• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1387387
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-24 
確定日 2022-07-19 
事件の表示 特願2018− 33936「情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月 5日出願公開、特開2019−149057、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成30年2月27日の出願であって、令和3年2月22日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年4月15日に意見書と手続補正書が提出され、令和3年10月20日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和3年12月24日に審判請求書と手続補正書が提出され、令和4年3月14日に前置報告書による報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和3年10月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし14に係る発明は、以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2017−134582号公報
引用文献2 特表2014−503894号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和3年12月24日に提出された手続補正書に係る手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「 各々が個人である複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報と、一の企業において重要な貢献を行った個人である一の対象に関する対象情報を、前記一の企業とは異なる企業におけるプロジェクトの組織編成を行うユーザが利用する端末装置から取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記グラフ情報の前記複数のノードのうち、所定の基準に基づいて決定された前記グラフ情報の検索の起点となる起点ノードを起点として、前記グラフ情報を検索することにより、前記複数の対象のうち、前記一の対象である前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する対応対象を抽出する検索部と、
前記検索部により抽出された前記対応対象である人が前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する人材であることを示す情報を、前記プロジェクトの組織編成を行う前記ユーザが利用する前記端末装置に送信する提供部と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。」

なお、本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明9は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、いずれも本願発明1とはカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
図1に示すように、本実施形態のグラフインデックス探索装置0100は、グラフインデックス保持部0101と、未探索ノード保持部0102と、起点選択部0103と、クエリ取得部0104と、判断部0105と、未探索ノード追加部0106と、を有する。」
【0016】
グラフインデックス保持部0101は、複数のベクトルデータをノードとし、近傍にあるノード間をエッジにより接続してなるグラフインデックスを保持する機能を有する。ベクトルデータは前述した画像や音声から抽出した特徴量などがある。また、水位や潮位、地震動(地面の動き)、大気中のCO2やPM2.5の濃度分布など数値で表現されるものすべてである。
【0017】
