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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F15B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F15B
審判 全部申し立て 2項進歩性  F15B
管理番号 1387510
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-06 
確定日 2022-08-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6889137号発明「流体圧シリンダ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6889137号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6889137号の請求項1−5に係る特許についての出願は、平成30年9月28日に出願され、令和3年5月24日にその特許権の設定登録がされ、令和3年6月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年12月6日に特許異議申立人皆川一良により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年3月30日付けで取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、令和4年6月6日に意見書を提出した。

第2 本件発明
本件特許の請求項1−5に係る発明(以下、請求項の順番に従って「本件発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1−5に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの一端部に取り付けられるヘッドカバーと、
前記シリンダチューブ内に往復動可能に収容されるピストンと、
前記ピストンにおける前記ヘッドカバーと対向する端面に設けられる弾性材料からなる緩衝部材と、を備え、
前記ピストンの端面には、収容凹部が形成されており、
前記収容凹部の内周面には、前記収容凹部の内側に突出する係止爪が設けられており、
前記緩衝部材は、前記係止爪に係止可能なフランジと、前記フランジに連続するとともに前記係止爪の内側を介して前記収容凹部から外部に突出する変形部と、を有し、
前記変形部が前記ヘッドカバーに当接して押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形することで、前記ピストン又は前記ヘッドカバーに加わる衝撃力を前記緩衝部材によって吸収する流体圧シリンダであって、
前記変形部における前記係止爪と対向する部位、及び前記係止爪における前記変形部と対向する部位の少なくとも一方には、前記変形部が押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形したときに前記変形部が前記係止爪に接触することを抑制するための逃がし部が設けられており、
前記逃がし部は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であり、
前記変形部における前記フランジからの突出量は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されていることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの一端部に取り付けられるヘッドカバーと、
前記シリンダチューブ内に往復動可能に収容されるピストンと、
前記ピストンにおける前記ヘッドカバーと対向する端面に設けられる弾性材料からなる緩衝部材と、を備え、
前記ピストンの端面には、収容凹部が形成されており、
前記収容凹部の内周面には、前記収容凹部の内側に突出する係止爪が設けられており、
前記緩衝部材は、前記係止爪に係止可能なフランジと、前記フランジに連続するとともに前記係止爪の内側を介して前記収容凹部から外部に突出する変形部と、を有し、
前記変形部が前記ヘッドカバーに当接して押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形することで、前記ピストン又は前記ヘッドカバーに加わる衝撃力を前記緩衝部材によって吸収する流体圧シリンダであって、
前記変形部における前記係止爪と対向する部位、及び前記係止爪における前記変形部と対向する部位の少なくとも一方には、前記変形部が押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形したときに前記変形部が前記係止爪に接触することを抑制するための逃がし部が設けられており、
前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項3】
前記逃がし部は、前記変形部における前記係止爪と対向する部位に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体圧シリンダ。
【請求項4】
前記逃がし部は、前記フランジから離間するにつれて前記係止爪から離間していくように傾斜するテーパ部であることを特徴とする請求項3に記載の流体圧シリンダ。
【請求項5】
前記緩衝部材は、前記緩衝部材が弾性変形したときに前記収容凹部の内周面に接触することを抑制する収容凹部側逃がし部をさらに有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の流体圧シリンダ。」

第3 取消理由の概要
当審において、請求項1、3−5に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項1、3−5に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)本件発明1、3−5は、本件特許出願前に日本国内において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当する。よって、請求項1、3−5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

