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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1387373
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-16 
確定日 2022-07-26 
事件の表示 特願2017− 50845「キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月 4日出願公開、特開2018−155826、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続等の経緯
特願2017−50845号(以下「本件出願」という。)は、平成29年3月16日の出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和2年 9月15日提出:刊行物提出書
令和2年10月13日付け:拒絶理由通知書
令和2年12月 4日提出:意見書
令和2年12月 4日提出:手続補正書
令和3年 3月 5日提出:刊行物提出書
令和3年 5月18日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和3年12月16日提出:審判請求書
令和4年 4月 2日提出:刊行物提出書


第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
理由1(新規性)及び理由2(進歩性
本件出願の(令和2年12月4日にした手続補正後の)請求項1〜5に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、もしくは、当該発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2016−71000号公報
引用文献2:特開2013−103869号公報
引用文献3:特開2012−194307号公報
引用文献4:特開2008−241742号公報
参考文献A:特開2016−80991号公報
(引用文献1〜4はそれぞれが主引例である。参考文献Aは周知慣用技術を示す参考文献である。)

理由3(明確性
本件出願は、(令和2年12月4日にした手続補正後の)特許請求の範囲の請求項1〜5の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。


第3 本件発明
本件出願の請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、令和2年12月4日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1〜5の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表されるフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
球形粒子が2個以上の結合した結合粒子が21個数%以上60個数%以下含まれ、
前記結合粒子以外の通常粒子は球形で、
磁場79.58×103A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である
ことを特徴とするキャリア芯材。
【請求項2】
体積平均粒径が25μm以上50μm未満である請求項1記載のキャリア芯材。
【請求項3】
前記結合粒子以外の通常粒子の表面の最大山谷深さRzが1.2μm以上2.2μm以下である請求項1又は2に記載のキャリア芯材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項5】
請求項4記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。」


第4 引用文献の記載及び引用文献に記載された発明
1 引用文献1の記載及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1の記載
引用文献1(特開2016−71000号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。(なお、下線は当審において付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。以下、同様である。)
ア 「【請求項1】
球形粒子が2個〜5個の結合した結合粒子が5個数%〜20個数%含まれ、
前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、
前記子粒子の粒径はすべて、前記母粒子の粒径の1/2以下であることを特徴とするフェライト粒子からなるキャリア芯材。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャリア芯材の表面を凹凸形状にすると、粒子同士の引っかかりなどが強くなって磁気ブラシが硬くなり、磁気ブラシで感光体表面が摺擦されることによって感光体表面が傷つけられるおそれがある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、現像領域へのトナー供給量を増加させることができ、しかも磁気ブラシによって感光体表面が傷つけられることのないキャリア芯材を提供することにある。
【0010】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
・・・中略・・・
【0019】
母粒子と子粒子とが結合した、球形から大きく外れた異形な結合粒子がキャリア芯材中に所定の個数割合で含まれていると、通常の球形粒子と結合粒子と間にトナーが取り込まれる空間が生じ得る。そして、通常の球形粒子と結合粒子との間の空間に取り込まれたトナーは、現像ローラの回転によって現像領域に搬送されると共に、前記空間に取り込まれていたトナーが磁気ブラシの表面に現れ現像に寄与する。加えて、従来の表面凹凸形状のキャリア芯材と異なって、本発明で使用する結合粒子は、球形粒子同士が結合した粒子であるため角部がない。このため、感光体表面を磁気ブラシで摺擦しても粒子の角部で感光体表面が傷つくことはない。また、子粒子の粒径は母粒子の粒径に対して1/2以下であることにより、母粒子に対する子粒子の体積は1/8以下と小さい。このため、現像における母粒子の表面性や回転の基本挙動を損なう事なく、さらなる良好な現像が可能となっている。
・・・中略・・・
【0022】
キャリア芯材における結合粒子の含有割合は5個数%〜20個数%である。結合粒子の含有割合が5個数%未満であると、現像領域へのトナー供給量が不十分となることがある一方、結合粒子の含有割合が20個数%を超えると、キャリア芯材の流動性が悪くなりすぎて磁気ブラシ内でのキャリアの循環移動が十分に行われず、画像形成速度が速くなった場合に十分な画像濃度が得られない。より好ましい結合粒子の含有割合は10個数%〜20個数%の範囲である。
なお、結合粒子の含有割合は、多すぎれば全体として粒子が同じ挙動となるため、結合粒子の特異な作用が希釈化され、少な過ぎると作用が限定され、効果が得られない。
・・・中略・・・
【0026】
本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子の組成に特に限定はなく、組成式MXFe3−XO4(但し、Mは、Mg,Mn,Ca,Ti,Sr,Cu,Zn,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0≦X≦1)で表されるものが例示される。これらの中でもマグネタイト、MnMgフェライト、Mnフェライトが好ましい。」