近傍とは、ベクトル空間におけるノード間の距離における近傍である。近傍であるか否かは種々定めることができる。例えば、あるノードと他のすべてのノードとの距離に基づき近い順にソートした上位X個に該当するノードを近傍のノードとすることができる。また、あるノードから規定の距離範囲内に位置するノードを近傍ノードとしてもよい。なお、ここでいう距離は、例えばユークリッド距離などである。
【0018】
ノード間に接続されるエッジはリンクと称される場合もある、また、エッジは単方向を有するものであってもよいし、双方向を有するものであってもよい。ここでいう方向とは、グラフインデックを用いて検索を行う際に、ノード間に張られたエッジにより辿ることのできる方向を意味する。
【0019】
未探索ノード保持部0102は、未探索ノードを保持するための機能を有する。保持するための機能とは、保持することができるという意味である。
【0020】
本装置においては、後述するクエリを取得し、グラフインデックスを構成するいずれかのノードからエッジにより接続されているノードを辿り、辿ったノードについての情報(例えば、クエリとの距離や接続されているエッジ数など)の取得などを行いながら、クエリに近い距離にある(類似する)ノードを検索するものである。このようにノードを辿ることを探索という。
【0021】
未探索ノードとは、前述の通り、未だ辿られていないノードであり、例えば当該ノードについての情報を取得したり、当該ノードに何らかの処理を施すといったことがなされていないノードである。後述する未探索ノード追加部により未探索ノード保持部に保持されているノードや、すでに未探索ノード保持部に保持されているノードとエッジにより接続しているノードであって未だ未探索ノード保持部に保持されていないノードでもある。
【0022】
未探索ノードの保持にあたり、保持する未探索ノードに何らかの情報を付随させて保持することもできる。例えば、探索における経路として辿られたことを示すフラグを立てたり、辿られることによる処理履歴を付したりすることができる。また、未探索ノードのIDを配列や集合(set,priority queue)といったデータ格納形式で管理することができる。
【0023】
起点選択部0103は、前記グラフインデックスのノードから起点を選択して未探索ノードに追加する機能を有する。起点とは前述の探索を行うときの起点である。起点の選択はランダムに行ってもよいし、何らかのインデックスを用いて行ってもよい。未探索ノードに追加するとは、未探索ノード保持部による保持対象となることを意味する。すなわち、起点として選択されたノードは未探索ノード保持部に保持されることになる。
【0024】
本装置は、ベクトル空間分割によりグラフインデックスが保持するグラフインデックスを構成するノードに対応するベクトルデータをリーフノードとする木構造型インデックスを保持する構成としてもよい。
【0025】
係る木構造型インデックスを保持する場合には、起点選択部は木構造型インデックスに基づいて、後述するクエリが属するベクトル空間にあるベクトルデータから未探索ノードとしての起点を選択することができる。これにより、クエリと近傍にあるノードを起点として探索をすることができ、効率よく探索を行うことが可能となる。ここでの木構造型インデックスによる検索を近似近傍検索とすることで、高速に近傍ノードを取得できる。
【0026】
クエリ取得部0104は、クエリとなるベクトルデータを取得する機能を有する。クエリとは、例えば、類似画像検索においては、学習画像から類似する画像を見つけようとする画像のこと(検索元)をいう。クエリの取得は、例えばネットワークを介してクライアント端末などから取得する。また、クエリとなるベクトルデータとは、検索元となる画像から抽出した特徴量のように、クエリをベクトルデータで表わしたものとなる。
【0027】
判断部0105は、前記未探索ノードから順次ノードを選択し、選択されたノードがまだ後述する範囲判定を行っていないノードの場合にのみ、選択されたノードにエッジで接続された近傍ノードとクエリとの関係が所定の関係にあるか判断する(範囲判定)機能を有する。当該近傍ノードとクエリとの関係とは、例えば、クエリとなるベクトルデータを中心として所定の距離(ベクトル空間における距離)範囲内に当該近傍ノードが存在するか否かといった関係である。このように規定される範囲を検索範囲という。この検索範囲内か否かは、クエリと当該近傍ノードとの距離によって判断できる。」