<刊行物一覧>
甲第1号証:特開平10−9213号公報

第4 甲各号証(以下、各証拠について、証拠番号に従って「甲1」などという。)の記載
1 甲1(特開平10−9213号公報)の記載
甲1には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0021】図1に示されるように、本実施形態のシリンダ1を構成するシリンダチューブ2は、第1のポート3と第2のポート4とを備える円筒状の金属製部材である。このシリンダチューブ2の開口部のうち、図1の右側の開口部は、シリンダカバーとしての金属製のヘッドカバー5によって閉塞されている。また、図1の左側の開口部は、シリンダカバーとしての金属製のロッドカバー6によって閉塞されている。ヘッドカバー5は、シリンダチューブ2の内壁面に対してじかに嵌合されている。一方、ロッドカバー6は、Cリング7によってシリンダチューブ2の内壁面に固定されている。
【0022】シリンダチューブ2内に形成された内部空間内には、金属製のロッド8を一方の端面に有した金属製のピストン9が摺動可能に収容されている。そして、このピストン9の存在によって、前記内部空間が2つの圧力作用室10,11に区画されている。具体的にいうと、ヘッド側の圧力作用室10は、ヘッドカバー5の内端面、シリンダチューブ2の内周面及びピストン9の右端面によって、即ち複数の部材によって区画されている。この圧力作用室10には第1のポート3が連通している。ロッド側の圧力作用室11は、ロッドカバー6の内端面、シリンダチューブ2の内周面、ピストン9の左端面及びロッド8の周面によって、即ち複数の部材によって区画されている。この圧力作用室11には第2のポート4が連通している。」
(2)「【0024】図1等に示されるように、ロッドカバー6の内端面には段差D1 があり、周辺部に比べて中心部のほうが引っ込んだ状態になっている。ピストン9の右端面にも同様に段差D1 があり、周辺部に比べて中心部のほうが引っ込んだ状態になっている。また、ロッドカバー6の内端面において段差D1 がある部分には、緩衝体保持溝23が形成されている。この緩衝体保持溝23は、環状であってシリンダチューブ2の中心軸方向に向かって開口している。ピストン9の右端面において段差D1 がある部分には、緩衝体保持部としての緩衝体保持溝24が形成されている。この緩衝体保持溝24も、環状であってシリンダチューブ2の中心軸方向に向かって開口している。そして、これらの保持溝23,24には、弾性を有する緩衝体としてのゴムクッション25が嵌着されるようになっている。ここで保持溝23,24の奥側側壁面をG1、手前側側壁面をG2、底面をG3とする。図3に示されるように、前記手前側側壁面G2には、チューブ軸線方向に対して約45°の角度をなすテーパがそれぞれ設けられている。なお、本実施形態における緩衝体保持溝23,24は、切削工具等を用いた溝加工によって形成されることができる。
【0025】次に、本実施形態において使用されるゴムクッション25の形状等について説明する。なお、図3において、実線はゴムクッション25の変形前の様子を示し、二点鎖線はゴムクッション25の最大変形時の様子を示している。」
(3)「【0028】また、このゴムクッション25は肉厚部分26を備えている。肉厚部分26における第1の端部E1側には、被保持部27が突設されている。この被保持部27の幅は、本実施形態では前記保持溝23,24の幅の半分程度に設定されている。そして、前記被保持部27を各保持溝23,24に遊嵌することにより、ピストン9及びロッドカバー6に対してゴムクッション25が保持されている。なお、被保持部27が形成されている第1の端部E1の径は、前記手前側側壁面G2の部分の径に比べて大きく設定されている。従って、被保持部27を各保持溝23,24に遊嵌したときでも、ゴムクッション25が脱落しないようになっている。」
(4)「【0032】また、図2,図3に示されるように、このゴムクッション25は、どこにもリップ部等を備えていない。従って、そのようなものを備える従来のゴムクッションと比較すると、入り組んだ箇所がない分だけ単純な断面形状を有したものとなっている。同ゴムクッション25を切断した場合、その肉厚部分26の切断面においては直線かつ並行な線分が一組できる。これらの線分のうち非貫通孔側にあるものが属する面を外周面25bと定義し、貫通孔側にあるものが属する面を内周面25aと定義する。前記外周面25aにおいて肉厚部分26と被保持部27とをつなぐ箇所は、最大変形時において手前側側壁面G2に面接触しうる斜面29となっている。
【0033】次に、このように構成された流体圧シリンダ1の動作及びゴムクッション25の作用について説明する。これ以降、図3に示されるロッド側のゴムクッション25のみについて言及することにする。即ち、ロッド側とヘッド側とにおけるゴムクッション25の作用には基本的な差異はないため、後者についてはその詳細な説明を割愛する。」
(5)「【0035】ピストン9がストロークエンド付近にまで到達し、ピストン9の左端面にゴムクッション25の第2の端部E2が当接したとき、ゴムクッション25は、ロッド側の圧力作用室11内を2つの空間に区画する。そのうちの1つはゴムクッション25の外周面25b側に区画される空間であって、その空間は第2のポート4側に連通する。残りの1つはゴムクッション25の内周面25a側に区画される空間であって、その空間は第2のポート4側とは非連通の状態になる。後者の空間は、具体的にはゴムクッション25の内周面25a、ピストン9の左側面、ロッドカバー6の内端面及びロッド8の周面によって区画され、その中にはエアが密閉されるようになっている。以下、後者の空間のことをエア溜まりS1 と呼ぶ。
【0036】前記の状態にあるピストン9がさらにストロークエンドに近づくと、ピストン9からの押圧力を受けたゴムクッション25に弾性変形が生じる。即ち、前記ゴムクッション25は、緩衝体保持溝23が設けられた部材であるロッドカバー6の側に第2の端部E2が近接するように撓むこととなる。また、ゴムクッション25は弾性体であることから、同ゴムクッション25には自身の撓みを解消させるような復帰力が生まれる。そして、この撓みに起因する復帰力がピストン9をストロークの反対方向に押し戻そうとする。従って、ピストン9の慣性エネルギーが吸収され、もって衝撃の緩衝が図られる。」
(6)「【0038】以下、本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(イ)この実施形態では、緩衝体保持溝23,24と被保持部27との間に、ゴムクッション25の変形に伴う被保持部27の径方向への移動を許容する移動空間28を設けている。従って、ゴムクッション25の弾性変形時において、被保持部27は緩衝体保持溝23,24内を径方向に向かって移動することができる。よって、ゴムクッション25の変形抵抗が小さくなり、被保持部27への応力集中が回避される。そのため、応力集中による早期劣化が防止され、ゴムクッション25の耐久性を確実に向上させることができる。ゆえに、長期にわたって衝撃緩衝を図ることができる優れた流体圧シリンダ1を実現することができる。さらに、ゴムクッション25の変形抵抗が小さくなる結果、低圧シリンダ駆動時においてもピストン9の推力が有効に作用するようになる。」
(7)「【0040】(ハ)この実施形態では、緩衝体保持溝23,24の手前側側壁面G2にテーパを設けている。ゆえに、ゴムクッション25の斜面29に対して角がたたないため、斜面29の部分に大きな応力が集中することもない。従って、ゴムクッション25に傷等が付きにくくなり、結果としてゴムクッション25の早期劣化がより確実に防止される。また、かかる構成であると、切削工具の刃を保持溝23,24の奥のほうまで入れることができるので、溝加工が比較的簡単になる。このため、シリンダ1の製造容易化を図ることができる。」
(8)「



