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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
管理番号 1387486
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-13 
確定日 2022-06-09 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6812544号発明「発泡ポリプロピレン組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6812544号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕、〔5−11〕、12について訂正することを認める。 特許第6812544号の請求項1ないし4、6ないし12に係る特許を維持する。 特許第6812544号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
1 特許異議の申立ての経緯
特許第6812544号(請求項の数12。以下、「本件特許」という。)は、2017年(平成29年)11月28日(パリ条約による優先権主張 2016年12月1日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特許出願(特願2019−520391号)に係るものであって、令和2年12月18日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年1月13日である。)。
その後、令和3年7月13日に、本件特許の請求項1〜12に係る特許に対して、特許異議申立人である松井伸一(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
以降の手続の経緯は以下のとおりである。
同年11月15日付け 取消理由通知書
令和4年 1月24日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 2月10日付け 通知書(申立人宛て)
同年 3月18日 意見書(申立人)

2 証拠方法
(1)申立人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
・甲第1号証 特表2015−537089号公報
・甲第2号証 特開2003−20353号公報
・甲第3号証 JISハンドブック 27 プラスチックII(材料)、日本規格協会編集、一般財団法人日本規格協会 2015年1月30日 第1版第1刷発行、 第231〜237頁
・甲第4号証 ポリプロピレンハンドブック、エドワード・P・ムーア・Jr.編著 保田哲男 外1名翻訳監修、株式会社工業調査会、1998年5月15日初版第1刷発行、第279〜293頁
・甲第5号証 国際公開第2014/083130号及び甲第5号証の抄訳
・甲第6号証 小野道雄著、ゴムの工業的合成法 第9回 オレフィン系エラストマー、日本ゴム協会誌、第89巻 第3号(2016)、第63〜67頁
・甲第7号証 J−STAGEホームページ、日本ゴム協会誌2016年89巻3号、[online]、(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/gomu/89/3/_contents/-char/ja)、
2021年7月4日検索
・甲第8号証 特開2003−105163号公報
以下、「甲第1号証」〜「甲第8号証」を「甲1」〜「甲8」という。

第2 訂正の適否についての判断
特許権者であるボレアリス エージーは、令和3年11月15日付け取消理由通知において特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和4年1月24日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項5〜11について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件設定登録時の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、本件明細書と及び特許請求の範囲を併せて「本件明細書等」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項5を削除する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項6に「請求項1〜5のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項7に「請求項1〜6のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4、6のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項8に「請求項1〜7のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4、6、7のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項9に「請求項1〜8のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4、6〜8のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項10に「請求項1〜9のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4、6〜9のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の請求項11に「請求項1〜10のいずれか一項に記載の発泡物品。」とあるのを、「請求項1〜4、6〜10のいずれか一項に記載の発泡物品。」に訂正する。

(8)一群の請求項
請求項6〜11はそれぞれ請求項5を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正は、請求項6〜11からなる一群の請求項ごとに対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(2)訂正事項2〜7について
訂正事項2〜7は、引用する請求項から請求項5を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえ、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。

(3)訂正事項のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1〜7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6812544号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載される次のとおりのものである(以下、請求項1〜12に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」〜「本件発明12」という。)。
「【請求項1】
以下のもの
a)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)
を含む、前記第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E2)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)、を含有する発泡物品。
【請求項2】
前記第2の異相コポリマー(HECO2)の前記キシレン可溶性画分(XCS)が3.5dl/gを超える固有粘度(IV)を有する、請求項1に記載の発泡物品。
【請求項3】
ポリプロピレン組成物(C)全体に基づいて、
a)40.0〜60.0重量%の前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)、
b)21.0〜31.0重量%の前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)、
c)10.0〜20.0重量%の前記無機充填剤(F)、
d)任意に2.0〜10.0重量%の前記高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意に5.0〜15.0重量%のエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーである前記プラストマー(PL)
を含む、請求項1または2に記載の発泡物品。
【請求項4】
i)前記第1のプロピレンポリマー(M1)である前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の前記マトリックスがISO 1133に従って決定して120〜500g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)を有し、
ii)前記第2のプロピレンポリマー(M2)である前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の前記マトリックスがISO 1133に従って決定して40〜170g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)を有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が
i)ISO 1133に従って決定して1.0〜15g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)、および/または
ii)5.0〜30.0mol−%の範囲のコモノマー含有量、および/または
iii)20.0〜40.0重量%の範囲のキシレン可溶性画分(XCS)
を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項7】
前記第1のプロピレンポリマー(M1)および/または前記第2のプロピレンポリマー(M2)がプロピレンホモポリマーである、請求項1〜4、6のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項8】
ISO 1133に従って決定したメルトフローレートMFR2(230℃)が10〜40g/10分の範囲である、請求項1〜4、6、7のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項9】
前記プラストマー(PL)がエチレンと1−オクテンとのコポリマーである、請求項1〜4、6〜8のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項10】
前記無機充填剤(F)がタルクおよび/または珪灰石である、請求項1〜4、6〜9のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項11】
前記前記発泡物品が、自動車用物品である、請求項1〜4、6〜10いずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項12】
ポリプロピレン組成物(C)の、発泡物品の製造のための使用であって、ポリプロピレン組成物(C)が以下のものである使用。
a)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)
を含む、前記第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E21)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)」