「【0037】
図2を用いて本機能について検索処理と併せて説明する。図2は、グラフインデックスを用いて探索を行う処理について説明するための概念図である。図中の符号0201で示すのがクエリとなるベクトルデータ(以下、単にクエリという)である。また、符号0202で示すのは起点として選択されたノードである。起点となったノードは未探索ノードとして保持される。なお、起点を選択した時点で未探索ノード保持部に保持されるノードは、起点となったノードのみである。起点は複数のノードから構成されてもよい。
【0038】
判断部は、未探索ノード保持部に保持されるノードを選択する。起点が複数存在する場合には、それぞれの起点から順次検索処理を行う。まず、選択された起点ノードが上述した探索範囲内にあるか判断する。検索の初期段階において検索範囲は無限大に設定されているため、起点となったノードは探索範囲内にあると判断することができる。この判断結果により起点となったノードに接続されている近傍ノード追加される。追加される近傍ノードは、図中のノードa(0203)、ノードb(0204)及びノードc(0205)である。これら複数の近傍ノードを未探索ノードに追加するにあたり所定の順に追加する態様については後述する。ここで、判断部により判断された起点ノードは未探索ノードではなくなる。
【0039】
判断部は、上述の通り未探索ノードに追加されたノードa、ノードb及びノードcを順次選択し、それぞれのノードが探索範囲内(0211)にあるかの判断をする。なお、この探索範囲はクエリと起点との距離を検索範囲(0210)とし、これをα倍したものである。具体的には、検索範囲rに(1+ε)を乗じたものが探索範囲である(εは探索範囲係数という)。図示するように、各ノードは探索範囲内にあるので未探索ノード保持部に追加して保持する。
【0040】
ここでは、クエリとの距離の近い順に優先度を付けたキュー構造で保持するものとする。この場合における未探索ノード保持部の保持態様の概念を図3に示す。図示するように、クエリとの距離に基づき優先度が各ノードに付される。ここでは、最もクエリに近いノードaの優先度が「1」で、次に近いノードbに優先度「2」が付され、最もクエリから遠いノードcに優先度「3」が付される。
【0041】
ここで、起点はすでに判断部により判断が済んでいるため優先度は付されない。このようなノードを未探索ノード保持部の保持対象から外してもよいし、本図に示すように探索済のフラグを付して保持していてもよい。
【0042】
このように未探索ノード保持部にノードが追加されると、判断部はさらに追加されたノードに接続されている近傍ノードについて所定の関係にあるかの判断をする。ここで、図3に示したように、未探索ノード保持部は優先度を付けたキュー構造にてノードを保持しているので、判断部は、優先度「1」が付されているノードaを選択して判断を行う。ノードaについて前述のような判断を行った後に、優先度に従いノードb、ノードcと順次選択して同様に判断する。そして、判断がなされたノードa、ノードb及びノードcに探索済のフラグを立てる。
【0043】
また、ノードa、ノードb及びノードcのそれぞれについて、検索範囲内にあるか判断し、検索範囲内にあるノードについては検索結果として保持する。そして検索結果として保持されるノードとクエリとの距離に基づき検索範囲を狭めていく。すなわち検索結果として保持するノードの数(検索数)の上限を予め定めておき(ks個)、前述の検索数がksを超えた場合にはクエリからの距離が遠い順に超過分のノードを検索結果としての保持対象から外し、そのうえで検索結果として保持されるノードのうちクエリから最遠のノードまでの距離を新たな検索範囲とする。このように検索範囲を狭めながら探索を進めていくことで効率よくクエリに近づいていくことができる。
【0044】
以降も、上述した処理を行いながらノードを辿ることによりクエリに類似するノードを検索する。検索の終了は、例えば、検索範囲を狭めていき、探索範囲内に対象となる未探索ノードが存在しなくなったことを条件とするなどして終了する。」

