyboard, but instead, respond capacitively to touch input without substantial motion (i.e., no mechanical travel of the keys). Accordingly, in portable information handling system 200-2 and/or 200-3, the keyboard and the touch pad may be deactivated for display-mode only operation, while a touch panel (not shown explicitly) incorporated into second body 204 may remain active for direct touch input, which also represents line-of-sight operation.」
(当審訳:
[0027]詳細には、図2Aのポータブル情報処理システム200-1は、第1の本体202がキーボードおよびタッチパッドを含み、第2の本体204がディスプレイデバイスを含む典型的なラップトップ型構成を表す、第2の本体204に対して約90°回転した第1の本体202を示す。携帯型情報処理システム200-1では、キーボードおよびタッチパッドを含む第1の本体202は、入力装置がディスプレイを見るユーザに見えるので、視線操作でユーザによって操作される。したがって、携帯型情報処理システム200-1では、キーボードを通常の使用のために起動することができ、タッチパッドを視線操作のために起動することができ、タッチパッドの特定の部分を非アクティブ化してユーザの手のひらまたは手の静止領域に対応することができ、他の部分を視線タッチ操作のために(すなわち、マウスデバイスとして)アクティブ化することができる。
[0028]図2Aの携帯型情報処理システム200-2では、第1の本体202は、携帯型情報処理システム200-2が、例えば、第2の本体204に含まれるディスプレイを見るために、第1の本体202および第2の本体204の縁部に載ることができるように、第2の本体204の周りで約340°回転される。携帯型情報処理システム200-3では、第1の本体202は、第2の本体204の周りを約270°回転し、携帯型情報処理システム200-2と同様の使用のための構成を表すことができる。キーボードを含む第1の本体202は、キーボードの操作面およびタッチパッドを下にして置かれることに留意されたい。様々な実施形態では、携帯型情報処理システム200におけるキーボードは、キーがキーボードの他の部分に対して物理的に移動せず、代わりに実質的な動きなしに(すなわち、キーの機械的移動なしに)タッチ入力に容量的に応答する、非移動キーボードとも呼ばれるソリッドステート多層キーボードであってもよい。したがって、携帯型情報処理システム200-2および/または200-3では、キーボードおよびタッチパッドは、表示モードのみの動作のために非アクティブ化されてもよく、一方、第2の本体204に組み込まれたタッチパネル(明示的に図示せず)は、直接タッチ入力のためにアクティブなままであってもよく、これはまた、視線動作を表す。)



図2A,2B」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(米国特許出願公開第2014/0310213号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献3記載の技術的事項」という。)。

「[0153]FIG. 12C depicts a touch screen keyboard 1270 with hit target resizing enabled, after the mobile device has received the input data sequence “for”. As shown, the target areas are expanded non-uniformly for different keys based on language and touch models. For example, because the input data for is likely to be a complete word, the probability that the word is complete is high, and so the target area 1272 for the space key 1271 has been greatly enlarged compared to the target areas for the space key shown in FIGS. 12A-12B. Similarly, the probabilities for keys “m” 1274 (probable words: “form”, “forms”, and “format”) and “c” 1278 (probable words: “force”, “fork”) are determined to be of medium probability, and therefore their respective target areas 1276 and 1280 have been enlarged to a lesser degree that the space key target area 1272. Similarly, the probabilities of the keys period, comma, z, x, v, b, and n is determined to be low, so the corresponding target areas for those keys are not resized.」
(当審訳:
[0153]図12Cは、モバイルデバイスが入力データシーケンス“for”を受信した後に、ヒットターゲットサイズ変更が有効にされたタッチスクリーンキーボード1270を示す。図示のように、ターゲットエリアは、言語およびタッチモデルに基づいて異なるキーに対して不均一に拡張される。例えば、入力データは完全な単語である可能性が高いので、単語が完全である確率は高く、したがってスペースキー1271のターゲット領域1272は、図12A?図12Bに示すスペースキーのターゲット領域と比較して大幅に拡大されている。同様に、キー“m”1274(有望な単語:“form”、“forms”、および“format”)および“c”1278(有望な単語:“force”、“fork”)の確率は、中程度の確率であると決定され、したがって、それらのそれぞれのターゲット領域1276および1280は、スペースキーターゲット領域1272よりも小さい程度に拡大されている。同様に、キーピリオド、カンマ、z、x、v、b、およびnの確率は低いと判定され、したがって、それらのキーの対応するターゲットエリアはサイズ変更されない。)



図12C」


第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「プログラマブルプロセッサ」が、本願発明1における「コンピュータ」に相当することから、引用発明の「プログラマブルプロセッサによって実行される方法」は、後述する相違点を除いて本願発明1における「コンピュータにより実現される方法」に相当する。

イ.引用発明の「キーボード104」は、本願発明1における「タッチキーボード」とは、「キーボード」である点で共通する。

ウ.引用発明の「トラックパッド」は、本願発明1における「トラックパッド」に相当し、「トラックパッド」及び「キーボード」は、一般にコンピュータに対して使用される物であることから、引用発明の「トラックパッド」と「キーボード104」を有する「システム100」は、上記イを参酌すると、本願発明1における「タッチキーボードおよびトラックパッドを含むコンピューティングデバイス」とは、「キーボードおよびトラックパッドを含むコンピューティングデバイス」という点で共通する。

