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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23C
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23C
管理番号 1387498
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-23 
確定日 2022-06-02 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6833884号発明「無脂乳固形分を多く含み風味に優れたバター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6833884号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。 特許第6833884号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6833884号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、2012年6月18日(優先権主張 2011年6月24日 日本国(JP))を国際出願日とする特願2013−521567号の一部を平成28年12月22日に新たな特許出願として出願された特願2016−249269号の一部をさらに平成31年2月27日に新たな特許出願としたものであって、令和3年2月5日に特許権の設定登録がされ、同年同月24日にその特許公報が発行され、その後、同年8月23日に、特許異議申立人 中辻 史郎(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年12月23日付けで当審から取消理由通知が通知され、令和4年3月7日に訂正請求書及び意見書が提出され、同年3月14日付けで当審から特許法120条の5第5項に基づく通知書が出され、特許異議申立人から同年4月18日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年3月7日付け訂正請求(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、以下の訂正事項1〜4の訂正を求めるものである。

(1)訂正事項1
訂正事項1は、請求項1の訂正前の「バター。」との記載を、「無発酵バター。」に訂正する。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、請求項2の訂正前の「前記脂肪分は,乳脂肪分である請求項1に記載のバター。」との記載を、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含み,前記脂肪分は,乳脂肪分であるバター。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、請求項3の訂正前の「脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる請求項1又は請求項2に記載のバター。」との記載を、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られるバター。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、請求項4の訂正前の「脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる請求項1から請求項3のいずれかに記載のバター。」との記載を、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られるバター。」に訂正する。

2 一群の請求項について
訂正事項1〜4に係る訂正前の請求項1〜4について、請求項2〜4はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1〜4によって記載がそれぞれ訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜4に対応する訂正後の請求項1〜4に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。

3 目的の適否
(1)上記訂正事項1は、請求項1の訂正前の「バター。」の種類を「無発酵バター。」に限定したものである。
したがって、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)上記訂正事項2は、請求項2を訂正前の請求項1を引用する形式から、請求項1を引用しない形式にすると共に、訂正前の無脂乳固形分の濃度の範囲の下限を上昇させて、「無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含み」として範囲を限定したものである。
したがって、上記訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び引用請求項を他の請求項を引用しないものすることを目的とするものである。

(3)上記訂正事項3は、引用する請求項から請求項2を削除するとともに、請求項3を訂正前の請求項1〜2を引用する形式から、請求項1を引用しない形式にしたものである。
したがって、上記訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び引用請求項を他の請求項を引用しないものすることを目的とするものである。

(4)上記訂正事項4は、引用する請求項から請求項2〜3を削除するとともに、請求項4を訂正前の請求項1〜3を引用する形式から、請求項1を引用しない形式にしたものである。
したがって、上記訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び引用請求項を他の請求項を引用しないものすることを目的とするものである。

4 新規事項についての判断
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1の「無発酵バター」との記載に関しては、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の【0031】の「バターは一般的に,生乳,牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧した乳製品である。バターには,原料乳を乳酸発酵させる発酵バター(アシッドクリームバター)と,原料乳を発酵させない無発酵バター(スイートクリームバター)がある。本発明のバターは,発酵バター及び無発酵バターのいずれであっても構わない。・・・」との記載から、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

(2)訂正事項2について
上記訂正事項2の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含み」との記載に関しては、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を」「10重量%以下で含み」との特定事項に関しては、請求項1の記載を他の請求項を引用しない形式で記載したものにすぎず、「無脂乳固形分を7重量%以上」との特定事項に関しては、本件特許明細書の【0049】や【0081】の実施例8の「無脂乳固形分7重量%」の記載から、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項2による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

(3)訂正事項3について
上記訂正事項3は、引用する請求項を減少させ、他の請求項を引用しない形式で記載したものにすぎないから、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

(4)訂正事項4について
上記訂正事項4についても、引用する請求項を減少させ、他の請求項を引用しない形式で記載したものにすぎないから、新たな技術的事項を導入するものとはいえず、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載されているものと認められる。
したがって、訂正事項4による訂正も、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合している。

5 実質上特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
(1)訂正事項1について
上記3、4で検討したとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮したものであり、カテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

(2)訂正事項2について
上記3、4で検討したとおり、訂正事項2も、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲を減縮し、他の請求項を引用しない形式で記載したものであり、カテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

(3)訂正事項3について
上記3、4で検討したとおり、訂正事項3は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、引用する請求項を減少し、他の請求項を引用しない形式で記載したものであり、カテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

(4)訂正事項4について
上記3、4で検討したとおり、訂正事項4も、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、引用する請求項を減少し、他の請求項を引用しない形式で記載したものであり、カテゴリーを変更するものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合している。

6 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項1、2、3、4について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1〜4に係る発明は、令和4年3月7日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(請求項1〜4に係る特許発明をそれぞれ、「本件特許発明1」〜「本件特許発明4」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)。

「【請求項1】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む
無発酵バター。

【請求項2】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含み,
前記脂肪分は,乳脂肪分である
バター。

【請求項3】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,
脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる
バター。
【請求項4】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,
脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる
バター。」

第4 取消理由及び特許異議申立理由
1 特許異議申立人が申し立てた理由
特許異議申立人が申し立てた理由の概要は以下のとおりである。
(1)新規性
訂正前の本件の請求項1、2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、訂正前の請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2−1)進歩性
訂正前の請求項1、2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術常識あるいは甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術常識に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2−2)進歩性
訂正前の請求項3、4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第2号証に記載された発明及び甲第1、3、4、6号証に記載の技術常識に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:J.M.Evers 外5名、International Dairy Journal、1999年、9、p.675〜682(抄訳添付)
甲第2号証:特開平8−205770号公報
甲第3号証:OTTO FREDERICK HUNZIKER著、THE BUTTER INDUSTRY、第3版、1940年、p.600〜618(抄訳添付)
甲第4号証:米国特許第6793955号明細書
甲第5号証:資源調査分科会報告、日本食品標準成分表2010、14 油脂類、文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会編
甲第6号証:特開2006−141273号公報

2 当審が通知した取消理由の概要
理由:本件訂正前の請求項1〜2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1を参照すれば、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1〜2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。



甲第5号証:資源調査分科会報告,日本食品標準成分表 2010,14 油脂類,文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会,[online],2010年11月,インターネット<URL:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu3/houkoku/1298713.htmにおいて、平成22年11月付けで、「「日本食品標準成分表2010」が取りまとめられましたので、お知らせいたします。」として文部科学省のHP上で公表されたものであり、さらに「14 油脂類」の表は、https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/12/19/1299012_14.pdf>
引用例1:厚生労働省HPの「乳等省令における規定(抜粋)」,インターネット<URL:https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000515092.pdf>

なお、引用例1は、技術常識を示す文献である。

第5 当審の判断
当審は、請求項1〜4に係る特許は、当審の通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。

各甲号証及び引用例の記載
1 特許異議申立人の甲号証について
(1)甲第1号証
訳文にて示す。
(1a)「バター、バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッドの脂肪を直接測定するための正確で迅速な方法」(675頁の表題)

