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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1387453
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-24 
確定日 2021-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6643802号発明「硬化性組成物、その硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6643802号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−25〕について訂正することを認める。 特許第6643802号の請求項1ないし25に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6643802号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜25に係る特許についての出願は、平成26年12月19日(優先権主張 平成26年5月9日、平成26年7月25日)に出願され、令和2年1月9日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月12日に特許掲載公報が発行された。その後、令和2年3月23日に中水麻衣(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和2年11月11日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和3年1月14日に意見書の提出及び訂正請求がされ、令和3年3月26日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求について
1 訂正の内容
令和3年1月14日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の(1)〜(18)のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
本件訂正請求は、一群の請求項〔1〜25〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1〜25〕について請求されたものである。

(1)訂正事項1
請求項1に記載の硬化性組成物について、「特徴とする硬化性組成物」とあるのを、「特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3〜25も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
請求項1に記載の硬化性組成物について、「Er1は、前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率 (GPa)」とあるのを「Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)」に訂正 し、さらに「Er2は前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)」とあるのを「Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項3〜25も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3
請求項2を削除する。(上記の訂正事項3に係る訂正後の請求項2の記載を引用する請求項3〜25も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
請求項3の記載を、
「前記成分 (A)が、単官能(メタ)アクリル化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項4に係る訂正後の請求項3の記載を引用する請求項4〜25も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5
請求項4の記載を、
「前記成分(A)が、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ナフチルメチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、フェニルエチレングリコールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、またはネオペンチルグリコールジアクリレート、のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1または3に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項5に係る訂正後の請求項4の記載を引用する請求項5〜25も同様に訂正する。)

(6)訂正事項6
請求項5の記載を、
「前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、20重量%以上が多官能(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項6に係る訂正後の請求項5の記載を引用する請求項6〜25も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7
請求項6の記載を、
「前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、30重量%以上が環状構造を有する(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項7に係る訂正後の請求項6の記載を引用する請求項7〜25も同様に訂正する。)

(8)訂正事項8
請求項7の記載を、
「前記成分(A)の主成分がジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であることを特徴とする請求項1、3〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項8に係る訂正後の請求項7の記載を引用する請求項8〜25も同様に訂正する。)

(9)訂正事項9
請求項8の記載を、
「前記成分(B)が、アルキルフェノン系重合開始剤またはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤のうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1、3〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項9に係る訂正後の請求項8の記載を引用する請求項9〜25も同様に訂正する。)

(10)訂正事項10
請求項9の記載を、
「前記成分(B)として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1,3〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項10に係る訂正後の請求項9の記載を引用する請求項10〜25も同様に訂正する。)

(11)訂正事項11
請求項10の記載を、
「前記成分(A)の主成分が、ジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であり、かつ、前記成分(B)が、前記成分(A)の全量に対して0.01〜10重量%添加されていることを特徴とする請求項 1、3〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項11に係る訂正後の請求項10の記載を引用する請求項11〜25も同様に訂正する。)

(12)訂正事項12
請求項11の記載を、
「内添型離型剤として、フッ素系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤のうち、少なくとも一つ以上が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項12に係る訂正後の請求項11の記載を引用する請求項12〜25も同様に訂正する。)

(13)訂正事項13
請求項12の記載を、
「増感剤として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系増感剤が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項13に係る訂正後の請求項12の記載を引用する請求項13〜25も同様に訂正する。)

(14)訂正事項14
請求項13の記載を、
「水素供与体として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系水素供与体が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項14に係る訂正後の請求項13の記載を引用する請求項 14〜25も同様に訂正する。)

(15)訂正事項15
請求項14の記載を、
「前記硬化性組成物の粘度が1cP以上100cP以下であることを特徴とする請求項1、3〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項15に係る訂正後の請求項14の記載を引用する請求項15〜25も同様に訂正する。)

(16)訂正事項16
請求項15の記載を、
「前記硬化性組成物が光ナノインプリント用組成物であることを特徴とする請求項1、3〜14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。」
と訂正する。(上記の訂正事項16に係る訂正後の請求項15の記載を引用する請求項16〜25も同様に訂正する。)

(17)訂正事項17
請求項16の記載を、
「基板上に、請求項1、3〜15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を配置する工程[1]と、
前記硬化性組成物とパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させる工程[2]と、
前記基板とモールドとの位置合わせを行う工程[3]と 、
前記硬化性組成物に光を照射して硬化膜とする工程[4]と、
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程[5]と、
を有することを特徴とするパターン形状を有する膜の製造方法。」
と訂正する。(上記の訂正事項17に係る訂正後の請求項16の記載を引用する請求項17〜25も同様に訂正する。)

(18)訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を、
「本発明では、
重合性化合物である成分(A)と、光重合開始剤である成分(B)と、を少なくとも含有し、平均膜厚3.2μm、波長が313±5nmの光、露光量200mJ/cm2の条件で硬化させたときに、下記の式(1)、および(3)を満たすことを特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物を提供する。
Er1/Er2≧1.10 式(1)
Er1≧3.00 ( 3 )
(ここで、Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均硬化物表面の複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける硬化物内部の複合弾性率(GPa)を示す。)」と訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1、2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は「硬化性組成物」について「凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための」と、訂正事項2は「前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)」について「ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の」、「前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)」について「ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の」と限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したことから、訂正事項1、2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
訂正事項1については、「【0155】・・・以上の工程[1]〜工程[5]を有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸形状に因むパターン形状)を、所望の位置に有する硬化物を得ることができる。」に記載されており、訂正事項2については請求項2に記載されているから、訂正事項1、2は明細書等に記載されているものと認められる。

(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項3は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項3は、請求項を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
請求項が削除されることによって、新規事項が追加されることはないから、訂正事項3は、明細書等に記載されているものと認められる。

(3)訂正事項4〜17について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項4〜17は、訂正事項3に係る請求項2の削除に伴い、請求項3〜16における請求項2の引用を削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したことから、訂正事項4〜17は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記アに照らせば、訂正事項4〜17によって、新規事項が追加されることはないから、訂正事項4〜17は、明細書等に記載されているものと認められる。

(4)訂正事項18について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項18は、訂正事項1、2に伴う明細書の訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したことから、訂正事項18は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記アで説示したことから、訂正事項18は、明細書等に記載されているものと認められる。

3 小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1〜18は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1〜25〕について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1〜25に係る発明
上記訂正請求により訂正された請求項1〜25に係る発明(以下、「本件発明1」等、あるいはまとめて「本件発明」という。)は、以下のとおりのものである。(下線は訂正箇所を示す。)

「【請求項1】
重合性化合物である成分(A)と、光重合開始剤である成分(B)と、を少なくとも含有し、平均膜厚3.2μm、波長が313±5nmの光、露光量200mJ/cm2の条件で硬化させたときに、下記の式(1)、および(3)を満たすことを特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物。
Er1/Er2≧1.10 (1)
Er1≧3.00 (3)
(ここで、Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)を示す。)
【請求項2】 (削除)
【請求項3】
前記成分 (A)が、単官能(メタ)アクリル化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ナフチルメチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、フェニルエチレングリコールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、またはネオペンチルグリコールジアクリレート、のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1または3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、20重量%以上が多官能(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、30重量%以上が環状構造を有する(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記成分(A)の主成分がジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であることを特徴とする請求項1、3〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記成分(B)が、アルキルフェノン系重合開始剤またはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤のうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1、3〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記成分(B)として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1,3〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記成分(A)の主成分が、ジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であり、かつ、前記成分(B)が、前記成分(A)の全量に対して0.01〜10重量%添加されていることを特徴とする請求項 1、3〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
内添型離型剤として、フッ素系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤のうち、少なくとも一つ以上が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
増感剤として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系増感剤が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
水素供与体として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系水素供与体が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記硬化性組成物の粘度が1cP以上100cP以下であることを特徴とする請求項1、3〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記硬化性組成物が光ナノインプリント用組成物であることを特徴とする請求項1、3〜14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
基板上に、請求項1、3〜15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を配置する工程[1]と、
前記硬化性組成物とパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させる工程[2]と、
前記基板とモールドとの位置合わせを行う工程[3]と 、
前記硬化性組成物に光を照射して硬化膜とする工程[4]と、
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程[5]と、
を有することを特徴とするパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項17】
前記硬化性組成物とパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させる工程におけるモールドが、4nm以上200nm以下のパターン高さおよび1以上10以下のアスペクト比を有することを特徴とする請求項16に記載のパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項18】
前記硬化性組成物に光を照射して硬化膜とする工程における露光量が、90mJ/cm2以下であることを特徴とする請求項16または17に記載のパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項19】
型接触工程が、凝縮性ガスを含む雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の膜の製造方法。
【請求項20】
凝縮性ガスが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンであることを特徴とする、請求項19に記載の膜の製造方法。
【請求項21】
凝縮性ガスを含む雰囲気が、ヘリウムと凝縮性ガスとの混合気体であることを特徴とする、請求項19または20に記載の膜の製造方法。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程を有することを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項23】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程と、得られた膜のパターン形状をマスクとして基板にエッチング又はイオン注入を行う工程と、を有することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項24】
前記回路基板が、半導体素子である請求項23に記載の回路基板の製造方法。
【請求項25】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。」

2 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1〜25に係る特許に対して令和2年11月11日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2(明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由3(実施可能要件
本件特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

甲第1号証:佐々木信也、「トライポロジーから見た固体表面の機械的特性とその評価技術」、J. Vac. Soc. Jpn. (真空)、 vo1.50, No.2, 2007; p96-p100

3 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア 当業者が、課題解決と本件発明の技術的関係を理解することができ、発明の課題が解決できることを認識できる程度に本件訂正後の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下それぞれ「訂正後明細書」などといい、まとめて「訂正後明細書等」という。)が記載されているかについて

