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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1387317
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-18 
確定日 2022-08-09 
事件の表示 特願2020− 29475「伝動装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月13日出願公開、特開2021−134815、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月25日の出願であって、令和2年12月28日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年3月3日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和3年8月17日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して令和3年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年8月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 本願請求項2−7に係る発明は、以下の引用文献1−2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平3−272348号公報
2.特開2002−70959号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、令和3年3月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「【請求項1】
伝達された動力によって軸線回りに回転する入力軸と、
前記軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されると共に、前記入力軸の回転に伴って作動し、且つ前記偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する内歯車と、
前記内歯車に対して前記軸線方向の一方側で向かい合うように配置されると共に、前記軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の前記内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する外歯車と、
前記外歯車の回転に伴って前記軸線回りに回転する出力軸と、
前記内歯車に対して前記軸線方向の他方側で向かい合うように配置された固定プレートに固定され、前記内歯車の自転を拘束することで、前記軸線を中心として偏心揺動するように前記内歯車を案内する案内部材と、を備え、
前記外歯は、前記内歯の歯数とは異なる歯数とされ、
前記内歯車は、
前記内歯が設けられ、前記外歯車を径方向の外側から囲む歯車本体と、 前記固定プレートに対して向かい合うように配置され、外周縁部側に前記歯車本体が形成された内歯車プレートと、
少なくとも前記固定プレート側に開口するように、前記内歯車プレートに形成された収容凹部と、を備え、
前記案内部材は、前記収容凹部内に配置されると共に、前記収容凹部の内壁面に対して内接可能なガイド部を備え、
前記ガイド部は、前記収容凹部の中心線に対して、前記軸線と前記偏心軸線との間の偏心量分だけ偏心するように前記収容凹部内に配置されていることを特徴とする伝動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝動装置において、
前記ガイド部は、
前記固定プレートに固定された軸部と、
前記軸部を径方向の外側から囲むように配置されたガイド内輪部と、
前記ガイド内輪部を径方向の外側から囲むように配置されたガイド外輪部と、
前記ガイド内輪部と前記ガイド外輪部との間に転動可能に保持された複数のガイドボール部と、を備え、
前記ガイド外輪部が、前記収容凹部の内壁面に対して内接する、伝動装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伝動装置において、前記内歯は、前記偏心軸線方向から見た平面視で円形の外形を有し、且つ自転可能な転動体を有している、伝動装置。
【請求項4】
請求項3に記載の伝動装置において、前記転動体は、ボールである、伝動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の伝動装置において、前記外歯は、トロコイド曲線に沿った歯形で形成されている、伝動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の伝動装置において、前記入力軸に対して一体に組み合わされると共に、前記偏心軸線を中心として配置された入力用内輪部と、前記入力用内輪部を径方向の外側から囲むように配置された入力用外輪部と、
前記入力用内輪部と前記入力用外輪部との間に転動可能に保持された複数の入力用ボールと、を備え、
前記内歯車は、前記入力用外輪部に対して一体に組み合わされている、伝動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の伝動装置において、前記出力軸は、前記外歯車に対して一体的に形成されている、伝動装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「プラスチックからなる内接噛合型遊星歯車増減速機(審決注:印刷標準字体の「ゴウ」を簡易慣用字体の「噛」と表記した。以下、同様。)において、
偏心体が一体に形成された入力軸と、該偏心体に嵌合された揺動体と、該揺動体に取り付けられた内歯歯車と、前記揺動体に一体に形成された内ピンと、出力軸の端部に一体に形成され、前記内歯歯車と噛合する外歯歯車と、出力軸を支持する軸受部を有する一方側のケーシングと、該一方側のケーシングと嵌合する外側ケーシングと、該外側ケーシングに形成され、前記内ピンが挿入される内ピン穴とからなることを特徴とする内接噛合型遊星歯車増減速機。」(特許請求の範囲 請求項3)
(2)「第6図及び第7図は本発明の更に他の実施例を示すものであり、この実施例では入力軸71(審決注:「出力軸71」の誤記。)に一体形成されたフランジの外周に外歯72を形成して外歯歯車73とし、入力軸74に一体形成された偏心体75に揺動回転自在に嵌合された揺動体76に内歯歯車77を取り付けてなるものである。揺動体76に内ピン78が一体に形成されており、該内ピン78は外側ケーシング79に形成された内ピン穴に挿入されている。内歯歯車77の側面には突起77Aが形成されており、該突起77Aは揺動体76の外周付近に形成された凹部76Aに嵌入されて内歯歯車77が揺動体76に固定される。外側ケーシング79には一方側のケーシング81が嵌合されており、該一方側のケーシング81には出力軸が支持される筒状の軸受部81Aが形成されている。
この実施例では、入力軸74の回転が偏心体75を介して揺動体76に設けられた内歯歯車77の減速揺動回転となって現われ、該内歯歯車77の揺動回転は外歯歯車73の減速回転となる。そして、外歯歯車73の減速回転は出力軸71から取り出される。」(第5頁左上欄第17行―右上欄第19行)

