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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F16J
管理番号 1387529
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-22 
確定日 2022-07-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6940155号発明「ダイヤフラム部材を用いるダイヤフラム弁」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6940155号の請求項1、2、4ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6940155号の請求項1〜6に係る特許についての出願は、平成30年8月10日に出願され、令和3年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和3年9月22日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年3月22日に特許異議申立人水野幸彦(以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項1、2及び4〜6に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
特許第6940155号の請求項1〜6に係る発明は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(なお、請求項1に係る発明における、「・・・連動して。前記ダイヤフラム・・・」は、「・・・連動して、前記ダイヤフラム・・・」の誤記であると認められるから、請求項1に係る発明を次のとおり認定した。)。

「 【請求項1】
開弁したとき高純度薬液や超純水の液体を流入側から流出側へ流動させ、また、閉弁したときに前記液体の前記流動を遮断するダイヤフラム弁において、
筒状周壁及び当該筒状周壁にその軸方向両端開口部を閉塞するように互いに対向して形成してなる両対向壁を有するハウジングと、
前記筒状周壁の軸方向中間部位に設けられて前記筒状周壁の中空部を前記両対向壁の一方の対向壁と他方の対向壁との間にて区画する隔壁と、
前記筒状周壁の前記中空部内にて前記一方の対向壁と前記隔壁との間に組み付けられる駆動手段と、
前記ハウジング内に設けられて前記他方の対向壁との間に液体室を形成するとともに前記隔壁との間に空気室を形成するように前記ハウジングの内部を区画するPFA製フィルム状ダイヤフラムと、当該ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製補助軸との双方により構成されて、当該補助軸にて前記隔壁にその軸方向に形成してなる貫通穴部内にて摺動可能なように嵌装されるダイヤフラム部材とを備えており、
前記駆動手段は、前記ダイヤフラム部材の前記補助軸と共に前記空気室に向け或いはその逆方向に向け軸動可能となるように前記補助軸の延出端部に同軸的に連結される駆動軸を一体的に設けてなり、
前記ハウジングは、前記液体室内にて前記ダイヤフラムの前記中央部に対向して当該中央部と共に弁部を構成する環状弁座部、前記液体を前記流入側から前記環状弁座部を介し前記液体室内に流入させる流入路及び前記液体室内の前記液体を前記流出側へ流出させる流出路を前記他方の対向壁に設けてなり、
前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記他方の対向壁側への軸動に伴い連動して、前記ダイヤフラムの前記中央部を前記環状弁座部に着座させたとき、前記弁部を閉弁し、また、前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記一方の対向壁側への軸動に伴い連動して、前記ダイヤフラムの前記中央部にて前記環状弁座部から離れたとき、前記弁部を開弁するようになっていることを特徴とするダイヤフラム弁。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記筒状周壁の前記中空部内に前記一方の対向壁と前記隔壁との間にてその軸方向に沿い摺動可能に嵌装されて一側室及び他側室を前記一方の対向壁側及び前記隔壁側にて形成するように前記筒状周壁の前記中空部を区画するピストンと、
当該ピストンを前記他側室及び前記一側室のいずれか一方の室に向けて付勢する付勢手段とを具備して、
前記駆動軸は、前記ピストンから前記他側室を通り一体的に延出されて前記ダイヤフラム部材の前記補助軸の延出端部に同軸的に連結されるピストン軸であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤフラム弁。
【請求項3】
省略
【請求項4】
前記ダイヤフラム部材は、前記ダイヤフラムの両面のうちの一側面にその外周部に沿うようにレーザー溶接されるフッ素樹脂製補強用環状体を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のダイヤフラム弁。
【請求項5】
前記ダイヤフラム部材は、そのダイヤフラムにて、PFAを押し出し成形或いは圧縮成形することにより、フィルム状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のダイヤフラム弁。
【請求項6】
前記ダイヤフラム部材において、前記補助軸は、1(mm)以上で4(mm)以下の範囲以内の外径を有しており、前記ダイヤフラムは、0.1(mm)以上で0.5(mm)以下の範囲以内の厚さを有することを特徴とする請求項5に記載のダイヤフラム弁。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証及び従たる証拠として次の甲第2号証〜甲第7号証を提出し、請求項1、2、5及び6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5及び6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消すべきものであり、また、請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり取り消すべきものである旨主張する。

甲第1号証:特開2017−207121号公報
甲第2号証:特開2003−251698号公報
甲第3号証:特許第5286330号公報
甲第4号証:特開2016−65560号公報
甲第5号証:特開2012−233744号公報
甲第6号証:特開2007−46725号公報
甲第7号証:特開2011−220422号公報

