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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1387304
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-15 
確定日 2022-07-05 
事件の表示 特願2019− 54696「電子機器、文字入力方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月24日出願公開、特開2020−154980、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成31年 3月22日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和 3年 4月20日付け :拒絶理由通知
令和 3年 6月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 9月 3日付け :拒絶査定
令和 3年11月15日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 3年 9月 3日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1−8,10,12−13に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、請求項9,11に係る発明は、以下の引用文献1−3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2007/0067720号明細書
2.特開2013−238935号公報(周知技術を示す文献)
3.韓国公開特許第10−2008−0095823号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明

本願請求項1−12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明12」という。)は、令和 3年11月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1−12に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、
ディスプレイと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列を前記ディスプレイに表示させる過程において、
入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定し、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行い、
前記第1キーの入力規則は、当該第1キーによる入力が行われた場合に、入力された前記第1キーに対応する前記基本文字を前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して単純追加するか、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるかの判定を含む入力規則である、
電子機器。
【請求項2】
前記キーボードは、前記第1キーとは異なる第2キーを有する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字のうち、前記変換の対象になる文字の位置に対応付けて、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行う、
請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字は、前記基本文字に対して母音記号または声調記号が付加された文字である、
請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記基本文字に対して母音記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの第1入力規則と前記基本文字に対して声調記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの第2入力規則とを記憶しているストレージを備え、
前記プロセッサは、
入力が未確定の文字と、前記ストレージに記憶されている前記第1入力規則および前記第2入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して母音記号および声調記号による文字の変換を生じさせるための、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行う、
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記プロセッサは、
前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための複数の前記第1キーの入力規則の中から、前記ガイド表示の対象となる前記第1キーの入力規則をユーザ操作に基づいて選択する、
請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記言語に特有の記号による文字の変換は、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対する前記言語に特有の記号の付加、変更、移動、削除の何れか少なくとも1つを伴う文字の変換である、
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記言語に特有の記号の付加、変更、移動、削除に対応する複数の変換の種類のうち、ユーザ操作に応じて選択された種類の一部または全部を、前記情報を表示させるモードとして設定し、
入力が未確定の文字と、前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して、前記設定されたモードに応じた種類の前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定する、
請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを、当該第1キーの入力が可能なときにポップアップにして表示させるガイド表示を行う、
請求項1ないし請求項8の何れか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記ポップアップによるガイド表示の有無は、ユーザ操作に応じて選択される、
請求項9に記載の電子機器。
【請求項11】
数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、ディスプレイと、を備えた電子機器のプロセッサにより、
前記キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列を前記ディスプレイに表示させる過程において、
入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定し、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行い、
前記第1キーの入力規則は、当該第1キーによる入力が行われた場合に、入力された前記第1キーに対応する前記基本文字を前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して単純追加するか、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるかの判定を含む入力規則である、
文字入力方法。
【請求項12】
数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、ディスプレイと、を備えた電子機器のプロセッサを、
前記キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列を前記ディスプレイに表示させる過程において、
入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定し、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行うように機能させ、
前記第1キーの入力規則は、当該第1キーによる入力が行われた場合に、入力された前記第1キーに対応する前記基本文字を前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して単純追加するか、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるかの判定を含む入力規則である、プログラム。」

第4 引用文献、引用発明等

1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国特許出願公開第2007/0067720号明細書)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は、強調のため当審にて付与。以下同様。)