ウ 「【0056】
実施例1
キャリア芯材としてのマグネタイト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)10.0kgを純水5.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を30g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒物を得た。得られた造粒粉の一部を目開き103μmのステンレス篩を用いて分級処理を行った。このとき篩上に排出された造粒物を焼成用主原料とした。この焼成用原料の粒径は124μmであった。
次に、造粒粉の残りを目開き74μmのステンレス網を使用して分級処理を行った。このとき篩下に通過した造粒物を焼成用副原料とした。この焼成用副原料の粒径は55μmであった。
次に焼成用主原料100重量部に対して20重量部の焼成用副原料を加え、V型混合機にて30分間混合処理を行った。このようにして得られた混合粉末を焼成用原料とした。
上記焼成用原料を、電気炉に投入し1150℃まで6時間かけて昇温した。その後、1150℃で3時間保持することにより焼成を行った。その後8時間かけて室温まで冷却した。この間、電気炉内の酸素濃度は1000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを炉内に供給した。
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級した。このとき、目開き91μmのステンレス篩を使用して小粒径の粒子を除去してキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物性、粒子形状、現像剤特性を後述の方法で測定した。測定結果を表1に示す。また、図1に、実施例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。なお、図1は、結合粒子の特徴を示すため、結合粒子の個数が多い個所を撮影した。
【0057】
実施例2
実施例1において焼成用主原料100重量部に対する焼成用副原料を10重量部とする以外は同様にしてキャリア芯材を得た。得られたキャリア芯材の物性、粒子形状、現像剤特性を実施例1と同様にして測定した。測定結果を表1に示す。また、図2に、実施例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
・・・中略・・・
【0067】
(結合粒子含有率)
キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−6510LA)を用いて倍率200倍で撮影した。撮影した画像より任意の200粒子を選択し、その中で結合粒子の数をカウントし、上記200粒子中に含まれる結合粒子の割合を結合粒子含有率とした。
なお、結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の粒径はすべて、前記母粒子の粒径の1/2以下とした。そして、結合粒子では母粒子と子粒子とが結合部分を共有した形態で存在しているので、母粒子及び子粒子の粒径は、キャリア芯材の形状を走査電子顕微鏡(日本電子社製:JSM−6510LA)を用いて倍率200倍で撮影した画像において、結合粒子の結合部分を除いた領域から粒子を球形近似することによりそれぞれ算出した。
・・・中略・・・
【0072】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×104A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化、残留磁化、保磁力及び79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am2/kg)をそれぞれ測定した。
・・・中略・・・
【0076】
【表1】



(2)引用文献1に記載された発明
ア 引用発明1−1
引用文献1の【0056】及び【0076】【表1】に記載された実施例1の「キャリア芯材」は、【請求項1】に係るキャリア芯材を具現化した態様である。また、実施例1における結合粒子の含有率及び磁化の測定は、それぞれ【0067】及び【0072】に記載の手段により測定されたものである。
さらに、引用文献1の【0019】からは、実施例1の態様のキャリア芯材が、「結合粒子」及び「通常の球形粒子」を含むことが理解される。
以上の点をふまえ、引用文献1には、実施例1として、以下の「キャリア芯材」の発明(以下「引用発明1−1」という。)が記載されていると認める。
「マグネタイト粒子からなるキャリア芯材であって、
通常の球形粒子と、
球形粒子が2個〜5個の結合した結合粒子が11.5個数%含まれ、
焼成用主原料(母粒子)の粒径は124μmであり、焼成用副原料(子粒子)の粒径は55μmであり、焼成用主原料100重量部に対して20重量部の焼成用副原料を加えて焼成して得られたものであり、
前記結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、 前記子粒子の粒径はすべて、前記母粒子の粒径の1/2以下であり、
79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am2/kg)が65.3Am2/kgである、キャリア芯材。」

イ 引用発明1−2
上記引用発明1−1と同様に、引用文献1の実施例2の態様から理解される「キャリア芯材」の発明を、以下「引用発明1−2」という。

2 引用文献2の記載及び引用文献2に記載された発明
(1)引用文献2の記載
引用文献2(特開2013−103869号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
組成式MXFe3−XO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0≦X≦1)で表される材料を主成分とし、内部に空孔を有するフェライト粒子であって、
粒子断面積における空孔総面積率が5%以上で20%未満で、且つ、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合が50%以上であり、
粒径から算出される比表面積値に対する、実測したBET比表面積値の割合が7倍以下であることを特徴とするフェライト粒子。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明はフェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤等に関するものである。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記提案のキャリアコア粒子では、粒子内に形成される空孔が大きく、画像形成速度の速い装置に用いた場合、キャリアコア粒子が割れや欠けが発生するおそれがある。また、空孔の体積が大きいため相対的に磁性相の体積が減少し、磁気ブラシの拘束力が低下することによりキャリア飛散などの画質異常が生じやすくなる。更に、粒子内の空孔が外部と繋がっている場合には、キャリアコア粒子を樹脂で被覆する際、被覆樹脂が粒子内に浸み込む量が多くなり経済性が悪くなる。また、キャリアコア粒子の製造工程において高抵抗化を目的として表面酸化処理をする場合、粒子内部まで酸化されてしまい磁気特性が低下する。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電子写真方式画像形成装置のキャリアとして用いた場合に、画像形成速度が速くなっても割れや欠けが生じることがなく、また回転トルクが大きくならず、さらに高抵抗・高磁力を有するフェライト粒子及びその製造方法を提供することにある。」