(1b)「IDF標準135B (IDF、1991)のパイロット共同研究のガイドラインに従った。これらは、最低3つの研究所と最低6つのサンプルを示唆しています。6つの異なるバターサンプル (各1000−1400g)を均質化し、各サンプルをランダムな順序で異なるサンプルコンテナー(広口、125mLポリプロピレンスクリューキャップジャー、ショルダーなし)に分配しました。容器あたりのバターの総重量は82−125gの範囲でした。各コンテナには、ラボのコードと4桁のランダムなサンプル番号のラベルが付けられています。サンプルは断熱容器に入れて冷やして実験室に運ばれました。各ラボは、各バターサンプルのブラインド複製ペアを受け取り、IDF80、IDF80改訂版、および直接脂肪法を使用してこれらのそれぞれを分析しました。バターサンプルは、水分、SNF、および脂肪レベルにある程度の変動を与えるように選択されましたが(表6)、IDF標準135B(IDF、1991)で提案されているように、分析者による結果の不本意な打ち切りを回避するために、同様の組成を持つサンプルも含まれています。」(680頁左欄8〜27行)

(1c)「表6 パイロット共同研究で分析された6つのバターサンプルのおおよその組成

」(680頁右下欄下から3行?末行)

(1d)「3.6.バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッド
プロジェクトのステージ2の一環として、4つの50/50バター−マーガリンブレンドと5つの乳脂肪スプレッド(約40%脂肪)を分析することにより、バター−マーガリンブレンドと乳脂肪スプレッドへの直接脂肪法の適用性を評価しました。比較テストは、50/50バター−マーガリンブレンドにIDF80を使用し(表7)、乳脂肪スプレッドにIDF80を改訂し、ローズゴットリーブ法(IDF標準 16C;IDF、1987)を使用して実行しました(表8)。」(680頁右欄6〜16行)


(1e)「表8 改訂IDF80の直接脂肪法およびローズゴットリーブ法によって得られた乳脂肪スプレッドの平均脂肪結果(%w/w)。水分とSNFの結果は、改訂IDF80を使用して決定された。

」(681頁表8)

(2)甲第2号証
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】15〜45℃の生クリームに乳成分を添加することを特徴とする、改質クリームの製造法。
【請求項2】乳成分が、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上である、請求項1記載の製造法。・・・」

(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は改質クリームの製造法に関し、詳細には生クリームの風味および物性を改良した改質クリームの製造法、に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、生乳または牛乳等から天然の生クリームが製造されているが、かかる天然生クリームは季節による風味の変化や産地による風味の違い或いは経時による風味の劣化等が起こり、風味や口溶けの安定な生クリームの供給が困難であった。
【0003】普通、天然生クリームはいわゆる植物性クリームに比べて風味が良好であるため植物性クリームの風味改良材として使用されることがある。この典型的な例が生クリームと植物性クリームとを混合して製造されるコンパウンドクリームである。このように天然の生クリームは植物性クリームの風味改良材として使用されるが、生クリーム自体の風味を改良したという例はこれまでにない。
【0004】本発明者らは天然生クリームの風味を改質すべく検討するなかで、天然生クリームに全脂粉乳等の乳成分を添加混合することを試み、当該生クリームをタンク内に入れ攪拌しながら約70〜80℃に加温し、これに全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳成分を添加して混合乳化してみたが、このような方法ではタンク内での約70〜80℃という比較的高い温度で比較的長時間攪拌混合するため、天然生クリーム由来の風味の散逸および加熱によるオフフレーバーが発生し風味が阻害されるとともに、加熱により当該生クリームの色調が黄変するなどして商品価値が著しく低下するという欠点を生ずることを知った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、通常の天然生クリームに比べ加熱による風味劣化および色調の黄変を伴うことなく乳化状態の安定な且つ風味の優れたクリームを製造する方法を提供するものである。
【0006】本発明者らは、如上の点に鑑み鋭意研究した結果、天然生クリームに乳成分の水溶液を添加し約35℃にて攪拌混合した後、殺菌処理し次いで均質化処理したところ、通常の天然生クリームに比べ風味口溶けが良好で且つ乳化安定性に優れたクリームが得られるという知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
【0007】即ち本発明は、15〜45℃の生クリームに乳成分を添加することを特徴とする、改質クリームの製造法、である。
【0008】本発明において生クリームとは、従来より製造されている生乳または牛乳等から分離して得られる、いわゆる天然の生クリームをいい、かかる天然生クリームの乳化系を破壊し再構成して得られるクリームであっても構わない。
【0009】本発明においては、以上の生クリームまたは再構成クリームを15〜45℃に調温しながら乳成分を加え、全体が均一になるように攪拌混合する。温度が下限未満では増粘して混合できなくなり、逆に上限を越えると風味が悪化する傾向にあるので上記範囲内であるのが好ましい。
【0010】乳成分としては、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖が例示できる。
【0011】本発明においては以上の乳成分から選ばれる一種または二種以上を生クリーム全量に対し固形分換算にて0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%添加するのが適当である。下限未満では効果を得難く、また上限を越えるとクリームの風味に悪影響を及ぼすようになる。これらの乳成分は固型物が1〜50重量%濃度である水溶液の状態で添加するのが好ましい。」

(3)甲第3号証
(3a)「カード
差分計算によるカード−製酪所を対象としたバターのカード含有量は差分計算によって決定される。すなわち、100から水分、脂肪、塩の割合の合計を差し引いて計算される。したがって、差分計算によるカードの割合は、タンパク質含有量だけに限定されず、脂肪、水分、塩以外のバターのすべての成分が含まれる。言い換えれば、それはバターに含まれる非脂肪バターミルク固形物から成り、その中でより重要なのはタンパク質(主にカゼインとおそらく微量のアルブミン、およびリン脂質タンパク質材料、灰分、乳糖、塩からなる)である。差分計算によりカードのパーセンテージを知ることは、望ましい脂肪含有量のバターが含むかもしれない水分と塩のパーセンテージの合計を決定するための計算に曖昧な限界を与える。これは、バターメーカーが自己の製酪所オーバーランを計算するのに役立つ。製造方法を効率的に標準化した製酪所では、差分計算によるカードの割合はかなり均一である。通常の動作条件下では、通常、平均で約0.7〜0.8%である。1.0%を超えることはめったになく、0.4%まで低下するのも稀である。Bird及びBreazeale18は、最も認められた3つの分析方法により、50種の異なるロットのバターのサンプルによってカードを重複して測定した。その結果をまとめたのが第52表である。



表52に示されているカードのパーセンテージの平均と範囲は、幅広い条件下で通常の製造方法で製造されたバターのカード含有量に対するHunziker19の調査結果と一致している。長い工業上の経験から、カードの許容量を1%として、バターの脂肪の割合を計算すると、十分な安全マージンが得られることを示している。したがって、脂肪の最低限界が80%の場合、水分と塩分を合計19%にすることは非常に安全な方法である。バターのカード含有量は、通常、スターターをバターに入れることにより、1パーセント強(約1.25%)に増加する。粉乳が乾燥カゼインまたは乾燥脱脂乳の形でバターに添加される場合、カード含有量は非常に大幅に増させることができる。Hunziker及びHosman20による実験結果は、そのように処理されたバターが10%ものタンパク質カードを含む可能性があることを示している。脱脂粉乳を加える場合、脱脂乳粉の乳糖と灰分のかなりの部分がバターによっても保持されているため、差分計算によりカードが15%に上昇する可能性がある。さらに、そのような高タンパク質カードは、保湿特性を高め、それによって水分の高度な取り込みを促進させる。」(601頁33行〜603頁6行)

