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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08F |
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管理番号 | 1387495 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-08-06 |
確定日 | 2022-06-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6828222号発明「吸水性樹脂粒子、吸収性物品、吸水性樹脂粒子を製造する方法、及び吸収体の加圧下での吸収量を高める方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6828222号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、6について訂正することを認める。 特許第6828222号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯及び証拠方法 1.手続の経緯 特許第6828222号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、令和2年3月5日(優先権主張:平成31年3月8日、日本国)を国際出願日とする出願(特願2020−556831号)であって、令和3年1月22日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は、同年2月10日である。)。 その後、同年8月6日に、本件特許の請求項1〜6に係る特許に対して、特許異議申立人である株式会社日本触媒(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがなされた。 手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 8月 6日 特許異議申立書 同年11月24日付け 取消理由通知書 令和4年 1月24日 訂正請求書、意見書(特許権者) 同年 1月31日付け 通知書(申立人宛) 同年 3月 4日 意見書(申立人) 2.証拠方法 申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 甲第1号証:国際公開第2018/155591号 甲第2号証:特開平9−124955号公報 甲第3号証:国際公開第2008/015980号 甲第4号証:特開2006−68731号公報 甲第5号証:国際公開第2016/088848号 甲第6号証:特開2010−116548号公報 甲第7号証:特開2005−111474号公報 甲第8号証:国際公開第2015/093594号 甲第9号証:国際公開第2016/104374号 甲第10号証:特開平7−25917号公報 甲第11号証:特開平9−157313号公報 甲第12号証:特開平6−293802号公報 甲第13号証:特開平7−33804号公報 甲第14号証:特開2003−26706号公報 甲第15号証:特開2018−187545号公報 甲第16号証:Fredric L. et al., Modern Superabsorbent Polymer Technology, 1998, p195-197, p212-215, p251-253および抄訳 甲第17号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第1号証の製造例2および23に対する実験成績証明書 甲第18号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第2号証の実施例3に対する実験成績証明書 甲第19号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第3号証の実施例3に対する実験成績証明書 甲第20号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第4号証の実施例2に対する実験成績証明書 甲第21号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第5号証の実施例15に対する実験成績証明書 甲第22号証:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第7号証の実施例32に対する実験成績証明書 (以下、上記甲第1号証〜甲第22号証を、「甲1」〜「甲22」ということがある。) 申立人が令和4年3月4日付け意見書に添付した証拠方法は、以下のとおりである。 参考資料1:株式会社日本触媒 吸水性樹脂研究部 松本智嗣による甲第3号証の実施例3に対する実験成績証明書 第2 訂正の適否 1.訂正事項 令和4年1月24日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「膨張維持率が98%以上」を「膨張維持率が101%以上」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「無加圧DWの10分値が」を「V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1において、「40mL/g以上であり、」を「40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3において、「V0が20mL〜25mLである」を、「V0が20mL〜22.0mLである」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6において、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を高める」を、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高める」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6において、「ことを含み、」を、「ことと、吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすることと、を含み、」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6において、「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める方法。」を、「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法。」に訂正する。 2.一群の請求項について 訂正前の請求項2〜4は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1〜3によって記載が、訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1〜4は、一群の請求項に該当するものである。 よって、本件訂正のうち訂正事項1〜4の訂正は、一群の請求項〔1〜4〕に対してなされたものである。 一方、本件訂正のうち訂正事項5〜7の訂正は、一群の請求項ではない請求項6に対してなされたものである 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていた「膨張維持率」の下限値である「98%」を、本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の[0129]の表1の実施例2、4に基づき「101%」に訂正して、膨張維持率の数値範囲をより狭い範囲に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 よって、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、本件明細書の[0016]に記載されていた「吸水性樹脂粒子の膨張維持率は、吸収体の加圧下での吸収量の更なる向上の観点から、110%以下、又は108%以下であってもよい。同様の観点から、純水による膨潤ゲルの体積V0が、20〜25mLであってもよい。」、同[0129]の表1の実施例1に記載されていたV0が「22.0mL」に基づき、訂正前の請求項1に記載されていた「吸水性樹脂粒子」について、「V0が22.0mL以下」という限定を加えるものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、本件明細書の[0019]に記載されていた「吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する保水量は、30g/g以上、32g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、39g/g以上、40g/g以上、41g/g以上、又は42g/g以上であってよい。」との記載に基づき、訂正前の請求項1に記載されていた「吸水性樹脂粒子」の吸水量について、「生理食塩水に対する保水量が35g/g以上」という限定を加えるものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、本件明細書の[0129]の表1の実施例1に記載されていたV0である「22.0mL」に基づき、訂正前の特許請求の範囲の請求項3に記載されていた「V0が20mL〜25mL」の上限を「22.0mL」に訂正し、V0の数値範囲を狭い範囲に限定するものである。 よって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (5)訂正事項5 訂正事項5は、本件明細書の[0090]に記載されていた「吸水性樹脂粒子の製造条件を、吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性が高くなるように選択することによっても、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を所定の値(例えば98%)以上とすることができる。」との記載に基づき、訂正前の特許請求の範囲の請求項6に記載されていた「吸水性樹脂粒子の膨張維持率」を「高めること」について、「98%以上に高めること」に限定するものであるから、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (6)訂正事項6 訂正事項6は、本件明細書の【0017】に記載された「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値が40mL/g以上であると、吸収体の加圧下での吸収量をより一層高めることができる。」との記載に基づき、訂正前の特許請求の範囲の請求項6に記載されていた「加圧下での吸収量を高める方法」に含まれる工程を、「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とする」という工程に限定するものであるから、訂正事項6は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 (7)訂正事項7 訂正事項7は、本件明細書の[0129]の表1の実施例3に記載されていた加圧下吸収量である「488g」に基づき、訂正前の特許請求の範囲の請求項6に記載されていた「加圧下での吸収量を高める」ことについて、「488g以上に高める」ことに限定するものであるから、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。 4.独立特許要件 本件特許異議の申立ては、訂正前の全ての請求項に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 5.小括 以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1〜7は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであり、いずれも同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件特許の請求項1〜6に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された、以下の事項によって特定されるとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。 以下、訂正後の本件発明を、項番に従い、「本件発明1」などといい、これらを総称して、「本件発明」という。これに対し、訂正前の本件発明を、「訂正前本件発明1」などといい、これらを総称して、「訂正前本件発明」という。 「【請求項1】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子。 【請求項2】 前記膨張維持率が110%以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項3】 V0が20〜22.0mLである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項4】 液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、 前記吸収体が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含む、吸収性物品。 【請求項5】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 当該方法が、式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程を含み、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子を製造する方法。 【請求項6】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める方法であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 当該方法が、式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めることと、吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすることと、を含み、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法。」 第4 当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての理由の概要 1.当審が通知した取消理由通知の概要 当審が令和3年11月24日付け取消理由通知書で通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は、以下のとおりである。 (1)取消理由1(サポート要件) 訂正前本件発明6は、発明特定事項にある「膨張維持率を高める」操作のみを行ったとしても、同時に「DW10分値を高める」操作を伴わない場合には、加圧下吸収量の向上を期待することはできないし、本件発明の課題を解決できるレベルまで、吸収体の「加圧下での吸収量を高める」ためには、訂正前本件発明1、5が規定するように、「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上」とすることが、不可欠であると認められる。 したがって、訂正前本件発明6は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆、及び、本件特許の出願時の技術常識に照らし、上記の本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (2)取消理由2(明確性要件) 訂正前本件発明6の発明特定事項である「高める」が、何を基準としたものに基づいて、「高める」ことを意図しているのか明らかでないし、どの程度「高め」られた場合に、訂正前本件発明6の発明特定事項を満たすことになるのかについても、明確に特定できない。 したがって、訂正前本件発明6は、本件明細書の記載及び本件特許の出願時における技術常識を参酌しても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるものと認められるから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (3)取消理由3(新規性) 訂正前本件発明1〜4は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された甲1〜5、7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4)取消理由4(進歩性) 訂正前本件発明1〜4は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された甲1〜5、7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2.特許異議申立ての理由の概要 申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由(以下、「申立理由」という。)は、以下のとおりである。 (1)申立理由1(新規性) 訂正前本件発明1〜6は、甲1及び甲7に記載された発明、訂正前本件発明1〜5は、甲2〜6、8、15に記載された発明であり、訂正前本件発明1〜6は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立理由2(進歩性) 訂正前本件発明3は、 ア.甲6と甲15との組み合わせ、又は イ.甲8と甲15との組み合わせに基づき、 訂正前本件発明4は、 ウ.甲5と甲16との組み合わせ、又は エ.甲6と甲16との組み合わせに基づき、 訂正前本件発明6は、 オ.甲8に基づき、 訂正前本件発明1〜5は、 カ.甲9と甲10〜14うちのいずれかとの組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせ、 キ.甲10と甲9との組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせ、 ク.甲11と甲9との組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせ、 ケ.甲12と甲9との組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせ、 コ.甲13と甲9との組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせ、又は サ.甲14と甲9との組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせに基づき、 当業者が容易に想到することができる発明であって、訂正前本件発明1〜6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立理由3(サポート要件) ア. 訂正前本件発明の課題を解決するためには、「膨張維持率」および「無加圧DWの10分値」 のみでは足りず、保水能(CRC)および荷重下吸収量(AAP)、さらには通液性および加圧下における吸水速度も必要であることは自明である。 例えば、保水能(CRC)および荷重下吸収量(AAP)が小さい場合には、加圧下における吸水性樹脂粒子自体の保水能力が小さいため、加圧下における吸収量も少なくなることは明らかであるから、訂正前本件発明1〜6の範囲には、上記課題を解決できない発明が含まれる。 