ウ 「【0054】
実施例1
Mnフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)7.0kgと、MnCO3(平均粒径:5.0μm)0.4kgと、Mn3O4(平均粒径:0.9μm)2.6kgとを純水3.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0055】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm〜100μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、粒径100μmを超える粗粒は篩網を用いて除去した。
【0056】
この造粒物を、電気炉に投入し1100℃まで2時間かけて昇温し、その後1100℃で3時間保持し焼成を行った。このとき、電気炉内の酸素濃度は5000ppmとなるよう、酸素と窒素とを混合したガスを電気炉内に供給した。
【0057】
得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級した。そして、さらに大気雰囲気下において温度450℃で1時間高抵抗化処理を行い平均粒径34.7μmのフェライト粒子を得た。
【0058】
得られたフェライト粒子の粒子断面における空孔の総面積率P1、最大空孔の面積率P2、最大空孔面積の空孔総面積に占める割合P2/P1、粒径から算出される理論比表面積S1、BET比表面積S2、見掛け密度、磁気特性、電気抵抗を下記に示す方法でそれぞれ測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、図1に粒子断面のSEM写真を示す。
・・・中略・・・
【0063】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて、外部磁場を0〜79.58×104A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000(Am2/kg)及び保磁力Hcをそれぞれ測定した。
・・・中略・・・
【0065】
実施例2〜10,比較例1〜6
表1に示す出発原料及び配合量、焼成温度で実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表2に測定結果をまとめて示す。また、図2及び図3に実施例2及び実施例3のフェライト粒子の断面SEM写真を示す。さらに、図4に比較例1のフェライト粒子の断面SEM写真を示す。また、図5に、実施例1〜5及び比較例1〜4のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフを、図6に、実施例6〜10及び比較例5,6のフェライト粒子における見掛け密度と磁化σ1000との関係を示すグラフをそれぞれ示す。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】



(2)引用文献2に記載された発明
ア 引用発明2−1
引用文献2の【0007】〜【0008】の記載から、【請求項1】の「フェライト粒子」は「キャリアコア粒子」として用いるものであることは明らかである。そして、引用文献2の【0054】、【0066】【表1】及び【0067】【表2】に記載の実施例1の「フェライト粒子」は、【請求項1】に係る「フェライト粒子」を具現化した態様であり、その組成から、【請求項1】に係る「キャリア芯材」の組成比が0<X<1の態様であることは明らかである。ここで、実施例1における「磁化σ1000」は【0063】の測定方法で測定したものである。
以上の点をふまえ、引用文献2には、実施例1として、以下の「電子写真現像用キャリア」の発明(以下「引用発明2−1」という。)が記載されていると認める。
「組成式MXFe3−XO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X<1)で表される材料を主成分とし、内部に空孔を有するフェライト粒子を用いたキャリアコア粒子であって、
79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1000(Am2/kg)が72.0Am2/kgである、キャリアコア粒子。」

イ 引用発明2−2〜引用発明2−5
上記引用発明2−1と同様に、引用文献2の実施例2〜5から認定される「キャリアコア粒子」の発明を、以下それぞれ「引用発明2−2」〜「引用発明2−5」という。