第4 特許異議の申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由の概要
(1)取消理由(サポート要件)
本件訂正前の請求項5〜11の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項5〜11に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件訂正前の請求項5に係る発明は、本件訂正前の請求項1に係る発明を引用した発明であって、本件訂正前の請求項1に係る発明で特定されるポリプロピレン組成物(C)の構成成分である「第1の異相プロピレンコポリマー」について、さらに、
「前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)が
i)ISO 1133に従って決定して50〜90g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)、および/または
ii)20.0〜50.0mol−%の範囲のコモノマー含有量、および/または
iii)10.0〜35.0重量%の範囲のキシレン可溶性画分(XCS)
を有する」と限定する発明である。
本件訂正前の請求項5に係る発明のうち「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)」が「ii)20.0〜50.0mol−%の範囲のコモノマー含有量」を有することについて、本件明細書の段落【0048】にはコモノマー含有量が20.0〜50.0mol−%の範囲であることは記載されておらず、また、【0268】以降の実施例では、上記した含有量が「18mol%」の場合に、ポリプロピレン組成物(C)を含有する発泡物品は、「セル構造」、「部品の表面」、「最大破壊力」及び「1mmでの圧縮応力」に優れ、本件発明の課題が解決できることが具体的なデータと共に示されている。しかしながら、この実施例は、本件訂正前の請求項5に係る発明で特定されたコモノマーの含有量の範囲に含まれる具体例ではない。
このように、本件訂正前の請求項5に係る発明が、本件発明の詳細な説明には発明の課題を解決できると認識できるように記載されているとはいえない。また、発明の詳細な説明に記載がなくても当業者が発明の課題を解決できると認識できる本願出願時の技術常識もない。

2 特許異議の申立理由の概要
申立人が特許異議申立書でした申立ての理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(進歩性
本件訂正前の請求項1〜12に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1に記載された発明及び甲1〜甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件訂正前の請求項1〜12に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜12の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1〜12に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

(3)申立理由3(実施可能要件
本件訂正前の明細書の発明の詳細な説明は、下記の点で、当業者が本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜12に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。
よって、本件訂正前の請求項1〜12に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)の内容の概要は、併せて「第5 3(2)」で示すとおりである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明5に係る特許については、特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由1及び申立人がした申立理由1〜3によっては、いずれも、本件発明1〜4、6〜12に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記第2及び第3で示したとおり、請求項5は、本件訂正により削除されており、申立ての対象を欠く不適法なものとなってその治癒ができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、本件発明5に係る特許についての申立てを却下する。

2 取消理由について
(1)理由1(サポート要件)について
取消理由の理由1は、上記「第4 1(1)」で示したとおり、本件訂正前の請求項5に係る発明に対する取消理由であるところ、上記第2及び第3で述べたとおり、請求項5に係る発明は削除されたので、取消理由の理由1が解消したことは明らかである。
よって、取消理由の理由1(サポート要件)は理由がない。

3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立人がした申立理由について
(1)申立理由1について
ア 各甲号証の記載事項について
(ア)甲1について
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
プロピレンホモポリマー(H−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相ポリプロピレン組成物(HECO1)であって、
(a) 前記プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり;
(b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり;
(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内であり;
さらに、
(d) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、不等式(I)を満たし、
【数1】

式中、
Cは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量(重量%)、
IVは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の固有粘度(dl/g)である、
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)。
・・・
【請求項9】
ポリオレフィン(PO)と、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物であって、ポリオレフィン(PO)と異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の重量比[PO/HECO]が、2/1から8/1の範囲内であり、さらに、ポリオレフィン(PO)は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)ではない、組成物。
【請求項10】
ポリオレフィン(PO)が、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)とは異なるポリプロピレン、好ましくは異相ポリプロピレン組成物(HECO2)である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中に、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が、5重量%から30重量%の範囲内の量で存在する、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の組成物を有する射出成形品であって、好ましくは自動車の物品である、射出成形品。」

(1b)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、フローマークの無い射出成形品を製造する解決手段を見出すことが望まれる。したがって、本発明の目的は、射出成形系においてフローマークを減少させるポリマーを提供することである。」

(1c)「【0016】
異相プロピレンコポリマーという用語は、当該技術分野において知られているように解される。したがって、異相プロピレンは、ポリマーマトリクス、例えば(半)結晶ポリプロピレンを有し、その中に非晶性材料、例えば弾性プロピレンコポリマーが分散している。
【0017】
よって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)であるマトリクス(M)と、その中に分散する弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する。よって、マトリクス(M)は、マトリクス(M)とは別に(細かく)分散した内包物を含み、当該内包物には、弾性プロピレンコポリマー(E)が含まれている。本発明における用語「内包物」とは、好ましくは、マトリクスと内包物が、異相プロピレンコポリマー(HECO1)中で異なる相を形成しており、当該内包物を、例えば電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などの高解像度顕微鏡により、又は動的機械的熱分析(DMTA)により観察できることを指す。具体的にDMTAでは、ガラス転移温度が少なくとも2つ存在することによって、多相構造の存在を確認することができる。
【0018】
上記のように、異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)を有する。当該プロピレンホモポリマー(H−PP)は、異相プロピレンコポリマー(HECO1)のマトリクス(M)を構成する。
【0019】
プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ほぼ低温キシレンに不溶であり、弾性プロピレンコポリマー(E)は、その大部分が低温キシレンに可溶であることから、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン不溶成分(XCI)の特性と、プロピレンホモポリマー(H−PP)のそれは、ほぼ同じである。
【0020】
したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)及びプロピレンホモポリマー(H−PP)の低温キシレン不溶成分(XCI)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内、好ましくは90g/10分より大きく300g/10分まで、より好ましくは95g/10分より大きく290g/10分までの範囲内である。
【0026】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分の量は、好ましくは35.0重量%未満、より好ましくは32.0重量%未満、いっそうより好ましくは11.0重量%から35.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは15.0重量%から32.0重量%の範囲内である。
・・・
【0029】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、60.0重量%以下であることが好ましく、いっそうより好ましくは45.0重量%以下、いっそうより好ましくは38.0重量%以下、さらにより好ましくは20.0重量%から60.0重量%の範囲内、さらにいっそうより好ましくは20.0重量%から45.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは20.0重量%から38.0重量%の範囲内である。
・・・
【0034】
好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、3g/10分より大きく55g/10分までの範囲内、好ましくは3g/10分より大きく51g/10分までの範囲内である。
【0035】
上記のように、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP1)及び弾性プロピレンコポリマー(E)を有する。したがって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマーは、好ましくは弾性プロピレンコポリマー(E)のそれと同じである。よって、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン等のコモノマー、特にエチレン及び/又はC4〜C10α−オレフィン、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセンを有する。好ましくは、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを有し、特に当該モノマーからなる。より具体的には、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、(プロピレン以外に)エチレン及び/又は1−ブテン由来の単位を有する。よって、特に好ましい実施形態によれば、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、エチレン及びプロピレン由来の単位のみを有する。
【0036】
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)のコモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量は、好ましくは20.0重量%未満、より好ましくは16.0重量%以下、いっそうより好ましくは3.5重量%から16.0重量%の範囲内、さらにより好ましくは4.0重量%より大きく14.5重量%までの範囲内である。」

