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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01M
管理番号 1387378
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-20 
確定日 2022-07-13 
事件の表示 特願2017−192017「油量検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年4月25日出願公開、特開2019−65768、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月29日の出願であって、令和3年6月7日付け(発送日:同年6月15日)で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年8月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月9日付け(発送日:同年9月21日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
1.原査定の拒絶の概要
原査定の拒絶の概要は以下のとおりである。
「この出願については、令和3年6月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

理由(特許法第29条第2項)について
・請求項1
・引用文献等1

請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.実願昭56−145067号(実開昭58−49224号)のマイクロフィルム」

2.令和3年6月7日付け拒絶理由通知書の概要
平成3年6月7日付け拒絶理由通知書の概要は以下のとおりである。

「2.この出願の下記の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.実願昭56−145067号(実開昭58−49224号)のマイクロフィルム」

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和3年12月20日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
幅方向側部に配設されたサイドメンバを有する車両に搭載され、内部に油溜まり部を有する装置に残存している油量を検出するための油量検出装置であって、
オイルレベルゲージと、
基端部において前記油溜まり部を有する装置のケーシングに設けられた接続口に接続され、前記基端部から先端にかけて前記基端部、屈曲部、及び先端部を有し、前記オイルレベルゲージを案内するガイドパイプとを有し、
前記ガイドパイプの前記先端部に設けられた開口から前記オイルレベルゲージを抜き差しすることにより前記油量の検出が可能であり、
前記車両のホイールハウス内に前記開口が到来すると共に、前記オイルレベルゲージを前記ホイールハウスの奥側から手前側に向けて引き抜き可能なように、前記屈曲部を境界として屈曲した前記ガイドパイプが配置され、
前記車両の幅方向外側からの側面視した状態において、前記開口の中心が、前記サイドメンバから下方に外れた位置に存在していることを特徴とする油量検出装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1
原査定に引用され、本願出願前に頒布された引用文献1(実願昭56−145067号(実開昭58−49224号)のマイクロフィルム)には、「オイルレベルゲージ装置」に関して、図面(特に第2図及び第5図を参照。)とともに以下の記載がある(下線部は当審が付した。)。

(1)引用文献1の記載事項
ア 「 本考案は自動車用エンジンに備え付けられるオイルレベルゲージ装置に関する。
一般に、自動車用エンジンに備えるオイルレベルゲージは、オイルパンに接続するオイルレベルゲージガイドに挿入され、オイルパン内の潤滑油量を点検する役割がある。
従来のオイルレベル装置を第1図、第2図に基づいて説明すると、1はキヤブ、2は車体フレーム、3はバンパ、4はフエインダ、5はエンジン本体、6はフロントタイヤハウス、7はオイルレベルゲージ装置である。
オイルレベルゲージ装置7は、オイルレベルゲージ8をオイルレベルゲージガイド9のフロントタイヤハウス6側の差込口9Aから挿入し、オイルレベルゲージ8の先端はオイルパン10に接続するガイド11を通じてオイルパン10内の潤滑油に浸るようになつている。
そして、オイルレベルゲージを挿入するガイド11及びオイルレベルゲージガイド9はエンジン本体5のみに固定する方式を採つている。
このため、オイルレベルゲージガイド9がエンジン本体5の外部へ突き出す長さに自ずと限度があり、オイルレベルゲージ8の操作場所が限られるので(この場合、フロントタイヤハウス6の下方にオイルレベルゲージ8の取手部8Aを設置している。)、オイルレベルゲージの操作性を阻害するという問題を生じていた。」(第1ページ第12行ないし第2ページ第18行)

イ 「以下本考案の実施例を図面に基づいて説明するが第1図〜第4図と同一構成部位には同一の符号を付すことにする。
第5図に示すように、オイルレベルゲージガイド9は、オイルパン10と一体的に接続するガイド11の先端11Aに固定されるとともに、エンジン本体5と固定される支持板14にも固定される。
さらに、オイルレベルゲージガイド9は、フロントタイヤハウス6の下方に延設され、この延長部を車体フレーム2に固定されるステー15をもつて固定する。
そして、このオイルレベルゲージガイド9の車体固定部9Bと前記エンジン固定部9Cとの中間を可撓性材料からなるホース16で形成する。
このようにして、オイルレベルゲージガイド9のオイルパン10側をエンジン本体に、そしてガイド9のゲージ差込口9A側を車体にそれぞれ固定する。
上記構成によれば、オイルレベルゲージガイド9の途中を可撓性ホース16により形成したので、エンジンルーム並びにフロントタイヤハウス6内におけるレイアウト上の困難を回避できるとともに、オイルレベルゲージ8の取手部8Aを任意の位置に設置することができる。
したがつて、本実施例によれば、オイルパン内の潤滑オイルの性状等を迅速かつ容易に認識することができ、つまり、オイルレベルゲージの操作性、点検性を向上させることができる。」(第3ページ第12行ないし第4ページ20行)

ウ 「以上説明したように本考案によれば、オイルレベルゲージガイドをエンジン本体だけでなく車体にも固定し、その両固定部の間を可撓性ホースで形成したので、エンジン振動に伴うエンジン本体と車体との相対運動を上記可撓性ホースで吸収するとともに、オイルレベルゲージガイドを延長してオイルレベルゲージの遠隔操作を行うことができ、これにより操作性および点検性が向上するという効果を生じる。」(第5ページ11行ないし19行)

エ 上記ア及びイの記載事項からみて、ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものは、オイルレベルゲージ8を案内するものといえる。

オ 上記ア及びイの記載事項並びに図5の図示事項から、ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものは、ガイド11とゲージ差込口9Aとの間に屈曲部を有し、該ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものは、屈曲部を境界として屈曲するものといえる。