4 各甲号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には次の記載がある(下線は当審で付したものである。)。
「【0001】
本発明は、薬液の供給等に用いられる流路ブロック、流体制御装置、及び流路ブロックの製造方法に関する。」
「【0007】
第1の構成は、樹脂製の流路ブロックであって、所定面よりも凹んで形成された第1室と、前記第1室から離間した位置に、前記所定面よりも凹んで形成された第2室と、前記第1室と前記第2室とにそれぞれ開口し、前記第1室と前記第2室とを連通する、円弧形状の連通流路と、を備える。」
「【0017】
第5の構成は、第1〜第4のいずれかの流路ブロックを備える流体制御装置であって、前記第1室には、前記連通流路の開口と異なる開口が設けられ、その開口に第1流路が接続されており、前記第2室には、前記連通流路の開口と異なる開口が設けられ、その開口に第2流路が接続されており、前記第1室と前記第1流路との連通状態を制御する第1弁機構と、前記第2室と前記第2流路との連通状態を制御する第2弁機構と、を備える。」
「【0034】
<第1実施形態>
以下、半導体製造装置等において薬液等の流体の流路を開閉するバルブに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図1に示すように、バルブ10(流体制御装置)は、流路ブロック11、ダイアフラム20、ニードル弁31、第1ボディ41、第2ボディ51、第1ピストン61、第2ピストン62、カバー71等を備えている。
【0036】
流路ブロック11は、耐薬品性の高い樹脂、例えば、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)により、直方体状に形成されている。流路ブロック11の載置面11a側には、第1室12が形成されている。第1室12は、流路ブロック11の載置面11aに垂直な方向に延びる円柱状の空間として形成されている。第1室12の深さは、外周縁側から中心側へ向かって連続的に深くなっている。第1室12の中心軸線上の底面12aには、薬液の流路である第1流路13の開口13aが設けられている。
【0037】
第1流路13は、開口13aから垂直方向へと延びる第1垂直流路13bと、その第1垂直流路13bの開口13aとは反対側の端部に接続され、第1垂直流路13bに対して垂直な方向、すなわち、載置面11aに対して水平方向へと延びる第1水平流路13cとを含んで構成されている。第1水平流路13cにおいて、第1垂直流路13bと接続される端部の反対側の端部は、開口13dとなっており、この開口13dを介して他の流路等が接続可能である。
【0038】
流路ブロック11において、第1流路13の第1室12での開口13aの周囲には、環状の弁座14が設けられている。弁座14は、第1ボディ41及び第1ピストン61の方向へ突出する環状の凸部となっている。この環状の凸部の内周側が第1流路13の第1垂直流路13bの一部を構成している。
【0039】
弁座14に対向するように、ダイアフラム20が配置されている。ダイアフラム20は、薄膜状(シート状)の膜部21と、円筒状の連結部23とを備えている。ダイアフラム20(膜部21)の径は、14mmとなっている。連結部23は、膜部21の中央に接合されている。なお、ダイアフラム20の詳細については後述する。
【0040】
ダイアフラム20の膜部21の周縁部21aは、第1ボディ41に設けられた円筒状の押圧部42と、流路ブロック11に形成された、押圧部42と対向する第1対向部15とにより押圧されている。詳しくは、膜部21の上面(第1面)が、押圧部42により押圧されている。膜部21の下面(第2面)が、第1対向部15により押圧されている。このように膜部21の周縁部21aが押圧部42及び第1対向部15により押圧された状態で、流路ブロック11と第1ボディ41とが接続されている。」
「【0044】
ダイアフラム20の連結部23には、第1ピストン61の下端が連結されている。第1ピストン61(往復動部材)は、円柱状に形成されている。第1ピストン61の下端には、ねじ溝が設けられている。ダイアフラム20における連結部23にもねじ溝が設けられている。第1ピストン61のねじ溝とダイアフラム20の連結部23のねじ溝が締結されることで、ダイアフラム20と第1ピストン61とが連結されている。
【0045】
第1ボディ41には、第1ピストン61を弁座14の方向へ往復動させるアクチュエータが組み込まれている。アクチュエータは、電磁力等により第1ピストン61を往復動させるものでもよいし、空圧等により第1ピストン61を往復動させるものでもよい。
【0046】
第1ピストン61が往復動させられることにより、ダイアフラム20が変形させられる。そして、ダイアフラム20が弁座14に当接することにより、第1室12と第1流路13とが遮断される。ダイアフラム20が弁座14から離間することにより、第1室12と第1流路13とが連通される。」
「【0055】
連通流路81の第1室12側の開口82は、第1室12の内周面12bに形成されている。連通流路81の第2室16側の開口83は、第2室16の側面16bから底面16aにかけて、設けられている。」
「【0071】
次に、本実施形態のダイアフラム20について詳細に説明する。図7は、柱状部22を備えるダイアフラム20を示す写真である。
【0072】
膜部21は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料により形成されている。PFAは、耐薬品性を有しており、PTFEと比べてパーティクルの発生しにくい分子構造である。膜部21は、均一な所定の厚みのシート状(膜状)に形成されている。所定の厚みは、0.05〜0.5mmであり、望ましくは略0.2mmである。膜部21は、第1材料を圧延により加工して形成されている。
【0073】
図8は、切削加工により形成された比較例のダイアフラムの表面を示す写真である。同図に示すように、比較例のダイアフラムの表面は、切削加工により荒れている。このため、ダイアフラムの使用により、パーティクルが発生したり、表面の一部がむしれたり(剥がれたり)するおそれがある。
【0074】
図9は、圧延加工により形成された本実施形態ダイアフラム20の表面を示す写真である。同図に示すように、ダイアフラム20の表面、詳しくは膜部21の表面は、切削加工が行われていないため、比較例のダイアフラムの表面と比べて荒れていない。しかも、膜部21の表面は圧延加工により押圧されているため、平滑化されている。このため、ダイアフラム20を使用したとしても、パーティクルが発生したり、表面の一部がむしれたりすることを抑制することができる。
【0075】
図7に戻り、膜部21の中央には、柱状部22が直接に接合されている。柱状部22は、PFAを主原料とする第2材料により、円柱状に形成されている。第1材料は第2材料よりも柔軟性が高い。膜部21の四隅には、位置決め用の貫通孔21cが形成されている。
【0076】
そして、柱状部22が切断及び切削されて、上記連結部23が形成される。このため、膜部21の中央には、連結部23が直接に接合されている。連結部23には、ねじ溝が形成される。こうして、上記ダイアフラム20が製造される。
【0077】
次に、ダイアフラム20の製造方法について詳細に説明する。図10は、ダイアフラム20の膜部21の製造方法を示す模式図である。図11は、膜部21に柱状部22となる第2材料を射出する工程を示す模式図である。
【0078】
まず、図10に示すように、成形機F1に溶融状態の第1材料m1を投入する。溶融状態の第1材料m1は流動性が低く、射出成形を行うことができない。一方、第1材料m1は柔軟性が高い。そこで、成形機F1のローラR1により、第1材料m1を圧延しながら押し出す。このとき、ローラR1を加熱することで、第1材料m1を加熱した状態で圧延する。加熱により第1材料m1を軟化させつつ、第1材料m1を次第に薄く延ばす。
【0079】
次に、ある程度延ばされた第1材料m1を成形機F2へ送る。成形機F2では、ローラR2により、第1材料m1を更に圧延する。このとき、ローラR2を加熱することで、第1材料m1を加熱した状態で圧延する。そして、0.2mmの厚みまで延ばされた薄膜状(シート状)の膜部21を、ローラR3により巻き取る。これにより、ロール状の膜部21が製造される。
【0080】
一般に、耐薬品性を有する第1材料m1を圧延により加工する場合、0.05mmよりも薄くすることは困難である。そこで、第1材料m1を圧延により加工して0.05〜0.5mmの厚みの膜部21を形成する。本実施形態では、略0.2mmの厚みの膜部21を形成する。
【0081】
次に、図11に示すように、所定の大きさに切断した膜部21を金型A1に取り付ける。そして、柱状部22の金型A2を膜部21の表面に配置する。金型A2には、柱状部22に対応する空間22Sが形成されている。金型A1と金型A2とで膜部21を挟み込むことで、空間22Sを密閉する。空間22Sは、原料の導入口22Iに連通している。導入口22Iは、射出成形機F3に接続されている。
【0082】
射出成形機F3に溶融状態の第2材料m2を投入する。溶融状態の第2材料m2は流動性が高く、射出成形を行うことができる。すなわち、溶融状態の第2材料m2の流動性は、溶融状態の第1材料m1の流動性よりも高い。そして、第1材料m1により形成された膜部21の表面に、第2材料m2を溶融状態で射出する。
【0083】
ここで、膜部21に溶融状態の第2材料m2が接しても、第1材料m1により形成された膜部21は溶融しない。膜部21は溶融しないが、射出された第2材料m2により膜部21が熱せられ、膜部21の分子の移動が促進される。
【0084】
その後、金型A1,A2を冷却することにより、射出された第2材料m2を凝固させて柱状の柱状部22を形成する。これにより、図7に示すように、膜部21と柱状部22とが直接に接合される。そして、柱状部22を切削して、他部材との連結を可能とする連結部23を形成する。以上により、ダイアフラム20が製造される。」
「【0104】
・第1材料m1の主原料と第2材料m2の主原料とは同じである。このため、第1材料m1により形成された膜部21に、溶融状態の第2材料m2を射出することにより、膜部21に第2材料m2を直接に接合することができる。そして、第2材料m2を加工することにより、連結部23を形成することができる。したがって、膜部21の厚みが薄い場合であっても、連結部23を備えるダイアフラム20を製造することができる。
【0105】
・溶融状態の第2材料m2の流動性は、溶融状態の第1材料m1の流動性よりも高い。このため、第1材料m1を溶融状態にして射出成形することができない場合であっても、第2材料m2を溶融状態にして射出成形することにより、膜部21に第2材料m2を接合して連結部23を形成することができる。
【0106】
・溶融状態の第2材料m2は、射出成形可能な流動性を有している。このため、第2材料m2を用いて膜部21に接するように射出成形することにより、膜部21に直接に接合された連結部23を形成することができる。
【0107】
・第1材料m1は第2材料m2よりも柔軟性が高いため、第1材料m1により形成された膜部21の強度を高くすることができ、膜部21からのパーティクル発生や膜部21の損傷を抑制することができる。
【0108】
・第1材料m1及び第2材料m2の主原料は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)である。PFAはPTFEと比べてパーティクルの発生しにくい分子構造であり、ダイアフラム20の使用によるパーティクルの発生を抑制することができる。近年、射出成形が可能な溶融状態での流動性が高いPFAが開発されたため、この溶融状態での流動性が高いPFAを第2材料m2として射出成形により連結部23を形成することができる。また近年、軟質のPFAが開発されたため、この軟質PFAを第1材料m1として圧延により膜部21を形成することができる。」
「【図1】