3 引用文献3の記載及び引用文献3に記載された発明
(1)引用文献3の記載
引用文献3(特開2012−194307号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
一般式:MxFe3−xO4(0≦x≦1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成を主成分とする電子写真現像剤用キャリア芯材であって、
体積粒径分布における中心粒径の値が、30μm以上40μm以下の範囲にあり、 体積粒径分布における粒径の値が22μm以下のものの割合が、1.0%以上2.0%以下であり、
個数粒径分布における粒径の値が22μm以下のものの割合が、10%以下であり、
外部磁場が1000Oeである場合における磁化の値が、50emu/g以上75emu/g以下である、電子写真現像剤用キャリア芯材。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の一実施形態に係るキャリア芯材について説明する。この発明の一実施形態に係るキャリア芯材については、その外形形状が、略球形状である。この発明の一実施形態に係るキャリア芯材の粒径および粒度分布については、後述する。キャリア芯材の表面には、主に後述する焼成工程で形成される微小の凹凸が形成されている。
・・・中略・・・
【0038】
その後、造粒した造粒物について、焼成を行なう(図1(D))。具体的には、得られた造粒粉を、900〜1500℃程度に加熱した炉に投入し、1〜24時間保持して焼成し、目的とする焼成物を生成させる。このとき、焼成炉内の酸素濃度は、フェライト化の反応が進む条件であればよく、具体的には、1200℃の場合、10−7%以上3%以下となるよう導入ガスの酸素濃度を調整し、フロー状態下で焼成を行う。
・・・中略・・・
【実施例】
【0054】
Fe2O3(平均粒径:1μm)13.7kg、Mn3O4(平均粒径:1μm)6.5kgを水7.5kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を135g、還元剤としてカーボンブラックを68g添加して混合物とした。このときの固形分濃度を測定した結果、75重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0055】
このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は、ふるいにより除去した。この造粒粉を、電気炉に投入し、1130℃で3時間焼成した。このとき、電気炉内は酸素濃度が0.8%となるよう、雰囲気を調整した電気炉にフローした。得られた焼成物を解粒後にふるいを用いて分級し、平均粒径35μmとした。さらに、得られたキャリア芯材に対して、470℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施した。そして、振動篩等を用いて中心粒径等を調整し、実施例1に係るキャリア芯材を得た。なお、実施例2〜8、および比較例1〜4については、調整工程までは同様の工程であり、得られたキャリア芯材の磁気的特性および電気的特性を表1に示す。
・・・中略・・・
【0058】
また、表1中の磁気的特性を示す磁化の測定については、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて、磁化率を測定した。ここで、表中、「σ1000」とは、外部磁場79.58×103(A/m)(1k(1000)Oe)である場合における磁化である。
・・・中略・・・
【0062】
このキャリアと粒径5μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、実施例1に係る二成分系の電子写真現像剤を得た。この二成分系の電子写真現像剤を用い、デジタル反転現像方式を採用する60枚機を評価機として使用し、キャリア飛散および画質について評価した。実施例2〜8、比較例1〜4についても同様の手法で、実施例2等に係るキャリア、および実施例2等に係る電子写真現像剤を得た。
・・・中略・・・
【0071】
【表1】



(2)引用文献3に記載された発明
ア 引用発明3−1
引用文献3の【0054】及び【0071】【表1】に記載の実施例1の「キャリア芯材」は、【請求項1】に係る「キャリア芯材」の組成比が0<x<1の態様であることは明らかである。また、当該態様に係る磁化は、【0058】の測定方法によるものである。
以上の点をふまえ、引用文献3には、実施例1として、以下の「電子写真現像剤用キャリア芯材」の発明(以下「引用発明3−1」という。)が記載されていると認める。
「一般式:MxFe3−xO4(0<x<1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成を主成分とする電子写真現像剤用キャリア芯材であって、
外部磁場79.58×103(A/m)(1k(1000)Oe)である場合における磁化であるσ1000が69.3Am2/kgである、電子写真現像剤用キャリア芯材。」

イ 引用発明3−2〜引用発明3−5及び引用発明3−7
上記引用文献3−1と同様に、引用文献3の実施例2〜5及び7から認定される「電子写真現像剤用キャリア芯材」の発明を、以下それぞれ「引用発明3−2」〜「引用発明3−5」及び「引用発明3−7」という。

4 引用文献4の記載及び引用文献4に記載された発明
(1)引用文献4の記載
引用文献4(特開2008−241742号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
一般式:MnxFe3−xO4(但し、0≦x≦1.0)で表記され、粉末XRDパターンにおいて、最大強度を有するピークの半値幅Bが、B≦0.160(degree)を満たすことを特徴とする電子写真現像剤用キャリア芯材。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
・・・中略・・・
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
Fe2O3(平均粒径:0.6μm)7.2kg、Mn3O4(平均粒径:0.9μm)2.8kgを純水3.0kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を60g添加して混合物とした。当該混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、Fe2O3とMn3O4との混合スラリーを得た。原料の混合比は、前述のフェライトの組成式MnxFe3−xO4において、x=0.86となるよう算出したものである。
このスラリー中の原料の粒度分布を測定したところ、D90が0.88μmであり、原料中に1μm以上の粗大粒子がほとんど存在しないことが確認された。このスラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し、粒径10〜100μmの乾燥造粒粉を得た。尚、このとき、粒径が100μmを超えるような造粒粉は、篩により除去した。
この造粒粉を、電気炉に投入し1150℃で3h焼成した。このとき電気炉内の酸素濃度が100ppmとなるよう、酸素と窒素を混合したガスを電気炉内にフローした。得られた焼成物を粉砕後に篩を用いて分級し、平均粒径(D50)31.0μmの実施例1に係るキャリア芯材を得た。
・・・中略・・・
【0042】
(実施例2)
スラリーの湿式粉砕処理においてメディア径を1.5mmとした以外は実施例1と同様にして、平均粒径(D50)29.0μmの実施例2に係るキャリア芯材を得た。 尚、原料の粒度分布におけるD90値は0.70μmであった。
【0043】
得られた実施例2に係るキャリア芯材のXRDパターンを実施例1と同様に測定し、表1、図1に示した。
【0044】
(実施例3)
Fe2O3を6.7kg、Mn3O4を3.3kgとした以外は、実施例1と同様にして、平均粒径(D50)28.8μmの実施例3に係るキャリア芯材を得た。 当該混合比は、前述のソフトフェライトの組成式MnxFe3−xO4において、x=1.0に対応するものである。尚、原料の粒度分布のD90値は0.92μmであった。
【0045】
得られた実施例3に係るキャリア芯材のXRDパターンを実施例1と同様に測定し、表1、図3に示した。
【0046】
(実施例4)
Fe2O3を9.2kg、Mn3O4を0.8kgとした以外は、実施例1と同様にして、平均粒径(D50)28.2μmの実施例4に係るキャリア芯材を得た。 当該混合比は、前述のソフトフェライトの組成式MnxFe3−xO4において、x=0.2に対応するものである。尚、原料の粒度分布のD90値は0.87μmであった。
【0047】
得られた実施例4に係るキャリア芯材のXRDパターンを実施例1と同様に測定し、表1、図3に示した。
【0048】
(実施例5)
原料としてFe2O3のみを10kg用い、焼成温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にして、平均粒径(D50)29.0μmの実施例5に係るキャリア芯材を得た。
これは、前述のソフトフェライトの組成式MnxFe3−xO4において、x=0、すなわちFe3O4で表記されるマグネタイト粉末である。尚、原料の粒度分布のD90値は0.86μmであった。
【0049】
得られた実施例5に係るキャリア芯材のXRDパターンを実施例1と同様に測定し、表1、図3に示した。
【0050】
(実施例6)
焼成において、電気炉内の酸素濃度が1000ppmとなるよう混合したガスをフローした以外は、実施例1と同様にして、平均粒径(D50)31.2μmの実施例6に係るキャリア芯材を得た。
・・・中略・・・
【0056】
【表1】

・・・中略・・・
【0071】
<磁気特性>
キャリア芯材の磁気特性は、VSM(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化率の測定を行い、外部磁場1000Oeにおける磁化率σ1000(emu/g)を得た。」

(2)引用文献4に記載された発明
ア 引用発明4−1
引用文献4の【0039】及び【0056】【表1】に記載の実施例1に記載された「キャリア芯材」は、【請求項1】に係る「キャリア芯材」の組成比がx=0.86の態様であることは明らかである。また、当該態様に係る「磁化σ1000」は、【0071】の測定方法によるものである。さらに、【0039】の記載から【請求項1】に係る「キャリア芯材」が「フェライト」粒子からなることは明らかである。
以上の点をふまえると、引用文献4には、【請求項1】及び実施例1の態様から理解される「電子写真現像剤用キャリア芯材」の発明(以下「引用発明4−1」という。)として、以下のものが記載されていると認める。
「MnxFe3−xO4(但し、x=0.86)で表記される、フェライト粒子からなる電子写真現像剤用キャリア芯材であって、
外部磁場1000Oe下における磁化率:σ1000が、72.8emu/gである電子写真現像剤用キャリア芯材。」

イ 引用発明4−2〜引用発明4−6
上記引用発明4−1と同様に、引用文献4の実施例2〜6の態様から理解される「電子写真現像剤用キャリア芯材」の発明を、以下それぞれ「引用発明4−2」〜「引用発明4−6」という。


第5 当合議体の判断(理由1(新規性)及び理由2(進歩性))
1 引用文献1を主引例とした場合
(1)本件発明1と引用発明1−1とを対比する。
ア フェライト粒子及びキャリア芯材
引用発明1−1の「マグネタイト粒子」は、本件発明1の「フェライト粒子」に相当するから、引用発明1−1の「マグネタイト粒子からなるキャリア芯材」は、本件発明1の「フェライト粒子からなるキャリア芯材」に相当する。

イ 通常粒子と結合粒子
引用発明1−1は「通常の球形粒子」と「結合粒子」とを含むものである。
ここで、引用文献1の結合粒子含有率の測定方法の記載(【0067】)及び本件出願の明細書の結合粒子の含有率の測定方法の記載(【0064】)によれば、引用発明1−1の「結合粒子」と本件発明1の「結合粒子」とは、ともに数個のフェライト球形粒子が結合した点において同様の結合状態の粒子を意味していると理解される。
そうすると、引用発明1−1の「結合粒子」は、本件発明1の「結合粒子」に相当し、本件発明1の「球形粒子が2個以上の結合した」粒子であるという要件を満たす。
また、引用発明1−1の「通常の球形粒子」は、その文言どおり、本件発明1の「通常粒子」に相当するとともに、「結合粒子以外の」及び「球形で」あるという要件を満たす。

ウ 磁化σ1k
引用発明1−1の「磁化σ1k」は、その定義からみて、本件発明1の「磁化σ1k」と同義であるところ、引用発明1−1の「磁化σ1k」は「65.3Am2/kg」であるから、本件発明1の「磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である」という要件を満たす。

(2)引用発明1−1に基づく一致点及び相違点
ア 一致点
本件発明1と引用発明1−1とは、以下の点で一致する。
「フェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
球形粒子が2個以上結合した結合粒子が含まれ、
前記結合粒子以外の通常粒子は球形で、
磁場79.58×103A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である、キャリア芯材。」

イ 相違点
本件発明1と引用発明1−1とは、以下の点で相違する。
(相違点1−1)
本件発明1の「フェライト粒子」が「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表される」のに対して、引用発明1−1のフェライト粒子は「マグネタイト粒子」であるものの、その組成式が不明である点。

(相違点1−2)
本件発明1は、「結合粒子」が「球形粒子が2個以上の結合した結合粒子が21個数%以上60個数%以下含まれ」ているのに対して、引用発明1−1の「結合粒子」は「球形粒子が2個〜5個の結合した結合粒子が11.5個数%含まれ」ている点。

(3)引用発明1−1に基づく判断
ア 相違点1−2について
事案に鑑み、まず、相違点1−2について検討する。
引用発明1−1の「結合粒子」は、「結合粒子は、粒径の最も大きい母粒子と、前記母粒子よりも粒径の小さい1個〜4個の子粒子とが結合した粒子であり、前記子粒子の粒径はすべて、前記母粒子の粒径の1/2以下」である。
ここで、引用発明1−1の母粒子及び子粒子の粒径や含有率等から、引用発明1−1に含まれる結合した粒子は、引用発明1−1において特定される構成のものが、その大半を占めていると理解できる。
そうすると、仮に球形粒子が6個以上結合した粒子や、母粒子と母粒子の粒径の1/2より大きい子粒子が結合した粒子等の存在を考慮したとしても、引用発明1−1における全ての結合した粒子の割合が21個数%を超えて、上記相違点1−2に係る構成を具備している蓋然性が高いとまではいえない。
また、引用文献1の「結合粒子の含有割合が20個数%を超えると、キャリア芯材の流動性が悪くなりすぎて磁気ブラシ内でのキャリアの循環移動が十分に行われず、画像形成速度が速くなった場合に十分な画像濃度が得られない。」との記載(【0022】)からすると、上記相違点1−2に係る構成を採用することには阻害要因があるといえ、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

イ 小括
上記アのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が引用発明1−1であるということはできないし、また、本件発明1が引用発明1−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明2〜5について
請求項1を直接又は間接的に引用している本件発明2〜5は、上記(1)〜(3)と同様の理由で、引用発明1−1であるということはできないし、引用発明1−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(5)引用発明1−2に基づく場合
上記(1)〜(4)と同様である。

2 引用文献2を主引例とした場合
(1)本件発明1と引用発明2−1とを対比する。
ア フェライト粒子及キャリア芯材
引用発明2−1の「フェライト粒子」は「組成式MXFe3−XO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素、0<X<1)で表される材料を主成分と」するものであるから、本件発明1のフェライト粒子の「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表される」という要件を満たす。
そして、引用発明2−1の「フェライト粒子を用いたキャリアコア粒子」は、本件発明1の「フェライト粒子からなるキャリア芯材」に相当する。

イ 磁化σ1k
引用発明2−1の「磁化σ1000」は、その定義からみて、本件発明1の「磁化σ1k」と同義であって、引用発明2−1の「磁化σ1000」は「72.0Am2/kg」であるから、本件発明1の「磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である」という要件を満たす。

(2)引用発明2−1に基づく一致点及び相違点
ア 一致点
本件発明1と引用発明2−1とは、以下の点で一致する。
「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表されるフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
磁場79.58×103A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である、キャリア芯材。」

イ 相違点
本件発明1と引用発明2−1は、以下の点で相違する。
(相違点2−1)
本件発明1が「球形粒子が2個以上の結合した結合粒子が21個数%以上60個数%以下含まれ」るのに対して、引用発明2−1は、そのような態様であるか不明である点。

(相違点2−2)
本件発明1が「結合粒子以外の通常粒子は球形で」あるのに対して、引用発明2−1は、そのような態様であるか不明である点。

(3)引用発明2−1に基づく判断
ア 相違点2−1について
引用文献2には、「結合粒子」に関する記載はない。そして、引用文献2の実施例1(【0054】〜【0057】)に記載されたフェライト粒子の製造方法は、各原料の割合、造粒物の分級の有無、焼成温度、酸素濃度等、フェライト粒子の構造に大きく影響すると考えられる製造条件が、本件出願の製造条件(【0066】等)とは異なっているところ、引用発明2−1が相違点2−1に係る「結合粒子」の構成を具備している蓋然性が高いということはできない。
また、引用文献2には、引用発明2−1において、当業者が、上記相違点2−1に係る構成を採用することの動機となり得る記載ないし示唆を見出すこともできない。