イ. 訂正前本件発明6の「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を高める」との文言が、何と比較してどの程度高めることを意味するのか、例え当業者であっても理解することができないし、本件明細書に記載の比較例2の吸水性樹脂粒子は、比較例1の吸水性樹脂粒子に対して膨張維持率が85%から91%に向上しているため、本件発明6に該当するように見えるが、比較例2の吸水性樹脂粒子は、訂正前本件発明の課題を解決していない。 したがって、訂正前本件発明1〜6は、訂正前本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえないから、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立理由4(実施可能要件) 本件明細書には、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を高めるための方法が記載されていないため、当業者であっても、本件明細書の記載に基づいて訂正前本件発明6を実施することができないから、本件明細書は、訂正前本件発明6について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (5)申立理由5(明確性要件) 訂正前本件発明6の「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める」との文言は、単に達成すべき効果を記載しているに過ぎない。 仮に、前記文言が方法の発明の構成であったとしても、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を高める」との文言および「加圧下での吸収量を高める」との文言の意味が不明確である。 したがって、訂正前本件発明6は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 第5 当審の判断 本件発明1〜6に係る特許は、以下のとおり、当審が通知した取消理由通知書に記載した取消理由1〜4、申立人による申立理由1〜5によっては、取り消すことができない、と判断する。 1.本件明細書に記載された事項 本a. 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の一側面は、吸収体の加圧下での吸収量を高めることのできる吸水性樹脂粒子を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明の一側面は、式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が98%以上である、吸水性樹脂粒子に関する。V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である。V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である。 【0006】 上記膨張維持率が98%以上である吸水性樹脂粒子を含む吸収体は、加圧下で高い吸収量を示すことができる。一般に、吸水性樹脂粒子が純水を吸収したときと比較して、吸水性樹脂粒子が生理食塩水を吸収したときのほうが、吸水により形成される膨潤ゲルの体積が小さくなる傾向がある。これは、吸水性樹脂粒子が液体を吸収する際に生じる浸透圧の差の影響によると考えられる。上記吸水性樹脂粒子の膨張維持率が98%以上ということは、吸水性樹脂粒子が生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V1が、吸水性樹脂粒子が純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0と略同等以上であることを意味する。個々の吸水性樹脂粒子の硬さが均一であると、浸透圧が大きい純水においても膨潤ゲルの体積が小さくなり、純水と生理食塩水とで膨潤ゲルの体積に差が生じ難くなる。すなわち、上記膨張維持率が98%以上であることは、吸水性樹脂粒子が吸収したときに、個々の吸水性樹脂粒子の硬さが均一であることを反映していると考えられる。そして、粒子の硬さが均一であると加圧による影響を受け難く、そのため、上記膨張維持率が98%以上である吸水性樹脂粒子を含む吸収体は、加圧下でも大きな吸収量を示すことができると、本発明者は推察している。 … 【発明の効果】 【0010】 本発明の一側面によれば、吸収体の加圧下での吸収量を高めることのできる吸水性樹脂粒子が提供される。」 本b. 「【0015】 98%以上の膨張維持率を有する吸水性樹脂粒子を得る方法としては、吸水性樹脂粒子の硬さの均一性を高めることが挙げられる。例えば、均一な架橋構造を含む吸水性樹脂粒子は、硬さの均一性が高い傾向がある。 【0016】 吸水性樹脂粒子の膨張維持率は、吸収体の加圧下での吸収量の更なる向上の観点から、110%以下、又は108%以下であってもよい。同様の観点から、純水による膨潤ゲルの体積V0が、20〜25mLであってもよい。 【0017】 吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値が、40mL/g以上、45mL/g以上、50mL/g以上、55mL/g以上、又は60mL/g以上であってもよい。ここで、無加圧DWは、吸水性樹脂粒子が、無加圧下で、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)と接触してから所定の時間経過するまでに生理食塩水を吸収した量で表される吸水速度である。無加圧DWは、生理食塩水の吸収前の吸水性樹脂粒子1g当たりの吸収量(mL)で表される。無加圧DWの10分値は、吸水性樹脂粒子が生理食塩水と接触してから10分後の吸収量を意味する。吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値が40mL/g以上であると、吸収体の加圧下での吸収量をより一層高めることができる。無加圧DWの10分値は、例えば80mL/g以下、75mL/g以下、又は70mL/g以下であってもよい。無加圧DWの具体的な測定法については実施例において詳述される。 【0018】 4.14kPaの荷重による加圧下での吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する吸水量(以下「荷重下吸水量」ということがある。)が、例えば、8mL/g以上、12mL/g以上、15mL/g以上、18mL/g以上、又は20mL/g以上であってもよく、35mL/g以下、又は30mL/g以下であってもよい。荷重下吸水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。 【0019】 吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する保水量は、30g/g以上、32g/g以上、35g/g以上、38g/g以上、39g/g以上、40g/g以上、41g/g以上、又は42g/g以上であってよい。吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、60g/g以下、57g/g以下、55g/g以下、53g/g以下、50g/g以下、又は48g/g以下であってよい。また、吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する保水量が、30〜60g/g、35〜55g/g、38〜53g/g、40〜50g/g、又は42〜48g/gであってもよい。保水量がこれら範囲内であると、吸収体の浸透速度が大きくなる傾向、及び、吸収体からの液体漏れが抑制される傾向がある。吸水性樹脂粒子の生理食塩水に対する吸水量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。 … 【0022】 吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、重合方法が逆相懸濁重合法又は水溶液重合法であってもよい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。 … 【0058】 重合反応は、攪拌翼を有する各種攪拌機を用いて行うことができる。攪拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(撹拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(撹拌部)とを有している。さらに、平板部は、スリット等を有していてもよい。攪拌翼として平板翼を用いると、形成される重合体粒子における重合体の架橋の均一性が高くなる傾向がある。架橋の均一性が高いと、吸水性樹脂粒子の硬さの均一性が高くなる。硬さの均一性の高い吸水性樹脂粒子は、98%以上の膨張維持率を示し易い。 … 【0090】 吸水性樹脂粒子10aの膨張維持率を、吸水性樹脂粒子10aを含む吸収体10の加圧下での吸収量を高めるための指標として用いることができる。吸水性樹脂粒子10aの膨潤率を高めることを含む方法によって、吸収体10の加圧下での吸収量が高められる。例えば、吸水性樹脂粒子10aとして膨張維持率が所定の値(例えば98%)以上のものを選別してもよい。または、吸水性樹脂粒子の製造条件を、吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性が高くなるように選択することによっても、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を所定の値(例えば98%)以上とすることができる。吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性を高める方法の例としては、重合反応時の攪拌翼として平板翼を用いること、攪拌の回転数を適切な範囲に選択すること、熱の供与および除去がしやすい条件を採ること(例えば炭化水素分散媒中での反応)、適度に反応性の高い架橋剤を用いることなどが挙げられる。」 本c. 「【実施例】 【0092】 以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0093】 1.吸水性樹脂粒子の製造 (実施例1) <第1段目の重合反応> 還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。攪拌機には、図2に概形を示す攪拌翼200を取り付けた。攪拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されると共に、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されており、内側の二つのスリットSの幅は1cmであり、外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。準備したセパラブルフラスコ内で、n−ヘプタン293g及び分散剤(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を攪拌機で攪拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn−ヘプタンに溶解させた。形成された溶液を50℃まで冷却した。 【0094】 内容積300mLのビーカーに、80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。外部より冷却しつつ、ビーカー内のアクリル酸水溶液に対して20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して、75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、ヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社製、HECAW−15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えてこれらを水溶液に溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。 【0095】 得られた単量体水溶液を、攪拌機の回転数425rpmで攪拌しながら、分散剤の溶液の入った上述のセパラブルフラスコに入れ、反応液を更に10分間攪拌した。反応液に、n−ヘプタン6.62gにショ糖ステアリン酸エステル(界面活性剤、三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370、HLB値:3)0.736gが溶解している界面活性剤溶液を添加した。攪拌機の回転数425rpmで攪拌しながら、系内を窒素で充分に置換した。攪拌を継続しながらセパラブルフラスコを70℃の温水浴で60分間加熱することによって第1段目の重合反応を進行させて、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。 【0096】 <第2段目の重合反応> 別の内容積500mLのビーカーに、80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(アクリル酸:1.44モル)を入れた。外部より冷却しつつ、ビーカー内のアクリル酸水溶液に対して27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して、75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.333ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを水溶液に溶解し、第2段目の単量体水溶液を調製した。 【0097】 第1段目の重合スラリー液を、攪拌機の回転数650rpmで攪拌しながら25℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加した。系内を窒素で30分間置換した後、攪拌を継続しながら、再度、セパラブルフラスコを70℃の温水浴で60分間加熱することによって第2段目の重合反応を進行させた。 【0098】 <共沸蒸留による水分の除去、及び表面架橋> 第2段目の重合反応後の反応液に、攪拌しながら、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを添加した。125℃の油浴で反応液を昇温し、共沸蒸留により257.6gの水を系外へ抜き出した。その後、表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(エチレングリコールジグリシジルエーテル:0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持することにより、表面架橋反応を進行させた。 【0099】 <乾燥及び非晶質シリカの混合> 反応液を125℃に加熱することによってn−ヘプタンを蒸発させて、重合体粒子の乾燥品を得た。この乾燥品を目開き850μmの篩を通過させ、重合体粒子の全質量を基準として0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション社製、トクシールNP−S)を重合体粒子に混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を229.8g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は362μmであった。 … 【0104】 (比較例1) 攪拌翼の種類、水溶性ラジカル重合剤、内部架橋剤、及び共沸蒸留による水分の除去に関して以下の条件を適用した。これら以外は実施例1と同様にして、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子224.6gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は356μmであった。 <第1段目の重合反応> ・攪拌翼:フッ素樹脂で表面処理された翼径50mmの4枚傾斜パドル翼(回転数550rpm) ・水溶性ラジカル重合開始剤:2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、及び過硫酸カリウム0.018g(0.067ミリモル) ・内部架橋剤:エチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル) <第2段目の重合反応> ・攪拌翼:フッ素樹脂で表面処理された翼径50mmの4枚傾斜パドル翼(回転数1000rpm) ・水溶性ラジカル重合開始剤:2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.476ミリモル)、及び過硫酸カリウム0.026g(0.096ミリモル) ・内部架橋剤:エチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル) <共沸蒸留による水分の除去> ・水の抜き出し量:209.7g … 【0121】 2−3.無加圧DW 吸水性樹脂粒子の無加圧DWは、図4に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。 … 【0126】 2−5.膨張維持率 膨張維持率は、25±0.2℃、大気圧の室内で測定された。用いられた液体および器具の温度も同様である。100mLのメスシリンダー(Kartell製、1目盛り:1mL)の底部に吸水性樹脂粒子1.000±0.001gを均一に入れた。そこに純水20.0±0.1gを一気に投入した。純水の投入から10分後、吸水により形成された膨潤ゲルの最高点の位置に対応するメスシリンダーの目盛りを、少数第1位の値まで読み取り、その値を膨潤ゲルの体積とみなした。同様の測定を3回行い、純水の吸収による膨潤ゲルの体積V0(mL)を算出した。純水に代えて生理食塩水(0.9質量%の食塩水溶液)を用いた同様の測定により、生理食塩水の吸収による膨潤ゲルの体積V1を測定した。得られた測定結果から、下記式により膨張維持率を算出した。 膨張維持率(%)=(V1/V0)×100 … 【0129】 【表1】 【0130】 表1に示されるように、98%以上の膨張維持率を示す吸水性樹脂粒子を含む吸収体は、十分に大きな加圧下吸収量を示すことが確認された。」 2.甲1〜15に記載された発明 (1)甲1に記載された発明 甲1の[0559]〜[0565]、[0575]〜[0590]、[0732]〜[0733]、【表3−1】、【表3−3】、【表4−1】及び【表4−2】によると、甲1の製造例2、23には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部及び脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(b)を調製した後、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングし、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、重合(重合時間3分間)を連続的に行い、帯状の含水ゲル(b)を得、幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断し、短冊状の含水ゲルを得、ゲル粉砕、乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末を得た後、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液を添加し、均一になるまで混合した後、得られる吸水性樹脂粒子のCRCが38g/gとなるように加熱処理、強制冷却し、ペイントシェーカーテストを実施して製造プロセス相当のダメージを付与した後、吸水性樹脂粉末100質量部に対し、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液1.01質量部を添加し、均一になるまで混合した後、目開き710μmのJIS標準篩に通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合して得られる粒子状吸水剤」(以下、「甲1製造例2発明」という。) 「アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.94質量部、0.1質量%のジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム水溶液16.4質量部及び脱イオン水314.3質量部からなる単量体水溶液(a)を調製した後、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を連続的にラインミキシングし、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を連続的にラインミキシングした後、重合(重合時間3分間)を連続的に行い、帯状の含水ゲル(a)を得、幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断し、短冊状の含水ゲルを得、ゲル粉砕、乾燥、粉砕、分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末を得た後、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025質量部、1,4−ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液を添加し、均一になるまで混合した後、得られる吸水性樹脂粒子のCRCが35g/gとなるように加熱処理、強制冷却し、ペイントシェーカーテストを実施して製造プロセス相当のダメージを付与した後、吸水性樹脂粉末100質量部に対し、ジエチレントリアミン五酢酸三ナトリウム0.01質量部及び脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液1.01質量部を添加し、均一になるまで混合した後、目開き710μmのJIS標準篩に通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合して得られる粒子状吸水剤」(以下、「甲1製造例23発明」という。) (2)甲2に記載された発明 甲2の【0108】〜【0113】及び【表1】によると、甲2の実施例3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸20重量%水溶液5,500gに、内部架橋剤としてのN,N’−メチレンビスアクリルアミド2.35gを溶解させ、攪拌しながら、過硫酸アンモニウム1.5gおよびL−アスコルビン酸0.07gを添加し、重合を行い、中和後、中和率が75モル%の含水ゲル状重合体を取り出し、熱風乾燥、粉砕、分級することにより、平均粒子径が390μm、粒子径が106μm未満の粒子の割合が4重量%の不定形破砕状の吸水性樹脂前駆体を得、吸水性樹脂前駆体100重量部に、第一表面架橋剤としてのプロピレングリコール0.75重量部と、第二表面架橋剤としてのプロピレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部と、水3重量部と、エチルアルコール0.75重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合し、加熱処理することで、平均粒子径は390μm、粒子径が106μm未満の粒子の割合が3重量%の吸水性樹脂を得、この吸水性樹脂100gに、水不溶性無機粉体としての微粒子状の親水性二酸化ケイ素(商品名・レオロシールQS−20;徳山曹達株式会社(現・株式会社トクヤマ)製)0.3gを添加・混合して得られる吸収剤組成物」(以下、「甲2発明」という。) (3)甲3に記載された発明 甲3の[0045]〜[0046]、[0049]及び[表1]によると、甲3の実施例3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸水溶液92gに、20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、N,N’−メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび過硫酸カリウム0.11gを添加し、更に、n−ヘプタン340gと、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リヨート一シュガーエステル S−370)0.92gを加えて、懸濁させ、第1段目の逆相懸濁重合を行い、この第1段目の逆相懸濁重合の系内に、80質量%のアクリル酸水溶液128.8gに24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、N,Ν’−メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび過硫酸カリウム0.16gを添加して得た第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液を滴下し、第2段目の逆相懸濁重合を行った後、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、後架橋処理を行った吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子2g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合して得られる、吸水性樹脂粒子」(以下、「甲3発明」という。) (4)甲4に記載された発明 甲4の【0151】〜【0152】、【0155】、【0162】及び【0163】によると、甲4の実施例2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、アクリル酸21.6g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.016g、イオン交換水197g、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC−ダイセルEP−850)0.4gより、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えた水溶液を、シクロヘキサン1.0Lにショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK−エステルF−50、HLB=6)3.8gを溶解させたものに加え、攪拌することにより分散させ、重合反応を開始し、重合終了後に得られたポリマー粉体の100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部を混合し、表面架橋後、得られた粒子状吸水剤の100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)することで、得られる粒子状吸水剤」(以下、「甲4発明」という。) (5)甲5に記載された発明 甲5の[0237]〜[0247]、[0277]〜[0279]、[0292]〜[0293]、[0296]〜[0297]、[0300]及び[0303]によると、甲5の実施例15には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液及びイオン交換水を混合し、更に、N、N−メチレンビスアクリルアミド及びジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウムを配合することで、単量体水溶液を作製し、この単量体水溶液と過硫酸ナトリウム水溶液を混合して得られた単量体組成物(モノマー濃度は43質量%、中和率は70モル%)を、ショ糖脂肪酸エステル(商品名:DKエステルF−50/第一工業製薬株式会社)を含むn−ヘプタンに投入し、重合反応の進行に伴って微小な球形ゲルとし、これを分級した、吸水性樹脂粉末100質量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.015質量部、プロピレングリコール1.0質量部及びイオン交換水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液をスプレーし、加熱処理を行うことで表面架橋された吸水性樹脂粉末を得、整粒することで得られる、吸水性樹脂」(以下、「甲5発明」という。) (6)甲6に記載された発明 甲6の【0131】〜【0133】、【0142】及び【表1】によると、甲6の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「水溶性ビニルモノマー(アクリル酸)155部(2.15モル部)、架橋剤(ペンタエリスリトールトリアリルエーテル)0.6225部(0.0024モル部)を重合して含水ゲルを得、含水ゲル400部をミンチ機で細断しながら、これに48.5%水酸化ナトリウム水溶液102.27部を添加し、混合・中和して得られた細断ゲル(1)502.27部と、この細断ゲル(1)を粉砕し、粒径調整して得られる親水性材料粒子(d1−1)に疎水性物質(アミノ変性シリコーン)を添加して得られる材料粒子(D−1)0.454部とを、混合して細断ゲル(2)を得、これを粉砕及び粒度調整して得られる乾燥体粒子に、エチレングリコールジグリシジルエーテルを加えて表面架橋することで得られる、M4(DW法による10分後の吸収量)が52ml/gである、吸収性樹脂粒子」(以下、「甲6発明」という。) (7)甲7に記載された発明 甲7の【0248】〜【0250】、【0270】〜【0271】、【0282】、【表14】及び【表15】によると、甲7の実施例32には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)をアクリル酸に対して0.05モル%、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)とを混合し、単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%)を得、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、重合を開始し、含水重合体を粉砕、分級することにより、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得、この吸水性樹脂100重量部に1,4−ブタンジオール0.5重量部、プロピレングリコール0.5重量部、純水4重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、加熱処理し、解砕することで吸水剤を得、この吸水剤100重量部に、親水性アモルファスシリカ0.3重量部を均一に混合して得られる、CRCsが34.8g/g、AAPsが23.6g/gである吸水剤」(以下、「甲7発明」という。) (8)甲8に記載された発明 甲8の[0263]〜[0279]及び表2によると、甲8の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸421.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.754g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液140.4gを含む混合溶液にマイクロバブルを導入し、これに48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液211.9gを加えて単量体水溶液(A)を得、更に、4重量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.55gを攪拌しながら加えた後、加熱したステンレス製バット型容器中に大気中に開放された系で注いで重合させ、得られた含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)をゲル粉砕し、その後、粉砕、分級して不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(A)を得、これにエチレングリコール0.48重量部、プロピレングリコール0.75重量部、及び脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液を均一にスプレーして、エチレングリコール及びプロピレングリコールのガス密度がそれぞれ、表面架橋開始から5分間以上にわたり常に0.01g/Lとなるように、外部から加熱した表面架橋剤の気体を導入しながら表面架橋を施し、その後、硫酸アルミニウム水溶液、乳酸ナトリウム水溶液、及び、プロピレングリコールからなる混合液を添加して得られる、耐塩性指数(CRCdw/CRCs)が5.51である吸水剤」(以下、「甲8発明」という。) (9)甲9に記載された発明 甲9の[0072]〜[0077]によると、甲9の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「80質量%のアクリル酸水溶液92gに30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.0gを滴下して75モル%の中和を行ったのちエチレングリコールジグリシジルエーテル20.2mgを加えて第1段目の単量体水溶液を調製し、これをHLB3のショ糖ステアリン酸エステル0.8gを含むn−ヘプタン340gに加えて重合を行うことにより、第1段目の重合後スラリーを得、別途80質量%のアクリル酸水溶液128.8gに30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.0gを滴下して75モル%の中和を行なったのちエチレングリコールジグリシジルエーテル11.6mgを加え、第2段目の単量体水溶液を調製し、これを系内に加えて重合を行うことにより、第2段目の重合後スラリーを得、これに後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液を添加し反応させた後、親水性シリカを1.00g(吸水性樹脂に対して1.0質量%)添加して得られる、生理食塩水保水能が42g/g、無加圧DWの5分値が61mL/g、無加圧DWの60分値が70mL/gである、吸水性樹脂組成物」(以下、「甲9発明」という。) (10)甲10に記載された発明 甲10の請求項1及び【0023】によると、甲10の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「重合槽内に縦方向に延びる回転軸を配設し、前記回転軸の下部に前記重合槽底部を攪拌するパドルを装着すると共に、前記回転軸の上部に、前記回転軸から水平に延びる水平部材と前記水平部材から直角方向に延びる部材とからなる格子翼を装着し、かつ、前記重合槽の側壁面に、前記回転軸方向に沿う複数本の邪魔板を、間隔をおいて配設した重合槽中に、シクロヘキサン720gと疎水性のシリカ微粉末2.0gを加えて攪拌し、これに水酸化ナトリウム86g、アクリル酸200gより調製した水溶液、過硫酸アンモニウム0.79g、部分けん化ポリビニルアルコール1.0g及びシクロヘキサン300gより調製されたO/Wエマルジョンを滴下し、更に、エチレングリコールジグリシジルエーテル200mgを加え、共沸脱水により水を抜き出して調製される吸水性樹脂」(以下、「甲10発明」という。) (11)甲11に記載された発明 甲11の請求項1及び【0018】〜【0019】によると、甲11の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「重合反応器内上部中心部に重合反応器外から回転可能な撹拌軸を配設し、該軸に、重合反応器の底壁面に下端部を摺接させて重合反応器底部に配置されるボトムパドルを装着し、該撹拌軸のボトムパドルより上位部分にアーム部分と該アーム部分と直角方向に延びるストリップから構成される格子翼を装着すると共に重合反応器の側壁面に下部から上部まで軸方向に沿う複数本の邪魔板を、間隔をおいて配設し、かつ側壁面に下記の水溶液の供給口を設けた重合反応器に、シクロヘキサン105l、ソルビタンモノステアレートを仕込み、80%アクリル酸水溶液34.1kg、28%水酸化ナトリウム水溶液40.8kg、10%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液74g、過硫酸アンモニウム583gを含むモノマー水溶液を、連続的に供給して、シクロヘキサン還流下で重合を行った後、共沸脱水により水を抜き出して得られる高吸水性樹脂」(以下、「甲11発明」という。) (12)甲12に記載された発明 甲12の請求項1、【0021】及び【0023】によると、甲12の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を付設した容量1000mlの縦型円筒状の四つ口フラスコに、攪拌翼として、平板翼(翼径/槽径=0.8、翼高/槽径=0.8)を設置し、このフラスコに、シクロヘキサン324g、ソルビタンモノステアレート1.6gを添加したA液と、アクリル酸104g、水85g、25%水酸化ナトリウム161g、N,N−メチレンビスアクリルアミド0.77g、過硫酸カリウム0.24gを添加したB液とを添加し、120rpm(単位体積あたりの攪拌動力Pv=0.076KW/m3 )で攪拌して分散させ、重合開始後、モノマー転化率15%の時点で、約1秒で回転数を260rpm(Pv=0.77KW/m3)とし、この回転数にて攪拌を継続しながら昇温させ、重合を行って得られる粉末状の一次粒子ポリマー」(以下、「甲12発明」という。) (13)甲13に記載された発明 甲13の【0023】及び【0026】によると、甲13の比較例4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「撹拌機、還流冷却器、温度計および窒素ガス導入管を付設した容量1000mlの縦型円筒状の四つ口フラスコに、撹拌翼として、平板翼(翼径/槽径=0.8,翼高/槽径=0.8)を設置し、このフラスコに、シクロヘキサン324g、ソルビタンモノステアレート1.6gを添加したA液と、アクリル酸104g、水85g、25%水酸化ナトリウム161g、N,N−メチレンビスアクリルアミド0.77g、過硫酸カリウム0.24gを添加したB液とを添加し、120rpmで撹拌し、分散させた後、昇温し、重合を行い、樹脂中の水分を除去して得られる一次粒子ポリマー」(以下、「甲13発明」という。) (14)甲14に記載された発明 甲14の請求項1、【0043】及び【0044】によると、甲14の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「第1の端壁、これに対向する第2の端壁、及び、これらの間を略水平方向に延びる周壁を含み、略水平方向の流路を規定する、凝集槽と、前記凝集槽に連続的に流体材料を供給するための、前記第1の端壁側に設けられた供給口と、前記凝集槽から連続的に流体材料を排出するための、前記第2の端壁側に設けられた排出口と、前記凝集槽の内部において略水平方向に延びる回転軸部と、当該回転軸部に取り付けられた攪拌翼と、を備える連続凝集装置の凝集槽に、予めHLB13.1のヘキサグリセリルモノベヘニレートを2.76g溶解したn−ヘプタン1100mlを入れ、攪拌翼により撹拌しつつ、装置の第1の供給口を介して、n−ヘプタン2200ml、HLB13.1のヘキサグリセリルモノベヘニレート5.52g、80重量%のアクリル酸水溶液368g、20.1重量%の水酸化ナトリウム水溶液610.4g、過硫酸カリウム0.44gを含む第1モノマー水溶液を重合して得られた第1重合スラリーを23.9g/minで連続的に供給するとともに、第2の供給口を介して、第1モノマー水溶液と同様の方法で調製された第2モノマー水溶液を9.4g/minで連続的に供給し、これと同時に、排出口から33.3g/minで混合スラリーを連続的に抜き出し、抜き出した混合スラリー999gを加熱し、第2段目の重合反応を行って得られる吸水性樹脂」(以下、「甲14発明」という。) (15)甲15に記載された発明 甲15の請求項1、【0108】、【0109】及び【表1】によると、甲15の実施例1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の33質量%水溶液5500質量部にポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)2.9質量部を溶解させた反応液を、シグマ型羽根を2本有する反応器に供給し、過硫酸ナトリウム2.4質量部、及びL−アスコルビン酸0.12質量部をそれぞれ水溶液にして添加して重合し、含水ゲル状重合体を得た後、これを粉砕、分級して不定型破砕状の樹脂(ベースポリマー)(1)を調製し、このベースポリマー100質量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05質量部、プロピレングリコール1質量部、水3質量部、イソプロピルアルコール1質量部からなる表面架橋剤を混合し、加熱処理することで表面架橋された吸水性樹脂(1)を得、これにヒバ油50ppm(質量基準)(ヒノキチオール約1ppm(質量基準)相当)、水が1.2質量%となるようにヒバ油を添加混合し、解砕して得られる、ゲル嵩密度が0.97g/cm3、加圧下浸透依存吸収倍率(PDAUP)が14.0g/gである吸水剤(1)」」(以下、「甲15発明」という。) 