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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1387322
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-18 
確定日 2022-07-19 
事件の表示 特願2017−208993「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月30日出願公開、特開2019− 80689〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成29年10月30日の出願であって、令和2年2月3日に手続補正書が提出され、同年8月24日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月26日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年2月22日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年8月11日付け(送達日:同年同月20日)で、拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年11月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1、2のうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年4月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(記号A〜Fは、分説するために当審で付した。)。
「A 抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、発光体が実装される複数の装飾基板と、動作可能な可動装飾体と、を備える遊技機であって、
B 前記複数の装飾基板のうち前記可動装飾体に設けられる特定の装飾基板は、
B1 発光体が実装される表実装面と発光体が実装されない裏実装面と、
B2 発光体を特定する第1表記部と、
B3 前記表実装面に形成される白色塗膜と、
B4 当該特定の装飾基板への配線を接続するコネクタと、
を有し、
C 前記表実装面の白色塗膜上には、
C1 白色のパッケージを有する発光体と、
C2 白色と異なる明色を有する前記第1表記部と、
が配置され、
D 前記明色は黄色であり、
E 発光体が実装されない前記裏実装面には白色塗膜が形成されると共に、該裏実装面に実装される電子部品を特定する第2表記部が白色塗膜上に黄色で形成される、
F ことを特徴とする遊技機。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概ね次のとおりである。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・請求項 1、2
・引用文献等:1〜7、または、8、2〜7

<引用文献等一覧>
1.特開2006−141683号公報
2.ALLPCB,"White Soldermask is Commonly Used in LED PCB Applications",[online],2017年 2月21日,INTERNETARCHIVE waybackmachine,[2020年12月7日検索],インターネット<URL,https://web.archive.org/web/20170221212558/https://www.allpcb.com/soldermask/white_soldermask.html>
3.STM32F4基板,OSQZSS[online],2014年 3月 8日,[2020年1月22日検索],インターネット<URL,https://blog.goo.ne.jp/osqzss/e/5509fd23c1672827a8f81e4bad56f816>
4.特開2013−258161号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2009−200403号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2012−245398号公報(周知技術を示す文献)
7.特開2013−118169号公報(周知技術を示す文献)
8.特開2012−507号公報

4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2006−141683号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。
ア 記載事項
(ア)
「【0006】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、外部への光の放射効率の向上を図ることができ、しかも熱源が発する熱による悪影響を低減することができる表示用基板を提供することを目的とするものである。」

(イ)
「【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本願に係る発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態である遊技機の概略正面図、図2はその遊技機の概略制御ブロック図である。ここでは、遊技機が、いわゆるパチスロ機といわれる回胴式遊技機である場合について説明する。」

(ウ)
「【0029】
電飾表示部40は、各種の遊技状態を報知したり、遊技の演出を行ったりするものである。かかる電飾表示部40は、図1及び図2に示すように、三つのトップLEDユニット41a,41b,41cと、八つのパネルLEDユニット42a,42b,・・・,42hと、三つのバックライト(不図示)と、冷陰極管(不図示)と、三つのトップLED基板44a,44b,44cと、八つのパネルLED基板45a,45b,・・・,45hと、三つのバックライト基板46a,46b,46cと、冷陰極管基板47とを有する。
【0030】
三つのトップLEDユニット41a,41b,41cはそれぞれ、前扉の内側上部の左側、中央、右側に設けられている。これらのトップLEDユニット41a,41b,41cは、それぞれトップLED基板44a,44b,44cに搭載されており、演出制御基板80に搭載されたLED用の駆動回路(不図示)により駆動される。」

(エ)
「【0041】
また、CPU73は、遊技状態の管理をも行っている。本実施形態の回胴式遊技機では、遊技機の遊技状態として、「BB未作動時の一般遊技状態」、「BB内部中状態」、「RB内部中状態」、「BB作動時の一般遊技状態」等の各種の遊技状態が設定されている。CPU73は、役の抽選結果に基づいて遊技状態の移行を制御する。」

(オ)
「【0047】
次に、演出制御基板80により点灯が制御されるLED基板について説明する。本実施形態には、各種のLED基板44a〜44c,45a,45b〜45hが配置されているが、どのLED基板も、同じ特徴を備えているので、以下では、トップLED基板44cを例に挙げて説明する。なお、以下では、このトップLED基板44cを、単にLED基板44cとも称する。図3は、本実施形態のLED基板44cの一例を示す概略正面図、図4はその概略裏面図である。なお、図4に示す概略裏面図は、説明を簡易にするために、LED基板44cを正面から透視したときの裏面に配列された電子部品の配置状態を示している。また、図3に示すLED基板44cは、実際に遊技機に取着するときには、カラーLED10120や赤色LED10310が配置されている、幅の広い方の基板端部を上に、幅の狭い方の基板端部を下にして遊技機に取着する。」

