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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01N
審判 全部申し立て 2項進歩性  A01N
管理番号 1387499
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-02 
確定日 2022-05-11 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6837732号発明「抗ウイルス性成形材料及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6837732号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第6837732号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6837732号の請求項1〜4に係る特許についての出願は、平成27年1月9日の出願であって、令和3年2月15日にその特許権の設定登録がされ、同年3月3日にその特許公報が発行され、その後、令和3年9月2日に森川 真帆(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和3年12月 3日付け 取消理由通知
令和4年 2月 4日 意見書・訂正請求書の提出
同年 2月21日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 3月22日 意見書の提出(特許異議申立人)

第2 訂正の適否
令和4年2月4日付け訂正請求は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜4について一群の請求項ごとに訂正することを求めるものである(以下、令和4年2月4日付け訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂」との記載を、「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂」と訂正する。
請求項1を引用する請求項2〜4(なお、訂正請求書には「請求項2〜3と記載されているが、「請求項2〜4」の誤記と認める。)も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4の「ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂」との記載を、「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂」と訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の【0007】の「前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂・・・化合物であってもよい。
また前記抗ウイルス性成形材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の合成樹脂・・・ことができる。」との記載を、「前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂・・・化合物であってもよい。
また前記抗ウイルス性成形材料は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂・・・ことができる。」と訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の【0009】の「本発明の合成樹脂としては、硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、加熱することで溶融混練することができスルホン酸系界面活性剤の分散性を向上できることから熱可塑性樹脂が好ましい。」との記載を、「本発明の合成樹脂としては、加熱することで溶融混練することができスルホン酸系界面活性剤の分散性を向上できることから熱可塑性樹脂が好ましい。」と訂正する。

2 本件訂正の適否
(1)一群の請求項について
本件訂正は、訂正前の請求項1〜4についてのものであるところ、訂正前の請求項2〜4は請求項1を引用するものであり、訂正前の請求項1〜4は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、本件訂正の請求は、訂正前の請求項1〜4についてされているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正事項1、2について
ア 訂正の目的
訂正事項1、2は、本件訂正前の請求項1、4に記載された「合成樹脂」について、選択肢からポリオレフィン系樹脂を削除することで限定し、熱可塑性樹脂に限定するものである。
したがって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無
訂正事項1、2は合成樹脂の選択肢からポリオレフィン系樹脂を削除するものであり、合成樹脂を熱可塑性樹脂に限定するものである。
特許された願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0009】には、「本発明の合成樹脂としては、硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、加熱することで溶融混練することができスルホン酸系界面活性剤の分散性を向上できることから熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。」との記載があり、合成樹脂が、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等であることが記載されている。
したがって、訂正事項1、2は、本件特許明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
よって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1、2による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、そのカテゴリー変更もないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1、2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、明細書の【0007】に記載された合成樹脂について、選択肢からポリオレフィン樹脂を削除し、熱可塑性樹脂であるとすることで、訂正事項1、2による特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3は、合成樹脂の選択肢の一部を削除するに過ぎず、また、本件特許明細書等に、合成樹脂が、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等であることが記載されていることは上記(2)イで述べたとおりであり、【0007】の訂正をすることで間接的に特許請求の範囲の記載の技術的意味を拡張、変更するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、明細書の【0009】の合成樹脂に関する記載から、「硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、」との記載を削除することで、訂正事項1、2によって、合成樹脂が熱可塑性樹脂であることが特定された特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。

新規事項の追加の有無及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項4は、明細書の【0009】の合成樹脂に関する記載から、「硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、」との記載を削除するに過ぎず、【0009】の訂正をすることで間接的に特許請求の範囲の記載の技術的意味を拡張、変更するものではないから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)明細書の訂正と関係する請求項について
訂正事項3及び4は、明細書に記載の合成樹脂に関するものであり、特許請求の範囲のすべての請求項である請求項1〜4に関係しているが、本件訂正請求では、請求項1〜4について訂正が請求されている。したがって、訂正事項3及び4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、令和4年2月4日提出の訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正後の請求項〔1〜4〕について訂正することを認められるので、本件特許の請求項1〜4に係る発明は、令和4年2月4日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件発明1」などと、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)である。

「【請求項1】
ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む抗ウイルス性成形材料。
【請求項2】
前記合成樹脂と前記スルホン酸系界面活性剤とが溶融混練された請求項1に記載の抗ウイルス性成形材料。
【請求項3】
前記スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物である請求項1または請求項2に記載の抗ウイルス性成形材料。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部にスルホン酸系界面活性剤0.5重量部以上とを混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、
前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の抗ウイルス性成形材料を製造する製造方法。」

第4 当審が通知した令和3年12月3日付け取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由の概要

1 特許異議申立人が申し立てた理由の概要
[申立理由1]訂正前の本件の請求項1〜2、4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。
よって、訂正前の請求項1〜2、4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

具体的な理由の概要は次のとおりである。
本件発明1〜2、4は、スルホン酸系界面活性剤を合成樹脂に含有させて抗ウイルス性成形材料とすることにより、抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題(以下「課題」という。)とするものである。
本件特許明細書に記載された実施例のアルキルベンゼンスルホン酸Naでは上記課題が解決されているといえるが、アルキルベンゼンスルホン酸系化合物以外の【0012】に挙げられている、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物等を用いた場合にも、アルキルベンゼンスルホン酸系化合物を用いた場合と同等の作用効果が発揮されるとはいえない。
したがって、本件発明1〜2、4は、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、当業者が、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき、発明の課題を解決できると認識できるとはいえない。

[申立理由2]訂正前の本件の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、同下記甲第1〜3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、訂正前の本件の請求項1〜4に係る特許は特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立理由3]訂正前の本件の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第2〜4号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、訂正前の本件の請求項1〜4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

[申立理由4]訂正前の本件の請求項1〜4に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第2〜3、5号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、訂正前の本件の請求項1〜4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。



甲第1号証:特開2005−97596号公報(以下「甲1」という。他の甲各号証についても同様。)
甲第2号証:特開2007−107173号公報
甲第3号証:特開2008−73118号公報
甲第4号証:特開2011−20993号公報
甲第5号証:特開2013−193966号公報

申立理由2のうち進歩性の理由は、甲1を主引用例とし、甲2及び3を副引用例とする理由であるが、以下に示す、甲1を主引用例とし、甲2、3、5を副引用例とする当審が通知した理由1と引用例がすべて重複するから、理由1に包含される理由である。

申立理由4は、甲5を主引用例とし、甲2及び3を副引用例とする理由であり、以下に示す、当審が通知した理由1のうち甲5を主引用例とし、甲2及び3を副引用例とする理由と同じである

2 当審が通知した令和3年12月3日付け取消理由の概要

[理由1]本件特許の請求項1〜4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲1〜甲3、甲5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1〜4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。


甲1:特開2005−97596号公報
甲2:特開2007−107173号公報
甲3:特開2008−73118号公報
甲5:特開2013−193966号公報

第5 当審の判断
当審は、本件発明1〜4に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。
理由は以下のとおりである。

1 甲各号証について
(1)甲各号証の記載事項
甲1:
1a)「【請求項1】
下記(A)、(B)および(C)からなり、(A)を40〜98重量%、(B)を1〜30重量%および(C)を1〜30重量%含有することを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物。
(A):ポリオレフィン樹脂
(B):ポリオレフィン(a)のブロックと、体積固有抵抗値が105〜1011Ω・cmの親水性ポリマー(b)のブロックとが、繰り返し交互に結合した構造を有するブロックポリマーからなる帯電防止剤
(C):(A)とのSP値の差が0.1〜1.5、かつ数平均分子量が800〜50,000であるオレフィン系重合体の変性物(c)からなる密着性向上剤
・・・
【請求項7】
さらに、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩(D)、界面活性剤(E)およびイオン性液体(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させてなる請求項1〜6のいずれか記載の樹脂組成物。」

1b)「【0001】
本発明は、塗装性に優れたポリオレフィン樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、静電塗装可能で機械的強度が良好な成形体用のポリオレフィン樹脂組成物に関する。」

1c)「【0055】
本発明の樹脂組成物には、成形体の帯電防止性をさらに向上させる目的で、必要によりアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩(D)、界面活性剤(E)およびイオン性液体(F)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
【0056】
(D)としては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)および/またはアルカリ土類金属(例えばマグネシウムおよびカルシウム)の有機酸(C1〜7のモノ−またはジカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸および安息香酸、およびC1〜9のスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸)塩、および無機酸[例えばハロゲン化水素酸(例えば塩酸および臭化水素酸)、過塩素酸、硫酸、リン酸およびチオシアン酸]塩が挙げられる。
・・・
【0058】
(D)の使用量は、ポリオレフィン樹脂組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、帯電防止効果および成形体表面に析出せず良好な外観の成形体を与えるとの観点から好ましくは0.001〜3%、さらに好ましくは0.01〜2%である。
(D)を添加する方法については特に限定はないが、該ポリオレフィン樹脂組成物中への効果的な分散の観点から、(B)に予め分散させておくことが好ましく、(B)の製造(重合)時(製造前の原料または製造途中の重合系中)に予め(D)を添加し分散させておくのがさらに好ましい。
【0059】
界面活性剤(E)としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。
・・・
【0060】
アニオン性界面活性剤としては、前記(D)を除く化合物、例えばカルボン酸(例えばC8〜22の飽和または不飽和脂肪酸およびエーテルカルボン酸)またはその塩;硫酸エステル塩〔例えば高級アルコール硫酸エステル塩(例えばC8〜18の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩)および高級アルキルエーテル硫酸エステル塩[例えばC8〜18の脂肪族アルコールのEO(1〜10モル)付加物の硫酸エステル塩]〕;スルホン酸塩[C10〜20、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、ハイドロカーボン(例えばアルカン、α−オレフィンなど)スルホン酸塩およびイゲポンT型];およびリン酸エステル塩[例えば高級アルコール(C8〜60)EO付加物リン酸エステル塩およびアルキル(C4〜60)フェノールEO付加物リン酸エステル塩]が挙げられる。
上記の塩としては例えばアルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばカルシウムおよびマグネシウム)塩、アンモニウム塩、アルキルアミン(C1〜20)塩およびアルカノールアミン(C2〜12、例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)塩が挙げられる。
・・・
【0063】
上記の(E)は単独でも2種以上を併用してもいずれでもよい。これらのうち、帯電防止性の観点から好ましいのはアニオン性界面活性剤、さらに好ましいのはスルホン酸塩、とくに好ましいのはアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩およびハイドロカーボンスルホン酸塩である。
【0064】
(E)の使用量は、ポリオレフィン樹脂組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、帯電防止効果および成形体表面に移行せず、良好な外観を与えるとの観点から好ましくは0.001〜5%、さらに好ましくは0.01〜3%である。
(E)を添加する方法についても特に限定はないが、ポリオレフィン樹脂組成物中への効果的な分散の観点から、(B)中に予め分散させておくことが好ましく、(B)の製造(重合)時(製造前の原料または製造途中の重合系中)に予め(E)を添加し分散させておくのがさらに好ましい。」

1d)「【0093】
本発明の樹脂組成物は、(A)、(B)、(C)および必要により(D)、(E)、(F)および/または(G)を溶融混合することにより得られる。
溶融混合する方法としては、通常の方法が用いられ、一般的にはペレット状または粉体状の重合体同士を適切な混合機、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法が適用できる。
混練時の各成分の添加順序については特に限定はないが、例えば、(1)(A)〜(C)、および必要により(D)〜(G)を一括ブレンド・混練する方法、(2)少量の(A)と、(B)、(C)、および必要により(D)〜(G)をブレンド・混練した後、残りの(A)をブレンド・混練する方法、並びに(3)(B)〜(G)をブレンド・混練した後に(A)をブレンド・混練する方法が挙げられる。これらのうち(2)および(3)の方法は、マスターバッチ法またはマスターペレット法と呼ばれる方法であり、成形体の機械特性の観点から好ましい。」

1e)「【0102】
実施例1〜4、比較例1〜5
表1に示す配合処方(部)に従って、各成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して、樹脂組成物(実施例1〜4および比較例1〜5)を得た。
【0103】
【表1】

【0104】
ポリオレフィン樹脂(A1):ポリプロピレン[商品名:サンアロマーPM
771M、サンアロマー(株)製、SP値8
.0]
(A2):エチレン/プロピレン共重合体[商品名:E
P912P、JSR(株)製、SP値8.2

密着性向上剤 (C3):ポリブタジエンポリオールの水素化物[商品
名:ポリテールH、三菱化学(株)製、SP
値8.5、水酸基価46.6]
アルカリ金属塩 (D) :ドデシルベンゼンスルホン酸
ポリアミド樹脂 (I) :[商品名:UBEナイロン6 1013B、
宇部興産(株)製]
【0105】
上記樹脂組成物を射出成形機[PS40E5ASE、日精樹脂工業(株)製]を用いて、シリンダー温度240℃、金型温度50℃の条件で成形体を作成した。」

甲2:
2a)「【0026】
スルホン酸系界面活性剤としては、より好ましくはα−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸塩(炭素数:18)が、抗ウィルス性の点から好ましい。
なお、スルホン酸系界面活性剤が、特にインフルエンザなどのウィルスに対して効果を有する理由は定かではないが、スルホン酸系界面活性剤は、ウィルスを形成するたんぱく質を可溶化、あるいは乳化する力が強く、ウィルスの構造を破壊できるためではないかと考えられる。
上述のように、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を用いることにより、柔軟性等の風合い向上に加えて、さらに抗ウィルス性の付与ができる。
従来の薄葉紙処理剤においては、スルホン酸系界面活性剤を使用するとインフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性は付与できるが、その一方で、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が損なわれる傾向がある。本発明によれば、薄葉紙に優れた抗ウィルス性が付与でき、かつ、薄葉紙の風合いにも優れ、保存安定性も良好な薄葉紙処理剤が提供できる。
・・・
【0032】
特に、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を使用する場合、スルホン酸系界面活性剤の配合量は、薄葉紙処理剤中、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは1〜20質量%である。下限値以上であることにより、抗ウィルス性が向上し、上限値以下であることにより、薄葉紙の風合いの低下をより抑制することができ、好適には薄葉紙の風合いを向上させることができる。また、保存安定性も向上する。」

2b)「【0056】
また、実施例13〜15の薄葉紙処理剤について、抗ウィルス性を以下の様にして評価した。
【0057】
「抗ウィルス性の評価」
10日発育鶏卵に、インフルエンザウィルス(A型:H5N1)を所定量添加した培地に、薄葉紙処理剤を80倍希釈した試料液を0.1mlずつ加え、35℃で48時間培養し、感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
一方、薄葉紙処理剤を加えなかった培養液中のウィルス数を測定し、対照の感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
以下の式に従って、前記対照と比較して、各薄葉紙処理剤を加えた場合に、感染価がどれだけ小さい値を示したか(ウィルス減少効果)を算出した。
そして、下記基準に基づいてその抗ウィルス性を判定し、結果を表4に示した。
【0058】
ウィルス減少効果の値を算出する式は以下の通りである。
ウィルス減少効果=LOG[対照感染価(EID50/0.1ml)−処理剤接触時の感染価(EID50/0.1ml)]
【0059】
抗ウィルス性の評価の判定基準は以下の通りである。
3以上 ◎
2以上、3未満 ○
2未満 ×
【0060】
【表1】

・・・
【表4】

・・・
【0065】
また、表4に示した結果より、本発明に係る薄葉紙処理剤は、抗ウィルス性が優れていることが確認できた。」

甲3:
3a)「【0022】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「スルホン酸系界面活性剤」とは、スルホン酸塩基(−SO3M;Mは対イオンを示す。)を有する界面活性剤を示す。
スルホン酸系界面活性剤の構造中の炭素数は、好ましくは8〜22、さらに好ましくは10〜20である。
スルホン酸系界面活性剤としては、例えば下記一般式によってそれぞれ表される痾−スルホ脂肪酸エステル塩(一般式(1))、痾−オレフィンスルホン酸塩(一般式(2))、アルキルベンゼンスルホン酸塩(一般式(3))等が挙げられる。

[式中、R1、R2はそれぞれ独立してアルキル基を示し、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(1)で表される痾−スルホ脂肪酸エステル塩において、R1の炭素数は8〜18程度である。R2の炭素数は1〜6程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。

[式中、Rはアルキル基を示し、nは0以上の整数であり、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(2)で表される痾−オレフィンスルホン酸塩において、Rの炭素数は9〜15程度である。nは0〜5程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。
係る痾−オレフィンスルホン酸塩は、アルケンスルホン酸塩(60〜70質量%)と、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩(30〜40質量%)との混合物である。
また、係る痾−オレフィンスルホン酸は、例えばエチレンのオリゴマー化、n−パラフィンの脱水素化、アルコールの脱水、または石油ワックスの熱分解で得られたα−オレフィンを3酸化イオウ等のスルホン化剤でスルホン化することにより得ることができる。
原料のα−オレフィンは、一般に炭素数の異なるオレフィンの混合物である。
なお、α−オレフィンスルホン酸は、前記α−オレフィンを3酸化イオウ等のスルホン化剤でスルホン化して得られるが、アルケンスルホン酸及びサルトンが生成し、当該サルトンはアルカリ性条件下で加水分解し、ヒドロキシアルカンスルホン酸が生じるため、これらの混合物となる。
また、係る前記痾−オレフィンスルホン酸塩は、不純物または副生物として硫酸ナトリウム、ジスルホネート、未反応α−オレフィンを含むものを包含する。

[式中、Rはアルキル基を示し、Mは対イオンを示す。]
前記一般式(3)で表されるアルキルベンゼンスルホン酸塩において、Rの炭素数は10〜15程度である。Mは、上記対イオンと同様のものが挙げられる。
スルホン酸系界面活性剤としては、より好ましくは痾−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸塩(炭素数:18)が、抗ウィルス性の点から好ましい。
なお、スルホン酸系界面活性剤が、特にインフルエンザなどのウィルスに対して効果を有する理由は定かではないが、スルホン酸系界面活性剤は、ウィルスを形成するたんぱく質を可溶化、あるいは乳化する力が強く、ウィルスの構造を破壊できるためではないかと考えられる。
上述のように、(C)成分としてスルホン酸系界面活性剤を用いることにより、柔軟性等の風合い向上に加えて、さらに抗ウィルス性の付与ができる。
従来の薄葉紙処理剤においては、スルホン酸系界面活性剤を使用するとインフルエンザなどのウィルスに対する抗菌性は付与できるが、その一方で、滑らかさ、しっとり感、柔らかさ等の肌触り(風合い)が損なわれる傾向がある。本発明によれば、薄葉紙に優れた抗ウィルス性が付与でき、かつ、薄葉紙の風合いにも優れ、保存安定性も良好な薄葉紙処理剤が提供できる。
・・・
【0026】
・・・
また、上記(C)成分の中でも、抗ウィルス性が向上することから、スルホン酸系界面活性剤が好ましい。さらに、スルホン酸系界面活性剤の抗ウィルス性を充分に発揮させることができる点から、スルホン酸系界面活性剤以外の(c−1)成分、(c−3)成分が好ましく、さらに好ましくはモノドデカン酸ポリオキシエチレンソルビタンである。
(C)成分は、1種または2種以上混合して用いることができる。
(C)成分の配合量は、薄葉紙処理剤中、下限値について、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは1質量%以上である。上限値について、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。下限値以上であることにより保存安定性が向上し、上限値以下であることにより、経済性において有利である。」

3b)「【0035】
また、実施例13〜15の薄葉紙処理剤については、抗ウィルス性を以下の様にして評価した。
「抗ウィルス性の評価」
10日発育鶏卵に、インフルエンザウィルス(A型:H5N1)を所定量添加した培地に、薄葉紙処理剤を80倍希釈した試料液を0.1mlずつ加え、35℃で48時間培養し、感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
一方、薄葉紙処理剤を加えなかった培養液中のウィルス数を測定し、対照の感染価(EID50/0.1ml)を求めた。
以下の式に従って、前記対照と比較して、各薄葉紙処理剤を加えた場合に、感染価がどれだけ小さい値を示したか(ウィルス減少効果)を算出した。
そして、下記基準に基づいてその抗ウィルス性を判定し、結果を表4に示した。
ウィルス減少効果の値を算出する式は以下の通りである。
ウィルス減少効果=LOG[対照感染価(EID50/0.1ml)−処理剤接触時の感染価(EID50/0.1ml)]
抗ウィルス性の評価の判定基準は以下の通りである。
◎:3以上
○:2以上、3未満
×:2未満
【0036】
【表1】

・・・
【0039】
【表4】

【0040】
表2〜4に示した結果より、・・・。
また、特に表4に示した結果より、本発明に係る衛生薄葉紙は、抗ウィルス性が優れていることが確認できた。」

甲4:
4a)「【請求項1】
線状高分子の側鎖に一般式(1)〜(3)で示される構造式の置換基のうちの少なくとも一つを有するRNAウイルス感染阻止化合物を含有することを特徴とするRNAウイルス感染阻止成形用組成物。
【化1】

(m,n及びpはそれぞれ0〜2の整数を示し、R1〜R19はそれぞれ、水素、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体の何れかであって、R1〜R5のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R6〜R12のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体であり、R13〜R19のうちの少なくとも一つは、カルボキシ基、スルホン酸基又はそれらの塩若しくは誘導体である。)」

4b)「【0002】
近年、季節性インフルエンザウイルスの流行に加え、高病原性のトリインフルエンザウイルスが変異してヒト間で感染し、世界的な大流行が懸念されている。
【0003】
又、致死率のきわめて高いサーズウイルスの再発生も懸念されており、病原性の高いRNAウイルスへの不安感は高まる一方である。
【0004】
これらの問題に対して、例えば、特許文献1には、樹脂、塗料、繊維、化粧品などに添加し又は建物や備品などに塗布して抗ウイルス性効果を長期間に亘って奏する無機系抗ウイルス剤が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1で開示されている無機系抗ウイルス剤は金属成分を含有しており、金属アレルギーを引き起こすという問題点を有している。」

4c)「【0065】
本発明のRNAウイルス感染阻止成形品中におけるRNAウイルス感染阻止成形用組成物の含有量は、少ないと、所望のRNAウイルス感染阻止効果が低下することがあり、多いと、成形性が低下することがあるので、0.1〜20重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。」

4d)「【発明の効果】
【0072】
本発明のRNAウイルス感染阻止成形用組成物は、RNAウイルス感染阻止化合物を含有しており、従来から用いられている成形品に添加することによってRNAウイルス感染阻止成形品を容易に作製することができる。このRNAウイルス感染阻止成形品は、金属 アレルギーなどを生じさせるようなことなく、光の当たらない条件下においても、RNAウイルス感染阻止効果を発揮し、RNAウイルス対象物に起因してウイルスが人間に感染するのを概ね阻止して症状の発現を防止し或いは症状が表れたとしても症状の軽減を図ることができる。」

4e)「【0074】
(実施例1)
RNAウイルス感染阻止化合物であるポリスチレンをスルホン化してなる化合物のスルホン酸ナトリウム塩(アクゾノーベル社製 商品名「TL502」)100重量部とポリプロピレン100重量部とを含有するマスターバッチを予め作製した。
【0075】
次に、上記マスターバッチ4重量部とポリプロピレン100重量部とをタンブラーに供給して均一に混合して混合物を作製した後、この混合物を射出シリンダーに供給して溶融、混練した上で金型に射出して板状の成形品を得た。」

甲5:
5a)「【請求項1】
ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、合成樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
合成樹脂が硬化性樹脂であることを特徴する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
合成樹脂が熱可塑性樹脂であることを特徴する請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂が、活性エネルギー線を照射することによって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂であることを特徴する請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることを特徴する請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
ウイルス感染阻止化合物が、単量体成分としてスチレンスルホン酸又はスチレンスルホン酸塩を含有する重合体であることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の樹脂組成物。」

5b)「【背景技術】
【0002】
近年、季節性インフルエンザウイルスの流行に加え、高病原性のトリインフルエンザウイルスが変異してヒト間で感染し、世界的な大流行が懸念されている。
【0003】
又、致死率のきわめて高いサーズウイルスの再発生も懸念されており、病原性の高いウイルスへの不安感は高まる一方である。
【0004】
これらの問題に対して、例えば、特許文献1には、樹脂、塗料、繊維、化粧品などに添加し又は建物や備品などに塗布して抗ウイルス効果を長期間に亘って奏する無機系抗ウイルス剤が開示されている。
【0005】
又、特許文献2には、ドロマイトを焼成して得られる抗ウイルス性を有する塗膜を形成するための抗ウイルス性塗料組成物及びこの抗ウイルス性塗料組成物からなる塗膜を有する塗装物が開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、壁面等に塗布することにより、光が弱くても良好な抗ウイルス効果を発揮できる光触媒を含む塗料が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示されている無機系抗ウイルス剤は金属成分を含有しており、金属アレルギーを引き起こすという問題点を有している。又、特許文献2で開示されている抗ウイルス性塗料組成物は、水溶性であり、接着力が要求されるポリオレフィン系の内装材などに塗装しづらいという問題点を有している。更に、特許文献3で開示されている光触媒を含む塗料は、光が弱くても問題ないが、長時間光の当たらない屋内等の場所には使えないという問題点がある。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ウイルスがヒトに感染するのを効果的に阻止して症状の発現の予防或いは症状が表れたとしても症状の軽減を図ることができる樹脂組成物、この樹脂組成物を含有する樹脂溶液、上記樹脂組成物を用いた積層体及び樹脂シートを提供する。」

5c)「【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、合成樹脂とを含有することを特徴とする。
【0011】
ウイルス感染阻止化合物とは、ウイルス感染阻止効果を有する化合物をいう。「ウイルス感染阻止効果」とは、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、カリシウイルスなどのRNAウイルスが細胞に感染できないか又は感染後に細胞中で増殖できなくする効果をいう。このようなウイルスの感染性の有無を確認する方法としては、例えば、「医・薬科ウイルス学」(1990年4月初版発行)に記載されているようなプラック法や赤血球凝集価(HAU)測定法などが挙げられる。
【0012】
ウイルス感染阻止化合物としては、ウイルス感染阻止効果を有しておれば、特に限定されず、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの紫外線領域応答型光触媒、白金、パラジウム又は酸化銅微粒子と混合された酸化タングステン、酸化タングステンなどのタングステン系光触媒などの可視光領域応答型光触媒、ハイドロキシアパタイト、スルホン酸基又はその塩を有する重合体などが挙げられ、スルホン酸基又はその塩を有する重合体が好ましい。なお、ウイルス感染阻止化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。」

5d)「【0027】
樹脂組成物中におけるウイルス感染阻止化合物の含有量は、少ないと、樹脂組成物のウイルス感染阻止効果が低下することがあり、多いと、合成樹脂の耐久性が低下することがあるので、0.5〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。」

5e)「【0028】
樹脂組成物を構成している合成樹脂としては、硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂の何れであってもよい。
【0029】
硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、活性エネルギー線を照射することによって硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、熱によって硬化する熱硬化性樹脂が挙げられる。なお、硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
・・・
【0033】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル酸樹脂が挙げられる。アクリル酸樹脂としては、例えば、メタクリル酸樹脂、アクリル酸樹脂、アクリル酸ウレタン樹脂、アクリル酸ポリエステル樹脂、アクリル酸エポキシ樹脂などが挙げられる。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。」

5f)「【0052】
本発明の樹脂組成物の製造方法を説明する。本発明の樹脂組成物の製造方法は、(1)ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、必要に応じて添加剤とを汎用の手段を用いて混合することによって樹脂組成物を製造する方法、(2)ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、単量体と、必要に応じて添加剤とを汎用の手段を用いて混合して混合液を作製し、この混合液に電子線若しくは紫外線を照射し、又は、混合液を加熱して単量体を重合させることによって合成樹脂を生成させると共に必要に応じて硬化させて樹脂組成物を製造する方法などが挙げられる。
・・・
【0060】
本発明の樹脂組成物を汎用の要領を用いて所望の形態を有する成形品を製造してもよい。得られた成形品はウイルス感染阻止効果を奏する。具体的には、成形品の製造方法としては、特に限定されず、例えば、(1)樹脂組成物中に含まれている合成樹脂が熱によって硬化しない場合には、樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたダイから押出した後、樹脂組成物中の合成樹脂を必要に応じて硬化することによって成形品を製造する方法、(2)樹脂組成物中に含まれている合成樹脂が熱によって硬化しない場合には、樹脂組成物を用いて射出成形し、樹脂組成物中の合成樹脂を必要に応じて硬化して成形品を製造する方法、(3)樹脂組成物が熱によって硬化する場合には、樹脂組成物をダイ内に供給して樹脂組成物を加熱することによって樹脂組成物を硬化させて成形品を製造する方法などが挙げられる。
・・・
【0066】
樹脂組成物から形成された樹脂層や成形品の表面の可撓性又は耐傷付性を向上させるために、樹脂組成物中に分子中に重合性不飽和結合を有するオリゴマーを含有していることが好ましい。
【0067】
分子中に重合性不飽和結合を有するオリゴマーとしては、特に限定されず、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリロイル基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル又は芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる
【0068】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環(エポキシ環)に、メタクリル酸又はアクリル酸を反応させてエステル化することにより得ることができる。
【0069】
又、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。
【0070】
ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールと、ポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、アクリル酸又はメタクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0071】
ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化することにより、又は、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0072】
ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化することにより得ることができる
【0073】
脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーは、特開2000−281935号公報に開示されているものを用いることができる。オリゴマーとしては、脂肪族イソシアネート化合物と、多官能アクリレート化合物との反応生成物が挙げられる。脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、分子量が500〜1500で且つ3官能以上のオリゴマー、又は、分子中に含まれる官能基1個当たりの分子量が400以下のオリゴマーが好ましい。」

(2)引用発明
ア 甲1について
甲1には、ポリオレフィン樹脂組成物についての記載があるところ(摘示1a〜1e)、実施例1〜4、比較例1〜5として記載された樹脂組成物は、成形体の作成に用いられている(【0105】)。したがって、甲1には、
「以下の表1に示された実施例1〜4及び比較例1〜5の配合処方(部)を有する成形体用の樹脂組成物。
【表1】

ポリオレフィン樹脂(A1):ポリプロピレン[商品名:サンアロマーPM
771M、サンアロマー(株)製、SP値8
.0]
(A2):エチレン/プロピレン共重合体[商品名:E
P912P、JSR(株)製、SP値8.2

密着性向上剤 (C3):ポリブタジエンポリオールの水素化物[商品
名:ポリテールH、三菱化学(株)製、SP
値8.5、水酸基価46.6]
アルカリ金属塩 (D) :ドデシルベンゼンスルホン酸
ポリアミド樹脂 (I) :[商品名:UBEナイロン6 1013B、
宇部興産(株)製]」の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。
また、甲1には、上記樹脂組成物を「表1に示す配合処方(部)に従って、各成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練して、樹脂組成物(実施例1〜4および比較例1〜5)を得た。」との記載があるから、
「表1に示す配合処方(部)に従って、各成分をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、240℃、100rpm、滞留時間5分の条件で溶融混練する、以下の表1に示された実施例1〜4及び比較例1〜5の配合処方(部)を有する成形体用の樹脂組成物の製造方法。
【表1】

ポリオレフィン樹脂(A1):ポリプロピレン[商品名:サンアロマーPM
771M、サンアロマー(株)製、SP値8
.0]
(A2):エチレン/プロピレン共重合体[商品名:E
P912P、JSR(株)製、SP値8.2

密着性向上剤 (C3):ポリブタジエンポリオールの水素化物[商品
名:ポリテールH、三菱化学(株)製、SP
値8.5、水酸基価46.6]
アルカリ金属塩 (D) :ドデシルベンゼンスルホン酸
ポリアミド樹脂 (I) :[商品名:UBEナイロン6 1013B、
宇部興産(株)製]」の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認める。

イ 甲4について
甲4には、線状高分子の側鎖に所定の置換基のうちの少なくとも一つを有するRNAウイルス感染阻止化合物を含有することを特徴とするRNAウイルス感染阻止成形用組成物についての記載があるところ(摘示4a〜4e)、具体例として、RNAウイルス感染阻止化合物であるポリスチレンをスルホン化してなる化合物のスルホン酸ナトリウム塩及びポリプロピレンを用いた成形品の製造についての記載があり(摘示4e、実施例1)、当該実施例1において、溶融、混練した混合物はRNAウイルス感染阻止性であり、成形品用の混合物であるといえる。
したがって、甲4には、
「RNAウイルス感染阻止化合物であるポリスチレンをスルホン化してなる化合物のスルホン酸ナトリウム塩(アクゾノーベル社製 商品名「TL502」)100重量部とポリプロピレン100重量部とを含有するマスターバッチを予め作製し、次に、上記マスターバッチ4重量部とポリプロピレン100重量部とをタンブラーに供給して均一に混合して混合物を作製した後、この混合物を射出シリンダーに供給して溶融、混練したRNAウイルス感染阻止性成形品用混合物。」の発明(以下「甲4発明1」という。)及び
「RNAウイルス感染阻止化合物であるポリスチレンをスルホン化してなる化合物のスルホン酸ナトリウム塩(アクゾノーベル社製 商品名「TL502」)100重量部とポリプロピレン100重量部とを含有するマスターバッチを予め作製し、次に、上記マスターバッチ4重量部とポリプロピレン100重量部とをタンブラーに供給して均一に混合して混合物を作製した後、この混合物を射出シリンダーに供給して溶融、混練するRNAウイルス感染阻止性成形品用混合物の製造方法。」の発明(以下「甲4発明2」という。)が記載されていると認める。

ウ 甲5について
甲5には、ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、合成樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物についての記載があるところ(摘示5a〜5f、特に請求項1)、合成樹脂が熱可塑性樹脂であること(請求項3、5)が記載されている。
また、甲5には、樹脂組成物を汎用の要領を用いて所望の形態を有する成形品を製造してもよく、得られた成形品はウイルス感染阻止効果を奏することが記載されている(【0060】)。
したがって、甲5には、
「ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、熱可塑性樹脂とを含有する、ウイルス感染阻止効果を奏する成形品用樹脂組成物。」の発明(以下「甲5発明1」という。)が記載されていると認める。
また、甲5には、樹脂組成物の製造方法として、「(1)ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、合成樹脂と、必要に応じて添加剤とを汎用の手段を用いて混合することによって樹脂組成物を製造する方法」が記載され(【0052】)、成形品の製造方法として、(1)樹脂組成物中に含まれている合成樹脂が熱によって硬化しない場合には、樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたダイから押出した後、樹脂組成物中の合成樹脂を必要に応じて硬化することによって成形品を製造する方法」が記載されている(【0060】)。そして、これらの記載において、熱可塑性樹脂が合成樹脂が熱によって硬化しない場合に該当することは明らかであり、また、当該成形品の製造方法において、ダイから押出した後は依然として樹脂組成物であるといえる。
したがって、甲5には、
「ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、熱可塑性樹脂とを汎用の手段を用いて混合し、樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し押出機に取り付けたダイから押出す、ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、熱可塑性樹脂とを含有する、ウイルス感染阻止効果を奏する成形品用樹脂組成物の製造方法。」の発明(以下「甲5発明2」という。)が記載されていると認める。

2 当審が通知した令和3年12月3日付け取消理由について
当審が通知した令和3年12月3日付け取消理由の理由1は、甲1を主引用例とする理由と甲5を主引用例とするものである。

(1)本件発明1について
ア 甲1について
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
甲1発明1の「ポリオレフィン樹脂」は、合成樹脂である限りにおいて、本件発明1の「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂」と一致する。
甲1発明1の「成形体用の樹脂組成物」について、当該組成物は成形体用の材料であるといえるから、本件発明1の「成形材料」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明1とは、
「合成樹脂を含む成形材料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−1−1>
合成樹脂について、本件発明1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である」と特定しているのに対し、甲1発明1は「ポリオレフィン樹脂」である点。

<相違点1−1−2>
本件発明1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定のない点。

<相違点1−1−3>
成形材料について、本件発明1は「抗ウイルス性」と特定しているのに対し、甲1発明1はそのような特定のない点。

上記相違点について検討する。
相違点1−1−1について、甲1には、塗装性に優れたポリオレフィン樹脂組成物に関するものであること、静電塗装可能で機械的強度が良好な成形体用のポリオレフィン樹脂組成物に関するものであることが記載されており(摘示1b)、甲1に記載された発明は、専らポリオレフィン樹脂組成物であることを前提として、その物性を改善しようとするものといえるから、甲1発明1において、ポリオレフィン樹脂に代えて、敢えて熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂に変更する動機付けは見出すことはできない。
甲2、3には、スルホン酸系界面活性剤の抗ウィルス性についての記載があり(摘示2a〜2b、3a〜3b)、甲5には、ウイルス感染阻止剤と、合成樹脂とを含有することを特徴とする樹脂組成物及び該合成樹脂としてポリ塩化ビニル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂が記載されているが(摘示5a〜5f)、これらの記載をみても、甲1発明1において、ポリオレフィン樹脂に代えて、敢えて熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂に変更する動機付けがあるとはいえない。

したがって、相違点1−1−2及び1−1−3並びに本件発明1の効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲1〜3、5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲5について
本件発明1と甲5発明1とを対比する。
甲5には、熱可塑性樹脂が合成樹脂といえるポリ塩化ビニル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂であることが記載されているから(摘示5a、請求項5)、甲5発明1の「熱可塑性樹脂」は、熱可塑性樹脂である合成樹脂である限りにおいて、本件発明1の「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂」に相当する。
甲5発明1の「ウイルス感染阻止効果を奏する成形品用樹脂組成物」について、「ウイルス感染阻止効果を奏する」ことは本件発明1の「抗ウイルス性」に相当し、「成形品用樹脂組成物」は本件発明1の「成形材料」に相当する。

したがって、本件発明1と甲5発明1とは、
「熱可塑性樹脂である合成樹脂を含む抗ウイルス性成形材料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−5−1>
熱可塑性樹脂である合成樹脂について、本件発明1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種」と特定しているのに対し、甲5発明1はそのような特定のない点。

<相違点1−5−2>
本件発明1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲5発明1はそのような特定のない点。

上記相違点について検討する。
相違点1−5−1について、甲5には、熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂の記載があるものの(摘示5a、請求項5)、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂についての記載ないし示唆はない。甲2、3には、薄葉紙処理剤等に関する記載があるだけであり、成形品用樹脂組成物において、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を用いることは記載も示唆もない。仮に、熱可塑性樹脂としてポリエステル系樹脂又はアクリル系樹脂が本件出願時に知られていたとしても、甲5発明1にそれらを敢えて適用する動機付けも見いだせない。
したがって、相違点1−5−1に係る本件発明1の技術的事項を採用することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

相違点1−5−2について、甲5発明1は「ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤」を含むものであり、甲5には、「ウイルス感染阻止化合物としては、ウイルス感染阻止効果を有しておれば、特に限定され」ないことが記載されているところ(【0012】)、甲2、3にはアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸系界面活性剤が抗ウイルス性を有することが記載されている(甲2、【0026】、甲3、【0022】)。また、甲5には、樹脂組成物中におけるウイルス感染阻止化合物の含有量は0.5〜20重量%が好ましいことが記載されている(【0027】)。
しかし、甲5には「特に限定されない」とされるウイルス感染阻止化合物について、「例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの紫外線領域応答型光触媒、白金、パラジウム又は酸化銅微粒子と混合された酸化タングステン、酸化タングステンなどのタングステン系光触媒などの可視光領域応答型光触媒、ハイドロキシアパタイト、スルホン酸基又はその塩を有する重合体などが挙げられ、スルホン酸基又はその塩を有する重合体が好ましい。」と記載されており、酸化チタン等の金属酸化物粉末に相当する化合物が例示される他、スルホン酸基を有する重合体が好ましいものとして記載されているが、スルホン酸系界面活性剤の記載はない。
一方、本件明細書には、「【0005】しかし、特許文献1のように金属酸化物粉末と水酸化物を合成樹脂に添加する場合、合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加しないと、ウイルスと接触後に短時間で不活化するような迅速な抗ウイルス性能を得ることができない場合があった。一方、有効な抗ウイルス性を得るために合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加すると、合成樹脂に対し多量の無機充填材を添加することとなる。その結果、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性が大きく低下してしまうとの問題があった。【0006】そこで本発明は、抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物を得ることを目的とする。」と、金属酸化物粉末と水酸化物を添加する場合の問題点が記載されており、本件発明1は、抗ウイルス剤としてスルホン酸系界面活性剤を所定量配合することによって、当該問題を解決したものといえる。そして、そのような問題点については、甲2、3、5のいずれにも記載も示唆もない。
してみると、たとえ、甲5にウイルス感染阻止化合物が特に限定されないことが記載されており、甲2、3に記載のとおり、アルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸系界面活性剤が抗ウイルス性を有することが記載されているとしても、甲5発明1において、甲5に具体的に記載されている金属酸化物粉末と区別して、スルホン酸系界面活性剤を所定割合で配合することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

そして、本件発明1は、本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性を大きく低下することなく、ウイルスと接触後に短時間でウイルス力価を低減化してウイルスを不活化させることができる(【0008】、実施例)という、当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果を奏するといえる。

本件発明1の効果について、甲5発明1に敢えて甲2、3に記載のアルキルベンゼンスルホン酸塩等のスルホン酸系界面活性剤を適用した発明を想定して、その効果を比較したとしても、スルホン酸系界面活性剤を配合することで機械的物性を大きく低下することがないという、甲5、2,3に記載・示唆がない当業者が予測し得る範囲を超える顕著な効果を奏するといえる。

したがって、本件発明1は甲5、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2、3について
本件発明2は、本件発明1について「前記合成樹脂と前記スルホン酸系界面活性剤とが溶融混練された」ものであることを特定するものであり、本件発明3は、本件発明1又は2について「前記スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物である」ことを特定するものであるところ、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項のすべてを有するから、甲1発明1及び甲5発明1と対比すると、いずれも上記相違点1−1−1〜1−1−3並びに相違点1−5−1及び1−5−2を有する。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、上記(1)で述べたのと同様の理由により、甲1〜3、5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、甲5、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1〜3の抗ウイルス性成形材料を製造する製造方法であり、甲1発明2は甲1発明1の成形体用の樹脂組成物の製造方法、甲5発明2は甲5発明1の成形品用樹脂組成物の製造方法である。

(3−1)本件発明1を引用する本件発明4(以下「本件発明4−1」という。本件発明2及び3を引用する本件発明4についても同様。)について
ア 甲1発明2について
甲1発明2の「表1に示す配合処方(部)に従って、各成分」を「ブレンド」することは、本件発明4−1の「合成樹脂」を「混合し」、「合成樹脂混合物を得る混合工程」に相当し、甲1発明2の「溶融混練する」ことは、本件発明4−1の「溶融混練する混練工程」に相当する。
甲1発明2の「製造方法」は、本件発明4−1の「製造する製造方法」に相当する。
そして、上記(1)アで述べたことを考慮すると、本件発明4−1と甲1発明2とは、
「合成樹脂を混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える、合成樹脂を含む成形材料を製造する製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4−1−1>
合成樹脂について、本件発明4−1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である」と特定しているのに対し、甲1発明2は「ポリオレフィン樹脂」である点。

<相違点4−1−2>
本件発明4−1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲1発明2はそのような特定のない点。

<相違点4−1−3>
成形材料について、本件発明4−1は「抗ウイルス性」と特定しているのに対し、甲1発明2はそのような特定のない点。

<相違点4−1−4>
混合工程について、本件発明4−1は合成樹脂「100重量部にスルホン酸系界面活性剤0.5重量部以上とを」混合すると特定しているのに対し、甲1発明2はそのような特定のない点。

上記相違点について、相違点4−1−1〜4−1−3は、相違点1−1−1〜1−1−3と同様の相違点であるから、その判断についても上記(1)アで述べたのと同様である。

したがって、相違点4−1−4及び本件発明4−1の効果について検討するまでもなく、本件発明4−1は甲1〜3、5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 甲5発明2について
甲5発明2の「ウイルス感染阻止化合物を含有するウイルス感染阻止剤と、熱可塑性樹脂とを」、「混合」することは、本件発明4−1の「熱可塑性樹脂である合成樹脂」を「混合し」、「合成樹脂混合物を得る混合工程」に相当し、甲5発明2の「溶融混練」することは、本件発明4−1の「溶融混練する混練工程」に相当する。
甲5発明2の「製造方法」は、本件発明4−1の「製造する製造方法」に相当する。
そして、上記(1)イで述べたことを考慮すると、本件発明4−1と甲5発明2とは、
「熱可塑性樹脂である合成樹脂を混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える、熱可塑性樹脂である合成樹脂を含む抗ウイルス性成形材料を製造する製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4−5−1>
熱可塑性樹脂である合成樹脂について、本件発明4−1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種」と特定しているのに対し、甲5発明2はそのような特定のない点。

<相違点4−5−2>
本件発明4−1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲5発明2はそのような特定のない点。

<相違点4−5−3>
混合工程について、本件発明4−1は合成樹脂「100重量部にスルホン酸系界面活性剤0.5重量部以上とを」混合すると特定しているのに対し、甲5発明2はそのような特定のない点。

上記相違点について、相違点4−5−1〜4−5−2は、相違点1−5−1〜1−5−2と同様の相違点であるから、その判断についても上記(1)アで述べたのと同様である。

したがって、相違点4−5−3について検討するまでもなく、本件発明4−1は甲5、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3−2)本件発明4−2及び4−3について
本件発明4−2、4−3は、本件発明4−1の発明特定事項のすべてを有するから、甲1発明2及び甲5発明2と対比すると、いずれも上記相違点4−1−1〜4−1−4及び相違点4−5−1〜4−5−3を有する。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、上記(3−1)で述べたのと同様の理由により、甲1〜3、5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、また、甲5、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和4年3月22日提出の意見書において、甲5発明1における抗ウイルス性化合物が混合される合成樹脂として、代表的な熱可塑性樹脂である、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂が排除されているとはいえないこと、本件特許明細書には、「本発明の合成樹脂としては、硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、加熱することで溶融混練することができスルホン酸系界面活性剤の分散性を向上できることから熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。」と記載されており(【0009】)、実施例の記載からは、ポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂のような熱可塑性樹脂を用いた場合は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂のようなそれ以外の熱可塑性樹脂を用いた場合に比べて、抗ウイルス性、耐衝撃性等に優れた効果を発揮するとはいえないことから、甲5を主引用例として、甲2、3を副引用例とする進歩性の拒絶理由は解消していない旨主張する。
そこで検討するに、特許異議申立人の主張するとおり、甲5発明1における抗ウイルス性化合物が混合される合成樹脂として、熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂が排除されているとはいえず、実施例の記載から熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂を用いた場合に熱可塑性樹脂であるポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合に比べて、抗ウイルス性、耐衝撃性等に優れた効果を発揮するとはいえないないとしても、甲5発明1に熱可塑性樹脂であるポリエステル系樹脂やアクリル系樹脂を適用する動機付けがないことは、上記(1)イで述べたとおりであり、また、甲5発明1について、他の相違点である、相違点1−5−2について当業者が容易になし得た事項であるとはいえず、仮に相違点1−5−2の点が容易になし得た事項であったことを想定して効果について検討しても、その効果が当業者が予測し得る範囲内のものであるといえないことも上記イで述べたとおりである。
したがって、上記特許異議申立人の主張を採用することはできない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、理由1は理由がない。

3 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1について
ア 判断の前提
以下の観点に立って判断する。
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 本件明細書の記載
a)「【技術分野】
【0001】
抗ウイルス性を有する抗ウイルス性合成樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重症呼吸器感染症(SARS)ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、新型インフルエンザウイルス等のウイルス病が次々と社会的問題となっている。
・・・
【0003】
様々な建築材や日常品等に抗ウイルス性を付与するものとして、特許文献1には、ウイルスを不活性にするヒドロキシルラジカルの発生を可能にする金属酸化物粉末と水酸化物とを備えている抗ウイルス材が記載されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように金属酸化物粉末と水酸化物を合成樹脂に添加する場合、合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加しないと、ウイルスと接触後に短時間で不活化するような迅速な抗ウイルス性能を得ることができない場合があった。一方、有効な抗ウイルス性を得るために合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加すると、合成樹脂に対し多量の無機充填材を添加することとなる。その結果、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性が大きく低下してしまうとの問題があった。
【0006】
そこで本発明は、抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む抗ウイルス性合成樹脂組成物とすることである。また、前記合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とが溶融混練されたものであってもよい。さらに、スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物であってもよい。
また前記抗ウイルス性合成樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とを混合し合成樹脂混合物を得る工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する工程とを備える製造方法にて好適に得ることができる。」

b)「【発明の効果】
【0008】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性を大きく低下することなく、ウイルスと接触後に短時間でウイルス力価を低減化してウイルスを不活化させることができる。」

c)「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細を説明する。
・・・
【0012】
本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。この中でも抗ウイルス性に優れるとの観点からアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に抗ウイルス性に優れるアルキルベンゼンスルホン酸系化合物がより好ましい。
本発明で用いるスルホン酸系界面活性剤において、スルホン酸基は例えばインフルエンザウイルスのノイライミダーゼとの親和性が高く、阻害作用を現すことができると想定している。また官能基の構造はノイライミダーゼへの接近に関して影響を示し、嵩高くなく立体障害を受け難い構造が重要となると考えられる。その点において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は好適であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
さらに、上記のスルホン酸系界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等がある。抗ウイルス性に優れる点でアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)がさらに好ましい。
また、複数のスルホン酸系界面活性剤を抗ウイルス性が阻害されない限りにおいて添加してもよく、その他の種類の界面活性剤を加えることも制限されない。
【0013】
本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤は、粉末状体の物を用いてもよいし、液状体のものを用いてもよい。粉末状体はスルホン酸系界面活性剤に添加剤を加え粉末状としたものでもよい。液状体は液状媒体に溶解・分散させたものを用いることができる。溶媒として水にスルホン酸系界面活性剤を溶解した水性液状体であるスルホン酸系界面活性剤溶液を用いてもよい。粉末状のスルホン酸系界面活性剤は合成樹脂との混合および溶融混練が容易であり加工性に優れるとの点で好ましい。一方、液状のスルホン酸系界面活性剤は分散性に優れる。特に水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液は、乳化重合や懸濁重合で重合される合成樹脂に対し容易に微分散できるとの点で優れている。
【0014】
水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液の合成樹脂への添加は、合成樹脂の製造工程において添加してもよいし、合成樹脂を溶融混練する際に添加してもよい。
【0015】
ここで、合成樹脂を乳化重合、懸濁重合等、水を媒体として重合する場合には合成樹脂の製造のいずれかの工程においてもスルホン酸系界面活性剤溶液を添加することができる。例えば、乳化重合において用いられる乳化剤としてスルホン酸系界面活性剤を添加してもよいし、重合後にスルホン酸系界面活性剤を添加してもよい。
【0016】
乳化剤としてスルホン酸系界面活性剤を用いる場合には重合の挙動が変化し所望の合成樹脂を得られにくくなる場合がある。したがって重合後に重合に必要な乳化剤とは別にスルホン酸系界面活性剤を添加することが好ましい。重合後にスルホン酸系界面活性剤を添加する場合には、重合後のラテックスに添加してもよいし、ラテックスから合成樹脂を取り出した後に添加してもよい。重合後にラッテクスから合成樹脂を取りだし、その後に水洗工程があればその水洗工程の後に添加することが好ましい。水洗工程においてスルホン酸系界面活性剤も洗い流されてしまうおそれがあるためである。
したがって、乳化重合において重合後、ラッテクスは噴霧乾燥法、酸添加法、塩添加法、凍結凝固法など公知の方法により、固形分(合成樹脂)の分離が行われ、その後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状で合成樹脂を得る場合、スルホン酸系界面活性剤は水洗後乾燥前に添加することが好ましい。なお、重合後の工程は所望の合成樹脂により適切な処理を施せばよく、各工程を省略したり工程順を変更したりしてもよいし、他の工程を追加してもよい。
例えばラテックスを噴霧乾燥し水洗することなく合成樹脂を得る場合には、ラテックスにスルホン酸系界面活性剤溶液を添加することで合成樹脂中にスルホン酸系界面活性剤を容易に微分散することができる。
【0017】
また懸濁重合等、水系媒体を用いる重合においても乳化重合と同様な方法でスルホン酸系活性剤溶液を添加することができる。例えば、重合後の水媒体にスルホン酸系界面活性剤を添加した後に噴霧乾燥法等により合成樹脂の分離を行ってもよいし、合成樹脂の分離後、水洗工程の後にスルホン酸系界面活性剤を添加し、乾燥してもよい。
【0018】
水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液を合成樹脂の溶融混練の際に添加する場合、混練工程前の混合工程で添加することが好ましい。合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤の水溶液を混合した場合は、その後に乾燥工程を設けることが好ましいが、乾燥を行うことなく溶融混練してもよい。ここで、乾燥を行わずに溶融混練する場合には、混練工程で水蒸気を脱気することが好ましい。
混練工程で水蒸気を脱気する場合、開放系ミキサーやロールを用いることが好ましく、ベントを有する押出機を用いることもできる。
【0019】
スルホン酸系界面活性剤は合成樹脂中において微分散されていることが好ましい。スルホン酸系界面活性剤は加熱により抗ウイルス系合成樹脂組成物の加工性を低下させる場合があり、より低添加量とすることが好ましい。一方で、高い抗ウイルス性を付与するにはスルホン酸系界面活性剤は高添加量とすることが好ましい。そこで、スルホン酸系界面活性剤をより微分散させることで、より低添加量で所望の抗ウイルス効果が得られるとともに、加工性の低下も防ぐことができる。
【0020】
したがって、水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液を合成樹脂に添加することでスルホン酸系界面活性剤を容易に合成樹脂中に微分散することができるため好ましい。一方、水分の影響により加工性が低下したり、成形体の外観の悪化や物性の低下する場合には、粉末状のスルホン酸系界面活性剤を添加することが好ましい。
【0021】
スルホン酸系界面活性剤の含有量は合成樹脂100重量部に対し0.5重量部以上含有していることが好ましく。1.0〜20重量部がさらに好ましい。0.5重量部未満では抗ウイルス性が乏しくなる。」

