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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C10M
管理番号 1387505
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-06 
確定日 2022-06-03 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6854481号発明「水溶性金属加工油組成物、及び金属加工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6854481号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−7〕について訂正することを認める。 特許第6854481号の請求項2−7に係る特許を維持する。 特許第6854481号の請求項1に係る特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6854481号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成29年4月5日に出願され、令和3年3月18日にその特許権の設定登録がされ、同年4月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1〜7に係る特許に対し、同年10月6日に特許異議申立人 森田悠介(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年12月15日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内(延長30日)である令和4年3月16日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、特許権者から訂正請求があったことを、同年同月22日付けで特許異議申立人に通知し、特許異議申立人は、その指定期間内である同年4月20日に意見書を提出した。

第2 本件訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨について
令和4年3月16日付けの訂正請求による訂正の「請求の趣旨」は、「特許第6854481号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜7について訂正することを求める。」であると解される。

2 本件訂正
本件訂正は、以下の訂正事項1〜3からなる。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に「前記モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、40質量%以上配合されることを特徴とする請求項1に記載の水溶性金属加工油組成物。」と記載されているのを、「下記の一般式(1)で表される化合物からなるモノエステル化合物と、界面活性剤とを含有し、
前記モノエステル化合物が、2−エチルへキサン酸と、2−エチルへキサノールから得られるモノエステル化合物であり、
前記モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されることを特徴とする水溶性金属加工油組成物。
(化1)
R11−C(=O)−O−R12 (1)
ただし、R11は炭素数7の飽和炭化水素基を示し、R12は炭素数8の飽和炭化水素基を示す。」に訂正する(請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項3〜7も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の削除に伴い、請求項1の記載を引用する請求項3において「請求項1または2に記載の水溶性金属加工油組成物」と記載されているのを、「請求項2に記載の水溶性金属加工油組成物」に訂正する(請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4〜7も同様に訂正する)。
同様に、請求項1の記載を引用する請求項4において「請求項1から3のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物」と記載されているのを、「請求項2または3に記載の水溶性金属加工油組成物」に訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5〜7も同様に訂正する)。
同様に、請求項1の記載を引用する請求項5において「請求項1から4のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物」に訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6、7も同様に訂正する)。
同様に、請求項1の記載を引用する請求項7において「請求項1から6のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物」と記載されているのを、「請求項2から6のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物」に訂正する。

3 一群の請求項について
訂正事項1〜3に係る訂正前の請求項1〜7について、請求項2〜7はそれぞれ、請求項1を引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1〜7に対応する訂正後の請求項1〜7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項1を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるといえる。
さらに前記目的に加え、この訂正は、訂正前の請求項2において、「モノエステル化合物」について、「40質量%以上配合される」と特定していたところ、「60質量%以上配合される」との記載により、配合量をより狭い範囲に限定するものである。すなわち訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮も目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項2の記載を引用する訂正後の各請求項についても、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1において、独立形式請求項へ改めることは、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
また、「モノエステル化合物」について、「40質量%以上配合される」と特定していたところ、「60質量%以上配合される」とすることは、訂正前の「40質量%以上」という数値範囲を、「60質量%以上」とより狭い範囲に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載を引用する訂正前の請求項3〜7の記載についても実質的に訂正するものであるが、上記アの理由から明らかなように、訂正後の請求項2の記載は、訂正前の請求項2との関係で特許請求の範囲を実質的に拡張し、又は変更するものではないといえる。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載以外に、訂正前の請求項3〜7の記載について何ら訂正するものではなく、訂正後の請求項3〜7に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないといえる。
したがって、訂正事項1は、訂正前の請求項3〜7との関係で、実質上特許請求項範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1において、独立形式請求項へ改めることは、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。
また、「モノエステル化合物」について、「60質量%以上配合される」とすることは、明細書の段落【0030】に「前記モノエステルの含有量は、水を除いた含有物の総量に対して、・・・さらに好ましくは60質量%以上である。」と記載されたとおりのものである。よって、この訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項1を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項2による請求項1の削除に対応して、訂正前の請求項3〜5、7において訂正前の請求項1を引用している記載を削除するというものである。よって、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
同様に、訂正後の請求項3〜5の記載を引用する訂正後の各請求項についても、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アに記載したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3〜5、7において訂正前の請求項1を引用している記載を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであるといえる。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項3〜5、7の記載を変更するのみであり、請求項3〜5の記載を引用する各請求項の記載について何ら訂正するものではない。よって、訂正事項3は、請求項3〜5を引用する各請求項との関係で、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないといえる。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、訂正前の請求項3〜5、7において訂正前の請求項1を引用している記載を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものであるといえる。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第6854481号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−7〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜7に係る発明は、令和4年3月16日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」〜「本件特許発明7」、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。