(3)「



(4)「



(5)上記(1)の「内接噛合型遊星歯車増減速機」及び上記(2)の「該内歯歯車77の揺動回転は外歯歯車73の減速回転となる」によれば、引用文献1には、「内接噛合型遊星歯車減速機」が記載されていると認められる。

(6)上記(3)の図示内容(図面中央の一点鎖線、及び、「e」で示された線を参照。)によれば、「入力軸74の軸線」及び「偏心体75の偏心軸線」を看取することができる。

(7)上記(5)及び(6)の認定事項によれば、上記(2)の「入力軸74」は、「伝達された動力によって軸線回りに回転する」ものであり、上記(2)の「出力軸71」は、「入力軸74の軸線周りに回転する」ものと認められる。

(8)上記(2)の「内歯歯車77」は、上記(5)ないし(7)及び上記(4)の図示内容によれば、「入力軸74の軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されるとともに、入力軸74の回転に伴って作動し、且つ偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する」ものであると認められる。

(9)上記(2)の「外歯歯車73」は、上記(5)ないし(7)及び上記(4)の図示内容によれば、「入力軸74の軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する」ものであると認められる。
また、上記「外歯歯車73」は、上記(3)の図示内容によれば、「揺動体76の内ピン78が一体に形成された面と反対側の面に向かい合うように配置される」ものと認められる。

(10)上記(5)、(8)及び(9)の認定事項によれば、「外歯歯車73」の「外歯」は、「内歯歯車77」の「内歯の歯数とは異なる歯数とされ」るものと認められる。

(11)上記(2)の「揺動体76に」「一体に形成され」た「内ピン78」は、上記(2)の「該内ピン78は外側ケーシング79に形成された内ピン穴に挿入されている。」及び「入力軸74の回転が偏心体75を介して揺動体76に設けられた内歯歯車77の減速揺動回転となって現われ、該内歯歯車77の揺動回転は外歯歯車73の減速回転となる。」の記載によれば、「内歯歯車77の自転を拘束することで揺動回転するように内歯歯車77を案内する」ものであると認められる。

(12)上記(2)の「内歯歯車77」は、上記(3)及び(4)の図示内容によれば、「外歯歯車73を径方向の外側から囲む」ものであると認められる。

(13)上記(2)の「揺動体76」は、上記(3)の図示内容によれば、「外側ケーシング79に向かい合うように配置され」るものと認められる。

(14)上記(2)の「内ピン穴」は、上記(3)及び(4)によれば、「80」で図示されるものであり、「揺動体76の内ピン78が一体に形成された面に向かい合うように配置される」ものと認められる。