(1d)「【0094】
組成物
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、特に射出成形品、例えば自動車産業における射出成形品の製造に用いられる組成物に添加される成分として特に用いられる。よって、本発明は、異相プロピレンコポリマー(HECO1)を組成物に対して5重量%から30重量%有し、100重量%に至る残り部分が他のポリオレフィン及び添加剤で構成される組成物をも対象とする。
【0095】
よって、本発明は、ポリオレフィン(PO)と、本発明の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)、特に請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の異相プロピレンコポリマー(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物であって、ポリオレフィン(PO)と異相プロピレンコポリマー(HECO1)の重量比[PO/HECO1]が、2/1から8/1の範囲内、好ましくは3/1から7/1の範囲内、より好ましくは4/1から6.5/1の範囲内である組成物を特に対象とする。
【0096】
好ましくは、前記組成物は、ポリオレフィン(PO)、異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)及び無機充填剤(F)を合わせた全重量に対して、好ましくは全組成物に対して、
(a) ポリオレフィン(PO)を50重量%から90重量%、より好ましくは60重量%から85重量%、いっそうより好ましくは70重量%から80重量%と、
(b) 異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)を5重量%から30重量%、より好ましくは8重量%から25重量%、いっそうより好ましくは12重量%から20重量%と、
(c) 無機充填剤(F)を5重量%から30重量%、より好ましくは8重量%から25重量%、いっそうより好ましくは12重量%から20重量%と、
を有する。
【0097】
ポリオレフィン(PO)は、本発明に係る異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とは異なる。したがって、ポリオレフィン(PO)は、本明細書に定義される異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とはされない。ポリオレフィン(PO)は、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンである。さらにより好ましくは、ポリオレフィン(PO)は、ポリプロピレンであり、即ちプロピレンホモポリマー、プロピレンコポリマー、異相プロピレンコポリマー及びこれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、ポリオレフィンは、異相ポリプロピレン組成物(HECO2)、即ち本発明に定義される異相ポリプロピレンコポリマー(HECO1)とは異なる異相ポリプロピレンコポリマーである。
【0098】
異相プロピレンコポリマーという用語は、当該技術分野において知られるように、また上記に定義されるように解される。したがって、異相プロピレンコポリマーは、ポリマーマトリクス、例えば(半)結晶性ポリプロピレンを有し、そこに非晶性材料、例えば弾性プロピレンコポリマーが、好ましくは内包物として分散している。また、用語「プロピレンコポリマー」は、異相系とはされない。換言すれば、本発明におけるプロピレンコポリマーは、単相性、即ち、例えば電子顕微鏡や原子間力顕微鏡などの高解像度顕微鏡により、又は動的機械的熱分析(DMTA)により区別できるような2つ以上の相を含まない。
【0099】
上記のように、ポリオレフィン(PO)は、好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO2)である。本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくはISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、3.0g/10分から120g/10分の範囲内、より好ましくは10.0g/10分から100g/10分の範囲内である。
【0100】
本発明に係る異相プロピレンコポリマー(HECO2)は、好ましくは、
(a) ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)と、
(b) 弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)であって、
− プロピレン並びに
− エチレン及び/又はC4〜C12α−オレフィン
由来の単位を有する弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)と、
を有する。
【0101】
好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HECO2)中のプロピレン含有量は、全異相プロピレンコポリマー(HECO2)に対して、より好ましくは異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリマー成分の量に対して、さらにより好ましくはポリプロピレンマトリクス(M−PP2)及び弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)を合わせた量に対して70.0重量%から92.0重量%、より好ましくは75.0重量%から90.0重量%である。残る部分は、コモノマー、好ましくはエチレンにより構成される。
・・・
【0104】
一方、異相プロピレンコポリマー(HECO2)中の弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)含有量、即ち低温キシレン可溶成分(XCS)含有量は、好ましくは20.0重量%から50.0重量%の範囲内、より好ましくは22.0重量%から45.0重量%の範囲内である。
【0105】
ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、好ましくはランダムプロピレンコポリマー(R−PP2)又はプロピレンホモポリマー(H−PP2)であり、後者が特に好ましい。
・・・
【0114】
また、異相プロピレンコポリマー(HECO2)のポリプロピレンマトリクス(M−PP2)は、メルトフローレートMFR2(230℃)が中程度であることが好ましい。上記のように、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分は、基本的に当該異相プロピレンコポリマー(HECO2)のマトリクスと同一である。したがって、ポリプロピレンマトリクス(M−PP2)のメルトフローレートMFR2(230℃)は、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分のメルトフローレートMFR2(230℃)と等しい。したがって、異相プロピレンコポリマー(HECO2)の低温キシレン不溶成分(XCI)画分は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、10.0g/10分から150g/10分であることが好ましく、より好ましくは15.0g/10分から100g/10分、さらにより好ましくは50.0g/10分から80.0g/10分である。
・・・
【0120】
本発明において、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)中のプロピレン由来の単位の含有量は、低温キシレン可溶成分(XCS)画分中の検出可能なプロピレンの含有量に等しい。したがって、低温キシレン可溶成分(XCS)画分中の検出可能なプロピレンは、40.0重量%から75.0重量%の範囲内、より好ましくは45.0重量%から70.0重量%の範囲内である。よって、具体的な実施形態によれば、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)、即ち低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、エチレン等のプロピレン以外のコモノマー由来の単位を25.0重量%から60.0重量%、より好ましくは30.0重量%から55.0重量%有する。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(E−PP2)は、プロピレン及び/又はエチレン含有量がこの段落に定義される量の、エチレン−プロピレン−非共役ジエンモノマーのポリマー(EPDM2)又はエチレン−プロピレンゴム(EPR2)であり、後者が特に好ましい。」