「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
下記の一般式(1)で表される化合物からなるモノエステル化合物と、界面活性剤とを含有し、
前記モノエステル化合物が、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物であり、
前記モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されることを特徴とする請求項1に記載の水溶性金属加工油組成物。
(化1)
R11−C(=O)−O−R12 (1)
ただし、R11は炭素数7の飽和炭化水素基を示し、R12は炭素数8の飽和炭化水素基を示す。
【請求項3】
水を除いて、前記モノエステル化合物と、前記界面活性剤のみより構成されるか、さらに鉱物油、極圧添加剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤より選択される添加剤のみを含んでいることを特徴とする請求項2に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項4】
水を除いて、前記モノエステル化合物と、前記界面活性剤のみより構成されるか、さら
に極圧添加剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤より選択される添加剤のみを含んでいることを特徴とする請求項2または3のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項5】
前記水溶性金属加工油組成物が、金属の切削加工に用いられることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項6】
前記切削加工が、ブローチ加工であることを特徴とする請求項5に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物を用いて行われることを特徴とする金属加工方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
本件訂正前の請求項1〜7に係る特許に対して、当審が令和3年12月15日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
進歩性)本件特許の請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

1 甲号証について
甲第1号証:米国特許出願公開第2004/0072703号明細書
甲第2号証:国際公開00/68345号
甲第3号証:特開平10−17880号公報
甲第4号証:特開平9−217073号公報

第5 前記第4における理由(進歩性)についての判断
1 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。なお、○の中にRがあるマークは、半角で(R)と記載した。
1a「15. A metalworking fluid comprising water and a metalworking concentrate, wherein the metalworking concentrate comprises an alpha branched ester represented by the formula (I):

wherein R1, R2, and R3 are each independently selected from a hydrocarbon group having one to thirty-six carbon atoms.」(請求項15)

15 水および金属加工濃縮物を含む金属加工流体であって、該金属加工濃縮物が式(I)で表されるα−カルボン酸−エステルを含む金属加工流体:

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、炭素数1〜36の炭化水素基を示す。)。

1b「[0016] The present invention addresses this problem by providing hydrolytically stable alpha-branched esters for use in metalworking fluids. When used as an additive in metalworking fluids or metalworking fluid compositions, the hydrolytically stable alpha branched esters of the invention provide a longer operating life in metalworking fluids as compared to operating fluids having conventional esters, particularly in water-dilutable or water-based metalworking fluids, while at the same time maintain or improve the anti-wear and/or lubricity properties of the metalworking fluids. The invention also relates to metalworking concentrates which can be dilutable by water or other aqueous solutions to form metalworking fluids, processes for preparing the hydrolytically stable alpha branched esters of the invention, metalworking fluids containing such esters, and methods of improving the service life of a fluid for use in metalworking.
[0017] The hydrolytically stable alpha branched esters of the invention can be used in metalworking fluid(s) employed in any type of metalworking processes, such as, for example, drilling, milling, turning, grinding, boring, cutting, tapping, stamping, sawing, hot or cold rolling, and drawing, applied to any type of metal, such as, for example, carbon steels, alloy steels, stainless steels, aluminum and aluminum alloys, copper and copper alloys, brass, zinc and zinc alloys, bronze, titanium and titanium alloys, nickel and nickel alloys, and cast or wrought iron. Additionally, the esters can be used as lubricant additives in other aqueous-based fluids used in similar friction-generating operations.」

[0016]本発明は、金属加工流体で使用するための加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルを提供することによって、この問題に対処する。金属加工流体または金属加工流体組成物の添加剤として使用される場合、本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルは、特に水希釈性または水ベースの金属加工流体において、従来のエステルを有する作動流体と比較して、金属加工流体においてより長い作動寿命を提供する。同時に、金属加工流体の耐摩耗性および/または襴滑性を維持または改善する。本発明はまた、水または他の水溶液によって希釈して金属加工流体を形成することができる金属加工濃縮物、本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルを調製するためのプロセス、そのようなエステルを含む金属加工流体、および金属加工で使用するための流体に関する。
[0017]本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルは例えば穴あけ、粉砕、旋削、研削、ボーリング、切断、タッピング、スタンピング、鋸引き、熱間または冷間圧延、および引き抜きなどの任意のタイプの金属加工プロセスで使用される金属加工流体で使用でき、例えば、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銅および銅合金、真鍮、亜鉛および亜鉛合金、ブロンズ、チタンおよびチタン合金、ニッケルおよびニッケル合金、および鋳造または鍛造鉄などのあらゆる種類の金属に適用できる。さらに、エステルは、同様の摩擦発生操作で使用される他の水性流体の潤滑油添加剤として使用できる。

1c「[0036] The metalworking concentrates of the invention include the hydrolytically stable alpha branched ester of the invention. It is preferred that the ester is present in the metalworking concentrate in an amount of about 1% to about 90% of the total metalworking concentrate, with an amount of about 5% by weight to about 70% by weight of the total metalworking concentrate being more preferred.
・・・
[0039] The metalworking fluids of the invention may be prepared using the metalworking concentrates of the invention. The metalworking concentrates may be used "as-is" or may be dilutable with water or an aqueous solution. Formulations of the metalworking fluids of the invention also include all those known water-based fluids or water-dilutable fluids formulated as is known or to be developed in the art, with the exception that the alpha branched ester of the invention is incorporated therein.
[0040] If a metalworking fluid is prepared using the hydrolytically stable alpha branched esters of the invention, the fluid may contain water or any other aqueous solution. Water may be present in an amount of about 70% to about 99% by weight of the total metalworking fluid, preferably about 80% to about 90% by weight of the total fluid.
[0041] In preparing the metalworking fluid of the invention, additional additives to alter and/or adjust the properties of the fluid or composition may be included. Such additives any include any known or to be developed in the art. For example, the metalworking fluid formulation of the invention may include emulsifying agents; corrosion inhibitors, such as alkaline and alkanolamine salts of organic acids, sulfonates, amines, amides, organic borate compounds; biocides, such as, for example, o-phenylphenol, bactericides, fungicides, and algaecides; colorants; fragrances; agents that alter viscosity; buffers; solubilizers; anti-oxidants; anti-foaming agents; and extreme pressure additives. One or more of the additives can be added to the metalworking fluid of the invention, depending on the end use contemplated and the properties desired in the final formulation.」