d)「【実施例】
【0029】
本発明を実施例によって、さらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
実施例および比較例に使用した各配合剤の具体的な物質名は以下の通りである。
ポリ塩化ビニル系樹脂A−1:サスペンジョン塩化ビニル系樹脂 平均重合度 1000
ポリ塩化ビニル系樹脂A−2:サスペンジョン塩化ビニル系樹脂 平均重合度 700
アクリル系樹脂A−3:
(商品名;パラペット(登録商標)SA−1000FP クラレ社製)
アクリル系樹脂A−4:
(商品名;パラペット(登録商標)GR−F−1000−P クラレ社製)
オレフィン系樹脂A−5:
(商品名;ニポロンハード(登録商標)4010A 東ソー社製)
オレフィン系樹脂A−6:
(商品名;エンゲージ(登録商標)EG8003 ダウ・ケミカル社製)
スルホン酸系界面活性剤B−1:アルキルベンゼンスルホン酸Na 純度90%
(商品名;NANSA(登録商標)HS90/S、ハンツマン・ジャパン社製)
スルホン酸系界面活性剤B−2:アルキルベンゼンスルホン酸Na水溶液 純度25%
(商品名;ネオペレックス(登録商標)G−25、花王社製)
金属酸化物粉末と水酸化物C−1:焼成ドロマイト
(商品名;バリエールP−2、モチガセ社製)
可塑剤D−1:ジ‐2‐エチルヘキシルフタレート
【0031】
実施例および比較例のシート状物は以下の製造方法に作製した。
<製造方法I>
表1に示した実施例1〜6、8、10及び表2に示した比較例1〜3の配合物に安定剤、強化剤、酸化防止剤、滑剤を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、合成樹脂混合物を得た。そして、この合成樹脂混合物を150℃に設定した小型ミキサーにて混練し、抗ウイルス性合成樹脂組成物を得た。次いで直ちに175℃〜190℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
なお、実施例4に関してはアルキルベンゼンスルホン酸Naの水溶液を添加しているが上記と同様の製造方法にてシート状物を得た。
【0032】
<製造方法II>
表1に示した実施例7の配合物に安定剤を添加し、185℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
【0033】
<製造方法III>
アクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤B−2を蒸留水中で均一に混合し、その後乾燥させ、アクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤B−2の混合物を得た。その後、アクリル系樹脂A−3とアクリル系樹脂A−4と上記混合物にて表1に示した実施例9の配合になるように調整し、酸化防止剤、滑剤を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、合成樹脂混合物を得た。そして、この合成樹脂混合物を150℃に小型ミキサーにて混練し、抗ウイルス性合成樹脂組成物を得た。次いで直ちに190℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
なお製造方法I〜製造方法IIIにおいて、ヘンシェルミキサーが混合工程であり、小型ミキサーおよび二本ロールが混練工程となる。
【0034】
<抗ウイルス性>
被検ウイルスとして、鳥インフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)株を使用した。(以下、H5N3株という)。
H5N3株を滅菌リン酸緩衝食塩液(PBS;pH7.2)で1.0×106EID50/0.1mLになるように希釈して試験用ウイルス液を調製した。
【0035】
表1に記載の実施例及び比較例で作製したシート状物5cm×5cmを、シャーレに置き、シート状物表面に、試験用ウイルス液を0.22ml載せ、その上に4cm×4cmポリエチレンフィルムを被せ、シャーレに蓋をし、20℃に設定したインキュベーター内で1時間静置した。1時間後、シート状物表面のウイルス液を採取し、前記PBSで10倍段階希釈し、希釈したウイルス液を10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に注射針を用いて0.1mL接種した。
【0036】
接種後、発育鶏卵を37℃で2日間培養した後、漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を赤血球凝集試験により判定し、Reed&Muenchの方法によってウイルス力価(log10EID50/0.1ml)を算出した。
またブランクとして試験前(シート状物に接触させる前)の試験用ウイルス液のウイルス力価(log10EID50/0.1ml)も上記手順で算出し、シート状物の抗ウイルス性は試験前のウイルス液のウイルス力価からシート状物に接触させて1時間後のウイルス液のウイルス力価を引いた差で評価した。この差が大きいほどシート状物の抗ウイルス性が強いことを示す。
【0037】
○:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が3以上 抗ウイルス効果が高い
△:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が1以上3未満 抗ウイルス効果を有する
×:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が1未満 抗ウイルス効果が低い
【0038】
<耐衝撃性>
表1に記載の実施例及び比較例で作製したシート状物を用いて、東洋精機株式会社製フィルムインパクトテスターにて測定し以下の基準にて評価した。
【0039】
○:破断しない。
△:白化するが破断しない。
×:破断する。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜10と比較例1及び3を比べると本発明の範囲のスルホン酸塩系界面活性剤を含有することで抗ウイルス性が付与されていることがわかる。また、実施例8と9を見ると製造方法が異なっていても抗ウイルス性が付与されていることがわかる。
実施例3と比較例2を比べるとスルホン酸塩系界面活性剤では抗ウイルス性とともに耐衝撃性があるのに対して金属酸化物粉末と水酸化物では抗ウイルス性はあるものの耐衝撃性に乏しいことがわかる。
また同じ配合で製造方法が異なる実施例2と実施例7を比較すると、ヘンシェルミキサーでの混合および小型ミキサーでの混練を行うことでスルホン酸系界面活性剤がより微分散したために実施例2の方がより高い抗ウイルス効果を示した。
【0043】
実施例4において、小型ミキサーおよび二本ロールでの混練によって水分は蒸発し、二本ロールでの加工性およびシート外観は良好であった。
また、実施例9はアクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤溶液であるスルホン酸系界面活性剤B−2を蒸留水中で混合後、乾燥しており、二本ロールでの加工性およびシート外観は良好であった。」

ウ 判断
(ア)課題
本件明細書、特許請求の範囲のすべての記載事項(特に【0006】の記載)及び出願時の技術常識からみて、本件発明1、2の解決しようとする課題は、「抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物を得ること」であり、本件発明4の解決しようとする課題は、「抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物の製造方法を提供すること」であると認める。

(イ)判断
本件明細書には、上記課題を解決するための手段が、「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む抗ウイルス性合成樹脂組成物とすることである」こと、「前記抗ウイルス性合成樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とを混合し合成樹脂混合物を得る工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する工程とを備える製造方法にて好適に得ることができる」が記載されている(【0007】)。
また、スルホン酸系界面活性剤について、【0012】には、アルキルベンゼンスルホン酸系化合物の他、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物等の各種スルホン酸系界面活性剤が例示され、【0013】〜【0021】には、スルホン酸系界面活性剤の形態、合成樹脂への添加方法、添加量についての記載があるところ、スルホン酸系界面活性剤において、スルホン酸基は例えばインフルエンザウイルスのノイライミダーゼとの親和性が高く、阻害作用を現すことができると想定していること(【0012】)が記載されている。
そして、実施例・比較例として、樹脂100部に対してスルホン酸系界面活性剤B−1:アルキルベンゼンスルホン酸Na 純度90%(商品名;NANSA(登録商標)HS90/S、ハンツマン・ジャパン社製)又はスルホン酸系界面活性剤B−2:アルキルベンゼンスルホン酸Na水溶液 純度25%(商品名;ネオペレックス(登録商標)G−25、花王社製)を3又は12部配合した本件発明に相当するシート状物(実施例8、9)が、抗ウイルス性、耐衝撃性が○(○等の意味は【0034】〜【0039】に記載。)であることが記載されているのに対し、樹脂100部に対して焼成ドロマイト(商品名;バリエールP−2、モチガセ社製)を70部配合したシート状物は、抗ウイルス性が○であるものの、耐衝撃性が×であることが記載されている。
かかる発明の詳細な説明及びその実施例・比較例の記載から、アルキルベンゼンスルホン酸Naを含む材料とすることによって本件発明の課題が解決できることが理解できるといえるところ、スルホン酸系界面活性剤の種類に応じて抗ウイルス活性がある程度異なることは考えられるものの、スルホン酸基が抗ウイルス性に寄与している旨の記載(【0012】)及び実施例・比較例の記載からみて、スルホン酸基を有するスルホン酸系界面活性剤であれば、比較例として記載された従来技術に相当する金属酸化物粉末と水酸化物とは異なる、一定程度の抗ウイルス性、耐衝撃性を有する成形材料が得られることを理解することができるといえる。
してみると、スルホン酸系界面活性剤を発明特定事項とする本件発明1、2、4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件発明1、2、4は発明の詳細な説明に記載したものである。

エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1は理由がない。

(2)申立理由2のうち新規性の理由について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明1との一致点・相違点は、上記2(1)アで示したとおりであるところ、相違点1−1−1の点は実質的な相違点である。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明であるとはいえない。

イ 本件発明2〜3について
本件発明2〜3は、いずれも本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明1とは相違点1−1−1に相当する相違点を有するものであり、甲1に記載された発明であるとはいえない。

ウ 本件発明4について
本件発明4−1と甲1発明2との一致点・相違点は、上記2(3−1)アで示したとおりであるところ、相違点4−1−1の点は実質的な相違点である。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、本件発明4−1は甲1に記載された発明であるとはいえない。
本件発明4−2〜4−3はいずれも本件発明4−1の発明特定事項のすべてを有するから、本件発明4−1と同様に、甲1に記載された発明であるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。

(3)申立理由3について
申立理由3は甲4を主引用例とし、甲2及び3を副引用例とする理由である。
ア 本件発明1について
本件発明1と甲4発明1とを対比する。
甲4発明1の「ポリプロピレン」は、合成樹脂である限りにおいて、本件発明1の「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂」と一致する。
甲4発明1の「RNAウイルス感染阻止性成形品用混合物」は、本件発明1の「抗ウイルス性成形材料」に相当する。
してみると、本件発明1と甲4発明1とは、
「合成樹脂を含む抗ウイルス性成形材料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1−4−1>
合成樹脂について、本件発明1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である」と特定しているのに対し、甲4発明1は「ポリプロピレン」である点。

<相違点1−4−2>
本件発明1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲4発明1はそのような特定のない点。

上記相違点について検討する。
相違点1−4−2について、甲4発明1は「RNAウイルス感染阻止化合物であるポリスチレンをスルホン化してなる化合物のスルホン酸ナトリウム塩」を含有するものであり、甲4にはスルホン酸系界面活性剤を配合することは記載も示唆もされていない。甲2、3には、スルホン酸系界面活性剤の抗ウィルス性についての記載があるが(摘示2a〜2b、3a〜3b)、甲4に記載された発明は、「線状高分子の側鎖に一般式(1)〜(3)で示される構造式の置換基のうちの少なくとも一つを有するRNAウイルス感染阻止化合物を含有することを特徴とするRNAウイルス感染阻止成形用組成物。」に関するものであり(摘示4a)、当該RNAウイルス感染阻止化合物以外の他の抗ウイルス性の化合物としてスルホン酸系界面活性剤を配合することについては記載も示唆もないから、甲4発明1において、スルホン酸系界面活性剤を含むものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

