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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B23K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B23K |
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管理番号 | 1387461 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-01-21 |
確定日 | 2022-05-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6725572号発明「レーザ加工機及びレーザ加工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6725572号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕、4、5、6、7、8、9、10について訂正することを認める。 特許第6725572号の請求項1−10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6725572号の請求項1−10に係る特許についての出願は、平成30年3月23日に出願され、令和2年6月29日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年1月21日に特許異議申立人 藤本 信男(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、令和3年6月3日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和3年8月5日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、本件訂正請求に対して、当審は期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが、応答がなかった。 第2 本件訂正請求による訂正の適否についての判断 1 請求項1−3に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光のうち、加工条件に応じた複数の特定波長帯の光を抽出してそれらの光レベルを時系列に検出する検出部としての分光器と、 前記分光器からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光を抽出してそれらの光レベルを時系列に検出する検出部としての分光器と、 前記分光器からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするビアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記検出部は、 加工条件に応じた特定波長帯の光のみを透過させる光学フィルタと、 前記光学フィルタを透過した光の光強度を検出するフォトダイオード回路と、を有していることを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、 SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記検出部は、 加工条件に応じた特定波長帯の光のみを透過させる光学フィルタと、 前記光学フィルタを透過した光の光強度を検出するフォトダイオード回路と、を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「前記監視部は、レーザ加工の加工状態を判定するための閾値と、前記検出部からの検出結果とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のレーザ加工機。」 とあるのを、 「前記監視部は、レーザ加工の加工状態を判定するための閾値と、前記検出部からの検出結果とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のビアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 上記訂正事項1−3は、請求項1−3についてのものであるところ、請求項1又は2のいずれかの記載を請求項3が引用する引用関係にあるから、訂正事項1−3を含む本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1−3〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項1−3において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を減縮するものである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を減縮するものである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項2は、訂正前の請求項2に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 同様に、訂正後の請求項3に係る特許発明は、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項の記載を引用することにより、訂正前の請求項3に係る特許発明の内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る特許発明の「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3において追加される、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る特許発明の「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 2 請求項4に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、800nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項4において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項4 (ア)訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る特許発明の「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「(800±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4において追加される、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみ」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る特許発明の「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「(800±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 3 請求項5に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項5において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項5 (ア)訂正の目的について 訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、470nm波長帯」に「鉄系金属の」及び「(470±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属の加工条件に応じた複数の特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみ」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、470nm波長帯」に「鉄系金属の」及び「(470±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 4 請求項6に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項6において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項6 (ア)訂正の目的について 訂正事項6は、訂正前の請求項6に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」、「(800±20nm)」及び「(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項6は、訂正前の請求項6に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」、「(800±20nm)」及び「(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 5 請求項7に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記監視部は、レーザ加工の加工状態が良好な場合に想定されかつ特定波長帯の光レベルの時間的遷移を示す基準の遷移パターンと、前記検出部からの検出結果である加工条件に応じた特定波長帯の光レベルの時間的遷移とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していることを特徴とするレーザ加工機。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記監視部は、レーザ加工の加工状態が良好な場合に想定されかつ特定波長帯の光レベルの時間的遷移を示す基準の遷移パターンと、前記検出部からの検出結果である加工条件に応じた特定波長帯の光レベルの時間的遷移とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項7において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項7 (ア)訂正の目的について 訂正事項7は、訂正前の請求項7に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項7において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項7は、訂正前の請求項7に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 6 請求項8に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、800nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするレーザ加工方法。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項8において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項8 (ア)訂正の目的について 訂正事項8は、訂正前の請求項8に係る特許発明の「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「(800±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項8において追加される、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみ」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記.載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項8は、訂正前の請求項8に係る特許発明の「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」及び「(800±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 7 請求項9に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするレーザ加工方法。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項9において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項9 (ア)訂正の目的について 訂正事項9は、訂正前の請求項9に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、470nm波長帯」に「鉄系金属の」及び「(470±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項9において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属の加工条件に応じた複数の特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみ」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項9は、訂正前の請求項9に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、470nm波長帯」に「鉄系金属の」及び「(470±20nm)のみ」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 8 請求項10に係る訂正 (1)訂正の内容 ア 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするレーザ加工方法。」 とあるのを、 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。」 に訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件 本件特許異議申立ては、全ての請求項に対してされたものであるから、訂正事項10において、独立特許要件は課されない。 ア 訂正事項10 (ア)訂正の目的について 訂正事項10は、訂正前の請求項10に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」、「(800±20nm)」及び「(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものである。 よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項10において追加される、アシストガスが「窒素を含む」ことは、願書に添付した明細書の段落【0036】及び【0084】に記載され、加工条件に応じた複数の特定波長帯が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)」であることは、願書に添付した明細書の段落【0036】に記載され、レーザ加工機が「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であることは、願書に添付した明細書の段落【0019】、【0022】及び【0072】に記載されている。 よって、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記(ア)に記載したとおり、訂正事項10は、訂正前の請求項10に係る特許発明の「アシストガス」に「窒素を含む」なる事項を追加し、「加工条件に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯と470nm波長帯」に「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の」、「(800±20nm)」及び「(470±20nm)」なる各事項を追加し、「レーザ加工機」に「ピアシング加工及び切断加工を行う」なる事項を追加して、その内容を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正には該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 9 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−3〕、4、5、6、7、8、9、10について訂正することを認める。 第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1−10に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」、請求項2−10に係る発明を、各請求項の番号に対応させて、それぞれ「本件発明2」−「本件発明10」といい、請求項1−10に係る発明をまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1−10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線は、訂正部分に付した。) 【請求項1】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光を抽出してそれらの光レベルを時系列に検出する検出部としての分光器と、 前記分光器からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項2】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され,ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して,レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記検出部は、 加工条件に応じた特定波長帯の光のみを透過させる光学フィルタと、 前記光学フィルタを透過した光の光強度を検出するフォトダイオード回路と、を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項3】 前記監視部は、レーザ加工の加工状態を判定するための閾値と,前記検出部からの検出結果とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項4】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項5】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項6】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項7】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工へッドと、 前記レーザ加工へッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記監視部は、レーザ加工の加工状態が良好な場合に想定されかつ特定波長帯の光レベルの時間的遷移を示す基準の遷移パターンと、前記検出部からの検出結果である加工条件に応じた特定波長帯の光レベルの時間的遷移とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項8】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって, レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し, 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状熊を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 【請求項9】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状熊を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 【請求項10】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工へッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工へッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 第4 取消理由通知により通知した取消理由について 本件訂正請求による訂正前の請求項1−10に係る特許に対して、当審が令和3年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 1 取消理由1(進歩性) (1)請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2及び17に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献2、3及び17に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)請求項2に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献6−9にて例示される周知技術及び引用文献2、7−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項、引用文献6−9にて例示される周知技術及び引用文献2、7−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)請求項3に係る発明について、請求項1を引用する請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2及び17に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献2、3及び17に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、また、請求項2を引用する請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献6−9にて例示される周知技術及び引用文献2、7−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項、引用文献6−9にて例示される周知技術及び引用文献2、7−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)請求項5に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献3に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3及び4に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6)請求項6に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3及び4に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (7)請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献5に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3及び5に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (8)請求項8に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (9)請求項9に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (10)請求項10に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由2(サポート要件) 請求項1−10に係る特許は、下記第6の2(1)記載の理由により、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由3(明確性) 請求項1−10に係る特許は、下記第6の3(1)記載の理由により、特許請求の範囲の記載が明確でなく、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ◎引用文献等 引用文献1:特開2017―24046号公報[甲第1号証] 引用文献2:特開2002−79386号公報[甲第2号証] 引用文献3:欧州特許第2712335号明細書[甲第3号証] 引用文献4:特開2016−131981号公報[甲第4号証] 引用文献5:特開平7−116872号公報[甲第5号証] 引用文献6:特開2012−648号公報[甲第6号証;周知技術を示す文献] 引用文献7:特開2011−206806号公報[甲第7号証;周知技術を示す文献] 引用文献8:特開2005−254314号公報[甲第8号証;周知技術を示す文献] 引用文献9:特開2011−115806号公報[甲第9号証;周知技術を示す文献] 引用文献17:特開2015−148483号公報 甲第10号証:Oliver Bockstrocker, Peter Berger, Steffen Kessler, Tim Hesse, Volker Rominger, & Thomas Graf (2020). Local Vaporization at the Cut Front at High Laser Cutting Speeds. Lasers in Manufacturing and materials Processing, 7, 190-206 (https://doi.org/10.1007/s40516-020-00113-3)、写し 甲第13号証:J. Powell, D. Petring, R. V. Kumar, S. O. Al-Mashikhi, A. F. H. Kaplan, & K. T. Voisey (2009). Laser-oxygen cutting of mild steel: the thermodynamics of the oxidation reaction. Journal of Physics D: Applied Physics, 42, 015504、写し 甲第14号証:NIST Atomic Spectra Database Lines Data. N (all spectra): 167 Lines of Data FoundのWebページ(https://physics.nist.gov/cgi-bin/ASD/lines1.pl?spectra=N&Limits_type=0&low_w=440&upp_w=500&unit=1&submit=Retrieve+Data&de=0&format=0&line_out=0&en_unit=0&output=0&bibrefs=1&page_size=15&show_obs_wl=1&show_calc_wl=1&unc_out=1&order_out=0&max_low_enrg=&show_av=2&max_upp_enrg=&tsb_value=0&min_str=&A_out=0&intens_out=on&max_str=&allowed_out=1&forbid_out=1&min_accur=&min_intens=&conf_out=on&term_out=on&enrg_out=on&J_out=on)、出力日:2020年12月29日、写し 甲第15号証:NIST Atomic Spectra Database Lines Data. Fe I: 546 Lines of Data