「【図2】


「【図3】


「【図11】



(2)甲第2号証
甲第2号証には次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性樹脂成形体に変形、ひずみ、皺を発生させずにフイルムを接合する方法に関するものである。」
「【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂成形体にフイルムを接合する方法としては、・・・(略)・・・シート(フイルム)の表面にホットメルト接着剤を塗布した転写シート(フイルム)を金型キャビティー内にセットし型締め後、射出成形で一体化する方法がある(例えば、特開平5−82943号)。しかし、この方法ではホットメルト接着剤の塗布や金型内へのフイルムの位置決めが煩雑であり作業性に劣るばかりか、射出成形の溶融樹脂の流動によりフイルムに皺が発生しやすい。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、熱可塑性樹脂成形体とフイルムの接合において、上述した従来の問題点を解消し、フイルムの皺、変形、ひずみを発生させることなく優れた表面外観を維持すると共に、高い位置精度で容易に樹脂成形体とフイルムを接合する方法、および熱可塑性樹脂成形体とフイルムを接合した複合成形体を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成する本発明は、
(1)熱可塑性樹脂成形体とフイルムの接合方法において、熱可塑性樹脂成形体とフイルムを重ね合わせ、前記フィルムを介して前記熱可塑性樹脂成形体と反対側からレーザーを照射することにより、重ね合わせた面を接合することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体とフイルムの接合方法。」
「【0012】本発明において熱可塑性樹脂成形体に用いる熱可塑性樹脂は特に制限は無く、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン/α−オレフィン共重合体などのオレフィン系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂(アクリロ二トリル/スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン)、HIPS(ハイインパクトポリスチレン)などのスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族系ポリアミドおよびこれらの共重合体、6T/66、6T/6、6T/12、6T/610、6I/66、6T/6I、6T/6I/66などの6T系あるいは6I系共重合体(6Tはヘキサメチレンテレフタレート単位を、6Iはヘキサメチレンイソフタレート単位を表す)等のナイロン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリブチレン2,6−ナフタレート、ポリエイレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレートなどの非液晶ポリエステル系樹脂およびこれらの共重合体、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィドに代表されるポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール(ホモポリマー、コポリマー)などが挙げられる。」
「【0015】本発明の熱可塑性樹脂成形体を作成する方法としては、一般的な方法を採用することが可能であり、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形等が挙げられる。
【0016】本発明の成形体の形状は、特に制限はなくレーザー溶着の特徴を生かし自由な形状のものを採用することが可能である。しかしながら、フイルムを接合した時にフイルムの皺や変形等を防止する目的で、溶融しろとしてリブやピン等を成形品の接合面に形成することが推奨される。溶融しろの形状としては三角形や四角形のリブや円や四角形のピン等特に限定するものは無いが、大きさとしてはレーザー光を照射した時に、完全に溶融する量が最適である。但し、該溶融しろの大きさは、接合面積、熱可塑性樹脂やフイルムの種類、さらにそれらのレーザー光透過度、レーザー光の照射条件等により溶融量が変わるが、目安としてリブ形状で有れば高さ0.1〜3mm、幅0.1〜3mmが、接合面の表面外観を損なわずに、十分な接合強度を得る点で好ましいと言える。
【0017】本発明のフイルムとしては、特に制限はなく厚み10〜500μm程度の各種フイルムを使用することが可能である。フイルムの材質としても特に制限はなくポリエステル系樹脂(PET、PBT、PC、PCT等)、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド、スチレン系樹脂(ABS等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル等の公知のフイルムの中から、意匠性、耐熱性、加工性、成形温度などを考慮して使用目的に適したフイルムを選択することが可能である。」
「【0021】本発明の熱可塑性樹脂成形体とフイルムを重ねた後、フイルム側からレーザー光を照射して接合する際には、フイルムの上にガラス板を置きその上からレーザーを照射することが、フイルムの過剰な溶融を抑える目的から推奨される。ガラス板の厚みとしては、0.5〜2mmが適当でありレーザーの透過率や作業性等を考慮して最適なものを選択することが可能である。」
「【0039】レーザー溶着方法は図4,5に示すように、フイルム4を熱可塑性樹脂成形体1,2の上部に重ねて置き、上部よりレーザー光線を照射する。レーザー照射はレーザー溶着軌道6に沿って15mm行い、熱可塑性樹脂成形体2の場合には、溶着しろに沿ってレーザーを照射した。レーザ溶着条件は、出力5〜20W範囲および、レーザ走査速度20〜70mm/secの範囲で最も良好な溶着強度が得られる条件で行った。尚、焦点距離は38mm、焦点径は0.6mm固定で実施した。熱可塑性樹脂成形体とフイルムの溶着しろは、熱可塑性樹脂成形体1を使用した場合は、幅が1.0〜1.4mmであり、熱可塑性樹脂成形体2を使用した場合は、断面が三角形の溶着しろが完全に溶融する量(溶着幅で約1.4mm)にて接合した。各種熱可塑性樹脂成形体とフイルムを用いて接合強度を測定した結果を表1に示す。」
「【0042】
【発明の効果】上述したように、本発明の熱可塑性樹脂成形体とフイルムの接合方法によれば、接合するフイルムの皺や変形を防いで高い接合強度で接合することができ、しかもレーザーを使用することで任意の場所に任意の溶着しろで接合が可能である。」
「【図4】