(9)甲1の段落【0024】には、「ここで保持溝23,24の奥側側壁面をG1、手前側側壁面をG2、底面をG3とする。」と記載され、また、図3より、緩衝体保持溝23の底面G3には、シリンダチューブ2の中心軸方向に向かって突出する手前側側壁面G2が形成されていることが看取される。そして、段落【0033】の「ロッド側とヘッド側とにおけるゴムクッション25の作用には基本的な差異はないため、後者についてはその詳細な説明を割愛する」との記載、及び、段落【0040】の「緩衝体保持溝23,24の手前側側壁面G2にテーパを設けている。・・・・かかる構成であると、切削工具の刃を保持溝23,24の奥のほうまで入れることができるので、溝加工が比較的簡単になる。」との記載から、緩衝体保持溝23と緩衝体保持溝24とが同じように形成されているといえるから、緩衝体保持溝23と同様に、緩衝体保持溝24の底面G3には、シリンダチューブ2の中心軸方向に向かって突出する手前側側壁面G2が形成されていることがわかる。
(10)甲1の図1、3より、肉厚部分26は、手前側側壁面G2のシリンダチューブ2の中心軸側を介して緩衝体保持溝24から圧力作用室10に突出することが看取される。
(11)甲1の段落【0035】の「ピストン9がストロークエンド付近にまで到達し、ピストン9の左端面にゴムクッション25の第2の端部E2が当接したとき、・・・・」、段落【0036】の「前記の状態にあるピストン9がさらにストロークエンドに近づくと、ピストン9からの押圧力を受けたゴムクッション25に弾性変形が生じる。・・・・また、ゴムクッション25は弾性体であることから、同ゴムクッション25には自身の撓みを解消させるような復帰力が生まれる。そして、この撓みに起因する復帰力がピストン9をストロークの反対方向に押し戻そうとする。従って、ピストン9の慣性エネルギーが吸収され、もって衝撃の緩衝が図られる。」、及び、段落【0038】の「ゴムクッション25の弾性変形時において、被保持部27は緩衝体保持溝23,24内を径方向に向かって移動することができる」との記載、並びに、上記(10)の図1、3からの看取事項を考慮すると、ピストン9のストロークエンド付近では、肉厚部分26が、ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形することで、ピストン9又はヘッドカバー5の衝撃をゴムクッション25によって緩衝することがわかる。また、ピストン9のストロークエンド付近において、ピストン9の右端面とヘッドカバー5が接触しない状態が確保されていなければ、そもそも肉厚部分26がヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形しないことになりゴムクッション25によって衝撃を緩衝することができないから、肉厚部分26における被保持部27からの突出量は、肉厚部分26がヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形するピストン9のストロークエンド付近ではピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されているといえる。
(12)甲1の段落【0032】の「前記外周面25aにおいて肉厚部分26と被保持部27とをつなぐ箇所は、最大変形時において手前側側壁面G2に面接触しうる斜面29となっている。」との記載から、最大変形時となる前は、斜面29が手前側側壁面G2に接触していないことは明らかである。すると、外周面25aにおいて肉厚部分26と被保持部27とをつなぐ箇所であって手前側側壁面G2と対向する部分には、肉厚部分26が押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形したときに、肉厚部分26が手前側側壁面G2に接触しないようにする斜面29が形成されているといえる。また、甲1の上記段落【0032】の記載、及び、段落【0040】の「この実施形態では、緩衝体保持溝23,24の手前側側壁面G2にテーパを設けている。ゆえに、ゴムクッション25の斜面29に対して角がたたないため、斜面29の部分に大きな応力が集中することもない。」との記載から、手前側側壁面G2に設けたテーパにより、斜面29は、最大変形時において肉厚部分26と手前側側壁面G2とが面接触する形状であるといえる。
(13)前記(1)−(12)の内容を総合し、本件特許の請求項1の記載ぶりに倣って整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「シリンダチューブ2と、
前記シリンダチューブ2の右側の開口部を閉塞するヘッドカバー5と、
前記シリンダチューブ2内に摺動可能に収容されているピストン9と、
前記ピストン9の右端面に嵌着されるゴムクッション25と、を備え、
前記ピストン9の前記右端面には、緩衝体保持溝24が形成されており、
前記緩衝体保持溝24の底面G3には、シリンダチューブ2の中心軸方向に向かって突出する手前側側壁面G2が形成されており、
前記ゴムクッション25は、前記緩衝体保持溝24に遊嵌したときでも前記ゴムクッション25が脱落しないようになっている被保持部27と、前記被保持部27が突設されているとともに前記手前側側壁面G2のシリンダチューブ2の中心軸側を介して前記緩衝体保持溝24から圧力作用室10に突出する肉厚部分26と、を備え、
前記肉厚部分26が前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形することで、前記ピストン9又は前記ヘッドカバー5の衝撃を前記ゴムクッション25によって緩衝する流体圧シリンダ1であって、
外周面25aにおいて前記肉厚部分26と前記被保持部27とをつなぐ箇所であって前記手前側側壁面G2と対向する部分には、前記肉厚部分26が押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形したときに、前記肉厚部分26が前記手前側側壁面G2に接触しないようにする斜面29が形成されており、
前記斜面29は、最大変形時において前記肉厚部分26と前記手前側側壁面G2とが面接触する形状であり、
前記肉厚部分26における前記被保持部27からの突出量は、前記肉厚部分26が前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形する前記ピストン9のストロークエンド付近では前記ピストン9の右端面と前記ヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されている、
流体圧シリンダ1。」

2 甲2(特開2014−219024号公報)の記載
甲2には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0012】
テーブル12の側面にはブロック体14がテーブル12と一体的に設けられている。ベース11の長手方向の一端には、テーブル12の移動方向においてブロック体14と対向配置される取付部15が突設されている。取付部15には雌ねじ孔15aが形成されている。さらに、取付部15には、テーブル12が長手方向の一端側へ移動する際に、テーブル12を予め定められたストロークエンドで停止させるための緩衝装置20が取り付けられている。」
(2)「【0014】
図2に示すように、緩衝装置20のボディ21には、収容部23が形成されている。収容部23は、ボディ21の一端面からボディ21の軸方向に沿って直線状に凹む凹部である。さらに、ボディ21には、収容部23の底部に連なってボディ21の径方向に延びる環状の係止凹部23aが形成されている。
【0015】
収容部23にはゴム製(例えばウレタンゴム製)の緩衝体24が収容されている。緩衝体24は直線状に延びる円柱形状である。緩衝体24の一端における外周面には環状の係止部24aが突設されている。そして、係止部24aが収容部23の係止凹部23aに係止されることにより、緩衝体24が収容部23に位置決めされた状態で収容されている。緩衝体24は、収容部23から外部に突出する突出部24bを有する。
【0016】
収容部23と緩衝体24との間には、緩衝体24の弾性変形を許容するクリアランス25が設けられている。そして、突出部24bにテーブル12のブロック体14が衝突した際に、緩衝体24がクリアランス25内で弾性変形することで、テーブル12からの衝撃が吸収されるようになっている。クリアランス25は、ブロック体14が突出部24bに衝突して緩衝体24が弾性変形することでテーブル12からの衝撃を吸収している途中で、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接可能な寸法に設定されている。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図3に示すように、テーブル12から緩衝体24に加わる衝撃力が、ある所定値を越えた衝撃力であった場合、緩衝体24がクリアランス25内で弾性変形することで、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接する。すると、緩衝体24における収容部23の内面と当接した部位から突出部24bとは反対側の領域での弾性変形が行われ難くなる。その結果、緩衝体24は、収容部23の内面と当接した部位から突出部24b側の領域で弾性変形が行われ易くなり、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接する前に比べて小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して生じさせる。
【0018】
図4に示すように、テーブル12がさらにストロークエンドに近づくにつれて緩衝体24がブロック体14にさらに押圧されて、緩衝体24がさらに弾性変形していくと、緩衝体24の外面と収容部23の内面との当接領域が拡大していく。すると、緩衝体24における収容部23の内面と当接した部位から突出部24bとは反対側の領域での弾性変形がさらに行われ難くなるとともに、緩衝体24における弾性変形が行われ易い領域が少なくなり、緩衝体24は小さい歪み量でさらに大きな反力をテーブル12に対して生じさせる。」
(3)「【0022】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 図6に示すように、緩衝体24が、突出部24bから収容部23内に向かうにつれて拡径していくテーパ形状になっていてもよい。これによれば、緩衝体24が直線状に延びている場合に比べると、緩衝体24がクリアランス25内で弾性変形して、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接するタイミングを早くすることができ、小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して早いタイミングで生じさせることができる。すなわち、小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して生じさせるタイミングを調整することができる。」
(4)「【0024】
・ 図8に示すように、収容部23が、開口側に向かうにつれて縮径していくテーパ形状であってもよい。これによれば、収容部23が直線状に延びている場合に比べると、緩衝体24がクリアランス25内で弾性変形して、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接するタイミングを早くすることができ、小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して早いタイミングで生じさせることができる。すなわち、小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して生じさせるタイミングを調整することができる。」
(5)「




