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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45D |
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管理番号 | 1387430 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2022-04-01 |
確定日 | 2022-07-19 |
事件の表示 | 特願2020− 71577「積層剥離容器入り化粧料」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月21日出願公開、特開2021−166667、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 経緯の概略 本願は、令和2年4月13日の出願であって、令和3年10月7日付けで拒絶の理由が通知され、令和3年12月1日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和4年2月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされた。 これに対し、令和4年4月1日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、令和4年5月16日に前置報告がされた。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。すなわち、本願の請求項1〜7に係る発明は、下記引用文献1〜3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (引用文献) 1 特開2015−134729号公報 2 特開2019−64616号公報 3 特開2016−141419号公報 第3 本願発明 本願の請求項1〜6に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、令和4年4月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 【請求項1】 積層剥離容器に充填された化粧料であって、 前記化粧料は融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形であり、 外力を加えた状態では液状になることを特徴とし、 前記化粧料は前記積層剥離容器内において固形であり、前記積層剥離容器から吐出された際には液体に変化する化粧料であり、 前記積層剥離容器は、ポンプタイプである、積層剥離容器入り化粧料。 【請求項2】 前記融点は40〜80℃の範囲内にある、請求項1に記載の積層剥離容器入り化粧料。 【請求項3】 前記化粧料は、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、クリーム、整髪料である、請求項1または2に記載の積層剥離容器入り化粧料。 【請求項4】 前記外力は、撹拌による物理的破断である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。 【請求項5】 前記積層剥離容器は、化粧料である内容物を収容する収容部と、前記収容部から前記化粧料を排出する口部とを備え、 前記収容部および前記口部は外層と内層から構成され、前記化粧料は内層に充填されており、 前記化粧料の減少に伴って、前記収容部において前記内層が前記外層から剥離し収縮する積層剥離容器である、請求項1〜4のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料。 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の積層剥離容器入り化粧料の製造方法であって、前記化粧料は融点以上の温度範囲まで加熱され、液体の状態で積層剥離容器に充填されることを特徴とする、積層剥離容器入り化粧料の製造方法。 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 (1) 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与した。以下同様。)。 ・「【請求項1】 身体をマッサージする際に用いられるボディマッサージ用化粧料であって、 主成分としてのオイル成分と、該オイル成分に対して1〜10wt%のポリエチレンとが含有され、少なくとも0℃〜45℃の使用温度範囲においてゲル状態となる、 ことを特徴とするボディマッサージ用化粧料。 【請求項2】 請求項1において、 前記ゲル状態は、形状を保持できると共に手指を押し込むことができる硬さであり、 外力を付与したときに、前記ゲル状態が液状オイルに変化する、 ことを特徴とするボディマッサージ用化粧料。」 ・「【0001】 本発明は、身体をマッサージする際に用いるボディマッサージ用化粧料に関する。」 ・「【0003】 ところで、エステティックサロンにおいては、オイルマッサージを行うに際して、施術者が、一旦、液状のマッサージオイルを収容する収容容器からそのマッサージオイルを手に取り出し、その手で受け止めたマッサージオイルを顧客の身体上に塗布している。このため、マッサージを施す身体の面積が大きいこともあり、施術者とすれば、できるだけ多量のマッサージオイルを手で受け止めたい。」 ・「【0005】 しかし、マッサージオイルは、液状であり、多量のマッサージオイルを手に取り出しても、手の指間から液垂れしてしまうことになり、手で取り出せるマッサージオイル量には自ずと限界がある。このため、施術者は、マッサージオイルを手の指間から液垂れしない範囲で取り出さなければならず、これに伴い、マッサージオイルの収容容器からの取り出し回数が増え、施術者の負担も重くなっている。 特に、冬場においては、マッサージオイルと顧客体温との差に基づき顧客が冷感を感じることを回避するために、マッサージオイルを暖めて使用されることがあり、この場合には、マッサージオイルの粘性が一層、低下し、収容容器からのマッサージオイルの1回当たりの取り出し量がさらに少なくなることに基づき、施術者の負担がより重いものとなる。」 ・「【0006】 本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的は、身体に対するオイルの良好な性質を確保しつつ、手に取り出すことができる量を極力、多くできるボディマッサージ用化粧料を提供することにある。」 ・「【0008】 本発明(請求項1に係る発明)によれば、当該ボディマッサージ用化粧料が、通常(通常温度で外力を作用させないとき)、ゲル状態となることから、そのボディマッサージ用化粧料をマッサージオイルに比べて多く手に取り出すことができる。 しかも、当該ボディマッサージ用化粧料を、少なくとも0℃〜45℃の範囲で温度が高い側に変化させようとも、ゲル状態(粘度状態)の低下を極力抑えてそのゲル状態を維持でき、当該ボディマッサージ用オイル化粧料を暖めた上で使用する場合においても、多量のボディマッサージ用化粧料を手に取り出すことができる。 その一方で、当該ボディマッサージ用化粧料を取り出して身体上に運び、そのボディマッサージ用化粧料に対して手指により物理的破断力を付与すれば、そのボディマッサージ用化粧料はオイル化(液状化)することになり、そのオイルの性質に基づき、良好な塗布性、冷感、刺激感の抑制、蒸散抑制(水分含有のものに比して蒸散が抑制されること)による長時間マッサージ等が可能となる。 したがって、身体に対するオイルの良好な性質を確保しつつ、通常の使用温度時は勿論、使用温度を高くして使用する場合であっても手に取り出すことができる量を極力、多くできるボディマッサージ用化粧料を提供できる。 【0009】 請求項2に係る発明によれば、ゲル状態は、形状を保持できると共に手指を押し込むことができる硬さであることから、手指で多量の当該ボディマッサージ用化粧料を具体的につかみとることができる。また、当該ボディマッサージ用化粧料に外力を付与したときに、ゲル状態が液状オイルに変化することから、当該ボディマッサージ用化粧料を、身体に対するマッサージに際して、オイル同様に利用できる。」 ・「【0017】 3.当該ボディマッサージ用化粧料は、チキソトロピー性を有している。 (1)当該ボディマッサージ用化粧料のチキソトロピー性は、外力を作用させないときにはゲル状態を示し、外力を作用させたときには液状状態を示すことになっている。 (1−1)図1には、通常温度において、当該ボディマッサージ用化粧料に対する外力の有無により、そのボディマッサージ用化粧料がどのような粘度状態(硬度)にあるかを、比較対象としての一般的マッサージオイル、一般的マッサージクリームの粘度状態と共に示されている。この場合、試験材料としての当該ボディマッサージ用化粧料、一般的マッサージオイル、一般的マッサージクリームについては、下記組成、温度のものを用いて、下記測定試験を行った。 (i)試験材料の組成 当該ボディマッサージ用化粧料:後述の実施例に係るもの。 