イ 小括
上記アのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が引用発明2−1であるということはできないし、また、本件発明1が引用発明2−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明2〜5について
請求項1を直接又は間接的に引用している本件発明2〜5は、上記(1)〜(3)と同様の理由で、引用発明2−1であるということはできないし、引用発明2−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(5)引用発明2−2〜引用発明2−5に基づく場合
引用発明2−2〜引用発明2−5のいずれに基づいても、上記(1)〜(4)と同様である。

3 引用文献3を主引例とした場合
(1)本件発明1と引用発明3−1とを対比する。
ア フェライト粒子及びャリア芯材
引用発明3−1の「一般式:MxFe3−xO4(0<x<1、ただし、Mは、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr、Niからなる群から選択される少なくとも一種の金属)で表されるコア組成を主成分とする」粒子は、本件発明1の「フェライト粒子」に相当するとともに、本件発明1の「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表される」という要件を満たす。
すると、引用発明3−1の「電子写真現像剤用キャリア芯材」は、本件発明1の「フェライト粒子からなるキャリア芯材」に相当する。

イ 磁化σ1k
引用発明3−1の「σ1000」は、その定義からみて、本件発明1の「磁化σ1k」と同義であり、引用発明3−1の磁化「σ1000」は「69.3Am2/kg」であるから、本件発明1の「磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である」という要件を満たす。

(2)引用発明3−1に基づく一致点及び相違点
ア 一致点
本件発明1と引用発明3−1とは、以下の点で一致する。
「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表されるフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
磁場79.58×103A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である、キャリア芯材。」

イ 相違点
本件発明1と引用発明3−1とは、以下の点で相違する。
(相違点3−1)
本件発明1が「球形粒子が2個以上の結合した結合粒子が21個数%以上60個数%以下含まれ」るのに対して、引用発明3−1は、そのような態様であるか不明である点。

(相違点3−2)
本件発明1が「結合粒子以外の通常粒子は球形で」あるのに対して、引用発明3−1は、そのような態様であるか不明である点。

(3)引用発明3−1に基づく判断
ア 相違点3−1について
引用文献3には、「結合粒子」に関する記載はなく、引用文献3の実施例(【0054】〜【0055】)の記載を参照しても、各原料の割合、造粒物の分級の有無、焼成温度、酸素濃度等、キャリア芯材の構造に大きく影響すると考えられる製造条件が、本件出願の製造条件(【0066】等)とは異なっているところ、引用発明3−1が相違点3−1に係る「結合粒子」の構成を具備している蓋然性が高いということはできない。
また、引用文献3には、引用発明3−1において、当業者が、上記相違点3−1に係る構成を採用することの動機となり得る記載ないし示唆を見出すこともできない。

イ 小括
上記アのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が引用発明3−1であるということはできないし、また、本件発明1が引用発明3−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明2〜5について
請求項1を直接又は間接的に引用している本件発明2〜5は、上記(1)〜(3)と同様の理由で、引用発明3−1であるということはできないし、引用発明3−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(5)引用発明3−2〜引用発明3−5及び引用発明3−7に基づく場合
引用発明3−2〜引用発明3−5及び引用発明3−7のいずれに基づいても、上記(1)〜(4)と同様である。

4 引用文献4を主引例とした場合
(1)本件発明1と引用発明4−1とを対比する。
ア フェライト粒子及びキャリア芯材
引用発明4−1の「フェライト粒子」の組成式「MnxFe3−xO4(但し、x=0.86)」は、本件発明1の「フェライト粒子」の「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表される」という要件を満たす。
すると、引用発明4−1の「フェライト粒子からなる電子写真現像剤用キャリア芯材」は、本件発明1の「フェライト粒子からなるキャリア芯材」に相当する。

イ 磁化σ1k
引用発明4−1の「σ1000」は単位系上の表記が異なるだけで、本件発明1の「磁化σ1k」と同義であって、引用発明4−1の磁化「σ1000」は「72.8emu/g(Am2/kg)」であるから、本件発明1の「磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である」という要件を満たす。

(2)引用発明4−1に基づく一致点及び相違点
ア 一致点
本件発明1と引用発明4−1とは、以下の点で一致する。
「組成式MxFe3−xO4(但し、MはMg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr, Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属,0<X<1)で表されるフェライト粒子からなるキャリア芯材であって、
磁場79.58×103A/m(1000エルステッド)を印加した際の磁化σ1kが64Am2/kg以上75Am2/kg以下である、キャリア芯材。」

イ 相違点
本件発明1と引用発明4−1とは、以下の点で相違する。
(相違点4−1)
本件発明1が「球形粒子が2個以上の結合した結合粒子が21個数%以上60個数%以下含まれ」るのに対して、引用発明4−1は、そのような態様であるか不明である点。