(1e)「【0133】
異相ポリプロピレン組成物(HECO1)及び組成物の好ましい実施形態については、それぞれ上記の情報が参照される。
【0134】
好ましくは、射出成形品は、自動車の物品、より好ましくはバンパー、サイドトリム、補助ステップ、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード、内装のトリム等の射出成形された車の内装及び外装品、特にバンパーである。
【0135】
本発明に係る使用
本発明は、上記の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)又は組成物の、自動車用途、好ましくはバンパー等の射出成形された自動車用品の用途における使用にも関する。」

(1f)「【0138】
ここで、本発明を、以下の本発明を限定しない実施例を参照しながら説明する。
【実施例】
・・・
【0141】
MFR2(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に準じて測定する。
・・・
【0146】
キシレン可溶成分(XCS、重量%):低温キシレン可溶成分(XCS)の含有量は、ISO16152;第1版;2005年7月1日に準じて25℃にて求める。残った不溶部分が低温キシレン不溶成分(XCI)画分である。
・・・

【0148】
曲げ弾性率は、ISO294−1:1996に準じて作製した80x10x4mmの射出成形試料について、ISO178に準じた3点曲げ試験により求めた。測定は、試料を96時間コンディショニングした後に行う。
・・・
【0158】
2.実施例
例IE1〜IE7及びCE1〜CE3の重合プロセスに用いる触媒は、以下のように製造した:まず、0.1モルのMgCl2x3EtOHを、不活性条件下、大気圧の反応器内にて、250mlのデカンに懸濁させた。溶液を−15℃の温度に冷却し、同温度を維持しながら300mlの冷TiCl4を添加した。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃に上昇させた。この温度にて、スラリーに0.02モルのフタル酸ジオクチル(DOP)を添加した。フタレートの添加後、温度を90分かけて135℃に上昇させ、スラリーを60分間静置した。次いで、さらに300mlのTiCl4を添加し、120分間温度を135℃に保った。その後、液相から触媒をろ別し、80℃のヘプタン300mlで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分をろ過し、乾燥した。一般的な触媒及びその調製法は、特許公報EP491566、EP591224及びEP586390に記載されている。助触媒としてトリエチル−アルミニウム(TEAL)、ドナーとしてジシクロペンチルジメトキシシラン(Dドナー)及びジエチルアミノトリメトキシシラン[Si(OCH2CH3)3(N(CH2CH3)2](Uドナー)をそれぞれ用いた。表1に、アルミニウムのドナーに対する比を示す。
【0159】
重合に先立ち、触媒を、最終ポリマー中のポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)濃度を200ppmとすることができる量のビニルシクロヘキサンとプレ重合させた。各プロセスは、EP1028984及びEP1183307に記載されている。
【0160】
重合
実施例IE1〜IE7については、反応器にモノマー及び水素を供給及び排出するための制御バルブを備えた21.3L容オートクレーブにおいて行った。反応器へのモノマー及び水素の供給量は、流量コントローラーにより、また各リザーバの量を確認することにより確認した。反応器の温度は、反応器を囲む二重ジャケット中の水を加熱/冷却することにより、また、反応器の上端及び底部の双方のセンサーを用いて制御した。反応器内を効果的に撹拌するために、磁気カップリングによる螺旋状撹拌機を用いた。撹拌速度は、反応工程中に変化しうる。全プロセスは、事前にプログラムされ、反応器室の外部に置かれたワークステーションコンピュータにより実行及びモニターした。
【0161】
バルク:
反応器を、最初にプロピレンでパージし、次いでプレ重合として、5250gのプロピレンと6リットルの水素で充填した。上記に定義される触媒(鉱物油スラリー中に懸濁させた15.3重量%懸濁液)を、反応器に添加する前に、TEAL/ドナー比が6モル/モルのTEAL及びU又はDドナーの溶液と5分間混合した。次いで、触媒混合物の全量が確実に反応器へと添加されるように、触媒を入れた容器を250gのプロピレンでフラッシュした。次いで、反応器にて、350rpmで撹拌しながら23℃にて6分間、プレ重合を行った。
続いて、反応器を85℃に加熱して、バルク条件を開始した。移行の間は、流量コントローラーを通して所望の量の水素を添加する。水素は、バルクには常に添加されるが、反応中に連続的に添加するものではない。所望の反応器条件に達した後、プロピレンの供給により反応器を定圧に保持する。このバルク条件に達するまでの移行時間は、通常〜19分である。所定のバルク滞留時間の後、撹拌速度100rpmにて反応器を0.5barまでパージして、続けてガス相工程を行う。材料IE1、2、5〜7及びCE1では、直ちにGPR2へと進め、材料IE3、4及びCE2、3では、続けてGPR1へと進めた。
【0162】
GPR1(適用する場合)
0.5barのパージ圧に達した後、反応器の撹拌速度を350rpmに上げ、GPR1として、目的量のプロピレン及び水素を反応器に添加する。その際、圧力及び温度をそれぞれ34bar及び85℃へと増加させる。バルクからGPR1への移行時間は、通常〜19分であった。目的温度に達した後、プロピレンの供給により圧力を一定に保った。生成されたポリマーの量は、反応行程中に添加したプロピレンの量を測定することにより確認することができた。所望のスプリットに達した後、追加のガス相工程に備えて撹拌速度100rpmにて反応器を0.5barまでパージした。
【0163】
GPR2
所望のパージ圧(0.5bar)が得られた後、最終ガス相(GPR1)への移行を開始した。反応器の撹拌速度を350rpmまで上げ、反応器にプロピレン、エチレン及び水素を供給した。その際、温度及び圧力を所望の値にまで高めた(表1a及びbを参照。)。ループからGPR2への移行時間は、通常8分から10分の間である。所望のガス比が保たれるようにコモノマーを添加した。反応器が所望の温度に達した後、適当なガス比のエチレン/プロピレンの供給により圧力を所望の定圧に保った。生成されたポリマーの量は、反応工程中に添加したプロピレン及びエチレンの量を測定することにより確認することができた。所望のスプリットに達した後、反応器を以下に概説する終了手順へと進めた。
【0164】
反応の終了
反応が完了した後、撹拌速度を100rpmに下げ、ガス混合物を0barとなるまで反応器からパージした。反応器を数サイクルの真空で処理して、残留ガスを反応器(及びポリマー粒子)から除去した。このサイクルでは、反応器を真空下に数分置き、窒素を常圧まで満たし、このプロセスを数回繰り返す。次いで、生成物を反応器から安全に取り出す。
作製した試料の分析結果は、表1に示されている。
【0165】
反応器後の処理
まず、全てのポリマーの粉末を、TSE16TC押出機を用いて0.05重量%のステアリン酸カルシウム、0.05重量%のDHT、0.25重量%のIrganox B225及び0.5重量%のタルク4.5Jetfine3CAと調合し、次いで基本的な機械的試験に供した(表1a及びb)。
次いで、ポリマー粉末をHECO2、タルク及びCarbonblack Masterbatchと混合し、L/D比を30:1、スクリュー構成を2組の混練ブロックとしたPRISM TSE24二軸押出機を用い、200℃から240℃の溶融温度プロファイルを用いて押出した。
【0166】
【表1】