(カ)
【図3】の部分拡大図




(キ)
【図4】の部分拡大図




(ク)
「【0048】
本実施形態のLED基板44cの表面には、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜(以下、この薄膜をレジスト薄膜とも称する。)111が形成されている。また、本実施形態のLED基板44cの表面には、トップLEDユニット41cとして、図3に示すように、20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310とが搭載されている。また、LED基板44cの表面には、演出制御基板80と接続するためのコネクタ110が配置されている。
【0049】
本実施形態のLED基板44cの裏面には、図4に示すように、カラーLED101に流れる電流を制御するための20個の電流制限抵抗105と、赤色LEDに流れる電流を制御するための1個の電流制限抵抗107と、カラーLED101の発光素子を保護するためのツェナーダイオード109とが配置されている。」

(ケ)
「【0053】
本実施形態の遊技機に電源を投入すると、LED基板44c等も点灯駆動される。本実施形態のLED基板44cでは、各LED101,103の発光素子から発せられた光は、各LEDの表面に配置されたレンズ等を通って、遊技機前面の外部に放射される。また、発光素子が発した光のうちの一部の光は、レンズ表面等により反射されて、再びLED基板に戻り、LED基板の表面に形成された白色のレジスト膜により反射されて遊技機前面の外部に放射される。
【0054】
上記の本実施形態によれば、LED基板の表面に白色のレジスト膜111を形成し、カラーLED101と赤色LED103とを表面に配置し、電流制限抵抗105,107やツェナーダイオード109を裏面に配置したので、基板の表面に、従来のLED基板に比べて白色のレジスト膜のための広い領域を確保でき、したがって発光素子が発した光を効率よく反射して遊技機の外部に放射することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、LEDを表面に、電流制限抵抗を裏面に分散配置したことにより、従来のLED基板に比べて、電流制限抵抗同士の間を広く開けて熱源の集中を避けることができる。したがって、本実施形態によれば、電流制限抵抗の発熱による発光素子等への悪影響を低減して、発光素子の長寿命化を図ることができる。更に、LEDを表面に、電流制限抵抗を裏面に配置することにより、従来のLED基板に比べて、部品を配置するスペースに余裕ができ、部品レイアントが容易になる。」

(コ)
「【0057】
また、上記の実施形態では、本発明を、遊技媒体としてメダルを使用した回胴式遊技機に適用した場合について説明したが、例えば、パロット機、パチロット機等と称される、遊技媒体としてパチンコ球を使用したスロットマシン遊技機に適用してもよい。更に、本発明をパチンコ遊技機に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明の表示用基板によれば、表面に光源を配置し、光源の点灯制御に用いる電子部品を裏面に配置したことにより、表面に形成された、光を反射するための薄膜の表面積を大きくして、光源が発する光を効率よく反射して、外部に放射することができる。また、光源の点灯制御ために用いる電子部品を裏面に分散配置したことにより、熱源となる電子部品の間隔を十分に離して配置することができるので、熱源となる電子部品が発する熱による光源等への悪影響を低減することかできる。したがって、本発明は、回胴式遊技機等の遊技機の表示用基板に適用することができる。」

イ 認定事項
(ア)引用文献1の【0048】の「LED基板44cの表面には、・・・図3に示すように、20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310とが搭載されている。」との記載、および、【図3】の図示内容からみて、引用文献1には、「トップLED基板44cは、表面の各LEDのそれぞれの近傍に付された電子部品番号(U1ないしU20、LED1ないしLED10)を有する」こと(以下「認定事項(ア)」という。)が示されていると認められる。

(イ)一般的なLEDやコネクタがケーシングを有することは技術常識であり、当該技術常識を踏まえて図3を参酌すれば、各LED(カラーLED1011〜10120、赤色LED1031〜10310)が、ケーシングを有することは明らかである。
そうすると、引用文献1の上記【0048】の記載、および、【図3】の図示内容からみて、「トップLED基板44cの表面に搭載された各LEDは、ケーシングを有する」こと(以下「認定事項(イ)」という。)について示されていると認められる。

(ウ) 引用文献1の【0049】の「トップLED基板44cの裏面には、図4に示すように、カラーLED101に流れる電流を制御するための20個の電流制限抵抗105と、赤色LEDに流れる電流を制御するための1個の電流制限抵抗107と、カラーLED101の発光素子を保護するためのツェナーダイオード109とが配置されている。」との記載、および、【図4】の図示内容からみて、引用文献1には、「トップLED基板44cの裏面には、電流制限抵抗105,107、ツェナーダイオード109のそれぞれの近傍に付された電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)が表示される」こと(以下「認定事項(ウ)」という。)が示されていると認められる。