(6)「



(7)前記(1)−(6)の内容を総合すると、甲2には、次の技術的事項(以下、「甲2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「テーブル12を予め定められたストロークエンドで停止させるための緩衝装置20において、緩衝体24の小さい歪み量で大きな反力をテーブル12に対して生じさせるために、緩衝装置20のボディ21には、収容部23が形成され、緩衝体24と収容部23と間に設けられたクリアランス25を、緩衝体24が弾性変形して衝撃を吸収している途中で、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接可能な寸法に設定すること。」

3 甲3(特開平11−153104号公報)の記載
甲3には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0017】エンドキャップ10のチュ−ブ2への嵌入軸部12は、チューブ2のシリンダ孔形状に一致した長円形状を成し、その先端部は、長円形状の細径部12Aとなっている。この先端部の内側には、所定深さで長円形断面の嵌め込み孔12aが形成してある。図4において、ピストン20の端部とピストンストロ−クエンドで衝接する内側のゴムダンパ70において、前記嵌入軸部12の嵌め込み孔12aに、嵌め込み孔12aの形状と一致する長円径の取付部71aがきっちり嵌合され、接着剤で固定される。その取付部71aより軸方向内側位置(図4で左方向)で、シリンダ孔2aより僅かに小さな長円形を成すフランジ71bは、長径方向中央部で接続壁部71cにより取付部71aに接続されて、前記取付部71aと共にゴムダンパ70の本体部71を構成する。接続壁部71cには、軸線方向に流体給排孔72が貫通され、エンドキャップ10の流体ポート15と連通孔15aを介して連通している。嵌め込み孔12aに取付部71aを嵌合すると、嵌入軸部12とゴムダンパ70のフランジ71bとの間にシリンダガスケット13を保持する保持溝16が形成される。
【0018】取付部71aからは、ピストン方向に向かって前記接続壁部71cの両側に、断面円形の一対の突起部73が設けてある。突起部73は、本体部端面71dより軸方向外側位置(図4で右方向)にある取付部71aとの接続基部73aから、突起部73の先端に向けて、先細りとなるテーパ形状に形成してある。接続基部73aの直径は、取付部71aの短径と一致しており、取付部71aの長径方向端部より幅方向少し内側に接続基部73aが位置している。突起部73の先端面は、平坦面73cに形成され、平坦面73cと突起部側面(テーパ面)73bとは、円弧面73dで連続している。突起部73は、フランジ71bの貫通孔74を通って、前記端面71dよりシリンダ室6A内へ突出している。突起部73の接続基部73aと前記接続壁部71cとの間には、貫通孔74と連続し、貫通孔74と同一半径の溝71eが形成してある。こうしてエンドキャップ10への取付状態において、突起部73周囲には、前記接続壁部71c、貫通孔74、及び、嵌め込み孔12aとの間に、突起部73が軸方向荷重を受けたときに、径方向外側(軸直角方向)に撓み得る変位許容空間Pが形成される。ゴムダンパ70は、突起部73が軸方向にたわみ易くするために、反発性の比較的低い材質であるニトリルゴム(Hs80程度)で全体が一体成形されている。後述の図6,7に示すものでは、取付部171aの外周全周に外周壁部171fがあって溝171gの内側にしか突起部173が設けられないので、取付部の短径方向寸法を同じとするとき、突起部の接続基部断面が大きく出来ないが、本実施形態では、そのような外周壁部がないことにより前記断面を大きくできる。」
(2)「【0020】ピストンマウント23上にワークその他の被搬送物による荷重をかけてピストン20が所定の速度で左行、又は、右行すると、そのストロークエンド付近で、先ず、ピストン20が内側のゴムダンパ70に当接し始め、ピストン20による軸方向推力と、前記荷重による運動エネルギが内側のゴムダンパ70に作用し始める。すると、突起部73は軸方向に圧縮されつつそれと直交する方向(径方向)に拡開する。軸方向の撓みで生じる拡開変位は、突起部73の周囲に径方向の変位許容空間Pがあることにより容易である。突起部73の軸方向変位により、ピストン20に生じる加速度が小さくなり、ピストン20をスムーズに停止させようとする。このとき、突起部73を接続基部73aから先端に向けてテーパ状としたことで、荷重をうける突起部73の弾性係数が先端から接続基部73aにかけて小から大に連続的に変化しているので、ピストン20が突起部73の平坦面73cに衝突すると、ピストン20は最初は柔らかく受け止められてショックが少なく、その後徐々に制動抵抗が増すので、衝撃力を円滑に受け止めて運動エネルギを吸収できる。また、接続基部73aが先端より面積大なので、接続基部73aから片持ち状態で突起部73が突出している本願発明のものであっても、軸方向過重で倒れにくく、衝撃緩和機能が確実に発揮される。そして、突起部73の拡開が本体部71との間及び嵌め込み孔12aで規制されると突起部73の軸方向撓みも規制され、ピストン20は内側のゴムダンパ70の端面71dに衝接する。繰り返しの軸方向衝撃荷重が加えられても、突起部73の先端平坦面73cとテーパ面73bとが円弧面73dで接続されているので、その接続部分に従来のように応力集中が起こりにくく、長期使用による欠け、あるいは、突起部先端面での亀裂の発生を抑制できる。」
(3)「