3.取消理由通知書に記載した取消理由の検討 (1)取消理由1(サポート要件)の検討 ア.サポ−ト要件の考え方 特許請求の範囲の記載が明細書のサポ−ト要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ.本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の【0004】によると、本件発明は、「吸収体の加圧下での吸収量を高めることのできる吸水性樹脂粒子を提供する」ことを課題としたものと認められる(本a)。 ウ.本件発明6のサポート要件の判断 本件訂正により、本件発明6の「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める方法」が、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めることと、吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすることと」を含むことが加えられた。 一方、本件明細書の【0017】には、「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値が40mL/g以上であると、吸収体の加圧下での吸収量をより一層高めることができる。」(本b)、同【0090】には、「膨張維持率を、吸水性樹脂粒子10aを含む吸収体10の加圧下での吸収量を高めるための指標として用いることができる。…吸水性樹脂粒子の製造条件を、吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性が高くなるように選択することによっても、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を所定の値(例えば98%)以上とすることができる。」(本c)との記載がある。 そして、このことを具体的に裏付けるものとして、本件明細書の【0093】〜【0103】、【0129】、【表1】の実施例1〜5には、図2に示す平板翼を備えた攪拌機を用いて、エチレングリコールジグリシジルエーテルによる内部架橋を伴う<第1段目の重合反応>及び<第2段目の重合反応>を行い、<共沸蒸留による水分の除去、及びエチレングリコールジグリシジルエーテルによる表面架橋>及び<乾燥及び非晶質シリカの混合>を行うことにより、膨張維持率が98%以上で、且つ、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である吸水性樹脂粒子を製造でき、かかる吸水性樹脂が、加圧下吸収量に優れること、すなわち、上記の本件発明の課題を解決できることが記載されている(本c)。他方、同【0104】〜【0115】、【0129】、【表1】の比較例1〜4には、フッ素樹脂で表面処理された翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を備えた攪拌機を用い、実施例1〜5と製造条件を変えて吸水性樹脂粒子を製造した吸水性樹脂は、膨潤維持率として58%(比較例3)〜97%(比較例4)、DW10分値として6mL/g(比較例3)〜45mL/g(比較例2)を示し、いずれにおいても、加圧下吸収量に劣ること、すなわち本件発明の課題を解決できないことが示されている(本c)。 よって、本件発明6は、上記の発明の詳細な説明の記載により、当業者が、上記イで示した本件発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものと認められるので、本件発明6は、サポート要件を満たすものである。 エ.小括 以上のとおり、本件発明6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1(サポート要件)により取り消すことはできない。 (2)取消理由2(明確性要件)の検討 ア.明確性要件の考え方 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 イ.本件発明6の明確性要件の判断 本件訂正により、本件発明6の「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める方法」が、「加圧下での吸収量を488g以上に高める方法」であることが特定された。 当該特定により、取消理由通知書で指摘された「高める」ことを示す基準が、本件明細書の【0129】【表1】に記載された実施例3の吸収体が備える「加圧下での吸収量」以上であることが明確となった。 よって、本件発明6の「高める」という文言は、「488g以上」という文言と相俟って、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとは認められないので、本件発明6は、明確性要件を満たすものである。 ウ.小括 以上のとおり、本件発明6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由2(明確性要件)により取り消すことはできない。 (3)取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)の検討 ア.甲1を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲1製造例2発明及び甲1製造例23発明の対比 本件発明1と、甲1製造例2発明及び甲1製造例23発明(第5の2(1)。以下では、これらを総称して「甲1発明」ということがある。)をまとめて対比する。 甲1発明の単量体水溶液(b)(甲1製造例2発明)又は単量体水溶液(a)(甲1製造例23発明)に含まれている「ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)」は、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲1発明の「表面架橋剤溶液」に含まれる「エチレングリコールジグリシジルエーテル…エチレンカーボネート…プロピレングリコール」(甲1製造例2発明)又は「エチレングリコールジグリシジルエーテル…1,4−ブタンジオール…プロピレングリコール」(甲1製造例23発明)は、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲1発明の「アクリル酸」が「水酸化ナトリウム水溶液」より中和され、生成した「アクリル酸ナトリウム」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲1発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲1発明の「アクリル酸」と「アクリル酸ナトリウム」を重合し、架橋することにより生成する「粒子状吸水剤」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲1発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲1発明では、「粒子状吸水剤」の膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点1) で相違している。 (イ)相違点1の検討 甲17は、甲1の出願人である申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2021年(令和3年)1月21日又は5月17日に実験を行い、作成した甲1の製造例2、23を追試した実験成績証明書である。 甲17には、「3.実験日」として、本件特許の特許公報の発行日(2021年(令和3年)2月10日)より前 の「2021年1月21日」が記載されているが、特許公報の発行後の「2021年5月17日」も記載されているので、前者の実験日が記載されていることのみをもって、甲17の実験結果が信頼性を欠いているということはできない。 また、甲17の「5.実験の内容」の項には、「甲第1号証の製造例2(甲第1号証の[0563]〜[0565]… )および製造例23(甲第1号証の[0559]〜[0561]…)とほぼ同一の方法によって粒子状吸水剤を調製し、物性の測定を行った。」と記載され、甲17の「(5.1)〜(5.2)」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、粒子状吸水剤の特性が影響する程に、甲1の製造例2、23の記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない 。 加えて、甲17の「(5.3)」の「(測定結果1)」を参照すると、甲17の粒子状吸水剤(2)、(23)のCRC[g/g]、AAP[g/g]、SFC[10−7・cm (甲1の[0101]によるとcm3の誤記と認められる。)・s・g−1]、DRC5min[g/g]、重量平均粒子径[μm]は、いずれも、甲1の表3−1、3−3、4−1、4−2に記載された物性に近い数値であることから、甲17の粒子状吸水剤(2)、(23)は、甲1の製造例2、23で得られた粒子状吸水剤を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲17の「(5.3)」の「(測定結果2)」には、粒子状吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]が、粒子状吸水剤(2)が「平均値22.1mL」、粒子状吸水剤(23)が「平均値24.2mL」と記載されており、いずれも本件発明1の「V0が22.0mL以下」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点1は、本件発明1と甲1発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 なお、申立人は、令和4年3月4日付け意見書において、「本件明細書の[0126]には、「同様の測定を3回行い、純水の吸収による膨潤ゲルの体積V0[mL])を算出した。」と記載されているものの、3つの測定値の「平均値」を膨潤ゲルの体積V0[mL]とすることは明記されていない。また、本件発明1においても、前記「V0」が複数回の測定によって得られる複数の測定値の平均値であることは規定されていない。本件発明1における前記前記「V0」の測定値は、前述のとおり、測定による振れが生じるものである。よって、当業者は、前記振れが生じても、前記測定値が「22.0mL以下」の値を取ると解釈する。」と主張する(意見書の2頁20行〜3頁1行)。 しかし、複数の測定値が存する場合に、各々の測定において生じる測定誤差やサンプル間の物性によるばらつきを考慮して、複数の測定値の平均値を算出したものを実験結果として表示することは、当業者において一般的に行われていることであるし、申立人も上記の[0126]の「算出した」を、平均値を算出したものと解釈して、甲17の(測定結果2)で「V0」の平均値を表示しているものと解される。 よって、甲17の(測定結果2)において、粒子状吸水剤(2)の測定値の一つに「21.3mL」が表示されているからといって、3つの測定値の平均値である「22.1mL」を無視して、甲1製造例2発明が、本件発明1の「22.0mL以下」を満たしていると解することはできない。 したがって、申立人の上記主張は理由がない。 加えて、甲1には、粒子状吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]を低減させることを示唆する記載は見当たらないから、甲1の記載に基づき、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲1製造例2発明及び甲1製造例23発明、すなわち甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ.甲2を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲2発明の対比 本件発明1と、甲2発明(第5の2(2))を対比する。 甲2発明の「N,N’−メチレンビスアクリルアミド」は、「内部架橋剤」として作用するものであるから、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲2発明の「プロピレングリコール」、「プロピレングリコールジグリシジルエーテル」は、それぞれ、「第一表面架橋剤」、「第二表面架橋剤」として作用するものであるから、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲2発明の「アクリル酸」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲2発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲2発明の「アクリル酸」を重合し、架橋することにより生成する「吸収剤組成物」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲2発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲2発明では、「吸収剤組成物」の膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点2) で相違している。 (イ)相違点2の検討 甲18は、甲2の出願人である申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2021年(令和3年)3月1日〜3月2日又は5月17日に実験を行い、作成した甲2の実施例3を追試した実験成績証明書である。 甲18の「5.実験の内容」の項には、「以下のように、甲第2号証の実施例3(甲第2号証の[0108]〜[0112] と略同一の方法によって吸収剤組成物を調製し、物性の測定を行った。」と記載されており、甲18の「5.」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、吸収剤組成物の特性が影響する程に、甲2の実施例3に記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない。 加えて、甲18の「5.」の(測定結果1)を参照すると、甲18の吸収剤組成物の吸収倍率[g/g]、拡散吸収倍率[g/g]、拡散吸収指数[g/g・min]は、いずれも、甲2の表1に記載された実施例3の物性に近い数値であることから、甲18の吸収剤組成物は、甲2の実施例3で得られた吸収剤組成物を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲18の「(測定結果2)」には、粒子状吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]が「平均値25.0mL」と記載されており、本件発明1の「V0が22.0mL以下」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点2は、本件発明1と甲2発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 また、甲2には、粒子状吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]を低減させることを示唆する記載は見当たらないから、甲2の記載に基づき、相違点2として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとも認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲2発明、すなわち甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ.甲3を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲3発明の対比 本件発明1と、甲3発明(第5の2(3))を対比する。 甲3発明の「第1段目の逆相懸濁重合」と「第2段目の逆相懸濁重合」に使用される、「N,N’−メチレンビスアクリルアミド」は、「架橋剤」として作用するものであるから([0023])、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲3発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液」は、「第2段目の逆相懸濁重合」より後の「後架橋処理」で用いられるものであるから、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲3発明の「アクリル酸部分中和塩」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲3発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲3発明の「アクリル酸部分中和塩」を重合し、架橋することにより生成する「吸水性樹脂粒子」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲3発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲3発明では、「吸水性樹脂粒子」の膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点3) で相違している。 (イ)相違点3の検討 甲19は、申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2020年(令和2年)11月17日〜20日又は2021年(令和3年)5月17日に実験を行い、作成した甲3の実施例3を追試した実験成績証明書である。 甲19には、「3.実験日」として、本件特許の特許公報の発行日(2021年(令和3年)2月10日)より前 の「2020年11月17日〜11月20日」が記載されているが、特許公報の発行後の「2021年5月17日」も記載されているので、前者の実験日が記載されていることのみをもって、甲19の実験結果が信頼性を欠いているということはできない。 