「[0002] In the Vietnamese alphabet, there are seventeen consonants available in either upper or lower case, resulting in thirty-four consonants as shown in FIG. 1. Thirty-two out of these thirty-four consonants (except for d and D with stroke) can be entered with the regular English keyboard/keypad (like 101 key US keyboard).
[0003] In addition, there are seventy-two unique vowels with diacritical marks in either upper or lower case, resulting in 144 vowels as shown in FIG. 2. Unlike the consonants, only twelve out of these 144 vowels can be entered with the regular English keyboard/keypad (like 101 key US keyboard).
[0004] Due to the lack of keys for entering the other two consonants (d and D with stroke) and 132 vowels that are unique to Vietnamese language, it is advantageous and desirable to provide a method and apparatus for entering Vietnamese words containing characters with diacritical marks in an electronic device having a monitor/display and using the currently available keys on the regular English keyboard/keypad (like 101 key US keyboard).」
(当審訳:
[0002]ベトナム語アルファベットでは、大文字または小文字のいずれかで17個の子音が使用可能であり、その結果、図1に示すように34個の子音が得られる。これらの34個の子音のうちの32個(ストロークを有するdおよびDを除く)は、通常の英語キーボード/キーパッド(101キーUSキーボードのような)を用いて入力することができる。)
[0003]さらに、大文字または小文字のいずれかに発音区別符号を有する72個のユニークな母音があり、その結果、図2に示すように144個の母音が得られる。子音とは異なり、通常の英語のキーボード/キーパッド(101キーのUSキーボードのような)では、これらの144の母音のうちの12しか入力することができない。
[0004]ベトナム語に固有の他の2つの子音(ストロークを有するdおよびD)および132の母音を入力するためのキーがないため、モニタ/ディスプレイを有する電子デバイスにおいて発音区別符号を有する文字を含むベトナム語を入力し、通常の英語キーボード/キーパッド(101キーUSキーボードなど)上の現在利用可能なキーを使用するための方法および装置を提供することが有利であり、望ましい。)

「[0011] FIG. 4b illustrates the lower case vowel-i being entered and displayed in the Notepad text editor.」
(当審訳:
[0011]図4bは、ノートパッドテキストエディタに入力され表示されている小文字の母音iを示す。)


図4b

上図4bからは、ウィンドウのGUIに文字列が表示されており、段落[0011]の記載から、当該文字列は入力されたものといえ、当該入力は、段落[0002]-[0004]を参酌すると「英語キーボード」によって行われるものといえ、またウィンドウのGUIは通常ディスプレイに表示されることが技術常識から明らかであるので、「キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列をディスプレイに表示する」構成が見て取れる。また、図4b中の「1.vi」は、発音区別符号及び声調記号のいずれも付与されていない文字であり、2.ないし6.はそれぞれ発音区別符号または声調記号が付与された文字であることから、「入力された文字を単純追加するか、入力された文字に記号を付与した文字に変換させる」構成であることも見て取れる。

「[0016] In the preferred embodiment of the present invention, as shown in FIG. 4e, the Vietnamese wordViet (contains the vowel-e with the combination of diacritic-circumflex and tone mark-dot below) is entered in the Notepad text editor on a Notebook PC running Microsoft Windows XP. As shown in FIG. 4a, the upper case consonant-V is entered in the Notepad text editor. Next, the lower case vowel-i is entered as shown in FIG. 4b. Next, the lower case vowel-e is entered as shown in FIG. 4c. Next, the lower case consonant-t is entered as shown in FIG. 4d. Now there are two possibly matched Vietnamese words with proper diacritic marks displayed in the pop-up window. Finally, once the number 2 is entered for selecting the second word in the numbered list, the Vietnamese word containing the vowels with proper diacritical marks replaces the typing word containing unmarked vowels as shown in FIG. 4e.
[0017] It should be noted that the present invention has been described mainly in conjunction with a Notebook PC having a LCD display and alphanumeric keyboard for entering alphabetic characters and numerals (like 101 key US keyboard). The present invention, in general, is applicable to all electronic devices in various sizes having a CRT monitor/LCD display and a keyboard/keypad (either actual or onscreen) for entering alphabetic characters and numerals. Any of these electronic devices can be a Desktop PC, Notebook PC, Pocket PC, Tablet PC, a mobile phone, Media Center PC and the like as shown in FIG. 5.」
(当審訳:
[0016]本発明の好ましい実施形態では、図4eに示すように、Microsoft Windows(登録商標)XPを実行するノートブックPC上のNotepadテキストエディタに、ベトナム語Viet(以下の発音区別符号-サーカムフレックスと声調記号-ドットの組合せを有する母音eを含む)が入力される。図4aに示すように、大文字の子音Vはノートパッドテキストエディタに入力される。次に、図4(b)に示すように、小文字の母音iが入力される。次に、図4(c)に示すように、小文字の母音eが入力される。次に、図4(d)に示すように、小文字の子音tが入力される。ここで、2つのマッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語がポップアップウィンドウに表示される。最後に、番号付きリストの第2の単語を選択するために番号2が入力されると、適切な発音区別符号を有する母音を含むベトナム語が、図4eに示されるように、符号なし母音を含むタイピング単語に取って代わる。
[0017]本発明は、主に、LCDディスプレイと、アルファベット文字および数字を入力するための英数字キーボード(101キーUSキーボードなど)とを有するノートブックPCに関連して説明されたことに留意されたい。
本発明は、一般に、CRTモニタ/LCDディスプレイと、アルファベット文字および数字を入力するためのキーボード/キーパッド(実画面または画面上)とを有する、様々なサイズのすべての電子デバイスに適用可能である。
これらの電子機器はいずれも、図5に示すようなデスクトップPC、ノートPC、ポケットPC、タブレットPC、携帯電話、メディアセンターPCなどとすることができる。)