[0036] 本発明の金属加工濃縮物は、本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルを含む。このエステルは、金属加工濃縮物全体の1重量%〜約90重量%の量で金属加工濃縮物中に存在することが好ましく、金属加工濃縮物全体の約5重量%〜約70重量%の量であることがより好ましい。
・・・
[0039] 本発明の金属加工流体は、本発明の金属加工濃縮物を使用して調製することができる。金属加工濃縮物は、「そのまま」使用することも、水または水溶液で希釈することもできる。本発明の金属加工流体の配合物はまた、本発明α−分岐カルボン酸エステルがその中に組み込まれることを除いて、既知または当技術分野で開発されるように配合されたすべての既知の水性流体または水希釈性流体を含む。
[0040] 本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルを使用して金属加工流体が調製される場合、流体は、水または任意の他の水溶液を含み得る。水は、全金属加工流体の約70重量%〜約99重量%、好ましくは全流体の約80重量%〜約90重量%の量で存在し得る。
[0041] 本発明の金属加工流体を調製する際に、流体または組成物の特性を変更および/または調整するための追加の添加剤を含めることができる。このような添加剤には、当技術分野で知られている、または開発される予定の添加剤が含まれる。例えば、本発明の金属加工流体配合物は、乳化剤;有機酸、スルホン酸塩、アミン、アミド、有機ホウ酸塩化合物のアルカリ塩およびアルカノールアミン塩などの腐食防止剤;o−フェニルフェノール、殺菌剤、殺菌剤、および殺藻剤などの殺生物剤;着色剤;香料;粘度を変える薬剤;緩衝剤;可溶化剤;酸化防止剤;消泡剤;および極圧添加剤を含んでもよい。所望の最終用途および最終配合物に望まれる特性に応じて、1つまたは複数の添加剤を本発明の金属加工流体に加えることができる。

1d「EXAMPLE 2

[0045] To illustrate the hydrolytic stability of the alkanoic acid esters of the invention, for use as additives in metalworking fluids, an analysis was conducted as described in Examples 3-6. The esters tested in Examples 3-6, the designations by which each ester is referred herein, and the number of carbons present in each ester are shown in Table II below.

EXAMPLE 3

[0046] Hydrolysis of Neat Esters at 130℃.
[0047] By 'neat' it is meant that the esters were not incorporated into a metalworking fluid formulation. A comparison of the hydrolytic stability of three different alpha branched esters of the invention (based on 2-ethyl hexanoic acid) and of isopropyl oleate (IPO) was made. IPO is a hindered ester conventionally used in metalworking fluids to provide very good hydrolytic stability. See, e.g., Burgo, Kennedy, Oberle "Metalworking's Watery Challenge" Lubes'N'Greases, October 2001, p. 31. For purposes of this comparison IPO was obtained from Inolex Corporation, Philadelphia, Pa., U.S.A., under the trade name LEXOLUBE(R) IPO.
[0048] First, water 2000 ppm was added to each of the four esters (neat). An aliquot of each of the wet esters was sealed in a test tube. Each tube was placed in an oven maintained at 130[deg.] C. for a test period of twenty five days. Periodically, samples were removed from each test tube and titrated to determine the acid value of each of the samples. Using the acid value data obtained in this manner, the rate of hydrolysis in each sample was qualitatively assessed. An ester that is more resistant to hydrolysis will show less increase in acid value over the testing period. The results of the experiment with each of the four selected esters, IPO, MES, PEH, and SEH are shown in Table III, below:

[0049] As can be seen from Table III, IPO showed an acid value increase over twenty five days at 130[deg.] C. of 1.76. In contrast, under the same conditions, the acid values of the esters of the invention (2-ethyl hexanoic acid-based esters) increased merely by 0.32 (PEH), 0.31 (PEH), and 0.23 (SEH). It is apparent from this data that the three esters of the invention PEH, PEH, and SEH were more resistant to hydrolysis than the conventional ester, isopropyl oleate, as their acid values over time showed a lesser increase than the acid values of IPO over time.
・・・
[0055]
・・・
EXAMPLE 6

Hydrolytic Stability of Esters Incorporated in a Metalworking Fluid

[0057] The hydrolytic stabilities of the alpha branched esters of the invention and the conventional ester IPO when formulated into aqueous metalworking fluids were compared by evaluation in the change of pH of each of the ester-containing formulations over time.