(ア)訂正後明細書等の記載について
a 請求項1には、
「【請求項1】
重合性化合物である成分(A)と、光重合開始剤である成分(B)と、を少なくとも含有し、平均膜厚3.2μm、波長が313±5nmの光、露光量200mJ/cm2の条件で硬化させたときに、下記の式(1)、および(3)を満たすことを特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物。
Er1/Er2≧1.10 (1)
Er1≧3.00 (3)
(ここで、Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)を示す。)」と記載されている。

b 本件発明が解決しようとする課題として、訂正後明細書には、
「【0006】・・・光ナノインプリント法において、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能なナノインプリント用硬化性組成物およびナノインプリント方法を提供することにある。また、低露光量においてパターン倒れの欠陥が発生しにくい、硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法を提供することにある。」と記載されている。

c 式(1)、(3)について、訂正後明細書には、
「【0108】
式(1)を満たす硬化性組成物は、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能な硬化性組成物である。
・・・
【0111】
また、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(1)もしくは式(2)に加えて、以下の式(3)を満たすことが好ましい。
Er1≧3.00GPa 式(3)」と記載されている。

d 低露光量について、訂正後明細書には、
「【0144】
本実施形態において、本工程における硬化性組成物への露光量は、90mJ/cm2以下であることが好ましく、低露光量であることがより好ましく、30mJ/cm2以下であることが最も好ましい。本明細書中において、低露光量とは76mJ/cm2以下であることを意味する。」と記載されている。

e パターン倒れについて、訂正後明細書には、
「【0187】
ここで、パターン倒れとは、高さ60nmの28nmライン・アンド・スペース(L/S)パターンの隣接するラインの少なくとも一部が接触している状態をいう。」と記載されている。

f 訂正後明細書には、実施例1〜10、比較例1、2が記載されており、そのうち実施例1〜3、比較例1、2については、パターン倒れなどの欠陥の有無が確認されている。
表1は以下のとおりである。


また、訂正後明細書には、
「【0271】
次に、硬化物表面と内部の複合弾性率の測定結果を見ると、実施例1〜3では、硬化物内部の複合弾性率Er2が比較例1〜2のそれよりも小さいにもかかわらず、低露光量(76mJ/cm2以下)におけるパターン倒れが抑制されている。また、実施例1〜3における硬化物表面と内部の複合弾性率比Er1/Er2は、比較例1〜2のそれよりも大きいことがわかる。すなわち硬化物表面に硬い層ができていることを意味する。」と記載されている。

(イ)判断
a 式(1)、(3)について
上記(ア)a〜cから、本件発明の課題を解決するための構成として、請求項1における、
「Er1/Er2≧1.10 (1)
Er1≧3.00 (3)」
の式(以下「本件式」という。)が特定されていることは明らかである。
そして、上記(ア)aにおけるEr1、Er2の定義によると、Er1は、4nm以下という浅い位置(以下「浅位置」という。)での硬化物の平均複合弾性率を意味し、Er2は、Er1と比較して深い200nmの位置(以下「深位置」という。)における硬化物の複合弾性率を意味しているから、式(1)のEr1/Er2≧1.10は、硬化物における浅位置の平均複合弾性率が、深位置の弾性率よりも一定程度大きいことを意味している。
また、一般的に「弾性率」は「応力/ひずみ」であることから、上記式(1)は、硬化物の浅位置部分が深位置部分より変形しがたい(同じ応力が作用したときのひずみが小さい)ことを意味していることは、技術常識から見て明らかである。また、同様に、式(3)は、硬化物の浅位置部分が一定程度変形しがたいことを意味していると理解できる。
これらの理解は、上記(ア)cの記載とも整合する。

b 表1から読み取れる事項について
上記aの理解を前提として、表1において、Er1について、実施例1〜3、比較例1、2を比べると、Er1が一定程度より小さいとパターン倒れが生じていることがわかる。また、実施例1、2のように、Er2が、比較例1、2と比べて小さい場合でもパターン倒れが生じていないことから、必ずしもEr2の大小はパターン倒れの発生に直接的な影響は与えていないことがわかる。一方、Er1/Er2については、比較例1における1.06と実施例1における1.51の間で、露光量10〜76mJ/cm2におけるパターン倒れの発生の有無に変化が生じている(具体的には、比較例1においてはすべての露光量でパターン倒れが生じ、実施例1においては露光量10mJ/cm2を除けばパターン倒れが生じていない)ことから、これらの数値間に、パターン倒れ発生の有無についての境界(以下「パターン倒れ境界」という。)があることが認識できる。
また、このような表1からの解釈は、上記(ア)fの段落【0271】の記載とも整合する。

c 本件式のパラメータの技術的意味について
上記(ア)eにおいてパターン倒れとは「隣接するラインの少なくとも一部が接触している状態」であり、このような状態になることは、ライン自体の変形に起因することは明らかであるから、このような状態を回避するためには、ラインを構成する硬化物の強度が関係することは、力学的な技術常識から見て明らかである。
そして、上記a、bを総合すると、その強度の指標として、「硬化物の表面が十分に硬化」(【0006】、上記(ア)b)することに着目しており、硬化物の表面の強度、つまり硬化物内部との強度比、及び硬化物表面の強度そのものの指標として、それぞれ式(1)、(3)が示されていることは、当業者であれば、充分理解できるものである。
したがって、本件式のパラメータの技術的意味は、訂正後明細書等の記載から理解できるものである。

d 本件式の数値限定について
本件発明は、「低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能」(【0006】、上記(ア)b)とするものであり、また、低露光量とは「76mJ/cm2以下であることを意味」(【0144】、上記(ア)d)していると、訂正後明細書には記載されている。
そして、式(1)のEr1/Er2について、上記bで説示したとおり、比較例1における1.06と実施例1における1.51の間にパターン倒れ境界があると認識できるが、比較例1ではすべての露光量でパターン倒れが生じ、実施例1では露光量10mJ/cm2のみでパターン倒れが生じており、それよりも大きい露光量ではパターン倒れが生じていないことから、本件発明において、低露光量の上限としている、露光量76mJ/cm2においてのみ、少なくともパターン倒れが生じないようになる、つまり露光量10mJ/cm2から57mJ/cm2ではパターン倒れが生じるような値は、1.51よりも1.06に近い値となると認識でき、そのような値として式(1)の1.10の値が規定されていると理解できる。
また、式(3)について、硬化物表面の強度は一定程度必要であることは上記cで説示したとおりであるから、その一定程度の値として、式(3)の3.00は規定されていると理解できる。
さらに、このような本件式の数値限定の範囲において、表1から読み取れる事項から、課題解決ができないといった何らかの齟齬や矛盾は認められない。
したがって、本件式の数値限定の意味は、明細書等の記載から理解できるものである。

e 小活
よって、当業者であれば、明細書等の記載から、課題解決と本件式の技術的関係を理解することができ、本件明細書は、本件式によって、発明の課題が解決できることを当業者が認識できる程度に記載されているといえる。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、「本件明細書に接する当業者において、硬化性組成物が上記式(1)及び(3)のみを充たせば、本件特許発明1等における所望の効果を奏し得ることが、上記5つの具体例により裏付けられていると認識することは、本件出願時の技術常識を参酌しても、不可能というべきであり、本件明細書の発明の詳細な説明におけるこのような記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌して、当該式(1)及び(3)のみを充たせば、本件特許発明1等における所望の効果を奏すると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載しているとはいえず、本件明細書の特許請求の範囲の本件請求項1の記載が、いわゆるサポート要件に適合するということはできない。」(特許異議申立書(以下「申立書」という。)6頁4行〜15行、7頁3行〜8行)旨、主張する。
しかしながら、上記(イ)で説示したとおり、本件式の技術的意義等については、訂正後明細書等の記載に基づいて、当業者が認識できる程度であるといえる。

イ 本件発明は、ナノインプリントに限定されているかについて
訂正後明細書等においては、本件発明15では「前記硬化性組成物が光ナノインプリント用組成物である」との特定や、「【0084】本実施形態の硬化性組成物は、光ナノインプリント用組成物であることが好ましい。」との記載から、本件明細書等には、光ナノインプリント以外の硬化性組成物を意図していると解される部分もあるし、また、上記アで説示した本件式の技術的意味も、ナノプリントに直ちに限定されるものとはいえない。
以上によれば、本件発明が、光ナノインプリントやナノインプリントのみに限定しているとはいえない。

ウ Er1の測定条件、誤差要因について
本件発明1において、Er1について「Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)を示」すことが、特定されている。
また、甲第1号証において記載されているように(甲第1号証24頁右欄2行〜15行)、ナノインデンテーションにおいて、誤差要因が存在することも事実であると認められる。
一方、本件明細書によれば、Er1の測定について「【0101】なお、硬化物表面の複合弾性率Er1(GPa)は、TI−950 TriboIndenter(Hysitron製) を用いて、圧子を約10nmの押し込み深さまでインデントする際の荷重(P)と変位(押し込み深さh)の関係を測定し、Hertz法で「P2/3 vs. h」のグラフがほぼ直線となる領域(負荷直後、押し込み深さ0〜4nm)のグラフの傾きP2/3/hのデータを下記数式(1)に代入することによって、硬化物の表面から4nm以下の深さにおける平均複合弾性率として求めることができる。」と記載されており、どのような手順でEr1を求めるかについて、当業者が理解できる程度に説示されているといえる。
さらに、上記説示においては、市販されているTI−950 TriboIndenter(Hysitron製)という機器を用いてEr1を求めているわけであるから、仮に甲第1号証に記載されたような何らかの誤差要因が存在するとしても、市販されている当該機器の使用の範囲内で対応していると解することが相当である。
そして、上記アの説示は、Er1がこのようなものであることに左右されるものではない。

エ サポート要件に関する申立人の他の主張について
(ア)申立人は、「特許発明1等に係る「硬化性組成物」は樹脂粒子、フィラー等を含有することを排除していない。・・・本件明細書の発明の詳細な説明におけるこのような記載だけでは、本件出願時の技術常識を参酌して、特許発明1等に係る「硬化性組成物」が樹脂粒子、フィラー等を含有する場合であっても、本件特許発明1等における所望の効果を奏すると当業者において認識できる程度に、具体例を開示して記載しているとはいえず、本件明細書の特許請求の範囲の本件請求項1の記載が、いわゆるサポート要件に適合するということはできない。」(申立書7頁下から2行〜8頁12行)旨、主張する。
しかしながら、本件明細書等について、樹脂粒子、フィラー等を含有することは何ら記載されておらず、そのような言及されていないことまで、開示しないといけないとする理由は認められない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(イ)申立人は、「特許発明1等における上記式(1)及び(3)中の「Er1」は、硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率を意味するが、当該硬化物の表面に4nm超の高さの突起を有するような場合には「Er1」の値を正しく測定することができないと考えられるところ、本件明細書には当該硬化物の表面粗さ等については何ら規定されていない(実施例1等参照)。」(申立書8頁14行〜19行)旨、主張する。
しかしながら、本件発明において、「Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)」であり、上記ウでも説示したように、市販されている機器を通常の使用形態で用いて求められるものであるから、正しく測定することができないような場合(あるいは正しく測定できる場合のみを特定して)まで、本件明細書等において、言及する必要はないというべきである。
よって、申立人の主張は採用できない。