一般的マッサージオイル:ホホバオイルのみ。 … (ii)試験材料の温度:25℃ (iii)試験方法 当該ボディマッサージ用化粧料がチキソトロピー性を有し、その粘度変化の範囲が大きいことから、回転粘度計(低粘度範囲測定機)とレオメーター(粘弾性測定装置(高粘度範囲測定機))とを用いて、各試験材料の各粘度状態(回転粘度計値(mPa・S)、レオメーター値(硬度:g))を測定した。この場合、当該ボディマッサージ用化粧料の測定に際しては、初期状態を想定して外力を加えない状態での粘度状態を測定すると共に、外力が加えられた使用状態を想定して、撹拌棒による物理的ストレス(撹拌)により物理的破断を生じさせた後の粘度状態を測定した。 回転粘度計(東機産業製:BII形粘度計) 動作条件:スピンドルL4(形状、径の種類を特定)を使用。25℃、50rpm・30secにて測定。 レオメーター(株式会社レオテック社製) 動作条件:粘性用(4)アダプターの径D10mmを用い、落下速度1mm/sec、100gスケール感度。 【0018】 (1−2)図1によれば、当該ボディマッサージ用化粧料の調整後、そのままの状態(外力を加えない状態)のものに対する粘度状態を測定した結果については、低粘度範囲を測定する回転粘度計においては、その構造特性と当該ボディマッサージ用化粧料のチキソトロピー性とによって動的スリップ現象を起こし、測定が不可能となった。これに対して、高粘度範囲を測定するレオメーター(粘弾性測定装置)による測定においては、同じ試験材料(当該ボディマッサージ用化粧料)に対してレオメーター値(硬度)として、ゲル状態である370gを示した。 … (1−3)上記結果からも明らかなように、当該ボディマッサージ用化粧料は、他の試験材料と異なり、外力を作用させないときにはゲル状態を示すことになり、当該ボディマッサージ用化粧料の取り出し時には、施術者の手に多くの量を取り出すことができることになる。 【0019】 (1−4)また、図1によれば、当該ボディマッサージ用化粧料に撹拌棒により物理的ストレス(撹拌)を付与することにより物理的破断を生じさせた後(外力が加えられた使用状態を想定)の粘度状態の測定結果については、低粘度範囲を測定する回転粘度計においては、液状状態を示す5240mPa・Sを示し、一般的マッサージオイルの値よりも多少、大きくなるものの、一般的マッサージクリームよりも小さい値となった。一方、高粘度範囲を測定するレオメーターにおいては、当該ボディマッサージ用化粧料の粘度状態(硬さ)が極めて低い液状状態になるため、そのレオメーター値は機器の測定限界以下となった。 … 【0020】 (2)当該ボディマッサージ用化粧料のチキソトロピー性は、少なくとも使用温度範囲0℃〜45℃においては、温度依存性が低い傾向を示すものとなっている。 (2−1)図2は、当該ボディマッサージ化粧料(後述の実施例に示すもの)の初期硬度(外力を加えない状態での前述のレオメーター値)と温度との関係を示している。 (2−2)この図2によれば、当該ボディマッサージ化粧料の温度上昇に伴い、初期硬度はある程度低下するもののゲル状態が維持され、そのゲル状態の初期硬度は40℃辺りで飽和状態(下げ止まり)となった。この飽和状態については、当該ボディマッサージ用化粧料の融点(オイル成分とポリエチレンの混合融点)まで続き、その融点温度(液状化温度)以上おいて、初期硬度が大きく低下する(液状化する)ものと考えられるが、当該ボディマッサージ用化粧料の使用温度範囲が0℃〜45℃の範囲と考えられることから、実質上の問題点が生じることはない。尚、当該ボディマッサージ用化粧料の正確な融点は明確ではないが、60℃において大きく変化して回転粘度計値が3550mPa・Sを示すことになった。このことから、60℃は当該ボディマッサージ用化粧料の融点を超えた温度と考えられる。」 ・「【0023】 4.このように、エステティックサロン等において、施術者が本実施形態におけるボディマッサージ用化粧料を用いれば、容器から当該ボディマッサージ用化粧料を取り出すに際して、そのゲル化状態を利用して、容器内の当該ボディマッサージ用化粧料に手指を深く押し込んで、多量のボディマッサージ用化粧料をつかみ出すことができる。… 【0024】 この後、施術者は、顧客身体上のボディマッサージ用化粧料に対して外力を付与しつつマッサージを行えば、ボディマッサージ用化粧料は液状化することになり、その主成分をなすオイル成分が、マッサージオイル同様、良好な塗布性、冷感、刺激感の抑制、蒸散抑制(オイル状態の長時間維持)による長時間マッサージ等を可能とする。」 ・「【図1】 」 ・「【図2】 」 (2) このような引用文献1の記載及び図面の記載からすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 (引用発明) 「手指を深く押し込んでつかみ出すことができる容器に充填されたボディマッサージ用化粧料であって、 前記ボディマッサージ用化粧料は少なくとも0℃〜45℃の使用温度範囲において、外力を加えない状態ではゲル状態であり、 外力を加えた状態では液状になり、 前記ボディマッサージ用化粧料は前記容器内においてゲル状態であり、前記容器からつかみ出され外力を加えた際には液状化する化粧料である、手指を深く押し込んでつかみ出すことができる容器入りボディマッサージ用化粧料。」 2 引用文献2 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ・「【0001】 本発明は、外層体の内側に内層体が剥離可能に積層されてなる二重構造の積層剥離容器に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、化粧水等の化粧料、シャンプー、リンス、液体石鹸等のトイレタリー、水、酒、醤油等の食品、あるいは薬品などを内容物として収容する容器として、外層体の内側に内層体が剥離可能に積層されてなる二重構造の積層剥離容器が知られている。」 ・「【0004】 このような構成の積層剥離容器では、胴部をスクイズ(押圧)して内容物を吐出キャップを通して外部に吐出させた後、胴部のスクイズを解除すると、吐出キャップの逆止弁により吐出口から内層体の内部への外気の流入が阻止されるとともに外気導入孔を通して外層体と内層体の間の空間に外気が導入されるので、内層体を減容変形させたまま外層体のみを元の形状に復元させることができる。したがって、内層体の内部の内容物を外気と置換させることなく吐出させることで内層体の内部に残った内容物を空気と接触し難くして、その劣化や変質を抑制することができる。」 ・「【0019】 図1に示す本発明の一実施の形態である積層剥離容器1は、例えば化粧水等の化粧料、シャンプー、リンス、液体石鹸等のトイレタリー、水、酒、醤油等の食品、あるいは薬品などを内容物として収容する用途に用いることができるものである。 【0020】 積層剥離容器1は、外層体10と、外層体10の内側に剥離可能に積層された内層体20とを有している。すなわち、積層剥離容器1は外層体10と内層体20とを有する二重構造となっている。」 ・「【0037】 このような構成の積層剥離容器1は、内層体20の内部に内容物を収容し、口部11に吐出キャップを打栓により装着した状態で、胴部13をスクイズして凹んだ形状に変形させることにより、内層体20の内部に収容されている内容物を口部11から押し出して吐出キャップから外部に吐出させることができる。このように、積層剥離容器1は、胴部13をスクイズすることにより内容物を吐出させるスクイズタイプのものとなっている。 【0038】 一方、胴部13のスクイズを解除すると、吐出キャップの吐出用逆止弁により吐出口から内層体20の内部への外気の流入が阻止されるとともに外気導入孔11eを通して外層体10と内層体20の間に外気が導入され、内層体20が減容変形したまま外層体10のみが元の形状に復元する。したがって、内層体20の内部の内容物を外気と置換させることなく吐出させて、内層体20の内部に残った内容物の劣化や変質を抑制することができる。」 ・「【図1】 」 3 引用文献3 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ・「【0002】 化粧水などの化粧料や、シャンプーやリンスあるいは液体石鹸、また食品調味料などを収納する容器としては、容器の外殻を形成する外層体と、該外層体の内側に収められる減容変形自在な内層体とを備え、外層体に、内層体との相互間に通じる外気導入用の開口を設けて、内容物の吐出に伴って内層体のみを減容させるようにした二重容器(デラミ容器とも言う)が知られている。 【0003】 また、内容物の吐出方式としては、外層体の口部に装着したポンプによるものや、主に外層体の胴部をスクイズすることによるもの、更に、主に内容物の自重によるもの…等がある。ポンプを利用する容器では、構造が複雑になる上、コストの増大が避けられず、また、外層体のスクイズを利用する容器では、構造が比較的簡素化されるものの、内層体のみを減容させる為には、外層体への押圧時には外気導入用の開口を閉じ、押圧を解除すると開く外気導入弁を設ける必要がある。一方、内容物の自重を利用する容器では、構造も簡単である上、外気導入弁も不要であることから、コスト削減にも優れている。」 ・「【図1】 」 4 その他の文献について 前置報告にて示された引用文献4〜6には、以下の事項が記載されている。 (1) 引用文献4(特開平9−30577号公報) ・「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば各種化粧料収納容器等に使用されている、吸上げポンプ装着用二重容器体に関する。」 ・「【0002】 …容器体を、合成樹脂製外容器体と、該外容器体内面へ剥離可能に張設した、上記外容器体に比して可撓性に富む袋状の合成樹脂製内容器体とで形成し、かつ外容器体一部に外気吸入孔を穿設した、吸上げポンプ装着用の二重容器体が知られている。該容器体は装着されたポンプの操作で内容器体内のクリーム状物が吸上げられると共に、そのクリーム状物減少による内容器体負圧化で外気吸入孔から内外容器体間に外気が入って内容器体胴部が収縮するよう設けられたものである。」 ・「【0007】 【発明の実施の形態】1は内外二重とした容器体で、該容器体は、胴部2上端から肩部3を介して口頸部4を起立する外容器体5と、同様に胴部6上端から肩部7を介して口頸部8を起立する内容器体9とで形成され、内容器体口頸部上端に付設した外向きフランジ10を外容器体口頸部4の上端面へ係合させている。内容器体は外容器体に比して可撓性に富む袋状の合成樹脂材で形成され、その外壁面を外容器体内壁面へ剥離可能に張設されている。但し一部には口頸部上端から胴部の下部まで、剥離不能に接着した接着部11を縦設している。又外容器体口頸部の一部には外気吸入孔12を穿設し、かつその口頸部外面に、内容器体内収納物としてのクリーム状物吸上げ用ポンプ13の装着筒14螺合用ねじ15を付設している。外気吸入孔12は肩部等、口頸部以外の部分に穿設してもよい。尚上記二重容器体の構造は公知である。」 ・「【図1】 」 (2) 引用文献5(特開平9−12070号公報) ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、クリーム状物吐出容器に関する。」 ・「【0002】 …シリンダを容器体内に垂下し、該容器体の口頸部に、上記シリンダ及び該シリンダ内から上下動可能に起立する作動部材からなるポンプを装着し、該ポンプの作動により、上記容器体内面に付設した密閉袋内のクリーム状物を吐出可能なポンプ付き容器が開示されている。該ポンプ付き容器は、吐出に伴う収納物の減少に応じて、袋が収縮変形して内部が負圧化しないから、クリーム状物を円滑に吐出できる。」 ・「【0017】 【実施例】図1は本発明のクリーム状物吐出容器1を示す。該クリーム状物吐出容器は、容器体、ポンプ装置、及びシール部材とからなる。… 【0018】上記容器体2は胴部3上部から肩部4を介して口頸部5を起立しており、上記容器体2の内壁全面に、可撓性に富む肉薄シート製の袋6を剥離可能に付着している。」 ・「【図1】 」 (3) 引用文献6(実願平9−3125号(実開平9−566号)のCD−ROM) ・「【0001】 【産業上の利用分野】 本願考案は、吸引式の液状物質注出ポンプ装置に関し、更に詳細には、中空容器内の高粘性の内容物を注出するのに適した吸引式の注出ポンプに関するものである。」 ・「【0002】 【従来の技術】 中空容器内に充填されている比較的粘性の大きな液状物を一定量づつ注出して使用する従来の注出ポンプ装置は、図6に示されるように、中空容器の口頸部に装着して注出作動を行うポンプ装置が多用されている。 そして、このような注出ポンプ装置は、一般的には内容物を注出操作するポンプ本体部分3と、その先端部に装着する筒部の下端部から筒状杆が伸長した吸引杆本体部分4とから構成されている。 【0003】 上記のような吸引杆本体4においては、前記筒状杆下端の端面が開放されていて、その開放部から筒状杆の内部通路を介してポンプ本体3へ内容物を吸引するようになっている。 前記ポンプ本体3には、注出操作を行う作動部5が取り付けられ、該作動部5を押し込むことによりポンプ本体3が吸引作用をして、内容物が吸引杆本体4の筒状杆下端面から吸引されて、作動部5の吐出口5aから注出される。 このような従来のポンプ装置には、シリンダー部を往復動せしめて、内部を加圧して注出する形式のものと、シリンダー内を減圧して吸引注出する形式のものとがある。 【0004】 ところで、このような注出ポンプのうちで、吸引式の注出ポンプ装置が使用される粘性が高い内容物を収容した容器には、大別して2種類あるが、その1つは図6に示されるように外容器1の内部に、更に内容物が充填された可撓性の密閉袋(パウチ)6がセットされたものと、他のもう1つは積層ブロープラスチックボトルと称されるところの、内容物が充填された最内層とその外側の層とが自在に剥離するように構成された二重構造のものとがある。 