(4)前記(1)−(3)の内容を総合すると、甲3には、次の技術的事項(以下、「甲3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ピストン20の端部とピストンストロ−クエンドで衝接する内側のゴムダンパ70において、ピストン20をスムーズに停止させるために、先細りとなるテーパ形状に形成した突起部73周囲には、接続壁部71c、貫通孔74、及び、嵌め込み孔12aとの間に、突起部73が軸方向荷重を受けたときに、径方向外側に撓み得る変位許容空間Pが形成されること。」

4 甲4(実願昭60−106678号(実開昭62−15630号)のマイクロフィルム)の記載
甲4には、以下の事項が記載されている。
(1)「本考案は、押圧部材の押圧力によって制動力が得られる負作動形電磁ブレーキに関し、特に、ブレーキ釈放時にアーマチュアとフィールドコアとの間における当打音の発生が防止された負作動形電磁ブレーキに関するものである。」(第2頁第4−8行)
(2)「このような負作動形電磁ブレーキにおいては、アーマチュアまたはフィールドコアに形成された凹部または貫通孔の開口部と弾性部材との間に空隙が存在するので、アーマチュアがフィールドコアに磁気吸引されたとき、この弾性部材はこれら部材によって挟圧されるが、前記凹部または貫通孔の開口部から突出した部分だけでなく、その開口部に囲まれた部分も前記空隙を埋めるように変形を起すことができる。」(第6頁第7−15行)
(3)「図示されたこの負作動形電磁ブレーキにおいては、アーマチュア8の凹部8aの開口部に座ぐり面8bを形成させたので、円柱状のゴムからなる弾性部材15は、それがアーマチュア8とフィールドコア2によって挟圧されたとき、その座ぐり面8bによって生じた空隙Sに向って弾性変形を起すことができる。」(第7頁第8−14行)
(4)「


(5)前記(1)−(4)の内容を総合すると、甲4には、次の技術的事項(以下、「甲4に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ブレーキ釈放時にアーマチュアとフィールドコアとの間における当打音の発生が防止された負作動形電磁ブレーキにおいて、アーマチュア8の凹部8aの開口部に座ぐり面8bを形成させたので、円柱状のゴムからなる弾性部材15は、それがアーマチュア8とフィールドコア2によって挟圧されたとき、その座ぐり面8bによって生じた空隙Sを埋めるように弾性変形を起すこと。」

5 甲5(特開2008−120524号公報)の記載
甲5には、以下の事項が記載されている。
(1)「【0001】
この発明は、エレベータ用巻上機の電磁ブレーキ装置、特に、電磁マグネットと可動鉄心との間に緩衝部材を設けたエレベータ用巻上機の電磁ブレーキ装置に関するものである。」
(2)「【0046】
実施の形態1のゴム5は図1、図2に示すように、上面と底面の面積が異なっており、上面5aの面積よりも底面5bの面積の方が大きい円錐台形状とされている。また、中心には上下方向に貫通孔5dが形成され、上面5aの中心と底面5bの中心は同心となっているため、ゴム5の側面5cは周方向に沿って上面5aから底面5bにかけて軸対称で一様な傾斜のついた円錐形状となっている。
【0047】
また、アーマチュア4に形成されるゴム挿入穴8は図3に示すように、アーマチュア4の端面から穴の底面に向けて一様な径とされた単純なザグリ穴形状とされており、更に、ゴム挿入穴8の径はゴム5の底面5bの径と同寸法とされている。なお、ゴム挿入穴8は固定鉄心1側に形成してもよい。
【0048】
図1、図2に示すゴム5を図3に示すゴム挿入穴8に挿入した状態を図4に示す。ゴム5の底面5bの径とゴム挿入穴8の径が同寸法であるため、挿入時の位置ずれを低減することが出来る。ゴム5の上面が固定鉄心1に当接され、ゴム5が圧縮されていく過程での変形を図5に示す。ゴム5は圧縮される過程において側面5cがゴム5の径方向に膨らむように変形する。変形が進行するに伴い、ゴム5の側面5cはゴム挿入穴8の側面8Cに接触し、側面8Cによって拘束されるため、ゴム5の変形に要する力がそれ以降急激に増加する。その結果、ゴムの反力は線形ではなく非線形を描くようになり図11に示すような線F−Gを得ることが確認出来た。」
(3)「



(4)前記(1)−(3)の内容を総合すると、甲5には、次の技術的事項(以下、「甲5に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「電磁マグネットと可動鉄心との間に緩衝部材を設けたエレベータ用巻上機の電磁ブレーキ装置において、ゴム5は円錐台形状とされ、ゴム挿入穴8はザグリ穴形状とされ、ゴム5は圧縮される過程において、ゴム5の側面5cはゴム挿入穴8の側面8Cに接触し、側面8Cによって拘束されるため、ゴム5の変形に要する力がそれ以降急激に増加すること。」

第5 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)特許法第36条第6項第2号について
本件特許の請求項1の「前記逃がし部は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であり、前記変形部における前記フランジからの突出量は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されている」という記載における「最大の歪エネルギー」について、令和4年6月6日に提出された意見書において、特許権者は、「本件特許の請求項1の『最大の歪エネルギー』とは、乙1の第3頁3)エネルギーの番号16に記載されている『最大吸収エネルギー』であり、その意味は『ショックアブソーバの、機械強度的に許容される抗力で、吸収される1回当たりの最大エネルギー』です。」(5 意見の内容・(3).理由1(明確性)について・二.参照。)と主張している。
ここで、乙第1号証(以下、「乙1」という。)は、社団法人日本油空圧工業会発行の「産業用油圧ショックアブソーバ用語」という刊行物であるところ、本件発明1は、流体圧シリンダであって、油圧ショックアブソーバではないから、本件発明1の「最大の歪エネルギー」が、乙1に記載された「ショックアブソーバの、機械強度的に許容される抗力で、吸収される1回当たりの最大エネルギー」と直ちに同じであるとはいえない。
しかしながら、例えば、乙1に示されるように、機械分野において、「最大の歪エネルギー」といえば、通常、機械強度的に許容される抗力で、吸収される1回当たりの最大エネルギーを意味することであり、そのような事項に基づけば、本件特許の明細書に接した当業者であれば、本件発明1の「最大の歪エネルギー」とは、ピストン又はヘッドカバーに衝撃力が加わった際に、緩衝部材によって、機械強度的に許容される抗力で、吸収される1回当たりの最大エネルギーであると理解することは明らかである。
また、特許権者の主張のとおり理解したとしても、本件特許の明細書の「ピストン15がヘッドカバー12側のストロークエンドに到ると、緩衝部材20の変形部22の端面22eがヘッドカバー12に当接する。これにより、変形部22が押し潰されて係止爪31に向けて膨らむように弾性変形して、緩衝部材20の歪エネルギーが増加することで、ピストン15又はヘッドカバー12に加わる衝撃力が緩衝部材20によって吸収され、ピストン15がヘッドカバー12側のストロークエンドで緩衝的に停止する。」(段落【0028】参照。)との記載から、本件発明1の緩衝部材はショックアブソーバとして機能するといえ、また、本件特許の明細書の「緩衝部材103からヘッドカバー104に作用する抗力が急激に増加する。その結果、ピストン102又はヘッドカバー104に大きな衝撃力が加わってしまい、ピストン102又はヘッドカバー104が破損してしまう虞がある。」(段落【0007】参照。)との記載から、ショックアブソーバとして機能する緩衝部材には、機械強度的に許容される抗力が存在するといえるから、本件特許の明細書の記載とも矛盾しない。
よって、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明3−5は、明確であるから、請求項1、3−5に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合するものである。

(2)特許法第29条第1項第3号について
ア 請求項1について
以下、本件発明1と甲1発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1発明の「シリンダチューブ2」は本件発明1の「シリンダチューブ」に相当し、以下同様に、「右側の開口部を閉塞する」との事項は「一端部に取り付けられる」との事項に、「ヘッドカバー5」は「ヘッドカバー」に、「摺動可能に」との事項は「往復動可能に」との事項に、「ピストン9」は「ピストン」に、「前記ピストン9の右端面に嵌着される」との事項は「前記ピストンにおける前記ヘッドカバーと対向する端面に設けられる」との事項に、「ゴムクッション25」は「弾性材料からなる緩衝部材」に、「右端面」は「端面」に、「緩衝体保持溝24」は「収容凹部」に、「底面G3」は「内周面」に、「シリンダチューブ2の中心軸方向に向かって突出する」との事項は「前記収容凹部の内側に突出する」との事項に、「手前側側壁面G2」は「係止爪」に、「形成されており」との事項は「設けられており」との事項に、「前記緩衝体保持溝24に遊嵌したときでも前記ゴムクッション25が脱落しないようになっている」との事項は「前記係止爪に係止可能な」との事項に、「被保持部27」は「フランジ」に、「前記被保持部27が突設されている」との事項は「前記フランジに連続する」との事項に、「中心軸側」は「内側」に、「圧力作用室10」は「外部」に、「肉厚部分26」は「変形部」に、「備え」との事項は「有し」との事項に、「前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように」との事項は「前記ヘッドカバーに当接して押し潰されて」との事項に、「衝撃」は「衝撃力」に、「緩衝する」との事項は「吸収する」との事項に、「流体圧シリンダ1」は「流体圧シリンダ」に、「外周面25aにおいて前記肉厚部分26と前記被保持部27とをつなぐ箇所であって前記手前側側壁面G2と対向する部分」は「前記変形部における前記係止爪と対向する部位」に、「前記肉厚部分26が押圧力を受けて径方向に向かって移動するように」との事項は「前記変形部が押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように」との事項に、「接触しないようにする」との事項は「接触することを抑制するための」との事項に、「斜面29」は「逃がし部」に、それぞれ相当する。
甲1発明の「前記肉厚部分26における前記被保持部27からの突出量は、前記肉厚部分26が前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形する前記ピストン9のストロークエンド付近では前記ピストン9の右端面と前記ヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されている」との事項と、本件発明1の「前記変形部における前記フランジからの突出量は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されている」との事項とは、「前記変形部における前記フランジからの突出量は、所定の状態まで前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されている」との事項である限りで一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「シリンダチューブと、
前記シリンダチューブの一端部に取り付けられるヘッドカバーと、
前記シリンダチューブ内に往復動可能に収容されるピストンと、
前記ピストンにおける前記ヘッドカバーと対向する端面に設けられる弾性材料からなる緩衝部材と、を備え、
前記ピストンの端面には、収容凹部が形成されており、
前記収容凹部の内周面には、前記収容凹部の内側に突出する係止爪が設けられており、
前記緩衝部材は、前記係止爪に係止可能なフランジと、前記フランジに連続するとともに前記係止爪の内側を介して前記収容凹部から外部に突出する変形部と、を有し、
前記変形部が前記ヘッドカバーに当接して押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形することで、前記ピストン又は前記ヘッドカバーに加わる衝撃力を前記緩衝部材によって吸収する流体圧シリンダであって、
前記変形部における前記係止爪と対向する部位には、前記変形部が押し潰されて前記係止爪に向けて膨らむように弾性変形したときに前記変形部が前記係止爪に接触することを抑制するための逃がし部が設けられ、
前記変形部における前記フランジからの突出量は、所定の状態まで前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されている、
流体圧シリンダ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1は、前記逃がし部は、「前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状」であるのに対し、甲1発明は、前記斜面29は、「最大変形時において前記肉厚部分26と前記手前側側壁面G2とが面接触する形状」である点。

<相違点2>
本件発明1は、前記変形部における前記フランジからの突出量は、「前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても」前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されているのに対し、甲1発明は、前記肉厚部分26における前記被保持部27からの突出量は、「前記肉厚部分26が前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形する前記ピストン9のストロークエンド付近では」前記ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されている点。

前記相違点1について検討する。
上記(1)のとおり、本件発明1の「最大の歪エネルギー」とは、流体圧シリンダの、機械強度的に許容される抗力で、吸収される1回当たりの最大エネルギーであると理解されるから、甲1発明の「最大変形時」が、本件発明1の「前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わった」状態に相当する。
これに対して、甲1発明における斜面29は、最大変形時において肉厚部分26と手前側側壁面G2とが面接触する形状であって、最大変形時になったとしても肉厚部分26と手前側側壁面G2との非接触状態が確保される形状ではないから、本件発明1と甲1発明とは、前記相違点1において、実質的に相違する。