「【図5】



(3)甲第3号証
甲第3号証には次の記載がある。
「【請求項1】
非溶融性フッ素樹脂から成るハウジングのフランジ部と同様に非溶融性フッ素樹脂から成るダイアフラムのフランジ部とを溶着する樹脂ダイヤフラムのシール方法において、前記2つのフランジ部間に熱可塑性フッ素樹脂から成る溶融樹脂シートを介在し、前記ダイアフラムの非溶着面側に熱伝導性が良好でレーザー光により加熱されずレーザー光を透過する吸熱材を配置し、前記吸熱材側から加熱用レーザー光を照射して前記溶融樹脂シートを溶融して前記フランジ部同士を溶着することを特徴とする樹脂ダイヤフラムのシール方法。」
「【請求項3】
前記非溶融性フッ素樹脂はPTFE又は変性PTFEとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂ダイヤフラムのシール方法。
【請求項4】
前記熱可塑性フッ素樹脂はPFAとしたことを特徴とする請求項2に記載の樹脂ダイヤフラムのシール方法。」
「【0001】
本発明は、バルブ等に用いる樹脂ダイヤフラムのシール方法に関するものである。」
「【0014】
図1はフッ素樹脂製のダイアフラムを使用したバルブの断面図である。例えば、PFA(Tetrafluoroethylene Perflouroalkoxy vimyl ether copolymer)などの熱可塑性フッ素樹脂から成り、射出成型により成型された上下のハウジング11、12の間に、例えばPTFE(Polytetrafluoroethylene)、変性PTFEなどの非溶融性フッ素樹脂から成るダイアフラム13が介在されている。ダイアフラム13の上部には駆動棒14、下部には弁部15が一体に形成され、弁部15は下ハウジング12の孔部16内に挿入自在とされている。なお、この場合に溶着を必要としない上ハウジング11は非溶融性フッ素樹脂から成っていても支障はない。」
「【0019】
そして、吸熱材19の上方から図3に示すように例えば炭酸ガスレーザー光源から発生した加熱用レーザー光Lを円環状に、必要であれば複数回走査して照射し、ダイアフラム13のフランジ部13bと下ハウジング12のフランジ部12aを加熱する。なお、レーザー光はフランジ部13b、フランジ部12aの境界部まで達するようにその強度を調整しておく。レーザー光Lの走査はレーザー光源を回転させても、或いはダイアフラム13等を固定した治具を回転させてもよく、相対的な走査が可能であればよい。
【0020】
この加熱用レーザー光Lの照射により、熱可塑性フッ素樹脂から成るフランジ部12aは320℃程度以上になると溶融が始まる。図2のドット部20で示すように、溶融されたフランジ部12aの一部は、ダイアフラム13のフランジ部13b内にも入り込み、両者の間は円環状に溶着される。」

(4)甲第4号証
甲第4号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、半導体ウェハーや当該半導体ウェハーを利用して製造する半導体素子の製造にあたり、用いられる薬液等の液体の流れを制御するに適したダイヤフラム弁並びにその環状弁座形成方法及び弁体形成方法に関する。」
「【0109】
まず、図5にて示すハウジング部材の母体の切削加工工程S1において、当該ハウジング部材の母体の切削加工がなされる。この切削加工に伴い、上記母体がハウジング部材の半完成体(以下、ハウジング部材半完成体ともいう)として形成される。なお、上記ハウジング部材の母体とは、円筒状ハウジング100のハウジング部材100aを形成するに要する材料であるPTFEからなる固体をいう。
【0110】
本第1実施形態において、上記ハウジング部材半完成体は、図6から分かるように、ハウジング部材100aのうち、環状弁座130の主環状部130a、流入筒部112及び流入側連通路部114を有する底壁110、並びに小径内孔部121a、大径内孔部121b、流出筒部121、流出側連通路部123を有する周壁120でもって、一体的に構成されている。」
「【0126】
然る後、次の副環状部の載置工程S3において、上述のように射出成形された副環状部130b(付加環状部130b)が、その環状底面部131にて、図7にて示すごとく、上記ハウジング部材半完成体の主環状部130a(一体環状部130a)の上面上に同軸的に載置される。
【0127】
このように副環状部130bが、主環状部130aの上面に載置された後、次の円板状押え付け部材の載置工程S4において、円板状押え付け部材170が、その底面にて、図8にて示すごとく、副環状部130bの環状上面部132上に同軸的に載置される。
【0128】
本第1実施形態において、円板状押え付け部材170は、透明ガラスでもって、所定の厚さ及び所定の直径を有するように円板状に形成されている。ここで、円板状押え付け部材170を形成する透明ガラスは、高熱伝導性及び電気絶縁性を有する。」
「【0132】
しかして、上述のように円板状押え付け部材170が副環状部130b上に載置された後、次の円板状押さえ付け部材の押さえ付け工程S5において、円板状押え付け部材170が、その上方から、適宜なプレス機(図示しない)により、図8にて矢印Yにより示すごとく、副環状部130bに向けて押し付けられる。このとき、円板状押え付け部材170は、その下面にて、副環状部130bの環状上面部132の全面に亘り、一様な押圧力でもって、押し付けられる。
【0133】
このような円板状押え付け部材170の副環状部130bに対する押え付け状態のまま、次のレーザ光照射工程S6において、レーザ光が、半導体レーザ装置SL(図9参照)により、次のようにして、押え付け部材170に向けて照射される。」
「【0138】
しかして、当該半導体レーザ装置SLが、その作動に伴い、レーザ光を出射すると、当該レーザ光は、図9及び図10にて示すごとく、ハウジング部材100aの大径内孔部121b及び小径内孔部121aを通り、押え付け部材170及び副環状部130bを各厚さ方向に透過して当該副環状部130bと主環状部130aとの幅方向境界面中央部Qに収束する。
【0139】
従って、副環状部130b及び主環状部130aが、幅方向境界面中央部Qを中心としてレーザ光により加熱される。これに伴い、副環状部130b及び主環状部130aが、幅方向境界面中央部Qを中心として溶融されていく。
【0140】
本第1実施形態では、副環状部130bの形成材料であるPFAは、主環状部130aの形成材料であるPTFEの融点(約330(℃))よりも幾分低い融点(約310(℃))を有する。
【0141】
このため、半導体レーザ装置SLにおいては、そのレーザ光の幅方向境界面中央部Qに対する加熱温度が、PTFEの融点よりも幾分高くなるように、上述したレーザ光の出射強度が調整されている。
【0142】
但し、押え付け部材170が、その高熱伝導性のもとに副環状部130bの発熱を吸熱することを考慮して、幅方向境界面中央部Qに対する加熱温度がPFAの融点を超えて上昇するものの、主環状部130a及び副環状部130bにおいて幅方向境界面中央部Qを中心とする溶融領域が所定領域内に収まるように、幅方向境界面中央部Qに対するレーザ光の出射強度が所定の出射強度として設定されている。
【0143】
換言すれば、副環状部130bと主環状部130aとの幅方向境界面中央部Qを含む円周上に沿いレーザ光の照射強度が一様に上記所定の照射強度となるように、半導体レーザ装置SLの回転速度が低回転速度に選定されている。なお、上述の所定領域は、例えば、副環状部130bの主環状部130aに対する載置状態において、少なくとも副環状部130bの上面部及び主環状部130aの下面部を含まない領域をいう。
【0144】
ここで、副環状部130bの形成材料であるPFAは、主環状部130aの形成材料であるPTFEに比べて流動性が高く、かつ、上述したごとく、当該PTFEの融点よりも低い融点を有する。しかも、副環状部130bは主環状部130a上に重畳的に載置されている。
【0145】
このため、副環状部130bは、主環状部130aよりも早いタイミングにて、上記レーザ光により、幅方向境界面中央部Qを中心として局所的に加熱されて溶融し始めて、溶融状態となって当該主環状部130a内に浸透していく。また、上記レーザ光による加熱温度の上昇に伴い、主環状部130aが幅方向境界面中央部Qを中心として局所的に加熱されて溶融し始める。このため、副環状部130bを形成するPFAは、溶融状態にて、主環状部130aを形成するPTFEの溶融領域により一層容易に浸透していく。
【0146】
本第1実施形態において、上述のような局所的な加熱では、副環状部130bに対する加熱温度は、押え付け部材170による吸熱作用のもと、副環状部130bにおいてその底面部131から上面132側に向けて順次低下するとともに、主環状部130aにおいては、副環状部130bの底面部131側から副環状部130bの上面132とは反対方向に向けて順次低下する。従って、上記所定領域内において主環状部130a及び副環状部130bが相互に溶融することとなる。
【0147】
このようなレーザ光による照射を維持しながら、半導体レーザ装置SLが、レーザ光を、副環状部130bと主環状部130aとの幅方向境界面中央部Qを含む円周上に沿い順次収束させるように、上記低回転速度にて、回転していく。
【0148】
これにより、主環状部130a及び副環状部130bが、その境界面の幅方向中央部に沿う円周部を中心とする上記所定の領域に亘り、レーザ光により加熱されて一様に溶融して相互に溶着していく。その後、半導体レーザ装置SLからのレーザ光の出射を停止することで、主環状部130a及び副環状部130bは、自然冷却を経て硬化していく。
【0149】
ここで、上述のごとく、所定領域は、副環状部130bの主環状部130aに対する載置状態において、少なくとも副環状部130bの上面部及び主環状部130aの下面部を含まない領域であることから、副環状部130bの主環状部130aに対する載置状態において、副環状部130bがその押え付け部材170との接合面まで溶融することはなく、また、主環状部130aは、その副環状部130bとは反対側面まで溶融することはない。従って、主環状部130a及び副環状部130bは、その原形状を維持したまま、相互に溶着される。
【0150】
然る後、図5の押え付け部材除去工程S7において、押え付け部材170が、副環状部130bから除去される。これにより、主環状部130a及び副環状部130bが、相互に溶着硬化した状態にて、ハウジング部材100aの環状弁座130として形成される。
【0151】
以上により、互いに溶着後冷却硬化してなる主環状部130a及び副環状部130bからなる環状弁座130を備えたハウジング部材100aの形成が完了する。」
「【0183】
また、本第2実施形態における弁体150aは、上記第1実施形態にて述べた弁体150を弁体本体とし、この弁体本体に弁体環状部155を付加した構成を有する。なお、弁体環状部155は、弁体150である弁体本体に付加されていることから、当該弁体環状部155は、付加環状部155であるともいえる。
【0184】
当該弁体環状部155は、上記第1実施形態にて述べた環状弁座130のうちの副環状部130bと同様に、PFAを用いて、当該副環状部130bと類似の構成を有するように、射出成形機でもって、射出成形されている。」
「【0190】
然る後、押さえ付け部材の押さえ付け工程S5において、押え付け部材170が、その上方から、上記プレス機により、副環状部130bに代えて、当該副環状部130bと同様に、弁体環状部155に押し付けられる。
【0191】
ついで、レーザ光照射工程S6において、半導体レーザ装置SLが、その回転に伴い、レーザ光を、上記第1実施形態にて述べた副環状部130bと主環状部130aとの幅方向境界面中央部Qを含む円周部に代えて、上記第1実施形態と同様に、弁体環状部155の環状底面部155aと弁体150aの弁体本体の先端面環状外周部151との幅方向境界面中央部を含む円周部に沿い収束するように照射する。
【0192】
これにより、弁体150aの弁体本体の先端面環状外周部151及び弁体環状部155が、その境界面の幅方向中央部に沿う円周部を中心とする上記所定の領域と同様の領域に亘り、レーザ光により加熱されて溶融して相互に溶着していく。その後、半導体レーザ装置SLからのレーザ光の出射を停止することで、弁体150a及び弁体環状部155は、自然冷却を経て硬化していく。」