したがって、相違点1−4−1及び本件発明1の効果について検討するまでもなく、本件発明1は甲4、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1について「前記合成樹脂と前記スルホン酸系界面活性剤とが溶融混練された」ものであることを特定するものであり、本件発明3は、本件発明1又は2について「前記スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物である」ことを特定するものであるところ、本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項のすべてを有するから、甲4発明1と対比すると、いずれも上記相違点1−4−1〜1−4−2を有する。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、上記アで述べたのと同様の理由により、甲4、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 本件発明4について
甲4発明2は甲4発明1のRNAウイルス感染阻止性成形品用混合物の製造方法である。

ウ−1 本件発明4−1について
甲4発明2の、「ポリプロピレン」を含有するマスターバッチとポリプロピレンとを、「混合して」、「混合物を作製」することは、本件発明4−1の「合成樹脂」を「混合し」、「合成樹脂混合物を得る混合工程」に相当し、甲4発明2の「溶融、混練する」ことは、本件発明4−1の「溶融混練する混練工程」に相当する。
甲4発明2の「製造方法」は、本件発明4−1の「製造する製造方法」に相当する。
そして、上記アで述べたことを考慮すると、本件発明4−1と甲4発明2とは、
「合成樹脂を混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える、合成樹脂を含む抗ウイルス性成形材料を製造する製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点4−4−1>
合成樹脂について、本件発明4−1は「ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である」と特定しているのに対し、甲4発明2は「ポリプロピレン」である点。

<相違点4−4−2>
本件発明4−1は、合成樹脂「100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む」と特定しているのに対し、甲4発明2はそのような特定のない点。

<相違点4−4−3>
混合工程について、本件発明4−1は「合成樹脂100重量部にスルホン酸系界面活性剤0.5重量部以上とを」混合すると特定しているのに対し、甲4発明2はそのような特定のない点。