ウ 引用発明
上記アの記載事項および上記イの認定事項によると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a〜fは、本願発明のA〜Fに概ね対応させて付与した。)。
「a 役の抽選結果に基づいて遊技状態の移行を制御し(【0041】)、 トップLEDユニット41a,41b,41cと、演出制御基板80により点灯が制御されるトップLED基板44a,44b,44cを有する各種の遊技状態を報知したり遊技の演出を行ったりする電飾表示部40(【0029】、【0047】)を備え、
トップLED基板44a,44b,44cの表面には、それぞれトップLEDユニット41a,41b,41cとして、カラーLEDと赤色LEDが搭載されている(【0030】、【0047】、【0048】)
回胴式遊技機(パチスロ機)(【0013】)であって、
b、c トップLED基板44cは、
b1 20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310と、コネクタ110とが搭載された表面(【0048】)と、カラーLED101に流れる電流を制御するための20個の電流制限抵抗105と、赤色LEDに流れる電流を制御するための1個の電流制限抵抗107と、カラーLED101の発光素子を保護するためのツェナーダイオード109とが配置された裏面(【0049】)と、
b2、c2 表面の各LEDのそれぞれの近傍に付された電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)(認定事項(ア))と、
b3 外部への光の放射効率の向上を図るために(【0006】)、トップLED基板44cの表面に形成された、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111(【0048】)と、
を有し、
b4 トップLED基板44cの表面に演出制御基板80と接続するためのコネクタ110が配置され(【0048】)、
c1 トップLED基板44cの表面に搭載された各LEDは、ケーシングを有し(認定事項(イ))、
e トップLED基板44cの裏面には、電流制限抵抗105,107、ツェナーダイオード109のそれぞれの近傍に付された電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)が表示された(認定事項(ウ))
f 回胴式遊技機(パチスロ機)(【0013】)。」

(2)引用文献2について
引用文献2には、「White Soldermask is Commonly Used in LED PCB Applications …」(日本語訳)「白色のソルダーマスクが、LEDプリント基板の分野において、一般に用いられている。」と題して、その("Notice")には、「White silkscreen cannot be used if the soldermask is white. You can use black,yellow,red,and other colors,so as to see the characters clearly.」(日本語訳)「LED基板のソルダーマスクが白色である場合には、白色のシルクスクリーンは使用できないこと。文字等を鮮明に見るために、黒色、黄色、赤色、他の色が使えること。」が記載されている。

(3)引用文献3について
引用文献3には、「STM32F4基板」と題して、「・・・最近、白レジスト+パステルカラーのシルクという基板が増えてきた気がします。綺麗なので自分でも試してみたくなりPCBメーカを探したのですが、カラーのシルクに対応しているところが見つかりません。
たまたまあった黄色を今回は選んでみたのですが、コレジャナイ感がハンパない・・・」ことが、ブログ形式で記載されている。

5 周知例の記載及び周知技術
(1)周知技術1
ア 特開2017−60569号公報
「【0018】
本発明が適用された遊技機であるスロットマシンの実施例について図面を用いて説明すると、本実施例のスロットマシン1は、図1に示すように、前面が開口する筐体1aと、この筐体1aの側端に回動自在に枢支された前面扉1bと、から構成されている。」

「【0148】
図14及び図15に示すように、可動体302は、可動ベース320と、可動ベース320の上面を被覆するカバー体321と、から主に構成される。可動ベース320は、ベース本体360と、ベース本体360内部に固定される回転ベース361と、回転ベース361の上方に固定される基板ベース362と、ベース本体360の上部に取付けられ、回動軸322及び連結軸325を有する枠部材363と、を有する。
【0149】
回転ベース361には、演出用モータ370と、演出用モータ370の駆動軸に固着される第1ギヤ371に噛合するリング状の第2ギヤ372と、第2ギヤ372が回転可能に環装される上下方向を向く回転軸部373と、回転軸部373の上面に取付けられ、上面に複数の演出用LED374が設けられたLED基板374Aと、LED基板374Aの上方を覆う透光性部材からなるレンズカバー375と、を有している。」

「【0151】
第2ギヤ372の上部には、リング状の取付部材380を介して回転体381が取付けられている。回転体381は、中央に孔部382が形成されたベース部材381Aと、ベース部材381Aの上面に立設される演出部材381Bと、から構成され、演出用モータ370により第1ギヤ371、第2ギヤ372が回転することで、ベース部材381Aと演出部材381Bとからなる回転体381は、回転ベース361に対し上下方向を向く回転軸部373を中心として360度以上、水平方向に回転可能に支持されている(図16参照)。」

「【0160】
また、演出用LED374を点灯して回転体381を一方向へ向けて360度以上回転させることで、リフレクタ387により側方に向けて反射した光を、水平方向に回転させることができるため、演出効果が向上する。この場合も、演出用LED374はベース部側に設けられて移動することはないので、回転体81側に演出用LED374を設けなくて済む。」

「【図16】


イ 特開2009−50527号公報
「【0001】
本発明は、内部抽選結果が特定結果となった場合に、特定の図柄組合せ態様を形成し得るように複数のリールの停止制御を行うように構成したスロットマシンに関する。」

「【0007】
しかしながら、近年のスロットマシンは、多彩な演出を行うことで遊技者のみならず、周囲の人に対しても入賞フラグの成立を知らせることが主流であり、このような演出を行うことで遊技店全体を活気付け、集客を行うことが効果的である。
また、遊技者に関しても周囲の人に対して入賞フラグが成立したことをアピールでき、優越感に浸ることができるため、多彩な演出で入賞フラグ成立を祝福するとその後の遊技に対するモチベーションも変わってくる。」