(4)甲第4号証
(4a)「より具体的には、本発明は、バターの界面バター固形を濃縮する方法、バターベースの製品中に界面バター固形を組み込む方法、及び界面バター固形の濃縮量を含むバターベースの製品に関する。」(第1欄20〜25行)

(4b)「本発明は、バターを含む原材料から水またはバター脂肪を除去して中間体を生成し、非乳脂肪を中間体と組み合わせて中間ブレンドを形成し、中間ブレンドを処理してバターベースの製品を形成することを含む、バター/マーガリンブレンドなどのバターベースの製品を製造する方法に関する。」(第2欄35〜45行)

(4c)「本発明のバター/マーガリンブレンドのようなバターベースの製品を調製するための一般的プロセスが、図中の10に描かれている。まず、バターまたはバターと1種以上の追加成分の混合物のような供給原料12を、蒸気ジャッキング管のような熱交換機構14を用いて加熱し、融解バターまたは融解バターを含む液体組成物のような液体供給原料16を形成し、それによりバターの結晶化記憶をすべて除去する。次いで、混合液体供給原料20を、制御された真空および温度条件下で混合液体供給原料20から水24を除去することにより、混合液体供給原料20を濃縮するために、槽18から蒸発器22に移す。次いで、蒸発器22により減少した水分含有の物質26を分離器28に移し、バター脂肪30、副生成物バター脂肪31、及びバター固形物中間体32に分離する。副産物であるバター脂肪31は、更なる処理のため、又は顧客にバター脂肪として販売するため、プロセス10から出ていく。」(第2欄63行〜第3欄16行)

(4d)「計量・混合槽42内のバター固形分中間体40対非乳脂肪44のバター固形分に対するバター固形分38の比率は、プロセス10により製造されたバターおよびバターベースの製品において所望の特性を達成するように選択的に調整され得る。本発明は、バターを含む原材料から水またはバター脂肪を除去して中間体を生成し、非乳脂肪を中間体と組み合わせて中間ブレンドを形成し、中間ブレンドを処理してバターベースの製品を形成することを含む、バター/マーガリンブレンドなどのバターベースの製品を製造する方法に関する。」(第3欄60〜64行)

(4e)「「界面バター固形物」とは、実際に水相と融解バターの脂肪相の界面に集まっている固形粒子および/または半固形粒子のみではなく、融解バターの水相および脂肪相の界面に集まっている傾向のある全ての固形粒子および/または半固形粒子を含み、「界面バター固形物」という用語は、乳および/またはバターを形成するために加工され、バター製造工程中に乳および/またはクリームに添加される、乳製品以外の塩のような添加物をも除いたものである。」(第5欄46行〜58行)

(4f)「これは、界面バター固形物のリン脂質部分が、焼成工程の間、焼き物の本体を増強し、「バター」の味をシミュレートするために人工香料を全く使用せずに、中間ブレンド46を組み込んだ製品または中間ブレンド46に由来する製品に豊富な特徴的な「バター」風味および食感を与えることが見出されているためである。実際、本発明により製造された製品中の界面バター固形物を濃縮する能力は、本発明によるバターの処理前に、バター単独により提供される増強を超えて、バター単独により提供される増強を増強し、バター単独により寄与されるものを超えてバター風味および特徴的な食感を増強する。」(第20欄15〜28行)

(4g)「実施例1
この実施例は、本発明のプロセスを使用して、有塩バターと無塩バターの混合物をバター/マーガリンブレンドに変換するものである。まず、バター混合物の総体重に 基づき、約59重量%の塩分を含む約3596グラムの重さのバターと約41重量%の塩分を含まないバターの混合物を、重底のステンレス鋼製パンに入れた。ステンレススチールパンをゆっくりと加熱し、有塩バターと無塩バターのブレンドを溶かした。融解バターブレンドの水分濃度は、融解バターブレンドの総体重に基づき、約17.2重量%と決定された。溶融バターブレンドの水分濃度を測定した後、溶融バターブレンドをローリングボイルにするために、ステンレススチールパンをさらに低温加熱した。沸騰バターブレンドを、カナダ、オンタリオ州ウィアルトンのCaframo Ltd.から入手可能な、RZRIラボミキサーで撹拌した。Cafrarnoラボミキサーは設定ポイント5で稼動した。Cafranoラボミキサーは、最長直径が1 7/8インチ(4.76センチメートル)の4枚のブレードミキサーを有していた。4枚のブレードミキサーは毎分約1520回転(rpm)で動作した。撹拌中の沸騰バターブレンドの温度は 約208°F(97.8℃)から約218°F(約103℃)の範囲であった。バターブレンドを撹拌し、沸騰バターブレンド中の水の濃度が沸騰バターブレンドの総体重に基づいて約8.7重量パーセントに達するまで水を除去するために煮沸した。したがって、最初のバターブレンド中の元の601グラムの水の内の約326グラムが除去され、最初のバターブレンドを沸騰させることから生じた濃縮バターブレンド中に約276グラムの水が残った。次いで、水を蒸発させることによって得られた濃縮バターブレンドを冷却し、一晩凍結して、バターブレンドの水相をバターブレンドの脂肪相から分離させた。翌日、凍結濃縮バターブレンドを徐々にステンレススチールパンで再加熱し、脂肪層と水層が完全に層状化するまで脂肪を液化した。次いで、層状濃縮バターブレンドから2783gのバター脂肪を抽出して、主として水、界面バター固形物、バター脂肪、および塩を含むバター中間体を形成した。その後、ミンン州ミンネトンカのCargill Corporationから入手可能なCargill CV-65カノーラ油755g、及び除去したバター脂肪761gを組み合わせて、均一な脂肪混合物を形成した。次に、高ずり混合の条件下で、バター固形中間体をバター脂肪とカノーラ油の均一脂肪混合物にゆっくり加え、連続脂肪相を伴う脂肪中水分散体を形成した。カノーラ油およびバター脂肪に中間体のバター固形を添加した後、脂肪中水分散液を冷却しながら撹拌し、マーガリンおよびバターに特徴的な脂肪中水マトリックスの形成を可能にし、完成したバター/マーガリンブレンド中の脂肪の結晶化を可能にした。具体的には、バター固形中間体、カノーラ油、およびバター脂肪の混合物をステンレススチールビーカーに入れた。次いで、ステンレス鋼ビーカーを氷水浴中に置いた。次いで、Cafrano型RZRIラボミキサーをビーカーの近くに位置させ、ミキサーブレードをビーカーに位置させた。その後、混合器を約1520rpmの設定ポイント5でオンにし、混合物を脂肪中水分散体に変換し、バター脂肪を結晶化した。ビーカーをミキサーブレード回転の方向に対抗する方向に回転させ、ステンレススチール製へラを用いてビーカーの内側表面から凝固脂肪を連続的に掃除した。このプロセスは、十分な脂肪が固化してかなり均質な塊を形成するまで維持された。有塩/無塩バターブレンドの出発組成物および完成したバター/マーガリンブレンドの最終組成を、成分除去および追加の詳細と共に、表1に示し、これはこの例の後半で現れる。再び、最初の蒸発相の間に、326グラムの水を溶融バターブレンドの水相から除去した。その後、バター脂肪2783gを除去し、カノーラ油755gと引き抜いたバター脂肪761gを工程内ブレンドに戻した。有塩/無塩バターブレンド中または完成バター/マーガリンブレンド中に最初に存在した界面バター固形物の量に関するデータは得られなかったが、有塩/無塩バターブレンド中に元々存在した界面バター固形物の全て、または本質的に全てがバター/マーガリンブレンド中に残っていたと考えられる。なぜなら、水の蒸発中に固形物は除去されておらず、有塩/無塩バターブレンドからバター脂肪の抽出中に固形物が除去されたことが視覚的に観察されなかったためである。