FoundのWebページ(https://physics.nist.gov/cgi-bin/ASD/lines1.pl?spectra=Fe+I&limits_type=0&low_w=440&upp_w=500&unit=1&submit=Retrieve+Data&de=0&format=0&line_out=0&en_unit=0&output=0&bibrefs=1&page_size=15&show_obs_wl=1&show_calc_wl=1&unc_out=1&order_out=0&max_low_enrg=&show_av=2&max_upp_enrg=&tsb_value=0&min_str=&A_out=0&intens_out=on&max_str=&allowed_out=1&forbid_out=1&min_accur=&min_intens=&conf_out=on&term_out=on&enrg_out=on&J_out=on)、出力日:2020年12月29日、写し 甲第16号証:NIST Atomic Spectra Database Lines Data. Al (all spectra): 66 Lines of Data FoundのWebページ(https://physics.nist.gov/cgi-bin/ASD/lines1.pl?spectra=Al&limits_type=0&low_w=440&upp_w=500&unit=1&submit=Retrieve+Data&de=0&format=0&line_out=0&en_unit=0&output=0&bibrefs=1&page_size=15&show_obs_wl=1&show_calc_wl=1&unc_out=1&order_out=0&max_low_enrg=&show_av=2&max_upp_enrg=&tsb_value=0&min_str=&A_out=0&intens_out=on&max_str=&allowed_out=1&forbid_out=1&min_accur=&min_intens=&conf_out=on&term_out=on&enrg_out=on&J_out=on)、出力日:2020年12月29日、写し 第5 引用文献の記載 1 引用文献1:特開2017−24046号公報[甲第1号証] (1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。) ア 特許請求の範囲 (ア)「【請求項1】 レーザ光にて溶接される溶接材料の溶接部位について、その溶接状態を監視するレーザ溶接監視装置において、 前記溶接材料に前記レーザ光が照射されて形成された溶融池からの、前記溶接材料に対応して予め決定された、可視光内の特定の一波長の発光強度を検出し、検出した前記発光強度に基づいて溶接状態を判定する ことを特徴とするレーザ溶接監視装置。」 イ 発明の詳細な説明 (ア)「【0009】 本発明は、上述の問題点に鑑み為されたものであり、より低コストで、レーザ溶接時の欠陥検出精度を高めたより確からしい溶接モニタリングが可能とすることを目的とする。」 (イ)「【0016】 レーザ溶接時に保護メガネを介して目視観察すれば理解できるが、レーザ溶接時のプルームは材料特有の発行色を示すため、プルームの測定波長は、溶接材料ごとに特定の波長に限定されることが好ましいと思われる。 【0017】 図1は、本実施形態のレーザ溶接システム1000の構成概要を説明する図である。レーザ溶接システム1000は、溶接するためのレーザ光を発生させるレーザ装置1100と、レーザ装置1100で発生させたレーザ光をファイバを介して溶接材1400に集光する加工ヘッド1300を備える。 【0018】 溶接材1400にレーザ光のエネルギーが集約されることにより生成された溶融池から生じる可視光は、可視光集光センサユニット1500で集光されて、光電変換される、可視光集光センサユニット1500の下端(可視光入射側)には、不図示の干渉フィルターが備えられている。干渉フィルターは、溶接材1400に対応した特定の一波長(実質的にはある程度の波長幅を有する)のみを通過させる。」 (ウ)「【0020】 これを利用して、レーザ熔接システム1000は、溶接材1400の材料に対応した特定の波長の可視光の強度のみを常時監視し、その光強度が所定の閾値以上となった場合には溶接不良と判断する。すなわち、良否判定装置1200は、可視光集光センサユニット1500で光電変換された電気信号の値が所定の閾値以上となったことを検出した場合に 、溶接不良と判定する。」 (エ)「【0023】 一方、図2(b)から理解できるように、半値幅25nmの400nm透過干渉フィルターを用いて特定の波長のみを検出した場合には、レーザ溶接の進渉の時問経過に対する 検出値の振幅があまり大きくない。このため、時間0.03(s)付近のひときわ大きな検出値を明確に峻別可能となる。図2(a)と図2(b)共に、横軸の時間約0.03(s)において、溶接の不良が発生しているのであるが、図2(b)においては溶接不良に起因する検出値の上下振れを検知可能である。」 (オ)「【0044】 本発明のレーザ溶接監視装置は、レーザ光にて溶接される溶接材料の溶接部位について、その溶接状態を監視するレーザ溶接監視装置であって、溶接材料にレーザ光が照射されて形成された溶融池からの、溶接材料に対応して予め決定された、可視光内の特定の一波長の発光強度を検出し、検出した発光強度に基づいて溶接状態を判定することを特徴とする。」 (カ)「【0051】 本発明のレーザ溶接監視装置は、溶接材料がアルミニウムの場合には、特定の一波長は375nm〜425nmであることを特徴とする。 【0052】 アルミニウムを溶接材料とする場合には、390nmを典型例とするピーク波長において、正常溶接時と異常溶接時との発光強度の比が最も大きくなる。このため、当該波長領域を用いて、レーザ溶接進行時にその場監視することにより、レーザ溶接の良否判定が安定して行えるレーザ溶接監祝装置とできる。390nmのピーク波良については、半値幅等も考慮すれば、実質的には365nm乃至415nm程度の波長領域の発光強度を検出すればよいと思われる。この場合に、レーザ溶接監視装置は、365nm乃至415nmの波長領域全体を特定の一波長としてモニターしてもよいし、365nm乃至415nmの範囲のいずれか単波長を特定の一波長としてモニターしてもよい。 【0053】 また、本発明のレーザ溶接監視装置は、さらに好ましくは溶接材料が鉄の場合には、特定の一波長は565nm乃至615nmであり、溶接材料がSUSの場合には、特定の一 波長は745nm乃至795nmであり、溶接材料がチタンの場合には、特定の一波長は745nm乃至795nmであることを特徴とする。 【0054】 鉄、SUS304、チタンをそれぞれ溶接材料とする場合には、それぞれ590nm、770nm、770nmを典型例とするピーク波畏において、正常溶接時と異常溶接時との発光強度の比が最も大きくなる。 【0055】 このため、当該波長領域を用いて、レーザ溶接進行時にその場能視することにより、レーザ溶接の良否判定が安定して行えるレーザ溶接監視装置とできる。それぞれ590nm、770nm、770nmのピーク波長については、半値幅等も考慮すれば、実質的にはそれぞれ565nm乃至615nm、745nm乃至795nm、745nm乃至795nm程度の波長領域の発光強度を検出すればよいと思われる。 【0056】 この場合に、レーザ溶接監視装置は、それぞれ565nm乃至615nm、745nm乃至795nm、745nm乃至795nmの波長領域全体をそれぞれ特定の一波長としてモニターしてもよいし、565nm乃至615nm、745nm乃至795nm、745nm乃至795nmの範囲のいずれか単波長をそれぞれ特定の一波長としてモニターし てもよい。 【0057】 また、本発明のレーザ溶接監視装置は、レーザ光が1070nm〜1100nmのファイバレーザであることを特徴とする。」 ウ 図面 (ア)「 」 (イ)「 」 (ウ)「 」 エ 上記ア−ウからみて、引用文献1には以下の事項が記載されていると認められる。 (ア)レーザ発信器について 上記イ(イ)及び(ク)からみて、レーザ装置1100が出力するレーザ光は、1070nm〜1100nmのレーザ光であると認められる。 (イ)レーザ加工ヘッドについて 上記イ(イ)及びウ(ア)からみて、加工ヘッド1300は、レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射するものであると認められる。 (ウ)検出部について 上記イ(イ)、(ウ)及びウ(ア)からみて、干渉フィルター及び光電変換部は、加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられるものであると認められる。 (ウ)−1 分光器について 上記イ(イ)、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)及びウ(ア)−(ウ)からみて、干渉フィルター及び光電変換部は、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光を通過させてその光レベルを時系列的に検出し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光を通過させてその光レベルを時系列に検出する検出部であると認められる。 (ウ)−2 検出部について 上記イ(イ)、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)及びウ(ア)−(ウ)からみて、干渉フィルター及び光電変換部は、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出するものであると認められる。 (ウ)−3 検出部について 上記イ(イ)、(ウ)、(エ)及びウ(ア)−(ウ)からみて、検出部は、溶接材1400の材料に対応した特定の一波長のみを通過させる干渉フィルターと、干渉フィルターした光の光強度を検出する光電変換部と、を有しているものであると認められる。 (エ) 監視部について (エ)−1 監視部について<その1> 上記イ(イ)、(ウ)、(エ)及びウ(ア)からみて、良否判定装置1200は、干渉フィルター及び光電変換部からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ溶接の溶接状態を監視するものであると認められる。 (エ)−2 監視部について<その2> 上記イ(イ)、(ウ)、(エ)、(オ)、(カ)及びウ(ア)からみて、良否判定装置1200は、検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列的に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視するものであると認められる。 (エ)−3 監視部について<その3> 上記イ(ウ)からみて、良否判定装置1200は、レーザ溶接の溶接状態を判定するための所定の閾値と、検出部からの検出結果とを比較して、レーザ溶接の溶接状態を判定する判定部を有しているものであると認められる。 (エ)−4 監視部について<その4> 上記イ(ウ)からみて、良否判定装置1200は、所定の閾値と、検出部からの検出結果である溶接材1400の材料に対応した特定の一波長の光レベルとを比較して、レーザ溶接の溶接状態を判定する判定部を有しているものであると認められる。 (オ) ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機について 上記イ(イ)、(ウ)及びウ(ア)からみて、レーザ溶接システム1000が記載されていると認められる。 (2)引用文献1に記載された発明 (2)−1 引用文献1に記載された第1発明 引用文献1には、上記(1)エ(ア)−(ウ)、(ウ)−1、(エ)−1及び(オ)からみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第1発明」という。)が記載されていると認められる。 「1070nm〜1100nmのレーザ光を出力するレーザ装置1100と、 レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射する加工ヘッド1300と、 加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光を通過させてその光レベルを時系列的に検出し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光を通過させてその光レベルを時系列に検出する検出部としての干渉フィルター及び光電変換部と、 干渉フィルター及び光電変換部からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200と、を具備したレーザ溶接システム1000。」 (2)−2 引用文献1に記載された第2発明 引用文献1には、上記(1)エ(ア)−(ウ)、(ウ)−2、(ウ)−3、(エ)−2及び(オ)からみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第2発明」という。)が記載されていると認められる。 「1070nm〜1100nmのレーザ光を出力するレーザ装置1100と、 レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射する加工ヘッド1300と、 加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出する検出部と、 検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列的に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200と、を具備し、 検出部は、 溶接材1400の材料に対応した特定の一波長のみを通過させる干渉フィルターと、 干渉フィルターを通過した光の光強度を検出する光電変換部と、を有しているレーザ溶接システム1000。」 (2)−3 引用文献1に記載された第3発明 引用文献1には、上記(1)エ(エ)−3及び(オ)からみて、引用文献1に記載された第1または第2発明を包含してさらに以下の技術的事項を含む発明(以下、「引用文献1に記載された第3発明」という。)が記載されていると認められる。 「良否判定装置1200は、レーザ溶接の溶接状態を判定するための所定の閾値と、検出部からの検出結果とを比較して、レーザ溶接の溶接状態を判定する判定部を有しているレーザ溶接システム1000。」 (2)−4 引用文献1に記載された第4発明 引用文献1には、上記(1)エ(ア)−(ウ)、(ウ)−2、(エ)−2及び(オ)からみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第4発明」という。)が記載されていると認められる。 「1070nm〜1100nmのレーザ光を出力するレーザ装置1100と、 レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射する加工ヘッド1300と、 加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出する検出部と、 検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200と、を具備したレーザ溶接システム1000。」 (2)−5 引用文献1に記載された第5発明 引用文献1には、上記(1)エ(ア)−(ウ)、(ウ)−2、(エ)−2、(エ)−4及び(オ)からみて、以下の発明(以下、「引用文献1に記載された第5発明」という。)が記載されていると認められる。 「1070nm〜1100nmのレーザ光を出力するレーザ装置1100と、 レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射する加工ヘッド1300と、 加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出する検出部と、 検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列的に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200と、を具備し、 良否判定装置1200は、所定の閾値と、検出部からの検出結果である溶接材1400の材料に対応した特定の一波長の光レベルとを比較して、レーザ溶接の溶接状態を判定する判定部を有しているレーザ溶接システム1000。」 2 引用文献2:特開2002−79386号公報[甲第2号証] (1)引用文献2の記載事項 ア 発明の詳細な説明 (ア)「【0010】 【発明が解決しようとする課題】上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、レーザ溶接時に、比較的分解能が低く安価な測定器を用いることができ、かつ溶接によって発生するヒュームなどによる受光部の汚損によって受光能力が低下し、信号強度が低下した場合にも、長期的に安定して溶接欠陥の発生有無を検知することができるレーザ溶接における溶接欠陥の検知方法または溶接品質の監視方法を提供することにある。」 (イ)「【0028】図2は、窒素シールド時のレーザ誘起プラズマの発光スペクトルとともに、窒素シールド時のプラズマ光の各波長での強度(分光強度)のHeシールド時のプラズマ光の分光強度に対する比を、波長範囲300〜600nmで測定した結果を示している。ここで測定装置の波長分解能は、半値全幅で約2nmであり、測定波長間隔は0.5nmである。」 (ウ)「【0055】その結果、窒素の発光スペクトル線を含む所定の光の強度を基準信号とし、これとともに参照用としてArの発光がなく、鉄の発光スペクトル線を含む所定の光の強度を測定し、前者(基準信号)を後者(参照用信号)で除した強度比を判定信号とすれば、この信号は欠陥発生の有無と良い相関を示すことが判った。」 (エ)「【0086】基準信号として強度を測定する所定の光としては、窒素の発光スペクトル線を含んだ波長範囲を選択する。測定できる窒素の発光スペクトル線の波長としては、前述の通り、742.364nm、744.23nm、746.831nmであるが、波長分解能として2nm程度以下を確保できる場合には、744,23nmまたは746,83nmのの光を測定する。また、6nm程度の分解能しか確保できない場合には、744.23nmの光を中心に741以上748nmの光を計測することとする。 【0087】また判定信号を構成するための参照用信号とする鉄の発光スペクトル線を含む所定の光として、例えば波長範囲300〜340nm、520〜570nm、620〜690nmの光などがある。また、鉄の発光スペクトル線718、734nm、720、741nmを含む波長範囲710〜730nmの光や、783.22nmを含む波長範囲780〜790nmの光が、参照用信号として使える。」(注:「746,83nmのの光」は「746,83nmの光」の誤記と認められる。) (オ)「 」 イ 上記ア(ア)−(オ)からみて、引用文献2には以下の事項が記載されていると認められる。 (ア)上記ア(ウ)及び(エ)からみて、レーザ溶接時に被溶接材やシールドガスが発する光のうち基準信号とするシールドガスの窒素の発光スペクトル線を含む波長範囲741〜748nmの光を計測するものであると認められる。 (イ)上記ア(ウ)及び(エ)からみて、レーザ溶接時に被溶接材やシールドガスが発する光のうち参照用信号とする被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光である300〜340nm、520〜570nm、620〜690nm、710〜730nm、780〜790nmの光を計測するものであると認められる。 (ウ)上記ア(ア)−(オ)からみて、レーザ溶接時に被溶接材やシールドガスが発する光のうち基準信号とするシールドガスの窒素の発光スペクトル線を含む波長範囲741〜748nmの光と参照用信号とする被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光(複数の特定波長帯の光)である300〜340nm、520〜570nm、620〜690nm、710〜730nm、780〜790nmの光を計測することにより、レーザ溶接における溶接欠陥を検知する方法が記載されていると認められる。 (2)引用文献2に記載された技術的事項 引用文献2には、上記(1)イ(ア)−(ウ)からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ溶接時に被溶接材やシールドガスが発する光のうち基準信号とするシールドガスの窒素の発光スペクトル線を含む波長範囲741〜748nmの光と参照用信号とする被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光である300〜340nm、520〜570nm、620〜690nm、710〜730nm、780〜790nmの光を計測することにより、レーザ溶接における溶接欠陥を検知する方法。」 3 引用文献4:特開2016−131981号公報[甲第4号証] (1)引用文献4の記載事項 ア 発明の詳細な説明 (ア)「【背景技術】 【0002】 レーザ加工装置によって平板状の被加工材(ワーク)をレーザ切断する場合、一般的には、加工すべき被加工材を、受台であるスキッドテーブル(支持材)の上に載せた状態で、上方からレーザビームを照射して切断加工を行っている。 」 (イ)「【0019】 図2に示すように、第1の光学フィルタ7Aは、レーザビームによる加工点からの反射光Hのうち、レーザ切断に伴う被加工材Wの材料特有の波長帯域Aの反射光HAのみを透過する特性を有する光学フィルタである。また、第2の光学フィルタ7Bは、レーザビームによる加工点からの反射光Hのうち、レーザ切断に伴うスキッドテーブル5の材料特有の波長帯域Bの反射光HBのみを透過する特性を有する光学フィルタである。」 (ウ)「【0025】 いま、被加工材Wの材料が例えばステンレス(SUS)、スキッドテーブルの材料が軟鋼であるとした場合、第1の光学フィルタ7Aには、波長300〜500nmの範囲の光のみを透過する透過波長特性を有するものを使用する。また、第2の光学フィルタ7Bには、波長700〜900nmの範囲の光のみを透過する透過波長特性を有するものを使用する。 【0026】 こうすることで、各光学フィルタ7A,7Bによって、被加工材Wとスキッドテーブル5のJ反射光を区別することができる。従って、スキッドテーブル5のスキッド5Aの反射光の影響を排除しながら、被加工材Wの反射光のレベル(光量)によって加工状態の判定を行うことができる。」 (エ)「【0031】 以上の判定の内容をまとめて表1に示す。 【0032】 (1)この表1に示すように、被加工反射光(被加工材Wの反射光)のレベルと軟鋼反射光(スキッドテーブル5の反射光)のレベルが共にLOWの場合は、正常切断が行われていると判断する。 【0033】 (2)被加工反射光(被加工材Wの反射光)のレベルがHIGHであり、一方、軟鋼反射光(スキッドテーブル5の反射光)のレベルがLOWである場合は、被加工材Wの加工が過剰に行なわれている可能性があるので、加工不良と判断する。 【0034】 (3)被加工反射光(被加工材Wの反射光)のレベルと軟鋼反射光(スキッドテーブル5の反射光)のレベルが共にHIGHの場合は、スキッドテーブル5のスキッド5A上を通過していると見なす。 【0035】 なお、その他、被加工反射光(被加工材Wの反射光)のレベルがLOWであり、一方、軟鋼反射光(スキッドテーブル5の反射光)のレベルがHIGHである場合は、判断をしない。」 イ 上記ア(ア)−(エ)からみて、引用文献4には以下の事項が記載されていると認められる。 (ア)上記ア(ア)−(ウ)からみて、レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうち被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出するものであると認められる。 (イ)上記ア(ア)−(エ)からみて、レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうち被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出することにより、レーザ切断における加工状態を判定する方法が記載されていると認められる。 (ウ)上記ア(ア)−(ウ)からみて、レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうちスキッドテーブル5の軟鋼特有の波長帯域700〜900nmの光と被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出するものであると認められる。 (エ)上記ア(ア)−(エ)からみて、レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうちスキッドテーブル5の軟鋼特有の波長帯域700〜900nmの光と被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出することにより、レーザ切断における加工状態を判定する方法が記載されていると認められる。 (2)引用文献4に記載された技術的事項 (2)−1 引用文献4に記載された第1の技術的事項 引用文献4には、上記(1)イ(ア)−(イ)からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献4に記載された第1の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうち被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出することにより、レーザ切断における加工状態を判定する方法。」 (2)−2 引用文献4に記載された第2の技術的事項 引用文献4には、上記(1)イ(ウ)−(エ)からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献4に記載された第2の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうちスキッドテーブル5の軟鋼特有の波長帯域700〜900nmの光と被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出することにより、レーザ切断における加工状態を判定する方法。」 4 引用文献3:欧州特許第2712335号明細書[甲第3号証] (1)引用文献3に記載された技術的事項 引用文献3には、段落【0036】、【0055】及びFig.2の記載からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「スペクトルフィルタを有する放射感応性受信機構成66がレーザー処理ヘッド42の内部に組み込まれること。」 5 引用文献5:特開平7−116872号公報[甲第5号証] (1)引用文献5に記載された技術的事項 引用文献5には、段落【請求項1】、【0019】及び【図13】の記載からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献5に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ加工の最良とされる加工時の放射光の時間的推移を示す標準パターンと光検出部1からの検出結果である放射光の時間的遷移とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する比較部3。」 6 引用文献6:特開2012−648号公報[甲第6号証;周知技術を示す文献] (1)引用文献6に記載された周知技術1 引用文献6には、段落【0015】−【0017】、【0085】、【0090】、【0102】及び【0104】の記載からみて、以下の周知の技術(以下、「周知技術1」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ加工機において、レーザ加工ヘッドがワーク材に向かって「アシストガスを噴射しながら」レーザ光を照射すること」 7 引用文献7:特開2011−206806号公報[甲第7号証;周知技術を示す文献] (1)引用文献7に記載された周知技術1 引用文献7には、段落【0020】及び【0023】の記載からみて、周知技術1が記載されていると認められる。 (2)引用文献7に記載された周知技術2 引用文献7には、段落【0023】の記載からみて、以下の周知の技術(以下、「周知技術2」という。)が記載されていると認められる。 「レーザ加工機において、光の光強度を検出する光電変換部としてフォトダイオード回路を用いること。」 8 引用文献8:特開2005−254314号公報[甲第8号証;周知技術を示す文献] (1)引用文献8に記載された周知技術1 引用文献8には、段落【0010】及び【0011】の記載からみて、周知技術1が記載されていると認められる。 (2)引用文献8に記載された周知技術2 引用文献8には、段落【0011】の記載からみて、周知技術2が記載されていると認められる。 9 引用文献9:特開2011−115806号公報[甲第9号証;周知技術を示す文献] (1)引用文献9に記載された周知技術1 引用文献9には、段落【0015】及び【0028】の記載からみて、周知技術1が記載されていると認められる。 (2)引用文献9に記載された周知技術2 引用文献9には、段落【0028】の記載からみて、周知技術2が記載されていると認められる。 10 引用文献17:特開2015−148483号公報 (1)引用文献17に記載された技術的事項 引用文献17には、段落【0015】、【0018】、【0031】、【図1】の記載からみて、以下の技術的事項(以下、「引用文献17に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「第1及び第2の波長帯の光を分光部40A、40B、40Cにより分光してそれらの光レベルを光検出部22A、22B、22Cにより検出する分光器1A。」 第6 当審の判断 1 取消理由1(進歩性)について (1)本件発明1について (1)−1 本件発明1について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明1と引用文献1に記載された第1発明を対比する。 (ア)レーザ発信器について 引用文献1に記載された第1発明における「1070nm〜1100nmのレーザ光」は、本件発明1における「1μm波長帯のレーザ光」に相当し、同様に、「1070nm〜1100nmのレーザ光を出力するレーザ装置1100」は「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器」に相当する。 (イ)レーザ加工ヘッドについて 引用文献1に記載された第1発明における「溶接材1400」は、本件発明1における「ワーク材」に相当する。 また、引用文献1に記載された第1発明における「レーザ装置1100に光学的に接続され、溶接材1400に向かってレーザ光を照射する加工ヘッド1300」は、 「レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってレーザ光を照射するレーザ加工ヘッド」という限りにおいて、 本件発明1における「レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッド」に相当する。 (ウ)検出部について a 引用文献1に記載された第1発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」は、本件発明1の「レーザ加工ヘッド」に相当する。 b また、引用文献1に記載された第1発明における「加工点及びその近傍を含む溶融池」は、本件発明1の「加工点及びその近傍を含む加工点側」に相当し、さらに、「レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光」は、「レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光」に相当する。 c そして、引用文献1に記載された第1発明における「溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光を通過させてその光レベルを時系列的に検出し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光を通過させてその光レベルを時系列に検出する検出部としての干渉フィルター及び光電変換部」は、 「鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光を抽出してその光レベルを時系列に検出する検出部」という限りにおいて、 本件発明1における「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光を抽出してその光レベルを時系列に検出する検出部としての分光器」に相当する。 (エ)監視部について 引用文献1に記載された第1発明における「干渉フィルター及び光電変換部からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200」は、 「検出部からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」という限りにおいて、 本件発明1における「分光器からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」に相当する。 (オ)ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機について 引用文献1に記載された第1発明における「レーザ溶接システム1000」は、 「レーザ加工機」という限りにおいて、 本件発明1における「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」に相当する。 (カ)一致点、相違点 したがって、本件発明1と引用文献1に記載された第1発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。 a 一致点 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光を抽出してその光レベルを時系列に検出する検出部と、 検出部からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したレーザ加工機。」 b 相違点 (a)<相違点1−1> 本件発明1は、レーザ加工ヘッドがワーク材に向かって「窒素を含むアシストガスを噴射しながら」レーザ光を照射するものであり、検出部が「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)」の加工条件に応じた「複数の」特定波長「帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」の光を抽出してそれらの光レベルを時系列的に検出するものである「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であるのに対し、引用文献1に記載された第1発明では、本件発明1のようなアシストガスの噴射について特定されておらず、検出部が「溶接材1400の材料が鉄」の場合には特定の「一」波長「である565nm乃至615nm」の光を通過させ、「溶接材1400の材料がSUS」の場合には特定の「一」波長「である745nm乃至795nm」の光を通過させてそれらの光レベルを時系列的に検出するものである「レーザ溶接システム1000」である点。 (b)<相違点1−2> 検出部について、本件発明1は、「分光器」であるのに対し、引用文献1に記載された第1発明では、「干渉フィルター及び光電変換器」である点。 イ 判断 事案に鑑みて、相違点1−1について検討する。 (ア)引用文献1に記載された第1発明は、段落【0054】−【0055】に記載の鉄を溶接材料とする場合は590nmを典型例とするピーク波長において正常溶接時と異常溶接時との発光強度の比が最も大きくなるという現象からみて、検出部としての干渉フィルター及び光電変換部が光を通過させてその光レベルを時系列に検出する特定の一波長を、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565〜615nmとするものである以上、これを、本件発明1のような、これとは異なる他の波長帯である「800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」の光を敢えて採用するという動機は見当たらない。 (イ)また、引用文献1には、段落【0051】において、溶接材1400の材料が、アルミニウムの場合には特定の一波長を375nm〜425nmとするものが記載されてはいるが、これは、溶接材1400の材料がアルミニウムの場合であって、本願発明1のように「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯」に該当するものとは認められず、引用文献1に記載された第1発明において、鉄の場合に採用する動機は見当たらず、むしろそれは阻害要因があるものと認められる。 (ウ)さらに、引用文献2に記載された技術的事項は、被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光が780〜790nmの光を計測するものではあるものの、本願発明1のように、「470nm波長帯(470±20nm)」の光を抽出することや、レーザ加工が「ピアシング加工及び切断加工を行う」ものではない以上、たとえ引用文献1に記載された第1発明に採用したとしても、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 (エ)さらにまた、引用文献4に記載された第1の技術的事項は、被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出するものであり、これは、本件発明1のように、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じたものではない以上、たとえ引用文献1に記載された第1発明に採用したとしても、本件発明1のように、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である「470nm波長帯(470±20nm)」の光を抽出するという相違点1−1に係る本件発明1の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 加えて、引用文献1に記載された第1発明は、レーザ溶接システムについての発明であり、引用文献4に記載された第1の技術的事項のようなレーザ切断についての技術的事項を格別の困難を伴わずに採用し得るものとは認められない。 (オ)さらにまた、引用文献5−9にも、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項に相当するものは開示されていない。 ウ 小括 したがって、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、相違点1−2について検討するまでもなく、本件発明1は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (1)−2 本件発明1について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明1と引用文献1に記載された第1発明とを対比すると、上記(1)−1ア(ウ)では、引用文献1に記載された第1発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明1における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第1発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明1における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>−<相違点1−2>に加えて、さらに、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点1−3> 検出部が、本件発明1では、「レーザ加工ヘッドの内部に設けられ」ているのに対し、引用文献1に記載された第1発明では、「加工ヘッド1300の外部に設けられた可視光集光センサユニット1500の内部に設けられ」ている点。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、相違点1−2及び1−3について検討するまでもなく、本件発明1は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について (2)−1 本件発明2について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明2と引用文献1に記載された第2発明を対比する。 (ア)レーザ発信器について 上記(1)−1ア(ア)と同様である。 (イ)レーザ加工ヘッドについて 上記(1)−1ア(イ)と同様である。 (ウ)検出部について 上記(1)−1ア(ウ)a及びbについては同様である。 そして、引用文献1に記載された第2発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出する検出部」は、本件発明2における「レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部」に相当する。 (エ)監視部について 引用文献1に記載された第2発明における「検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200」は、 「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」という限りにおいて、 本件発明2における「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470nm±20nm)の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」に相当する。 (オ)ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機について 上記(1)−1ア(オ)と同様である。 (カ)一致点、相違点 したがって、本件発明2と引用文献1に記載された第2発明とは、<相違点1−1>と同様な点に加えて、さらに、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点2−1> 光学フィルタを透過した光の光強度を検出する光電変換部が、本件発明2では「フォトダイオード回路」であるのに対し、引用文献1に記載された第2発明ではそのような特定がない点。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明2についても同様であり、相違点2−1について検討するまでもなく、本件発明2は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)−2 本件発明2について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明2と引用文献1に記載された第2発明とを対比すると、上記(1)−1ア(ウ)では、引用文献1に記載された第2発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明2における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第2発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明2における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>と同様な点及び<相違点2−1>に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明2についても同様であり、本件発明2は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3について (3)−1 本件発明3について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明3と引用文献1に記載された第3発明を対比すると、上記本件発明1及び本件発明2における上記各相違点において相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1及び本件発明2は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、請求項1または2を引用する本件発明3についても、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないものである。 (3)−2 本件発明3について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 請求項1を引用する本件発明3と引用文献1に記載された第3発明とを対比すると、上記(3)−1アでは、引用文献1に記載された第3発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が請求項1を引用する本件発明3における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第3発明における「加工ヘッド1300」のみが請求項1を引用する本件発明3における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>−<相違点1−2>に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 また、請求項2を引用する本件発明3と引用文献1に記載された第3発明とを対比すると、上記(3)−1アでは、引用文献1に記載された第3発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が請求項2を引用する本件発明3における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第3発明における「加工ヘッド1300」が請求項2を引用する本件発明3における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>及び<相違点2−1>に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(1)及び(2)のとおり、本件発明1及び本件発明2は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、請求項1または2を引用する本件発明3についても、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないものである。 (4)本件発明4について (4)−1 本件発明4について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明4と引用文献1に記載された第4発明を対比する。 (ア)レーザ発信器について 上記(1)−1ア(ア)と同様である。 (イ)レーザ加工ヘッドについて 上記(1)−1ア(イ)と同様である。 (ウ)検出部について 上記(1)−1ア(ウ)a及びbについては同様である。 そして、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む溶融池からレーザ加工ヘッドに向かう可視光を検出する検出部」は、本件発明4の「レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部」に相当する。 (エ)監視部について 引用文献1に記載された第4発明における「検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200」は、 「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」という限りにおいて、 本件発明4における「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」に相当する。 (オ)ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機について 上記(1)−1ア(オ)と同様である。 (カ)一致点、相違点 したがって、本件発明4と引用文献1に記載された第4発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。 a 一致点 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したレーザ加工機。」 b 相違点 (a)<相違点4−1> 本件発明4は、レーザ加工ヘッドがワーク材に向かって「窒素を含むアシストガスを噴射しながら」レーザ光を照射するものであり、監視部が、検出部によって検出された戻り光のうち、「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)」の加工条件に応じた特定波長「帯である800nm波長帯(800±20nm)のみ」の光レベルを時系列的に選択するものである「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であるのに対し、引用文献1に記載された第4発明では、本件発明4のようなアシストガスの噴射について特定されておらず、良否判定装置1200が、検出部によって検出された可視光のうち、「溶接材1400の材料が鉄」の場合には特定の「一」波長「である565nm乃至615nm」の波長帯の光レベルを時系列的に選択し、「溶接材1400の材料がSUS」の場合には特定の「一」波長「である745nm乃至795nm」の波長帯の光レベルを時系列的に選択するものである「レーザ溶接システム1000」である点。 イ 判断 相違点4−1について検討する。 (ア)引用文献1に記載された第4発明は、段落【0054】−【0055】記載の鉄を溶接材料とする場合は590nmを典型例とするピーク波長において正常溶接時と異常溶接時との発光強度の比が最も大きくなるという現象からみて、検出部としての干渉フィルター及び光電変換部が光を通過させてその光レベルを時系列に検出する特定の一波長を、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565〜615nmとするものである以上、これを、本件発明4のような、これとは異なる他の波長帯である「800nm波長帯(800±20nm)のみ」の光を敢えて採用する動機は見当たらない。 (イ)また、引用文献2に記載された技術的事項は、被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光が780〜790nmの光を計測するものではあるものの、段落【0055】、【0086】及び【0087】の記載からみて、基準信号を参照用信号で除した強度比を判定信号とすれば欠陥発生の有無と良い相関関係を示すという知見に基づくものである以上、参照用信号とする上記被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光のほかに、基準信号とするシールドガスの窒素の発光スペクトル線を含む波長範囲741〜748nmの光を計測(選択)することを伴うものであり、また、本件発明4のように、レーザ加工が「ピアシング加工及び切断加工を行う」ものではない以上、たとえ引用文献1に記載された第4発明に採用したとしても、本件発明4のように、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である「800nm波長帯(800±20nm)のみ」の光レベルを時系列的に選択するものである「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」という相違点4−1に係る本件発明4の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 (ウ)さらにまた、引用文献4に記載された第2の技術的事項は、レーザ切断時に被加工材Wやスキッドテーブル5が発する光のうちスキッドテーブル5の軟鋼特有の波長帯域700〜900nmの光を検出するものではあるものの、段落【0025】及び【0031】−【0035】の記載からみて、被加工材Wの反射光のレベル及びスキッドテーブル5の反射光のレベルに基づいて加工状態(正常切断、加工不良、スキッド上通過)の判定を行うものである以上、被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出することを伴うものであるところ、たとえ引用文献1に記載された第4発明に採用したとしても、本件発明4のように、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である「800nm波長帯(800±20nm)のみ」の光レベルを時系列的に選択するという相違点4−1に係る本件発明4の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 加えて、引用文献1に記載された第4発明は、レーザ溶接システムについての発明であり、引用文献4に記載された第1の技術的事項のようなレーザ切断についての技術的事項を格別の困難を伴わずに採用し得るものとは認められない。 (エ)さらにまた、引用文献5−9にも、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項に相当するものは開示されていない。 ウ 小括 したがって、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明4は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)−2 本件発明4について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明4と引用文献1に記載された第4発明とを対比すると、上記(4)−1ア(ウ)では、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明4における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明4における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点4−1>と同様な点に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(4)−1のとおり、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明4は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件発明5について (5)−1 本件発明5について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明5と引用文献1に記載された第4発明を対比する。 (ア)レーザ発信器について 上記(1)−1ア(ア)と同様である。 (イ)レーザ加工ヘッドについて 上記(1)−1ア(イ)と同様である。 (ウ)検出部について 上記(4)−1ア(ウ)と同様である。 (エ)監視部について 引用文献1に記載された第4発明における「検出部によって検出された可視光のうち、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565nm乃至615nmの光レベルを時系列的に選択し、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmの光レベルを時系列に選択して、レーザ溶接の溶接状態を監視する良否判定装置1200」は、 「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」という限りにおいて、 本件発明5の「検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」に相当する。 (オ)ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機について 上記(1)−1ア(オ)と同様である。 (カ)一致点、相違点 したがって、本件発明5と引用文献1に記載された第4発明とは、以下のaの点で一致し、bの点で相違する。 a 一致点 「1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側からレーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 検出部によって検出された戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯の光レベルを時系列に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したレーザ加工機。」 b 相違点 (a)<相違点5−1> 本件発明5は、レーザ加工ヘッドがワーク材に向かって「窒素を含むアシストガスを噴射しながら」レーザ光を照射するものであり、監視部が、検出部によって検出された戻り光のうち、「鉄系金属」の加工条件に応じた特定波長「帯である470nm波長帯(470±20nm)のみ」の光レベルを時系列的に選択するものである「ピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機」であるのに対し、引用文献1に記載された第4発明では、本件発明1のようなアシストガスの噴射について特定されておらず、良否判定装置1200が、検出部によって検出された可視光のうち、「溶接材1400の材料が鉄」の場合には特定の「一」波長「である565nm乃至615nm」の波長帯の光レベルを時系列的に選択し、「溶接材1400の材料がSUS」の場合には特定の「一」波長「である745nm乃至795nm」の波長帯の光レベルを時系列的に選択するものである「レーザ溶接システム1000」である点。 イ 判断 相違点5−1について検討する。 (ア)引用文献1に記載された第4発明は、段落【0054】−【0055】に記載の鉄を溶接材料とする場合は590nmを典型例とするピーク波長において正常溶接時と異常溶接時との発光強度の比が最も大きくなるという現象からみて、検出部としての干渉フィルター及び光電変換部が光を通過させてその光レベルを時系列に検出する特定の一波長を、溶接材1400の材料が鉄の場合には特定の一波長である565〜615nmとし、溶接材1400の材料がSUSの場合には特定の一波長である745nm乃至795nmとするものである以上、これを、本件発明5のような、これとは異なる他の波長帯である「470nm波長帯(470±20nm)のみ」の光を敢えて採用する動機は見当たらない。 (イ)また、引用文献1には、段落【0051】において、溶接材1400の材料が、アルミニウムの場合には特定の一波長は375nm〜425nmとするものが記載されてはいるが、これは、溶接材1400の材料がアルミニウムの場合であって、本願発明5のように「鉄(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯」に該当するものとは認められず、引用文献1に記載された第4発明において鉄(SUSを除く)の場合に採用する動機は見当たらず、むしろそれは阻害要因があるものと認められる。 (ウ)さらに、引用文献2に記載された技術的事項は、被溶接材の鉄の発光スペクトル線を含む所定の光が780〜790nmの光を計測するものではあるものの、本願発明5のように、「470nm波長帯(470±20nm)のみ」の光を抽出することや、レーザ加工が「ピアシング加工及び切断加工を行う」ものではない以上、たとえ引用文献1に記載された第4発明に採用したとしても、相違点5−1に係る本件発明5の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 (エ)さらにまた、引用文献4に記載された第1の技術的事項は、被加工材Wのステンレス特有の波長帯域300〜500nmの光を検出するものではあるものの、段落【0025】及び【0031】−【0035】の記載からみて、被加工材Wの反射光のレベル及びスキッドテーブル5の反射光のレベルに基づいて加工状態(正常切断、加工不良、スキッド上通過)の判定を行うものである以上、スキッドテーブル5の軟鋼特有の波長帯域700〜900nmの光を検出することを伴うものであるところ、たとえ引用文献1に記載された第4発明において採用したとしても、本件発明5のように、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である「470nm波長帯(470±20nm)のみ」の光レベルを時系列的に選択するという相違点5−1に係る本件発明5の特定事項に当業者が容易に想到するものではない。 加えて、引用文献1に記載された第4発明は、レーザ溶接システムについての発明であり、引用文献4に記載された第1の技術的事項のようなレーザ切断についての技術的事項を格別の困難を伴わずに採用し得るものとは認められない。 (オ)さらにまた、引用文献5−9にも、相違点5−1に係る本件発明5の特定事項に相当するものは開示されていない。 ウ 小括 したがって、相違点5−1に係る本件発明5の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明5は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)−2 本件発明5について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明5と引用文献1に記載された第4発明とを対比すると、上記(5)−1ア(ウ)では、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明5における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明5における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点5−1>と同様な点に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(5)−1のとおり、相違点5−1に係る本件発明5の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明5は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件発明6について (6)−1 本件発明6について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明6と引用文献1に記載された第4発明を対比すると、本件発明6と引用文献1に記載された第4発明とは、<相違点1−1>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明6についても同様であり、本件発明6は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)−2 本件発明6について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明6と引用文献1に記載された第4発明とを対比すると、上記(6)−1アでは、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明6における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第4発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明6における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>と同様な点に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(6)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明6についても同様であり、本件発明6は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件発明7について (7)−1 本件発明7について<その1> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明7と引用文献1に記載された第5発明を対比する。 と、本件発明7と引用文献1に記載された第5発明とは、<相違点1−1>と同様な点に加えて、さらに、以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点7−1> 監視部が有している判定部が、レーザ加工の加工状態を判定するにあたり、本件発明7では「レーザ加工の加工状態が良好な場合に想定されかつ特定波長帯の光レベルの時間的推移を示す基準の遷移パターン」と「検出部からの検出結果である加工条件に応じた特定波長帯の光レベルの時間的遷移」とを比較するのに対し、引用文献1に記載された第5発明では「所定の閾値」と「検出部からの検出結果である溶接材1400の材料に対応した特定の一波長の光レベル」とを比較するものであって、本件発明7のように「特定波長帯の光レベルの時間的推移」の比較を行うものではない点。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明7についても同様であり、相違点7−1について検討するまでもなく、本件発明7は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)−2 本件発明7について<その2> ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明7と引用文献1に記載された第5発明とを対比すると、上記(7)−アでは、引用文献1に記載された第5発明における「加工ヘッド1300及び可視光集光センサユニット1500からなるレーザ加工ヘッド」が本件発明7における「レーザ加工ヘッド」に相当するとしているが、これを、引用文献1に記載された第5発明における「加工ヘッド1300」のみが本件発明7における「レーザ加工ヘッド」に相当するとした場合は、上記<相違点1−1>と同様な点及び<相違点7−1>に加えて、さらに、上記<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致している。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明7についても同様であり、本件発明7は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)本件発明8について ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明8は、本件発明4の「レーザ加工機」による「レーザ加工方法」に対応する発明であると認められる。 そして、本件発明8と引用文献1に記載された第4発明は、上記(4)−1ア(カ)bのように、上記<相違点4−1>と同様な点で相違し、または、上記(4)−2アのように、上記<相違点4−1>と同様な点及び<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 イ 判断・小括 上記(4)−1のとおり、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明8についても同様であり、本件発明8は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (9)本件発明9について ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明9は、本件発明5の「レーザ加工機」による「レーザ加工方法」に対応する発明であると認められる。 そして、本件発明9と引用文献1に記載された第4発明は、上記(5)−1ア(カ)bのように、上記<相違点5−1>と同様な点で相違し、または、上記(5)−2アのように、上記<相違点5−1>と同様な点及び<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 イ 判断・小括 上記(5)−1のとおり、相違点5−1に係る本件発明5の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明9についても同様であり、本件発明9は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (10)本件発明10について ア 引用文献1に記載された発明との対比 本件発明10は、本件発明6の「レーザ加工機」による「レーザ加工方.法」に対応する発明であると認められる。 そして、本件発明10と引用文献1に記載された第4発明は、上記(6)−1アのように、上記<相違点1−1>と同様な点で相違し、または、上記(6)−2アのように、上記<相違点1−1>と同様な点及び<相違点1−3>と同様な点で相違し、その余の点で一致しているといえる。 イ 判断・小括 上記(1)−1のとおり、相違点1−1に係る本件発明1の特定事項には当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明10についても同様であり、本件発明10は、取消理由通知書に記載した取消理由1において引用した各引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (11) まとめ 以上のとおりであるから、取消理由通知書により通知した取消理由1によっては、請求項1−10に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(サポート要件)について (1)取消理由通知において通知した理由の内容 ア 請求項1−10に係る発明について 発明の詳細な説明には、課題解決手段として、請求項1−10に係る発明における「加工条件に応じた複数の特定波長帯」としては、具体的に、「800nm波長帯」、「470nm波長帯」及び「510nm波長帯」のみが記載され、その幅については、「800nm波長帯(800±20nm)」と「470nm波長帯(470±20nm)」の「±20nm」のみが記載されているのに対し、請求項1−10に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された上記課題解決手段が反映されておらず、また、技術常識からみても、請求項1−10に係る発明の「加工条件に応じた複数の特定波長帯」のような範囲にまで一般化ないし拡張できるものとまでは認められないため、請求項1−10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 イ 請求項4、6、8、10に係る発明について (ア)発明の詳細な説明には、課題解決手段として、「加工状態に応じた複数の特定波長帯として、800nm波長帯の光レベルを時系列的に選択」することにより本件発明の課題を解決できるような「加工条件」が「ワークの材質が鉄系金属である」場合のみが記載されているのに対し、請求項4、6、8、10に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された上記課題解決手段が反映されていないため、請求項4、6、8、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (イ)請求項4に係る発明における「800nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」及び請求項6、8、10に係る発明における同様な事項には、発明の詳細な説明の記載において本件発明の課題解決に資するものとはされていない他の波長帯の光レベルも選択して監視部がレーザ加工の加工状態を監視するものが包含されているため、請求項4、6、8、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 ウ 請求項5、6、9、10に係る発明について (ア)発明の詳細な説明には、課題解決手段として「レーザ加工の加工状態を監視するための検出対象である戻り光のうち、加工条件に応じた特定波長帯として、470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択」することにより課題を解決できるのは、「加工条件」が「ワークの材質が鉄系金属」であって、「アシストガスが窒素である(低酸素濃度若しくは無酸素)」または「アシストガスが酸素でありアシストガスに窒素が混入し得る」場合のみが記載されているのに対し、請求項5、6、9、10に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された上記課題解決手段が反映されていないため、請求項5、6、9、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (イ)請求項5に係る発明における「470nm波長帯の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部」及び請求項6、8、10に係る発明における同様な事項には、発明の詳細な説明の記載において本件発明の課題解決に資するものとはされていない他の波長帯の光レベルも選択して監視部がレーザ加工の加工状態を監視するものが包含されているため、請求項5、6、9、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (ウ)発明の詳細な説明には、甲第2、10、13−16号証の記載を踏まえると、課題解決手段として、「レーザ加工の加工状態を監視」するための検出対象である「戻り光」を、「加工状態に応じた特定波長帯として、470nm波長帯の光レベルを時系列に選択」する「特定波長帯」を「470±20nm」なる幅の光とするもののみが記載されているのに対し、請求項5、6、9、10に係る発明には、発明の詳細な説明に記載された上記課題解決手段が反映されていないため、請求項5、6、9、10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明ではない。 (2)上記(1)の理由が解消しているか否かについて ア 上記(1)アの理由について 「加工条件に応じた複数の特定波長帯」が、訂正後の請求項1−3、6−7、10では「800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)」と特定され、訂正後の請求項6、10では「800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)」と特定され、訂正後の請求項4、8では「800nm波長帯(800±20nm)のみ」と特定され、訂正後の請求項5、9では「470nm波長帯(470±20nm)のみ」と特定され、その幅については、いずれも「800nm波長帯(800±20nm)」と「470nm波長帯(470±20nm)」のように「±20nm」と特定されたことから、上記(1)アの理由は解消したものと認められる(ここで、上記下線は訂正箇所に付した。以下同様。)。 イ 上記(1)イの理由について 上記(1)イ(ア)の「加工条件」についての「ワークの材質」及び上記(1)イ(イ)の「レーザ加工の加工状態を監視する」波長帯について、訂正後の請求項4、8では「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみ」と特定され、訂正後の請求項6、10では「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)」と特定されたことから、上記(1)イの理由は解消したものと認められる。 ウ 上記(1)ウの理由について 上記(1)ウ(ア)の「加工条件」についての「ワークの材質」及び「アシストガス」、上記(1)ウ(イ)の「レーザ加工の加工状態を監視する」波長帯及び上記(1)ウ(ウ)の「レーザ加工の加工状態を監視する」波長帯の幅について、訂正後の請求項5、9では「窒素を含むアシストガス」及び「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみ」と特定され、訂正後の請求項6、10では「窒素を含むアシストガス」及び「鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)」と特定されたことから、上記(1)ウの理由は解消したものと認められる。 (3)小括 以上のとおりであるから、取消理由通知書により通知した取消理由2によっては、請求項1−10に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由3(明確性)について (1)取消理由通知において通知した理由の内容 ア 請求項1−10に係る発明について 請求項1−10に記載された「特定波長帯」なる用語が意味する波長帯の範囲が明確でない。 イ 請求項4、6、8、10に係る発明について 請求項4、6、8、10に記載された「加工条件に応じた特定波長帯」としての「800nm波長帯」なる用語が意味する波長帯の範囲が明確でない。 ウ 請求項5、6、9、10に係る発明について 請求項5、6、9、10に記載された「加工条件に応じた特定波長帯」としての「470nm波長帯」なる用語が意味する波長帯の範囲が明確でない。 (2)上記(1)の理由が解消しているか否かについて ア 上記(1)アの理由について 訂正後の請求項1−10では、「特定波長帯」の範囲が「±20nm」と特定されたので、上記(1)アの理由は解消したものと認められる。 イ 上記(1)イの理由について 訂正後の請求項4、6、8、10では、「加工条件に応じた特定波長帯」としての「800nm波長帯」の範囲が「±20nm」と特定されたので、上記(1)イの理由は解消したものと認められる。 ウ 上記(1)ウの理由について 訂正後の請求項5、6、9、10では、「加工条件に応じた特定波長帯」としての「470nm波長帯」の範囲が「±20nm」と特定されたので、上記(1)ウの理由は解消したものと認められる。 (3)小括 以上のとおりであるから、取消理由通知書により通知した取消理由3によっては、請求項1−10に係る特許を取り消すことはできない。 4 取消理由として採用しなかった理由について (1)取消理由として採用しなかった理由(進歩性) 異議申立書に記載した特許異議申立理由のうち、本件訂正請求による訂正前の請求項1−10に係る特許に対して、当審が令和3年6月3日付けで特許権者に通知した取消理由として採用しなかった理由は以下のとおりである。 ア 請求項4に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、または、引用文献1に記載された発明、引用文献3及び4に記載された技術的事項並びに引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 請求項8に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項及び引用文献6−9にて例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)上記(1)についての当審の判断 ア 本件発明4について 上記第6の1(4)の(4)−1イにおいて、「引用文献4に記載された第2の技術的事項」について検討しているとおり、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項には、引用文献4に記載された技術的事項を考慮に入れても、当業者が容易に想到するものではない。 すなわち、同第6の1(4)の(4)−1イ(ア)のように、引用文献1に記載された第4発明を、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項のようにする動機は見当たらず、また、同(ウ)のように、引用文献4に記載された第2の技術的事項を、たとえ引用文献1に記載された第4発明に採用したとしても、相違点4−1に係る本件発明4の特定事項に当業者が容易に想到するものではなく、さらに、引用文献1に記載された第4発明は、レーザ溶接システムについての発明であり、引用文献4に記載された第1の技術的事項のようなレーザ切断についての技術的事項を格別の困難を伴わずに採用し得るものとは認められない。 したがって、上記(1)アの理由を考慮に入れても、本件発明4は当業者が容易に発明をすることができたものではないとの判断が変わるものではない。 イ 本件発明8について 上記第6の1(8)イにおいて検討しているとおり、本件発明4と同様に、上記(1)イの理由を考慮に入れても、本件発明8は当業者が容易に発明をすることができたものではないとの判断が変わるものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由1−3及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1−10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1−10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた複数の特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光を抽出してそれらの光レベルを時系列に検出する検出部としての分光器と、 前記分光器からの時系列的な検出結果に基づいて、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項2】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記検出部は、 加工条件に応じた特定波長帯の光のみを透過させる光学フィルタと、 前記光学フィルタを透過した光の光強度を検出するフォトダイオード回路と、を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項3】 前記監視部は、レーザ加工の加工状態を判定するための閾値と、前記検出部からの検出結果とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していること特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項4】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項5】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項6】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備したことを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項7】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器と、 前記レーザ発振器に光学的に接続され、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射するレーザ加工ヘッドと、 前記レーザ加工ヘッドの内部に設けられ、レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出する検出部と、 前記検出部によって検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)及び470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視する監視部と、を具備し、 前記監視部は、レーザ加工の加工状態が良好な場合に想定されかつ特定波長帯の光レベルの時間的遷移を示す基準の遷移パターンと、前記検出部からの検出結果である加工条件に応じた特定波長帯の光レベルの時間的遷移とを比較して、レーザ加工の加工状態を判定する判定部を有していることを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工機。 【請求項8】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工ヘッドから、ワーク材に向かってアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 【請求項9】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工ヘッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属の加工条件に応じた特定波長帯である470nm波長帯(470±20nm)のみの光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 【請求項10】 1μm波長帯のレーザ光を出力するレーザ発振器に光学的に接続されたレーザ加工ヘッドから、ワーク材に向かって窒素を含むアシストガスを噴射しながらレーザ光を照射することにより、ワーク材に対してレーザ加工を行うレーザ加工方法であって、 レーザ光の照射に伴う、加工点及びその近傍を含む加工点側から前記レーザ加工ヘッドに向かう戻り光を検出し、 検出された前記戻り光のうち、鉄系金属(ただし、SUSを除く。)の加工条件に応じた特定波長帯である800nm波長帯(800±20nm)と470nm波長帯(470±20nm)の光レベルを時系列的に選択して、レーザ加工の加工状態を監視することを特徴とするピアシング加工及び切断加工を行うレーザ加工方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-05-12 |
出願番号 | P2018-055668 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(B23K)
P 1 651・ 537- YAA (B23K) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
見目 省二 |
特許庁審判官 |
田々井 正吾 河端 賢 |
登録日 | 2020-06-29 |
登録番号 | 6725572 |
権利者 | 株式会社アマダ |
発明の名称 | レーザ加工機及びレーザ加工方法 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 三好 秀和 |
代理人 | 伊藤 正和 |
代理人 | 高松 俊雄 |
代理人 | 高橋 俊一 |
代理人 | 三好 秀和 |