【0167】
【表2】

【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
【表5】



(2)甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】メルトフローレート(MFR)がそれぞれ50g/10分以上および50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を、(A):(B)=60〜99:1〜40(重量比)の範囲で含有してなることを特徴とする射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物。」

(2b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】このようなことから、本発明者らは、成型加工性に優れるとともに、得られた射出発泡成形体が耐衝撃性を有する射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を開発すべく検討の結果、本発明に至った。」

(2c)「【0009】このようなオレフィン系樹脂(A)としては、例えば、プロピレン、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等の単独重合体または共重合体が挙げられ、中でも、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。ポリプロピレン系樹脂は、公知のプロピレンを主体とする重合体であり、そのような例としては、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体、例えば、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体等を挙げることができ、この中でも、ポリプロピレン−エチレンブロック共重合体が特に望ましい。
・・・
【0013】オレフィン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)との組み合わせにおいて、オレフィン系樹脂(B)は組み合わせて使用されるオレフィン系樹脂(A)との相溶性や分散性などに応じて適宜選択され、例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)としてプロピレン単独重合体やプロピレン・エチレンブロック共重合体などを用いた場合には、オレフィン系樹脂(B)としては同種のポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましく、また、僅かに架橋したり、あるいは分子鎖に分岐を有するポリオレフィン系樹脂を用いることもできる。」

イ 甲1に記載された発明
甲1の段落【0003】には、射出成形系においてフローマークを減少させるポリマーを提供することを課題とすることが記載され(摘記(1b))、甲1の特許請求の範囲の請求項1には、概略、プロピレンホモポリマー(H−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相ポリプロピレン組成物(HECO1)であって、
(a) 前記プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり;
(b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり;
(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内である異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が記載され、同請求項9には、概略、ポリオレフィン(PO)と、請求項1の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物が記載され、同請求項10には、請求項9のポリオレフィン(PO)が異相ポリプロピレン組成物(HECO2)であることが記載され、同請求項12には、請求項10の組成物を有する射出成形品が記載されている(以上、摘記(1a)参照)。
また、甲1の段落【0016】及び【0017】には、異相ポリプロピレン組成物(HECO1)は、プロピレンホモポリマー(H−PP)であるマトリクス(M)と、その中に分散する弾性プロピレンコポリマー(E)とを有することが記載されている(摘記(1c))。
そして、甲1の実施例には、特許請求の範囲に記載された組成物の具体例であって、「HECO1」同「HECO2」及び「タルク」を含む組成物が記載され、曲げ弾性率を測定するために射出成形試料を作成したことが記載されている(以上、摘記(1e)参照)。
そこで、甲1の実施例IE5〜IE7に着目し、本件発明1で特定される事項に対応させると、甲1には以下の発明が記載されていると認められる。

「キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が24.4重量%である異相ポリプロピレン(HECO1)であって、
異相ポリプロピレン(HECO1)が、ポリプロピレンホモポリマーのマトリックスと、その中に分散する弾性プロピレンエチレンコポリマーからなり、
キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が34重量%である異相ポリプロピレン(HECO2)及び
タルクを含有する組成物を有する射出成形品」(以下「甲1発明A」という。)

「キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が24.5重量%である異相ポリプロピレン(HECO1)であって、
異相ポリプロピレン(HECO1)が、ポリプロピレンホモポリマーのマトリックスと、その中に分散する弾性プロピレンエチレンコポリマーからなり、
キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が34重量%である異相ポリプロピレン(HECO2)及び
タルクを含有する組成物を有する射出成形品」(以下「甲1発明B」という。)

「キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が20.2重量%である異相ポリプロピレン(HECO1)であって、
異相ポリプロピレン(HECO1)が、ポリプロピレンホモポリマーのマトリックスと、その中に分散する弾性プロピレンエチレンコポリマーからなり、
キシレン可溶成分(XCS)のエチレン含有量が34重量%である異相ポリプロピレン(HECO2)及び
タルクを含有する組成物を有する射出成形品」(以下「甲1発明C」という。)