「【図1】



「【図2】



「【図3】



(2)引用発明
前記(1)より、特に下線部に着目すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 グラフインデックス保持部0101と、未探索ノード保持部0102と、起点選択部0103と、クエリ取得部0104と、判断部0105と、未探索ノード追加部0106と、を有するグラフインデックス探索装置0100であって、
グラフインデックス保持部0101は、複数のベクトルデータをノードとし、近傍にあるノード間をエッジにより接続してなるグラフインデックスを保持する機能を有し、
ベクトルデータは前述した画像や音声から抽出した特徴量などがあり、また、水位や潮位、地震動(地面の動き)、大気中のCO2やPM2.5の濃度分布など数値で表現されるものすべてであり、
未探索ノード保持部0102は、未探索ノードを保持するための機能を有し、
起点選択部0103は、前記グラフインデックスのノードから起点を選択して未探索ノードに追加する機能を有し、起点の選択はランダムに行ってもよいし、何らかのインデックスを用いて行ってもよく、
クエリ取得部0104は、クエリとなるベクトルデータを取得する機能を有し、
判断部0105は、前記未探索ノードから順次ノードを選択し、選択されたノードが選択されたノードにエッジで接続された近傍ノードとクエリとの関係が所定の関係にあるか判断する(範囲判定)機能を有し、
当該近傍ノードとクエリとの関係とは、クエリとなるベクトルデータを中心として所定の距離(ベクトル空間における距離)範囲(検索範囲)内に当該近傍ノードが存在するか否かといった関係であり、
検索処理において、ノードを辿ることによりクエリに類似するノードを検索し、検索の終了は、検索範囲を狭めていき、探索範囲内に対象となる未探索ノードが存在しなくなったことを条件とするなどして終了する、
グラフインデックス探索装置0100。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
ステップ220で、類似サーチエンジン130は、現在の患者の情報110(又は関連するこのサブセット)を用いて、過去の患者のデータベース140をサーチする。そして、類似する過去の患者を見つける。すなわち、特徴(例えば、歳、状況、医療の履歴等)が、現在の患者と類似している過去の患者である。
【0016】
ステップ220で、サーチが行われているとき、現在の患者と過去の患者は、特徴の集合として表される。各々は、患者個人の特徴である。特徴としては、例えば、癌のタイプなど、現在の患者の情報に関連して上述したいかなるものであってもよい。量的な特徴は、二進の値で表現される。例えば、検討中の特徴が糖尿病である場合、もし現在の患者が糖尿病でない場合は、0の値が付与され、糖尿病であれば1の値が付与される。複数の特徴を持つ場合には、例えば、取り得る値は、同じスケールで表現される。例えば、患者が、4つの異なる外形のある病変のタイプを持つ場合、この病変に対応する特徴に対して、病変の形状に依存して、所定の0.25、0.50、0.75、又は1がアサインされる。
【0017】
…(中略)…
【0018】
例えば、例示的なサーチにおいて、K個の特徴を有する場合、各特徴は、1からKまでの特徴インデクスkによって識別できる。そして、各特徴は、重みwkを持つことができる。これは、比較において、その特定の特徴に対して与えられる。1つの例としては、全てのwkの合計が1に等しくなるようにする。現在の患者と、所定の過去の患者との間の類似度は、各特徴との間の差に基づいて、かつ特徴の重みに基づいて、「距離メトリック」として表される。この距離メトリックは、ユークリッド距離、シティーブロック距離、マハラノビスの距離、又はこの計算に適したその他のいかなるメトリック、に基づいて計算されてもよい。1つの例示的実施形態において、現在の患者iと、過去の患者jとの距離は、以下のように計算できる。…(以下省略)」

3 引用文献3について
前置報告書において提示された引用文献3(国際公開第2010/026900号)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「[0008] また、例えば、人間関係を使って類似の興味を有する人物が検索される場合、「人物Aとグラフ構造上での関係で近くに位置し、かつ、興味範囲が類似の人物」を探すよりも、「人物Aとグラフ構造上での関係で遠くに位置し、かつ、興味範囲が類似の人物」を探す方が、意外な発見やセレンディピティ(掘り出し物)につながることが多い。なぜなら、「人物Aとグラフ構造上での関係で近くに位置し、かつ、興味範囲が類似の人物」は既に人物Aと知り合いであったり、人物Aと似たような経験や知識を持っている可能性が高い。これに対し、「人物Aとグラフ構造上での関係で遠くに位置し、かつ、興味範囲が類似の人物」は、人物Aとは周囲の人間関係や環境が異なるため、異なる経験や知識をもっている可能性が高いからである。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「ベクトルデータ」は、「画像や音声から抽出した特徴量などがあり、また、水位や潮位、地震動(地面の動き)、大気中のCO2やPM2.5の濃度分布など数値で表現されるものすべて」であり、「画像」、「音声」等の“対象”の特徴を示す情報であるから、当該“対象”と同一視することができる。
また、引用発明における「複数のベクトルデータをノードとし、近傍にあるノード間をエッジにより接続してなるグラフインデックス」において、「グラフインデックス」は、「複数のベクトルデータ」の各々に対応したものであり、かつ、「近傍」の関係にある「ノード」間を「エッジ」で「接続」すなわち“連結”してなる「グラフ」形式の情報である。
そして、「近傍」の関係にある複数の「ノード」は、“類似性”に応じて「接続」(“連結”)されているといえ、また、そのような「ノード」に対応する「ベクトルデータ」と同一視できる複数の“対象”も“類似性”を有しているといえる。
よって、引用発明の「グラフインデックス」と、本願発明1の「各々が個人である複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報」とは、「複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報」である点において共通する。

イ 引用発明の「グラフインデックス保持部0101」は、「グラフインデックス」を保持する機能を有しており、保持している以上、どこかから「グラフインデックス」を取得していることは自明である。

ウ 引用発明の「クエリ取得部0104」は、「クエリとなるベクトルデータ」を取得する機能を有したものである。
そして、前記「クエリとなるベクトルデータ」は、上記アを参酌すれば、“一の対象に関する対象情報”といい得るものである。

エ 上記イ及びウを総合すると、引用発明の「グラフインデックス保持部0101」及び「クエリ取得部0104」と、本願発明1の「各々が個人である複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報と、一の企業において重要な貢献を行った個人である一の対象に関する対象情報を、前記一の企業とは異なる企業におけるプロジェクトの組織編成を行うユーザが利用する端末装置から取得する取得部」とは、「複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報と、一の対象に関する対象情報を、取得する取得部」である点において共通する。

オ 引用発明の「判断部0105は、前記未探索ノードから順次ノードを選択し、選択されたノードが選択されたノードにエッジで接続された近傍ノードとクエリとの関係が所定の関係にあるか判断する(範囲判定)機能を有し」及び「検索処理において、ノードを辿ることによりクエリに類似するノードを検索し、検索の終了は、検索範囲を狭めていき、探索範囲内に対象となる未探索ノードが存在しなくなったことを条件とするなどして終了する」との構成によれば、「判断部0105」は、「未探索ノード」を「検索」の起点として、探索範囲内に対象となる未探索ノードが存在しなくなった等の条件を満たすまで、順次、範囲判定に基づいてノードを選択することによりノードを辿り、「クエリに類似するノードを検索」する「検索処理」を行うものであり、当該「検索処理」は、上記アを参酌すれば、本願発明1の「グラフ情報の検索」に相当する。
引用発明の「判断部0105は、前記未探索ノードから順次ノードを選択し、」及び「起点選択部0103は、前記グラフインデックスのノードから起点を選択して未探索ノードに追加する機能を有し、起点の選択はランダムに行ってもよいし、何らかのインデックスを用いて行ってもよく」との構成によれば、「未探索ノード」は、前記「検索処理」の「起点」となる「ノード」(“起点ノード”)であるから、本願発明1の「グラフ情報の検索の起点となる起点ノード」に相当する。
また、引用発明において、「起点」の選択、すなわち、“起点ノード”の選択は、「何らかのインデックスを用いて」行われる場合を含むから、本願発明1の「所定の基準に基づいて決定」することに含まれる。
また、引用発明の「クエリに類似するノードを検索」することは、本願発明1の「前記一の対象」「に類似する対応対象を抽出する」ことに相当する。
よって、上記エを参酌すれば、引用発明の「起点選択部0103」及び「判断部0105」と、本願発明1の「前記取得部により取得された前記グラフ情報の前記複数のノードのうち、所定の基準に基づいて決定された前記グラフ情報の検索の起点となる起点ノードを起点として、前記グラフ情報を検索することにより、前記複数の対象のうち、前記一の対象である前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する対応対象を抽出する検索部」とは、「前記取得部により取得された前記グラフ情報の前記複数のノードのうち、所定の基準に基づいて決定された前記グラフ情報の検索の起点となる起点ノードを起点として、前記グラフ情報を検索することにより、前記複数の対象のうち、前記一の対象に類似する対応対象を抽出する検索部」である点において共通する。

カ 引用発明の「グラフインデックス探索装置0100」は、後述する相違点を除いて本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

(2)一致点、相違点
前記(1)より、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

・一致点
「 複数の対象の各々に対応する複数のノードが、前記複数の対象の類似性に応じて連結されたグラフ情報と、一の対象に関する対象情報を、取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記グラフ情報の前記複数のノードのうち、所定の基準に基づいて決定された前記グラフ情報の検索の起点となる起点ノードを起点として、前記グラフ情報を検索することにより、前記複数の対象のうち、前記一の対象に類似する対応対象を抽出する検索部と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。」