オ まとめ
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

(2)取消理由2(明確性)について
上記(1)ウの説示によれば、「Er1」について、訂正後明細書等に、具体的な測定条件や誤差要因に対応する説明がないことをもって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、本件発明は、明確であり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

(3)取消理由3(実施可能要件)について
上記(2)で説示したように、「Er1」について、どのような値であるか明確であるといえるから、訂正後明細書の発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産、使用等することができる程度の記載があるといえる。
したがって、訂正後明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1〜25に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜25に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
発明の名称 (54)【発明の名称】硬化性組成物、その硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、その硬化物、および硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMS等においては、微細化の要求が進んでいる。このため、最近では従来のフォトリソグラフイー技術に加え、基板(ウエハ)の上に形成され所定の形状を有するレジスト(光硬化性組成物)のパターンを型(モールド)として利用する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、光ナノインプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる技術である(例えば、特許文献1を参照)。光ナノインプリント技術では、まず、基板上のパターン形成領域にレジストを塗布する(配置工程)。次に、このレジストをパターンが形成された型を用いて成形する(型接触工程)。そして、光を照射してレジストを硬化(光照射工程)させたうえで引き離す(離型工程)。これらの工程を実施することにより、所定の形状を有する樹脂のパターン(光硬化物)が基板上に形成される。さらに、基板上の他の位置において上記の全工程を繰り返すことで、基板全体に微細な構造体を形成することができる
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2010−073811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の光ナノインプリント技術の光照射工程において、スループット向上のために露光時間を短縮、すなわちレジストに照射する露光量を低減すると、光硬化性組成物が硬化不良となり、離型工程においてパターン倒れの欠陥を生じやすくなり、かえって歩留まりが悪くなるという課題がある。
【0005】
また、このような硬化不良の場合、離型工程後に他のプロセスに供される際にも、同様にパターン倒れが起こりやすいという課題がある。例えば、光ナノインプリントの場合、配置工程から離型工程に至る一連の工程(ショット)が、同一基板上において複数回実施されることが多いため、この間にもパターン倒れが起こりうる。
【0006】
本発明は上述した課題を解決するためになされるものであり、その目的は、光ナノインプリント法において、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能なナノインプリント用硬化性組成物およびナノインプリント方法を提供することにある。また、低露光量においてパターン倒れの欠陥が発生しにくい、硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、
重合性化合物である成分(A)と、光重合開始剤である成分(B)と、を少なくとも含有し、平均膜厚3.2μm、波長が313±5nmの光、露光量200mJ/cm2の条件で硬化させたときに、下記の式(1)、および(3)を満たすことを特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物を提供する。
Er1/Er2≧1.10 式(1)
Er1≧3.00 (3)
(ここで、Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均硬化物表面の複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける硬化物内部の複合弾性率(GPa)を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化時に式(1)の関係を満たす硬化性組成物を用いることによって、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能となる。また、低露光量においてもパターン倒れの欠陥が発生しにくい、硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 本実施形態の硬化物の表面と内部の複合弾性率の測定方法を示す模式断面図である。
【図2】 本実施形態の硬化物の製造方法の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明においては、その趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下に説明する実施形態に対して適宜変更、改良等が加えられたものについても本発明の範囲に含まれる。
【0011】
[硬化性組成物]
本実施形態の硬化性組成物は、
硬化した状態において、以下の式(1)を満たす硬化性組成物である。
Er1/Er2≧1.10 式(1)
(ここで、Er1は、硬化物表面の複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、硬化物内部の複合弾性率(GPa)を示す。)
【0012】
本実施形態の硬化性組成物は、組成物に含有する各成分の種類と濃度を適切に選択することによって、実現することができる。また、硬化性組成物中の成分の濃度に分布ができるような組成を選択することによっても達成することができる。
【0013】
なお、本実施形態において、硬化性組成物は、下記に示される成分(A)と成分(B)と、を少なくとも含有する硬化性組成物であると良い。
成分(A):重合性化合物
成分(B):光重合開始剤
【0014】
また、本実施形態において、硬化物とは、硬化性組成物を重合して一部または全部を硬化させたものを意味する。尚、硬化物のうち、面積に比して厚みが極端に薄いものであることを強調する際には、特に硬化膜と記載することがある。
【0015】
さらには、硬化性組成物および硬化物は特定のパターン形状を有して基板上に配置できるものが好ましい。
【0016】
以下、各成分について、詳細に説明する。
【0017】
<成分(A):重合性化合物>
成分(A)は重合性化合物である。ここで、本実施形態において、重合性化合物とは、光重合開始剤(成分(B))から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
【0018】
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(A)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物で構成されていてもよく、複数種類の重合性化合物で構成されていてもよい。
【0019】
なお、本実施形態において、成分(A)である重合性化合物は、硬化性組成物中の全ての重合性化合物の成分であることが好ましく、この場合、組成物中の重合性化合物が一種類のみである構成、および特定の複数種類の重合性化合物のみである構成が含まれる。
【0020】
ラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。
【0021】
したがって、本実施形態において、硬化性組成物の成分(A)として、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、さらには組成物中の全ての重合性化合物の成分が(メタ)アクリル化合物であることが最も好ましい。なお、ここで記載する成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であるとは、成分(A)の90重量%以上が(メタ)アクリル化合物であることを示す。
【0022】
ラジカル重合性化合物が、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能アクリルモノマーと多官能アクリルモノマーを含むことが好ましい。これは、単官能アクリルモノマーと多官能アクリルモノマーを組み合わせることで、機械的強度が強い硬化膜が得られるからである。
【0023】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−プロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、2−ナフチルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
上記単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD TC110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、フェニルエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、o−キシリレンジ(メタ)アクリレート、m−キシリレンジ(メタ)アクリレート、p−キシリレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2−ビス(4−((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
上記多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬製)、アロニックスM208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和電工製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
尚、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がエチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がプロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
【0028】
これらの中でも、成分(A)は、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ナフチルメチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、フェニルエチレングリコールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、またはネオペンチルグリコールジアクリレート、のうち少なくとも一つを含有することが好ましく、少なくとも二つを含有することがより好ましい。さらには、イソボルニルアクリレートと、ベンジルアクリレートと、ネオペンチルグリコールジアクリレートと、からなる、もしくは、ベンジルアクリレートと、m−キシリレンジアクリレートと、からなる、もしくは、ベンジルアクリレートと、2−ナフチルメチルアクリレートと、m−キシリレンジアクリレートと、からなる、もしくは、ベンジルアクリレートと、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートと、からなる、もしくは、ベンジルアクリレートと、フェニルエチレングリコールジアクリレートと、からなる、もしくは、ジシクロペンタニルアクリレートと、m−キシリレンジアクリレートと、からなる、もしくは、イソボルニルアクリレートと、1,10−デカンジオールジアクリレートと、からなることがより好ましい。
【0029】
成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、成分(A)のうち、20重量%以上が多官能(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。架橋による機械的強度の確保に加えて、硬化収縮の度合いが小さくパターン精度の良い硬化物を得ることができる。
【0030】
成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、成分(A)のうち、30重量%以上が環状構造を有する(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。より高い機械的強度を有する硬化物を得ることができる。
【0031】
成分(A)の主成分がジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であることが好ましい。機械的強度、硬化速度、硬化収縮性、ドライエッチング耐性、耐熱性、PFPプロセス適合性など、各種性能のバランスがよい硬化物を得ることができる。
【0032】
<成分(B):光重合開始剤>
成分(B)は、光重合開始剤である。
【0033】
本実施形態において、光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。
【0034】
成分(B)は、一種類の光重合開始剤で構成されていてもよく、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
【0035】
ラジカル発生剤としては、例えば、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−又はp−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の置換基を有してもよい2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノープロパン−1−オン等のα−アミノ芳香族ケトン誘導体;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
上記ラジカル発生剤の市販品として、Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur 1116、1173、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
これらの中でも、硬化性組成物の成分(B)は、アルキルフェノン系重合開始剤またはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤のうち少なくとも一つ以上を含有することが好ましい。
【0038】
なお、上記の例のうち、アルキルフェノン系重合開始剤は、ベンゾインメチルエーテル、ペンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;アセトフェノン、3−メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のα−アミノ芳香族ケトン誘導体である。
【0039】
また、上記の例のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物である。
【0040】
成分(B)は、これらの中でも、下記式(a)に示されるベンジルジメチルケタール、下記式(b)に示される2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、下記式(f)に示される2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドであることが好ましい。
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
光重合開始剤である成分(B)の硬化性組成物における配合割合は、重合性化合物である成分(A)の全量に対して、0.01重量%以上10重量%以下であり、好ましくは、0.1重量%以上7重量%以下である。
【0045】
成分(B)の配合割合が重合性化合物の全量に対して0.01重量%以上とすることにより、組成物の硬化速度が速くなり、反応効率を良くすることができる。また、成分(B)の配合割合が重合性化合物の全量に対して10重量%以下とすることにより、得られる硬化物がある程度の機械的強度を有する硬化物となる。
【0046】
成分(B)として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくとも一つ以上を含有することが好ましい。その他の添加成分(C)を添加しない場合においても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能なナノインプリント用硬化性組成物を得ることができる。
【0047】
前記成分(A)の主成分が、ジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であり、かつ、前記成分(B)が、前記成分(A)の全量に対して0.01〜10重量%添加されていることが好ましい。機械的強度、硬化速度、硬化収縮性、ドライエッチング耐性、耐熱性、PFPプロセス適合性など、各種性能のバランスがよい硬化物を得ることができる。
【0048】
<その他の添加成分(C)>
本実施形態の硬化性組成物は、前述した、成分(A)、成分(B)の他に、種々の目的に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、更なる添加成分(C)を含有していてもよい。このような添加成分(C)としては、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分、前記成分(B)でない重合開始剤、等が挙げられる。
【0049】
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤として、例えば、増感色素等が挙げられる。
【0050】
増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、成分(B)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。尚、ここで記載する相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(B)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動等である。
【0051】
増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
増感剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0053】
これらの中でも、増感剤は、ベンゾフェノン系増感剤であることが好ましい。
【0054】
尚、ベンゾフェノン系増感剤は、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物である。
【0055】
増感剤は、これらの中でも、下記式(g)に示される4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであることが特に好ましい。
【0056】
【化4】

