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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
管理番号 1387527
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-04 
確定日 2022-07-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6932450号発明「取出機用姿勢制御装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6932450号の請求項1ないし14に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6932450号の請求項1〜14に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2017−192872号、以下、「本件出願」という。)は、平成29年10月2日を出願日とする特許出願であって、令和3年8月20日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和3年9月8日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和4年3月4日に、請求項1〜14に係る特許に対し、特許異議申立人 スター精機(以下、「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた。


第2 本件特許発明
本件特許の請求項1〜14に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」〜「本件特許発明14」という。また、それらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
成形品取出機の進入フレームの先端に設けられ、水平旋回用モータからの駆動力によりアタッチメントを水平方向に旋回させる水平旋回機構と、反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動されて前記アタッチメントを反転させる反転機構とを備えた取出機用姿勢制御装置であって、
前記減速機を含む減速機ユニットが、前記反転機構に対して取り外し可能に装着されていることを特徴とする取出機用姿勢制御装置。
【請求項2】
前記減速機ユニットが外側から工具を用いて取り外し可能な複数のネジまたはボルトにより前記反転機構に固定されている請求項1に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項3】
前記反転用モータの出力軸には出力用プーリが設けられており、前記減速機ユニットの入力軸には入力用プーリが設けられており、前記出力用プーリと前記入力用プーリとの間には力伝達用ベルトが掛けられており、
前記減速機ユニットは、前記減速機の前記入力軸が貫通する貫通孔と前記複数のネジが貫通する複数のネジ貫通孔を備えた取付用プレートと、前記貫通孔から前記入力軸を突出させるように前記取付用プレートの一方の側面に装着された減速機付き回転伝達機と、前記取付用プレートの前記一方の面と対向する他方の面側に位置して前記貫通孔から突出する前記入力軸の先端に取り付けられた前記入力用プーリとから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項4】
前記反転用モータの出力軸には出力用傘歯車が設けられており、前記減速機ユニットの入力軸には入力用傘歯車が設けられており、前記出力用傘歯車と前記入力用傘歯車が噛合して、前記反転用モータからの力が前記減速機ユニットに伝達されるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項5】
前記反転機構は、前記減速機ユニットの回転出力部と嵌合構造を介して連結される被連結部と該被連結部を一端に備えた反転用回転軸と該反転用回転軸を回転可能に支持する支持構造部とを備えており、
前記支持構造部は前記反転用回転軸を支持する軸受を備えた軸受支持部と前記減速機ユニットの前記取付用プレートが取り付けられるユニット支持部とを備えており、
前記減速機ユニットは、前記ユニット支持部に前記複数のネジを用いて取り付けられている請求項3に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項6】
前記水平旋回用モータ及び前記反転用モータが1つのモータ用枠体内に収納固定されており、
前記支持構造部が前記モータ用枠体に取り外し可能に装着されている請求項5に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項7】
成形品取出機の進入フレームの先端に設けられ、垂直旋回用モータからの駆動力によりアタッチメントを垂直方向に旋回させる垂直旋回機構と、反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動されて前記アタッチメントを反転させる反転機構とを備えた取出機用姿勢制御装置であって、
前記垂直旋回機構と前記反転機構が組み合わされて複合機構が構成されており、
前記減速機を含む減速機ユニットが、前記複合機構に対して取り外し可能に装着されていることを特徴とする取出機用姿勢制御装置。
【請求項8】
前記減速機ユニットが外側から工具を用いて取り外し可能な複数のネジまたはボルトにより前記複合機構に固定されている請求項7に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項9】
前記反転用モータの出力軸には出力用プーリが設けられており、前記減速機ユニットの入力軸には入力用プーリが設けられており、前記出力用プーリと前記入力用プーリとの間には力伝達用ベルトが掛けられており、
前記減速機ユニットは、前記減速機の前記入力軸が貫通する貫通孔と前記複数のネジが貫通する複数のネジ貫通孔を備えた取付用プレートと、前記貫通孔から前記入力軸を突出させるように前記取付用プレートの一方の側面に装着された減速機付き回転伝達機と、前記取付用プレートの前記一方の面と対向する他方の面側に位置して前記貫通孔から突出する前記入力軸の先端に取り付けられた前記入力用プーリと、前記減速機の回転出力部に取り付けられた回転プレートとから構成されていることを特徴とする請求項8に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項10】
前記反転用モータの出力軸には出力用傘歯車が設けられており、前記減速機ユニットの入力軸には入力用傘歯車が設けられており、前記出力用傘歯車と前記入力用傘歯車が噛合して、前記反転用モータからの力が前記減速機ユニットに伝達されるように構成されることを特徴とする請求項7に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項11】
前記複合機構は、前記減速機ユニットの回転プレートに複数の取付ネジまたは取付ボルトを用いて連結されるハウジングと、前記ハウジングに固定された反転用回転軸と、前記反転用回転軸の内部に回転可能に配置された旋回用入力軸及び前記ハウジングの内部に主要部が配置されて前記旋回用入力軸と歯車機構を介して連結された垂直旋回機構と、前記反転用回転軸を回転可能に支持する支持構造部とを備えており、
前記支持構造部は前記反転用回転軸を支持する軸受を備えた軸受支持部と前記減速機ユニットの前記取付用プレートが取り付けられるユニット支持部とを備えており、
前記減速機ユニットは、前記ユニット支持部に前記複数のネジを用いて取り付けられている請求項9に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項12】
前記垂直旋回用モータ及び前記反転用モータが1つのモータ用枠体内に収納固定されており、
前記支持構造部が前記モータ用枠体に取り外し可能に装着されている請求項11に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項13】
前記モータ用枠体の上には、前記アタッチメントの振動と逆位相の振動を前記アタッチメントに与える電動アクチュエータが収納されるアクチュエータユニットが配置されていることを特徴とする請求項12に記載の取出機用姿勢制御装置。
【請求項14】
前記モータ用枠体の上に水平旋回用モータからの駆動力により前記アタッチメントを水平方向に旋回させる水平旋回機構を備えた水平旋回ユニットが更に配置されている請求項12に記載の取出機用姿勢制御装置。」


第3 特許異議の申立ての理由の概要
1 特許異議申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特許第5387611号公報
甲第2号証:特許第5310342号公報
甲第3号証:特許第6181476号公報
甲第4号証:特開2017−105190号公報
甲第5号証:特許第2714540号公報
なお、甲第1号証が主引例であり、甲2号証〜甲5号証が副引例である(以下、甲第1号証〜甲第5号証をそれぞれ、甲1〜甲5という。)。

2 特許異議申立人が主張する取消理由は、概略、以下のとおりである。
(1)新規性
本件特許発明1、2、7及び8は、甲1に記載された発明である。
したがって、本件出願の請求項1、2、7及び8に係る特許は、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである。

(2)進歩性
ア 本件特許発明1、2、4、7、8及び10は、甲1に記載された発明に基づいて、本件出願前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が、容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件出願の請求項1、2、4、7、8及び10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

イ 本件特許発明3、5、9及び11は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件出願の請求項3、5、9及び11に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

ウ 本件特許発明6及び12は、甲1に記載された発明、甲2及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件出願の請求項6及び12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

エ 本件特許発明13は、甲1に記載された発明及び甲2〜甲4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件出願の請求項13に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

オ 本件特許発明14は、甲1に記載された発明及び甲2〜甲5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件出願の請求項14に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。


第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
1 甲1の記載及び甲1に記載された発明
(1)甲1の記載
甲1(特許第5387611号公報)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当合議体において付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す(以下の下線部について同様である)。
ア 「【0013】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態によるロボット1の構成について説明する。
【0014】
第1実施形態によるロボット1は、図1に示すように、6軸(S軸、L軸、U軸、R軸、B軸およびT軸)の垂直多関節型ロボットである。ロボット1は、旋回ベース11と、アーム支持部12と、下腕部13と、上腕部14と、手首関節部15と、手先部16と、ハンド17とを備えている。なお、ハンド17は、本発明の「エンドエフェクタ」の一例である。
【0015】
旋回ベース11は、下面が設置面(床面、壁面、天井面、走行台車の設置面など)に固定され、上面側でアーム支持部12を水平面内で回動可能に支持している。旋回ベース11とアーム支持部12とは、減速機18aを介して連結され、図示しないサーボモータによってアーム支持部12を旋回ベース11に対して水平面内で相対的に回動(旋回)させるように構成されている。このように、旋回ベース11とアーム支持部12とをS軸(旋回軸)回りに相対的に回動させるS軸の関節部が構成されている。
【0016】
アーム支持部12は、旋回ベース11上に設置され、下腕部13および上腕部14を含むロボット1のアーム全体を支持するように構成されている。アーム支持部12は、上方に延びるように設けられた下腕取付部121で減速機18bを介して下腕部13を回動可能に支持している。また、下腕取付部121と下腕部13とは、水平方向に対向するようにして水平方向に延びる回動軸(L軸)回りに相対回動可能に連結されている。そして、下腕部13は、減速機18bに接続された図示しないサーボモータによって、下腕取付部121(アーム支持部12)に対して垂直面内で前傾または後傾するように旋回駆動されるように構成されている。このように、アーム支持部12と下腕部13とをL軸(下腕軸)回りに相対的に回動させるL軸の関節部が構成されている。
【0017】
下腕部13は、下端部でアーム支持部12によって前後方向に旋回可能に支持されている一方、上端部で上腕部14を旋回可能に支持するように構成されている。下腕部13は、上端部で上腕部14の第1上腕部141と水平方向に対向するようにして、減速機18cを介して連結されている。そして、上腕部14は、減速機18cに接続された図示しないサーボモータによって、下腕部13に対して垂直面内で上下方向に旋回駆動されるように構成されている。このように、下腕部13と上腕部14とをU軸(上腕軸)回りに相対的に回動させるU軸の関節部が構成されている。
【0018】
また、上腕部14は、一端(根本部)側の第1上腕部141で下腕部13によって上下方向に旋回可能に支持されている一方、他端(先端部)側の第2上腕部142で手首関節部15を支持するように構成されている。第1上腕部141は、減速機18dを介して第2上腕部142に連結されており、第2上腕部142を連結軸(R軸)回りに回動可能に支持するように構成されている。そして、第2上腕部142は、減速機18dに接続された図示しないサーボモータによって回動駆動されるように構成されている。このように、第1上腕部141と第2上腕部142とをR軸(第2上腕回動軸)回りに相対的に回動させるR軸の関節部が構成されている。なお、第2上腕部142は、本発明の「アーム部」の一例である。
【0019】
手首関節部15は、上腕部14(第2上腕部142)の先端に設けられている。手首関節部15には、手先部16が設けられている。また、手首関節部15は、手先部16に取り付けられたハンド17を第2上腕部142に対してB軸(手首曲げ軸)回りに回動させることが可能に構成されている。また、手首関節部15は、ハンド17を第2上腕部142に対して、B軸に直交するT軸(手先回動軸)回りに回動させることが可能に構成されている。手首関節部15の詳細な構成については後述する。なお、手首関節部15は、本発明の「関節部」の一例であり、B軸は、本発明の「第1軸」の一例である。
【0020】
ロボット1は、ロボット指令ケーブル10を介してロボット制御装置2に接続されている。ロボット制御装置2は、ロボット1の各関節部を駆動する複数のサーボモータを制御することによってロボット1に所定の動作をさせるように構成されている。
【0021】
次に、図2〜図6を参照して、手首関節部15の構成について詳細に説明する。
【0022】
図2〜図4に示すように、第2上腕部142の内部には、手先部16に取り付けられたハンド17をB軸回りに回動させるB軸モータ21と、ハンド17をT軸回りに回動させるT軸モータ22とが設けられている。さらに、第2上腕部142の内部には、ハンド17をグリップ動作(把持動作)させるためのθ軸モータ23が設けられている。B軸モータ21、T軸モータ22およびθ軸モータ23は、第2上腕部142内において手首関節部15よりも後方側(Y2方向側)に配置されている。また、B軸モータ21、T軸モータ22およびθ軸モータ23は、サーボモータからなり、ロボット制御装置2により駆動が制御されるように構成されている。
【0023】
(B軸回動機構部)
B軸モータ21の出力軸211には、図2に示すように、プーリ212が取り付けられている。また、図2および図4に示すように、プーリ212とB軸を回動軸として回動するプーリ213とには、環状に形成された伝動ベルト214が巻回されている。プーリ213は、図2および図5に示すように、ネジ部材213aにより減速機215の図示しない入力軸に連結されている。また、減速機215の図示しない出力軸は、ネジ部材215aによりB軸回動部216に連結されている。これにより、B軸モータ21による駆動力が減速機215により減速された状態でB軸回動部216に伝達される。また、B軸回動部216のB軸が延びる方向の両端部には、それぞれ、円環状のベアリング217aおよび217bが設けられている。B軸回動部216は、ベアリング217aおよび217bにより、第2上腕部142に対してB軸回りに(B軸を回動軸として)回動可能に支持されている。このような構成により、B軸回動部216は、B軸モータ21による駆動力により第2上腕部142に対してB軸回りに(B軸を回動軸として)回動される。B軸回動機構部は、上記のように、減速機215およびB軸回動部216により主として構成されている。なお、B軸回動機構部は、本発明の「第3回動機構部」の一例である。
【0024】
(T軸回動機構部)
T軸モータ22の出力軸221には、図2に示すように、プーリ222が取り付けられている。また、図2および図3に示すように、プーリ222とB軸を回動軸として回動するプーリ223とには、環状に形成された伝動ベルト224が巻回されている。プーリ223は、図2および図5に示すように、ネジ部材223aによりT軸駆動ギア部225に連結されている。T軸駆動ギア部225は、後述のθ軸駆動ギア部235の外側でB軸に沿って配置されており、円環状のベアリング226aおよび226bにより、第2上腕部142に対してB軸回りに(B軸を回動軸として)回動可能に支持されている。このような構成により、T軸駆動ギア部225は、T軸モータ22による駆動力により第2上腕部142に対してB軸回りに(B軸を回動軸として)回動される。なお、T軸駆動ギア部225は、本発明の「第1駆動ギア部」の一例である。
【0025】
ここで、第1実施形態では、T軸駆動ギア部225の先端部には、略円錐形状の歯部225aが形成されている。歯部225aは、手先部16のハンド17が取り付けられる側とは反対側(図2のY2方向側)の端部に形成された略円錐形状の歯部16aに噛合(係合)するように構成されている。具体的には、T軸駆動ギア部225の歯部225aは、手先部16の歯部16aよりも小径のピニオンギアであり、手先部16の歯部16aは、曲がり歯かさ歯車のハイポイドギア(登録商標)である。また、図6に示すように、T軸駆動ギア部225の歯部225aは、螺旋状の歯形を有しているとともに、手先部16の歯部16aは、曲線状の歯形を有している。これにより、歯部225aおよび歯部16aは、互いの間に歯スジ方向(歯が延びる方向)の滑りが生じて滑らかに噛合される。また、T軸駆動ギア部225の歯部225aは、所定の減速比(たとえば、1/3の減速比)が得られるように、手先部16の歯部16aの歯数よりも少ない歯数になるように構成されている。なお、手先部16は、本発明の「第1従動ギア部」の一例である。
・・・中略・・・
【0032】
上記の構成により、B軸モータ21が駆動されると、B軸回動部216がB軸回りに回動され、それに伴って手先部16およびθ軸従動ギア部237が共にB軸回りに回動される。すなわち、B軸回動部216がB軸回りに回動されるのに伴って、T軸およびθ軸が共にB軸回りに回動される。このようにして、手先部16に取り付けられたハンド17は、B軸モータ21による駆動力によりB軸回りに回動される。また、T軸モータ22が駆動されると、T軸駆動ギア部225がB軸回りに回動され、それに伴って手先部16がT軸回りに回動される。このようにして、手先部16に取り付けられたハンド17は、T軸モータ22による駆動力によりT軸回りに回動される。また、θ軸モータ23が駆動されると、θ軸駆動ギア部235がB軸回りに回動され、それに伴ってθ軸従動ギア部237がθ軸回りに回動される。このようにして、θ軸モータ23による駆動力が、接続部237bを介してハンド17に伝達される。なお、B軸回動機構部、T軸回動機構部およびθ軸回動機構部は、互いに独立して動作することが可能である。」

イ 「【図1】


【図2】



(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載から、甲1には、以下の「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されていると認める。
「設置面に固定された旋回ベース11と、当該旋回ベース11によってS軸(旋回軸)回りに回動可能に支持されたアーム支持部12と、当該アーム支持部12によってL軸(下腕軸)回りに旋回可能に支持された下腕部13と、当該下腕部13によってU軸(上腕軸)回りに旋回可能に支持された第1上腕部141と、当該上腕部141にR軸(連結軸)回りに回動可能に支持された第2上腕部142と、前記第2上腕部142の先端に設けられるとともに手先部16が設けられ、当該手先部16に取り付けられたハンド17を前記第2上腕部142に対してB軸(手首曲げ軸)回り及びB軸に直交するT軸(手先回動軸)回りに回動させることが可能に構成された手首関節部15と、当該手首関節部15に設けられた手先部16と、当該手先部16に取り付けられ、グリップ動作(把持動作)することが可能なハンド17とを備える垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部であって、
前記R軸回動機構部は、サーボモータを有し、前記第2上腕部が、前記サーボモータによってR軸(連結軸)回りに回動駆動されるよう構成され、
前記B軸回動機構部は、B軸モータ21と、当該B軸モータ21の出力軸211に取り付けられたプーリ212と、ネジ部材213aにより減速機215の入力軸に連結されたプーリ213と、前記プーリ212と前記プーリ213に巻回された伝動ベルト214と、出力軸がネジ部材215aによりB軸回動部215に連結された減速機215と、ベアリング217aおよび217bにより第2上腕部142に対してB軸周りに回動可能に支持されたB軸回動部216とを有し、前記B軸回動部216が、前記B軸モータ21による駆動力により前記第2上腕部142に対してB軸回りに回動され、それに伴って手先部16がB軸周りに回動されるよう構成された、
垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部。」

また、上記(1)の記載から、甲1には、以下の「垂直多関節型ロボットのB軸及びT軸回動機構部」の発明(以下「甲1発明2」という。)が記載されていると認める。
「設置面に固定された旋回ベース11と、当該旋回ベース11によってS軸(旋回軸)回りに回動可能に支持されたアーム支持部12と、当該アーム支持部12によってL軸(下腕軸)回りに旋回可能に支持された下腕部13と、当該下腕部13によってU軸(上腕軸)回りに旋回可能に支持された第1上腕部141と、当該上腕部141にR軸(連結軸)回りに回動可能に支持された第2上腕部142と、前記第2上腕部142の先端に設けられるとともに手先部16が設けられ,当該手先部16に取り付けられたハンド17を前記第2上腕部142に対してB軸(手首曲げ軸)回り及びB軸に直交するT軸(手先回動軸)回りに回動させることが可能に構成された手首関節部15と,当該手首関節部15に設けられた手先部16と、当該手先部16に取り付けられ、グリップ動作(把持動作)することが可能なハンド17とを備える垂直多関節型ロボットのB軸及びT軸回動機構部であって、
前記B軸回動機構は、B軸モータ21と、当該B軸モータ21の出力軸211に取り付けられたプーリ212と、ネジ部材213aにより減速機215の入力軸に連結されたプーリ213と、前記プーリ212と前記プーリ213に巻回された伝動ベルト214と、出力軸がネジ部材215aによりB軸回動部215に連結された減速機215と、ベアリング217aおよび217bにより第2上腕部142に対してB軸周りに回動可能に支持されたB軸回動部216とを有し、前記B軸回動部216が,前記B軸モータ21による駆動力により前記第2上腕部142に対してB軸回りに回動され、それに伴って手先部16がB軸周りに回動されるよう構成されており、
前記T軸回動機構部は、T軸モータ22の出力軸221には、プーリ222が取り付けられており、プーリ222とB軸を回動軸として回動するプーリ223とには、環状に形成された伝動ベルト224が巻回されており、プーリ223は、ネジ部材223aによりT軸駆動ギア部225に連結されており、T軸モータ22が駆動されると、T軸駆動ギア部225がB軸回りに回動され、それに伴って手先部16がT軸回りに回動され、手先部16に取り付けられたハンド17は、T軸モータ22による駆動力によりT軸回りに回動されるように構成された、
垂直多関節型ロボットのB軸及びT軸回動機構部。」

2 甲2の記載
甲2(特許第5310342号公報)には、次の事項が記載されている。
(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの手首装置に係り、特に、減速装置のケーシングの異常な内圧上昇を防止したロボットの手首装置に関する。
・・・中略・・・
【0010】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1は、複数の腕を順次回転可能に連結してなるロボット本体の先端部分を示すもので、この図1において、腕1は、他の腕(図示せず)との協働により前後左右上下のあらゆる方向へ移動可能になっていると共に、捻り回転可能にもなっている。
腕1の主体であるフレーム2は複数分割型のもので、このフレーム2の先端部内側に手首回転部3が軸線Wを中心に回転可能に支持され、更に、この手首回転部3の先端部にフランジ4が回転中心軸線Fを中心に回転可能に支持されている。上記フランジ4はエンドエフェクタ取付部材であり、ハンドなどのエンドエフェクタが取り付けられる。
【0011】
上記手首回転部3とフランジ4の支持構造および回転駆動構成について説明するに、まず、手首回転部3は、内部を中空にしたハウジング5を主体とするもので、ハウジング5の中空内部にフランジ4を回転駆動するためのモータ6が配設されている。手首回転部3の回転中心軸線Wとフランジ4の回転中心軸線Fとは互いに直交しており、ハウジング5の互いに90度異なる2面、つまり回転中心軸線Fと直交する先端面5aと、回転中心軸線Wと直交する側面5bとに、フランジ4の回転中心軸線F上に位置する第1減速装置7と、フランジ4の回転中心軸線Fからフランジ4の径方向に離れて位置する第2減速装置8とが配設されている。ここで、上記の第1減速装置7がフランジ4の回転中心軸線F上に位置するとは、必ずしもフランジ4の回転中心軸線Fと同心という意味ではなく、フランジ4とモータ6との間に位置するという意味である。
・・・中略・・・
【0019】
第2減速装置8の第2ケーシング10は、ほぼ円形の皿状をなす内ケーシング要素35に環状の補助内ケーシング要素36をボルト(結合手段)37により結合して構成した内ケーシング38と、外ケーシング要素39に第2剛性内歯歯車20をボルト(結合手段)40により結合して構成された外ケーシング41とからなり、内ケーシング38の外側に外ケーシング41がクロスローラベアリング42を介して回転可能に嵌合支持されている。
・・・中略・・・
【0021】
手首回転部3のハウジング5の側面5bには、第2ケーシング10の位置決め用の短筒状のケーシング受け(嵌合部)47が一体に形成されている。また、ハウジング5の側面5bには、ケーシング受け47と中心に位置して軸部48が一体に突設されている。本実施形態では、軸部48の中心軸線は前記手首回転部3の回転中心軸線Wと一致している。この軸部48には、第2減速機構12の入力部としての入力軸49がボールベアリング50を介して回転可能に支持されている。
【0022】
第2ケーシング10は、外ケーシング要素39および第2剛性内歯歯車20をケーシング受け47内に嵌合するようにしてハウジング5の側面5bに配置され、ボルト51によってハウジング5に固定されている。このハウジング5の側面5bと第2剛性内歯歯車20との間は、第2剛性内歯歯車20のOリング溝45内に嵌め込まれたOリング52によって密封されている。
【0023】
第2ケーシング10をハウジング5に固定した状態において、入力軸49の先端部分は内ケーシング要素35から外方に突出されている。この入力軸49と内ケーシング要素35との間は、オイルシール(シール部材)53によって密封されている。また、内ケーシング要素35には、軸受ケース部54aを有した蓋体54がねじ55によって固定されている。このねじ55が螺合されるねじ孔(貫通孔)56は、内ケーシング要素35を貫通して形成されていて第2ケーシング10の内部を外部に開放した状態となっている。ねじ孔56にねじ55が螺着されると、ねじ孔56はねじ55によって密封された状態となる。
・・・中略・・・
【0025】
蓋体54の軸受ケース部54aには、ボールベアリング58が装着されており、このボールベアリング58によって入力軸49の上端部が回転可能に支持されている。また、ボールベアリング58には、プーリ59が回転可能に支持されており、このプーリ59は入力軸49にボルト60によって連結されている。
【0026】
第2ケーシング10の内ケーシング要素35は、ボルト61によって腕1のフレーム2に固定されている。これにより、手首回転部3は、内ケーシング38に、ボールベアリング58、入力軸49およびボールベアリング50を介して回転中心軸線Wを中心に回転可能に片持ち支持された状態となる。【0027】
図示はしないが、手首回転部3を駆動するモータは腕1内に配設されており、このモータはプーリ59とベルト62によって連結されている。従って、手首回転部3の駆動用モータが起動すると、その回転は、ベルト62によりプーリ59に伝えられ、プーリ59と入力軸49が一体的に回転する。
・・・中略・・・
【0029】
この第2減速機構12では、腕1内の図示しないモータが起動すると、その回転がベルト62を介して入力軸49に伝えられ、周知のように、その入力軸49の回転が第2可撓性外歯歯車18の外歯と第2剛性内歯歯車20の内歯との噛み合いによって減速されて当該第2剛性内歯歯車20が回転する。第2剛性内歯歯車20は、ハウジング5に固定されているため、第2剛性内歯歯車20が回転することにより、手首回転部3が回転中心軸線Wを中心に回転する。この第2減速機構12の潤滑のために、第2ケーシング10内、即ち第2密閉空間57内には所定量の潤滑油(潤滑剤)が貯溜されている。」

(2) 「【図1】



3 甲3の記載
甲3(特許第6181476号公報)には、次の事項が記載されている。
(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用のアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットの関節軸の駆動を行う駆動モータは、アーム外に設けられている場合と、アーム内に設けられている場合とがある。
・・・中略・・・
【0009】
外配式のアッパアーム14では、図15に示すように、モータM2,M3が、アッパアーム14の骨格となる剛性部材100(すなわちフレーム)に対して、筐体102,116に内装された状態で固定されている。図15に示すように、モータM2は剛性部材100の長手方向の略中央部に配置されている。モータM3は剛性部材100の中央部よりも基端寄りの部位に配置されている。
・・・中略・・・
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態のロボット用モータ及びロボットを図1〜図4を参照して説明する。
【0029】
本実施形態のロボットは、第1の従来例の構成を一部変更した多関節型アーク溶接ロボットである。
具体的には第1の従来例で説明したロボットの構成中、トーチ支持台16のモータ搭載部21、モータM1、ケース22を省略する代わりに、トーチ支持腕17及びトーチ支持台16の構成が異なるだけである。このため、第1の従来例と同一または相当する部材については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0030】
図1に示すように、トーチ支持腕17は、アッパアーム14に対して揺動軸18の周りで傾動または揺動可能に支持された第1腕体17Aと第1腕体17Aの下部に連結された第2腕体17Bとを備えている。前記第1腕体17A及び第2腕体17Bはアルミ製の剛性部材51からなる。なお、剛性部材51の材質は、アルミ製に限定するものではなく、鉄製等の剛性及び伝熱性が優れたものであればよい。第1腕体17A及び第2腕体17Bにおいて、トーチ支持台16のトーチ支持部26が設けられた方向と同一方向を向く側面には、カバー27が固定されている。
・・・中略・・・
【0047】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を、図5(a)、(b)及び図6(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態は、第2の従来例の構成を一部変更した多関節型アーク溶接ロボットである。
【0048】
具体的には第2の従来例で説明したロボットの構成中、モータM2,M3、及び筐体102、116を省略する代わりに、モータ140、240がそれぞれアッパアーム14の剛性部材100に直接ビルトインされているところが異なっているだけである。このため、第2の従来例と同一または相当する部材については、同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
・・・中略・・・
【0058】
・・・中略・・・
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図7〜図9を参照して説明する。
【0059】
第3実施形態は、第2実施形態の構成を一部変形したものであるため、第2実施形態の構成と異なる構成を中心に説明し、第2実施形態と同一構成及び相当する構成については同一符号を付す。
【0060】
本実施形態の剛性部材100は、第2実施形態の剛性部材100を図7及び図8に示すように長手方向において3分割したものを相互に連結したものであり、先端部材100A,中間部材100B、及び基端部材100Cから構成されている。中間部材100Bには、モータ140及びモータ240が組み込まれている。モータ140及びモータ240の剛性部材100(すなわち、中間部材100B)に対する組み込みの仕方は、第2実施形態と同様であるため、説明を省略する。中間部材100Bは、ロボット用モータに相当する。
・・・中略・・・
【0067】
そして、図7に示すように、中間部材100Bと基端部材100Cは、各ボルト挿通孔117a等に挿通したボルト133が連結段部119,121に設けられた雌ネジ孔119a,121aに螺着されることにより、相互に連結されている。」

(2) 「【図7】


【図8】



4 甲4の記載
甲4(特開2017−105190号公報)には、次の事項が記載されている。
(1) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、進入フレームに装着されるアタッチメントの変位振動を短い時間で抑制することができる成形品取出機に関するものである。
・・・中略・・・
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータを用いる位置決めサーボ機構によって制御される1以上の進入フレームのそれぞれにアタッチメントを備え、アタッチメントの変位振動と逆位相の振動を、1以上のアクチュエータからアタッチメントに加えてアタッチメントの変位振動を抑制するアクティブ制御を行うアクティブ振動抑制装置を備えた成形品取出機を対象とする。本願明細書において、アタッチメントとは、進入フレームに取り付けられる各種の付属部品であって、取出ヘッド、取出ヘッドが装着される反転部等を含む姿勢制御装置や、チャック装置、カッタ装置等が含まれる。本発明では、1以上のアクチュエータは、1以上の電磁アクチュエータからなる。そして1以上のアクチュエータは、成形機の型と衝突しないように1以上の進入フレームのそれぞれのアタッチメントまたは1以上の進入フレームのそれぞれに1以上の電磁アクチュエータを装着する。電磁アクチュエータは、動吸振装置と比べて、振動の大きさを任意に設定できる。したがって高い汎用性を持ってアクティブ制御を成形品取出機に適用することができる。」


5 甲5の記載
甲5(特許第2714540号公報)には、次の事項が記載されている。
(1) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業用ロボットのアームの先端に例えば回動自在に取り付けられる手首機構であって、この回動を含めて3自由度を有するものに関する。
【0002】
【従来の技術】この種の手首機構の従来例としては、図5の模式図に示されるものが知られている(特開昭60−197387号公報又は特開平3−208584号公報参照)。手首機構100は工業用ロボットのアーム102に対してモータ103及び減速手段104を介して矢印aのように回動自在に連結されている。この手首機構は、アーム102に対して回動自在な回動アーム105と、回動アーム105に対して揺動自在に連結されたケーシング106と、ケーシング106に対して回動自在に連結され、図示されない工具が取り付けられるフランジ107とを有している。【0003】ケーシング106の揺動軸108には減速手段109とプーリ110とが連結され、回動アーム105内に取り付けられた回動用モータ111のプーリ112と前記プーリ110との間にベルト113が掛けられている。そして、回動用モータ111の駆動力はプーリ112→ベルト113→プーリ110→減速手段109を経て回動軸108に伝達され、ケーシング106は矢印bのように揺動自在である。」

(2) 「【図5】




第5 当合議体の判断
1 本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明1とを対比する。
ア 反転用モータ及び反転機構
甲1発明1の「B軸回りに回動」は、本件特許発明1の「反転」に相当し、甲1発明1の「B軸モータ」は、本件特許発明1の「反転用モータ」に相当する。
さらに、甲1発明1の「B軸回動部」は、「B軸モータによる駆動力」が「減速機」を介して伝達され、「手先部に取り付けられたハンドを」「B軸(手首曲げ軸)回りに回動させる」ものであるから、その構成からみて、本件特許発明1の「反転機構」に相当し、「反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動され」るという要件を満たす。

イ 減速機及び減速機ユニット
甲1発明1の「減速機」は、その文言が示すとおり、本件特許発明1の「減速機」に相当する。また、甲1発明1の「減速機」を含む出力軸等からなる部材は、本件特許発明1の「減速機ユニット」に相当する。

ウ 減速機の取り外し
甲1発明1の「減速機」の「出力軸」は、「ネジ部材によりB軸回動部に連結され」ているものであるから、当該「減速機」は「ネジ部材」によって、「B軸回動部」に対して取り外しが可能に装着されていると理解できる。
そうすると、甲1発明1の「減速機」は、本件特許発明1の「反転機構に対して取り外し可能に装着されている」という要件を満たす。

エ 装置
甲1発明1の「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」は、「B軸回動部」を備えた装置である。
そうすると、甲1発明1の「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」は、本件特許発明1の「装置」に相当し、「反転機構を備えた」という要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明1と甲1発明1とは、以下の点で一致する。
「反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動される反転機構を備えた装置であって、
前記減速機を含む減速ユニットが、前記反転機構に対して取り外し可能に装着されている装置。」

イ 相違点
本件特許発明1と甲1発明1とは、以下の点で相違する。
相違点1
本件特許発明1が「成形品取出機」の「取出機用姿勢制御装置」であるのに対して、甲1発明1は「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」である点。

相違点2
本件特許発明1の「取出機用姿勢制御装置」が設けられるのが「成形品取出機」の「進入フレーム」の先端であるのに対して、甲1発明1の「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」が設けられるのは「垂直多関節型ロボット」である点。

相違点3
本件特許発明1の「取出機用姿勢制御装置」が旋回させるのは「アタッチメント」であるのに対し、甲1発明1の「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」が旋回させるのは「ハンド」である点。

相違点4
本件特許発明1の「取出機用姿勢制御装置」が、「水平旋回用モータからの駆動力によりアタッチメントを水平方向に旋回させる水平旋回機構」を備えるのに対して、甲1発明1は「サーボモータ」によって、「第2上腕部」を「サーボモータによってR軸(連結軸)回りに回動駆動」するよう構成されており、「R軸(連結軸)回り」の回動は、「第2上腕部」を回動させるものである点及びその回動が「水平旋回」であるとも特定されていない点。

(3)判断
相違点1について検討する。
本件特許は、成形品取出機の進入フレームの先端にアタッチメントを姿勢変更可能に装着する取出機用姿勢制御装置に関するものであって、「成形品取出機の進入フレームの先端に設けられ、水平旋回用モータからの駆動力によりアタッチメントを水平方向に旋回させる水平旋回機構と、反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動されて前記アタッチメントを反転させる反転機構とを備えた」従来の取出機用姿勢制御装置においては、当該装置が備える反転機構を回転させる減速機をメンテナンスする際に、取出機用姿勢制御装置を全て分解する必要があり、手間がかかっていたところ、メンテナンス性を向上させるべく、「減速機を含む減速機ユニット」を、「反転機構に対して取り外し可能に装着」させた点に、技術的意義を有するものである。
これに対して、甲1発明1は、そもそも、「垂直多関節型ロボットのR軸及びB軸回動機構部」に係る発明であって、甲1の【0006】に示されるように、駆動機構、及び、関節部を小型化することを、解決しようとするものであるから、本件特許と甲1発明1は、前提となる技術も、解決しようとする課題も異にするものである。
そして、甲1には、確かに、「ロボット」の構成及び用途について、「本発明のエンドエフェクタの一例として、グリップ動作(把持動作)を行うハンドを示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、溶接トーチや研磨具など、ハンド以外のエンドエフェクタであってもよい。」(【0066】)、「本発明の駆動機構をロボットに適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明の駆動機構は、たとえば、工作機械や基板の検査装置など、ロボット以外にも適用可能である。」(【0067】)、「本発明では、単軸で動作する関節部であってもよいし、3軸以上の複数軸で動作する関節部であってもよい。」(【0068】)、「本発明では、第1従動ギア部を第2従動ギア部の内側(第2従動ギア部を第1従動ギア部の外側)に配置してもよい。」(【0069】)と記載されるものの、「成形品取出機」としての用途に適用する点については示唆すらない。
加えて、甲1発明1が、「減速機」の「出力軸」が、「ネジ部材」を介して「B軸回動部」に連結されている構成を備えるからといって、甲1発明1には、メンテナンス性を向上させようとする課題が認識されていないのであるから、当該構成を、交換頻度の高い減速機を簡単に交換することが求められる「成形品取出機」の用途に適用することは、当業者にとり動機付けられるものではない。
以上の点は、甲2〜甲5に記載の技術的事項を参照しても同様であるから、上記相違点1に係る構成は、甲1発明1及び甲2〜甲5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たということはできない。
また、本件特許は、成形品取出機において、メンテナンスする減速機を独立して取り外し可能とすることにより、メンテナンス性が向上するという従来技術にない格別な効果を奏するものである。
したがって、上記相違点2〜4については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明1ではなく、また、甲1発明1及び甲2〜甲5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書(24頁〜25頁)の「(4)ウ.(ア)」において、甲1に記載された発明は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて備えており、本件特許発明1は甲1に記載された発明である旨主張する。また、本件特許発明1は甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかしながら、上記(1)〜(3)のとおり、両者は、前提技術も解決しようとする課題も異にする発明であるから、上記主張は採用の限りではない。

2 本件特許発明2〜6について
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2〜6についても、上記(1)〜(3)と同様である。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明1ではない。
また、本件特許発明2〜6は、甲1発明1及び甲2〜甲5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、特許異議申立人の主張「(4)ウ.(イ)〜(カ)」についても、上記1(4)と同様に採用の限りではない。

3 本件特許発明7について
(1)対比
本件特許発明7と甲1発明2の対比については、上記1(1)ア〜エと同様である。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本件特許発明7と甲1発明2とは、以下の点で一致する。
「反転用モータの出力を減速する減速機を介して駆動される反転機構を備えた装置であって、
前記減速機を含む減速ユニットが、前記反転機構に対して取り外し可能に装着されている装置。」

イ 相違点
本件特許発明7と甲1発明2とは、上記1(2)の相違点1〜相違点3と同様の相違点に加えて、以下の点で相違する。
相違点5
本件特許発明1の「取出機用姿勢制御装置」が、「垂直線回用モータからの駆動力によりアタッチメントを垂直方向に旋回させる垂直旋回機構」を備えるのに対し、甲1発明2の「垂直多関節型ロボットのB軸及びT軸回動機構部」は、「ハンドをT軸回りに回動させるT軸モータを備えたT軸回動機構部」を備えており、「T軸回り」の回動が「垂直旋回」と特定されていない点。
また、この点に伴い、甲1発明2の「T軸回動機構部」が「垂直旋回機構」と特定できず、本件特許発明1の「垂直旋回機構と反転機構が組み合わされて複合機構が構成」されているのに対し、甲1発明2にはそのような「複合機構」が特定されない点。

(3)判断
相違点1に係る判断については、上記1(3)と同様である。
したがって、上記相違点2、3及び5について検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲1発明2ではなく、また、甲1発明2及び甲2〜甲5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書(28頁〜29頁)の「(4)ウ.(キ)」において、甲1に記載された発明は、本件特許発明7の発明特定事項をすべて備えており、本件特許発明7は甲1に記載された発明である旨主張する。また、本件特許発明7は甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかしながら、上記(1)〜(3)のとおりであるから、上記主張は採用の限りではない。

4 本件特許発明8〜14について
請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8〜14についても、上記(1)〜(3)と同様である。
したがって、本件特許発明8は、甲1発明2ではない。
また、本件特許発明8〜14は、甲1発明2及び甲2〜甲5の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
さらに、特許異議申立人の主張「(4)ウ.(ク)〜(セ)」についても、上記3(4)と同様に採用の限りではない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件出願の請求項1〜14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件出願の請求項1〜14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-07-05 
出願番号 P2017-192872
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B29C)
P 1 651・ 113- Y (B29C)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 松波 由美子
特許庁審判官 小濱 健太
清水 康司
登録日 2021-08-20 
登録番号 6932450
権利者 株式会社ユーシン精機
発明の名称 取出機用姿勢制御装置  
代理人 塩谷 尚人  
代理人 山田 強  
代理人 西浦 ▲嗣▼晴  

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