上記相違点について、相違点4−4−1〜4−4−2は、相違点1−4−1〜1−4−2と同様の相違点であるから、その判断についても上記アで述べたのと同様である。

したがって、相違点4−4−3及び本件発明4−1の効果について検討するまでもなく、本件発明4−1は甲4、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ−2 本件発明4−2及び4−3について
本件発明4−2、4−3は、本件発明4−1の発明特定事項のすべてを有するから、甲4発明2と対比すると、いずれも上記相違点4−4−1〜4−4−3を有する。
したがって、その他の点について検討するまでもなく、上記ウ−1で述べたのと同様の理由により、甲4、2、3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3は理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1〜4に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】抗ウイルス性成形材料及びその製造方法
【技術分野】
【0001】
抗ウイルス性を有する抗ウイルス性合成樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重症呼吸器感染症(SARS)ウイルス、鳥インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、新型インフルエンザウイルス等のウイルス病が次々と社会的問題となっている。
本来、ウイルスの宿主域は限定され、哺乳類に感染するものは哺乳類だけ、鳥類に感染するものは鳥類だけというのが通常である。しかし、鳥インフルエンザウイルスは、鳥類のみならず哺乳類にも感染することができる広い宿主域をもつウイルスであるため、ヒトに対して感染する恐れがある。昨今では、アジアやヨーロッパでもH5N1型鳥インフルエンザウイルスが蔓延し、それをベースに変異した強毒型インフルエンザの出現が危惧されている。最近では、耐性の高いノロウイルスや感染した際の死亡率の高いエボラウイルスが猛威をふるっており、ウイルスによるパンデミック(感染爆発)への備えのみならず、内装材等の建築材や日常品にまで抗ウイルス製品が期待されるようになってきている。
【0003】
様々な建築材や日常品等に抗ウイルス性を付与するものとして、特許文献1には、ウイルスを不活性にするヒドロキシルラジカルの発生を可能にする金属酸化物粉末と水酸化物とを備えている抗ウイルス材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−37814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように金属酸化物粉末と水酸化物を合成樹脂に添加する場合、合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加しないと、ウイルスと接触後に短時間で不活化するような迅速な抗ウイルス性能を得ることができない場合があった。一方、有効な抗ウイルス性を得るために合成樹脂に対して多量の金属酸化物粉末と水酸化物を添加すると、合成樹脂に対し多量の無機充填材を添加することとなる。その結果、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性が大きく低下してしまうとの問題があった。
【0006】
そこで本発明は、抗ウイルス性の発現のために抗ウイルス剤を添加しても基材である合成樹脂組成物の物性を大きく低下させることがない抗ウイルス性合成樹脂組成物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために本発明が用いた手段は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む抗ウイルス性成形材料とすることである。また、前記合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とが溶融混練されたものであってもよい。さらに、スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物であってもよい。
また前記抗ウイルス性成形材料は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とを混合し合成樹脂混合物を得る工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する工程とを備える製造方法にて好適に得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は、合成樹脂組成物の物性、特に機械的物性を大きく低下することなく、ウイルスと接触後に短時間でウイルス力価を低減化してウイルスを不活化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の合成樹脂としては、加熱することで溶融混練することができスルホン酸系界面活性剤の分散性を向上できることから熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また、本発明の合成樹脂としては、SBR、NBR等の合成ゴムを用いてもよい。
ここで、スルホン酸系界面活性剤の分散性向上の観点から溶融混練の前に均一に混合することが好ましく、そのためには合成樹脂が粉末状であることが好ましい。粉末状の合成樹脂としてはポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂があり、これらの合成樹脂を好適に用いることができる。
【0010】
また、乳化重合や懸濁重合等の水を媒体とする重合方法により得られる合成樹脂であれば後述のようにスルホン酸系界面活性剤を容易に分散させることが可能となるため好ましい。この様な合成樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ABS、SBRやNBR等の合成ゴムが例示できる。
【0011】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、共重合体を含む塩化ビニル以外の他のポリマーに塩化ビニルを共重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
なお、これらポリ塩化ビニル系樹脂は単独で使用しても良いが、二種類以上を併用しても良い。さらに必要に応じ、ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化しても良い。
ポリ塩化ビニル系樹脂を塩素化する方法としては特に限定されないが、例えば光塩素化方法、熱塩素化方法等が挙げられる。また、本発明に用いるポリ塩化ビニル系樹脂の重合度は特に制限されない。
【0012】
本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物、アルキル硫酸エステル系化合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物系化合物等が挙げられる。この中でも抗ウイルス性に優れるとの観点からアルキルベンゼンスルホン酸系化合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸系化合物、アルキルナフタレンスルホン酸系化合物が好ましく、特に抗ウイルス性に優れるアルキルベンゼンスルホン酸系化合物がより好ましい。
本発明で用いるスルホン酸系界面活性剤において、スルホン酸基は例えばインフルエンザウイルスのノイライミダーゼとの親和性が高く、阻害作用を現すことができると想定している。また官能基の構造はノイライミダーゼへの接近に関して影響を示し、嵩高くなく立体障害を受け難い構造が重要となると考えられる。その点において、アルキルベンゼンスルホン酸系界面活性剤は好適であり、特にドデシルベンゼンスルホン酸が好ましい。
さらに、上記のスルホン酸系界面活性剤としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩等がある。抗ウイルス性に優れる点でアルカリ金属塩が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)がさらに好ましい。
また、複数のスルホン酸系界面活性剤を抗ウイルス性が阻害されない限りにおいて添加してもよく、その他の種類の界面活性剤を加えることも制限されない。
【0013】
本発明に用いるスルホン酸系界面活性剤は、粉末状体の物を用いてもよいし、液状体のものを用いてもよい。粉末状体はスルホン酸系界面活性剤に添加剤を加え粉末状としたものでもよい。液状体は液状媒体に溶解・分散させたものを用いることができる。溶媒として水にスルホン酸系界面活性剤を溶解した水性液状体であるスルホン酸系界面活性剤溶液を用いてもよい。粉末状のスルホン酸系界面活性剤は合成樹脂との混合および溶融混練が容易であり加工性に優れるとの点で好ましい。一方、液状のスルホン酸系界面活性剤は分散性に優れる。特に水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液は、乳化重合や懸濁重合で重合される合成樹脂に対し容易に微分散できるとの点で優れている。
【0014】
水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液の合成樹脂への添加は、合成樹脂の製造工程において添加してもよいし、合成樹脂を溶融混練する際に添加してもよい。
【0015】
ここで、合成樹脂を乳化重合、懸濁重合等、水を媒体として重合する場合には合成樹脂の製造のいずれかの工程においてもスルホン酸系界面活性剤溶液を添加することができる。例えば、乳化重合において用いられる乳化剤としてスルホン酸系界面活性剤を添加してもよいし、重合後にスルホン酸系界面活性剤を添加してもよい。
【0016】
乳化剤としてスルホン酸系界面活性剤を用いる場合には重合の挙動が変化し所望の合成樹脂を得られにくくなる場合がある。したがって重合後に重合に必要な乳化剤とは別にスルホン酸系界面活性剤を添加することが好ましい。重合後にスルホン酸系界面活性剤を添加する場合には、重合後のラテックスに添加してもよいし、ラテックスから合成樹脂を取り出した後に添加してもよい。重合後にラッテクスから合成樹脂を取りだし、その後に水洗工程があればその水洗工程の後に添加することが好ましい。水洗工程においてスルホン酸系界面活性剤も洗い流されてしまうおそれがあるためである。
したがって、乳化重合において重合後、ラッテクスは噴霧乾燥法、酸添加法、塩添加法、凍結凝固法など公知の方法により、固形分(合成樹脂)の分離が行われ、その後、脱水、水洗、乾燥し、粉体状で合成樹脂を得る場合、スルホン酸系界面活性剤は水洗後乾燥前に添加することが好ましい。なお、重合後の工程は所望の合成樹脂により適切な処理を施せばよく、各工程を省略したり工程順を変更したりしてもよいし、他の工程を追加してもよい。
例えばラテックスを噴霧乾燥し水洗することなく合成樹脂を得る場合には、ラテックスにスルホン酸系界面活性剤溶液を添加することで合成樹脂中にスルホン酸系界面活性剤を容易に微分散することができる。
【0017】
また懸濁重合等、水系媒体を用いる重合においても乳化重合と同様な方法でスルホン酸系活性剤溶液を添加することができる。例えば、重合後の水媒体にスルホン酸系界面活性剤を添加した後に噴霧乾燥法等により合成樹脂の分離を行ってもよいし、合成樹脂の分離後、水洗工程の後にスルホン酸系界面活性剤を添加し、乾燥してもよい。
【0018】
水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液を合成樹脂の溶融混練の際に添加する場合、混練工程前の混合工程で添加することが好ましい。合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤の水溶液を混合した場合は、その後に乾燥工程を設けることが好ましいが、乾燥を行うことなく溶融混練してもよい。ここで、乾燥を行わずに溶融混練する場合には、混練工程で水蒸気を脱気することが好ましい。
混練工程で水蒸気を脱気する場合、開放系ミキサーやロールを用いることが好ましく、ベントを有する押出機を用いることもできる。
【0019】
スルホン酸系界面活性剤は合成樹脂中において微分散されていることが好ましい。スルホン酸系界面活性剤は加熱により抗ウイルス系合成樹脂組成物の加工性を低下させる場合があり、より低添加量とすることが好ましい。一方で、高い抗ウイルス性を付与するにはスルホン酸系界面活性剤は高添加量とすることが好ましい。そこで、スルホン酸系界面活性剤をより微分散させることで、より低添加量で所望の抗ウイルス効果が得られるとともに、加工性の低下も防ぐことができる。
【0020】
したがって、水を溶媒としたスルホン酸系界面活性剤溶液を合成樹脂に添加することでスルホン酸系界面活性剤を容易に合成樹脂中に微分散することができるため好ましい。一方、水分の影響により加工性が低下したり、成形体の外観の悪化や物性の低下する場合には、粉末状のスルホン酸系界面活性剤を添加することが好ましい。
【0021】
スルホン酸系界面活性剤の含有量は合成樹脂100重量部に対し0.5重量部以上含有していることが好ましく。1.0〜20重量部がさらに好ましい。0.5重量部未満では抗ウイルス性が乏しくなる。
【0022】
本発明において、合成樹脂に対し、抗ウイルス性が阻害されない限りにおいて、充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、滑剤、紫外線遮蔽剤、帯電防止剤、難燃剤、蛍光剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、防炎剤を適宜添加してもよい。
【0023】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は、合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とを混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える製造方法にて好適に得ることができる。
なお、混合工程は合成樹脂の製造工程において設けてもよいし、合成樹脂の製造後に別途の工程として設けてもよい。合成樹脂の製造工程において設ける場合は前述のように、重合における乳化剤として添加してもよいし、重合後に添加してもよい。
【0024】
合成樹脂とスルホン酸系界面活性剤とを混合し合成樹脂混合物を得る混合工程としては、機械撹拌力で混合する容器固定型と、容器を回転させ混合する容器回転型があるがスルホン酸系界面活性剤の分散が良好な状態になるのであればどちらの方法を用いてもよい。容器固定型としてはヘンシェルミキサー等があり、容器回転型としてコンテナブレンダー等の公知の設備を用いることができる。
【0025】
前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程としては、溶融混練が可能であればいずれの装置でも良くバンバリーミキサー、ニーダー、二本ロール機、押出機等の公知の設備を用いることができる。溶融混合後、直ちに成形してもよいし、溶融混合した後、一旦ペレット化し、その後成形してもよい。ここで、二本ロール機、押出機等は混練工程と成形を行う成形工程を兼ねることができる。
【0026】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は、ロール成形装置、カレンダー成形装置、一軸又は二軸押出装置、インフレーション成形装置、インジェクション成形装置、熱成形装置、スラッシュモールド装置、ペーストコーター装置、ディッピング成形装置等の公知の設備で成形される。
また合成樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂の場合は、ロール成形装置、カレンダー成形装置、一軸又は二軸押出装置、インフレーション成形装置、インジェクション成形装置、熱成形装置、スラッシュモールド装置で主に成形される。
【0027】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物の用途としては、特に限定されないが、例えばシート、床材、壁紙、フィルム、衣服用生地、容器、パイプ、玩具等が挙げられる。
その他の用途として、診断用器具、体外循環用器具、防護品、臨床検査器具、病院用器具、医療消耗品、在宅医療器具、衛生材料、保健衛生具、病院建物、食品製造工場、食品包装材等にウイルスを不活性にする機能が発現可能な状態で使用される。
【0028】
本発明の抗ウイルス性合成樹脂組成物は各種のウイルスにおいて抗ウイルス性の効果が期待されるが、特にエンベロープを有するウイルスに対し高い抗ウイルス性を発現する。エンベロープを有するウイルスとしては、例えば鳥インフルエンザウイルス、人インフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス等のイフルエンザウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ムンプスウイルス、RSウイルス、エボラウイルス等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例によって、さらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0030】
実施例および比較例に使用した各配合剤の具体的な物質名は以下の通りである。
ポリ塩化ビニル系樹脂A−1:サスペンジョン塩化ビニル系樹脂 平均重合度 1000
ポリ塩化ビニル系樹脂A−2:サスペンジョン塩化ビニル系樹脂 平均重合度 700
アクリル系樹脂A−3:
(商品名;パラペット(登録商標)SA−1000FP クラレ社製)
アクリル系樹脂A−4:
(商品名;パラペット(登録商標)GR−F−1000−P クラレ社製)
オレフィン系樹脂A−5:
(商品名;ニポロンハード(登録商標)4010A 東ソー社製)
オレフィン系樹脂A−6:
(商品名;エンゲージ(登録商標)EG8003 ダウ・ケミカル社製)
スルホン酸系界面活性剤B−1:アルキルベンゼンスルホン酸Na 純度90%
(商品名;NANSA(登録商標)HS90/S、ハンツマン・ジャパン社製)
スルホン酸系界面活性剤B−2:アルキルベンゼンスルホン酸Na水溶液 純度25%
(商品名;ネオペレックス(登録商標)G−25、花王社製)
金属酸化物粉末と水酸化物C−1:焼成ドロマイト
(商品名;バリエールP−2、モチガセ社製)
可塑剤D−1:ジー2−エチルヘキシルフタレート
【0031】
実施例および比較例のシート状物は以下の製造方法に作製した。
<製造方法I>
表1に示した実施例1〜6、8、10及び表2に示した比較例1〜3の配合物に安定剤、強化剤、酸化防止剤、滑剤を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、合成樹脂混合物を得た。そして、この合成樹脂混合物を150℃に設定した小型ミキサーにて混練し、抗ウイルス性合成樹脂組成物を得た。次いで直ちに175℃〜190℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
なお、実施例4に関してはアルキルベンゼンスルホン酸Naの水溶液を添加しているが上記と同様の製造方法にてシート状物を得た。
【0032】
<製造方法II>
表1に示した実施例7の配合物に安定剤を添加し、185℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
【0033】
<製造方法III>
アクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤B−2を蒸留水中で均一に混合し、その後乾燥させ、アクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤B−2の混合物を得た。その後、アクリル系樹脂A−3とアクリル系樹脂A−4と上記混合物にて表1に示した実施例9の配合になるように調整し、酸化防止剤、滑剤を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合し、合成樹脂混合物を得た。そして、この合成樹脂混合物を150℃に小型ミキサーにて混練し、抗ウイルス性合成樹脂組成物を得た。次いで直ちに190℃に設定した二本ロール機を用いて厚さ150μmのシート状物を得た。
なお製造方法I〜製造方法IIIにおいて、ヘンシェルミキサーが混合工程であり、小型ミキサーおよび二本ロールが混練工程となる。
【0034】
<抗ウイルス性>
被検ウイルスとして、鳥インフルエンザウイルスA/whistling swan/Shimane/499/83(H5N3)株を使用した。(以下、H5N3株という)。
H5N3株を滅菌リン酸緩衝食塩液(PBS;pH7.2)で1.0×106EID50/0.1mLになるように希釈して試験用ウイルス液を調製した。
【0035】
表1に記載の実施例及び比較例で作製したシート状物5cm×5cmを、シャーレに置き、シート状物表面に、試験用ウイルス液を0.22m1載せ、その上に4cm×4cmポリエチレンフィルムを被せ、シャーレに蓋をし、20℃に設定したインキュベーター内で1時間静置した。1時間後、シート状物表面のウイルス液を採取し、前記PBSで10倍段階希釈し、希釈したウイルス液を10日齢発育鶏卵の漿尿膜腔内に注射針を用いて0.1mL接種した。
【0036】
接種後、発育鶏卵を37℃で2日間培養した後、漿尿膜腔でのウイルス増殖の有無を赤血球凝集試験により判定し、Reed&Muenchの方法によってウイルス力価(log10EID50/0.1ml)を算出した。
またブランクとして試験前(シート状物に接触させる前)の試験用ウイルス液のウイルス力価(log10EID50/0.1ml)も上記手順で算出し、シート状物の抗ウイルス性は試験前のウイルス液のウイルス力価からシート状物に接触させて1時間後のウイルス液のウイルス力価を引いた差で評価した。この差が大きいほどシート状物の抗ウイルス性が強いことを示す。
【0037】
○:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が3以上 抗ウイルス効果が高い
△:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が1以上3未満 抗ウイルス効果を有する
×:ウイルス力価(試験前)とウイルス力価(1時間後)の差が1未満 抗ウイルス効果が低い
【0038】
<耐種撃性>
表1に記載の実施例及び比較例で作製したシート状物を用いて、東洋精機株式会社製フィルムインパクトテスターにて測定し以下の基準にて評価した。
【0039】
○:破断しない。
△:白化するが破断しない。
×:破断する。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
実施例1〜10と比較例1及び3を比べると本発明の範囲のスルホン酸塩系界面活性剤を含有することで抗ウイルス性が付与されていることがわかる。また、実施例8と9を見ると製造方法が異なっていても抗ウイルス性が付与されていることがわかる。
実施例3と比較例2を比べるとスルホン酸塩系界面活性剤では抗ウイルス性とともに耐衝撃性があるのに対して金属酸化物粉末と水酸化物では抗ウイルス性はあるものの耐衝撃性に乏しいことがわかる。
また同じ配合で製造方法が異なる実施例2と実施例7を比較すると、ヘンシェルミキサーでの混合および小型ミキサーでの混練を行うことでスルホン酸系界面活性剤がより微分散したために実施例2の方がより高い抗ウイルス効果を示した。
【0043】
実施例4において、小型ミキサーおよび二本ロールでの混練によって水分は蒸発し、二本ロールでの加工性およびシート外観は良好であった。
また、実施例9はアクリル系樹脂A−4とスルホン酸系界面活性剤溶液であるスルホン酸系界面活性剤B−2を蒸留水中で混合後、乾燥しており、二本ロールでの加工性およびシート外観は良好であった。
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部に対しスルホン酸系界面活性剤を0.5重量部以上含む抗ウイルス性成形材料。
【請求項2】
前記合成樹脂と前記スルホン酸系界面活性剤とが溶融混練された請求項1に記載の抗ウイルス性成形材料。
【請求項3】
前記スルホン酸系界面活性剤がアルキルベンゼンスルホン酸系化合物である請求項1または請求項2に記載の抗ウイルス性成形材料。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂の中から選ばれる少なくとも一種の熱可塑性樹脂である合成樹脂100重量部にスルホン酸系界面活性剤0.5重量部以上とを混合し合成樹脂混合物を得る混合工程と、
前記合成樹脂混合物を溶融混練する混練工程とを備える、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の抗ウイルス性成形材料を製造する製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-04-25 
出願番号 P2015-003475
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A01N)
P 1 651・ 113- YAA (A01N)
P 1 651・ 121- YAA (A01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 瀬良 聡機
特許庁審判官 冨永 保
齊藤 真由美
登録日 2021-02-15 
登録番号 6837732
権利者 ロンシール工業株式会社
発明の名称 抗ウイルス性成形材料及びその製造方法  
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