また、甲19の「5.実験の内容」の項には、「以下のように、甲第3号証の実施例3(甲第2号証(当審注:甲第3号証の誤記と認められる。)の段落[0049])とほぼ同一の方法によって吸収性樹脂粒子を調製し、物性の測定を行った。」と記載されており、甲19の「5.」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、吸水性樹脂粒子 の特性が影響する程に、甲3の実施例3に記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない。 加えて、甲19の「5.」の(測定結果1)を参照すると、甲19の吸収性樹脂粒子の水分率[%]、生理食塩水保水能[g/g]、吸水速度[sec]、加圧吸水能[g/g]、質量平均粒子径[μm]は、いずれも、甲3の表1に記載された実施例3の物性に近い数値であることから、甲19の吸収性樹脂粒子は、甲3の実施例3で得られた吸収性樹脂粒子を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲19の「(測定結果2)」には、粒子状吸水剤の生理食塩水に対する保水量[g/g]が、「31.5g/g」と記載されており、本件発明1の「生理食塩水に対する保水量が35g/g以上」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点3は、本件発明1と甲3発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 なお、申立人は、令和4年3月4日付け意見書において、甲3の[0024]の記載は、吸水性を向上させることは好ましいことであることを意味するところ、甲3には、実施例1、比較例1、2のように、実施例3よりも生理食塩水保水量、加圧吸水能が向上している例が開示されているから、甲3には、「加圧吸水能」を向上させるという課題を解決するために、「生理食塩水保水量」を35g/g以上とすることを阻害する事情は存在せず、むしろ、甲3に接した当業者は、前記課題を解決するために、「生理食塩水保水量」を、35g/g以上の高い値に調節して、「加圧吸水能」が向上した吸水性樹脂粒子を得ようとする旨を主張する(意見書の5頁10行〜6頁末行)。 しかるところ、甲3の[0009]からみて、甲3が解決しようとする課題は、「粉体流動性に優れ、粒子強度に優れ、機械的な衝撃を受けた後でも粒子径の保持率および加圧吸水能の保持率が高い吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体を提供すること」にあるところ、甲3の[0067][表1]によると、「生理食塩水保水量」が「37g/g」と最も高い比較例1の「加圧吸水能」が「23g/g」であるのに対し、実施例1では、「生理食塩水保水量」が「34g/g」でも、比較例1と同じ「23g/g」の「加圧吸水能」が得られているから、甲3には、「生理食塩水保水量」の増量が、必ずしも「加圧吸水能」の向上に寄与することが示されているとはいえず、したがって、甲3の記載より、「生理食塩水保水量」を35g/g以上に調節することが動機づけられるとはいえない。 また、甲3の[0067][表1]において、35g/g以上の「生理食塩水保水量」を満たすものは、比較例1、2の吸収性樹脂粒子のみであり、これらの樹脂粒子は、粒子衝突後の粒子径保持率、加水吸水能が低いため、甲3における上記課題を解決できないことからすると、加圧吸水能を向上させるという目的で、特に比較例1、2に着目して、甲3発明の吸収性樹脂粒子における生理食塩水保水量を35g/g以上に調節することが動機づけられるとはいえない。 してみると、申立人の上記主張は理由がないから、甲3の記載に基づき、相違点3として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲3発明、すなわち甲3に記載された発明ではなく、また、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲3に記載された発明ではなく、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ.甲4を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲4発明の対比 本件発明1と、甲4発明(第5の2(4))を対比する。 甲4発明の「モノマー水溶液」に使用される、「N,N’−メチレンビスアクリルアミド」は、「内部架橋剤」として作用するものであるから(【0033】〜【0034】)、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲4発明の「プロピレングリコール」、「エチレングリコールジグリシジルエーテル」、「1,4−ブタンジオール」は、「表面架橋剤」として用いられているものであるから、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲4発明の「アクリル酸ナトリウム」及び「アクリル酸」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲4発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲4発明の「アクリル酸ナトリウム」及び「アクリル酸」を重合し、架橋することにより生成する「粒子状吸水剤」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲4発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」 と規定しているのに対して、 甲4発明では、「粒子状吸水剤」の膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点4) で相違している。 (イ)相違点4の検討 甲20は、甲4の出願人である申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2021年(令和3年)3月4日〜3月5日又は5月17日に実験を行い、作成した甲4の実施例2を追試した実験成績証明書である。 甲20の「5.実験の内容」の項には、「以下のように、甲第4号証の実施例2(甲第4号証の段落[0155])とほぼ同一の方法によって粒子状吸水剤を調製し、物性の測定を行った。」と記載されており、甲20の「5.」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、粒子状吸水剤の特性が影響する程に、甲4の実施例2に記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない。 加えて、甲20の「5.」の(測定結果1)を参照すると、甲20の粒子状吸水剤の無加圧下吸収倍率[g/g]、1.9kPaでの加圧下吸収倍率[g/g]、吸収速度[sec]、吸湿ブロッキング率[%]、質量平均粒子径[μm]、対数標準偏差[σζ]は、甲4の表1、2に記載された実施例2の物性に近い数値であることから、甲20の粒子状吸水剤は、甲4の実施例2で得られた粒子状吸水剤を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲20の「(測定結果2)」には、粒子状吸水剤の膨張維持率(%)が「99%」、純水膨潤ゲル体積V0[mL]が「平均値22.5mL」と記載されており、本件発明1の「膨張維持率が101%以上」、「V0が22.0mL以下」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点4は、本件発明1と甲4発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 また、甲4には、粒子状吸水剤の膨張維持率(%)を増加させ、且つ、純水膨潤ゲル体積V0[mL]を低減させることを示唆する記載は見当たらないから、甲4の記載に基づき、相違点4として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明ではなく、また、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明ではなく、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ.甲5を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲5発明の対比 本件発明1と、甲5発明(第5の2(5))を対比する。 甲5発明の「単量体水溶液」に使用されている、「N、N−メチレンビスアクリルアミド」は、「内部架橋剤」として作用するものであるから([0074]〜「0075])、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲5発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」、「プロピレングリコール」は、「表面架橋剤溶液」に用いられているものであるから、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲5発明の「アクリル酸」及び水酸化ナトリウム水溶液より中和された「アクリル酸」のナトリウム塩は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲5発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲5発明の「アクリル酸」及び「アクリル酸」のナトリウム塩を重合し、架橋することにより生成する「吸水性樹脂」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲5発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」 と規定しているのに対して、 甲5発明では、「吸水性樹脂」の膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点5) で相違している。 (イ)相違点5の検討 甲21は、甲5の出願人である申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2021年(令和3年)4月19日〜23日又は5月17日に実験を行い、作成した甲5の実施例15を追試した実験成績証明書である。 甲21の「5.実験の内容」の項には、「以下のように、甲第5号証の実施例15(甲第5号証の段落[0237]〜[0247]、[0277]〜[0278]、[0292]、[0296]、[0300])とほぼ同一の方法によって、吸水性樹脂を調製し、物性の測定を行った。」と記載されており、甲21の「5.」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、吸水性樹脂の特性が影響する程に、甲5の実施例15に記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない。 加えて、甲21の「5.」の(測定結果1)を参照すると、甲21の吸水性樹脂のCRC[g/g]、AAP[g/g]、表面張力[%]は、甲5の表2に記載された実施例15の物性に近い数値であることから、甲21の粒子状吸水剤は、甲5の実施例15で得られた吸水性樹脂を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲21の「(測定結果2)」には、粒子状吸水剤の膨張維持率(%)が「99%」、純水膨潤ゲル体積V0[mL]が「平均値23.2mL」と記載されており、本件発明1の「膨張維持率が101%以上」、「V0が22.0mL以下」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点5は、本件発明1と甲5発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 また、甲5には、粒子状吸水剤の膨張維持率(%)を増加させ、且つ、純水膨潤ゲル体積V0[mL]を低減させることを示唆する記載は見当たらないから、甲5の記載に基づき、相違点5として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲5発明、すなわち甲5に記載された発明ではなく、また、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲5に記載された発明ではなく、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ.甲7を主引例とした本件発明1〜4の新規性、進歩性の欠如 (ア)本件発明1と甲7発明の対比 本件発明1と、甲7発明(第5の2(7))を対比する。 甲7発明の「単量体水溶液」に使用されている、「ポリエチレングリコールジアクリレート」は、「内部架橋剤」として作用するものであるから(【0038】〜【0039】)、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲7発明の「1,4−ブタンジオール」、「プロピレングリコール」は、「表面架橋剤」として用いられているものであるから、本件発明1の「表面架橋剤」に相当する。 甲7発明の「アクリル酸」及びNaOH水溶液より中和された「アクリル酸」のナトリウム塩は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体」に相当し、甲7発明は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」を満たしていると認められる。 甲7発明の「アクリル酸」及び「アクリル酸」のナトリウム塩を重合し、架橋することにより生成する「吸水剤」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲7発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」 と規定しているのに対して、 甲7発明では、「吸水剤」のCRCsが34.8g/g、AAPsが23.6g/gであるものの膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点6) で相違している。 (イ)相違点6の検討 甲22は、甲7の出願人である申立人(株式会社日本触媒)の従業員:松本智嗣が、2020年(令和2年)8月24日〜26日又は2021年(令和3年)7月28日〜30日に実験を行い、作成した甲7の実施例32を追試した実験成績証明書である。 甲22には、「3.実験日」として、本件特許の特許公報の発行日(2021年(令和3年)2月10日)より前の「2020年8月24日〜26日」が記載されているが、特許公報の発行後の「2021年7月28日〜30日」も記載されているので、前者の実験日が記載されていることのみをもって、甲22の実験結果が信頼性を欠いているということはできない。 また、甲22の「5.実験の内容」の項には、「以下のように、甲第7号証の実施例32(甲第7号証の段落[0282])と同一の方法によって、粒子状吸水剤を調製し、物性の測定を行った。」と記載されており、甲22の「5.」に記載された実験の製造方法及び製造条件を見ても、粒子状吸水剤の特性が影響する程に、甲7の実施例32に記載のものと異なる条件を設定して実験が行われたものとは解せない。 加えて、甲22の「5.」の(測定結果1)を参照すると、甲22の吸水剤のCRCs[g/g]、SFC[10−7・cm3・s・g−1]、AAP[g/g]が、甲7の表14、15に記載された実施例32の物性に近い数値であることから、甲22の吸水剤は、甲7の実施例32で得られた吸水剤を、忠実に再現したものであると認められる。 ここで、甲22の「(測定結果2)」には、吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]が「平均値24.8mL」と記載されており、本件発明1の「V0が22.0mL以下」という発明特定事項を満たさないものとなっている。 そうすると、相違点6は、本件発明1と甲7発明を区別する実質的な相違点というべきものである。 また、甲7には、吸水剤の純水膨潤ゲル体積V0[mL]を低減させることを示唆する記載は見当たらないから、甲7の記載に基づき、相違点6として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとも認められない。 (ウ)小括 以上のとおり、本件発明1は、甲7発明、すなわち甲7に記載された発明ではなく、また、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜4についても、本件発明1と同様の理由により、甲7に記載された発明ではなく、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 キ.取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)の検討のまとめ 以上のとおり、本件発明1〜4に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由3(新規性)、4(進歩性)により取り消すことはできない。 4.取消理由通知書で採用しなかった申立理由の検討 (1)取消理由通知書で採用しなかった申立理由 申立理由1(新規性)のうち、本件発明1〜4について、甲1〜5、7を主引例とし、甲17〜22の実験成績証明書に基づくものは取消理由3(新規性)、4(進歩性)と同じである。 なお、申立人は、甲17、甲22及び参考資料1の実験成績証明書を参酌すると、本件発明6は、甲1、3、7のいずれかに記載されている発明である旨を主張する(申立書の48頁11頁〜14頁、同67頁15行〜18行、及び令和4年3月4日付け意見書(申立人)の8頁4行〜9頁7行)。 しかし、甲1、3、7には、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めること」と「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすること」とを技術手段として含む「架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法」が記載されているとは認められないので、本件発明6が、甲1、3、7に記載されているとはいえない。 よって、申立人の上記主張は、理由がない。 申立理由3(サポート要件)イは、取消理由1(サポート要件)と同じである。 申立理由5(明確性要件)が対象とする、訂正前本件発明6の「吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める」との文言は、方法発明の発明特定事項(構成)と認められるところ、「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を高める」との文言および「加圧下での吸収量を高める」との文言の意味が不明確であるとの理由は、取消理由2(明確性要件)と同趣旨のものと認められる。 よって、取消理由通知で採用しなかった、甲17〜22の実験成績証明書に基づかない申立理由1(新規性)、2(進歩性)、3(サポート要件)ア、4(実施可能要件)について、以下で検討する。 事案に鑑み、申立理由3(サポート要件)ア、4(実施可能要件)の検討を優先する。 (2)申立理由3(サポート要件)アの検討 上記の3(1)イで示されるとおり、本件発明は、「吸収体の加圧下での吸収量を高めることのできる吸水性樹脂粒子を提供する」ことを課題としたものと認められるところ(本a)、本件明細書【0017】【0090】には、「無加圧DWの10分値が40mL/g以上である」こと、「膨張維持率を所定の値(例えば98%)以上とする」ことにより、吸収体の加圧下での吸収量が高められることが記載され、更に、同【0129】、【表1】によれば、膨張維持率が98%以上で、且つ、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である吸水性樹脂粒子が加圧下吸収量に優れることが実験結果により具体的に裏付けられているから、本件発明1〜6は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が、上記の課題を解決できると認識し得る範囲のものと認められる。 これに対して、申立人は、保水能(CRC)および荷重下吸収量(AAP)、さらには通液性および加圧下における吸水速度による特定が、上記課題の解決に必要である旨を主張する(申立書の103頁下から3行〜104頁7行)。 しかし、上記課題の解決において、保水能(CRC)、荷重下吸収量(AAP)、通液性、加圧下における吸水速度の全ての特定が必要であることを窺わせる本件特許の出願時の技術常識等を示す証拠は何ら提示されてない。 また、「無加圧DW」及び「膨張維持率」が、本件発明1、5、6の条件を満たす場合に、保水能(CRC)、荷重下吸収量(AAP)、通液性、加圧下における吸水速度が所定の値を示さない場合があることを窺わせる本件特許の出願時の技術常識や客観的資料は何ら提示されていない。 そうすると、申立人の主張により、本件発明1〜6が、サポート要件に違反しているとは認められないから、申立理由3(サポート要件)アは、理由がない。 (3)申立理由4(実施可能要件)の検討 ア.実施可能要件の考え方 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。 イ.本件発明6の実施可能要件の判断 本件明細書の【0015】には、「98%以上の膨張維持率を有する吸水性樹脂粒子を得る方法としては、吸水性樹脂粒子の硬さの均一性を高めることが挙げられる。」(本b)、同【0058】には、「攪拌翼として平板翼を用いると、形成される重合体粒子における重合体の架橋の均一性が高くなる傾向がある。架橋の均一性が高いと、吸水性樹脂粒子の硬さの均一性が高くなる。硬さの均一性の高い吸水性樹脂粒子は、98%以上の膨張維持率を示し易い。」(本b)、及び、同【0090】には、「吸水性樹脂粒子の製造条件を、吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性が高くなるように選択することによっても、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を所定の値(例えば98%)以上とすることができる。吸水性樹脂粒子中の架橋の均一性を高める方法の例としては、重合反応時の攪拌翼として平板翼を用いること、攪拌の回転数を適切な範囲に選択すること、熱の供与および除去がしやすい条件を採ること(例えば炭化水素分散媒中での反応)、適度に反応性の高い架橋剤を用いることなどが挙げられる。」(本b)との記載がある。 以上の記載より、98%以上の膨張維持率を示す吸水性樹脂粒子を製造するには、架橋の均一性を高くするために必要な、重合反応時の攪拌翼として平板翼を用いること、攪拌の回転数を適切な範囲に選択すること、熱の供与および除去がしやすい条件を採ること(例えば炭化水素分散媒中での反応)、適度に反応性の高い架橋剤を用いることなどが、必要であることを当業者は理解できる。 また、本件明細書の【0093】〜【0103】、【0129】、【表1】の実施例1〜5には、図2に示す平板翼を備えた攪拌機を用い、エチレングリコールジグリシジルエーテルによる内部架橋を伴う<第1段目の重合反応>を攪拌機の回転数425rpmにて行い、<第2段目の重合反応>を攪拌機の回転数650rpmにて行い、<共沸蒸留による水分の除去、及びエチレングリコールジグリシジルエーテルによる表面架橋>、及び<乾燥及び非晶質シリカの混合>を行うことにより、膨張維持率が98%以上、無加圧DWの10分値が40mL/g以上、加圧下吸収量が488g以上である吸水性樹脂粒子が製造できることが具体的にされている。 そうすると、本件発明6を実施する際に、当業者に過度の試行錯誤、実験を要するものとは認められない。 ウ.小括 以上のとおりであるから、本件発明6は実施可能要件を満たすものであるから、申立理由4(実施可能要件)は、理由がない。 (4)申立理由1(新規性)の検討 ア.甲1発明を主引例とした本件発明1〜6の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)アで示したとおり、本件発明1と甲1発明は、相違点1において相違している。 申立人は、申立書において、本件発明1の膨張維持率に関する発明特定事項を構成要件D、無加圧DWの10分値に関する発明特定事項を構成要件Eと称して、以下のa〜cの指摘を前提において、本件発明1は、甲1に実質的に開示されている旨を主張している。 a.一般的な表面架橋された吸水性樹脂粒子は、純水中でも生理食塩水中でも均一に膨潤するため、本来100%程度の前記「膨張維持率」を示すものである。従って、構成要件Dは、ごく一般的な表面架橋された吸水性樹脂粒子が内在する特性である(申立書の44頁21行〜45頁13行)。 b.甲1に開示された粒子状吸水剤は、「水溶液重合」を利用して製造された吸水性樹脂粒子であり得([0238])、「水溶液重合」 においては、そもそも、攪拌翼の違いによる問題は起こりえないし、均一に混合されたモノマーを重合するため重合体の架橋の均一性が高くなり、その粉砕物もまた均一な架橋構造を有するから、甲1に開示された吸水性樹脂粒子の膨張維持率が98%以上であることは自明である(申立書の46頁1〜7行)。 c. 甲1に記載の粒子状吸水剤は、[0045]、[0316]によると、DRC5minの値が40g/g以上である吸性樹脂粒子であり得、DRC5minが、5分間での無加圧下での吸水倍率であること、および、生理食塩水の比重がおよそ1g/mlであることを考慮すると、甲1に記載の粒子状吸水剤は、構成要件Eを充足し得ることが理解できる(申立書の44頁15〜20行)。 しかるところ、本件明細書の【0129】【表1】をみると、比較例1〜4の「膨張維持率」は、58〜97%の広範な値を採り得ることが記載されているから、膨張維持率が98%又は101%がごく一般的な表面架橋された吸水性樹脂粒子が内在する特性であるとはいえない。 また、「水溶液重合」を利用して製造された吸水性樹脂粒子が、その重合条件に関わらず、98%又は101%を下回る膨張維持率を示さないと認めるに足りる、具体的な証拠を申立人は提示していないから、膨張維持率が98%又は101%が、「水溶液重合」を利用して製造された吸水性樹脂粒子が有する特性であると解することはできない。 したがって、申立人の指摘a、bは、いずれも技術的裏付けが乏しいものである。 一方、甲1の[0474]〜[0477]に記載されている「DRC5分値」(DRC5min)と本件明細書の【0121】〜【0124】(本c)に記載される「無加圧DWの10分値」は、測定方法や測定条件が異なるものであり、「DRC5分値」が「無加圧DWの10分値」に換算し得ることを示す証拠も申立人より提示されていないから、甲1を参照しても、甲1発明の粒子状吸水剤が無加圧DWの10分値について40mL/g以上を満たしていることは理解できない。 したがって、申立人の指摘cも技術的裏付けが乏しいものである。 更に、甲1には、甲1発明の粒子状吸水剤が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 以上からすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲1に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜6の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5、6は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲1には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」、本件発明6に含まれる「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めること」と「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすること」とを技術手段として含む「架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法」が記載されていないので、本件発明5、6が甲1に実質的に開示されているとはいえない。 イ.甲2発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)イで示したとおり、本件発明1と甲2発明は、相違点2において相違している。 申立人は、上記ア(ア)で述べたa及びbの指摘(申立書の49頁20行〜50頁3行)に加え、下記dの指摘(申立書の49頁7〜16行)を前提において、本件発明1は、甲2に実質的に開示されている旨を主張している。 d.甲2に記載の吸収剤組成物(吸水性樹脂粒子)は、吸水性能に優れることが理解でき、20g/cm3(甲2の記載より「20g/cm2」の誤記と認められる。)荷重下における、生理食塩水に接してから10分後の吸水量が30g/g以上であり得、一般的な吸水性樹脂粒子において、加圧下における吸水量よりも、無加圧下における吸水量の方が多くなると考えられるから、甲2に記載の吸収剤組成物は、構成要件Eを充足すると考えられる。 しかるところ、申立人の指摘a、bは、技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)で述べたとおりである。 一方、甲2の【0075】〜【0083】に記載されている「20g/cm2の荷重下」の吸水量と本件明細書の【0121】〜【0124】(本c)に記載される「無加圧DWの10分値」は、測定方法や測定条件が異なるものであるし、そもそも、甲2には、生理食塩水に接してから10分後の吸水量が30g/g以上であることを示す記載もないから、甲2を参照しても、甲2発明の吸収剤組成物が、無加圧DWの10分値について40mL/g以上を満たしていることを理解できない。 したがって、申立人の指摘dも技術的裏付けが乏しいものである。 更に、甲2には、甲2発明の吸収剤組成物が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 以上からすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲2に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲2には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲2に実質的に開示されているとはいえない。 ウ.甲3発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)ウで示したとおり、本件発明1と甲3発明は、相違点3において相違している。 申立人は、申立書において、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の52頁19行〜23行)に加え、下記eの指摘(申立書の52頁11〜18行)を前提において、本件発明1は、甲3に実質的に開示されていると主張する。 e.甲3に記載の吸水性樹脂粒子は、吸水速度等の吸水性能に優れることが理解でき、吸水速度を表すパラメータである、本件発明1の「無加圧DWの10分値」も大きな値となると考えられ、甲3に記載の吸水性樹脂粒子は、「無加圧DWの10分値」が40mL/g以上である蓋然性が高い。 しかるところ、申立人の指摘aは技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)で述べたとおりである。 一方、吸水速度等の吸水性能に優れる吸水性樹脂粒子が、その程度に関わらず、通常、無加圧DWの10分値において40mL/g以上であることを示す証拠は提示されてないから、甲3を参照しても、甲3発明の吸水性樹脂粒子が、無加圧DWの10分値について40mL/g以上を満たしていることを理解できない。 したがって、申立人の指摘eも技術的裏付けが乏しいものである。 更に、甲3には、甲3発明の吸水性樹脂粒子が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 以上からすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲3に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲3には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲3に実質的に開示されているとはいえない。 エ.甲4発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)エで示したとおり、本件発明1と甲4発明は、相違点4において相違している。 申立人は、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の55頁12行〜16行)、上記ウ(ア)で述べたeの指摘(申立書の55頁4行〜8行)に加え、下記の指摘f(申立書の55頁17〜21行)を前提において、本件発明1は、甲4に実質的に開示されていると主張する。 f.甲4に記載の粒子状吸水剤は、例えば、圧力を加えた際の戻り量が少ないことから、 「加圧下における吸収体の吸収量を高める」という本件発明の課題を解決していることが理解でき、このことからも、甲4に記載の粒子状吸水剤は、構成要件DおよびEを充足する蓋然性が高い。 しかるところ、申立人の指摘a、eは技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)、上記ウ(ア)で述べたとおりである。 一方、圧力を加えた際の戻り量が少ない粒子状吸水剤が、通常、その戻り量の程度に関わらず、無加圧DWの10分値において40mL/g以上であること、膨張維持率が98%以上であることを示す証拠は提示されてないから、甲4を参照しても、甲4発明の粒子状吸水剤が、無加圧DWの10分値が40mL/g以上、膨張維持率が98%以上を満たしていることを理解できない。 更に、甲4には、甲4発明の粒子状吸水剤が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 したがって、申立人の指摘fも技術的裏付けが乏しいものである。 以上からすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲4に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲4に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲4には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲4に実質的に開示されているとはいえない。 オ.甲5発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)オで示したとおり、本件発明1と甲5発明は、相違点5において相違している。 申立人は、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の58頁9行〜13行)、上記エ(ア)で述べたfの指摘(申立書の58頁14行〜17行)、下記の指摘g(申立書の57頁末行〜58頁5行)を前提において、本件発明1は、甲5に実質的に開示されていると主張する。 g.吸水性樹脂の吸水速度は粒子径に依存し、粒子径が小さいほど、吸水速度に優れることは技術常識であるから、微小な一次粒子径を有する甲5に記載の吸水性樹脂は、吸水速度に優れることが理解でき、吸水速度を表すパラメータである、「無加圧DWの10分値」も大きな値となると考えられ、甲5に記載の吸水性樹脂は、構成要件Eを充足する蓋然性が高い。 しかるところ、申立人の指摘a、fは技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)、上記エ(ア)で述べたとおりである。 一方、微小な一次粒子径を有する吸水性樹脂が、通常、微小の程度に関わりなく、無加圧DWの10分値において40mL/g以上を満たすことを示す証拠は提示されてないから、甲5を参照しても、甲5発明の吸水性樹脂が、無加圧DWの10分値について40mL/g以上を満たしていることを理解できない。 したがって、申立人の指摘gも技術的裏付けが乏しいものである。 更に、甲5には、甲5発明の吸水性樹脂が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 以上からすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲5に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲5に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲5には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲5に実質的に開示されているとはいえない。 カ.甲6発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 甲6発明(第5の2(6))の「架橋剤(ペンタエリスリトールトリアリルエーテル)」、「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「内部架橋剤」、「表面架橋剤」に相当する。 甲6発明の「吸収性樹脂粒子」は、「水溶性ビニルモノマー(アクリル酸)」を重合し、「48.5%水酸化ナトリウム水溶液」で中和、架橋して得られるものであるから、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 甲6発明の「M4(DW法による10分後の吸収量)が52ml/g」は、本件発明1の「無加圧DWの10分値が40mL/g以上」である点で一致する。 以上からすると、本件発明1と甲6発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲6発明では、「粒子状吸水剤」の膨張維持率、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点7) で相違している。 (イ)相違点7の検討 申立人は、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の61頁1行〜5行)及びbの指摘(申立書の61頁6行〜10行)を前提において、甲6発明の「吸収性樹脂粒子」の膨張維持率が98%以上であると主張する。 しかるところ、申立人の指摘a、bは、技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)で述べたとおりである。 また、甲6には、甲6発明の吸収性樹脂粒子が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 そうすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲6に実質的に開示されているとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲6に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲6には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲6に実質的に開示されているとはいえない。 