ウ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO1)」を本件発明1の「第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)」と対応させ、甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO2)」を本件発明1の「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)」と対応させて、本件発明1と甲1発明A〜Cとをまとめて対比する。

(a)甲1発明A〜Cの「キシレン可溶成分(XCS)」は、甲1の段落【0146】によれば、「ISO16152;第1版;2005年7月1日に準じて25℃にて求める。」と記載されており(摘記(1f))、この求め方は、本件明細書の段落【0252】にキシレン可溶性画分の決定方法として記載されている内容と同じであるから、甲1発明A〜Cの「キシレン可溶成分(XCS)」は、本件発明1の「キシレン可溶性画分(XCS)」に相当する。
甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO1)」は、甲1の段落【0163】には、反応器にエチレンを供給することが記載され(摘記(1f))、この「異相ポリプロピレン(HECO1)」の「キシレン可溶成分(XCS)」中の「エチレン含有量」の値は、それぞれ「24.4重量%」、「24.5重量%」及び「20.2重量%」であるが、これらの値の単位を「mol%」に換算すると、それぞれ「32.6mol%」、「32.7mol%」及び「27.5mol%」と計算される。
(b)上で述べた(a)からすると、甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO1)」は、本件発明1の「キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)」に相当する。
(c)甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO1)」は、「ポリプロピレンホモポリマーのマトリックスと、その中に分散する弾性プロピレンエチレンコポリマー」からなり、甲1発明A〜Cの「弾性プロピレンエチレンコポリマー」は、本件発明1の「エラストマープロピレン−エチレンコポリマー」に相当することは明らかであるから、本件発明1の「異相ポリプロピレン(HECO1)が、ポリプロピレンホモポリマーのマトリックスと、その中に分散する弾性プロピレンエチレンコポリマーからな」ることは、本件発明1の「第2の異相プロピレンコポリマー」が「iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよびiv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E2)」であることに相当する。
(d)甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO2)」は、甲1の段落【0168】には、エチレンと認められるC2成分を10.5重量%含有すると記載されているから、異相ポリプロピレンコポリマーであるといえ、そうすると、甲1発明A〜Cの「異相ポリプロピレン(HECO2)」は、本件発明1のうち「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)」である限りにおいて一致に相当する。
(e)甲1発明A〜Cの「タルク」は、本件発明1の「無機充填剤(F)」に相当する。
(f)甲1発明A〜Cの「射出成形品」は、本件発明1の「発泡物品」と物品である限りにおいて一致する。

上記(a)〜(f)からすると、本件発明1と甲1発明A〜Cとでは、
「以下のもの
a)第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E2)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)、を含有する物品」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)物品が、本件発明1では「発泡物品」であるのに対し、甲1発明A〜Cでは「射出成形品」である点

(相違点2)第1の異相プロピレンコポリマーが、本件発明1では、「キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)を含む」と特定されているのに対し、甲1発明A〜Cでは、明らかでない点

b 判断
まず、相違点1について検討する。
本件発明1は、本件明細書の段落【0005】によれば、均一/良好な表面外観および機械的特性を有する発泡物品の製造に適用可能な発泡性ポリプロピレン組成物を提供することを課題として、概略、本件発明1で特定されるa)〜e)成分を含むポリプロピレン組成物を含有する発泡物品とする発明である。そして、同【0268】以降に記載された実施例では、本件発明1を満足しない具体例である「CE1」〜「CE3」と比較して、本件発明1を満足する具体例である「IE1」〜「IE4」が、発泡部品のセル構造、その表面外観、破壊時の最大破断力及び圧縮応力に優れることが具体的なデータと共に記載されている。

一方、甲1には、上記イで述べたように、射出成形系においてフローマークを減少させるポリマーを提供することを課題とすることが記載され(摘記(1b))、その特許請求の範囲の請求項1には、概略、プロピレンホモポリマー(H−PP)と、弾性プロピレンコポリマー(E)とを有する異相ポリプロピレン組成物(HECO1)であって、
(a) 前記プロピレンホモポリマー(H−PP)は、ISO1133に準じて測定されるメルトフローレートMFR2(230℃)が、70g/10分より大きく300g/10分までの範囲内であり;
(b) 異相ポリプロピレン組成物(HECO1)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分は、DIN ISO1628/1(デカリン中、135℃)に準じて求められる固有粘度が、4.0dl/gより大きく12.0dl/g未満の範囲内であり;
(c) 前記異相ポリプロピレン組成物(HECO)の低温キシレン可溶成分(XCS)画分のコモノマー含有量が、20.0重量%から60.0重量%の範囲内である異相ポリプロピレン組成物(HECO1)が記載され、同請求項9には、概略、ポリオレフィン(PO)と、請求項1の異相ポリプロピレン組成物(HECO1)と、任意の無機充填剤(F)とを有する組成物が記載され、同請求項10には、請求項9のポリオレフィン(PO)が異相ポリプロピレン組成物(HECO2)であることが記載され、同請求項12には、請求項10の組成物を有する射出成形品が記載されている(以上、摘記(1a)参照)。
しかしながら、甲1には、本件発明1のように、異相ポリプロピレン組成物を発泡物品にすることは記載されておらず、ましてや、発泡物品が表面外観及び機械的特性に優れることは記載されていない。

また、甲2には、成型加工性に優れ、耐衝撃性を有する射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を提供することを課題とすることが記載され(摘記(2b))、その特許請求の範囲の請求項1には、メルトフローレート(MFR)がそれぞれ50g/10分以上および50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を、(A):(B)=60〜99:1〜40(重量比)の範囲で含有してなる射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物が記載され(摘記(2a))、オレフィン系樹脂(A)として、ポリプロピレン−エチレンブロック共重合体が特に望ましいことが記載され(摘記(2c))、ポリオレフィン系樹脂(A)としてプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた場合には、オレフィン系樹脂(B)としては同種のポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましいことが記載されている(摘記(2c))。
このように、甲2に記載された発明の課題は、成型加工性に優れ、耐衝撃性を有する射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物を提供することであり、甲1に記載された発明の課題である射出成形系においてフローマークを減少させるポリマーを提供することとは異なり、また、本件発明1の課題とも異なるものである。