(5)甲第5号証
甲第5号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、例えば生産ラインの製造装置やその製造装置に液体を供給する配管等からの漏液を検出する漏液検出装置に関するものである。」
「【0020】
センサ本体部11は、略有底円筒状のケース14と、ケース14の上部を水密に閉塞するカバー15と、ケース14から導出されたケーブル16とを有する。ケース14は、円筒形の外周部21と、外周部21の一端を塞ぐ底部22とを有する。外周部21の開口14a(底部22とは反対側の端部)は、略円盤状のカバー15(図8参照)にて閉塞されている。尚、ケース14、カバー15及び前記基台12は、透光性、耐熱性及び耐薬品性を有するPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂からなる。また、カバー15とケース14の開口14aとはレーザ溶着されている。」

(6)甲第6号証
甲第6号証には次の記載がある。
「【0001】
本発明は、化学工場、または半導体製造分野、液晶製造分野、食品分野などの各種産業に使用される弁に関するものであり、さらに詳しくは、弁本体に螺合されるブッシュの緩みを防止でき、急激な流体圧力がかかってもブッシュが飛び出るのを防ぐことのできる流路付開閉弁に関するものである。」
「【0054】
96は主弁室55に連通する入口流路58と出口流路59の開閉を行うダイヤフラム弁である。ダイヤフラム弁96は弁本体52と、ダイヤフラム部97、シリンダ本体102、ピストン108および隔膜押さえ113から形成されている。ダイヤフラム弁の構成を以下に説明する。
【0055】
97は主弁室55の上部に位置するPTFE製のダイヤフラム部である。ダイヤフラム部97の中央上部は後記隔膜押さえ113の挿嵌部114に受容され、且つ下面は弁座部60に圧接離間される主弁体98が形成されている。主弁体98の上部には雌ネジ部99が設けられており、後記ピストン108の軸部112下端部の雄ネジ部111に螺着されている。すなわち主弁体98はピストン108の上下動に伴って、上下に移動可能であり弁本体52の弁座部60に圧接離間され、入口流路58から出口流路59への流路の閉止あるいは開放が行なわれる。また、主弁体98の外周には径方向へ延設された隔膜部100が設けられている。さらに隔膜部100外周縁には断面矩形状の環状嵌合部101が設けられ、弁本体52の環状溝54に嵌合された状態で弁本体52と後記隔膜押さえ113の下面とで挟持固定されている。」

(7)甲第7号証
甲第7号証には次の記載がある。
「【0025】
弁体収容孔13は、図4〜図6に示されるように、その底部側を頂点とする円錐面形状部34と、この最大内径部分に連なる円筒面形状部35とを有しており、弁体収容孔13により第1のポート11と第2のポート12とを連通させる連通室36が形成されている。弁体収容孔13の開口端部には径方向を向いてスペーサ17に対向する段部37が形成されている。弁体16には、段部37に配置されてスペーサ17と弁体収容ブロック10との間で挟み付けられる環状部38がダイヤフラム39を介して一体に設けられている。このダイヤフラム39は弁体16と弁体収容ブロック10との間に装着されて、弁体16と連通室36の開口端との間をシールするためのシール部材を構成している。ダイヤフラム39は、弁体16が軸方向に移動すると、それに追従して弾性変形する。シリンダブロック18には隔壁22とダイヤフラム39との間に形成される空間40を外部に連通させる息付き孔41が形成されており、弁体16が軸方向に移動して空間40の容積が変化したときには、空間40内の空気は息付き孔41を介して給排される。」

5 当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明
上記4(1)の摘記事項より、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されているといえる。