キ.甲7発明を主引例とした本件発明1〜6の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 上記の3(3)カで示したとおり、本件発明1と甲7発明は、相違点6において相違している。 申立人は、申立書において、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の63頁下から2行〜64頁3行)及びbの指摘(申立書の64頁4行〜8行)、上記ウ(ア)で述べたeの指摘(申立書の63頁19行〜22行)に加え、下記の指摘h(申立書の63頁10行〜22行)、下記の指摘i(申立書の64頁15行〜65頁6行)を前提において、本件発明1は、甲7に実質的に開示されていると主張する。 h.甲7に記載の吸水剤( 吸水性樹脂粒子)は、無加圧下の吸水倍率CRCsが十分高く、また、吸収量および液の取り込み速度に優れることが理解でき、CRCsが本件明細書の【0019】に記載の「生理食塩水に対する保水量」の好ましい数値範囲と重複し、AAPsの値(20g/g以上)も本件明細書の【0018】に記載の4.14kPa加圧下での吸水量の数値範囲と重複する。構成要件Eは、吸水速度を表し、かつ、無加圧下にて、生理食塩水と接してから10分後の吸収量にて規定されるから、甲7に記載の吸水剤では、「無加圧DWの10分値」も大きな値となると考えられる。 i.甲7には、「生理食塩水を吸水させた際の吸水倍率/純水を吸水させた際の吸水倍率(重量比)」が100%に近い方が好ましいことが開示されていると言え、また、甲7に記載の吸水性剤の化学架橋指数が1000に近い値であることの技術的意義は、本件発明1の膨張維持率を98%以上に制御することと同様である。 しかるところ、申立人の指摘a、b、eは技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)、ウ(ア)で述べたとおりである。 また、本件明細書の【0018】、【0019】には、「4.14kPa加圧下での吸水量」、「生理食塩水に対する保水量」について、多数の上限値、下限値が記載されているから、これらの記載より本件発明1の好ましい数値範囲がどの程度か特定することはできないし、これらと「無加圧DWの10分値」との関係も本件明細書で明らかでないなので、「4.14kPa加圧下での吸水量」、「生理食塩水に対する保水量」とAAPs、CRCsが、何らかの関係を有するとしても、CRCsが34.8g/g、AAPsが23.6g/gである甲7発明の吸水剤が、無加圧DWの10分値において40mL/g以上を示すとは認められない。 したがって、申立人の指摘hも技術的裏付けが乏しいものである。 加えて、甲7の請求項1によると、化学架橋指数は、CRCs(0.9重量%食塩水の吸収倍率)とCRCdw(純水の吸収倍率)より算出され、本件発明1の膨張維持率はV1(生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積)、V0(純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積)より算出されるところ、CRCs及びCRCdw(甲7の【0164】〜【0168】)とV1及びV0(本件明細書の【0126】)の測定方法、測定条件は大きく異なり、同じ特性を表す測定値あるとはいえないから、化学架橋指数が1000に近い値であることが、膨張維持率を98%以上に制御することと同様であるとは認められない。 したがって、申立人の指摘iも技術的裏付けが乏しいものである。 また、甲7には、甲7発明の吸水剤が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 そうすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲7に実質的に開示されているとはいえない。 (イ)本件発明2〜6の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲7に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5、6は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲7には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」、本件発明6に含まれる「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めること」と「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすること」とを技術手段として含む「架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法」が記載されていないので、本件発明5、6が甲7に実質的に開示されているとはいえない。 ク.甲8発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 甲8発明(第5の2(8))の「ポリエチレングリコールジアクリレート」、「エチレングリコール」及び「プロピレングリコール」は、本件発明1の「内部架橋剤」、「表面架橋剤」に相当する。 甲8発明の「アクリル酸」と「水酸化ナトリウム水溶液」を含む単量体水溶液は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲8発明の上記単量体水溶液を重合して得られる「架橋重合体」を含む「吸水剤」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲8発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲8発明では、耐塩性指数(CRCdw/CRCs)が5.51であるものの、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点8) で相違している。 (イ)相違点8の検討 申立人は、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の68頁19行〜23行)及びbの指摘(申立書の68頁下から3行〜69頁2行)、上記ウ(ア)で述べたeの指摘(申立書の68頁13行〜18行)、及び、下記jの指摘(申立書の69頁6行〜19行)を前提において、本件発明1は、甲8に実質的に開示されていると主張する。 j.吸水倍率の差が小さい方が膨張のしやすさが近いため、同一膨潤倍率に揃えたときに体積差が小さくなると考えられ、「耐塩性指数」が、1.0または1.0を僅かに超える値であることの技術的意義は、膨張維持率を98%以上に制御することと同様である。加えて、吸収倍率 (重量)に関する「耐塩性指数」を、体積比に関する「膨張維持率」に置き換えることは、当業者にとって容易である。 しかるところ、申立人の指摘a、b、eが、技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)、ウ(ア)で述べたとおりである。 一方、甲8発明の耐塩性指数は5.51であって、1を遙かに超えるものであるから、指摘jはそもそも考慮に値しないし、申立書の69頁下から6行〜5行の指摘とは異なり、甲8発明が均一な架橋構造を備えることは甲8に明記されていない。 もっとも、甲8の請求項1によると、耐塩性指数は、CRCs(0.9重量%食塩水の吸収倍率)とCRCdw(純水の吸収倍率)より算出され、本件発明1の膨張維持率はV1(生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積)、V0(純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積)より算出されるところ、CRCs及びCRCdw(甲8の[0248])とV1及びV0(本件明細書の【0126】)(本c)の測定方法、測定条件は大きく異なり、同じ特性を表す測定値であるとはいえないから、耐塩性指数が、1.0または1.0を僅かに超える値であることの技術的意義が、膨張維持率を98%以上に制御することと同様であるとは認められないし、耐塩性指数を膨張維持率に置き換えることが当業者にとって容易であるともいえない。 したがって、申立人の指摘jも技術的裏付けが乏しいものである。 また、甲8には、甲8発明の吸水剤が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 そうすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲8に実質的に開示されているとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲8に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲8には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲8に実質的に開示されているとはいえない。 ケ.甲15発明を主引例とした本件発明1〜5の新規性の検討 (ア)本件発明1の新規性の検討 甲15発明(第5の2(15))の「ポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)」、「エチレングリコールジグリシジルエーテル」及び「プロピレングリコール」は、本件発明1の本件発明1の「内部架橋剤」、「表面架橋剤」に相当する。 甲15発明の「アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の33質量%水溶液」を「溶解させた反応液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲15発明の上記反応液を重合して得られる「表面架橋された吸水性樹脂」を含む「吸水剤」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲15発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲15発明では、「吸水剤」のゲル嵩密度が0.97g/cm3、加圧下浸透依存吸収倍率(PDAUP)が14.0g/gであるものの、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点9) で相違している。 (イ)相違点9の検討 申立人は、上記ア(ア)で述べたaの指摘(申立書の72頁1行〜5行)及びbの指摘(申立書の72頁6行〜72頁10行)、上記ウ(ア)で述べたeの指摘(申立書の71頁20行〜24行)に加え、下記のkの指摘(申立書の32頁下から7行〜下から3行、72頁11行〜17行)を前提において、本件発明1は、甲15に実質的に開示されていると主張する。 k.甲15に記載の吸水性樹脂粒子は、[0090]によると、加圧下における液の吸収が不均一となることが防止されていると考えられ、加圧下における液の吸収が不均一となることは、吸水性樹脂粒子の架橋構造が不均一であり、その硬さが不均一となっていることに起因すると考えられるから、甲15に記載の吸水性樹脂粒子の架橋構造は均一であり、吸水性樹脂粒子の「膨張維持率」は、98%以上の高い値になると考えられる。 しかるところ、申立人の指摘a、b、eが、技術的裏付けが乏しいものであり、採用に値しないことは、上記ア(ア)、ウ(ア)で述べたとおりである。 一方、甲15発明の吸水剤が、架橋構造において均一であることは、甲15の[0090]や他の記載箇所を参照しても、何ら記載されていないし、加圧下における液の吸収が不均一となることが防止されている場合に、その程度に関わりなく、通常、膨張維持率が98%以上の高い値になることも多くの仮定を前提にした推論に過ぎないといえる。 したがって、申立人の指摘kも技術的裏付けが乏しいものである。 また、甲15には、甲15発明の吸水剤が、生理食塩水に対する保水量について35g/g以上を満たすことも記載されていない。 そうすると、申立人が主張する理由により、本件発明1が甲15に実質的に開示されているとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の新規性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲15に実質的に開示されているとはいえない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものであるとともに、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲15に実質的に開示されているとはいえない。 コ.小括 以上のとおりであるから、申立理由1(新規性)は、いずれも理由がない。 (5)申立理由2(進歩性)の検討 ア.甲6と甲15の組み合わせによる本件発明3の進歩性の検討 申立人は、本件発明1、2が甲6に実質的に開示されていることを前提として、本件発明3は、甲6と甲15の組み合わせに基づいて当業者が容易に想到することができたと主張する(申立書の77頁11行〜78頁3行)。 しかし、本件発明1、2が、甲6に実質的に開示されたものでないことは、上記の4(4)カで述べたとおりなので、申立人の上記主張は理由がない。 イ.甲8と甲15の組み合わせによる本件発明3の進歩性の検討 申立人は、本件発明1、2が甲8に実質的に開示されていることを前提として、本件発明3は、甲8と甲15の組み合わせに基づいて当業者が容易に想到することができたと主張する(申立書の78頁4行〜78頁下から3行)。 しかし、本件発明1、2が、甲8に実質的に開示されたものでないことは、上記の4(4)クで述べたとおりなので、申立人の上記主張は理由がない。 ウ.甲5と甲16の組み合わせによる本件発明4の進歩性の検討 申立人は、本件発明1が甲5に実質的に開示されていることを前提として、本件発明4は、甲5と甲16の組み合わせに基づいて当業者が容易に想到することができたと主張する(申立書の74頁下から6行〜75頁16行)。 しかし、本件発明1が、甲5に実質的に開示されたものでないことは、上記の3(3)オ、4(4)オで述べたとおりなので、申立人の上記主張は理由がない。 エ.甲6と甲16の組み合わせによる本件発明4の進歩性の検討 申立人は、本件発明1が甲6に実質的に開示されていることを前提として、本件発明4は、甲6と甲16の組み合わせに基づいて当業者が容易に想到することができたと主張する(申立書の75頁17行〜76頁11行)。 しかし、本件発明1が、甲6に実質的に開示されたものでないことは、上記の4(4)カで述べたとおりなので、申立人の上記主張は理由がない。 オ.甲8による本件発明6の進歩性の検討 申立人は、甲8の記載に基づき本件発明6を容易に想到できると主張する(申立書の76頁12行〜77頁10行)。 しかし、本件発明6は、本件訂正により膨張維持率、無加圧DWの10分値を発明特定事項とするものになったところ、甲8には、上記4(4)クでも検討したとおり、膨張維持率を98%以上とすること、無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすることが開示されておらず、本件発明6に含まれる「吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めること」と「吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすること」とを技術手段として含む「架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法」も記載されていないので、甲8の記載に基づき本件発明6を当業者が容易に想到できたとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は理由がない。 カ.甲9と甲10〜14のうちのいずれかとの組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲9発明の対比 甲9発明(第5の2(9))の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「内部架橋剤」及び「表面架橋剤」に相当する。 甲9発明の「アクリル酸水溶液」、「水酸化ナトリウム水溶液」を含む「単量体水溶液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲9発明の上記単量体水溶液を重合して得られる「吸水性樹脂組成物」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 甲9発明の「吸水性樹脂組成物」は、無加圧DWの5分値が61mL/g、無加圧DWの60分値が70mL/gであるから、本件発明1の「無加圧DWの10分値が40mL/g以上」を満たすといえる。 甲9発明の「生理食塩水保水能が42g/g」は、本件発明1の「生理食塩水に対する保水量が35g/g以上」を満たすといえる。 以上からすると、本件発明1と甲9発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上である、吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲9発明では、「吸水性樹脂組成物」の膨張維持率及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点10) で相違している。 (イ)相違点10の検討 相違点10について検討するに、甲10〜甲14には、第5の2(10)〜(14)で示した発明が記載されている。 特に重合装置に着目すると、甲10には「回転軸の上部に、前記回転軸から水平に延びる水平部材と前記水平部材から直角方向に延びる部材とからなる格子翼を装着」した重合槽、甲11には、「撹拌軸のボトムパドルより上位部分にアーム部分と該アーム部分と直角方向に延びるストリップから構成される格子翼を装着」した重合反応器、甲12、13には、平板翼(翼径/槽径=0.8,翼高/槽径=0.8)を設置した撹拌機を付設」した「縦型円筒状の四つ口フラスコ」、甲14には、「略水平方向に延びる回転軸部と、当該回転軸部に取り付けられた攪拌翼と、を備える連続凝集装置」が、それぞれ記載されているが、これらの重合装置を用いれば、吸水性樹脂の膨張維持率が101%以上や98%以上となることは、甲10〜14のいずれにも記載乃至示唆されていない。また、このことが本件特許の優先日における技術常識であるとも認められない。 加えて、甲15においても、上記の重合装置を用いることで、吸水性樹脂の膨張維持率が101%以上や98%以上となることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲9発明に甲10〜14に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点10として挙げた本件発明1の発明特定事項を当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ここで、申立人は、「甲第9号証の実施例において、撹拌翼として「平板翼」を採用した場合、得られる吸水性樹脂粒子は、本件明細書に記載の実施例にて製造された吸水性樹脂粒子と同様に、前記「膨張維持率」および前記「無加圧DWの10分値」が、それぞれ構成要件Dおよび構成要件Eを充足すると考えられる。よって、甲第9号証と甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第13号証および甲第14号証のうちの何れかとの組み合わせに基づいて、構成要件DおよびEを充足する吸水性樹脂粒子を容易に製造することができる。」と主張する(申立書の80頁17行〜23行)。 