バターのサンプルと、この例に従って生産されたバター/マーガリンブレンドのサンプルを、味覚パネルによって試験した。味覚パネルはバターの味よりもバター/マーガリンブレンドの味を圧倒的に好んだ。なぜなら、バター/マーガリンブレンドは、バターそのものよりも豊かなバターの味を有していたからである。これは、バター/マーガリンブレンドの界面バター固形分濃度が、味覚パネルが考慮したバターの界面バター固形分濃度より高いためと考えられる。バター/マーガリンブレンドは、バター/マーガリンブレンドを形成するための処理中に、水分を蒸発させるために実際にバターを沸騰させたので、界面バター固形分は多少乱用されたが、味覚パネルはバター単独よりバター/マーガリンブレンドを好んだ。低温条件での処理は、バター/マーガリンブレンドに対する味覚パネルの嗜好性をさらに高めることが期待される。」(第24欄8行〜第25欄下から4行)

(4h)「

」(図面)

(5)甲第5号証
(5a)「


(「14 油脂類」の項目)

(6)甲第6号証
(6a)「【0027】
(実施例1)
生乳の膜濃縮(NF膜)、脱酸素処理(窒素置換)、クリーム分離、殺菌処理。
生乳(fat3.7%、SNF8.9%)400kgをNF膜(Dow-filmtech社:NFT3838)処理装置に循環させ、267kgの濃縮乳(fat5.6%、SNF13.4%)を得た。
この濃縮乳をモノポンプにて散気管に100L/Hで送液し、8L/minで窒素ガスを吹き込んだ。この処理液をプレート式加熱器で47℃に加温し、クリームセパレータ(ウエストファリア社:SA-1型)にて100kg/hで7,000rpmでクリーム分離を行った。得られたクリームの溶存酸素濃度は1.7ppmであった。プレート式殺菌機(岩井機械工業社:VHX-CR2-200)で140℃、2秒殺菌した。殺菌済みクリーム(fat47.5%、SNF7.0%)を3℃で1晩エージングした。また膜濃縮乳を用い、特許文献1の方法にてクリーム分離後に窒素置換処理を行ったものも調製した(4)品。」

2 引用例1
(7a)「第1条 乳及び乳製品並びにこれらを主要原料とする食品(以下「乳等」という。)に関し、食品衛生法 (昭和22 年法律第233 号。以下「法」という。)第9条第1項 に規定する厚生労働省令で定める場合、法第 11 条第1項 に規定する成分規格及び製造等の方法の基準、法第 13条第2項 (同条第4項 及び第14 条第2項において準用する場合を含む。)に規定する総合衛生管理製造過程の製造又は加工の方法及びその衛生管理の方法の基準並びに第 13 条第3項(同条第4項 及び第 14 条第2項 において準用する場合を含む。)に規定する承認の申請手続並びに法第 18 条第1項 に規定する器具若しくは容器包装又はこれらの原材料の規格及び製造方法の基準の要領については、この省令の定めるところによる。ただし、組換えDNA技術(酵素等を用いた切断及び再結合の操作によって、DNAをつなぎ合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。)を応用した乳等の成分規格及び製造の方法の基準、農薬等(農薬取締法 (昭和23 年法律第82 号)第2条第1項 に規定する農薬、飼料の安全性の確保及び品質の改善に関する法律 (昭和 28 年法律第 35 号)第2条第3項の規定に基づく農林水産省令で定める用途に供することを目的として飼料に添加、混和、浸潤その他の方法によって用いられる物又は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 (昭和35 年法律第145 号)第2条第1項 に規定する医薬品であって専ら動物のために使用されることが目的とされているもの(以下「動物用医薬品」という。)をいう。以下同じ。)の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。以下同じ。)の量の限度に係る成分規格、添加物の成分規格及び製造等の方法の基準並びに器具若しくは容器包装又はこれらの原材料の規格及び製造の方法の基準については、この省令に定めるもののほか、食品衛生法施行規則 (昭和23 年厚生省令第23 号)及び食品、添加物等の規格基準(昭和34 年厚生省告示第370 号)の定めるところによる。

第2条 この省令において「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいう。
2 この省令において「生乳」とは、搾取したままの牛の乳をいう。
3 この省令において「牛乳」とは、直接飲用に供する目的又はこれを原料とした食品の製造若しくは加工の用に供する目的で販売(不特定又は多数の者に対する販売以外の授与を含む。以下同じ。)する牛の乳をいう。
4 この省令において「特別牛乳」とは、牛乳であつて特別牛乳として販売するものをいう。
5 この省令において「生山羊乳」とは、搾取したままの山羊乳をいう。
6 この省令において「殺菌山羊乳」とは、直接飲用に供する目的で販売する山羊乳をいう。
7 この省令において「生めん羊乳」とは、搾取したままのめん羊乳をいう。
8 この省令において「成分調整牛乳」とは、生乳から乳脂肪分その他の成分の一部を除去したものをいう。
9 この省令において「低脂肪牛乳」とは、成分調整牛乳であつて、乳脂肪分を除去したもののうち、無脂肪牛乳以外のものをいう。
10 この省令において「無脂肪牛乳」とは、成分調整牛乳であつて、ほとんどすべての乳脂肪分を除去したものをいう。
11 この省令において「加工乳」とは、生乳、牛乳若しくは特別牛乳又はこれらを原料として製造した食品を加工したもの(成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、発酵乳及び乳酸菌飲料を除く。)をいう。
12 この省令において「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料(無脂乳固形分三・〇%以上を含むものに限る。)及び乳飲料をいう。
13 この省令において「クリーム」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したものをいう。
14 この省令において「バター」とは、生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したものをいう。
・・・
(2) バター
成分規格
乳脂肪分 八〇・〇%以上
水分 一七・〇%以下
大腸菌群 陰性
・・・」

当審が通知した取消理由の判断

1 取消理由(特許法第29条第1項第3号)について(特許異議申立理由(1)に相当する。)
(1) 甲第5号証記載の発明
ア 摘記(5a)のとおり、甲第5号証には、「可食部100gあたり、水分 13.6g、たんぱく質 0.6g、脂質 80.0g、炭水化物 4.4g、灰分1.4g、食塩相当量 1.3g」を含む「発酵バター」が記載されている。

イ したがって、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる。

「可食部100gあたり、水分 13.6g、たんぱく質 0.6g、脂質 80.0g、炭水化物 4.4g、灰分1.4g、食塩相当量 1.3gを含む発酵バター。」(以下「甲5発明」という。)

(2) 対比・判断
ア−1 本件特許発明1と甲5発明との対比
甲5発明の「可食部100gあたり、水分」が「13.6g」であることは、本件特許発明1の「水分を5重量%以上17重量%以下」含むことに該当し、食品分野において、脂肪とは、「脂質」を意味するのであるから、甲5発明の「可食部100gあたり、」「脂質 80.0g」であることは、本件特許発明1の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下」含むことに該当し、甲5発明の「発酵バター」は、本件特許発明1の「無発酵バター」と「バター」の限りにおいて共通する。

したがって、本件特許発明1と甲5発明とは、
「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下で含む
バター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1:本件特許発明1が「無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む」ことを特定しているのに対して、甲5発明では、脂質および水分以外の成分組成について、「可食部100gあたり、」「たんぱく質 0.6g、」「炭水化物 4.4g、灰分1.4g、食塩相当量 1.3g」との成分組成が示されている点。
相違点2−1:本件特許発明1が「無発酵バター」であるのに対して、甲5発明が「発酵バター」である点。

イ−1 相違点1−1の判断
相違点1−1について検討する。
無脂乳固形分とは、乳製品に含まれる脂肪(脂質)以外の固形分であり、たんぱく質、炭水化物(糖類)、ビタミン、ミネラルを指すことが明らかであるところ、本件特許明細書においては、【0040】の「ナノろ過によって得られる保持液には,原料乳の全固形分(TS)のうち,乳脂肪(FAT)と,主要な無脂乳固形分(SNF)であるタンパク質,乳糖に加えて,ビタミン類と塩類の一部が濃縮されている。ここで,本明細書では,ナノろ過によって得られた濃縮乳をナノろ過濃縮乳ともいう。ナノろ過によって得られた透過液には,原料乳の水分の多くと,水溶性のビタミン類と塩類の一部(特に1価のイオン)が含まれている一方,原料乳の全固形分が殆ど含まれていないこととなる。ここで,ビタミン類や塩類とは,ビタミンA,B1,B2,ナイアシン等や,ナトリウム(Na),カリウム(K),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),塩素(Cl),リン(P)等の無機質の総称である。」(下線は当審にて追加。以下同様。)や、「【実施例3】
【0057】
実施例2と同様にして得たNFクリームをバター製造機で混練する際に,混練中において,脱脂濃縮乳(固形分33重量%)を添加(配合)しながら,その他の製造方法は常法に従って,有塩バターを製造した(NFろ過・脱濃配合品)。NFろ過・脱濃配合品の組成は,乳脂肪分80.8重量%,無脂乳固形分3.8重量%,塩分1.5重量%であった。(試料4)」との無脂固形分と塩分を書き分けている記載を考慮すると、本件特許明細書においては、無脂乳固形分としては、ビタミン類や塩類とは別に、成分を計算しているものと理解できる。
したがって、甲5発明においては、無脂乳固形分としては、「可食部100gあたり、」「たんぱく質 0.6g、」「炭水化物 4.4g、灰分1.4g」によって計算することができ、合計が6.4gであるから、本件特許発明1の「無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む」ことが明らかである
したがって、甲5発明において、無脂乳固形分は3.8重量%以上10重量%以下で含まれているといえるので、相違点1−1は、実質的な相違点とはいえない。

ウ−1 相違点2−1の判断
相違点2−1について検討する。
甲5発明は、発酵バターであって、本件特許発明1の無発酵バターと異なることは明らかであり、その他甲第5号証には、無発酵バターに関して何ら記載がないのであるから、相違点2−1は、実質的な相違点である。

エ−1 小括
したがって、本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえない。

ア−2 本件特許発明2と甲5発明との対比
甲5発明の「可食部100gあたり、水分」が「13.6g」であることは、本件特許発明2の「水分を5重量%以上17重量%以下」含むことに該当し、食品分野において、脂肪とは、「脂質」を意味するのであるから、甲5発明の「可食部100gあたり、」「脂質 80.0g」であることは、本件特許発明2の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下」含むことに該当し、甲5発明の「発酵バター」は、本件特許発明2の「バター」に該当する。

したがって、本件特許発明2と甲5発明とは、
「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下で含む
バター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−2:本件特許発明2が「無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含む」ことを特定しているのに対して、甲5発明では、脂質および水分以外の成分組成について、「可食部100gあたり、」「たんぱく質 0.6g、」「炭水化物 4.4g、灰分1.4g、食塩相当量 1.3g」との成分組成が示されている点。
相違点2−2:本件特許発明2は、「脂肪分は,乳脂肪分である」と特定されているのに対して、甲5発明では、そのような特定のない点。

イ−2 相違点1−2の判断
相違点1−2について検討する。
無脂乳固形分とは、乳製品に含まれる脂肪(脂質)以外の固形分であり、たんぱく質、炭水化物(糖類)、ビタミン、ミネラルを指すことが明らかであるところ、本件特許明細書においては、【0040】の記載や、【0057】の無脂固形分と塩分を書き分けている記載を考慮すると、本件特許明細書においては、無脂乳固形分としては、ビタミン類や塩類とは別に、成分を計算しているものと理解できる。
したがって、甲5発明においては、無脂乳固形分としては、「可食部100gあたり、」「たんぱく質 0.6g、」「炭水化物 4.4g、灰分1.4g」によって計算することができ、合計が6.4gであるから、本件特許発明2の「無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含む」ことに該当しない。
したがって、甲5発明において、相違点1−2は、実質的な相違点である。

ウ−2 相違点2−2の判断
相違点2−2について検討する。

相違点2−2に関して、引用例1摘記(7a)から明らかなように、バターの成分規格として、「乳脂肪分 八〇・〇%以上、水分 一七・〇%以下」であることが定められている以上、甲5発明の発酵バターも、乳脂肪分が80.0%含まれているのは明らかであるので、相違点2−2は、実質的な相違点ではない。

エ−2 小括
したがって、本件特許発明2は、甲第5号証に記載された発明とはいえない。

(3)取消理由の判断のまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用例1を参照しても、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第5号証に記載された発明とはいえないから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないとはいえない。
よって、取消理由は、本件訂正によって解消し理由がなく、本件特許発明1、2に係る特許は、特許法第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2項の規定により取り消されるべきではない。

取消理由に採用しなかった特許異議申立人が申し立てた理由について

1 特許異議申立理由2−1(特許法第29条第2項)について
(1)甲第1号証に記載された発明
ア 甲第1号証は、バター、バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッドの脂肪を直接測定するための正確で迅速な方法に関する文献で((1a))、表6に、試料6として、無脂乳固形分、水分、脂質の各濃度(%w/w)が、3.1、16.0、80.9である結果が示されているといえる。