次に、前記相違点2について検討する。
甲1発明は、肉厚部分26がヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形するピストン9のストロークエンド付近ではピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されているといえるが、甲1には、肉厚部分26における被保持部27からの突出量を、最大変形時になったとしてもピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定することについては記載されていないから、本件発明1と甲1発明とは、前記相違点2において、実質的に相違する。

してみれば、本件発明1と甲1発明とは、前記相違点1及び2において実質的に相違するから、本件発明1は甲1発明ではない。

イ 請求項3−5について
本件発明1に従属する本件発明3−5は、本件発明1の「前記逃がし部は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であり、前記変形部における前記フランジからの突出量は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されている」という事項を備えるものであって、甲1発明とは、少なくとも前記相違点1及び2において相違するから、本件発明1に従属する本件発明3−5は甲1発明ではない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件発明2は、本件特許出願前に日本国内において、甲1に記載された発明に基いて、又は、甲1に記載された発明及び甲2−5に記載された技術的事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨を主張している。
本件発明2は、本件発明1における「前記逃がし部は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であり、前記変形部における前記フランジからの突出量は、前記緩衝部材に最大の歪エネルギーが加わったとしても前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとの非接触状態が確保される突出量に設定されていること」という事項に代えて、「前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状であること」という事項を備えること以外は、本件発明1と同一であるところ、本件発明2と甲1発明とをその機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。

<相違点3>
本件発明2は、前記逃がし部は、「前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状」であるのに対し、甲1発明は、前記斜面29は、「最大変形時において前記肉厚部分26と前記手前側側壁面G2とが面接触する形状であり、前記肉厚部分26における前記被保持部27からの突出量は、前記肉厚部分26が前記ヘッドカバー5からの押圧力を受けて径方向に向かって移動するように弾性変形する前記ピストン9のストロークエンド付近では前記ピストン9の右端面と前記ヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されている」点。

以下、前記相違点3について検討する。

(1)甲1発明及び甲1に記載された事項に基づく容易想到性
甲1発明は、「前記ピストン9のストロークエンド付近では前記ピストン9の右端面と前記ヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されている」ため、ゴムクッション25に、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触するような変形が生じることは想定されていない一方で、想定される最大変形時に斜面29は肉厚部分26と手前側側壁面G2とが面接触する形状である。
そうすると、仮にゴムクッション25に、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触するような変形が生じたとしても、最大変形時に面接触状態となった肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とは面接触状態を保ち続けると考えられ、「非接触状態が確保される」ことはない。
そして、甲1には、最大変形時に肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とが面接触しないように変更することを示唆する記載はないから、甲1発明において、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触するような変形が生じたとしても、肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2との非接触状態を確保することは、当業者が適宜なし得る設計変更とはいえない。
してみれば、本件発明2の上記発明特定事項は、甲1発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。

(2)甲1発明及び甲2−5に記載された技術的事項に基づく容易想到性
ア.甲1発明及び甲2に記載された技術的事項に基づく容易想到性
甲2に記載された技術的事項は、緩衝体24と収容部23と間に設けられたクリアランス25を、緩衝体24が弾性変形して衝撃を吸収している途中で、緩衝体24の外面が収容部23の内面に当接可能な寸法に設定するものであって、本件発明2の「前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状である」という発明特定事項を開示するものではない。そのため、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項を適用したとしても、ゴムクッションの小さい歪み量で大きな反力を得るために、ゴムクッション25が弾性変形する途中で、ゴムクッション25の斜面29が手前側側壁面G2と当接可能な寸法に設定することになるにすぎず、本件発明2の上記発明特定事項には至らない。
また、甲1には、低圧でシリンダを駆動したときに、ピストンの推力が有効に作用しなくならないように、ゴムクッションの変形抵抗を小さくするという課題が記載されているところ(段落【0007】、【0008】参照。)、甲2に記載された技術的事項の緩衝体の小さい歪み量で大きな反力を得ることは、ゴムクッションの変形抵抗を小さくするという上記課題と反するものであるから、甲1発明に、甲2に記載された技術的事項を適用することを阻害する事由があり、そもそも、甲1発明に甲2に記載された技術的事項を適用することはできない。

イ.甲1発明及び甲3に記載された技術的事項に基づく容易想到性
甲3に記載された技術的事項におけるゴムダンパ70は、係止爪に係止可能なフランジと、フランジに連続するとともに係止爪の内側を介して収容凹部から外部に突出する変形部とを有したものではなく、本件発明2の「前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状である」という発明特定事項を開示するものではない。そのため、甲1発明に、甲3に記載された技術的事項を適用したとしても、本件発明2の上記発明特定事項には至らない。
また、甲3に記載された技術的事項におけるゴムダンパ70は、上述のとおり、係止爪に係止可能なフランジと、フランジに連続するとともに係止爪の内側を介して収容凹部から外部に突出する変形部とを有したものではないから、構造の異なる甲1発明におけるゴムクッション25に適用する動機はなく、そもそも、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を適用することはできない。

ウ.甲1発明及び甲4に記載された技術的事項に基づく容易想到性
甲4に記載された技術的事項は、円柱状のゴムからなる弾性部材15は、それがアーマチュア8とフィールドコア2によって挟圧されたとき、その座ぐり面8bによって生じた空隙Sを埋めるように弾性変形を起すものであるが、甲4には、空隙Sを埋める弾性変形が最大変形まで進んだとしても、弾性部材15と座ぐり面8bとが接触しないことは記載されておらず、本件発明2の「前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状である」という発明特定事項を開示するものではない。そのため、甲1発明に、甲4に記載された技術的事項を適用したとしても、本件発明2の上記発明特定事項には至らない。
また、甲4に記載された技術的事項は、ブレーキ釈放時にアーマチュアとフィールドコアとの間における当打音の発生が防止された負作動形電磁ブレーキであって、甲1発明における流体圧シリンダと技術分野及び課題が共通しておらず、甲1発明に、甲4に記載された技術的事項を適用する動機はないから、そもそも、甲1発明に甲4に記載された技術的事項を適用することはできない。