【0057】
増感剤として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系増感剤が添加されていることが好ましい。機械的強度を低下させることなく、硬化速度を向上させることができる。
【0058】
水素供与体は、成分(B)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(B)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に添加することが好ましい。
【0059】
このような水素供与体の具体例としては、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルポスフィン、アリルチオ尿素、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ペンゾフェノン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシンなどのアミン化合物、2−メルカプト−N−フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
水素供与体は、一種類を単独で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。
【0061】
水素供与体は、増感剤としての機能を有してもよい。増感剤としての機能を有する水素供与体としては、前述した4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン等が含まれる。
【0062】
4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ペンゾフェノンとしては、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及びその誘導体等が含まれる。これらのうち、下記式(f)に示される4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンであることが特に好ましい。
【0063】
【化5】

【0064】
水素供与体として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系水素供与体が添加されていることが好ましい。機械的強度を低下させることなく、硬化速度を向上させることができる。
【0065】
本実施形態の硬化性組成物が、添加成分(C)として、増感剤や水素供与体を含む場合、これらの含有量はそれぞれ、重合性化合物である成分(A)の全量に対して、好ましくは、0重量%以上20重量%以下であり、より好ましくは、0.1重量%以上5.0重量%以下であり、さらに好ましくは、0.2重量%以上2.0重量%以下である。成分(A)の全量に対して、増感剤が0.1重量%以上含まれていれば、重合促進効果をより効果的に発現することができる。また、増感剤もしくは水素供与体の含量を5.0重量%以下とすることにより、作製される光硬化物を構成する高分子化合物の分子量が十分に高くなると共に、硬化性組成物への溶解不良や硬化性組成物の保存安定性の劣化を抑制することができる。
【0066】
モールドとレジストとの間の界面結合力の低減、すなわち離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物に内添型離型剤を添加することができる。また、本明細書において、内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に予め硬化組成物に添加されていることを意味する。
【0067】
内添型離型剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等を使用できる。本実施形態において、内添型離型剤は、重合性を有さない。
【0068】
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。尚、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。
【0069】
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファックF−444、TF−2066、TF−2067、TF−2068(以上、DIC製)、フロラード FC−430、FC−431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン S−382(AGC製)、EFTOP EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント 250、251、222F,208G(以上、ネオス製)等が挙げられる。
【0070】
これらのフッ素系界面活性剤の中でも内添型離型剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。さらには、下記式(c)で示される化合物であることが好ましい。
【0071】
【化6】

【0072】
また、内添型離型剤は、炭化水素系界面活性剤でもよい。
【0073】
炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1〜50のアルキルアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物等が含まれる。
【0074】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。尚、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基、アルコキシ基等の疎水性官能基に変換されていてもよい。
【0075】
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP−400、MP−550、MP−1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D−1303、D−1305、D−1307、D−1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL−1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH−305、CH−310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR−705、SR−707、SR−715、SR−720、SR−730、SR−750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA−50/50 1000R,SA−30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)等が挙げられる。
【0076】
これらの炭化水素系界面活性剤の中でも内添型離型剤としては、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることが好ましく、長鎖アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物であることがより好ましい。さらには、下記式(d)、下記式(h)、下記式(i)で示される化合物であることが好ましい。
【0077】
【化7】

【0078】
【化8】

【0079】
【化9】

【0080】
内添型離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0081】
硬化性組成物に内添型離型剤を添加する場合には、内添型離型剤として、フッ素系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤のうち、少なくとも一つ以上が添加されていることが好ましい。
【0082】
本実施形態の硬化性組成物が、添加成分(C)として、内添型離型剤を含む場合、この内添型離型剤の含有量は、重合性化合物である成分(A)の全量に対して、例えば、0.001重量%以上10重量%以下である。好ましくは、0.01重量%以上7重量%以下であり、より好ましくは、0.05重量%以上5重量%以下である。
【0083】
少なくとも0.001重量%以上10重量%以下とすることで、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能となる効果をもたらすと共に、離型力低減効果および/もしくは充填性が優れるという効果も奏する。
【0084】
本実施形態の硬化性組成物は、光ナノインプリント用組成物であることが好ましい。
【0085】
また、本実施形態の硬化性組成物および/もしくはこれを硬化して得られる硬化物を赤外分光法、紫外可視分光法、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析法などで分析することで、成分(A)、成分(B)の比率を求めることができ、結果的に、硬化性組成物における成分(A)、成分(B)の比率を求めることができる。添加成分(C)を含有する場合にも同様にして、硬化性組成物における成分(A)、成分(B)、添加成分(C)の比率を求めることができる。
【0086】
<硬化性組成物の配合時の温度>
本実施形態の硬化性組成物を調製する際には、少なくとも成分(A)、成分(B)を所定の温度条件下で混合・溶解させる。具体的には、0℃以上100℃以下の範囲で行う。添加成分(C)を含有する場合も同様である。
【0087】
<硬化性組成物の粘度>
本実施形態の硬化性組成物の溶剤を除く成分の混合物の23℃での粘度は、好ましくは、1cP以上100cP以下であり、より好ましくは、1cP以上50cP以下であり、さらに好ましくは、1cP以上20cP以下である。
【0088】
硬化性組成物の粘度を100cP以下とすることにより、硬化性組成物をモールドに接触する際に、モールド上の微細パターンのうち凹部に組成物が充填するのにかかる時間が長時問とならずに済む。また、充填不良によるパターン欠陥が生じにくい。
【0089】
また、粘度を1cP以上とすることにより、硬化性組成物を基板上に塗布する際に塗りムラが生じにくくなり、硬化性組成物をモールドに接触する際に、モールドの端部から硬化性組成物が流出しにくくなる。
【0090】
<硬化性組成物の表面張力>
本実施形態の硬化性組成物の表面張力は、溶剤を除く成分の混合物について23℃での表面張力が、好ましくは、5mN/m以上70mN/m以下であり、より好ましくは、7mN/m以上35mN/m以下であり、さらに好ましくは、10mN/m以上32mN/m以下である。ここで、表面張力を5mN/m以上とすることにより、硬化性組成物をモールドに接触させる際にモールド上の微細パターンのうち凹部に組成物が充填するのにかかる時間が長時間とならずにすむ。
【0091】
また、表面張力を70mN/m以下とすることにより、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が表面平滑性を有する硬化物となる。
【0092】
<硬化性組成物に混入している不純物>
本実施形態の硬化性組成物は、できる限り不純物を含まないことが好ましい。ここで記載する不純物とは、前述した成分(A)、成分(B)および添加成分(C)以外のものを意味する。
【0093】
したがって、硬化性組成物は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。
【0094】
フィルタを用いた濾過を行う際には、具体的には、前述した成分(A)、成分(B)および必要に応じて添加する添加成分(C)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。
【0095】
このような精製工程を経ることで、硬化性組成物に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって、硬化性組成物を硬化した後に得られる硬化物に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥が発生することを防止することができる。
【0096】
尚、本実施形態の硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、硬化性組成物中に金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。このような場合、硬化性組成物に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下が好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
【0097】
[硬化物]
前述の硬化性組成物を硬化することで硬化物が得られる。この際、硬化性組成物の塗布膜を形成して硬化することが好ましい。硬化性組成物の塗布膜を形成する方法の具体例は、後述のパターン形状を有する硬化物の製造方法における配置工程[1]に記載する。また、塗布膜を硬化させる方法の具体例は、後述のパターン形状を有する硬化物の製造方法における硬化性組成物に光を照射する光照射工程[4]の方法に記載する。
【0098】
<硬化物の複合弾性率の測定>
得られた硬化物は、ナノインデンテーションなどの方法により、複合弾性率を測定することができる。ナノインデンテーションは、圧子を測定試料上から所望の場所に押し込み、荷重と変位を同時に測定する方法であり、この時の荷重と変位の関係から、測定試料の硬さ・複合弾性率を求めることができる。本実施形態のように基板上の硬化物の複合弾性率を測定する場合には、基板の影響が出ないような押し込み深さで測定することが好ましい。
【0099】
具体的な測定装置としては、Nano Indenter G200(Agilent Technologies製)、ENTシリーズ(エリオニクス製)、TIシリーズ(Hysitron製)などが挙げられる。このうち本発明では特に、硬化物のごく表面(10nm未満の深さ)での測定に必要な微小変位および微小荷重での制御・測定が可能な装置を用いることが好ましい。
【0100】
本実施形態の硬化性組成物は、硬化した状態において、硬化物表面の複合弾性率(GPa)をEr1とし、硬化物内部の複合弾性率(GPa)をEr2とした時に、以下の式(1)を満たす硬化性組成物である。
Er1/Er2≧1.10 式(1)
【0101】
なお、硬化物表面の複合弾性率Er1(GPa)は、TI−950 TriboIndenter(Hysitron製)を用いて、圧子を約10nmの押し込み深さまでインデントする際の荷重(P)と変位(押し込み深さh)の関係を測定し、Hertz法で「P2/3 vs. h」のグラフがほぼ直線となる領域(負荷直後、押し込み深さ0〜4nm)のグラフの傾きP2/3/hのデータを下記数式(1)に代入することによって、硬化物の表面から4nm以下の深さにおける平均複合弾性率として求めることができる。
【0102】
なお、数式(1)中のRは圧子先端半径であり、測定に使用する圧子に依存する。圧子先端半径Rは、弾性率が既知の標準試料のナノインデンテーションおよび同式により求めることができる。
【0103】
【数1】