イ したがって、摘記(1c)の試料6のバター試料の組成の値とから、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。
「無脂乳固形分3.1(%w/w)、水分16.0(%w/w)、脂質80.9(%w/w)含有するバター試料」(以下「甲1発明」という。)

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1と甲1発明との対比・判断
(ア)本件特許発明1と甲1発明との対比
a 甲1発明の「脂質80.9(%w/w)」は、本件特許発明1の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下」含むことに該当し、甲1発明の「水分16.0(%w/w)」は、本件特許発明1の「水分を5重量%以上17重量%以下」含むことに該当し、甲1発明の「バター試料」は、本件特許発明1の「無発酵バター」と「バター」の限りにおいて共通する。

b したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下で含む
バター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−1:本件特許発明1が「無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む」ことを特定しているのに対して、甲1発明では、無脂乳固形分3.1(%w/w)である点。
相違点2−1:本件特許発明1が「無発酵バター」であるのに対して、甲1発明が「バター試料」である点。

(イ)本件特許発明1と甲1発明との相違点1−1の判断
a 本件特許発明1と甲1発明の無脂乳固形分の割合が相違している点は、甲1発明は、甲第1号証において、バターの測定サンプルの一つとして確立したものとして記載されており、各成分中、無脂乳固形分酢酸3.1(%w/w)と特定されているにもかかわらず、それらの成分のうち無脂乳固形分のみに着目して、3.8重量%以上に増加し変更することには、動機付けがない。

b さらに、甲第1号証は、バター、バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッドの脂肪を直接測定するための正確で迅速な方法に関する文献であり(摘記(1a))、その他の甲第1号証に記載されている表6のバター試料1〜5をみても、無脂乳固形分は、それぞれ、1.5、2.2、2.7、2.9、2.9(%w/w)であり、甲1発明よりもさらに無脂乳固形分が少ない試料ばかりであり、敢えて無脂乳固形分を増加したバター試料を作製する示唆もないといえる。

c また、甲第2号証は、通常の天然生クリームに比べ加熱による風味劣化および色調の黄変を伴うことなく乳化状態の安定な且つ風味の優れたクリームを製造する方法として、15〜45℃の生クリームに乳成分を添加することを特徴とする、改質クリームの製造法に関するものであり(摘記(2a))、解決手段である添加する乳成分としてバターが用いられているのであり、相違点1−1の構成であるバターの無脂乳固形分の含有量を高めることについての記載や示唆があるわけでもない。
そして、甲第3号証摘記(3a)には、バターのカード含有量に関する記載がなされてはいるが、バターのカード含有量と本件特許発明1における無脂乳固形分含有量との関係はさておき、通常は1.0%を超えることはめったにない、許容量は1%である旨の記載があり、少なくとも甲1発明において、無脂乳固形分含有量を増加させることの示唆があるとはいえない。
さらに、甲第4号証は、バターの界面バター固形を濃縮する方法等に関係し、バターを含む原材料から水またはバター脂肪を除去して中間体を生成し、非乳脂肪を中間体と組み合わせて中間ブレンドを形成し、中間ブレンドを処理してバターベースの製品を形成することを含む、バター/マーガリンブレンドなどのバターベースの製品を製造する方法に関するもので(摘記(4a)摘記(4b))、そもそもバター自体を製造するものではないし、バター固形中間体やバター/マーガリンブレンド製品をみても、SNFの値として、3.8重量%以上のものが示されているわけでもない。
したがって、甲1発明において、甲第1号証との関連性の特段の明記のない甲第2号証〜甲第4号証に記載された技術的事項を考慮しても、バターの無脂乳固形分の含有量を3.8重量%以上に高めることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

d そして、本件特許発明1は、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む無発酵バター。」との発明特定事項全体によって、本件特許明細書【0024】に記載された「無脂乳固形分を多く含みながらも,風味に優れた,さわやかなバターを提供できる。」という予測できない顕著な効果を奏している。

e 特許異議申立人は、特許異議申立書25〜26頁において、甲第2号証の「生クリーム」をバターの原料に使用してみることや、甲第3号証にカード含有量が10%もの高い値になる可能性があることや、甲第4号証に具体的に記載されていないが界面バター固形を濃縮されたバターは目的の一つであるから実質的に記載されていることを指摘して、甲1発明において、バターの無脂乳固形分の含有量を増加させることを当業者が容易に想到し得る旨主張している。
しかしながら、甲1発明が認定された甲第1号証の記載から、甲1発明のバターの無脂乳固形分の含有量に着目して増加させる動機付けがない上に、生クリームの風味及び物性の改良方法として、解決手段としてバター等の乳成分を添加することを前提とする甲第2号証記載の技術的事項や、通常は1%をめったに超えることはないとの前提で、カードの高含有量の可能性とその場合の保湿特性や水分の高度な取り込みの促進の示唆をしているにすぎない甲第3号証記載の技術的事項や、具体的な組成の記載がない中間体や本件特許発明1と成分組成の異なるバター/マーガリンブレンド製品の製造に着目している甲第4号証記載の技術的事項を考慮しても、本件特許発明1の効果の予測できない顕著な効果の点も含め、本件特許発明1を当業者が容易に発明することはできないのは、上述のとおりである。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

f したがって、本件特許発明1は、相違点2−1について検討するまでもなく、甲1発明から当業者が容易に発明することができたものではない。

イ 本件特許発明2と甲1発明との対比・判断
(ア)本件特許発明2と甲1発明との対比
a 甲1発明の「脂質80.9(%w/w)」は、本件特許発明2の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下」含むことに該当し、甲1発明の「水分16.0(%w/w)」は、本件特許発明2の「水分を5重量%以上17重量%以下」含むことに該当し、甲1発明の「バター試料」は、本件特許発明2の「バター」に相当する。

b したがって、本件特許発明2と甲1発明とは、「
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下で含む
バター。」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−2:本件特許発明2が「無脂乳固形分を7%以上10重量%以下で含む」ことを特定しているのに対して、甲1発明では、無脂乳固形分3.1(%w/w)である点。

(イ)本件特許発明2と甲1発明との相違点1−2の判断
a 本件特許発明1と甲1発明の無脂乳固形分の割合が相違している点は、甲1発明は、甲第1号証において、バターの測定サンプルの一つとして確立したものとして記載されており、各成分中、無脂乳固形分酢酸3.1(%w/w)と特定されているにもかかわらず、それらの成分のうち無脂乳固形分のみに着目して、7重量%以上に増加し変更することには、動機付けがない。

b さらに、前記ア(イ)b、cで検討したのと同様に、甲1発明において、甲第1号証の記載や示唆、甲第2号証〜甲第4号証記載の技術的事項を考慮しても、バターの無脂乳固形分の含有量を7重量%以上に高めることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

c そして、本件特許発明2は、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含むバター。」との発明特定事項全体によって、本件特許明細書【0024】に記載された「無脂乳固形分を多く含みながらも,風味に優れた,さわやかなバターを提供できる。」という予測できない顕著な効果を奏している。

d したがって、本件特許発明2は、甲1発明から当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)特許異議申立理由2−1のまとめ
特許異議申立理由2−1には、理由がない。