「【0084】
図9は、ガトリング役物ユニット330を背面から見た分解斜視図である。
・・・
【0101】
このように、ガトリング役物ユニット330は、回転体ユニット338の動作とガトリング用LED基板333からの発光、及び回転体ユニット338の動作に伴う発光態様の変化により、内部抽選結果が特定結果となったことを報知する。このとき、回転体ユニット338の回転動作によってガトリング用LED基板333から照射された光の発光態様は大きく変化することとなる。」

「【図9】



ウ 小括
上記ア、イに示したように、スロットマシンを含む遊技機の技術分野において、演出効果を向上させるために、可動体を備え、当該可動体にLED基板を設ける遊技機(スロットマシン)は、本願出願前に周知の技術事項(以下「周知技術1」という。)である。

(2)周知技術2
ア 特開2013−258161号公報
「【0102】
図40〜図42は、LEDランプA11に用いられるLEDモジュール103の他の変形例を示している。この変形例においては、LEDモジュール103は、ケース135を備えている。ケース135は、たとえば白色樹脂からなり、LEDチップ131および樹脂パッケージ132を囲む反射面135aを有している。反射面135aは、LEDチップ131から側方に進行する光を反射することにより上方に向かわせるためのものである。このため、このLEDモジュール103は、比較的高輝度のタイプに属する。LEDモジュール103は、その平面視寸法が4.0mmx2.0mm、高さが0.55mm程度とされている。この場合、隣り合うLEDモジュール103どうしの隙間を0.5mmとすれば、基板101の面積に対するLEDモジュール103の合計面積の占有割合を70%程度に高めることができる。」





イ 特開2009−200403号公報
「【0015】
以下、この発明の実施の形態につき図例を参照しながら説明をする。
図1(A)は実施例の発光装置1を正面から見た斜視図であり、同じく図1(B)は背面からみた斜視図である。図2は6面図であり、(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図、(E)は底面図、(F)は背面図である。また、図3は図2(C)におけるIII-III線断面図、図4は図2(A)におけるIV-IV線断面図、図5は図2(A)におけるV-V線断面図である。
図1に示すように、実施例の発光装置1は筐体部10、第1のリード部材30、第2のリード部材40、及びLEDチップ60を備えてなる。
図1及び図3に示されるように、筐体部10は反射ケース11と端子保持部20とからなる。反射ケース11は薄幅なカップ形状であり、その凹部13の内周面が反射面15とされている。
凹部には封止材14としてシリコーン樹脂が充填され、このシリコーン樹脂には蛍光体が均一に分散されている。この蛍光体としてLEDチップ60からの青色光を吸収して黄色系の光を放出するYAG系またはBOS系など、既知のものを採用することができる。
反射面15は側壁反射部155と底部反射部156(白色反射層)からなる。これら反射部155、156は筐体部10と一体的に白色樹脂で形成されている。
【0016】
この反射面15は全体的に椀状の曲面であり、曲面の中心点にLEDチップ60が配置される。反射面の全面を椀状の曲面とすることにより、LEDチップ60から横方向へ放出される光が反射ケース11の光軸方向へ効率よくかつ均一に反射される。」

「【図3】



ウ 小括
上記ア、イに示したように、LEDを用いた発光装置の技術分野において、LEDの樹脂ケースを白色樹脂で形成することは、本願出願前に周知の技術事項(以下「周知技術2」という。)である。

(3)周知技術3
ア 特開平11−54896号公報
「【0080】実施形態例2
第2の発明の実施形態例にかかるプリント配線板について,図9〜図13を用いて説明する。本例のプリント配線板8は,図9に示すごとく,接続端子6を接合するためのパッド5を有する。パッド5は,絶縁基板7の表面に設けられている。絶縁基板7の表面は,パッド5の外周縁502を含めて,黒色のソルダーレジスト層2が形成されている。
・・・
【0085】また,図10,図13に示すごとく,ソルダーレジスト層2は,ボンディングパッド54,スルーホール52及びサーマルビアホール50の開口部周辺を除いて,絶縁基板7の表面及び裏面の全体を被覆している。ソルダーレジスト層2は30μmの厚みを有する。開口穴10は,ソルダーレジスト層2にエキシマレーザーを照射して形成する。」