エ.甲1発明及び甲5に記載された技術的事項に基づく容易想到性
甲5に記載された技術的事項は、ゴムの変形に要する力がゴム変形途中において急激に増加するように、ゴム5は圧縮される過程において、ゴム5の側面5cはゴム挿入穴8の側面8Cに接触するものであるから、本件発明2の「前記逃がし部は、前記変形部が弾性変形して前記ピストンの端面と前記ヘッドカバーとが接触したとしても、前記変形部と前記係止爪との非接触状態が確保される形状である」という発明特定事項を開示するものではない。そのため、甲1発明に、甲5に記載された技術的事項を適用したとしても、ゴムクッションの変形に要する力がゴム変形途中において急激に増加するように、ゴムクッション25が弾性変形する途中で、ゴムクッション25の斜面29が手前側側壁面G2に接触するものとなるにすぎず、本件発明2の上記発明特定事項には至らない。
また、甲5に記載された技術的事項は、エレベータ用巻上機の電磁ブレーキ装置であって、甲1発明における流体圧シリンダと技術分野が共通しておらず、甲1発明に、甲5に記載された技術的事項を適用する動機はない。また、甲5に記載された技術的事項は、ゴムの変形に要する力がゴム変形途中において急激に増加するようにしたものであって、甲1における、低圧でシリンダを駆動したときに、ピストンの推力が有効に作用しなくならないように、ゴムクッションの変形抵抗を小さくするという課題と反するものであり、甲1発明に、甲5に記載された技術的事項を適用することを阻害する事由があるから、そもそも、甲1発明に甲5に記載された技術的事項を適用することはできない。

(3)小括
本件発明2は、本件特許出願前に日本国内において、甲1発明及び甲1に記載された事項に基いて、又は、甲1発明及び甲2−5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 特許異議申立人の主張について
(1)前記相違点1について
特許異議申立人は、特許異議申立書において甲1に関し、「また、図3において、二点鎖線はゴムクッション25の最大変形時の様子を示すものであるから(段落【0025】)、ゴムクッション25が変形すると、ゴムクッション25の傾斜面29と緩衝体保持溝24のテーパとの隙間が狭くなり、ゴムクッション25の変形が進むと、その肉厚部分26がヘッドカバー5とピストン9の端面との間で圧縮され、ゴムクッション25の最大変形時においても、ゴムクッション25の傾斜面29と緩衝体保持溝24のテーパとの間に隙間が存在することが理解される。なお、段落【0032】には『前記外周面25aにおいて肉厚部分26と被保持部27とをつなぐ箇所は、最大変形時において手前側側壁面G2に面接触しうる斜面29となっている。』との記載があるが、「面接触しうる」との表現ぶりからみて、『面接触しない』形態も想定されるのであって、上記のとおり理解して差し支えないといえる。」(第15頁第5−15行参照。)と主張している。
しかしながら、甲1の段落【0032】及び【0040】には、上記第4・1(4)及び(7)で摘記したとおり、最大変形時に斜面29と手前側側壁面G2とが「面接触する」ことを前提とした記載があることから、最大変形時には、肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とが面接触していると理解するのが自然であるから、上記主張を採用することはできない。

(2)前記相違点2について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「図3において、二点鎖線で示されるゴムクッション25は、ピストンの爪部よりもヘッドカバー5側に突出していることから、ゴムクッション25の最大変形時においても、ピストン9の端面はヘッドカバー5に接触しないことが理解される」(第15頁第16−19行参照。)と主張している。
しかしながら、甲1において、図3に二点鎖線で図示されたゴムクッション25では、斜面29と手前側側壁面G2との間に隙間があるように見えても、特許文献の図面は、発明の技術的思想を説明するための図面であり、一般的に概念図であり、機械設計図面のように寸法や角度等を正確に示すことを目的とする図面ではないこと、及び、段落【0032】及び【0040】に、最大変形時に斜面29と手前側側壁面G2とが「面接触する」ことを前提とした記載があることに鑑みれば、図3に最大変形時の各部材の位置関係が正確に描かれているかは不明というべきであって、甲1のその他の記載及び技術常識を参酌しても、肉厚部分26における被保持部27からの突出量は、最大変形時になったとしてもピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触しない突出量に設定されているかは、明らかでない。

(3)前記相違点3について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証の段落【0025】の記載および図3によれば、ゴムクッション25の最大変形時において、ピストン9の端面はヘッドカバー5に当接しない。ここでいう『ゴムクッション25の最大変形』とは、例えば、流体圧シリンダに製品としての規格荷重の範囲内で最大の荷重が作用したときのゴムクッション25の変形を意味すると考えられる。そうとすると、ゴムクッション25は、『ゴムクッション25の最大変形』を超えてさらに変形することが可能であり、ピストン9の端面がヘッドカバー5に当接するまでゴムクッション25を変形させることも可能な場合があると考えられる。そして、ピストン9の端面がヘッドカバー5に当接するまでゴムクッション25を変形させた場合に、ゴムクッション25の傾斜面29と緩衝体保持溝24のテーパとの非接触状態が維持されるようにすること、すなわち上記相違点は、甲1号証に開示された思想(ゴムクッションの変形抵抗を小さくするという思想)の範囲内で当業者が容易に想到し得たことである。」(第25頁第3−15行参照。)と主張している。
以下、特許異議申立人の当該主張について検討する。
上記(2)のとおり、甲1発明は最大変形時にピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触するか否か明らかでないが、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触すれば、ゴムクッション25をそれ以上弾性変形させることができないのであるから、仮にピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触し得るのであれば、その時は想定される最大変形時又はそれを超える変形時であるといえる。
そして、上記(1)のとおり、最大変形時に肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とは面接触するから、仮にゴムクッション25に、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触するような変形が生じたとしても、最大変形時に面接触状態となった肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とは面接触状態を保ち続けると考えられる。
以上のとおり、甲1には、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触することは明示されていないし、また、仮にこれらが接触し得るとしても、甲1発明は、最大変形時に肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とが面接触するものであるから、ピストン9の右端面とヘッドカバー5とが接触したとしても、肉厚部分26の斜面29と手前側側壁面G2とが接触しないようにすることは、当業者が容易に想到し得たものではなく、上記主張を採用することはできない。

第6 むすび
したがって、請求項1−5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1−5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-07-27 
出願番号 P2018-184178
審決分類 P 1 651・ 113- Y (F15B)
P 1 651・ 121- Y (F15B)
P 1 651・ 537- Y (F15B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小川 恭司
特許庁審判官 熊谷 健治
田合 弘幸
登録日 2021-05-24 
登録番号 6889137
権利者 CKD株式会社
発明の名称 流体圧シリンダ  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
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