そうすると、いくら甲2に、メルトフローレート(MFR)がそれぞれ50g/10分以上および50g/10分未満であり、かつ両者のMFRの差が20g/10分以上であるMFRの異なるオレフィン系樹脂(A)およびオレフィン系樹脂(B)を、(A):(B)=60〜99:1〜40(重量比)の範囲で含有してなる射出発泡成形用オレフィン系樹脂組成物が記載され、オレフィン系樹脂(A)及び(B)として、プロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましく使用されることが記載されているとしても、甲1発明A〜Cである射出成形品を発泡物品とすることが動機づけられるとはいえない。
そして、効果について検討しても、本件発明1の発泡物品は、発泡部品のセル構造、その表面外観、破壊時の最大破断力及び圧縮応力に優れるものである。このことは、上記で述べたように、本件明細書に記載された本件発明1を満足する具体例である「IE1」から「IE4」で示される具体的なデータから明らかである。一方、甲1には、射出成形系においてフローマークを減少させること、甲2には、発泡物品が成型加工性に優れ、耐衝撃性を有することが記載されているだけであるから、本件発明1の効果は予測を超えた格別顕著なものであるということができる。

以上のとおりであるので、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1及び甲2に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(イ)本件発明2〜4、6〜11について
本件発明2〜4、6〜11は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2〜4、6〜11は、上記(ア)で示した理由と同じ理由により、甲1に記載された発明及び甲1及び甲2に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(ウ)本件発明12について
a 本件発明12と本件発明1との関係
本件発明12と本件発明1とを対比すると、本件発明1は、「ポリプロピレン組成物(C)」「を含有する発泡物品」に係る発明であるところ、本件発明12は、本件発明1と同じ「ポリプロピレン組成物(C)」「の発泡物品の製造のための使用」に係る発明である。

b 甲1発明A〜Cとの対比
上記(ア)aを参考にして、本件発明12と甲1発明A〜Cとを対比すると、両者は、
「a)第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E2)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)本件発明12は、「ポリプロピレン組成物(C)の発泡物品の製造のための使用」であるのに対し、甲1発明A〜Cは射出成形品である点

(相違点4)第1の異相プロピレンコポリマーが、本件発明12では、「キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)を含む」と特定されているのに対し、甲1発明A〜Cでは、明らかでない点

c 判断
相違点3について検討すると、上記(ア)bで述べたように、甲1には、異相ポリプロピレン組成物を発泡物品にすることは記載されておらず、ましてや、発泡物品が表面外観及び機械的特性に優れることは記載されておらず、また、甲2の記載をみても、甲1発明A〜Cである射出成形品を発泡物品の製造のための使用とすることが動機づけられるとはいえない。そして、本件発明12は予測を超えた格別顕著な効果を奏するものであるということができる。

よって、本件発明12は、相違点4について検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲1及び甲2に記載された技術的事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 小括
以上のとおりであるので、申立理由1は理由がない。

(2)申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)について
ここでは、申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)を併せて検討する。
ア 申立人の主張
申立人は特許異議申立書において、本件訂正前の請求項5に係る発明は、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)が「ii)20.0〜50.0mol−%の範囲のコモノマー含有量を有する」と特定されるが、本件明細書の段落【0271】に記載される実施例で使用される第1のプロピレンコポリマー(HECO1)のコモノマー含有量は「18mol−%」であり、また、同【0048】には、「第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)は、好ましくは、かなり低い総コモノマー含有量、好ましくはエチレン含有量を有することが理解される。したがって、第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)のコモノマー含有量は、4.0〜25.0mol−%の範囲、好ましくは6.0〜18.0mol−%の範囲、より好ましくは10.0〜13.0mol−%の範囲であることが好ましい。」と記載されているだけである。
以上の記載からすると、上記した「ii)20.0〜50.0mol−%の範囲のコモノマー含有量を有する」という特定がある本件訂正前の請求項5に係る発明は、均一/良好な表面外観および機械的特性を有する自動車部品の提供という課題を解決できると認識できない、というものである。
また、本件明細書には、本件訂正前の請求項5に係る発明を用いることで、均一/良好な表面外観および機械的特性を有する自動車部品を製造できる程度に明確かつ十分に記載されていない、というものである。
同様に本件訂正前の請求項1〜4及び6〜12に係る発明も同様の不備が存在する、というものである(申立書第43頁第16行〜第44頁第16行)。

イ 判断
(ア)特許法第36条第6項第1号の考え方について
特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
以下、この観点に立って検討する。

(イ)特許法第36条第4項の考え方について
特許法第36条第4項は、「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定され、その第1号において、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、明確かつ十分に記載したものであること。」と規定している。
特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。
また、方法の発明では、その方法を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載がない場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その方法を使用することができる程度にその発明が記載されてなければならないと解される。
よって、この観点に立って、本願の実施可能要件の判断をする。

(イ)特許請求の範囲の記載
上記「第3」に記載したとおりである。

(ウ)本件発明の課題
本件明細書【0005】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、均一で良好な表面外観および機械的強度を有する発泡物品を提供することである。