「【0091】実施形態例3
第3の発明の実施形態例にかかるプリント配線板について説明する。本例のプリント配線板は,白色のソルダーレジスト層を用いている。ソルダーレジスト層は,エポキシ系樹脂60重量%と,酸化チタニウムを主成分とする無機フィラー40重量%とからなる。無機フィラーは,平均粒径が3μmの粉末である。無機フィラーの成分は,58重量%の酸化チタニウムと,1.5重量%のAl2O3 と,0.3重量%のK2Oとからなる。
【0092】なお,ソルダーレジスト層の厚みは40μmである。また,接続端子接合用のパッドは,その外周縁の幅Aが0.100mmである(図9参照)。その他は,実施形態例2と同様である。
【0093】次に,本例の作用及び効果について説明する。ソルダーレジスト層は,酸化チタニウムを含む無機フィラーを含有しているため,熱を吸収しやすい。そのため,ソルダーレジスト層は,電子部品が発する熱を積極的に吸収した後に,遠赤外線を発生し,熱を大気中に速やかに放出する。遠赤外線の発生量は,電子部品の発熱量が大きいほど多くなり,効率よく放熱される。」

「【図面の簡単な説明】
・・・・
【図10】図11,図12のB−B線矢視断面を示す,実施形態例2のプリント配線板の断面図。
・・・」

「【図10】




イ 特開2010−20264号公報
「【0073】
上記ベースポリマー(A)、エチレン性不飽和化合物(B)および光重合開始剤(C)とともに用いられる顔料(D)は、感光性樹脂組成物を白色に着色するものであれば特に限定されないが、典型的には、ルチル型、アナターゼ型などの各種の酸化チタンが使用できる。なかでもルチル型酸化チタン顔料が少量で反射率を確保できるので好ましい。また、レジスト樹脂中での分散を安定させる目的で、顔料粒子に表面処理を行うことが一般的である。市販の酸化チタンとしては、例えば、タイトーンSR−1、同R−650、同R−3L、同A−110、同A−150、同R−5N(以上、堺化学工業(株)製)、タイペークR−580、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58(以上、石原産業(株)製)、クロノスKR−310、同KR−380、同KR−480、同KA−10、同KA−20、同KA−30(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同R−931(デュポン・ジャパン・リミテッド社製)、チタニックスJR−300、同JR−600A、同JR−800、同JR−801(以上、テイカ(株)製)、等が挙げられる。」

「【0097】
本発明のソルダーレジストフィルムのレジスト層SRは、回路基板21のLED実装面に少なくとも積層されていれば良く、LEDを実装しない面については、本発明のソルダーレジストフィルムのレジスト層SRを用いてもよく、或いは他のソルダーレジストフィルムや液状ソルダーレジストを用いてもよい。」

「【0149】
【図1】表面実装型LEDが搭載された発光装置を模式的に示す断面図である。」

「【図1】




ウ 小括
上記ア、イに示したように、回路基板の技術分野において、放熱効率を高めたり、反射率を高めるために、基板の両表面に白色のレジスト膜を形成することは、本願の出願前に周知の技術事項(以下「周知技術3」という。)である。

(4)周知の課題
特開2003−198092号公報(引用文献1に従来技術として提示された文献)には、次の記載がある。
「【発明の属する技術分野】この発明はパチンコ機におけるランプ、LED等表示部品、電気部品を組み付けるプリント配線基板の前面を改良して表示効果を向上し、表示部品の装着を簡単とするパチンコ機における表示基板構造に関する。」

「【0014】プリント配線基板50にマスキング処理を行う作業工程について説明する。マスキング処理の第1の方法。マスキングを行う材料は、UV硬化樹脂材、基板上にUV硬化樹脂材を貼着(塗布)してマスキング面が形成される。貼着したUV硬化樹脂に対し紫外線を投射してマスキング処理面54が定着される。マスキング処理の第2の方法。熱可塑性シートをプリント配線基板50上に貼着してマスキング処理面を形成し、熱を投射してマスキング処理面54が定着される。マスキングを行う材料にはインク、顔料を混入して適正な色彩を調合する。マスキング面を白色、白系とすることにより光、拡散、投射、反射機能をはかる。」

「【0025】
【発明の効果】この発明によれば、プリント配線基板の取付け孔と導体面を除く全面にマスキング処理を施すことにより絶縁保護機能を高め、基板とプリント配線部分との色彩の差をなくしてランプ、LED等表示部品の表示時にマスキング面により光を拡散して投射でき、反射機能を生じすることにより表示効果を向上することができ、そのマスキング面に印刷した表示記号、文字を見やすくすることができ、作業能率を向上できる。また、表示部品に取着手段を一体的に形成し、プリント配線基板の取付け孔に簡単に脱着できるとともに、表示部品の取付け孔への嵌着時に表示部品の導線がプリント配線の導体面に接続できるので、表示部品のプリント配線基板上の所定位置への装着を簡便化できる。」

したがって、遊技機に用いられるLED基板において、マスキング面の反射機能の向上、および、マスキング面に印刷した表示記号、文字を視認性の向上を両立させることは、本願の出願前に周知の技術課題(以下「周知の課題」という。)である。