【0104】
硬化物内部の複合弾性率Er2(GPa)は、TI−950 TriboIndenter(Hysitron製)を用いて、圧子を200nmの押し込み深さまでインデントする際の荷重(P)と変位(押し込み深さh)の関係を測定し、Oliver−Pharr法によって「P vs. h」のグラフの除荷直後の接線の傾きSのデータを下記数式(2)に代入することによって、硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率として求めることができる。なお、数式(2)中のAcは接触投影面積であり、測定に使用する圧子および押し込み深さに依存する。接触投影面積Acは、弾性率が既知の標準試料のナノインデンテーションおよび同式により作成した校正曲線(使用圧子の押し込み深さと接触投影面積の関係)により求めることができる。
【0105】
【数2】

【0106】
複合弾性率測定に供される硬化物の厚さは、いずれも2.0μm以上であることが好ましい。また、硬化物の複合弾性率測定は、例えば、硬化性組成物を硬化後24時間経過後に行うことができる。
【0107】
図1は、本実施形態の硬化物の表面と内部の複合弾性率の測定方法を示す模式断面図である。
【0108】
式(1)を満たす硬化性組成物は、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能な硬化性組成物である。
【0109】
更に、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(2)を満たすことがより好ましい。
Er1/Er2≧1.40 式(2)
【0110】
なお、式(2)におけるEr1およびEr2は、式(1)におけるEr1およびEr2と同じであり、各々、硬化物の表面から4nm以下の深さにおける平均複合弾性率(GPa)、硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)として求めることができる。
【0111】
また、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(1)もしくは式(2)に加えて、以下の式(3)を満たすことが好ましい。
Er1≧3.00GPa 式(3)
【0112】
更に、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(4)を満たすことがより好ましい。
Er1≧3.50GPa 式(4)
【0113】
なお、式(3)および式(4)におけるEr1は、式(1)もしくは式(2)におけるEr1と同じであり、硬化物の表面から4nm以下の深さにおける平均複合弾性率(GPa)である。
【0114】
[パターン形状を有する硬化物の製造方法]
次に、本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法について説明する。
【0115】
図2は、本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法の例を示す模式断面図である。
【0116】
本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法は、
[1]基板上に、前述の本実施形態の硬化性組成物を配置する配置工程と、
[2]前記硬化性組成物とモールドとを接触させる型接触工程と、
[3]モールドと被加工基板の位置を合わせる位置合わせ工程と、
[4]前記硬化性組成物に光を照射する光照射工程と、
[5][4]の工程によって得られた硬化物とモールドとを引き離す離型工程と、
を有する。
【0117】
本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法は、光ナノインプリント方法を利用した膜の作製方法である。
【0118】
本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法によって得られる硬化物は、1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。なお、一般に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を作製するパターン形成技術は、光ナノインプリント法と呼ばれており、本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法は、光ナノインプリント法を利用している。
【0119】
以下、各工程について説明する。
【0120】
<配置工程[1]>
本工程(配置工程)では、図2(a)に示す通り、前述した本実施形態の硬化性組成物101を基板102上に配置(塗布)して塗布膜を形成する。
【0121】
硬化性組成物101を配置する対象である基板102は、被加工基板であり、通常、シリコンウエハが用いられる。
【0122】
ただし本実施形態において、基板102はシリコンウエハに限定されるものではなく、アルミニウム、チタン−タングステン合金、アルミニウム−ケイ素合金、アルミニウム−銅−ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選んで用いてもよい。尚、使用される基板102(被加工基板)には、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜、等の表面処理により硬化性組成物との密着性を向上させた基板を用いてもよい。
【0123】
本実施形態において、硬化性組成物を被加工基板上に配置する方法としては、例えば、インクジェット法、デイップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート法、スリットスキャン法等を用いることができる。光ナノインプリント法においては、インクジェット法が特に好ましい。尚、被形状転写層(塗布膜)の膜厚は、使用する用途によっても異なるが、例えば、0.01μm以上100.0μm以下である。
【0124】
<型接触工程[2]>
次に、図2(b)に示すように、前工程(配置工程)で形成された硬化性組成物101からなる塗布膜にパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールド104を接触させる。本工程で、硬化性組成物101(被形状転写層)にモールド104を接触させる(図2(b−1))ことにより、モールド104が表面に有する微細パターンの凹部に硬化性組成物101からなる塗布膜(の一部)が充填されて、モールドの微細パターンに充填された塗布膜106となる(図2(b−2))。
【0125】
モールド104は、次の工程(光照射工程)を考慮して光透過性の材料で構成される必要がある。モールド104の構成材料としては、具体的には、ガラス、石英、PMMA、ポリカーボネート樹脂等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサン等の柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が好ましい。ただし、モールド104の構成材料として光透明性樹脂を使用する場合は、硬化性組成物101に含まれる成分に溶解しない樹脂を選択する必要がある。熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、石英であることが特に好ましい。
【0126】
モールド104が表面に有する微細パターンは、4nm以上200nm以下のパターン高さおよび1以上10以下のアスペクト比を有することが好ましい。
【0127】
モールド104には、硬化性組成物101とモールド104の表面との剥離性を向上させるために、硬化性組成物とモールドとの型接触工程である本工程の前に表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、モールドの表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。ここで、モールドの表面に塗布する離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツールDSX等の市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。尚、離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、フッ素系および炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
【0128】
本工程(型接触工程)において、図2(b−1)に示すように、モールド104と硬化性組成物101とを接触させる際に、硬化性組成物101に加える圧力は特に限定されないが、通常、0MPa以上100MPa以下である。その中でも0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましい。
【0129】
また、本工程においてモールド104を硬化性組成物101に接触させる時間は、特に限定されないが、通常、0.1秒以上600秒以下であり、0.1秒以上300秒以下であることが好ましく、0.1秒以上180秒以下であることがより好ましく、0.1秒以上120秒以下であることが特に好ましい。
【0130】
本工程は、大気雰囲気下、減圧雰囲気下、不活性ガス雰囲気下のいずれの条件下でも行うことができるが、酸素や水分による硬化反応への影響を防ぐことができるため、減圧雰囲気や不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気下で本工程を行う場合に使用することができる不活性ガスの具体例としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、各種フロンガス等、あるいはこれらの混合気体が挙げられる。大気雰囲気下を含めて特定のガスの雰囲気下で本工程を行う場合、好ましい圧力は、0.0001気圧以上10気圧以下である。
【0131】
型接触工程は、凝縮性ガスを含む雰囲気(以下、凝縮性ガス雰囲気)下で行ってもよい。本発明および本明細書において、凝縮性ガスとは、型接触工程で硬化性組成物101(被形状転写層)とモールド104とが接触する前(図2(b−1))は雰囲気中に気体として存在し、硬化性組成物101(被形状転写層)とモールド104とが接触して、モールド104上に形成された微細パターンの凹部、およびモールドと基板との間隙に塗布膜(の一部)106と一緒に雰囲気中のガスが充填されたとき、充填時の圧力により発生する毛細管圧力で凝縮して液化するガスとして定義する。
【0132】
凝縮性ガス雰囲気下で型接触工程を行うと、微細パターンの凹部に充填されたガスが液化することで気泡が消滅するため、充填性が優れる。凝縮性ガスは、硬化性組成物中に溶解してもよい。
【0133】
凝縮性ガスの沸点は、型接触工程の雰囲気温度以下であれば制限がないが、−10℃〜23℃が好ましく、さらに好ましくは10℃〜23℃である。この範囲であれば、充填性がさらに優れる。
【0134】
凝縮性ガスの型接触工程の雰囲気温度での蒸気圧は、型接触工程で押印するときのモールド圧力以下であれば制限がないが、0.1〜0.4MPaが好ましい。この範囲であれば、充填性がさらに優れる。雰囲気温度での蒸気圧が0.4MPaより大きいと、気泡の消滅の効果を十分に得ることができない傾向がある。一方、雰囲気温度での蒸気圧が0.1MPaよりも小さいと、減圧が必要となり、装置が複雑になる傾向がある。
【0135】
型接触工程の雰囲気温度は、特に制限がないが、20℃〜25℃が好ましい。
【0136】
凝縮性ガスとして、具体的には、トリクロロフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、フルオロカーボン(FC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(CHF2CH2CF3、HFC−245fa、PFP)等のハイドロフルオロカーボン(HFC)、ペンタフルオロエチルメチルエーテル(CF3CF20CH3、HFE−245mc)等のハイドロフルオロエーテル(HFE)等のフロン類が挙げられる。
【0137】
これらのうち、型接触工程の雰囲気温度が20℃〜25℃での充填性が優れるという観点から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(23℃での蒸気圧0.14MPa、沸点15℃)、トリクロロフルオロメタン(23℃での蒸気圧0.1056MPa、沸点24℃)、およびペンタフルオロエチルメチルエーテルが好ましく、さらに安全性が優れるという観点から、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンが特に好ましい。
【0138】
凝縮性ガスは、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。またこれら凝縮性ガスは、空気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の非凝縮性ガスと混合して用いてもよい。凝縮性ガスと混合する非凝縮性ガスとしては、充填性の観点から、ヘリウムが好ましい。ヘリウムであると、型接触工程でモールド104上に形成された微細パターンの凹部に塗布膜(の一部)106と一緒に雰囲気中のガス(凝縮性ガスおよびヘリウム)が充填されたとき、凝縮性ガスが液化するとともにヘリウムがモールドを透過することができるため、充填性が優れる。
【0139】
<位置合わせ工程[3]>
次に、図2(c)に示すように、モールド側位置決めマーク105と、被加工基板の位置決めマーク103が一致するように、モールドおよび/もしくは被加工基板の位置を調整する。
【0140】
<光照射工程[4]>
次に、図2(d)に示すように、[3]の工程により、位置を合わせた状態で、硬化性組成物の前記モールドとの接触部分に、より詳細には、モールドの微細パターンに充填された塗布膜106に、モールド104を介して光を照射する(図2(d−1))。これにより、モールド104の微細パターンに充填された塗布膜106は、照射される光によって硬化して硬化膜108となる(図2(d−2))。
【0141】
ここで、モールドの微細パターンに充填された塗布膜106を構成する硬化性組成物101に照射する光は、硬化性組成物101の感度波長に応じて選択されるが、具体的には、150nm以上400nm以下の波長の紫外光や、X線、電子線等を適宜選択して使用することが好ましい。
【0142】
これらの中でも、硬化性組成物101に照射する光(照射光107)は、紫外光が特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。ここで紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep−UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2エキシマレーザ等が挙げられるが、超高圧水銀灯が特に好ましい。また使用する光源の数は1つでもよいし又は複数であってもよい。また、光照射を行う際には、モールドの微細パターンに充填された塗布膜106の全面に行ってもよく、一部領域にのみ行ってもよい。
【0143】
また、光照射は、基板上の全領域に断続的に複数回行ってもよいし、全領域に連続照射してもよい。さらに、第一の照射過程で一部領域Aを照射し、第二の照射過程で領域Aとは異なる領域Bを照射してもよい。
【0144】
本実施形態において、本工程における硬化性組成物への露光量は、90mJ/cm2以下であることが好ましく、低露光量であることがより好ましく、30mJ/cm2以下であることが最も好ましい。本明細書中において、低露光量とは76mJ/cm2以下であることを意味する。
【0145】
この際、前述の本実施形態の硬化性組成物を用いることで、硬化性組成物を硬化して得られる硬化物が下記式(1)を満たし、好ましくは下記式(2)を満たす。
Er1/Er2≧1.10 式(1)
(ここで、Er1は、硬化物表面の複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、硬化物内部の複合弾性率(GPa)を示す。)
Er1/Er2≧1.40 式(2)
【0146】
なお、式(2)におけるEr1およびEr2は、式(1)におけるEr1およびEr2と同じであり、それぞれ硬化物表面の複合弾性率(GPa)、硬化物内部の複合弾性率(GPa)である。
【0147】
また、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(1)もしくは式(2)に加えて、以下の式(3)を満たすことが好ましい。
Er1≧3.00GPa 式(3)
【0148】
更に、硬化性組成物は、硬化した状態において、式(4)を満たすことがより好ましい。
Er1≧3.50GPa 式(4)
【0149】
なお、式(3)および式(4)におけるEr1は、式(1)もしくは式(2)におけるEr1と同じであり、硬化物表面の複合弾性率(GPa)である。
【0150】
すなわち、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成することができる。
【0151】
<離型工程[5]>
次に、硬化物108とモールド104と引き離す。このとき基板102上に所定のパターン形状を有する硬化物109が形成されている。
【0152】
本工程(離型工程)では、図2(e)に示すように、硬化物108とモールド104とを引き離し、工程[4](光照射工程)において、モールド104上に形成された微細パターンの反転パターンとなるパターン形状を有する硬化物109が得られる。
【0153】
また、型接触工程を凝縮性ガス雰囲気下で行った場合、離型工程で硬化物108とモールド104とを引き離す際に、硬化物108とモールド104とが接触する界面の圧力が低下することに伴って凝縮性ガスが気化することで、離型力低減効果を奏する傾向がある。
【0154】
硬化物108とモールド104とを引き離す方法としては、引き離す際に硬化物108の一部が物理的に破損しなければ特に限定されず、各種条件等も特に限定されない。例えば、基板102(被加工基板)を固定してモールド104を基板102から遠ざかるように移動させて剥離してもよく、モールド104を固定して基板102をモールドから遠ざかるように移動させて剥離してもよく、これらの両方を正反対の方向へ引っ張って剥離してもよい。
【0155】
以上の工程[1]〜工程[5]を有する一連の工程(製造プロセス)によって、所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸形状に因むパターン形状)を、所望の位置に有する硬化物を得ることができる。得られた硬化物は、例えば、フレネルレンズや回折格子などの光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む。)として利用することもできる。このような場合、少なくとも、基板102と、この基板102の上に配置されたパターン形状を有する硬化物109と、を有する光学部材とすることができる。
【0156】
本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法では、工程[1]〜工程[5]からなる繰り返し単位(ショット)を、同一の被加工基板上で繰り返して複数回行うことができる。工程[1]〜工程[5]からなる繰り返し単位(ショット)を複数回繰り返すことで、被加工基板の所望の位置に複数の所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸形状に因むパターン形状)を有する硬化物を得ることができる。
【0157】
<硬化物の一部を除去する残膜除去工程[6]>
工程[5]である離型工程により得られる硬化物は、特定のパターン形状を有するものの、このパターン形状が形成される領域以外の領域においても硬化物の一部が残る場合がある(以降の記載において、このような硬化物の一部を残膜と呼ぶことがある)。そのような場合は、図2(f)に示すように、得られたパターン形状を有する硬化物のうちの除去すべき領域にある硬化物(残膜)を除去して所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸形状に因むパターン形状)を有する硬化物パターン110を得ることができる。
【0158】
ここで、残膜を除去する方法としては、例えば、硬化物109の凹部である硬化物(残膜)をエッチングなどの方法により取り除き、硬化物109が有するパターンの凹部において基板102の表面を露出させる方法が挙げられる。
【0159】
硬化物109の凹部にある硬化物をエッチングにより除去する場合、その具体的な方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法、例えば、ドライエッチングを用いることができる。ドライエッチングには、従来公知のドライエッチング装置を用いることができる。そして、ドライエッチング時のソースガスは、エッチングに供される硬化物の元素組成によって適宜選択されるが、CF4、C2F6、C3F8、CCl2F2、CCl4、CBrF3、BCl3、PCl3、SF6、Cl2等のハロゲン系ガス、O2、CO、CO2等の酸素原子を含むガス、He、N2、Ar等の不活性ガス、H2、NH3のガス等を使用することができる。尚、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0160】
以上の工程[1]〜工程[6]の製造プロセスによって、所望の凹凸パターン形状(モールド104の凹凸形状に因むパターン形状)を、所望の位置に有する硬化物パターン110を得ることができ、硬化物パターンを有する物品を得ることができる。更に、得られた硬化物パターン110を利用して基板102を加工する場合は、後述する基板の加工工程(工程[7])を行う。
【0161】
一方、得られた硬化物パターン110を回折格子や偏光板などの光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む)として利用し、光学部品を得ることもできる。このような場合、少なくとも、基板102と、この基板102の上に配置された硬化物パターン110と、を有する光学部品とすることができる。
【0162】
<基板加工工程[7]>
本実施形態のパターン形状を有する硬化物の製造方法によって得られる、凹凸パターン形状を有する硬化物パターン110は、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAM等の半導体素子に代表される電子部品に含まれる層間絶縁膜用膜として利用することも可能であり、半導体素子製造時におけるレジスト膜として利用することも可能である。
【0163】
硬化物パターン110をレジスト膜として利用する場合、工程[6]であるエッチング工程にて表面が露出した基板の一部分(図2(f)における符号111の領域)に対して、エッチング又はイオン注入等を行う。尚、この際、硬化物パターン110は、エッチングマスクとして機能する。これに加えて、電子部品を形成することにより、硬化物パターン110のパターン形状に基づく回路構造112(図2(g))を基板102に形成することができる。これにより、半導体素子等で利用される回路基板を製造することができる。また、この回路基板と回路基板の回路制御機構などとを接続することにより、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。
【0164】
また、同様に、硬化物パターン110をレジスト膜として利用して、エッチング又はイオン注入等を行い、光学部品を得ることもできる。
【0165】
尚、回路付基板や電子部品を作製する場合、最終的には、加工された基板から硬化物パターン110を除去してもよいが、素子を構成する部材として残す構成としてもよい。
【実施例】
【0166】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下に説明 する実施例に限定されるものではない。
【0167】
(比較例1)
(1)硬化性組成物(b−1)の調製
まず、下記に示される成分(A)、成分(B)を配合し、これを0.2μmの超高分子 量ポリエチレン製フィルタでろ過し、比較例1の硬化性組成物(b−1)を調製した。
【0168】
(1−1)成分(A):合計94重量部
<A−1>イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB−XA):9.0 重量部
<A−2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160):38 .0重量部
<A−3>ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:NP−A ):47.0重量部
【0169】
(1−2)成分(B):合計3重量部
<B−1>Irgacure651(BASF製):3重量部
【0170】
【化10】