2 特許異議申立理由2−2(特許法第29条第2項)について
(1)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証は、改質クリームの製造法に関し、詳細には生クリームの風味および物性を改良した改質クリームの製造法、に関する文献であり(摘記(2b))、摘記(2a)の記載から、改質クリームの発明としては、以下の発明が認定できるといえる。

「15〜45℃の生クリームに、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上の乳成分を添加することで製造した生クリームの風味および物性を改良した改質クリーム。」(以下「甲2発明」という。)

(2) 対比・判断
ア 本件特許発明3と甲2発明との対比・判断
(ア)本件特許発明3と甲2発明との対比
a 甲2発明の「15〜45℃の生クリームに、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上の乳成分を添加した生クリームの風味および物性を改良した改質クリーム。」と本件特許発明3の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られるバター。」とは、「乳成分をクリームに加える工程を含む方法で製造した」ものである限りにおいて共通する。

b したがって、本件特許発明3と甲2発明とは、「乳成分をクリームに加える工程を含む方法で製造したもの。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−3:本件特許発明3が「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含」む「バター」であることを特定しているのに対して、甲2発明では、「生クリームの風味および物性を改良した改質クリーム」である点。
相違点2−3:本件特許発明3が「脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる」と特定されているのに対して、甲2発明が「15?45℃の生クリームに、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上の乳成分を添加することで製造した」と特定している点。

(イ)本件特許発明3と甲2発明との相違点1−3及び2−3の判断
相違点1−3及び相違点2−3は、本件特許発明3の課題と有機的に関連しており、併せて検討する。
a 甲2発明は、生クリームの風味および物性を改良した改質クリームの製造法に関する甲第2号証から認定されたものであり、甲第2号証には、特定温度の生クリームにバター等の乳成分を添加することで、通常の天然生クリームに比べ加熱による風味劣化および色調の黄変を伴うことなく乳化状態の安定な且つ風味の優れたクリームを製造できたことが記載されているだけで(摘記(2a)摘記(2b))、改質クリームの発明である甲2発明を、本件特許発明3のバターの発明に変更する動機付けがあるとはそもそもいえないし、当然本件特許発明3の脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含むとのバターの成分組成に関する記載も示唆も存在しない。

b また、改質クリームを製造する際に添加する乳成分の多数の選択肢の例として、たまたまバターやチーズ等とともに、脱脂濃縮乳や脱脂粉乳が挙げられるだけの記載から、改質クリームの甲2発明において、その最終的な製造対象を上記aで述べたような特定成分組成のバターに変更することはできない上に、その特定成分組成のバターの製造方法として、「脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる」との特定をすることもできないことは明らかである。

b 甲第1号証は、バター、バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッドの脂肪を直接測定するための正確で迅速な方法に関する文献であり(摘記(1a))、甲第1号証に記載されている表6のバター試料1〜6をみても、無脂乳固形分は、それぞれ、1.5、2.2、2.7、2.9、2.9、3.1(%w/w)であり、バターの測定サンプルとしてそれぞれ確立したものとして記載されており、各成分中、無脂乳固形分のみに着目して、3.8重量%以上に増加し変更することには動機付けがないし、敢えて無脂乳固形分を増加したバター試料を作成することについても、その製造方法についても示唆がないといえる。
そして、甲第3号証摘記(3a)には、バターのカード含有量に関する記載がなされてはいるが、バターのカード含有量と本件特許発明3における無脂乳固形分含有量との関係はさておき、通常は1.0%を超えることはめったにない、許容量は1%である旨の記載があり、少なくとも甲2発明において、無脂乳固形分含有量を増加させることやその製造方法の示唆があるとはいえない。
さらに、甲第4号証は、バターの界面バター固形を濃縮する方法等に関係し、バターを含む原材料から水またはバター脂肪を除去して中間体を生成し、非乳脂肪を中間体と組み合わせて中間ブレンドを形成し、中間ブレンドを処理してバターベースの製品を形成することを含む、バター/マーガリンブレンドなどのバターベースの製品を製造する方法に関するもので(摘記(4a)摘記(4b))、そもそもバター自体を製造するものではないし、バター固形中間体やバター/マーガリンブレンド製品をみても、SNFの値として、3.8重量%以上のものが示されているわけでもない。
したがって、甲2発明において、甲第2号証との関連性の特段の明記のない甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証に記載された技術的事項を考慮しても、バターの無脂乳固形分の含有量を3.8重量%以上に高めることやその特定成分組成のバターの製造方法として、「脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

c そして、本件特許発明3は、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られるバター。」との発明特定事項全体によって、本件特許明細書【0024】に記載された「無脂乳固形分を多く含みながらも,風味に優れた,さわやかなバターを提供できる。」という予測できない顕著な効果を奏している。

d 特許異議申立人は、特許異議申立書26〜27頁において、クリームはバターの主要な原料であることや甲第3号証や甲第4号証から無脂乳固形分が増加した中間体に由来する製品に特徴的風味、食感を与えることは技術常識であるから、甲第2号証の「生クリーム」をバターの原料としてバターを製造することは当業者が容易になし得ることや甲第3号証に無脂乳固形分を含めたバターの成分組成が記載されている旨主張している。
しかしながら、クリームはバターの主要な原料であるからといって、甲第3号証や甲第4号証にも無脂乳固形分が増加したバターの成分組成もその製造方法も記載されていないし、そのようにして製造されたバターの作用効果も記載されていないのであるから、甲2発明が認定された甲第2号証の記載から、甲2発明の改質クリームの発明の対象を特定成分組成のバターに変更する動機付けがない上に、通常は1%をめったに超えることはないとの前提で、カードの高含有量の可能性とその場合の保湿特性や水分の高度な取り込みの促進の示唆をしているにすぎない甲第3号証記載の技術的事項や、具体的な組成の記載がない中間体や本件特許発明1と成分組成の異なるバター/マーガリンブレンド製品の製造に着目している甲第4号証記載の技術的事項を考慮しても、本件特許発明3の効果の予測できない顕著な効果の点も含め、本件特許発明3を当業者が容易に発明することはできないのは、上述のとおりである。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

e したがって、本件特許発明3は、甲2発明から当業者が容易に発明することができたものではない。

イ 本件特許発明4と甲2発明との対比・判断
(ア)本件特許発明4と甲2発明との対比
a 甲2発明の「15〜45℃の生クリームに、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上の乳成分を添加した生クリームの風味および物性を改良した改質クリーム。」と本件特許発明4の「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られるバター。」とは、「乳成分をクリームに加える工程を含む方法で製造した」ものである限りにおいて共通する。

b したがって、本件特許発明4と甲2発明とは、「乳成分をクリームに加える工程を含む方法で製造したもの。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1−4:本件特許発明4が「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含」む「バター」であることを特定しているのに対して、甲2発明では、「生クリームの風味および物性を改良した改質クリーム」である点。
相違点2−4:本件特許発明4が「脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる」と特定されているのに対して、甲2発明が「15〜45℃の生クリームに、バター、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調整粉乳、醗酵乳、乳酸菌飲料および乳糖から選ばれる一種または二種以上の乳成分を添加することで製造した」と特定している点。