6 対比
本願発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a)
引用発明の「役の抽選結果に基づいて遊技状態の移行を制御」することは、本願発明の「抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行する」ことに相当する。
そして、引用発明の「カラーLEDと赤色LED」、「トップLED基板44a,44b,44c」は、それぞれ、本願発明の「発光体」、「装飾基板」に相当することから、引用発明の「カラーLEDと赤色LEDが搭載されている」「トップLED基板44a,44b,44c」は、本願発明の「発光体が実装される複数の装飾基板」に相当する。
また、引用発明の「回胴式遊技機(パチスロ機)」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
したがって、引用発明の構成aと本願発明の構成Aとは、「抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、発光体が実装される複数の装飾基板」「を備える遊技機」である点で共通する。

(b)
引用発明の「トップLED基板44c」は、構成aによると、「トップLED基板44a,44b,44c」のうちの1つであるといえる。
したがって、引用発明の「トップLED基板44c」と、本願発明の「複数の装飾基板のうち可動装飾体に設けられる特定の装飾基板」とは、「複数の装飾基板のうち特定の装飾基板」であることで共通する。

(b、b1)
引用発明の「20個のカラーLED1011〜10120と、10個の赤色LED1031〜10310と、コネクタ110とが搭載された表面」を有することは、本願発明の「発光体が実装される表実装面」を有することに相当する。
そして、引用発明の「トップLED基板44cは、」「カラーLED101に流れる電流を制御するための20個の電流制限抵抗105と、赤色LEDに流れる電流を制御するための1個の電流制限抵抗107と、カラーLED101の発光素子を保護するためのツェナーダイオード109とが配置された裏面」を有することは、「トップLED基板44c」の裏面には、LEDが配置されていないといえることから、本願発明の「発光体が実装されない裏実装面」を有することに相当する。
したがって、引用発明の構成b1は、本願発明の構成B1に相当する。

(b2)
引用発明の「表面の各LEDのそれぞれの近傍に付され」る「電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)」は、各LEDを特定するための識別番号であるといえるから、本願発明の「発光体を特定する第1表記部」に相当する。
したがって、引用発明の構成b2、c2は、本願発明の構成B2に相当する。

(b3)
上記(b1)より、引用発明の「表面」は、本願発明の「表実装面」に相当する。
引用発明の「表面に形成された、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」を有することは、本願発明の「表実装面に形成される白色塗膜」を有することに相当する。
したがって、引用発明の構成b3は、本願発明の構成B3に相当する。

(b4)
引用発明の「トップLED基板44c」の「表面に演出制御基板80と接続するためのコネクタ110が配置され」ることは、本願発明の「特定の装飾基板への配線を接続するコネクタ」を有することに相当する。
したがって、引用発明の構成b4は、本願発明の構成B4に相当する。

(c、c1)
上記(b3)より、引用発明の「表面に形成された、マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」は、本願発明の「表実装面に形成される白色塗膜」に相当することから、引用発明において、「トップLED基板44c」の「表面」には、本願発明の「白色塗膜」に相当する膜が形成されているといえる。
そして、引用発明の「ケーシング」は、本願発明の「パッケージ」に相当する。
そうすると、引用発明の「表面に搭載された各LEDは、ケーシングを有」することと、本願発明の「表実装面の白色塗膜上には、白色のパッケージを有する発光体」「が配置され」ることとは、「表実装面の白色塗膜上には、パッケージを有する発光体が配置され」ることで共通する。
したがって、引用発明の構成(b、c)、c1と本願発明の構成C、C1は、「表実装面の白色塗膜上には、パッケージを有する発光体が配置され」ることで共通する。

(c、c2)
上記(b2)より、引用発明の「電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)」は、本願発明の「第1表記部」に相当する。
そして、引用発明の「トップLED基板44c」の「表面」には、構成b3によると、「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」が「形成され」ている。
そうすると、引用発明において、「電子部品番号(U1〜U20、LED1〜10)」は、「トップLED基板44c」の「表面に形成された」「白色の」「薄膜111」(構成b3)上に配置され、「薄膜111」と識別可能なものである。
したがって、引用発明の構成(b、c)、(b2、c2)と、本願発明の構成C、C2とは、「表実装面の白色塗膜上には、表実装面と識別可能な第1表記部が配置され」ていることで共通する。

(e)
引用発明の「電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)」は、「トップLED基板の裏面」に配置された「電流制限抵抗105,107、ツェナーダイオード109のそれぞれの近傍に付され」たものであって、本願発明の「裏実装面に実装される電子部品を特定する第2表記部」に相当する。
また、引用発明の「電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)」は、「トップLED基板44c」の「裏面」上に「裏面」と識別可能に表示されるものである。
したがって、引用発明の構成eと、本願発明の構成Eとは、「裏実装面に実装される電子部品を特定する第2表記部が裏実装面と識別可能に形成される」ことで共通する。