[0058] First, test formulations of a semi-synthetic type metalworking fluid was prepared. The formula of the formulation was a standard semi-synthetic type metalworking fluid formula, with the exception that each of the three formulations incorporated one of IPO, MES, or PEH. The formulation is shown below in Table VII:


[0059] MAYSOL(R) SSD-50 is a semi-synthetic base of a proprietary formulation that contains a biocide, corrosion inhibitors and wetting agents. It is commercially available from Maysol Oil & and Chemical, Warminister, Pa., U.S.A. Again change in pH over time was assessed as an indicator of the degradation of the ester that is attributable to hydrolysis. Similar to the formulation above, the MAYSOL(R) SSD-50 contains ingredients that buffer the system. Therefore, one would expect the pH change over time to be relatively small.」

実施例 2
[0045] 金属加工流体中の添加剤として使用するための、本発明のアルカン酸エステルの加水分解安定性を説明するために、実施例3〜6に記載されているように分析を行った。実施例3〜6で試験されたエステル、各エステルが本明細書で参照される名称、および各エステルに存在する炭素の数は、以下の表IIに示されている。
表II
─────────────────────────────
エステル 略号 炭素数
─────────────────────────────
メチルラーデート MES 19
イソプロピルオレエート IPO 21
ラウリル2−エチルヘキサノエート LEH 20
パルミル2−エチルヘキサノエート PEH 24
ステアリル2−エチルヘキサノエート SEH 26
─────────────────────────────

実施例 3
[0046] 130℃でのニートエステルの加水分解
[0047] 「ニート」とは、エステルが金属加工流体配合物に組み込まれなかったことを意味する。本発明の3つの異なるα一分岐カルボン酸エステル(2ーエチルヘキサン酸に基づく)とオレイン酸イソプロピル(IPO)の加水分解安定性の比較がなされた。IPOは、非常に優れた加水分解安定性を提供するために金属加工流体で従来使用されているヒンダードエステルである。例えば、Burgo, Kennedy, Oberle“Metalworking's Watery Challenge” Lubes'N'Greases、2001年10月、P.31を参照。この比較の目的で、IPOは、米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのInolex CorporationからLEXOLUBE(R)の商品名で入手した。
[0048] 最初に、水2000ppmを4つのエステル(ニート)のそれぞれに加えた。湿ったエステルのそれぞれのアリコートを試験管に密封した。各チューブを試験期間の25日間、130℃に維持したオーブンに入れた。定期的にサンプルを各試験管から取り出し、滴定して各サンプルの酸価を決定した。このようにして得られた酸価データを使用して、各サンプルの加水分解速度を定性的に評価した。加水分解に対してより耐性のあるエステルは、試験期間中の酸価の増加が少ないことを示す。選択した4つのエステル、IPO、MES、PEH、およびSEHのそれぞれを使用した実験の結果を以下の表IIIに示す。

表III
─────────────────────────────
130℃でエージングした後のエステルの酸価(mg KOH/g)
時間 IPO MES PEH SEH
(130℃での日数) 酸価 酸価 酸価 酸価
─────────────────────────────
0 0.09 0.01 0.06 0.01
1 0.25 0.08 0.20 0.08
5 0.54 0.11 0.27 0.13
8 0.64 0.26 0.33 0.12
11 0.87 0.20 0.31 0.14
14 1.15 0.30 0.40 0.20
18 1.28 0.28 0.39 0.20
25 1.85 0.33 0.37 0.24
─────────────────────────────

[0049] 表IIIからわかるように、IPOは130℃で25日間にわたって1.76の酸価の増加を示した。対照的に、同じ条件下で、本発明のエステル(2−エチルヘキサン酸ベースのエステル)の酸価は、単に0.32(PEH)、0.31(PEH)、および0.23(SEH)だけ増加した。このデータから、本発明のPEH、PEH、およびSEHの3つのエステルは、経時的なそれらの酸価が経時的なIPOの酸価よりも少ない増加を示したので、従来のエステルであるオレイン酸イソプロピルよりも加水分解に対してより耐性であったことが明らかである。
・・・
[0056]
・・・
実施例 6
金属加工流体に組み込まれたエステルの加水分解安定性
[0057] 水性金属加工流体に配合したときの本発明のα−分岐カルボン酸エステルおよび従来のエステルIPOの加水分解安定性を、各エステルのpHの経時変化の評価によって比較した。
[0058] 最初に、半合成タイプの金属加工流体の試験製剤を調製した。配合の処方は、3つの配合のそれぞれがIPO、MES、またはPEHのいずれかを組み込んだことを除いて、標準的な半合成タイプの金属加工流体の処方であった。配合を以下の表VIIに示す。
表VII
─────────────────────────────
金属加工液配合
成分 量
─────────────────────────────
水 89グラム
試験エステル 2グラム
(IPO、MES、またはPEHのいずれか)
MAYSOL(R) SSD−50 9グラム
─────────────────────────────
[0059] MAYSOL(R) SSD−50は、殺生物剤、腐食防止剤、湿潤剤を含む独自の配合の半合成ベースであり、Maysol Oil & and Chemical、ウォーミンスター、ペンシルバニア州、米国から市販されている。再度、pHの経時変化を加水分解に起因するエステルの劣化の指標として評価した。上記の処方と同様に、MAYSOL(R) SSD−50には、系を緩衝する成分が含まれている。したがって、時間の経過に伴うpH の変化は比較的小さいと予想される。

(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
2a「1.一般式(1)

[式中、R1は炭素数1〜18の直鎖状アルキル基又は炭素数3〜18の分岐鎖状のアルキル基を表し、R2は水素原子、炭素数1〜18の直鎖状アルキル基又は炭素数3〜18の分岐鎖状アルキル基を表す。但し、R1で表されるアルキル基の炭素数とR2で表されるアルキル基の炭素数との合計は2〜18であり、また、R2が水素原子のとき、R1は分岐鎖状のアルキル基を表す。R3は、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基、炭素数3〜20の分岐鎖状アルキル基又は炭素数3〜10のシクロアルキル基を表す。]
で表される脂肪族飽和分岐鎖状カルボン酸モノアルキルエステルの少なくとも1種を含有することを特徴とする冷凍機用の潤滑油。」(特許請求の範囲第1項)
2b「実施例
以下、実施例および比較例に基いて本発明を具体的に説明する。なお、各実施例、比較例における潤滑油の特性は次の方法により評価した。
全酸価
JIS−K−2501に準拠して測定する。
動粘度
ウベローデ粘度計を用いてJIS一K−2283に準拠して測定する。
水分含量
JIS−K−2275に準拠してカールフィッシャー水分計(京都電子社製、MKC−510)を用いて測定する。
体積固有抵抗
JIS−C−2101に準拠して25℃にて測定する。
二層分離温度
JIS−K−2211に準拠し、試料油が20重量%となるように試料油とハイドロフルオロカーボン冷媒HFC−134aを加えて、−50℃〜38℃での二相分離温度を測定する。温度が低いほど、試料油とハイドロフルオロカーボンとの相溶性に優れる。
加水分解安定性試験
内径6.6mm、高さ30cmのガラス試験管に長さ4cmの鉄、銅およびアルミニウムの針金を入れ、試料エステルを2.0g、蒸留水を0.2g秤りとる。アスピレーターで脱気しながらその試験管を封じ、オーブン中で175℃、20時間又は40時間加熱する。その後試料エステルを取り出し、全酸価を測定するとともに針金の表面を目視にて観察し、以下のように3段階に評価すると共に試験後のエステルの状態を観察する。
○:変化はない
△:若干の変色がみられる
×:黒色又は濃褐色に変化する
製造例1
撹拌機、温度計、冷却管付き水分分留器を備えた4ツ口フラスコに2−エチルヘキサン酸144g(1モル)、2−エチルヘキサノール143g(1.1モル)を仕込み、テトライソプロピルチタネート触媒の存在下、減圧下にて200℃まで昇温した。生成した水を水分分留器にとりながらエステル化反応を約9時間行った。反応後、過剰の2−エチルヘキサノールを蒸留で除去し、過剰の苛性ソーダで中和し、その後中性になるまで水洗した。次いで90℃にて活性炭処理(仕込み原料に対し0.3重量%)を行い、濾過後、2−エチルヘキサン酸(2−エチルヘキシル)246gを得た。次いで、100℃、13.3MPaの減圧条件で5時間脱水を行なった。得られたエステルの全酸価は0.01mgKOH/g、水分含量は11ppm、動粘度は2.7mm2/s(40℃)、1.1mm2/s(100℃)、体積固有抵抗は3.0×1013Ω・cmであり、二層分離温度は−24℃であった。
・・・
比較製造例1
製造例1の方法に準じてパルミチン酸2−エチルヘキシルを製造した。得られたエステルの全酸価は0.01mgKOH/g、水分含量は13ppm、動粘度は8.1mm2/s(40℃)、2.7mm2/s(100℃)、体積固有抵抗は6.2×1013Ω・cmであった。一方、二層分離温度を測定したが、該エステルは−50℃〜38℃の測定範囲温度ではフロンとは相溶しなかった。
・・・


実施例1〜5から明らかなように、本エステルは加水分解安定性が良好で全酸価の上昇が小さく、金属表面の変化はほとんど観られない。また、冷媒相溶性、電気絶縁性にも優れる。又、40℃での動粘度は非常に小さく、冷凍機運転時のエネルギーロスを低減可能であり、省エネルギー化に効果的である。
これに対し、比較例1〜2に示すように脂肪族直鎖状モノカルボン酸エステルは、加水分解安定性が悪く、冷媒相溶性においても問題がある。
又、実施例6〜14においては、本エステルを各種エステルと併用し、40℃における動粘度を10〜15mm2/sに調整した混合油も加水分解安定性が良好であり、低粘度化のための粘度調整剤として用いることが可能であることを示す。
一方、比較例3〜5に示すようにネオペンチルポリオールの分岐鎖状カルボン酸エステルは全酸価の上昇が大きく、金属の腐食も大きくなる傾向がみられる。」(第57ページ第15行〜第67ページ第12行)