エ.引用発明の「入力402」とは「ユーザ112によるトラックパッド102への入力402」であり、上記ウを参酌すると、「入力402」はコンピューティングデバイスに対する入力であるから、引用発明の「入力402のコンテキストを決定」することは、後述する相違点を除いて本願発明1における「前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップ」に相当する。

オ.引用発明の「トラックパッド」への入力は、「タッチ入力」であることが明らかであることから、引用発明の「ユーザ112によるトラックパッド102への入力402」は、本願発明1における「前記トラックパッド上のタッチ入力を受け付けるステップ」に相当する。

カ.引用発明の「入力のコンテキストは、ユーザがテキスト入力フィールドをタイプしているか、またはディスプレイの周りでカーソルを移動させているかであり、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されないと判定する(408)場合、トラックパッド入力として処理され、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されると判定した場合(408)、このプロセス400は、入力402をさらに検査され、入力402が短いと判定する(410)場合、単一のスペース文字412を送信する」ことにおいて、「入力402が短いと判定する」ことは、テキスト入力のコンテキストを判断することであり、当該判断に基づいて「単一のスペース文字412を送信」していることから、上記エを参酌すると、引用発明の「入力のコンテキストは、ユーザがテキスト入力フィールドをタイプしているか、またはディスプレイの周りでカーソルを移動させているかであり、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されないと判定する(408)場合、トラックパッド入力として処理され、入力402がテキスト入力のコンテキストで供給されると判定した場合(408)、このプロセス400は、入力402をさらに検査され、入力402が短いと判定する(410)場合、単一のスペース文字412を送信する」は、本願発明1における「前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づくとともに、完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップ」とは、後述する相違点を除いて、「前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力がスペースバーの選択であると特定するステップ」という点で共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 コンピュータにより実現される方法であって、
タッチタッチキーボードおよびトラックパッドを含むコンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップを含み、前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップは、完全な単語がカーソルの位置よりも前にあると判断するステップを含み、
前記トラックパッド上のタッチ入力を受け付けるステップと、
前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づくとともに、完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップと、
前記コンピューティングデバイスのディスプレイに出力するために、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記スペースバーの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記スペースバーの選択の表示を提供するステップとを含む、方法。」

主任注:(一致点)は、本願請求項1に対して、グレー部分を削除したものに、緑字部分の共通する事項を有するもの。

(相違点1)
本願発明1は、「タッチキーボード」を含むのに対して、引用発明では、「キーボード104」がタッチ式であるとは特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記コンピューティングデバイスのコンテキストを判断するステップ」が、「完全な単語がカーソルの位置よりも前にあると判断するステップ」を含むのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスの予め判断されたコンテキストに基づくとともに、完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づいて、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記タッチキーボードのスペースバーの選択であると特定するステップ」が、「完全な単語が前記カーソルの前にあると判断することにさらに基づ」くこと、及び「スペースバー」が「タッチキーボード」の一部であることを含むのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記コンピューティングデバイスのディスプレイに出力するために、前記トラックパッド上の前記タッチ入力が前記スペースバーの選択であると前記コンピューティングデバイスが特定したことに基づいて、前記スペースバーの選択の表示を提供するステップ」を含むのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討すると、引用発明においては、元々、「スペースバー領域108」がトラックパッド上に設けられており、「単一のスペース文字412を送信する」のは、「入力402がスペースバー領域108に適用されたと判定」されることを条件としているから、引用発明において、本願発明1の「完全な単語が前記カーソルの前にあると判断する」といった、「単一のスペース文字412を送信する」ことをより制限する条件を追加する動機付けがあるとは言えず、引用文献2及び3記載の技術的事項を加味したとしても、当該相違点3に係る構成は本願の優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)なお、引用文献1記載の技術的事項には、別の実施例として、第4欄第64行−第5欄第8行に「トラックパッド領域102全体は、上述の上部領域108と同等に機能するように構成」することも記載されているが、当該構成を含む発明を認定した場合について検討しても、「トラックパッド領域102全体」に「スペースバー領域」である「上部領域108」が含まれることから、上記(2)と同様に、「完全な単語が前記カーソルの前にあると判断する」との条件を追加する動機付けがあるとはいえず、依然として、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−12、18について

本願発明2−12、18は、本願発明1の上記相違点1ないし4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明13について

本願発明13は、「方法」である本願発明1とカテゴリー違いで実質的に同様内容の「システム」に係る発明であるので、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明14−17について

本願発明14−17は、本願発明1の上記相違点1ないし4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび

以上のとおり、本願発明1−18は、当業者が引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明をすることが出来た物ではない、したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-07 
出願番号 P2019-538660
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 ▲高▼瀬 健太郎
富澤 哲生
発明の名称 動的スペースバー  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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