図4d

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ベトナム語アルファベットの34個の子音のうちの32個は、通常の英語キーボードを用いて入力することができ、
通常の英語キーボードで、144の母音のうちの12を入力し、
キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列をディスプレイに表示し、
入力された文字を単純追加するか、入力された文字に記号を付与した文字に変換させ、
大文字の子音Vはノートパッドテキストエディタに入力され、
次に、小文字の母音iが入力され、
次に、小文字の母音eが入力され、
次に、小文字の子音tが入力され、
2つのマッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語がポップアップウィンドウに表示され、
番号付きリストの第2の単語を選択するために番号2が入力されると、適切な発音区別符号を有する母音を含むベトナム語が、
符号なし母音を含むタイピング単語に取って代わる、
LCDディスプレイと、英数字キーボードとを有するノートブックPC。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2013−238935号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。

「【要約】
【課題】複数の入力方式を簡単な操作で設定可能にする。
【解決手段】入力方式と所定のパターンとが対応付けられて予め格納された記憶部30を参照し、入力面41によって取得された操作の軌跡1とパターン2とが一致するか否かを判定するパターン判定部12を備え、文字入力部13は、パターン判定部12によって軌跡1とパターン2とが一致すると判定された場合、当該パターンに対応付けられた入力方式5に設定する。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(韓国公開特許第10−2008−0095823号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献3記載の技術的事項」という。)。


(当審訳:
[78]図9を参照すると、まず多国語メーリングシステム提供サーバ130が携帯端末機110から多国語メーリングシステムを提供することを要請されれば(S901)、前記多国語メーリングシステム提供サーバ130のメニュー生成モジュール131は、前記携帯端末機110に複数の言語に対するメーリングシステムのうち特定言語のメーリングシステムを選択するための言語選択メニューと、前記特定言語に対する複数の入力方式のうち特定の入力方式を選択するための入力方式選択メニューと、を提供する(S902)。)


図9

第5 対比・判断

1.本願発明1について

(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア.引用発明における「英語キーボード(英数字キーボード)」は、本願発明1における「キーボード」に相当し、引用発明は、「ベトナム語アルファベットの34個の子音のうちの32個は、通常の英語キーボードを用いて入力することができ、通常の英語キーボードで、144の母音のうちの12を入力する」することから、「ベトナム語アルファベットの32個」の「子音」及び「12」個の母音が、本願発明1における「言語の基本文字」に対応し、当該子音及び母音を入力するための引用発明の「英語キーボード」上のキーが、本願発明1における「言語の基本文字に対応する第1キー」に対応する。よって、引用発明の「英語キーボード」は、本願発明1における「数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボード」に相当する。

イ.引用発明の「LCDディスプレイ」は、本願発明1における「ディスプレイ」に相当し、引用発明の「ノートブックPC」は、何らかのプロセッサを有することは技術常識から明らかであり、また電子機器の一種でもあることから、引用発明の「ノートブックPC」は、上記アを参酌すると、後述する相違点を除いて、本願発明1における「数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、ディスプレイと、プロセッサと、を備え」る「電子機器」とは、「言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、ディスプレイと、プロセッサと、を備え」る「電子機器」である点で共通する。

ウ.引用発明の「キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列をディスプレイに表示」させることは、本願発明1における「前記キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列を前記ディスプレイに表示させる過程」に相当する。

エ.引用発明の「符号なし母音を含むタイピング単語」は、「2つのマッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語がポップアップウィンドウに表示され、番号付きリストの第2の単語を選択するために番号2が入力されると、適切な発音区別符号を有する母音を含むベトナム語が、符号なし母音を含むタイピング単語に取って代わる」ことから、入力としては未確定の文字列であるといえ、本願発明1における「入力が未確定の文字」に相当する。