カ 上記ア及びイの記載事項及び図5の図示事項から、ゲージ差込口9Aの中心は、車体フレーム2の上方に外れた位置に存在するものといえる。

(2)引用発明
上記(1)の記載事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「幅方向側部に配設された車体フレームを有する自動車に搭載され、内部にオイルパンを有する自動車用エンジンに残存している潤滑油量を点検するためのオイルレベルゲージ装置であって、
オイルレベルゲージ8と、
ガイド11において前記オイルパンを有する自動車用エンジンのオイルパンに接続され、前記ガイド11からゲージ差込口9Aにかけて前記ガイド11、屈曲部、及びゲージ差込口9Aを有し、前記オイルレベルゲージ8を案内するガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものとを有し、
前記ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものの前記ゲージ差込口9Aから前記オイルレベルゲージ8を抜き差しすることにより前記潤滑油量の点検が可能であり、
前記自動車のフロントタイヤハウス6内に前記ゲージ差込口9Aが到来すると共に、前記オイルレベルゲージ8を前記フロントタイヤハウス6の奥側から手前側に向けて引き抜き可能なように、前記屈曲部を境界として屈曲した前記ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるものが配置され、
前記自動車の幅方向外側からの側面視した状態において、前記ゲージ差込口9Aの中心が、前記車体フレームから上方に外れた位置に存在しているオイルレベルゲージ装置。」

第5 対比・判断
1.本願発明1
本願発明1と引用発明とを対比すると、後者の「自動車」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「車両」に相当し、以下同様に、「オイルパン」は「油溜まり部」に、「自動車用エンジン」は「装置」に、「潤滑油量」は「油量」に、「点検」は「検出」に、「オイルレベルゲージ装置」は「油量検出装置」に、「オイルレベルゲージ8」は「オイルレベルゲージ」に、「ガイド11」は「基端部」に、「ガイド11及びオイルレベルゲージガイド9からなるもの」は「ガイドパイプ」に、「フロントタイヤハウス6」は「ホイールハウス」にそれぞれ相当する。
そして、後者の「ゲージ差し込み口9A」は、その機能、構成及び技術的意義からみて前者の「先端」、「先端部」及び「開口」に相当する事項を備えている。同様に、後者の「オイルパンを有する自動車用エンジンのオイルパンに接続され」ることは、前者の「油溜まり部を有する装置のケーシングに設けられた接続口に接続され」ることに相当する。
また、後者の「サイドメンバ」と前者の「車体フレーム」とは、「車体構成部材」という限りで一致する。同様に、後者の「自動車の幅方向外側からの側面視した状態において、前記ゲージ差込口9Aの中心が、前記車体フレームから上方に外れた位置に存在している」ことと前者の「車両の幅方向外側からの側面視した状態において、前記開口の中心が、前記サイドメンバから下方に外れた位置に存在している」こととは、「車両の幅方向外側からの側面視した状態において、前記開口の中心が、前記車体構成部材から外れた位置に存在している」という限りで一致する。

したがって、両者は、
「幅方向側部に配設された車体構成部材を有する車両に搭載され、内部に油溜まり部を有する装置に残存している油量を検出するための油量検出装置であって、
オイルレベルゲージと、
基端部において前記油溜まり部を有する装置のケーシングに設けられた接続口に接続され、前記基端部から先端にかけて前記基端部、屈曲部、及び先端部を有し、前記オイルレベルゲージを案内するガイドパイプとを有し、
前記ガイドパイプの前記先端部に設けられた開口から前記オイルレベルゲージを抜き差しすることにより前記油量の検出が可能であり、
前記車両のホイールハウス内に前記開口が到来すると共に、前記オイルレベルゲージを前記ホイールハウスの奥側から手前側に向けて引き抜き可能なように、前記屈曲部を境界として屈曲した前記ガイドパイプが配置され、
前記車両の幅方向外側からの側面視した状態において、前記開口の中心が、前記車両構成部材から外れた位置に存在している油量検出装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
「車体構成部材」に関し、前者は「サイドメンバ」であるのに対し、後者は「車体フレーム」である点。

[相違点2]
開口の中心が存在する位置に関し、前者は「サイドメンバから下方に外れた位置」であるのに対し、後者は「車体フレームから上方に外れた位置」である点。

事案に鑑み、先ず相違点2について検討するに、引用発明は「オイルレベルケージガイド9」は、フロントタイヤハウス6の下方に延設され、ゲージ差込口9Aは車体に固定されることで、オイルゲージガイド9を延長し操作性及び点検性を向上するものである。すなわち、引用発明においてもオイルレベルゲージの操作性及び点検性は向上しているのであるから、仮にオイルレベルゲージの操作性及び点検性を向上させることを目的とした配置を行うことが設計的事項であるとしても、引用発明において、ゲージ差込口9Aを車体フレームの下方に外れた位置に配置することは、オイルレベルケージの操作性及び点検性に悪影響を与える蓋然性が高いことに鑑みれば、当業者の通常の創作能力の範囲内で想起し得たこととはいえない。
そして、当業者の通常の創作能力の範囲内で、引用発明から相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想到し得たとする他の事情を見出すこともできない。

そして、本願発明1は、相違点2にかかる本願発明1の発明特定事項により、例えば「オイルが他の部品に滴下して悪影響を及ぼすおそれが非常に少ない」などの、引用発明にはない格別顕著な効果も奏する。

したがって、相違点1の検討をするまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-06-28 
出願番号 P2017-192017
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01M)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山本 信平
特許庁審判官 木村 麻乃
水野 治彦
発明の名称 油量検出装置  
代理人 ▲崎▼山 博教  

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