(f)
上記(a)より、引用発明の構成fは、本願発明の構成Fに相当する。

上記(a)〜(f)によれば、本願発明と引用発明は、
「A´ 抽選手段による抽選結果に基づいて遊技を進行するとともに、発光体が実装される複数の装飾基板を備える遊技機であって、
B´ 前記複数の装飾基板のうち特定の装飾基板は、
B1 発光体が実装される表実装面と発光体が実装されない裏実装面と、
B2 発光体を特定する第1表記部と、
B3 前記表実装面に形成される白色塗膜と、
B4 当該特定の装飾基板への配線を接続するコネクタと、
を有し、
C 前記表実装面の白色塗膜上には、
C1´ パッケージを有する発光体と、
C2´ 表実装面と識別可能な前記第1表記部と、
が配置され、
E´ 前記裏実装面に実装される電子部品を特定する第2表記部が裏実装面と識別可能に形成される、
F 遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1](構成A、B)
本願発明が、動作可能な可動装飾体を備え、特定の装飾基板が可動装飾体に設けられるのに対して、引用発明は、「トップLED基板44c」「を有する」「電飾表示部40」が可動でない点。

[相違点2](構成C1)
発光体のパッケージの色が、本願発明では、白色であるのに対して、引用発明では、白色であるかどうか不明である点。

[相違点3](構成C2、D)
「第1表記部」に関して、「表実装面の表示色と区別可能な色」が、本願発明では、「黄色」であるのに対し、引用発明では、「トップLED基板44cの表面」と識別可能であるが、「黄色」かどうか不明である点。

[相違点4](構成E)
本願発明は、「発光体が実装されない」(構成B1)「裏実装面には白色塗膜が形成されると共に、該裏実装面に実装される電子部品を特定する第2表記部が白色塗膜上に黄色で形成される」のに対して、
引用発明は、トップLED基板44cの裏面に、表面と同様に、「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」(構成b3)がが形成されるか否か不明であるとともに、「トップLED基板44cの裏面」と識別可能に形成されるが、「電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)」の色が「黄色」かどうか不明である点。

7 当審判合議体の判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
上記5の(1)に周知技術1として示したように、「スロットマシンを含む遊技機の技術分野において、演出効果を向上させるために、可動体を備え、当該可動体にLED基板を設ける」ことは、本願出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明は、構成aに特定される「トップLED基板44c」に搭載された「トップLEDユニット41c」を有する「電飾表示部40」が、「遊技の演出を行ったりする」ものであるから、「電飾表示部40」による「遊技の演出」効果を向上させるという自明の課題を内在するものである。
したがって、引用発明に上記周知技術1を適用して、遊技機に含まれる「回胴式遊技機(パチスロ機)」に可動体を備え、当該可動体にLED基板を設け、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2について
上記相違点2について検討する。
上記5の(2)に周知技術2として示したように、「LEDを用いた発光装置の技術分野において、LEDの樹脂ケースを白色樹脂で形成すること」は、本願出願前に周知の技術事項である。
そして、引用発明は、構成b3に特定されるように「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的とするものである。
したがって、引用発明に上記周知技術2を適用して、カラーLED101と、赤色LED103のケースの色を白色とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(3)相違点3について
上記相違点3について検討する。
引用文献2には、上記4の(2)に示したように、LEDプリント基板に白色のソルダーマスクを形成し、文字等を鮮明に見るために、シルクスクリーンの色として黄色を選択可能であることが記載されている。
また、引用文献3には、上記4の(3)に示したように、プリント基板に白レジストを形成し、パステルカラーのシルクとして黄色を選択可能であることが記載されている。
すなわち、引用文献2や引用文献3は、プリント基板に白色の膜が形成されている場合、その表面に表示されるシルクの色として黄色を選択可能にするという技術事項を示す文献である。
そして、引用発明は、構成b3に特定されるように「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的とするものである。
そうすると、電子部品番号の表示にも、反射率向上を考慮する必要のあることが導かれる。そして、一般に、反射率が明色において高いことは、広く知られていることであり、その中から黄色を選択することに格別の困難性は認められない。
一方、引用発明において、「電子部品番号」は、基板に表示されるものであって、電子部品を識別するための番号であるから、「電子部品番号」の表示色は、視認性の向上のために基板の表面色と異ならせる必要があることも明らかである。
さらに、遊技機の技術分野において、LED基板の表面の反射率の向上および電子部品番号等の視認性の向上とを両立させることは、周知の課題に示されているように、本願出願前から周知の課題である。
これらのことからみて、引用発明に上記引用文献2、3に記載された技術事項を適用して、「色レジストを用いた、光を反射する薄膜111」に表示される「電子部品番号」(U1〜U20、LED1〜10)を黄色のシルクにより形成し、上記相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(4)相違点4について
上記相違点4について検討する。
引用文献1の「本実施形態のLED44c基板の一例を示す概略裏面図である」【図4】には、符号「111」が振られている。
そして、引用文献1において、符号「111」は、引用発明として認定したように「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」を意味するものである。
そうすると、引用発明において、「電流制限抵抗105,107、ツェナーダイオード109」が実装されるが、「LED」の実装されない「トップLED基板44c」の裏面に、表面と同様に「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」が形成されているものと認められる。
この場合、引用文献1には、本願発明の構成Eのうち、「発光体が実装されない前記裏実装面には白色塗膜が形成される」構成について記載されているといえる。