オ.引用発明の「番号付きリスト」とは、図4dを参酌すると、「符号なし母音を含むタイピング単語」に対して「マッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語」に置き換えるためのキーと対応づけて表示するものであり、引用発明の「マッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語」は、入力中の「符号なし母音を含むタイピング単語」と、ベトナム語における基本文字に対して発音区別符号及び声調記号を付与する入力規則とに基づいて表示されるものである。
よって、引用発明の「番号付きリスト」を作成する過程の処理は、上記エを参酌すると、本願発明1における「入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定」することとは、「入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるためのキーを特定」する点で共通する。

カ.引用発明の「大文字の子音Vはノートパッドテキストエディタに入力され、次に、小文字の母音iが入力され、次に、小文字の母音eが入力され、次に、小文字の子音tが入力され、2つのマッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語がポップアップウィンドウに表示され、番号付きリストの第2の単語を選択するために番号2が入力されると、適切な発音区別符号を有する母音を含むベトナム語が、符号なし母音を含むタイピング単語に取って代わる」ことについて、「大文字の子音V」、「小文字の母音i」、「小文字の母音e」、「小文字の子音t」によって構成される文字列は、「符号なし母音を含むタイピング単語」に対応しており、当該「符号なし母音を含むタイピング単語」とベトナム語における基本文字に対して発音区別符号及び声調記号を付与する入力規則とに基づいて、「マッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語がポップアップウィンドウに表示され」るものであるから、引用発明の「マッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語」は、本願発明1における「変換後の文字を示す情報」に相当する。

キ.引用発明の「番号付きリスト」に表示されたキー情報(図4d記載の「1」、「2」)は、「符号なし母音を含むタイピング単語」に対して「マッチする可能性のある適切な発音区別符号が付与されたベトナム語」に置き換えるためのキーであり、本願発明1における「特定された前記第1キーを示す情報」とは、「特定されたキーを示す情報」という点で共通する。よって、引用発明の「番号付きリスト」は、上記カを参酌すると、本願発明1における「特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示」とは、「特定されたキーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示」という点で共通する。

(2)一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「 数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キーを複数有するキーボードと、
ディスプレイと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記キーボードにより入力されたキーに応じた文字の文字列を前記ディスプレイに表示させる過程において、
入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるためのキーを特定し、特定されたキーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行う、
電子機器。」

(相違点1)
本願発明1は、「入力が未確定の文字と、前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則とに基づいて、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるための前記第1キーを特定し、特定された前記第1キーを示す情報と変換後の文字を示す情報とを表示させるガイド表示を行」うのに対して、引用発明では、「第1キーの入力規則」に基づいて特定されておらず、「入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるため」に特定するキーが「数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キー」ではなく、「ガイド表示」において表示されるキーも「数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キー」ではない点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記第1キーの入力規則は、当該第1キーによる入力が行われた場合に、入力された前記第1キーに対応する前記基本文字を前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して単純追加するか、前記ディスプレイに表示されている入力が未確定の文字に対して前記言語に特有の記号による文字の変換を生じさせるかの判定を含む入力規則である」ことを含むのに対して、引用発明はそれを含むものではない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑み、まず相違点1について検討すると、引用発明において、ガイド表示に「変換後の文字を示す情報」に対応して表示される「特定されたキーを示す情報」は、「前記基本文字に対して前記言語に特有の記号が付加された文字を入力するための前記第1キーの入力規則」に基づいておらず、単にリストの順番に採番された数字キーによって特定されており、例えばTELEX方式のような言語に特有の記号を付加するために存在する入力規則によって特定される「数字とは異なる言語の基本文字に対応する第1キー」に置き換えるような動機付けがあるとは言えず、引用文献2及び3記載の技術的事項を加味したとしても、当該相違点1に係る構成は本願の出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2−10について

本願発明2−10は、本願発明1の上記相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明11−12について

本願発明11は、「電子機器」である本願発明1とカテゴリー違いで実質的に同様内容の「文字入力方法」に係る発明であり、本願発明12は、「電子機器」である本願発明1とカテゴリー違いで実質的に同様内容の「プログラム」に係る発明であるので、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

審判請求時の手続補正により補正された請求項1−12は、上記相違点1に対応する構成を有するものとなっている。
したがって、上記のとおり、本願発明1−12は、上記引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえず、原査定を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1−12は、当業者が引用発明、及び引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて,容易に発明をすることが出来た物ではない、したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-06-21 
出願番号 P2019-054696
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 野崎 大進
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 電子機器、文字入力方法およびプログラム  
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