(エ)本件発明がサポート要件を満足するか否かの判断
a 本件明細書の段落【0008】には、「驚くべきことに、2つの異なる異相プロピレンコポリマーを含むポリプロピレン組成物(C)から得られる発泡部品は、優れた機械的特性および表面外観によって特徴づけられることが見出された。異相系の分散相は、力学と表面外観との間の良好な均衡を確実にするために、二峰性の分子量分布を有することができる。さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)および他の添加剤を、耐引っかき性の改善のために使用することができ、それは、内装用途に特に有用である。組成物は、化学的および物理的発泡に適している。」と記載され、特に、同【0039】〜【0119】には、本件発明1で特定される第1の異相プロピレンコポリマーの具体的な説明がされている。また、同【0120】〜【0201】には、本件発明のうちポリプロピレン組成物に含有される他の成分の具体的な説明がされている。
そして、同【0268】以降に記載された実施例においては、本件発明1を満足する具体例である「IE1」〜「IE4」が、本件発明1を満足しない具体例である「CE1」〜「CE3」と比較して、発泡部品のセル構造、その表面外観、破壊時の最大破断力及び圧縮応力に優れることが具体的なデータと共に記載され、本件発明の課題が解決できることが記載されているといえる。

以上の記載をみた当業者であれば、本件発明1は発明の詳細な説明の記載及び技術常識により、本件発明1は発明の課題を解決できると認識できるといえ、本件発明1は発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
また、同様に、本件発明12も発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

b サポート要件についての申立人の主張についての判断
申立人は、上記アで述べたような主張をするが、上記第2及び第3で述べたとおり、請求項5に係る発明は削除され、また、本件発明1及び12は上記イ(エ)aで述べたように発明の詳細な説明に記載された発明であるといえるから、サポート要件についての申立人の主張は理由がない。

(オ)本件発明が実施可能要件を満足するか否かの判断
a 本件明細書には、上記(エ)aで述べた内容が記載され、これらの記載をみた当業者であれば、本件発明1は発明の詳細な説明の記載及び技術常識により、過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、本件発明1を作り、使用することができるといえる。
また、同様に、本件発明12を作り、使用することができるといえる。

実施可能要件についての申立人の主張についての判断
申立人は、上記アで述べたような主張をするが、上記第2及び第3で述べたとおり、請求項5に係る発明は削除され、また、本件発明1及び12は上記イ(オ)aで述べたように過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、本件発明1及び12を作り、使用することができるといえるから、実施可能要件についての申立人の主張は理由がない。

ウ 小括
以上のとおりであるので、申立理由2及び申立理由3は理由がない。

第6 むすび
本件発明5に係る特許に対する申立ては、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。
当審が通知した取消理由及び特許異議申立人がした申立理由によっては、本件発明1〜4、6〜12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4、6〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のもの
a)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)
を含む、前記第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E2)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)、を含有する発泡物品。
【請求項2】
前記第2の異相コポリマー(HECO2)の前記キシレン可溶性画分(XCS)が3.5dl/gを超える固有粘度(IV)を有する、請求項1に記載の発泡物品。
【請求項3】
ポリプロピレン組成物(C)全体に基づいて、
a)40.0〜60.0重量%の前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)、
b)21.0〜31.0重量%の前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)、
c)10.0〜20.0重量%の前記無機充填剤(F)、
d)任意に2.0〜10.0重量%の前記高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意に5.0〜15.0重量%のエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーである前記プラストマー(PL)
を含む、請求項1または2に記載の発泡物品。
【請求項4】
i)前記第1のプロピレンポリマー(M1)である前記第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)の前記マトリックスがISO 1133に従って決定して120〜500g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)を有し、
ii)前記第2のプロピレンポリマー(M2)である前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)の前記マトリックスがISO 1133に従って決定して40〜170g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)を有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
前記第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)が
i)ISO 1133に従って決定して1.0〜15g/10分の範囲のメルトフローレートMFR2(230℃)、および/または
ii)5.0〜30.0mol−%の範囲のコモノマー含有量、および/または
iii)20.0〜40.0重量%の範囲のキシレン可溶性画分(XCS)
を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項7】
前記第1のプロピレンポリマー(M1)および/または前記第2のプロピレンポリマー(M2)がプロピレンホモポリマーである、請求項1〜4、6のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項8】
ISO 1133に従って決定したメルトフローレートMFR2(230℃)が10〜40g/10分の範囲である、請求項1〜4、6、7のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項9】
前記プラストマー(PL)がエチレンと1−オクテンとのコポリマーである、請求項1〜4、6〜8のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項10】
前記無機充填剤(F)がタルクおよび/または珪灰石である、請求項1〜4、6〜9のいずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項11】
前記前記発泡物品が、自動車用物品である、請求項1〜4、6〜10いずれか一項に記載の発泡物品。
【請求項12】
ポリプロピレン組成物(C)の、発泡物品の製造のための使用であって、ポリプロピレン組成物(C)が以下のものである使用。
a)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が40.0mol−%に等しいかまたはそれより高い第1の異相プロピレンコポリマー(HECO1)であって、前記第1の異相プロピレンコポリマーが以下
i)第1のプロピレンポリマー(M1)である第1のマトリックスおよび
ii)前記第1のマトリックス中に分散した第1のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E1)
を含む、前記第1の異相プロピレンコポリマー、
b)キシレン可溶性画分(XCS)のコモノマー含有量が39.0mol−%未満である第2の異相プロピレンコポリマー(HECO2)であって、前記第2の異相プロピレンコポリマーが以下
iii)第2のプロピレンポリマー(M2)である第2のマトリックスおよび
iv)前記第2のマトリックス中に分散した第2のエラストマープロピレン−エチレンコポリマー(E21)
を含む、前記第2の異相プロピレンコポリマー、
c)無機充填剤(F)、
d)任意に高密度ポリエチレン(HDPE)、ならびに
e)任意にエチレンおよびC4〜C8α−オレフィンのコポリマーであるプラストマー(PL)
を含む、ポリプロピレン組成物(C)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-31 
出願番号 P2019-520391
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 佐藤 健史
橋本 栄和
登録日 2020-12-18 
登録番号 6812544
権利者 ボレアリス エージー
発明の名称 発泡ポリプロピレン組成物  
代理人 芝 哲央  
代理人 林 一好  
代理人 林 一好  
代理人 芝 哲央  
代理人 岩池 満  
代理人 岩池 満  
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