(イ)本件特許発明4と甲2発明との相違点1−4及び2−4の判断
相違点1−4及び相違点2−4は、本件特許発明4の課題と有機的に関連しており、併せて検討する。
a 甲2発明は、生クリームの風味および物性を改良した改質クリームの製造法に関する甲第2号証から認定されたものであり、甲第2号証には、特定温度の生クリームにバター等の乳成分を添加することで、通常の天然生クリームに比べ加熱による風味劣化および色調の黄変を伴うことなく乳化状態の安定な且つ風味の優れたクリームを製造できたことが記載されているだけで(摘記(2a)摘記(2b))、改質クリームの発明である甲2発明を、本件特許発明4のバターの発明に変更する動機付けがあるとはそもそもいえないし、当然本件特許発明4の脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含むとのバターの成分組成に関する記載も示唆も存在しない。

b また、改質クリームを製造する際に添加する乳成分の多数の選択肢の例として、たまたまバターやチーズ等とともに、脱脂濃縮乳や脱脂粉乳が挙げられるだけの記載から、改質クリームの甲2発明において、その最終的な製造対象を上記aで述べたような特定成分組成のバターに変更することはできない上に、その特定成分組成のバターの製造方法として、「脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる」との特定をすることもできないことは明らかである。

b 甲第1号証は、バター、バター−マーガリンブレンド、乳脂肪スプレッドの脂肪を直接測定するための正確で迅速な方法に関する文献であり(摘記(1a))、甲第1号証に記載されている表6のバター試料1〜6をみても、無脂乳固形分は、それぞれ、1.5、2.2、2.7、2.9、2.9、3.1(%w/w)であり、バターの測定サンプルとしてそれぞれ確立したものとして記載されており、各成分中、無脂乳固形分のみに着目して、3.8重量%以上に増加し変更することには動機付けがないし、敢えて無脂乳固形分を増加したバター試料を作成することについても、その製造方法についても示唆がないといえる。
そして、甲第3号証摘記(3a)には、バターのカード含有量に関する記載がなされてはいるが、バターのカード含有量と本件特許発明3における無脂乳固形分含有量との関係はさておき、通常は1.0%を超えることはめったにない、許容量は1%である旨の記載があり、少なくとも甲2発明において、無脂乳固形分含有量を増加させることやその製造方法の示唆があるとはいえない。
さらに、甲第4号証は、バターの界面バター固形を濃縮する方法等に関係し、バターを含む原材料から水またはバター脂肪を除去して中間体を生成し、非乳脂肪を中間体と組み合わせて中間ブレンドを形成し、中間ブレンドを処理してバターベースの製品を形成することを含む、バター/マーガリンブレンドなどのバターベースの製品を製造する方法に関するもので(摘記(4a)摘記(4b))、そもそもバター自体を製造するものではないし、バター固形中間体やバター/マーガリンブレンド製品をみても、SNFの値として、3.8重量%以上のものが示されているわけでもない。
さらに、甲第6号証には、生乳の膜濃縮、脱酸素処理、遠心分離機によるクリーム分離についての記載はあるものの、クリームのコクや風味を目的としたクリームの製造に関するものであり、特定成分組成のバターの製造に用いることや、その製造工程全体の記載があるわけでもない。
したがって、甲2発明において、甲第2号証との関連性の特段の明記のない甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第6号証に記載された技術的事項を考慮しても、バターの無脂乳固形分の含有量を3.8重量%以上に高めることやその特定成分組成のバターの製造方法として、「脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる」との特定をすることは、当業者が容易になし得る技術的事項であるとはいえない。

c そして、本件特許発明4は、「脂肪分を80重量%以上93重量%以下,水分を5重量%以上17重量%以下,無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られるバター。」との発明特定事項全体によって、本件特許明細書【0024】に記載された「無脂乳固形分を多く含みながらも,風味に優れた,さわやかなバターを提供できる。」という予測できない顕著な効果を奏している。

d 特許異議申立人は、特許異議申立書27頁において、甲第2号証の記載を指摘し、脱脂粉乳等の乳成分の添加個所によって風味向上効果が得られないので、実験で添加個所を確認するのは過度の負担でないことや単なる設計事項であり、本件特許発明4も当業者が容易に発明することができたものである旨主張している。
しかしながら、甲第2号証は、改質クリームの製造方法の文献であり、そこに記載された記載がバターにそのまま該当するわけでないことは当然であり、特許異議申立人は、本件特許発明4のバターの特定の成分組成とすること、そのための製造工程に関する特定事項に変更することの論理付けを実質的に示しておらず、予測できない顕著な効果の点も含め、本件特許発明4を当業者が容易に発明することはできないのは、上述のとおりである。
よって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

e したがって、本件特許発明4は、甲2発明から当業者が容易に発明することができたものではない。

(3)特許異議申立理由2−2のまとめ
特許異議申立理由2−2には、理由がない。

3 特許異議申立理由2−1、2−2のまとめ
以上より、本件特許発明1〜4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

4 特許異議申立人の意見書の主張について
特許異議申立人は、令和4年4月18日付け意見書において、参考資料1〜2を提出して、参考資料1の「バター」の規定と、参考資料2の「生乳」の成分の記載を指摘して、生乳を原料に本件特許発明の無脂乳固形分の範囲とするには、水分を調整すればよく格別特異な数値でない旨主張している。
しかしながら、特許異議申立人は、水分を特定範囲に調整することの動機付けも示さずに、本件特許発明の無脂乳固形分の数値範囲が格別特異な数値でないと主張しているだけで、バターの無脂乳固形分の数値範囲として、甲第1号証〜甲第4号証に記載も示唆もされていない以上、本件特許発明の構成とすることが当業者が容易になし得るとはいえないし、その効果が予測を超えた顕著なものでないともいえない。
したがって、上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項1〜4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、取り消されるべきものとはいえない。
また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含む
無発酵バター。
【請求項2】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を7重量%以上10重量%以下で含み,
前記脂肪分は,乳脂肪分である
バター。
【請求項3】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,
脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方をクリームに混合したものを混練するか,又は,クリームを混練しつつ脱脂濃縮乳及び脱脂粉乳のいずれか又は両方を前記クリームに添加することにより得られる
バター。
【請求項4】
脂肪分を80重量%以上93重量%以下,
水分を5重量%以上17重量%以下,
無脂乳固形分を3.8重量%以上10重量%以下で含み,
脱脂濃縮乳及び第1の脱脂粉乳のいずれか又は両方を生乳に添加して得られる全脂濃縮乳をろ過することで濃縮乳を得て,前記濃縮乳を遠心分離してクリームを得て,前記クリームを混練することにより得られる
バター。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-20 
出願番号 P2019-033663
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23C)
P 1 651・ 113- YAA (A23C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 瀬良 聡機
冨永 みどり
登録日 2021-02-05 
登録番号 6833884
権利者 株式会社明治
発明の名称 無脂乳固形分を多く含み風味に優れたバター  
代理人 廣瀬 隆行  
代理人 廣瀬 隆行  

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