・薬液等の流体の流路を開閉するバルブ10の第1弁機構(段落【0001】、【0007】、【0017】、【0035】)。
・第1弁機構は、流路ブロック11、ダイアフラム20、第1ボディ41、第1ピストン61、カバー71を備えている(段落【0035】)。
・第1弁機構の第1ボディ41は、その上端部をカバー71によって閉塞され、下端部を流路ブロック11によって閉塞されている(【図1】)。
・第1ボディ41の上下方向中間部には、内側に張り出す部分(肉厚部)が形成されている(【図1】)。
・第1ピストン61は、ピストン部(大径部)とロッド部(小径部)からなり、ピストン部(大径部)はカバー71と第1ボディ41の肉厚部との間に配置され、ロッド部(小径部)は第1ボディ41の肉厚部に嵌装されている(【図1】)。
・第1ボディ41に設けられた押圧部42は、円筒状であり、また、第1ボディ41内には円柱状に形成されている第1ピストン61が納められていることから、第1ボディ41内側は筒状内周壁であるといえる(段落【0040】、【0044】、【図1】)。
・第1ボディ41には、第1ピストン61を往復動させるアクチュエータが組み込まれている(段落【0045】)。
・第1弁機構のダイアフラム20は、薄膜状の膜部21と膜部の中央に接合された円筒状の連結部23とを備えている(段落【0039】)。
・ダイアフラム20の膜部21は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている(段落【0072】、【0077】〜【0080】)。
・ダイアフラム20の連結部23は、PFAを主原料とする第1材料m2で、膜部21の表面に射出成形することにより形成されている(段落【0075】、【0076】、【0081】〜【0084】、【図11】)。
・ダイアフラム20の連結部23は、第1ピストン61のロッド部(小径部)に同軸的に連結され第1ボディ41の肉厚部に嵌装されている(段落【0044】、【図1】)。
・ダイアフラム20は、流路ブロック11と第1ボディ41との間に設けられている(段落【0040】、【図1】、【図2】)。
・第1弁機構の流路ブロック11には、第1室12、第1流路13、連通流路81が設けられている(段落【0036】、【0037】、【0055】、【図1】、【図2】)。
・流路ブロック11の載置面11a側には、載置面11aに垂直な方向に延びる円柱状の空間として第1室12が形成される(段落【0036】、【0037】、【図1】、【図2】)。
・第1室12の中心軸線上の底面12aには、第1流路13の開口13aが設けられている(段落【0037】)。
・開口13aの周囲には、環状の弁座14が設けられている(段落【0038】)。
・第1室12の内周面12bには、連通流路81の開口82が設けられている(段落【0055】)。
・第1ピストン61が往復動させられることにより、ダイアフラム20が変形させられ、ダイアフラム20が弁座14に当接することにより、第1室12と第1流路13が遮断され、ダイアフラム20が弁座14から離間することにより、第1室12と第1流路13とが連通される(段落【0046】)。

上記認定事項より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

[甲1発明]
「薬液等の流体の流路を開閉するバルブ10の第1弁機構であって、
第1弁機構は、流路ブロック11、ダイアフラム20、第1ボディ41、第1ピストン61、カバー71を備えており、
円筒状内壁を持つ第1ボディ41は、その軸方向上端部をカバー71によって閉塞され、下端部を流路ブロック11によって閉塞されており、
第1ブロック41の軸方向中間部は、内側に張り出す部分(肉厚部)が形成されており、
第1ピストン61は、ピストン部(大径部)とロッド部(小径部)からなり、ピストン部(大径部)はカバー71と第1ボディ41の肉厚部との間に配置され、ロッド部(小径部)は第1ボディ41の肉厚部に嵌装されており、
第1ボディ41には、第1ピストン61を往復動させるアクチュエータが組み込まれており、
ダイアフラム20は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている薄膜状の膜部21と、膜部21の中央に、PFAを主原料とする第1材料m2で膜部21の表面に射出成形することにより接合された円筒状の連結部23とを備えており、
ダイアフラム20の連結部23は、第1ピストン61のロッド部(小径部)に同軸的に連結され第1ボディ41の肉厚部に嵌装されており、
ダイアフラム20は、流路ブロック11と第1ボディ41との間に設けられており、
流路ブロック11には、第1室12、第1流路13、連通流路81が設けられており、
流路ブロック11の載置面11a側には、載置面11aに垂直な方向に延びる円柱状の空間として第1室12が形成されており、
流路ブロック11の第1室12の中心軸線上の底面12aには、第1流路13の開口13aが設けられており、開口13aの周囲には、環状の弁座14が設けられており、第1室12の内周面12bには、連通流路81の開口82が設けられており、
第1ピストン61が往復動させられることにより、ダイアフラム20が変形させられ、ダイアフラム20が弁座14に当接することにより、第1室12と第1流路13が遮断され、ダイアフラム20が弁座14から離間することにより、第1室12と第1流路13とが連通されるものである
バルブ10の第1弁機構。」

(2)請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「薬液」は、本件発明1の「高純度薬液」に相当する。甲1発明の「第1弁機構」は、「第1ピストン61が往復動させられることにより、ダイアフラム20が変形させられ、ダイアフラム20が弁座14に当接することにより、第1室12と第1流路13が遮断され、ダイアフラム20が弁座14から離間することにより、第1室12と第1流路13とが連通される」ことにより「薬液等の流体の流路を開閉する」ものであるから、開弁したときに薬液を流入側から流出側へ流動させ、また、閉弁したときに薬液の流動を遮断するダイアフラム弁であるといえる。
したがって、甲1発明の「薬液等の流体の流路を開閉するバルブ10の第1弁機構」は、本件発明1の「開弁したとき高純度薬液や超純水の液体を流入側から流出側へ流動させ、また、閉弁したときに前記液体の流動を遮断するダイヤフラム弁」に相当する。

(イ)甲1発明の「第1弁機構」は、「流路ブロック11、ダイアフラム20、第1ボディ41、第1ピストン61、カバー71」を備えているところ、「第1ボディ41は、その上端部をカバー71によって閉塞され、下端部を流路ブロック11によって閉塞されて」いることから、甲1発明の「第1ボディ41」と「カバー71」と「流路ブロック11」とで、第1弁機構のハウジングを構成し、「カバー71」と「流路ブロック11」が「第1ボディ41」の上下両端開口を対向する形で閉塞しているといえるから、「第1ボディ41」と「カバー71」と「流路ブロック11」の三者で本件発明1の「ハウジング」に相当する構成をなし、また「カバー71」及び「流路ブロック11」が本件発明1の「対向壁」に相当するといえる。
そして、甲1発明の「第1ボディ41」の「円筒状内壁」は本件発明1の「ハウジング」の「筒状周壁」に相当する。
したがって、甲1発明の「円筒状内壁を持つ第1ボディ41は、その軸方向上端部をカバー71によって閉塞され、下端部を流路ブロック11によって閉塞されて」いることは、本件発明1の「ハウジング」が「筒状周壁及び当該筒状周壁にその軸方向両端開口部を閉塞するように互いに対向して形成してなる両対向壁を有する」ことに相当する。

(ウ)上記(イ)を踏まえると、甲1発明の「第1ブロック41の軸方向中間部」の「内側」は、本件発明1の「前記筒状周壁の軸方向中間部位」に相当する。
そして、甲1発明の「内側に張り出す部分(肉厚部)」は、第1ブロック41の軸方向中間部に形成されて(設けられて)、第1ブロック41の円筒状内壁の中空部をカバー71側と流路ブロック11側との間にて区画する隔壁を構成しているといえる。
したがって、甲1発明の「第1ブロック41の軸方向中間部は、内側に張り出す部分(肉厚部)が形成されて」いることは、本件発明1の「前記筒状周壁の軸方向中間部位に設けられて前記筒状周壁の中空部を前記両対向壁の一方の対向壁と他方の対向壁との間にて区画する隔壁」「を備える」ことに相当する。
そして、甲1発明の「内側に張り出す部分(肉厚部)」により、第1ブロック41の円筒状内壁に狭小な軸方向の貫通穴部を形成している、すなわち、甲1発明の「内側に張り出す部分(肉厚部)」の内周は、軸方向に形成された貫通穴部を構成しているといえる。

(エ)甲1発明の「第1ピストン61を往復動させるアクチュエータ」は、「第1ボディ41」の円筒状内壁に「組み込まれて」、第1ピストン61とアクチュエータとでダイヤフラム20を駆動する手段を構成しているといえる。
したがって、甲1発明の「円筒状内壁を持つ第1ボディ41は、その軸方向上端部をカバー71によって閉塞され、下端部を流路ブロック11によって閉塞されており、第1ブロック41の軸方向中間部は、内側に張り出す部分(肉厚部)が形成されており、第1ピストン61は、ピストン部(大径部)とロッド部(小径部)からなり、ピストン部(大径部)はカバー71と第1ボディ41の肉厚部との間に配置され、ロッド部(小径部)は第1ボディ41の肉厚部に嵌装されており、第1ボディ41には、第1ピストン61を往復動させるアクチュエータが組み込まれて」いることは、上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、本件発明1の「前記筒状周壁の前記中空部内にて前記一方の対向壁と前記隔壁との間に組み付けられる駆動手段」を「備えて」いることに相当する。

(オ)甲1発明の「ダイアフラム20」は、「薄膜状の膜部21」と「円筒状の連結部23」の双方から構成されているから、「薄膜状の膜部21」は、本件発明1の「ダイヤフラム」に相当し、「円筒状の連結部23」は、本件発明1の「補助軸」に相当する。
また、甲1発明の「ダイアフラム20」は、「流路ブロック11と第1ボディ41との間に設けられて」いるから、上記(イ)を踏まえると第1弁機構のハウジング内に設けられているといえる。
さらに、甲1発明の「ダイアフラム20」は、流路ブロック11の載置面11a側に形成された、「載置面11aに垂直な方向に延びる円柱状の空間として第1室12」の上面を覆って流路ブロック11との間に液体室を形成し第1弁機構のハウジング内部を区画している(甲第1号証の【図1】及び【図2】を参照。)といえる。
そして、甲1発明の「薄膜状の膜部21」は、「テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている」から、PFA製のフィルム状物質であるといえ、また、甲1発明の「円筒状の連結部23」は、「膜部21の中央に、PFAを主原料とする第1材料m2で膜部21の表面に射出成形することにより接合された」ものであるから、薄膜状の膜部21の中央部に同軸的に接着されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製軸であるといえる。さらに、甲1発明の「円筒状の連結部23」は、「第1ピストン61のロッド部(小径部)に同軸的に連結され第1ボディ41の肉厚部に嵌装されて」いるから、上記(ウ)を踏まえると、甲1発明の「内側に張り出す部分(肉厚部)」の内周に構成された、軸方向に形成された貫通穴部に移動可能に嵌装されているといえる。
したがって、甲1発明の「第1ボディ41には、第1ピストン61を往復動させるアクチュエータが組み込まれており、ダイアフラム20は、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている薄膜状の膜部21と、膜部21の中央に、PFAを主原料とする第1材料m2で膜部21の表面に射出成形することにより接合された円筒状の連結部23とを備えており、ダイアフラム20の連結部23は、第1ピストン61のロッド部(小径部)に同軸的に連結され第1ボディ41の肉厚部に嵌装されており、ダイアフラム20は、流路ブロック11と第1ボディ41との間に設けられて」いることは、本件発明1の「前記ハウジング内に設けられて前記他方の対向壁との間に液体室を形成するとともに前記隔壁との間に空気室を形成するように前記ハウジングの内部を区画するPFA製フィルム状ダイヤフラムと、当該ダイヤフラムの中央部に同軸的にレーザー溶接されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製補助軸との双方により構成されて、当該補助軸にて前記隔壁にその軸方向に形成してなる貫通穴部内にて摺動可能なように嵌装されるダイヤフラム部材とを備えて」いることとの対比において、「前記ハウジング内に設けられて前記他方の対向壁との間に液体室を形成するように前記ハウジングの内部を区画するPFA製フィルム状ダイヤフラムと、当該ダイヤフラムの中央部に同軸的に接着されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製補助軸との双方により構成されて、当該補助軸にて前記隔壁にその軸方向に形成してなる貫通穴部内にて移動可能なように嵌装されるダイヤフラム部材とを備えて」いるとの限度で一致する。

(カ)甲1発明の「第1ピストン61は、ピストン部(大径部)とロッド部(小径部)からなり、ピストン部(大径部)はカバー71と第1ボディ41の肉厚部との間に配置され、ロッド部(小径部)は第1ボディ41の肉厚部に嵌装されており」、「ダイアフラム20の連結部23は、第1ピストン61のロッド部(小径部)に同軸的に連結され第1ボディ41の肉厚部に嵌装されて」いることは、上記(エ)を踏まえると、本件発明1の「前記駆動手段は、前記ダイヤフラム部材の前記補助軸と共に前記空気室に向け或いはその逆方向に向け軸動可能となるように前記補助軸の延出端部に同軸的に連結される駆動軸を一体的に設けて」いることとの対比において、「前記駆動手段は、前記ダイヤフラム部材の前記補助軸と共に軸動可能となるように前記補助軸の延出端部に同軸的に連結される駆動軸を一体的に設けて」いるとの限度で一致する。

(キ)甲1発明の「環状の弁座14」、「第1流路13」及び「連通流路81」は、それぞれ、対向壁たる流路ブロック11に設けられているものであり、本件発明1の「環状弁座部」、「流入路」及び「流出路」に相当する。
甲1発明の「第1室12」と「ダイアフラム20」とから形成される室(液体室)は、本件発明1の「液体室」に相当し、甲1発明の「環状の弁座14」は、この液体室にてダイアフラム20の中央部に対向して中央部と共に弁部を構成するものであるといえる。
また、甲1発明の「第1流路13」の「開口13a」は、「第1室12の中心軸線上の底面12aに」設けられ、「開口13aの周囲には、環状の弁座14が設けられて」いるから、第1流路13は、薬液等の流体を流入側から環状の弁座14を介して液体室内に流入させものであるといえる。さらに、甲1発明の「連通流路81」は、液体室内の薬液等の流体を流出側へ流出させるものであるといえる。
したがって、甲1発明の「流路ブロック11には、第1室12、第1流路13、連通流路81が設けられており、流路ブロック11の載置面11a側には、載置面11aに垂直な方向に延びる円柱状の空間として第1室12が形成されており、流路ブロック11の第1室12の中心軸線上の底面12aには、第1流路13の開口13aが設けられており、開口13aの周囲には、環状の弁座14が設けられており、第1室12の内周面12bには、連通流路81の開口82が設けられて」いることは、本件発明1の「前記ハウジングは、前記液体室内にて前記ダイヤフラムの前記中央部に対向して当該中央部と共に弁部を構成する環状弁座部、前記液体を前記流入側から前記環状弁座部を介し前記液体室内に流入させる流入路及び前記液体室内の前記液体を前記流出側へ流出させる流出路を前記他方の対向壁に設けて」いることに相当する。