したがって、上記(1)ないし(4)の記載事項、及び、上記(5)ないし(14)の認定事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「プラスチックからなる内接噛合型遊星歯車減速機であって、
伝達された動力によって軸線回りに回転する、偏心体75が一体に形成された入力軸74と、
前記偏心体75に嵌合された揺動体76と、
前記揺動体76に取り付けられた内歯歯車77であって、前記入力軸74の軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されるとともに、前記入力軸74の回転に伴って作動し、且つ前記偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する内歯歯車77と、
前記揺動体76に一体に形成された内ピン78であって、前記内歯歯車77の自転を拘束することで揺動回転するように前記内歯歯車77を案内する内ピン78と、
前記内歯歯車77と噛合する外歯歯車73であって、前記揺動体76の前記内ピン78が一体に形成された面と反対側の面に向かい合うように配置されるとともに、前記入力軸74の軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する外歯歯車73と、
端部に前記外歯歯車73が一体に形成され、前記入力軸74の軸線周りに回転する出力軸71と、
前記出力軸71を支持する軸受部81Aを有する一方側のケーシング81と嵌合する外側ケーシング79と、
前記外側ケーシング79に形成され、前記内ピン78が挿入される内ピン穴80と、を備え、
前記外歯歯車73の外歯は、前記内歯歯車77の内歯の歯数とは異なる歯数とされ、
前記内歯歯車77は、前記内歯が設けられ、前記外歯歯車73を径方向の外側から囲むものであり、前記揺動体76は、前記外側ケーシング79に向かい合うように配置され、外周付近に前記内歯歯車77が固定されたものであり、
前記内ピン穴80は、前記揺動体76の前記内ピン78が一体に形成された面に向かい合うように配置されるものである、
内接噛合型遊星歯車減速機。」

2 引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の請求項1及び段落[0012]−[0014]には、次の事項が記載されていると認められる。

(1)「偏心体が形成され入力軸に接続された駆動偏心体軸と、偏心体が形成され入力軸に接続されない従動偏心体軸と、該各偏心体軸が嵌合する外歯歯車と、該外歯歯車に噛み合う内歯歯車とを有し、前記駆動偏心体軸の回転により前記外歯歯車を揺動させ、前記駆動偏心体軸の入力回転を前記外歯歯車または前記内歯歯車の出力回転に変換する偏心揺動型減速機において、前記従動偏心体軸の軸に偏心体を滑り嵌合したことを特徴とする偏心揺動型減速機。」(特許請求の範囲 請求項1)

(2)「各外歯歯車3a、3b、3cの周辺には、等配的に3個の穴が形成され、各穴に従動偏心体軸20が嵌合している。従動偏心体軸20は駆動偏心体軸10と同様に、基体1と蓋体2とにそれぞれ固定された二つの玉軸受け21a、21bにより回転可能に支持される軸20dと、3個の偏心体20a、20b、20cとからなり、各偏心体20a、20b、20cは、それぞれ外歯歯車3a、3b、3cに軸受け22a、22b、22cを介して嵌合している。偏心体20a、20cは同一の偏心位相であり、駆動偏心体10a、10cと同一の偏心位相であり、偏心体20bは、駆動偏心体10bの偏心位相と同一である。」(段落[0012])

(3)「この従動偏心軸20の偏心体のうち、偏心体20bは軸20dと一体的に形成されているが、偏心体20a、20cは、偏心軸穴を形成した円板を軸20dに滑り嵌合したものである。なお、滑り嵌合とは、組み立て時軸に嵌合できる程度の隙間を持ったものを言う。」(段落[0013])

(4)「各外歯歯車3a、3b、3cは、筒状ケーシングの内面に取り付けられたピンからなる内歯歯車4のピン4aすなわち内歯に噛み合っている。内歯歯車4は、基体1及び蓋体2に取り付けられた軸受け5a、5bにより回転自在に支承され、駆動偏心体軸10の回転により揺動する各外歯歯車3a、3b、3cにより回転され、その回転を出力部材(図示せず)に伝達する。」(段落[0014])

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、まず、引用発明の「入力軸74」は、本願発明1の「入力軸」に相当し、以下同様に、「内歯歯車77」は「内歯車」又は「歯車本体」に、「外歯歯車73」は「外歯車」に、「出力軸71」は「出力軸」に、「内ピン78」は「案内部材」に、「内ピン穴80」は「収容凹部」に、「プラスチックからなる内接噛合型遊星歯車減速機」は「伝動装置」に、それぞれ相当する。