しかるところ、甲9発明で、甲10〜14に記載される上記の重合装置を使用することを動機づける記載は、甲9〜14に皆無であるし、仮に甲9発明で甲10〜14の重合装置を当業者が採用し得たとしても、膨張維持率が必ずしも101%又は98%以上になったり、V0が22.0mL以下になったりするとは限らないといえる。 したがって、いずれにしても申立人の主張は採用できない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲9発明に甲10〜15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲9や甲10〜15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が、甲9発明に甲10〜15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 キ.甲10と甲9の組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲10発明の対比 甲10発明(第5の2(10))の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲10発明の「アクリル酸」、「水酸化ナトリウム」より調製した「水溶液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲10発明の上記単量体水溶液を重合して得られる「吸水性樹脂」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲10発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲10発明では、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点11) 本件発明1では、「架橋重合体」が表面架橋剤によって架橋されているのに対して、 甲10発明では、表面架橋剤が用いられていない点(相違点12) で相違している。 (イ)相違点11の検討 相違点11について検討するに、甲9には、第5の2(9)で示した発明が記載されているところ、甲9を子細にみても、吸水性樹脂の膨張維持率が101%以上や98%以上とすることは記載も示唆もされていない。 また、甲15においても、膨張維持率が98%以上である吸水性樹脂を得ることは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲9及び甲15を参照しても、相違点11として挙げた本件発明1の発明特定事項に想到することはできないので、相違点12について検討するまでもなく、本件発明1は、甲10発明に甲9に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、申立人は、下記lの指摘(申立書の84頁8行〜15行)を前提にして、当業者において、甲10と甲9との組み合わせに基づいて、構成要件A〜Eに容易に想到することができると主張する。 l.当業者であれば、甲10に記載の逆懸濁重合を含む方法によって得られる吸水性樹脂紛体に対して、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用して表面架橋を行うことは容易である。したがって甲10に記載の逆懸濁重合を含む方法によって得られる吸水性樹脂紛体に対して、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用し表面架橋を行うことによって得られた吸水性樹脂粒子は、前記「膨張維持率」が、構成要件Dを充足する蓋然性が高い。 しかしながら、甲10、甲9、甲15には、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを使用して表面架橋を行えば、吸水性樹脂の膨張維持率が101%以上や98%以上となることについて、記載も示唆もされていないから、上記lの指摘は技術的裏付けが乏しいものである。 そうすると、申立人が主張する理由により、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲10発明に甲9及び甲15に記載れた事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲10、甲9、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が甲10発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 ク.甲11と甲9の組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲11発明の対比 甲11発明(第5の2(11))の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲11発明の「アクリル酸水溶液」、「水酸化ナトリウム水溶液」より調製した「モノマー水溶液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲11発明の上記モノマー水溶液を重合して得られる「高吸水性樹脂」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲11発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲11発明では、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点13) 本件発明1では、「架橋重合体」が表面架橋剤によって架橋されているのに対して、 甲11発明では、表面架橋剤が用いられていない点(相違点14) で相違している。 (イ)相違点13の検討 相違点13は相違点11と同じであるから、上記キ(イ)で述べたものと同じ理由により、甲9及び甲15を参照しても、相違点13として挙げた本件発明1の発明特定事項に想到することはできない。 よって、相違点14について検討するまでもなく、本件発明1は、甲11発明に甲9に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、申立人は、上記キ(イ)で述べたlの指摘を前提にして(申立書の88頁8行〜15行)、当業者において、甲11と甲9との組み合わせに基づいて、構成要件A〜Eに容易に想到することができると主張するが、キ(イ)で述べたとおり、指摘lは技術的裏付けが乏しいものであり、申立人が主張する理由により、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲11発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲11、甲9、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が、甲11発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 ケ.甲12と甲9の組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲12発明の対比 甲12発明(第5の2(12))の「N,N−メチレンビスアクリルアミド」は、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲12発明の「アクリル酸」、「水酸化ナトリウム」より調製した「B液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲12発明の上記B液を重合して得られる「粉末状の一次粒子ポリマー」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲12発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲12発明では、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点15) 本件発明1では、「架橋重合体」が表面架橋剤によって架橋されているのに対して、 甲12発明では、表面架橋剤が用いられていない点(相違点16) で相違している。 (イ)相違点15の検討 相違点15は相違点11と同じであるから、上記キ(イ)で述べたものと同じ理由により、甲9及び甲15を参照しても、相違点15として挙げた本件発明1の発明特定事項に想到することはできない。 よって、相違点16について検討するまでもなく、本件発明1は、甲12発明に甲9に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、申立人は、上記キ(イ)で述べたlの指摘を前提にして(申立書の92頁6行〜13行)、当業者において、甲12と甲9との組み合わせに基づいて、構成要件A〜Eに容易に想到することができると主張するが、キ(イ)で述べたとおり、指摘lは技術的裏付けが乏しいものであり、申立人が主張する理由により、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲12発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲12、甲9、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が、甲12発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 コ.甲13と甲9の組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲13発明の対比 甲13発明(第5の2(13))の「N,N−メチレンビスアクリルアミド」は、本件発明1の「内部架橋剤」に相当する。 甲13発明の「アクリル酸」、「水酸化ナトリウム」より調製した「B液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲13発明の上記B液を重合して得られる「一次粒子ポリマー」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲13発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋されたものである、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲13発明では、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点17) 本件発明1では、「架橋重合体」が表面架橋剤によって架橋されているのに対して、 甲13発明では、表面架橋剤が用いられていない点(相違点18) で相違している。 (イ)相違点17の検討 相違点17は相違点11と同じであるから、上記キ(イ)で述べたものと同じ理由により、甲9及び甲15を参照しても、相違点17として挙げた本件発明1の発明特定事項に想到することはできない。 よって、相違点18について検討するまでもなく、本件発明1は、甲13発明に甲9に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、申立人は、上記キ(イ)で述べたlの指摘を前提にして(申立書の96頁5行〜12行)、当業者において、甲13と甲9との組み合わせに基づいて、構成要件A〜Eに容易に想到することができると主張するが、キ(イ)で述べたとおり、指摘lは技術的裏付けが乏しいものであり、申立人が主張する理由により、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲13発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲13、甲9、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が、甲13発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 サ.甲14と甲9の組み合わせ、並びに、当該組み合わせと甲15との組み合わせによる本件発明1〜5の進歩性の検討 (ア)本件発明1と甲14発明の対比 甲14発明(第5の2(14))の「アクリル酸水溶液」、「水酸化ナトリウム水溶液」より調製した「第1モノマー水溶液」及び「第2モノマー水溶液」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%」であるものに相当し、甲14発明の上記モノマー水溶液を重合して得られる「吸水性樹脂」は、本件発明1の「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された」「重合体を含む、吸水性樹脂粒子」に相当するということができる。 以上からすると、本件発明1と甲14発明は、 「エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%である、 吸水性樹脂粒子。」で一致し、 本件発明1では、「吸水性樹脂粒子」について 「式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である」と規定しているのに対して、 甲14発明では、膨張維持率、無加圧DWの10分値、生理食塩水に対する保水量、及び純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積V0を特定していない点(相違点19) 本件発明1では、「重合体」が内部架橋剤及び表面架橋剤によって架橋されているのに対して、 甲14発明では、内部架橋剤及び表面架橋剤が用いられていない点(相違点20) で相違している。 (イ)相違点19の検討 相違点19は相違点11と同じであるから、上記キ(イ)で述べたものと同じ理由により、甲9及び甲15を参照しても、相違点19として挙げた本件発明1の発明特定事項に想到することはできない。 よって、相違点20について検討するまでもなく、本件発明1は、甲14発明に甲9に記載された事項、更に甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 なお、申立人は、上記キ(イ)で述べたlの指摘を前提にして(申立書の100頁6行〜13行)、当業者において、甲14と甲9との組み合わせに基づいて、構成要件A〜Eに容易に想到することができると主張するが、キ(イ)で述べたとおり、指摘lは技術的裏付けが乏しいものであり、申立人が主張する理由により、本件発明1を当業者が容易に想到することができるとはいえない。 (ウ)本件発明2〜5の進歩性の検討 本件発明2〜4は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲14発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 本件発明5は、本件発明1と同様に、膨張維持率を発明特定事項とするものであるとともに、甲14、甲9、甲15には、本件発明5に含まれる「膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程」も記載されていないので、本件発明5が、甲14発明に甲9及び甲15に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に想到し得たものとは認められない。 シ.小括 以上のとおりであるから、申立理由2(進歩性)は、いずれも理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、本件訂正については、適法であるから、これを認める。 本件特許の請求項1〜6に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が101%以上で、V0が22.0mL以下で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上であり、生理食塩水に対する保水量が35g/g以上であり、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子。 【請求項2】 前記膨張維持率が110%以下である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項3】 V0が20〜22.0mLである、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。 【請求項4】 液体不透過性シート、吸収体、及び液体透過性シートを備え、前記液体不透過性シート、前記吸収体及び前記液体透過性シートがこの順に配置されている、吸収性物品であって、 前記吸収体が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子を含む、吸収性物品。 【請求項5】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 当該方法が、式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される膨張維持率が98%以上で、無加圧DWの10分値が40mL/g以上である、吸水性樹脂粒子を選別する工程を含み、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子を製造する方法。 【請求項6】 エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を高める方法であって、 前記エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70〜100モル%であり、 前記架橋重合体が、内部架橋剤によって架橋され、且つ、表面架橋剤によって表面架橋されたものであり、 当該方法が、式:膨張維持率(%)=(V1/V0)×100で算出される、吸水性樹脂粒子の膨張維持率を98%以上に高めることと、吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10分値を40mL/g以上とすることと、を含み、 V0は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの純水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積であり、 V1は、1.000±0.001gの当該吸水性樹脂粒子が20.0±0.1gの生理食塩水を吸収したときに形成される膨潤ゲルの体積である、 吸水性樹脂粒子を含む吸収体の加圧下での吸収量を488g以上に高める方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-05-30 |
出願番号 | P2020-556831 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(C08F)
P 1 651・ 121- YAA (C08F) P 1 651・ 537- YAA (C08F) P 1 651・ 536- YAA (C08F) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
近野 光知 |
特許庁審判官 |
福井 悟 土橋 敬介 |
登録日 | 2021-01-22 |
登録番号 | 6828222 |
権利者 | 住友精化株式会社 |
発明の名称 | 吸水性樹脂粒子、吸収性物品、吸水性樹脂粒子を製造する方法、及び吸収体の加圧下での吸収量を高める方法 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 沖田 英樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 吉住 和之 |
代理人 | 沖田 英樹 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK |