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審決分類 審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01N
審判 一部申し立て 2項進歩性  G01N
審判 一部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G01N
管理番号 1387506
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-06 
確定日 2022-05-27 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6854553号発明「粒子の分配方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6854553号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−11〕について訂正することを認める。 特許第6854553号の請求項2、4、5、7、9及び10に係る特許を維持する。 特許第6854553号の請求項1及び6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6854553号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)8月13日を国際出願日とする出願であって、令和3年3月18日にその特許権の設定登録がされ、同年4月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和3年10月 6日 :特許異議申立人 杉本 里佳(以下「申立人」
という。)による請求項1、2、4ないし7、
9及び10に係る特許に対する特許異議の申立

同年12月 3日付け:取消理由通知
令和4年 2月 7日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求

なお、特許権者が令和4年2月7日にした訂正の請求に対して、期間を指定して申立人に意見書を提出する機会を与えたが、申立人から意見書は提出されなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)特許権者が令和4年2月7日にした訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、請求項1ないし11について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項1ないし11のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す(訂正事項に係る記載において以下同様。)。

(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2に「前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有する、請求項1に記載の製造方法。」と記載されているのを、「細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、請求項1又は2に製造方法。」と記載されているのを、「細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項2又は3に記載の製造方法。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。」と記載されているのを、「請求項2から4のいずれかに記載の製造方法。」に訂正する(請求項5の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する)。

(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(訂正事項7)
特許請求の範囲の請求項7に「前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有する、請求項6に記載の分配方法。」と記載されているのを、「細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項8)
特許請求の範囲の請求項8に「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、請求項6又は7に記載の分配方法。」と記載されているのを、「細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項9)
特許請求の範囲の請求項9に「請求項6から8のいずれかに記載の分配方法。」と記載されているのを、「請求項7又は8に記載の製造方法。」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10及び11も同様に訂正する)。

(訂正事項10)
特許請求の範囲の請求項10に「前記複数の容器の数が、50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上であるアリコートが存在する、請求項6から9のいずれかに記載の分配方法。」と記載されているのを、「前記複数のアリコートの数が、50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上であるアリコートが存在する、請求項7から9のいずれかに記載の分配方法。」に訂正する(請求項10の記載を直接的に引用する請求項11も同様に訂正する)。

(訂正事項11)
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1から10のいずれかに記載の方法に用いるための組成物。」と記載されているのを、「請求項2から5、及び7から10のいずれかに記載の方法に用いるための組成物。」に訂正する。

(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は訂正事項1の訂正対象である請求項1を直接的又は間接的に引用しているものである。
また、訂正前の請求項6ないし10について、請求項7ないし10は訂正事項6の訂正対象である請求項6を直接的又は間接的に引用しているものである。
さらに、訂正前の請求項11は、訂正事項1の訂正対象である請求項1及び訂正事項6の訂正対象である請求項6を直接的又は間接的に引用しているものである。
したがって、訂正事項1ないし11は、訂正前に引用関係を有する請求項1ないし11に対して請求されたものである。
よって、訂正事項1ないし11は、一群の請求項〔1−11〕に対して請求されている。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び6について
訂正事項1及び6は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1及び6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項1及び6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項2は、本件訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

(イ)また、訂正事項2のうち、「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない」との記載を追加する訂正は、「分注すること」について、「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない」と特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正後の請求項2は、本件訂正前の請求項3において請求項2の記載を引用するものに相当するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、本件訂正前の請求項3において請求項2の記載を引用するものは、本件訂正後の請求項2に相当することから、訂正事項3において請求項2を引用しないものとすることは、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項4において選択的に記載を引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項5において選択的に記載を引用する請求項から請求項1を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項7は、本件訂正前の請求項7が請求項6の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。

(イ)また、訂正事項7のうち、「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない」との記載を追加する訂正は、「分注すること」について、「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない」と特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7による訂正後の請求項7は、本件訂正前の請求項8において請求項7の記載を引用するものに相当するものであるから、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(7)訂正事項8について
訂正事項8は、本件訂正前の請求項8が請求項6又は7の記載を引用する記載であるところ、請求項7を引用しないものとした上で、請求項6を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
なお、本件訂正前の請求項8において請求項7の記載を引用するものは、本件訂正後の請求項7に相当することから、訂正事項8において請求項7を引用しないものとすることは、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。

(8)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項9において選択的に記載を引用する請求項から請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(9)訂正事項10について
訂正事項10のうち、「前記複数の容器」を「前記複数のアリコート」とする訂正は、請求項10において記載を引用する請求項7及び8に記載された「複数のアリコート」との記載と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項10のうち、「請求項6から9のいずれかに記載」を「請求項7から9のいずれかに記載」とする訂正は、請求項10において選択的に記載を引用する請求項から請求項6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項10は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

(10)訂正事項11について
訂正事項11は、請求項11において記載を引用する請求項から請求項1及び6を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

3 独立特許要件
(1)訂正事項1、2、4ないし7、9及び10について
本件においては、請求項1、2、4ないし7、9及び10について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1、2、4ないし7、9及び10に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項3及び8について
訂正事項3及び8は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、訂正事項3及び8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項11について
下記第4の3(3)で述べるように、本件訂正後の請求項11に係る発明は、新規性又は進歩性が欠如するものとはいえない。
また、本件訂正後の請求項11の記載及び本件特許の明細書の記載を検討しても、特許法第36条第4項第1号の規定又は同条第6項の規定を満たしていないとすべき記載不備が存するものとはいえない。
以上のことから、本件訂正後の請求項11に係る発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではないとすべき理由が存するものとは認められない。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。

4 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1ないし11に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−11〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、請求項1及び6は削除された。そして、本件訂正後の請求項2ないし5及び7ないし11に係る発明(以下それぞれ請求項の番号に対応して「本件発明2」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし5及び7ないし11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
(削除)

【請求項2】
細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、
前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。

【請求項3】
細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、
前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。

【請求項4】
前記細胞は、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞である、請求項2又は3に記載の製造方法。

【請求項5】
前記複数の容器の数が50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上である容器が存在する、請求項2から4のいずれかに記載の製造方法。

【請求項6】
(削除)

【請求項7】
細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、
前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。

【請求項8】
細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、及び、
前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。

【請求項9】
前記細胞は、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞である、請求項7又は8に記載の分配方法。

【請求項10】
前記複数のアリコートの数が、50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上であるアリコートが存在する、請求項7から9のいずれかに記載の分配方法。

【請求項11】
細胞が分散する液体又は細胞を分散させる液体を塑性流体とするための物質と、細胞凍結保存液の成分とを含み、前記塑性流体中の酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4% である、請求項2から5、及び7から10のいずれかに記載の方法に用いるための組成物。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4ないし7、9及び10に係る特許に対して、当審が令和3年12月3日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

(1)(新規性)請求項6に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(2)(進歩性)請求項1、4ないし6、9及び10に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許に係る出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1、4ないし6、9及び10に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)(サポート要件)請求項1、2、4ないし7、9及び10に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、その特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、請求項1、2、4ないし7、9及び10に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

甲第1号証:国際公開第2014/017513号(以下「甲1」という。)

2 甲1の記載事項及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載事項
甲1には以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。
(甲1−ア)「[0001] 本発明は、細胞又は組織を浮遊させることを可能とする構造体を含有する培地組成物、及び当該培地組成物を用いることを特徴とする細胞又は組織の培養方法に関する。」

(甲1−イ)「[0017] ・・・本発明者らは、がん細胞を含む培地に、脱アシル化ジェランガムまたはその塩を添加したところ、がん細胞の増殖が大きく促進されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
加えて、本発明者らは、肝細胞を含む培地に、脱アシル化ジェランガムまたはその塩を添加したところ、肝細胞数の減少が抑制されることを見いだし、本発明を完成させるに至った。」

(甲1−ウ)「[0020] 本発明は、特定の化合物( 以下、特定化合物ともいう)、特にアニオン性官能基を有する高分子化合物の構造体を含む培地組成物を提供する。当該培地組成物を用いると、細胞や組織の障害や機能喪失を引き起こすリスクのある振とうや回転等の操作を伴わずに細胞及び/又は組織を浮遊状態にて培養することができる。・・・特に、脱アシル化ジェランガムから作製される培地組成物が優れており、以下の特徴を有している。性能を発現させるための濃度が極めて低いので(1桁程度低い)、培地成分に与える影響が最低限に抑えられる。また、水に溶解させる際にダマになりにくいので、大量に製造する際にも、トラブルが起こりにくい。さらに、性能を発現する濃度域での、粘度が低いので、細胞及び/又は組織の回収等の操作性が極めて良好である。」

(甲1−エ)「[0023] 本発明における細胞とは、動物或いは植物を構成する最も基本的な単位であり、その要素として細胞膜の内部に細胞質と各種の細胞小器官をもつものである。・・・生体を構成する体細胞の例としては、以下に限定されるものではないが、線維芽細胞、骨髄細胞、Bリンパ球、Tリンパ球、好中球、赤血球、血小板、マクロファージ、単球、骨細胞、骨髄細胞、周皮細胞、樹状細胞、ケラチノサイト、脂肪細胞、間葉細胞、上皮細胞、表皮細胞、内皮細胞、血管内皮細胞、肝実質細胞、軟骨細胞、卵丘細胞、神経系細胞、グリア細胞、ニューロン、オリゴデンドロサイト、マイクログリア、星状膠細胞、心臓細胞、食道細胞、筋肉細胞(たとえば、平滑筋細胞または骨格筋細胞)、膵臓ベータ細胞、メラニン細胞、造血前駆細胞(例えば、臍帯血由来のCD34陽性細胞)、及び単核細胞等が含まれる。当該体細胞は、例えば皮膚、腎臓、脾臓、副腎、肝臓、肺、卵巣、膵臓、子宮、胃、結腸、小腸、大腸、膀胱、前立腺、精巣、胸腺、筋肉、結合組織、骨、軟骨、血管組織、血液(臍帯血を含む)、骨髄、心臓、眼、脳または神経組織などの任意の組織から採取される細胞が含まれる。幹細胞とは、自分自身を複製する能力と他の複数系統の細胞に分化する能力を兼ね備えた細胞であり、その例としては、以下に限定されるものではないが、胚性幹細胞(ES細胞)、胚性腫瘍細胞、胚性生殖幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、肝幹細胞、膵幹細胞、筋幹細胞、生殖幹細胞、腸幹細胞、癌幹細胞、毛包幹細胞などが含まれる。多能性幹細胞としては、前記幹細胞のうち、ES細胞、胚性生殖幹細胞、iPS細胞が挙げられる。前駆細胞とは、前記幹細胞から特定の体細胞や生殖細胞に分化する途中の段階にある細胞である。癌細胞とは、体細胞から派生して無限の増殖能を獲得した細胞である。細胞株とは、生体外での人為的な操作により無限の増殖能を獲得した細胞である。」

(甲1−オ)「[0033] 本発明の培地組成物は、細胞または組織を浮遊させて培養できる(好ましくは浮遊静置培養できる)構造体と培地を含有する組成物である。
本発明の培地組成物は、好ましくは、培養時の培地組成物の交換処理及び培養終了後において、培地組成物からの細胞または組織の回収が可能である組成物であり、より好ましくは、培地組成物からの細胞または組織の回収の際に、温度変化、化学処理、酵素処理、せん断力のいずれも必要としない組成物である。
本発明における構造体とは、特定化合物から形成されたもので、細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる効果を示すものである。より詳細には、高分子化合物がイオンを介して集合したもの、あるいは、高分子化合物が三次元のネットワークを形成したもの等が含まれる。また、多糖類が金属イオンを介してマイクロゲルを形成することは公知であり(例えば、特開2004−129596号公報)、本発明の構造体には、一態様として当該マイクロゲルも含まれる。
また、高分子化合物がイオンを介して集合したものとしては、その一態様としてフィルム状の構造体が挙げられる。当該フィルムを図13に例示する。
本発明における構造体の大きさは、フィルターで濾過した場合、孔径が0.2μm乃至200μmのフィルターを通過するものが好ましい。当該孔径の下限としては、より好ましくは、1μmを超えるものであり、安定に細胞または組織を浮遊させることを考慮すると、さらに好ましくは5μmを超えるものである。当該孔径の上限としては、より好ましくは、100μm以下のもの、細胞または組織の大きさを考慮すると、さらに好ましくは70μm以下のものである。
本発明における特定化合物とは、特定化合物を液体培地と混合した際、不定形な構造体を形成し、当該構造体が当該液体中で均一に分散し、当該液体の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を実質的に保持し、その沈降を防ぐ効果を有するものである。「液体の粘度を実質的に高めない」とは、液体の粘度が8mPa・sを上回らないことを意味する。この際の当該液体の粘度(すなわち、本発明の培地組成物の粘度)は、8mPa・s以下であり、好ましくは4mPa・s以下であり、より好ましくは2mPa・s以下である。さらに、当該構造体を液体培地中に形成し、当該液体の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)効果を示すものであれば、特定化合物の化学構造、分子量、物性等は何ら制限されない。
構造体を含む液体の粘度は、例えば後述の実施例に記載の方法で測定することができる。具体的には37℃条件下でE型粘度計(東機産業株式会社製、TV−22型粘度計、機種:TVE−22L、コーンロータ:標準ロータ1°34′×R24、回転数100rpm)を用いて測定することができる。
[0034]本発明に用いる特定化合物の例としては、特に制限されるものではないが、高分子化合物が挙げられ、好ましくはアニオン性の官能基を有する高分子化合物が挙げられる。
アニオン性の官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びそれらの塩が挙げられ、カルボキシ基またはその塩が好ましい。
本発明に用いる高分子化合物は、前記アニオン性の官能基の群より選択される1種又は2種以上を有するものを使用できる。
本発明に用いる高分子化合物の好ましい具体例としては、特に制限されるものではないが、単糖類(例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース等)が10個以上重合した多糖類が挙げられ、より好ましくは、アニオン性の官能基を有する酸性多糖類が挙げられる。ここにいう酸性多糖類とは、その構造中にアニオン性の官能基を有すれば特に制限されないが、例えば、ウロン酸(例えば、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸)を有する多糖類、構造中の一部に硫酸基又はリン酸基を有する多糖類、或いはその両方の構造を持つ多糖類であって、天然から得られる多糖類のみならず、微生物により産生された多糖類、遺伝子工学的に産生された多糖類、或いは酵素を用いて人工的に合成された多糖類も含まれる。より具体的には、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム(以下、DAGという場合もある)、ラムザンガム、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン、ザンタンガム、ヘキスロン酸、フコイダン、ペクチン、ペクチン酸、ペクチニン酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ヘパリチン硫酸、ケラト硫酸、コンドロイチン硫酸、デルタマン硫酸、ラムナン硫酸及びそれらの塩からなる群より1種又は2種以上から構成されるものが例示される。多糖類は、好ましくは、ヒアルロン酸、DAG、ダイユータンガム、キサンタンガム、カラギーナン又はそれらの塩であり、低濃度の使用で細胞又は組織を浮遊させることができ、かつ細胞又は組織の回収のしやすさを考慮すると、最も好ましくは、DAGである。
ここでいう塩とは、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属の塩、カルシウム、バリウム、マグネシウムといったアルカリ土類金属の塩又はアルミニウム、亜鉛、銅、鉄、アンモニウム、有機塩基及びアミノ酸等の塩が挙げられる。
これらの高分子化合物(多糖類等)の重量平均分子量は、好ましくは10,000乃至50,000,000であり、より好ましくは100,000乃至20,000,000、更に好ましくは1,000,000乃至10,000,000である。例えば、当該分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるプルラン換算で測定できる。
さらに、後述の実施例で記載するように、DAGはリン酸化したものを使用することもできる。当該リン酸化は公知の手法で行うことができる。」

(甲1−カ)「[0039] 培地中での特定化合物の濃度は、特定化合物の種類に依存し、特定化合物が上述の構造体を液体培地中に形成し、当該液体培地の粘度を実質的に高めること無く細胞及び/又は組織を均一に浮遊させる(好ましくは浮遊静置させる)ことのできる範囲で、適宜設定することができるが、通常0.0005%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.001%乃至0.4%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、さらに好ましくは0.005%乃至0.05%(重量/容量)となるようにすれば良い。例えば、脱アシル化ジェランガムの場合、0.001%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは0.003%乃至0.5%(重量/容量)、より好ましくは0.005%乃至0.1%(重量/容量)、更に好ましくは0.01%乃至0.05%(重量/容量)、最も好ましくは、0.01%乃至0.03%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。キサンタンガムの場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.01%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.05%乃至0.5%(重量/容量)、最も好ましくは、0.1%乃至0.2%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。κ−カラギーナンおよびローカストビーンガム混合系の場合、0.001%乃至5.0%(重量/容量)、好ましくは0.005%乃至1.0%(重量/容量)、より好ましくは0.01%乃至0.1%(重量/容量)、最も好ましくは、0.03%乃至0.05%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。ネイティブ型ジェランガムの場合、0.05%乃至1.0%(重量/容量)、好ましくは、0.05%乃至0.1%(重量/容量)培地中に添加すれば良い。」

(甲1−キ)「[0069]本発明の方法で細胞及び/又は組織を培養する際には、本発明の培養組成物に対して別途調製した細胞及び/又は組織を添加し、均一に分散される様に混合すればよい。その際の混合方法は特に制限はなく、例えばピペッティング等の手動での混合、スターラー、ヴォルテックスミキサー、マイクロプレートミキサー、振とう機等の機器を用いた混合が挙げられる。混合後は培養液を静置状態にしてもよいし、必要に応じて培養液を回転、振とう或いは撹拌してもよい。その回転数と頻度は、当業者の目的に合わせて適宜設定すればよい。」

(甲1−ク)「[0082] [試験例]
次に、本発明の培地組成物の細胞培養における有用性について、以下の試験例において具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、CO2インキュベーターにおけるCO2の濃度(%)は、雰囲気中のCO2の体積%で示した。また、PBSはリン酸緩衝生理食塩水(シグマアルドリッチジャパン社製)を意味し、FBSは牛胎児血清(Biological Industries社製)を意味する。また、(w/v)は、1体積あたりの重量を表わす。
[0083] ( 試験例1:単一の細胞を分散させた際の細胞増殖試験)
脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した。本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清及び10ng/mLのトロンボポエチン(WAKO社製)を含むIMDM培地(ギブコ社製)に終濃度0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製した。引き続き、ヒト白血病細胞株UT7/TPOを、20000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、6ウェル平底マイクロプレート(コーニング社製)のウェルに1ウェル当たり5mLなるように分注した。同様に、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、20000細胞/mLとなるように10%(v/v)胎児ウシ血清を含むEMEM培地(WAKO社製)に0.015%(w/v)の脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を添加した培地組成物に播種した後、6ウェル平底マイクロプレート(コーニング社製)のウェルに1ウェル当たり5mLなるように分注した。これらの細胞懸濁液をCO2インキュベーター(5%CO2)内にて3日間静置状態で培養した。その後、培養液の一部を回収し、トリパンブルー染色液(インヴィトロジェン社製)を同量添加した後、血球計算板(エルマ販売株式会社製)にて生細胞の数を測定した。
[0084] その結果、UT7/TPO細胞及びHeLa細胞は、本発明の培地組成物を用いることにより浮遊状態にて均一に培養することが可能であり、当該培地組成物で増殖することが確認された。浮遊静置培養3日間後のUT7/TPO細胞及びHeLa細胞の細胞数を表4に示す。
[0085][表4]



(甲1−ケ)「[0091] ( 試験例3:ヒト多能性幹細胞の接着培養における細胞増殖試験)
ヒト多能性幹細胞(hPSCs)は、通常フィーダー上やマトリゲルをコーティングした培養皿上に接着させる平面培養条件下で増殖維持される。脱アシル化ジェランガムのhPSCsに対する毒性を評価するために、マトリゲル(ベクトン・ディッキントン社製)を用いた平面培養条件下で、mTeSR培地(STEM CELL Technologies社製)に0.000%乃至0.020%(w/v)の濃度となるように脱アシル化ジェランガムを添加し、hPSCsの増殖に対する影響を検討した。この際、ヒトiPS細胞として京都大学253G1株、ヒトES細胞株として京都大学KhES−1株を培養した。なお、上記濃度の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物は、まず脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した後、所定の濃度となる様にmTeSR培地に添加することにより調製した。その結果、ヒトiPS細胞及びヒトES細胞共に、脱アシル化ジェランガムの添加培地においても、通常のmTeSR培地と同程度の細胞数を得ることができ、脱アシル化ジェランガムによる毒性は認められなかった。)」

(甲1−コ)「[0153] (試験例31:細胞接着能を有する磁気ビーズを用いた細胞浮遊試験2)
試験例30と同様に、フィブロネクチンにてコーティングしたGEM(登録商標、Global Eukaryotic Microcarrier、ジーエルサイエンス株式会社製)をMF−Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)に懸濁した。本懸濁液を細胞低接着プレートであるスミロンセルタイトプレート24F(住友ベークライト株式会社製)に1ウェルあたり50μL分注した。引き続き、別途調製したヒト骨髄由来の間葉系幹細胞(Cell Applications社製)を250000細胞/mLとなる様に添加し、試験例30と同様に、本プレートを一晩、CO2インキュベーター(5%CO2)内で静置させて間葉系幹細胞が接着したGEMを調製した。
[0154] 試験例2と同様の方法を用いて0.015%の脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を含有するMF−Medium(登録商標)間葉系幹細胞増殖培地(東洋紡株式会社製)の組成物を調製した。本培地組成物或いは脱アシル化ジェランガムを含まない同上培地それぞれ1mLを上記にて調製した間葉系幹細胞付着GEM(フィブロネクチンコーティング)に添加し、懸濁させた後、スミロンセルタイトプレート24Fに移した。引き続き、本プレートを4日間、CO2インキュベーター(5%CO2)内で静置した後、細胞培養液を1.5mL容量のマイクロテストチューブ(エッペンドルフ社製)に移し、上記磁石スタンド上にて緩やかにピペッティングしながら細胞付着GEMを集積させて上清を除去した。本GEMをPBS1mLにて1回洗浄し、200μLのトリプシン−EDTA(エチレンジアミン四酢酸)溶液(WAKO社製)を添加し、37℃で10分間保温した。ここで得られた細胞懸濁液200μLに対して10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地を800μL添加し、その一部の細胞懸濁液に対してトリパンブルー染色液(インヴィトロジェン社製)を同量添加した後、血球計算板(エルマ販売株式会社製)にて生細胞の数を測定した。
[0155] その結果、間葉系幹細胞を接着させたGEMは本発明の培地組成物を用いることにより浮遊状態にて培養することが可能であり、当該培地組成物で効率良く細胞が増殖することが確認された。しかも、本発明の培地組成物は、脱アシル化ジェランガムを含まない既存の培地と比べて、細胞増殖の促進効果が優れていることが確認された。また、磁力を用いることにより本発明の培地組成物から間葉系幹細胞付着GEMを集積させることが可能であり、更に本GEMから間葉系幹細胞が回収できることを確認した。
脱アシル化ジェランガム含有或いは非含有培地にて間葉系幹細胞をGEM上で4日間培養した際の細胞数を表31に示す。
[0156][表31]



(甲1−サ)「[0177](試験例37:HeLa細胞を分散させた際の細胞増殖試験)
脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌した。本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製した。引き続き、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注した。なお、陰性対照として脱アシル化ジェランガムを含まない同上培地にHeLa細胞を懸濁したものを分注した。引き続き、本プレートをCO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内にて8日間静置状態で培養した。3、8日間培養後の、培養液に対してWST−8溶液(株式会社同仁化学研究所社製)を20μL添加した後、100分間37℃にてインキュベートし、吸光度計(Molecular Devices社製、SPECTRA MAX 190)にて450nmの吸光度を測定し、培地のみの吸光度を差し引くことにより生細胞の数を測定した。細胞密度は、8日間培養後の細胞を含んだ培養液をピペットで攪拌を行い、得られた攪拌液20μLとTrypan Blue stain 0.4%(Invitrogen社製)20μLを混合した後、顕微鏡下で計測した。
[0178] その結果、HeLa細胞は、本発明の培地組成物を用いることにより細胞凝集塊の大きさが過剰になることなく、均一に分散された状態にて培養することが可能であり、当該培地組成物で効率的に増殖することが確認された。8日間培養後のHeLa細胞の凝集塊の顕微鏡観察の結果を図19に示す。また、静置培養3、8日間後の450nmの吸光度(HeLa細胞の細胞数に相当する)を表40に示す。8日間培養後のHeLa細胞の細胞密度を表41に示す。
[0179][表40]

[0180][表41]



(甲1−シ)「請求の範囲
[請求項1] 細胞または組織を浮遊させて培養できる構造体を含有することを特徴とする培地組成物。
・・・
[請求項32] 請求項1乃至31のいずれか1項に記載の培地組成物と、細胞又は組織とを含む、細胞又は組織培養物。」

(2)甲1に記載された発明
上記(甲1−ウ)ないし(甲1−シ)の記載から、甲1には、
「 HeLa細胞を分散させた際の細胞増殖試験において、
脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、
ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注する、方法。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。

3 当審の判断
(1)特許法第29条第1項について
本件訂正により請求項6は削除されたため、特許法第29条第1項の取消理由の対象となる請求項は存在しないものとなった。

(2)特許法第29条第2項について
ア 本件発明4について
ア−1 本件発明4は、請求項2又は3の記載を引用して特定されることから、最初に本件発明2について検討する。
(ア)本件発明2と甲1発明とを対比する。
a(a)甲1発明の「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)」は、本件発明2の「細胞」に含まれる。

(b)甲1発明の「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)」は、サンプル等を収容するための「ウェル」を備えているものであるから、本件発明2の「容器」に相当する。
また、甲1発明の「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)」は、「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものを「分注する」ためのものであるから、本件発明2の「前記細胞の容器」に相当する。

(c)広辞苑第六版DVD−ROM版には、「製品」に関連する用語の意味について、以下の記載がある。
「せい-ひん【製品】
製造した品物。『新−』」
「しな-もの【品物】
(→)しな2に同じ。物品。『上等の−』」
「しな【品・科・階】
・・・
<○2>(当審注:「<○2>」は丸囲い付きの2を表す。以下同様。)何かの用途にあてる、形のある物。特に、売買の対象となる商品。『−が不足する』『お礼の−』『−切れ』」
「ぶっ-ぴん【物品】
<○1>しなもの。もの。しろもの。
<○2>不動産以外の有体物。
・・・」
「せい-ぞう【製造】
品物をつくること。原料を加工して製品とすること。『家具の−』
・・・」

(d)上記(c)によれば、「製品」とは、「何かの用途にあてる、形のある物であって、つくった物」を意味すると解される。

(e)上記(d)を踏まえると、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注する、方法」は、本件発明2の「製品の製造方法」に含まれる。

(f)そうすると、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後、96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注する、方法」は、本件発明2の「細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法」に相当する。

b(a)甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)」は、本件発明2の「酸性多糖類」に含まれる。

(b)甲1発明の「DMEM培地(WAKO社製)」は液体培地であるから、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物」は、流体であるといえる。

(c)そして、甲1発明の「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものも流体であり、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)は培地組成物中に分散しているといえる。

(d)上記(a)ないし(c)を踏まえると、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種」することと、本件発明2の「酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること」とは、「酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体を調製すること」で共通する。

c 甲1発明の「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものを「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注する」ことと、本件発明2の「前記塑性流体を複数の容器に分注すること」とは、「前記流体を容器に分注すること」で共通する。

d(a)本件特許明細書等の段落【0025】の「塑性流対中の前記特定化合物の濃度(質量/容量%、以下単に%で示す)は、・・・0.001%〜0.4%」との記載を参酌するに、本件発明2の「前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度」である「%」は、「質量/容量%」であると解される。

(b)甲1発明の「培地組成物」は、「終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した」ものであるから、「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後」の「脱アシル化ジェランガム」の濃度は、ほぼ「0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)」であるといえる。

(c)したがって、甲1発明の「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した後」の「脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物」の「脱アシル化ジェランガム」の濃度は、本件発明2の「0.001%〜0.4%」を満たすといえる。

(イ)そうすると、本件発明2と甲1発明とは、
「 細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体を調製すること、及び、
前記流体を、容器に分注することを含み、
前記流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%である、製造方法。」
の発明である点で一致し、次の4点で相違する。

(相違点1)
「酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体」が、本件発明2においては「塑性流体」であるのに対し、甲1発明においては「塑性流体」であることは特定されていない点。

(相違点2)
「酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体」を「分注する」「容器」が、本件発明2においては「複数の容器」であるのに対し、甲1発明においては「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)」であるが、当該マイクロプレートが複数であるかは不明な点。

(相違点3)
「前記流体」が、本件発明2においては「前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有」するのに対し、甲1発明においてはそのような特定はされていない点。

(相違点4)
本件発明2においては「前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない」ことが特定されているのに対し、甲1発明においてはそのような特定はされていない点。

(ウ)上記各相違点について検討する。
a 相違点1について
(a)本件特許明細書等には、「塑性流体」について以下の記載がある(下線は当審で付加した。)。
「【0014】
[塑性流体]
本開示において、塑性流体とは、流動させるために降伏応力が必要な流体、すなわち、降伏値を持つ流体をいう。塑性流体は、ビンガム流体であってもよく、非ビンガム流体であってもよい。本開示において、塑性流体とは、静置状態において、分配(分注)目的の粒子の沈降を抑制できるもの、好ましくは、該粒子を沈降させずに保持できるものをいう。
【0015】
本開示において、塑性流体は、限定されない一又は複数の実施形態において、塑性流体ではない液体と特定化合物とを混合することで得ることができる。前記特定化合物は、塑性流体ではない液体を塑性流体とすることができる化合物であり、限定されない一又は複数の実施形態において、WO2014/017513に開示されるものや、下記のものが使用できる。
・・・
【0017】
塑性流体ではない液体を塑性流体とするための特定化合物の好ましい具体例としては、・・・より具体的には、ヒアルロン酸、ジェランガム、脱アシル化ジェランガム(以下、DAGという場合もある)、・・・より好ましくは、DAGである。・・・
・・・
【0024】
脱アシル化ジェランガムの場合、市販のもの、例えば、三品株式会社製(当審注:「三品」は「三晶」の誤記と思われる。)「KELCOGEL(シーピー・ケルコ社の登録商標)CGーLA」、・・・等を使用することができる。・・・
【0025】
[塑性流体における特定化合物の濃度]
塑性流体中の前記特定化合物の濃度(質量/容量%、以下単に%で示す)は、特定化合物の種類に依存し、静置状態において貯留ボトルの細胞を沈降させずに保持できる塑性流体とすることのできる範囲で適宜設定することができるが、通常0.0005%〜1.0%、好ましくは0.001%〜0.4%、より好ましくは0.005%〜0.1%、さらに好ましくは0.005%〜0.05%である。例えば、脱アシル化ジェランガムの場合、0.001%〜1.0%、好ましくは0.003%〜0.5%、より好ましくは0.005%〜0.1%、更に好ましくは0.01%〜0.05%、更により好ましくは0.02%〜0.05%である。」

(b)本件特許明細書等の上記記載から、塑性流体は、塑性流体ではない液体と特定化合物とを混合することで得ることができ、最も好ましい特定化合物は、脱アシル化ジェランガムであり、三晶株式会社製「KELCOGEL(シーピー・ケルコ社の登録商標)CGーLA」を使用することができ、塑性流体中の脱アシル化ジェランガムの濃度(質量/容量%)は、最も好ましくは0.02%〜0.05%であり、次に好ましいのは0.01%〜0.05%であることが読み取れる。

(c)甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものにおける「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)」の種類及び濃度は、上記(b)の塑性流体ではない液体を混合により塑性流体とすることができる特定化合物の種類及び濃度の条件を満たしていることから、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL CG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものは、「塑性流体」であるといえる。

(d)また、上記(a)に摘記したように、本件特許明細書等の段落【0014】には、塑性流体の定義について、「本開示において、塑性流体とは、静置状態において、分配(分注)目的の粒子の沈降を抑制できるもの、好ましくは、該粒子を沈降させずに保持できるものをいう。」との記載がある。
上記(甲1−サ)の「[0117]・・・引き続き、本プレートをCO2インキュベーター(37℃、5%CO2)内にて8日間静置状態で培養した。・・・[0178]・・・HeLa細胞は、本発明の培地組成物を用いることにより細胞凝集塊の大きさが過剰になることなく、均―に分散された状態にて培養することが可能であり、当該培地組成物で効率的に増殖することが確認された。」との記載から、甲1発明により分注された「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)」は、静置状態の「脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物」中において沈降せずに分散状態を維持することが可能であると解される。
したがって、甲1発明の「脱アシル化ジェランガム(KELCOGEL DG−LA、三晶株式会社製)を0.3%(w/v)となるように超純水(Milli−Q水)に懸濁した後、90℃にて加熱しながらの撹拌により溶解し、本水溶液を121℃で20分オートクレーブ滅菌し、本溶液を用いて10%(v/v)胎児ウシ血清を含むDMEM培地(WAKO社製)に終濃度0.015%(w/v)或いは0.030%(w/v)の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物を調製し、ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を、50000細胞/mLとなるように上記の脱アシル化ジェランガムを添加した培地組成物に播種した」ものは、本件特許明細書等の段落【0014】に記載された「塑性流体」の上記定義を満たすといえる。

(e)してみると、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

b 相違点2について
細胞増殖試験において、サンプル数は必要に応じて設定すべき事項であり、甲1発明において、サンプル数を増やすために「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)」を複数用いることは、当業者であれば適宜なし得ることである。
また、環境等の異なる複数の条件下での細胞増殖を比較するために、96ウェルよりも少ないウェル(例えば、24ウェル)を有する複数のマイクロプレート、又は単独の収容部を有する複数の容器を用いることも、当業者であれば容易に想起し得ることである。

c 相違点3について
甲1発明は、「細胞増殖試験において」「ヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)を」「培地組成物に播種した後」、「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに」「分注する」「方法」であるところ、分注後の培地組成物を凍結保存することを想定しているものとは解されないことから、甲1発明の「培地組成物」に「凍結保存液の成分」を含有させることを動機付ける事情があるとは認められない。
したがって、甲1発明において、「培地組成物」に「凍結保存液の成分」を含有させることは、当業者が容易に想起し得ることであるとはいえない。

d 相違点4について
甲1発明において、各ウェルに分注された培地組成物にヒト子宮頸癌細胞株HeLa(DSファーマバイオメディカル社製)が均等に含有されていることが望ましいことは明らかであり、そのためには分注の間においても培地組成物を攪拌する必要があると認められる。
そうすると、甲1発明において、分注の間、培地組成物の攪拌操作を行わないものとすることは、当業者が容易に想起し得ることであるとはいえない。

(エ)以上のとおりであるから、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ア−2 次に、本件発明3について検討する。
(ア)本件発明3は、本件発明2から「前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し」との特定を削除したものに相当することから、上記ア−1(ア)の本件発明2と甲1発明との対比を踏まえると、本件発明3と甲1発明とは、
「 細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体を調製すること、及び、
前記流体を、容器に分注することを含み、
前記流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%である、製造方法。」
の発明である点で一致し、上記相違点1、2及び4で相違する。

(イ)上記相違点1、2及び4については、上記ア−1(ウ)a、b及びdで検討したとおりであるから、本件発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ア−3 そうすると、本件発明2又は3の発明特定事項を全て含む本件発明4は、本件発明2又は3と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明5について
本件発明5は、本件発明2、3又は4の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明5は、上記アで検討した本件発明2ないし4と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明9について
ウ−1 本件発明9は、請求項7又は8の記載を引用して特定されることから、最初に本件発明7について検討する。
(ア)本件発明7と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「96ウェル平底超低接着表面マイクロプレート(コーニング社製、#3474)のウェルに1ウェル当たり200μLになるように分注する」は、本件発明7の「複数のアリコートに分配する」に相当する。

b 本件発明7は本件発明2と同様の特定事項を有するところ、本件発明7の特定事項のうち、本件発明2と同様の特定事項については、上記アのア−1(ア)の本件発明2と甲1発明との対比と同じことがいえる。

(イ)そうすると、本件発明7と甲1発明とは、
「 細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体を調製すること、及び、
前記流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%である、分配方法。」
の発明である点で一致し、上記相違点1、3及び4で相違する。

(ウ)相違点1、3及び4については、上記アのア−1(ウ)a、c及びdで検討したとおりであるから、本件発明7は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ−2 次に、本件発明8について検討する。
(ア)本件発明8は、本件発明7から「前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し」との特定を削除したものに相当することから、上記ウ−1(ア)の本件発明7と甲1発明との対比を踏まえると、本件発明8と甲1発明とは、
「 細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した流体を調製すること、及び、
前記流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%である、分配方法。」
の発明である点で一致し、上記相違点1及び4で相違する。

(イ)上記相違点1及び4については、上記アのア−1(ウ)a及びdで検討したとおりであるから、本件発明8は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ−3 そうすると、本件発明7又は8の発明特定事項を全て含む本件発明9は、本件発明7又は8と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件発明10について
本件発明10は、本件発明7、8又は9の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明10は、上記ウで検討した本件発明7ないし9と同じ理由により、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 取消理由通知では、請求項1及び6を特許法第29条第2項に係る取消理由の対象としていたが、本件訂正により請求項1及び6は削除された。

(3)本件発明11について
請求項11は特許異議申立の対象となっていないが、本件訂正に係る独立特許要件の対象となっていることから、ここで本件発明11の新規性及び進歩性について検討することとする。
本件発明11は、上記相違点3に対応する「細胞凍結保存液の成分」を含むことを発明特定事項として含んでいることから、甲1発明と同一ではない。
また、相違点3については、上記アのア−1(ウ)cで検討したとおりであるから、本件発明11は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件発明11は、新規性及び進歩性が欠如するものとはいえない。

(4)特許法第36条第6項第1号について
ア 当審は、「細胞のような生きた粒子成分を含むサンプルを分注する場合に、貯留部の撹拌方法や各操作のパラメータを最適化する必要がなく、撹拌の物理的刺激による活性の低下を生じさせることなしに、濃度が均一になるように分注することができる分配方法を提供すること」という課題を解決するために必要な手段である「分注の間、塑性流体の撹拌操作は行われないこと」が特定されていない請求項1、2、4ないし7、9及び10に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない旨の取消理由を通知した。

イ これに対し、本件訂正により、請求項1及び6は削除され、本件発明2、4、5、7、9及び10は、「分注の間、塑性流体の撹拌操作は行われない」ことを発明特定事項として含むものとなった。

ウ したがって、本件発明2、4、5、7、9及び10は、発明の詳細な説明に記載したものである。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許法第36条第4項第1号について
1 申立人の主張
申立人は、請求項1、2、4ないし7、9及び10に係る発明は、攪拌操作を伴う実施形態を包含しているのに対し、発明の詳細な説明には、攪拌操作を行いつつ細胞の生存性を低下させないための条件についての開示がないことから、発明の詳細な説明は、攪拌操作を許容する請求項1、2、4ないし7、9及び10に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでない旨主張する。

2 当審の判断
本件訂正により、請求項1及び6は削除され、本件発明2、4、5、7、9及び10は、「分注の間、塑性流体の撹拌操作は行われない」ことを発明特定事項として含むものとなった。
そのため、本件発明2、4、5、7、9及び10は、分注の間、攪拌操作を許容しないものであるから、申立人の主張する攪拌操作を伴う実施形態を包含しているという前提が成立しない。
したがって、特許法第36条第4項第1号に係る特許異議申立理由によっては、本件の請求項2、4、5、7、9及び10に係る特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおり、本件請求項2、4、5、7、9及び10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項2、4、5、7、9及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1及び6に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1及び6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、 及び、
前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。
【請求項3】
細胞と前記細胞の容器とを備える製品の製造方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、 及び、
前記塑性流体を、複数の容器に分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、製造方法。
【請求項4】
前記細胞は、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞である、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記複数の容器の数が50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上である容器が存在する、請求項2から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】(削除)
【請求項7】
細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、 及び、
前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記塑性流体は、前記酸性多糖類以外の凍結保存液の成分を含有し、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。
【請求項8】
細胞を複数のアリコートに分配する方法であって、
酸性多糖類と前記細胞とを含み、前記細胞が分散した塑性流体を調製すること、 及び、
前記塑性流体を複数のアリコートに分注することを含み、
前記塑性流体中の前記酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%であり、
前記分注の間、前記塑性流体の攪拌操作は行われない、分配方法。
【請求項9】
前記細胞は、多能性幹細胞、又は多分化能幹細胞である、請求項7又は8に記載の分配方法。
【請求項10】
前記複数のアリコートの数が、50個以上であり、分注開始から分注されるまでの滞留時間が1時間以上であるアリコートが存在する、請求項7から9のいずれかに記載の分配方法。
【請求項11】
細胞が分散する液体又は細胞を分散させる液体を塑性流体とするための物質と、細胞凍結保存液の成分とを含み、前記塑性流体中の酸性多糖類の濃度が、0.001%〜0.4%である、請求項2から5、及び7から10のいずれかに記載の方法に用いるための組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-18 
出願番号 P2020-529396
審決分類 P 1 652・ 536- YAA (G01N)
P 1 652・ 537- YAA (G01N)
P 1 652・ 121- YAA (G01N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
石井 哲
登録日 2021-03-18 
登録番号 6854553
権利者 国立大学法人大阪大学
発明の名称 粒子の分配方法  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
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