【0171】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
密着層として厚さ60nmの密着促進層が形成されたシリコンウエハ上に、調製した硬化性組成物(b−1)を2μL滴下し、上から厚さ1mmの石英ガラスを被せ、25mm×25mmの領域を硬化性組成物(b−1)で充填させた。
【0172】
次に、石英ガラス上から、超高圧水銀ランプを備えたUV光源から出射された光を、後述する干渉フィルタを通した上で石英ガラスを通して塗布膜に200秒照射した。光照射の際に使用した干渉フィルタはVPF−25C−10−15−31300(シグマ光機製)であり、このとき照射光である紫外光の波長を313±5nmの単一波長光とし、照度を1mW/cm2とした。
【0173】
光照射後、石英ガラスを剥がすと、シリコンウエハ上に硬化性組成物(b−1)を露光量200mJ/cm2で硬化した平均膜厚3.2μmの硬化物(b−1−200)が作製できた。
【0174】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
作製した硬化物(b−1−200)の複合弾性率は、硬化後24時間経過後に、ナノインデンター装置(TI−950 TriboIndenter、Hysitron製)を用いて測定した。本明細書中における全ての複合弾性率測定は、溶融石英を標準試料として校正したダイヤモンド圧子(TI−0037、90°キューブコーナー型、Hysitron製)を、前記ナノインデンター装置に装着して行った。
【0175】
硬化物表面の複合弾性率Er1(GPa)は、前記ダイヤモンド圧子を約10nmの押し込み深さまでインデントして荷重(P)と変位(押し込み深さh)を測定し、Hertz法によって「P2/3 vs. h」のグラフがほぼ直線となる領域(負荷直後、押し込み深さ0〜4nm)のグラフの傾きP2/3/hのデータを下記数式(1)に代入することによって、硬化物の表面から4nm以下の深さにおける平均複合弾性率を求め、これを15箇所繰り返して行って測定した値の平均値として算出した。なお、数式(1)中Rは圧子先端半径であり、測定に使用する圧子に依存する。使用圧子を用いた溶融石英のナノインデンテーションおよび同式により求めた値を使用した。
【0176】
【数3】