(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「【0002】
【従来の技術】潤滑油は、産業上の様々な分野で広く用いられている。そして、潤滑油には、その用途に応じた様々な性能、例えば、潤滑性、流動性、安定性等が求められる。これらの性能の中で、水に対する安定性(加水分解安定性)も潤滑油にとって必要な性能であり、潤滑油が水分と接触するような使用環境の下では特に重要な性能となる。しかしながら、用途によっては水分の存在下であるにもかかわらず加水分解しやすい潤滑油を使用しなければならない場合がある。
【0003】例えば、圧延、切削等の金属加工時には、加工時に発生する熱を除去する目的で、潤滑油を水と混合し1〜10%程度のエマルジョンにして供給することが多いことから、潤滑油の加水分解安定性はできるだけ高いほうが望ましい。それと同時に、金属加工時には、金属界面での高い潤滑性も当然に求められる。しかしながら、加水分解安定性の高い鉱油や炭化水素系合成油では、この潤滑性の要求を充分に満たすことができない。このため、金属加工時には、比較的加水分解しやすい動植物油或いは合成エステル油等のエステル系潤滑油を使用せざるを得ないのが現状である。 そして、従来の動植物油を水分と接触する環境で使用する場合には、スカムと呼ばれる加水分解生成物の析出や粘度変化等の劣化が起こり、性能面や設備保全面での問題が生じる。特に、潤滑油を長期間に渡って循環使用する場合には、加水分解による悪影響はより大きいものとなる。このような事情から、岩藤ら(第148回西山記念講座、平成5年5月、日本鉄鋼協会)が述べるように、潤滑性を保ちながら、且つ、加水分解安定性の高い潤滑油が強く求められている。」

(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「【0002】
【従来の技術】従来、切削、研削、プレス加工、鍛造、押出し加工、引抜き加工等の金属加工に用いる油剤としては、鉱油や油脂類を用いる不水型油剤と、これらの基油を界面活性剤により水に溶かす、若しくはエマルジョンにした水溶性の油剤が用いられてきた。近年、生産性向上のために加工速度が大きくなる傾向があり、加工面の冷却が重要性を増してきている。また、油剤の引火を避けるため難燃化が求められている。水溶性の油剤は、経済性、冷却性、そして安全性の面で不水型油剤と比べて優れており、水溶性油剤の比重が大きくなっている。
・・・
【0004】水溶性油剤は、一般に、前述の油脂及び/又は合成エステルに界面活性剤及びその他必要な添加剤を配合したものを、水に10〜100倍に希釈して使用する。この水溶性油剤は鉱油を用いたものに比べ潤滑性は良好である。しかしながら、エステルであるので、加水分解されるという欠点を持っている。そのため、水系加工油として長時間使用あるいは長期間貯蔵すると、エステルが加水分解により酸とアルコールに分解し、油剤の性能が変化してくる。その結果、金属に錆や腐食を生じたり、油剤が分離不均一化して加工性能が劣化したりする。更に、不水型油剤に於いても、油性剤成分としてエステルが用いられており、加水分解による油剤の性能劣化が問題となることもある。」

2 甲1に記載された発明
甲1には、請求項15及び実施例2の記載を参照すると、実施例6として「水および金属加工濃縮物を含む金属加工流体であって、該金属加工濃縮物が式(I)で表されるα−分岐カルボン酸−エステルを含む金属加工流体であって、水を89g、式(I)で表されるα−分岐カルボン酸−エステルが2−エチルヘキサン酸パルミチルであり、2−エチルヘキサン酸パルミチルを2グラム、MAYSOL(R)SSD−50を9グラムからなる金属加工流体:

(式中、R1、R2およびR3はそれぞれ独立に、炭素 数1〜36の炭化水素基を示す。)。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる(摘記1d参照)。
なお、実施例2には「パルミル(Parmyl)」と記載されているが、炭素数が24であることから、2−エチルヘキシル部分の炭素数8を引くと、炭素数16の基であるから、「パルミチル」の誤記であることは明らかである。

3 当審の判断
(1)本件特許発明2
ア 引用発明との対比
本件特許発明2と引用発明を対比する。
引用発明の「金属加工流体」は、段落[0016](水希釈性または水ベースの金属加工流体)、段落[0017](穴あけ、粉砕、旋削、研削、ボーリング、切断、タッピング、スタンピング、鋸引き、熱間または冷間圧延、および引き抜きなどの任意のタイプの金属加工プロセスで使用される金属加工流体で使用でき、)、段落[0036](本発明の金属加工濃縮物は、本発明の加水分解的に安定なアルファ分岐エステルを含む。)、段落[0039](本発明の金属加工流体は、本発明の金属加工濃縮物を使用して調製することができる。金属加工濃縮物は、「そのまま」使用することも、水または水溶液で希釈することもできる。)、段落[0040](本発明の加水分解的に安定なα−分岐カルボン酸エステルを使用して金属加工流体が調製される場合、流体は、水または任意の他の水溶液を含み得る。)の各記載より、本件特許発明2の「水溶性金属加工油組成物」に相当する。
引用発明の