【0005】 そして、この種のボトルは、内容物が直接内部に充填され、内容物の充填後、時間の経過と共に密閉状態のまま内容物の体積が減って減圧した時、或は、ポンプ等により内容物が抽出されてボトル内が減圧した時に、ボトルの外観形状が変形して醜くなるのを防止すべく、最内層が負圧による収縮作用力により外側の層から剥離し、その最内層自体が独立した内袋となって収縮変形するように構成されているのである。」 ・「【0021】 このように本願考案の第1の実施例に係る吸引式の注出ポンプ装置10について、実際に容器内に残った内容物の残量率を実験で求めたところ、次のような結果が得られた。 すなわち、パウチ容器に充填された内容量700gの化粧品クリーム材を、前記した通りの実施例に係る注出ポンプ装置10で吸引しながら注出する実験を行ったところ、残量が15gとなり、残量率は実に2.1%であった。」 ・「【図6】 」 第5 対比及び判断 1 本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを、その有する機能に照らして対比する。 ア 引用発明の「手指を深く押し込んでつかみ出すことができる容器」は、本願発明1の「積層剥離容器」と、「容器」である点で一致し、引用発明の「ボディマッサージ用化粧料」は、本願発明1の「化粧料」に相当する。 イ 引用発明の「ボディマッサージ用化粧料」は「少なくとも0℃〜45℃の使用温度範囲において、外力を加えない状態ではゲル状態」であるところ、その融点温度以上においてその硬度が大きく低下するもので、0℃〜45℃の使用温度範囲内では、レオメーター値(硬度)が200g以上である(引用文献1【0017】、【0018】、【0020】、図1、2)。 そして、本願明細書の定義(固体は、レオメーター(株式会社レオテック社製)動作条件:粘性用(4)アダプターの径D10mmを用い、落下速度1mm/sec、100gスケール感度で測定した場合、200以上の値を示す状態である(【0011】)。)に照らすと、引用発明の「ボディマッサージ用化粧料」は、本願発明1の「化粧料」と同様に、「融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形」であるといえる。 ウ 引用発明の「ボディマッサージ用化粧料」は、本願発明1の「化粧料」と同様に、「外力を加えた状態では液状」になるものである。 エ 引用発明の「ボディマッサージ用化粧料」は、「容器内においてゲル状態」であるから、本願発明1の「化粧料」とは、「容器内において固形」である点で一致する。 オ 引用発明は、本願発明1と、「容器入り化粧料」である点で一致する。 カ そうすると、本願発明1と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。 (一致点) 「容器に充填された化粧料であって、 前記化粧料は融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形であり、 外力を加えた状態では液状になることを特徴とし、 前記化粧料は前記容器内において固形である化粧料である、容器入り化粧料。」 (相違点) 本願発明1は、「積層剥離容器」に充填された化粧料であって、化粧料は「積層剥離容器」内において固形であり、「積層剥離容器から吐出された際には液体に変化する」化粧料であり、「積層剥離容器は、ポンプタイプである」、「積層剥離容器入り化粧料」であるのに対し、引用発明は、容器入りの化粧料で、容器内においてゲル状態であり、外力を加えた際には液状化するものの、手指を深く押し込んでつかみ出すことができる容器入りボディマッサージ用化粧料であって、上記のように構成された「積層剥離容器」入り化粧料ではない点。 (2) 判断 ア 引用発明は、「手指を深く押し込んでつかみ出すことができる容器」から当該「ボディマッサージ用化粧料」を手指でつかみ出して、手指により外力を加えて液状にするものであって、引用文献1には、積層剥離容器も含めその他の容器を利用することについて、特段記載も示唆もない。 引用文献2には、化粧水等の化粧料等を、スクイズタイプの積層剥離容器に充填する点について記載はあるが、ポンプタイプの積層剥離容器に関する記載はなく、融点未満の温度範囲において、外力を加えない状態では固形であり、外力を加えた状態では液状になることを特徴とし、容器内において固形であり、容器から吐出された際には液体に変化するような内容物(以下「当該特定内容物」という。)