イ 引用発明の「伝達された動力によって軸線回りに回転する、偏心体75が一体に形成された入力軸74」は、本願発明1の「伝達された動力によって軸線回りに回転する入力軸」に相当する。

ウ 引用発明の「前記偏心体75に嵌合された揺動体76」は、「内歯歯車77」を「取り付け」たものであって、「一体に形成された内ピン78」を介して「前記内歯歯車77の自転を拘束することで揺動回転」させるものであるから、本願発明1の「内歯車プレート」に相当する。

エ 引用発明の「前記揺動体76に取り付けられた内歯歯車77であって、前記入力軸74の軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されるとともに、前記入力軸74の回転に伴って作動し、且つ前記偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する内歯歯車77」は、本願発明1の「前記軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されると共に、前記入力軸の回転に伴って作動し、且つ前記偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する内歯車」に相当する。

オ 引用発明の「前記内歯歯車77の自転を拘束することで揺動回転するように前記内歯歯車77を案内する内ピン78」は、本願発明1の「前記内歯車の自転を拘束することで、前記軸線を中心として偏心揺動するように前記内歯車を案内する案内部材」に相当する。

カ 引用発明の「外歯歯車73」につき「前記揺動体76の前記内ピン78が一体に形成された面と反対側の面に向かい合うように配置」は、本願発明1の「外歯車」につき「前記内歯車に対して前記軸線方向の一方側で向かい合うように配置」に相当する。
そうすると、引用発明の「前記内歯歯車77と噛合する外歯歯車73であって、前記揺動体76の前記内ピン78が一体に形成された面と反対側の面に向かい合うように配置されるとともに、前記入力軸74の軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する外歯歯車73」は、本願発明1の「前記内歯車に対して前記軸線方向の一方側で向かい合うように配置されると共に、前記軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の前記内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する外歯車」に相当する。

キ 引用発明の「端部に前記外歯歯車73が一体に形成され、前記入力軸74の軸線周りに回転する出力軸71」は、本願発明1の「前記外歯車の回転に伴って前記軸線回りに回転する出力軸」に相当する。

ク 引用発明の「前記外歯歯車73の外歯は、前記内歯歯車77の内歯の歯数とは異なる歯数とされ」は、本願発明1の「前記外歯は、前記内歯の歯数とは異なる歯数とされ」に相当する。

ケ 引用発明の「前記内歯歯車77は、前記内歯が設けられ、前記外歯歯車73を径方向の外側から囲むものであり、前記揺動体76は、」「外周付近に前記内歯歯車77が固定されたものであ」ることは、本願発明1の「前記内歯車は、前記内歯が設けられ、前記外歯車を径方向の外側から囲む歯車本体と、」「外周縁部側に前記歯車本体が形成された内歯車プレートと」「を備え」ることに相当する。

コ 引用発明の「前記内ピン78が」「内ピン穴80」に「挿入される」ことは、本願発明1の「前記案内部材は、前記収容凹部内に配置される」ことに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点1〜3で相違すると認められる。

(一致点)
「伝達された動力によって軸線回りに回転する入力軸と、
前記軸線に対して偏心した偏心軸線を中心として配置されると共に、前記入力軸の回転に伴って作動し、且つ前記偏心軸線回りを周回する周方向に間隔をあけて配置された複数の内歯を有する内歯車と、
前記内歯車に対して前記軸線方向の一方側で向かい合うように配置されると共に、前記軸線回りに回転可能に配置され、且つ複数の前記内歯に対して噛み合い可能な複数の外歯を有する外歯車と、
前記外歯車の回転に伴って前記軸線回りに回転する出力軸と、
前記内歯車の自転を拘束することで、前記軸線を中心として偏心揺動するように前記内歯車を案内する案内部材と、を備え、
前記外歯は、前記内歯の歯数とは異なる歯数とされ、
前記内歯車は、
前記内歯が設けられ、前記外歯車を径方向の外側から囲む歯車本体と、
外周縁部側に前記歯車本体が形成された内歯車プレートと、
を備え、
前記案内部材は、収容凹部内に配置される、伝動装置。」