」は、R1とR2は併せて飽和炭化水素基を包含するから、本件特許発明2の「下記の一般式(1)で表される化合物からなるモノエステル化合物」、「(化1)
R11−C(=O)−O−R12 (1)」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と引用発明は、「下記の一般式(1)で表される化合物からなるモノエステル化合物を含有する水溶性金属加工油組成物。
(化1)
R11−C(=O)−O−R12 (1)」
」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
モノエステル化合物が、本件特許発明2は、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物であり、一般式(1)においてR11は炭素数7の飽和炭化水素基を示し、R12は炭素数8の飽和炭化水素基を示すのに対し、引用発明は2−エチルヘキサン酸パルミチルである点。

<相違点2>
本件特許発明2では、界面活性剤を含有するのに対し、引用発明はそのような特定がない点。

<相違点3>
本件特許発明2では、モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されるのに対し、本件特許発明1ではそのような特定がない点。

イ 相違点についての検討
事案に鑑み、まず、<相違点1>及び<相違点3>について検討する。
引用発明は加水分解に安定なα−分岐カルボン酸エステルを含む金属加工濃縮物であり(摘記1c参照)、引用発明における2−エチルヘキサン酸パルミチルは、金属加工濃縮物としての使用下ではなく、それ自体が加水分解に安定であることが記載されている(摘記1d参照)。
そして、甲2は冷凍機用潤滑油に関するものであるが(摘記2a参照)、甲2には、冷凍機用潤滑油としての使用下ではなく、それ自体で2−エチルヘキサン酸(2−エチルヘキシル)が、パルミチン酸2−エチルヘキシルより加水分解に安定であることが、記載されており(摘記2b参照)、2−エチルヘキサン酸(2−エチルヘキシル)は、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物であり、一般式(1)においてR11は炭素数7の飽和炭化水素基を示し、R12は炭素数8の飽和炭化水素基を示すモノエステル化合物である。
しかし、甲2の上記記載からは、2−エチルヘキサン酸(2−エチルヘキシル)が2−エチルヘキサン酸パルミチルより加水分解に安定であることまではいえないから、引用発明において、α−分岐カルボン酸エステルとして、2−エチルヘキサン酸パルミチルに代えて、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物を採用する動機付けがあるとはいえない。
また、甲2〜甲4にも、金属加工油組成物に用いられるα−分岐カルボン酸エステルとして、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物を採用することについては、記載も示唆もない。
さらに、引用発明において、本件特許発明2のモノエステル化合物に相当するα−分岐カルボン酸エステルが、水を除いた含有物の総量に対して、18.2(2/2+9)質量%配合されており、本件特許発明1のモノエステル化合物の配合量の下限である60質量%よりはるかに少ない。
ここで、甲1には、金属加工濃縮物全体の1重量%〜約90重量%の量で金属加工濃縮物中に存在することが好ましいことが、記載されているものの(摘記1c参照)、その量の範囲は広く、α−分岐カルボン酸エステルが水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されることが、示唆されているとはいえないから、そのような記載によっては、引用発明において、α−分岐カルボン酸エステルが、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されるものとする動機付けがあるとはいえない。
また、甲2〜甲4にも、金属加工油組成物に用いられるα−分岐カルボン酸エステルが、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されることは、記載も示唆もない。
そうすると、引用発明において、α−分岐カルボン酸エステルが、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。

ウ 本件特許発明2の効果について
本件特許明細書の【0054】の【表2】からみて、モノエステル化合物が、そのα−分岐カルボン酸エステルとして、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物であり、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合される実施例6は、モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合される実施例7及び8と比較して、摩耗量が少ないという効果が得られることが示されており、特許権者による令和4年3月16日付けの意見書において、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合される実施例Aも実施例7及び8と比較して、摩耗量が少ないという効果が得られることが示されていることから、そのような本件特許発明2により奏される効果は、引用発明から予測できるものではない。

エ 特許異議申立人の主張について
(ア)特許異議申立人は、「本件特許の実施例において、モノエステル化合物以外の成分は、界面活性剤であるアミン化合物及び脂肪族カルボン酸と、水である。要するに、本件特許発明では、界面活性剤は水で希釈したときに乳化・分散に必要な乳化剤(界面活性剤)の量を含有していればよく、実施例の試験においては2倍の水で希釈しているが(段落【0049】)、その際にはモノエステル化合物(2−エチルヘキサン酸2−エチルヘキシル)を用いた実施例6の界面活性剤量は水の増量による低減、調整により必要量に達する。当業者であれば、潤滑性を与える金属加工油であるモノエステル化合物の含有量が界面活性剤に比べてより多いほど、工具の摩耗量も抑えられることは予想される結果であり、格別顕著な効果ではない。モノエステル化合物は加工油における油剤そのものであるから、その界面活性剤との合計に対する量を増やせば相対的に効果が出るのは至極当然のことである。」と主張し、また、「本件特許の実施例では、上記のとおり水溶性金属加工油組成物を使用時に水で希釈しているが、希釈量は任意である。段落【0043】では0.1質量%以上と広い範囲の希釈を許容し、後述のとおり甲第1号証等の記載を見ても水溶性金属加工油組成物における従来技術の希釈は非常に広い範囲で、多量の水での希釈をも許容している。そうすると、原液においてモノエステル化合物60質量%以上に対して40質量%以下の他成分、例えば界面活性剤があったとしても、工具の摩耗低減の効果は、結局は希釈後の水に対する比率に依存することになるし、希釈後の水に対して微量となり得る界面活性剤の効果への寄与は小さくなるはずである。しかも、本件特許の実施例では原液に10質量部の水を配合しているが、更に水で希釈した後も水溶性金属加工油組成物であることに何ら変わりはない。従って「60質量%以上」とした臨界的意義が不明であり、進歩性を有しない。」と主張する。
(イ)しかしながら、金属加工油におけるモノエステル化合物の含有量を多くすると、界面活性剤を減少させる必要があるから、モノエステル化合物の含有量が多いほど、工具の摩耗量も抑えられることは予想される結果であるとはいえないから、特許異議申立人の主張はその前提において誤りがある。
また、ウにおける特許権者による上記意見書の下記図Aのとおり、ウにおける水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合される実施例6及びAの摩耗量は、水で希釈したものであっても、同じく水で希釈したものではあるが、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以下配合される実施例7及び8のものと比較して、顕著に小さくなっており、予想される結果とはいえないし、また、水で希釈した実施例6及びAですら、十分摩耗量が小さくなっているのであるから、「60質量%以上」であればより摩耗量が小さくなることは明らかであり、したがって、ものエステル化合物として「2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキシサノールから得られるモノエステル化合物」を選択した上で、その含有量を「60質量%以上」を選択した臨界的意義が不明であるともいえない。