【0177】
硬化物内部の複合弾性率Er2(GPa)は、前記ダイヤモンド圧子を200nmの押し込み深さまでインデントして荷重(P)と変位(押し込み深さh)を測定し、Oliver−Pharr法によって「P vs. h」のグラフの除荷直後の接線の傾きのデータを下記数式(2)に代入することによって、硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率を求め、これを15箇所繰り返して行って測定した値の平均値として算出した。なお、数式(2)中のAcは接触投影面積であり、測定に使用する圧子および押し込み深さに依存する。使用圧子を用いた溶融石英のナノインデンテーションおよび同式により作成した校正曲線(使用圧子の押し込み深さと接触投影面積の関係)により求めた値を使用した。
【0178】
【数4】

【0179】
硬化物(b−1−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、3.39GPaおよび3.21GPaであり、Er1/Er2は1.06であった。
【0180】
(4)ナノインプリントパターンの観察
次に、下記に示す方法により、硬化性組成物(b−1)のナノインプリントパターンを形成し、電子顕微鏡を用いて前記ナノインプリントパターンを観察した。
【0181】
(4−1)配置工程
インクジェット法により、密着層として厚さ3nmの密着促進層が形成された300mmシリコンウエハ上に、硬化性組成物(b−1)の液滴(液滴1個当たり11pL)を合計1440滴滴下した。尚、各液滴をそれぞれ滴下する際に、縦26mm、横33mmの領域に各液滴の間隔がほぼ均等になるように滴下した。
【0182】
(4−2)型接触工程、光照射工程
次に、上記シリコンウエハ上の硬化性組成物(b−1)に対して、高さ60nmの28nmライン・アンド・スペース(L/S)パターンが形成され、表面処理がされていない石英モールド(縦26mm、横33mm)を接触させた。
【0183】
次に、石英モールドを接触させてから30秒後に、200W水銀キセノンランプを備えたUV光源(EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS CORPORATION製)を用いて、石英モールド越しにUV光を硬化性組成物に照射した。尚、UV光を照射する際には、UV光源と石英モールドとの間に、波長313±5nmを選択的に透過する干渉フィルタ(VPF−50C−10−25−31300、シグマ光機製)を配した。また石英モールド直下におけるUV光の照度は、波長313nmにおいて40mW/cm2であった。以上の条件下で、UV光の照射を0.25〜5.00秒(露光量10〜189mJ/cm2)行った。
【0184】
(4−3)離型工程
次に、石英モールドを、0.5mm/sの条件で引き上げて硬化物からモールドを離した。
【0185】
(4−4)電子顕微鏡を用いたナノインプリントパターンの観察
電子顕微鏡を用いてナノインプリントパターンの6.75μm四方の領域を観察したところ、76mJ/cm2以下の低露光量ではパターン倒れなどの欠陥が生じていた。
【0186】
硬化性組成物(b−1)がパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンを形成するために必要な最小露光量を検討したところ、90mJ/cm2以上の露光量が必要であることがわかった。
【0187】
ここで、パターン倒れとは、高さ60nmの28nmライン・アンド・スペース(L/S)パターンの隣接するラインの少なくとも一部が接触している状態をいう。
【0188】
(実施例1)
(1)硬化性組成物(a−1)の調製
成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C)として、下記式(c)で表される<C−1>TF−2067(DIC製)1.1重量部を用いたこと以外は比較例1と同様にして硬化性組成物(a−1)を調製した。
【0189】
【化11】

【0190】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−1)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−1−200)を作製した。
【0191】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−1−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−1−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、4.33GPaおよび2.87GPaであり、Er1/Er2は1.51であった。
【0192】
(4)ナノインプリントパターンの観察
比較例1と同様に、硬化性組成物(a−1)のナノインプリントパターンを形成し、電子顕微鏡を用いて前記ナノインプリントパターンを観察したところ、19〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されていた。
【0193】
(実施例2)
(1)硬化性組成物(a−2)の調製
成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C)として、下記式(d)で表される<C−2>SR−715(青木油脂工業製)0.9重量部を用いたこと以外は比較例1と同様にして硬化性組成物(a−2)を調製した。
【0194】
【化12】

【0195】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−2)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−2−200)を作製した。
【0196】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−2−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−2−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、5.10GPaおよび2.90GPaであり、Er1/Er2は1.76であった。
【0197】
(4)ナノインプリントパターンの観察
比較例1と同様に、硬化性組成物(a−2)のナノインプリントパターンを形成し、電子顕微鏡を用いて前記ナノインプリントパターンを観察したところ、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されていた。
【0198】
(比較例2)
(1)硬化性組成物(b−2)の調製
成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C)として、下記式(e)で表される<C−3>Pluriol A760E(BASF製)0.8重量部を用いたこと以外は比較例1と同様にして硬化性組成物(b−2)を調製した。
【0199】
【化13】

【0200】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(b−2)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(b−2−200)を作製した。
【0201】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(b−2−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(b−2−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、2.90GPaおよび3.04GPaであり、Er1/Er2は0.953であった。
【0202】
(4)ナノインプリントパターンの観察
比較例1と同様に、硬化性組成物(b−2)のナノインプリントパターンを形成し、電子顕微鏡を用いてナノインプリントパターンを観察したところ、76mJ/cm2以下の低露光量ではパターン倒れなどの欠陥が生じていた。
【0203】
硬化性組成物(b−2)がパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンを形成するために必要な最小露光量を検討したところ、90mJ/cm2以上の露光量が必要であることがわかった。
【0204】
(実施例3)
(1)硬化性組成物(a−3)の調製
成分(B)を、下記式(b)で表される<B−2>Irgacure369(BASF製)3重量部としたこと以外は比較例1と同様にして硬化性組成物(a−3)を調製した。
【0205】
【化14】

【0206】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−3)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−3−200)を作製した。
【0207】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−3−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−3−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、5.75GPaおよび3.51GPaであり、Er1/Er2は1.64であった。
【0208】
(4)ナノインプリントパターンの観察
比較例1と同様に、硬化性組成物(a−3)のナノインプリントパターンを形成し、電子顕微鏡を用いて前記ナノインプリントパターンを観察したところ、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されていた。
【0209】
(実施例4)
(1)硬化性組成物(a−4)の調製
下記に示される成分(A)、成分(B)、添加成分(C)を配合し、これを0.2μmの超高分子量ポリエチレン製フィルタでろ過し、硬化性組成物(a−4)を調製した。
【0210】
(1−1)成分(A):合計100重量部
<A−2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160):50重量部
<A−4>m−キシリレンジアクリレート:50重量部
【0211】
(1−2)成分(B):合計3重量部
<B−3>LucirinTPO(BASF製):3重量部
【0212】
(1−3)成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C):合計1.3重量部
<C−4>ポリオキシエチレンステアリルエーテル エマルゲン320P(花王製):0.8重量部
<C−5>4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成製):0.5重量部
【0213】
【化15】

【0214】
【化16】

【0215】
【化17】

【0216】
【化18】

【0217】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−4)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−4−200)を作製した。
【0218】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−4−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−4−200)の表面の:複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、5.90GPaおよび4.04GPaであり、Er1/Er2は1.46であった。
【0219】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−4−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−4)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0220】
(実施例5)
(1)硬化性組成物(a−5)の調製
成分(A)を、<A−2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)45重量部、<A−4>m−キシリレンジアクリレート50重量部、<A−5>2−ナフチルメチルアクリレート5重量部としたこと以外は、実施例4と同様にして硬化性組成物(a−5)を調製した。
【0221】
【化19】

【0222】
【化20】

【0223】
(2)硬化性組成物の硬化膜の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−5)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で露光した硬化膜(a−5−200)を作製した。
【0224】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−5−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−5−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、6.02GPaおよび4.00GPaであり、Er1/Er2は1.51であった。
【0225】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−5−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−5)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0226】
(実施例6)
(1)硬化性組成物(a−6)の調製
成分(A)を、<A−2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)50重量部、<A−7>フェニルエチレングリコールジアクリレート50重量部としたこと以外は、実施例4と同様にして硬化性組成物(a−6)を調製した。
【0227】
【化21】

【0228】
(2)硬化性組成物の硬化膜の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−6)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で露光した硬化膜(a−6−200)を作製した。
【0229】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−6−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−6−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、4.20GPaおよび3.76GPaであり、Er1/Er2は1.12であった。
【0230】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−6−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−6)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0231】
(実施例7)
(1)硬化性組成物(a−7)の調製
成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C)として、<C−6>ポリオキシエチレンステアリルエーテル SR−730(青木油脂製):1.6重量部、<C−5>4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成製):0.5重量部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして硬化性組成物(a−7)を調製した。
【0232】
【化22】

【0233】
【化23】

【0234】
(2)硬化性組成物の硬化膜の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−7)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で露光した硬化膜(a−7−200)を作製した。
【0235】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−7−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−7−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、4.60GPaおよび3.84GPaであり、Er1/Er2は1.20であった。
【0236】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−7−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−7)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0237】
(比較例3)
(1)硬化性組成物(b−3)の調製
下記に示される成分(A)、成分(B)を配合し、これを0.2μmの超高分子量ポリエチレン製フィルタでろ過し、硬化性組成物(b−3)を調製した。
【0238】
(1−1)成分(A):合計100重量部
<A−2>ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160):50重量部
<A−7>フェニルエチレングリコールジアクリレート:50重量部
【0239】
(1−2)成分(B):合計3重量部
<B−3>LucirinTP0(BASF製):3重量部
【0240】
【化24】

【0241】
【化25】

【0242】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(b−3)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(b−3−200)を作製した。
【0243】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(b−3−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(b−3−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、3.54GPaおよび3.87GPaであり、Er1/Er2は0.915であった。
【0244】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(b−3−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(b−3)のナノインプリントパターンを形成すると、76mJ/cm2以下の低露光量ではパターン倒れなどの欠陥が生じると推定される。
【0245】
(実施例8)
(1)硬化性組成物(a−8)の調製
成分(B)を、下記式(f)で表される<B−3>LucirinTPO(BASF製)3重量部としたこと以外は比較例1と同様にして硬化性組成物(a−8)を調製した。
【0246】
【化26】