(相違点1)
本願発明1は、「案内部材」が「前記内歯車に対して前記軸線方向の他方側で向かい合うように配置された固定プレートに固定され」るとともに、「収容凹部」が「少なくとも前記固定プレート側に開口するように、前記内歯車プレートに形成された」のに対して、
引用発明は、「内ピン78」が「前記揺動体76に」「形成され」るとともに、「内ピン穴80」が「前記出力軸71を支持する軸受部81Aを有する一方側のケーシング81と嵌合する外側ケーシング79」「に形成され」「前記揺動体76の前記内ピン78が一体に形成された面に向かい合うように配置されるものである」点。

(相違点2)
本願発明1は、「内歯車プレート」が「前記固定プレートに対して向かい合うように配置され」るのに対して、
引用発明は、「揺動体76」が「前記外側ケーシング79に向かい合うように配置され」る点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記案内部材は、」「前記収容凹部の内壁面に対して内接可能なガイド部を備え、」「前記ガイド部は、前記収容凹部の中心線に対して、前記軸線と前記偏心軸線との間の偏心量分だけ偏心するように前記収容凹部内に配置されている」ものであるのに対して、
引用発明1は、「前記内ピン78が」「内ピン穴80」に「挿入される」ものの、上記「ガイド部」に相当する構成を備えていない点。

(2)判断
事案に鑑み、上記相違点1及び3について併せて検討する。
(相違点1及び3)
上記相違点1及び3に係る本願発明1の構成は、従来の減速機の、外歯車と出力軸との間に設けたスプライン手段(外歯車の自転成分のみを取り出す。)に代えて、内歯車を偏心揺動させる「案内部材」及び「収容凹部」に係るものである(本願明細書の段落[0006][0008]〜[0011])。
そして、本願発明1の上記構成は、「内歯車」、「外歯車」及び「案内部材」の構成と相まって「部品点数を抑制したシンプルな構造にすることができ、伝動装置全体の小型化及び薄型化を図る」ものであって(段落[0011])、当該「案内部材」を固定する手段として「固定プレート」を採用する。
また、本願発明1の上記構成は、「内歯車をがたつき少なく安定させた状態で偏心揺動させる」ために、「収容凹部の内壁面に対して内接可能」であり「収容凹部の中心線に対して、軸線と偏心軸線との間の偏心量分だけ偏心する」「ガイド部」を採用する(段落[0013])。
一方、引用発明の「内ピン78」及び「内ピン穴80」は、前者が後者に挿入されることで、「前記内歯歯車77の自転を拘束することで揺動回転するように前記内歯歯車77を案内する」ものである。
しかしながら、引用発明には、「前記出力軸71を支持する軸受部81Aを有する一方側のケーシング81と嵌合する外側ケーシング79」を「プレート」の態様に変更した上で、「内ピン穴80」に代えて「内ピン78」を形成するとともに、「内ピン78が挿入される内ピン穴80」の態様について、「内歯歯車77」の「揺動回転」を「がたつき少なく安定させた状態」で行うように変更する動機付けを見いだすことはできない。
また、引用文献2には、偏心揺動型減速機において、駆動偏心体軸10の回転により、各外歯歯車3a、3b、3cを揺動させることは記載されている(上記第4の2参照)。しかしながら、上記各外歯歯車3a、3b、3cの揺動について、本願発明1のように、「前記収容凹部の内壁面に対して内接可能なガイド部」でもって案内する「案内部材」の構成は、引用文献2には記載されていない。
そうすると、上記相違点1及び3に係る本願発明1の構成は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、上記相違点2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2〜7について
本願発明2〜7は、本願発明1の下位概念の発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2の記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-25 
出願番号 P2020-029475
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 内田 博之
岡本 健太郎
発明の名称 伝動装置  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 西澤 和純  

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