そうすると、上記特許異議申立人の主張は採用できない。

オ まとめ
以上のとおり、本件特許発明2は、<相違点2>について検討するまでもなく、引用発明2及び甲2〜甲4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

(2)本件特許発明3〜7
本件特許発明3〜7は、本件特許発明2を引用してさらに限定するものであり、上記本件特許発明2と引用発明との<相違点1>及び<相違点3>と実質的に同等の相違点を有するものであるから、本件特許発明3〜7は、引用発明及び甲2〜甲4の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人の主張は以下のとおりである。
進歩性)本件特許の請求項1〜7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証〜甲第16号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証〜甲第4号証:上記第4のとおり。
甲第5号証:特開2016−132769号公報
甲第6号証:国際公開2012/008442号
甲第7号証:「濡れ性の重要性」(URL:http://www.ktk-lub.com/hanasi8.htrm)
甲第8号証:「液体の表面張力」(URL: https://f.osaka-kyoiku.ac.jp/tennoji-j/wp-content/up1oads/sites/4/2020/09/38-15.pdf)
甲第9号証:「テーマ6 沸点・融点」(URL:http://fastliver.com/list/kurabe/theme6hutten.pdf)
甲第10号証:特開2002−363465号公報
甲第11号証:特開2005−171032号公報
甲第12号証:「カルボン酸エステルの匂いのまとめ」(URL:https://www2.kpu.ac.jp/life_environ/syn_chem_fm/Topics/2008/results.pdf)
甲第13号証:特開2014−156594号公報
甲第14号証:特開平10−251683号公報
甲第15号証:特開2012−184362号公報
甲第16号証:特開2010−189530号公報

特許異議申立人の主張する取消理由は上記のとおり甲1を主引用例とするものであるところ、その理由は上記第4において実質的に採用されている。

第6 むすび
以上のとおりであるから、令和3年12月15日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2〜7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2〜7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
訂正前の請求項1は本件訂正により削除されたため、請求項1についての特許異議の申立ては、不適法なものであり、その補正をすることができないから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
下記の一般式(1)で表される化合物からなるモノエステル化合物と、界面活性剤とを含有し、
前記モノエステル化合物が、2−エチルヘキサン酸と、2−エチルヘキサノールから得られるモノエステル化合物であり、
前記モノエステル化合物が、水を除いた含有物の総量に対して、60質量%以上配合されることを特徴とする水溶性金属加工油組成物。
(化1)
R11−C(=O)−O−R12 (1)
ただし、R11は炭素数7の飽和炭化水素基を示し、R12は炭素数8の飽和炭化水素基を示す。
【請求項3】
水を除いて、前記モノエステル化合物と、前記界面活性剤のみより構成されるか、さらに鉱物油、極圧添加剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤より選択される添加剤のみを含んでいることを特徴とする請求項2に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項4】
水を除いて、前記モノエステル化合物と、前記界面活性剤のみより構成されるか、さらに極圧添加剤、消泡剤、金属防食剤、酸化防止剤、防腐剤、防カビ剤より選択される添加剤のみを含んでいることを特徴とする請求項2または3に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項5】
前記水溶性金属加工油組成物が、金属の切削加工に用いられることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項6】
前記切削加工が、ブローチ加工であることを特徴とする請求項5に記載の水溶性金属加工油組成物。
【請求項7】
請求項2から6のいずれか1項に記載の水溶性金属加工油組成物を用いて行われることを特徴とする金属加工方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-26 
出願番号 P2017-075072
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C10M)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 木村 敏康
瀬下 浩一
登録日 2021-03-18 
登録番号 6854481
権利者 トヨタ自動車北海道株式会社 スギムラ化学工業株式会社
発明の名称 水溶性金属加工油組成物、及び金属加工方法  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  
代理人 特許業務法人上野特許事務所  
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