・相違点
(相違点1)
「対象」が、本願発明1においては、「個人」であるのに対し、引用発明の「ベクトルデータ」は、「画像や音声から抽出した特徴量などがあり、また、水位や潮位、地震動(地面の動き)、大気中のCO2やPM2.5の濃度分布など数値で表現されるものすべて」としているものの、「個人」に関する特徴量などであることを具体的に特定していない点。

(相違点2)
「一の対象に関する対象情報」が、本願発明1においては、「一の企業において重要な貢献を行った個人である一の対象に関する対象情報」であるのに対し、引用発明の「クエリとなるベクトルデータ」はそのような構成を備えていない点。

(相違点3)
本願発明1においては、「一の対象に関する対象情報」を「前記一の企業とは異なる企業におけるプロジェクトの組織編成を行うユーザが利用する端末装置」から取得するのに対し、引用発明の「クエリとなるベクトルデータ」については、その取得元を具体的に特定していない点。

(相違点4)
本願発明1においては、「検索部」は、「前記一の対象である前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する対応対象を抽出する」ものであるのに対し、引用発明の「判断部0105」は、そのような処理を行うことを具体的に特定していない点。

(相違点5)
本願発明1は、「前記検索部により抽出された前記対応対象である人が前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する人材であることを示す情報を、前記プロジェクトの組織編成を行う前記ユーザが利用する前記端末装置に送信する提供部」を備えるのに対し、引用発明は、当該構成を具体的に特定していない点。

(3)相違点についての判断
事案に鑑みて、相違点2ないし5についてまとめて先に検討する。
本願発明1の相違点2ないし5に係る構成によれば、本願発明1は、「前記一の企業とは異なる企業におけるプロジェクトの組織編成を行うユーザが利用する端末装置」から「一の企業において重要な貢献を行った個人である一の対象に関する対象情報」を取得し、「前記一の対象である前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する対応対象」を抽出して、「抽出された前記対応対象である人が前記一の企業において重要な貢献を行った前記個人に類似する人材であることを示す情報を、前記プロジェクトの組織編成を行う前記ユーザが利用する前記端末装置に送信する」という一連のまとまった技術思想を有するものといえる。
引用文献2に記載されているように、患者の特徴集合間の距離に基づいて特徴が現在の患者と類似している過去の患者の検索を行うこと、及び、引用文献3に記載されているように、グラフ構造に基づいて興味範囲が類似する人物又は類似しない人物を検索することは、本願出願時における周知技術といえる。
しかしながら、引用文献1ないし3のいずれにも、本願発明1の上記技術思想に対応する事項は記載も示唆もされていないから、仮に、引用発明に、引用文献2及び3に記載された周知技術を適用し得るとしても、引用発明の「ベクトルデータ」が「個人」の特徴を示す情報となるに留まり、本願発明1の相違点2ないし5に係る構成には到達しない。
加えて、「個人」の特徴を示す情報を検索に用いるシステムにおいて、相違点2ないし5に係る本願発明1の構成が、本願出願時における周知技術であったとも認められない。
したがって、相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて、引用文献2及び3に記載された周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、引用文献2及び3に記載された周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明8及び9について
本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明9は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、いずれも本願発明1の相違点2ないし5に係る構成に対応する技術事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて、引用文献2及び3に記載された周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者であっても、引用発明に基づいて、引用文献2及び3に記載された周知技術を参酌することにより容易に発明をすることができたものとはいえない以上、当業者が引用文献1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-06 
出願番号 P2018-033936
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 須田 勝巳
特許庁審判官 児玉 崇晶
林 毅
発明の名称 情報処理装置、情報処理方法、及び情報処理プログラム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