ここでは、別の観点からさらに検討する。
上記5の(3)に周知技術3として示したように、「回路基板の技術分野において、放熱効率を高めたり、反射率を高めるために、基板の両表面に白色のレジスト膜を形成すること」は、本願出願前に周知の技術事項である。
また、基板の両表面に同じ材料からなるレジスト膜を形成することは、周知技術3を示す文献も含め回路基板(遊技機に用いられる回路基板も含む)の技術分野において、当業者における技術常識でもある。
そして、引用発明は、構成b3より、「外部への光の放射効率の向上を図る」ものであり、引用文献1の【0055】、【0058】には、熱源となる電流制限抵抗の発熱による発光素子等への悪影響を低減させる機能について記載されている。

したがって、引用発明において、光の反射率の向上および熱の低減等を考慮して、「トップLED基板44c」に周知技術3を適用して、「トップLED基板44c」の表面のみならず、裏面についても「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」を形成することは、当業者が適宜なし得たものである。

ところで、引用発明において、「トップLED基板44cの表面」に形成した「薄膜」、および、「電子部品番号」の表示の形成を、他方の面である「トップLED基板44cの裏面」においても同一工程で行うことにより、LED基板の製造効率が向上することも、当業者に自明である。

上記における検討内容からみて、「トップLED基板44cの裏面には、電流制限抵抗105,107、ツェナーダイオード109のそれぞれの近傍に付され、基板の表面色と区別可能な色で電子部品番号(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)が表示され」る引用発明において、「トップLED基板44cの裏面」についても、表面同様に、「マスキング剤として白色のレジストを用いた、光を反射する薄膜111」を形成し、さらに、上記「(3)相違点3について」において検討したように、上記引用文献2、3に記載された技術事項を考慮して、「色レジストを用いた、光を反射する薄膜111」に表示される「電子部品番号」(R1ないしR20、ZD1ないしZD10)を黄色のシルクにより形成し、上記相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たものである。

(5)効果について
本願発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項、及び、周知技術1ないし3から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。

(6)小括
上記(1)ないし(5)の検討内容からみて、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術事項、及び、周知技術1ないし3に基づいて当業者が容易になし得たものである。

(7)請求人の主張について
請求人は、令和3年11月18日付けの審判請求書において、次の点について主張をする。
「しかしながら、引用文献1、8は、上記の通り白色のレジストの記載があるもののシルクの色については記載がなく、シルクの色がLEDの発する光の反射効率に影響があるとの技術課題を持っていません。
また、引用文献3(「STM32F4基板」)に開示される技術は、「将来的な汎用性を考えて、FPGAに実装するGPS受信機の機能は相関処理のみにして、信号追尾や即位演算などは外付けのマイコンで処理する方針にしました」と書かれているようにいわゆる制御基板であり、視覚的効果を有する装飾基板(LEDを搭載して機器の外に光の装飾効果を発する基板)ではないことは明らかです。また、「STM32F4基板」にLEDが搭載されているとの記載はありませんし、白色のレジストと黄色のシルクはLEDの発した光に対する反射効率を良くするために採用したとの記載もありません。「たまたまあった黄色を今回は選んでみた」と記載されていることから、なんらかの課題を解決するために黄色のシルクを採用したものでもなく、LEDの発した光に対する反射効率にシルクの色が影響するとの課題を解決するために採用したものでもないことは明らかです。
すなわち、白色のレジストの記載があるもののシルクの色については記載がなくシルクの色がLEDの発する光の反射効率に影響があるとの技術課題を持たない引用文献1または8の発明に対して、LEDが搭載されていない基板であり「たまたまあった黄色を今回は選んでみた」と記載されているようにLEDが発した光の反射効率にシルクの色が影響するとの課題を解決するために採用したものでもなく、そのような課題も持っていない引用文献3の発明を採用しようとしても、LED実装面に白色のレジストと黄色のシルクを採用できるものではありません。
よって、引用文献1または8に記載の発明においてLED実装面のシルクの色を選ぶときに、引用文献3を見て黄色を選ぶことは当業者であっても困難であると思料いたします。」

そこで、請求人の上記主張について検討する。
上記「(3)相違点3について」において検討したように、引用発明は「外部への光の放射効率の向上を図る」ことを目的とするものであって、電子部品番号の表示にも、反射率向上を考慮する必要があるといえる。
そして、一般に、反射率が明色において高いことは、広く知られていることであり、その中から黄色を選択することに格別の困難性は認められない。
一方、引用発明において、「電子部品番号」は、基板に表示されるものであって、電子部品を識別するためのものであるから、「電子部品番号」の表示色は、基板の表面色白色と異ならせる必要があることも明らかである。
これらのことからみて、引用発明に、引用文献2、3に記載された技術事項を適用する動機付けは十分にある。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基いて特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-26 
結審通知日 2022-05-27 
審決日 2022-06-07 
出願番号 P2017-208993
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 鉄 豊郎
特許庁審判官 長崎 洋一
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  

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