(相違点4−2)
本件発明1が「結合粒子以外の通常粒子は球形で」あるのに対して、引用発明4−1は、そのような態様であるか不明である点。

(3)引用発明4−1に基づく判断
ア 相違点4−1について
引用文献4には、「結合粒子」に関する記載はない。そして、引用文献4の実施例1(【0039】)に記載されたキャリア芯材の製造方法は、各原料の割合、造粒物の分級の有無、焼成温度、酸素濃度等、キャリア芯材の構造に大きく影響すると考えられる製造条件が、本件出願の製造条件(【0066】等)とは異なっているところ、引用発明4−1が相違点4−1に係る構成を具備している蓋然性が高いということはできない。
また、引用文献4には、引用発明4−1において、当業者が、上記相違点4−1に係る構成を採用することの動機付けとなり得る記載ないし示唆を見出すこともできない。

イ 小括
上記アのとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1が引用発明4−1であるということはできないし、本件発明1が引用発明4−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)本件発明2〜5について
請求項1を直接又は間接的に引用している本件発明2〜5は、上記(1)〜(3)と同様の理由で、引用発明4−1であるということはできないし、引用発明4−1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(5)引用発明4−2〜引用発明4−4及び引用発明4−6に基づく場合
引用発明4−2〜引用発明4−4及び引用発明4−6のいずれに基づいても、上記(1)〜(4)と同様である。

(6)引用発明4−5に基づく場合
本件発明1と引用発明4−5とを対比すると、上記相違点4−1に加えて、フェライト粒子の組成比の点で相違する(以下「相違点4−2」という。)。
しかしながら、当該相違点4−2について判断するまでもなく、上記(1)〜(3)と同様の理由で、本件発明1が引用発明4−5であるということはできないし、引用発明4−5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
請求項2〜5については、上記(4)と同様である。


第6 原査定について
1 理由1及び理由2(新規性及び進歩性)について
上記「第5」のとおりであるから、上記「第2」で述べた原査定の拒絶の理由である理由1及び理由2によっては、本件出願を拒絶することはできない。

2 理由3(明確性)について
本件発明1〜5は、請求項1〜5の記載から見て、明確であると判断するところであるが、特に原査定で争点となった点について、以下、言及する。

ア 結合粒子の判別について
本件出願の明細書には、「画像は、粒子が単分散しているものを用い、粒子が重なり、結合粒子であるか判別できない場合は、同一粒子を拡大、または視角を変更し、確認することが望ましい。」(【0064】)との記載がある。
当該記載に基づけば、表側からでは「粒子が重なり、結合粒子であるか判別できない場合」でも「視角を変更」して結合粒子であるか判別することができると当業者は理解するから、「結合粒子」の判別について実質的に明確ではないとはいえない。

イ 結合粒子の態様について
本件発明1の「結合粒子」は「球形粒子が2個以上の結合した結合粒子」であると特定されているから、「結合粒子」の定義は明確である。 そして、原査定では「他の非球形粒子が更に結合している」態様についての指摘があるが、「球形粒子が2個以上結合」している点を特定事項とする以上、当業者にとって明確である。
また、本件発明1の「キャリア芯材」は、「球形粒子が結合した結合粒子」と「結合粒子以外の通常粒子は球形で」あるところ、原査定で指摘するような「非球形粒子」は通常の粒子として存在する粒子ではなく、仮に存在していたとしても(割れや欠け等によって生じた)微少なものと考えられるところ、そのような通常の態様として含まれていない態様まで全て明確に記載されていないことをもって、特許請求の範囲の記載が明確でないということはできない。
さらに、本件出願の明細書の記載からは、「粒径(最大長さ)が3μm以下の微小粒子は、粒子としてカウントはしない。」(【0064】)ことから、「3μmを超える球形粒子が1つあり、その他は微小の粒子が結合した粒子」は「結合粒子」としてカウントされないことが明確に理解できる上、「粒径(最大長さ)が3μm以下の微小粒子」は「不純物」(【0064】)程度の含有率であり、通常は微少量であると、当業者は理解できる。
以上を総合してみれば、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を与えるほどに明確でないということはできない。

ウ 測定方法について
本件出願の明細書の【0064】には、SEM画像の測定における試料調製方法である「JIS R 1633:1998 ファインセラミックス及びファインセラミックス粉体用の走査電子顕微鏡(SEM)観察のための試料調製方法」が明記されていないとしても、JIS規格に従って測定等を行うことは当業者に技術常識であると考えられるところ、その明記がないことをもって直ちに測定方法が明確でないということはできない。

エ 小括
以上ア〜ウのとおりであるから、上記「第2」で述べた原査定の拒絶の理由である理由3によっては、本件出願を拒絶することはできない。


第7 むすび
以上のとおり、本件出願は原査定の理由によって拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-13 
出願番号 P2017-050845
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G03G)
P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 植前 充司
小濱 健太
発明の名称 キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤  
代理人 山田 茂樹  
代理人 山田 茂樹  
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