を、ポンプタイプの積層剥離容器に充填する点について特段記載や示唆はない。 引用文献3には、化粧水等の化粧料等を、ポンプタイプ、スクイズタイプ又は内容物の自重により吐出するタイプの積層剥離容器に充填する点について記載はあるが、当該特定内容物をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点について特段記載や示唆はない(かえって、ポンプタイプの積層剥離容器では、構造が複雑になる上、コストの増大が避けられないと記載されている(【0003】))。 また、引用文献4〜6をみても、当該特定内容物をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点について特段記載や示唆はない。すなわち、引用文献4に、クリーム状の化粧料をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点、引用文献5に、クリーム状物をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点、引用文献6に、高粘性の内容物(化粧品クリーム材)をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点がそれぞれ記載されているものの、それにとどまり、当該特定内容物をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点について特段記載や示唆はない。 このように、引用文献2、3に、積層剥離容器に化粧料を充填することが記載され、引用文献4〜6に、粘性の大きい内容物をポンプタイプの積層剥離容器に充填することが記載されているが、これらの事項が周知の技術であるとしても、当業者が、引用文献2〜6の記載から、当然に、特定の性質を有する当該特定内容物をポンプタイプの積層剥離容器に充填する点について導かれるものとは解されない。 そうすると、引用発明において、前記相違点に係る構成とすることについての動機付けは特段認められない。 イ そして、「一般ポンプ容器では、内容物が吐出されなかった。」(本願明細書【0023】)のに対し、本願発明1は、前記相違点に係る構成を備えることにより、「積層剥離容器に充填された化粧料は、ノズルヘッドを押し下げる…ことによって、液体になって口部から吐出されるため、取り出しがワンステップで簡単であり、使い勝手が向上している。また、容器内に水や空気が入り込むことがないため衛生的であり、さらに、化粧料を最後まで確実に使い切ることが可能となり無駄がない。」(同【0008】)といった顕著な効果を奏するものである。 よって、引用発明及び引用例2〜6に記載された事項により、前記相違点に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。 ウ 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び引用文献2〜6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 2 本願発明2〜6について 本願発明1を特定するための事項をすべて含む本願発明2〜6は、その余の事項を検討するまでもなく、本願発明1と同様の理由により、引用発明及び引用文献2〜6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1〜6は、発明を特定するための事項として「剥離容器は、ポンプタイプである」ことを有するものとなっており、当業者が、引用文献1〜3に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものとは認められない。 よって、原査定を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-07-04 |
出願番号 | P2020-071577 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A45D)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
柿崎 拓 |
特許庁審判官 |
田合 弘幸 窪田 治彦 |
発明の名称 | 積層剥離容器入り化粧料 |
代理人 | SK弁理士法人 |
代理人 | SK弁理士法人 |
代理人 | 奥野 彰彦 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | 伊藤 寛之 |
代理人 | 奥野 彰彦 |