【0247】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−8)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−8−200)を作製した。
【0248】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−8−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−8−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、5.12GPaおよび3.64GPaであり、Er1/Er2は1.41であった。
【0249】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−8−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−8)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0250】
(実施例9)
(1)硬化性組成物(a−9)の調製
下記に示される成分(A)、成分(B)を配合し、これを0.2μmの超高分子量ポリエチレン製フィルタでろ過し、硬化性組成物(a−9)を調製した。
【0251】
(1−1)成分(A):合計100重量部
<A−8>ジシクロペンタニルアクリレート(日立化成製、商品名:FA−513AS):50重量部
<A−4>m−キシリレンジアクリレート:50重量部
【0252】
(1−2)成分(B):合計3重量部
<B−2>Irgacure369(BASF製):3重量部
【0253】
【化27】

【0254】
【化28】

【0255】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−9)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−9−200)を作製した。
【0256】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−9−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−9−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、5.57GPaおよび3.47GPaであり、Er1/Er2は1.61であった。
【0257】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−9−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−9)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0258】
(実施例10)
(1)硬化性組成物(a−10)の調製
下記に示される成分(A)、成分(B)、添加成分(C)を配合し、これを0.2μmの超高分子量ポリエチレン製フィルタでろ過し、硬化性組成物(a−10)を調製した。
【0259】
(1−1)成分(A):合計100重量部
<A−1>イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB−XA):75重量部
<A−9>1,10−デカンジオールジアクリレート(新中村化学製、商品名:A−DOD−N):25重量部
【0260】
(1−2)成分(B):合計3重量部
<B−3>LucirinTPO(BASF製):3重量部
【0261】
(1−3)成分(A)、成分(B)以外の添加成分(C):合計0.5重量部
<C−5>4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(東京化成製):0.5重量部
【0262】
【化29】

【0263】
【化30】

【0264】
(2)硬化性組成物の硬化物の作製
比較例1と同様にして、シリコンウエハ上に硬化性組成物(a−10)の3.2μmの厚さの膜を露光量200mJ/cm2で硬化した硬化物(a−10−200)を作製した。
【0265】
(3)硬化物の複合弾性率の測定
比較例1と同様にして、作製した硬化物(a−10−200)の複合弾性率を測定したところ、硬化物(a−10−200)の表面の複合弾性率Er1および内部の複合弾性率Er2はそれぞれ、3.51GPaおよび2.73GPaであり、Er1/Er2は1.29であった。
【0266】
(4)ナノインプリントパターンの観察
硬化物(a−10−200)の複合弾性率測定の結果から、比較例1と同様の方法で硬化性組成物(a−10)のナノインプリントパターンを形成すると、10〜76mJ/cm2の低露光量でもパターン倒れなどの欠陥のない良好なパターンが形成されると推定される。
【0267】
実施例、比較例の結果を表1、表2および表3に要約する。
【0268】
【表1】

【0269】
(注)
記号○:パターン倒れなどの欠陥のない良好なパターン
記号×:パターン倒れなどの欠陥を生じたパターン
Er1:硬化物表面の複合弾性率
Er2:硬化物内部の複合弾性率
複合弾性率飽和初期の露光量:硬化が進み、複合弾性率がほぼ一定となる初期の露光量
【0270】
まず、低露光量(76mJ/cm2以下)におけるパターン倒れ評価結果と硬化組成物の関係をみる。実施例1〜2と比較例1〜2を比較すると、成分(C)である界面活性剤の添加の有無および種類によって、低露光量におけるパターン倒れの評価結果に顕著な差異があることがわかる。また、実施例3と比較例1を比較すると、成分(B)である光重合開始剤の種類によっても、低露光量におけるパターン倒れの評価結果に顕著な差異があることがわかる。
【0271】
次に、硬化物表面と内部の複合弾性率の測定結果を見ると、実施例1〜3では、硬化物内部の複合弾性率Er2が比較例1〜2のそれよりも小さいにもかかわらず、低露光量(76mJ/cm2以下)におけるパターン倒れが抑制されている。また、実施例1〜3における硬化物表面と内部の複合弾性率比Er1/Er2は、比較例1〜2のそれよりも大きいことがわかる。すなわち硬化物表面に硬い層ができていることを意味する。
【0272】
一方、複合弾性率飽和初期の露光量(200mJ/cm2)で硬化した硬化物の表面と内部の複合弾性率比Er1/Er2は、低露光量でもほぼ維持される傾向があることがわかっている。
【0273】
以上のことから、Er1/Er2≧1.10である実施例1〜3の硬化性組成物は、光ナノインプリント法において、低露光量で硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能なナノインプリント用硬化性組成物であることがわかる。
【0274】
【表2】

【0275】
Er1:硬化物表面の複合弾性率
Er2:硬化物内部の複合弾性率
複合弾性率飽和初期の露光量:硬化が進み、複合弾性率がほぼ一定となる初期の露光量
【0276】
【表3】

【0277】
Er1:硬化物表面の複合弾性率
Er2:硬化物内部の複合弾性率
複合弾性率飽和初期の露光量:硬化が進み、複合弾性率がほぼ一定となる初期の露光量
【産業上の利用可能性】
【0278】
以上説明したように、低露光量で光硬化性組成物を硬化した場合であっても、硬化物の表面が十分に硬化して、パターン倒れの欠陥が発生しにくい硬化物を形成可能なナノインプリント用光硬化性組成物およびナノインプリント方法を利用することができる。また本発明の膜の製造方法は、硬化物、光学部品、回路基板、電子部品、電子機器等を製造する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0279】
101 硬化性組成物
102 基板
103 基板側位置合わせマーク
104 モールド
105 モールド側位置合わせマーク
106 塗布膜
107 照射光
108 硬化物
109 パターン形状を有する硬化物
110 硬化物パターン
111 表面が露出した基板の一部分
112 回路構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物である成分(A)と、光重合開始剤である成分(B)と、を少なくとも含有し、平均膜厚3.2μm、波長が313±5nmの光、露光量200mJ/cm2の条件で硬化させたときに、下記の式(1)、および(3)を満たすことを特徴とする、凹凸パターン形状を有する硬化物を製造するための硬化性組成物。
Er1/Er2≧1.10 (1)
Er1≧3.00 (3)
(ここで、Er1は、ナノインデンターを用いて測定し、Hertz法で求めた際の前記硬化物の表面から4nm以下の深さでの平均複合弾性率(GPa)を示し、Er2は、ナノインデンターを用いて測定し、Oliver−Pharr法で求めた際の前記硬化物の表面から200nmの深さにおける複合弾性率(GPa)を示す。)
【請求項2】(削除)
【請求項3】
前記成分(A)が、単官能(メタ)アクリル化合物および/または多官能(メタ)アクリル化合物を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記成分(A)が、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ナフチルメチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、m−キシリレンジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、フェニルエチレングリコールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、またはネオペンチルグリコールジアクリレート、のうち少なくとも一つを含有することを特徴とする請求項1または3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、20重量%以上が多官能(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記成分(A)の主成分が(メタ)アクリル化合物であって、前記成分(A)のうち、30重量96以上が環状構造を有する(メタ)アクリル化合物であることを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記成分(A)の主成分がジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であることを特徴とする請求項1、3〜6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記成分(B)が、アルキルフェノン系重合開始剤またはアシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤のうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1、3〜7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記成分(B)として、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1または2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのうち少なくとも一つ以上を含有することを特徴とする請求項1、3〜8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記成分(A)の主成分が、ジシクロペンタニルアクリレートおよびm−キシリレンジアクリレートであって、これらの重量比が40:60〜60:40であり、かつ、前記成分(B)が、前記成分(A)の全量に対して0.01〜10重量%添加されていることを特徴とする請求項1、3〜9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
内添型離型剤として、フッ素系界面活性剤または炭化水素系界面活性剤のうち、少なくとも一つ以上が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
増感剤として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系増感剤が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
水素供与体として、少なくとも一つ以上のベンゾフェノン系水素供与体が添加されていることを特徴とする請求項1、3〜12のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記硬化性組成物の粘度が1cP以上100cP以下であることを特徴とする請求項1、3〜13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
前記硬化性組成物が光ナノインプリント用組成物であることを特徴とする請求項1、3〜14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
基板上に、請求項1、3〜15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を配置する工程[1]と、
前記硬化性組成物とパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させる工程[2]と、
前記基板とモールドとの位置合わせを行う工程[3]と、
前記硬化性組成物に光を照射して硬化膜とする工程[4]と、
前記硬化膜と前記モールドとを引き離す工程[5]と、
を有することを特徴とするパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項17】
前記硬化性組成物とパターン形状を転写するための原型パターンを有するモールドとを接触させる工程におけるモールドが、4nm以上200nm以下のパターン高さおよび1以上10以下のアスペクト比を有することを特徴とする請求項16に記載のパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項18】
前記硬化性組成物に光を照射して硬化膜とする工程における露光量が、90mJ/cm2以下であることを特徴とする請求項16または17に記載のパターン形状を有する膜の製造方法。
【請求項19】
型接触工程が、凝縮性ガスを含む雰囲気下で行われることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の膜の製造方法。
【請求項20】
凝縮性ガスが、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンであることを特徴とする、請求項19に記載の膜の製造方法。
【請求項21】
凝縮性ガスを含む雰囲気が、ヘリウムと凝縮性ガスとの混合気体であることを特徴とする、請求項19または20に記載の膜の製造方法。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程を有することを特徴とする光学部品の製造方法。
【請求項23】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程と、得られた膜のパターン形状をマスクとして基板にエッチング又はイオン注入を行う工程と、を有することを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項24】
前記回路基板が、半導体素子である請求項23に記載の回路基板の製造方法。
【請求項25】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の膜の製造方法によりパターン形状を有する膜を得る工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2021-07-19 
出願番号 P2014-257799
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H01L)
P 1 651・ 537- YAA (H01L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 山村 浩
井上 博之
登録日 2020-01-09 
登録番号 6643802
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 硬化性組成物、その硬化物、硬化物の製造方法、光学部品の製造方法、回路基板の製造方法、および電子部品の製造方法  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  
代理人 黒岩 創吾  

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