(ク)甲1発明の「ダイアフラム20が弁座に当接」することは、本件発明1の「前記ダイヤフラムの前記中央部を前記環状弁座部に着座させたとき、前記弁部を閉弁」することに相当し、また、甲1発明の「ダイアフラム20が弁座14から離間する」ことは、本件発明1の「前記ダイヤフラムの前記中央部にて前記環状弁座部から離れたとき、前記弁部を開弁する」ことに相当する。
したがって、上記(エ)〜(カ)を踏まえると、甲1発明の「第1ピストン61が往復動させられることにより、ダイアフラム20が変形させられ、ダイアフラム20が弁座14に当接することにより、第1室12と第1流路13が遮断され、ダイアフラム20が弁座14から離間することにより、第1室12と第1流路13とが連通されるものである」ことは、本件発明1の「前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記他方の対向壁側への軸動に伴い連動して。前記ダイヤフラムの前記中央部を前記環状弁座部に着座させたとき、前記弁部を閉弁し、また、前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記一方の対向壁側への軸動に伴い連動して、前記ダイヤフラムの前記中央部にて前記環状弁座部から離れたとき、前記弁部を開弁するようになっている」ことに相当する。

(ケ)以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

[一致点]
「開弁したとき高純度薬液や超純水の液体を流入側から流出側へ流動させ、また、閉弁したときに前記液体の前記流動を遮断するダイヤフラム弁において、
筒状周壁及び当該筒状周壁にその軸方向両端開口部を閉塞するように互いに対向して形成してなる両対向壁を有するハウジングと、
前記筒状周壁の軸方向中間部位に設けられて前記筒状周壁の中空部を前記両対向壁の一方の対向壁と他方の対向壁との間にて区画する隔壁と、
前記筒状周壁の前記中空部内にて前記一方の対向壁と前記隔壁との間に組み付けられる駆動手段と、
前記ハウジング内に設けられて前記他方の対向壁との間に液体室を形成するように前記ハウジングの内部を区画するPFA製フィルム状ダイヤフラムと、当該ダイヤフラムの中央部に同軸的に接着されて当該中央部から延出するフッ素樹脂製補助軸との双方により構成されて、当該補助軸にて前記隔壁にその軸方向に形成してなる貫通穴部内にて移動可能なように嵌装されるダイヤフラム部材とを備えており、
前記駆動手段は、前記ダイヤフラム部材の前記補助軸と共に軸動可能となるように前記補助軸の延出端部に同軸的に連結される駆動軸を一体的に設けてなり、
前記ハウジングは、前記液体室内にて前記ダイヤフラムの前記中央部に対向して当該中央部と共に弁部を構成する環状弁座部、前記液体を前記流入側から前記環状弁座部を介し前記液体室内に流入させる流入路及び前記液体室内の前記液体を前記流出側へ流出させる流出路を前記他方の対向壁に設けてなり、
前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記他方の対向壁側への軸動に伴い連動して、前記ダイヤフラムの前記中央部を前記環状弁座部に着座させたとき、前記弁部を閉弁し、また、前記ダイヤフラム部材が、前記補助軸にて、前記駆動軸の前記一方の対向壁側への軸動に伴い連動して、前記ダイヤフラムの前記中央部にて前記環状弁座部から離れたとき、前記弁部を開弁するようになっているダイヤフラム弁。」

[相違点1]
本件発明1は、「PFA製フィルム状ダイヤフラム」が「液体室を形成するとともに前記隔壁との間に空気室を形成」し、「駆動手段」が「前記空気室に向け或いはその逆方向に向け軸動」するものであるのに対し、甲1発明の「テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている薄膜状の膜部21」は、第1室12と相俟って液体室に相当する構成を形成するものであるものの、「内側に張り出す部分(肉厚部)」との間に空気室を形成するものであるとの特定がなされておらず、「第1ピストン61」の「ロッド部(小径部)は第1ボディ41の肉厚部に嵌装されて」いるものの、その往復動(軸動)方向が空気室に向け或いはその逆方向との特定もされていない点。

[相違点2]
ダイヤフラム部のダイヤフラムと補助軸との接着に関し、本件発明1は、「レーザー溶接」されているものであるのに対し、甲1発明は、「膜部21の表面に射出成形することにより接合」するものである点。

[相違点3]
ダイヤフラム部の補助軸の隔壁の貫通穴部内への嵌装に関し、本件発明1は、「摺動可能」とされているのに対し、甲1発明は摺動可能との特定はされていない点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
甲1発明の「ダイアフラム20」は、「テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)を主原料とする第1材料m1で圧延加工により形成されている薄膜状の膜部21」と、「膜部21の中央に、PFAを主原料とする第1材料m2で膜部21の表面に射出成形することにより接合された円筒状の連結部23と」を備えるものである。
そして、甲第1号証の段落【0081】〜【0083】の記載からすれば、第1材料m1からなる膜部21の表面に第2材料m2からなる連結部23を射出成形により形成することで、膜部21に溶融状態の第2材料m2が接しても、第1材料m1により形成された膜部21は溶融せず、射出された第2材料m2により膜部21が熱せられ、膜部21の分子の移動が促進され、冷却後、両者が直接に接合するものであり、膜部21と連結部23とを両者の溶融、すなわち溶接により接着するものとはされていない。
しかも、甲第1号証の段落【0108】の「また近年、軟質のPFAが開発されたため、この軟質のPFAを第1材料m1として圧延により膜部21を形成することができる。」及び「近年、射出成形が可能な溶融状態での流動性が高いPFAが開発されたため、この溶融状態での流動性が高いPFAを第2材料m2として射出成形により連結部23を形成することができる。」との記載からすれば、甲1発明においては、射出成形が可能な溶融状態での流動性が高いPFAが開発されたという技術的背景のもとで、連結部23を膜部21に射出成形することにより形成することを特徴としているものと解される。
してみると、甲1発明において、連結部23を膜部21に射出成形することにより形成することで連結部23と膜部21を接着することに代えて、連結部23を膜部21にレーザー溶接により接着するものとする動機付けはなく、甲第2号証に、熱可塑性樹脂成形体とフィルムとの接合をレーザー溶接にてすることが記載され、甲第3号証に、溶融性の熱可塑性樹脂であるPFAと非溶融性フッ素樹脂との接合をレーザー溶接より接着することが記載され、さらに、甲第4号証に、PTFE(で形成されるハウジング)とPFA(で形成される副環状部)との接合をレーザ溶接により接着することが記載され、加えて、甲第5号証に、PFA等のフッ素樹脂からなるカバー15とPFA等のフッ素樹脂からなるケース14とをレーザ溶接により接着することが記載されているとしても(上記4(2)〜(5)を参照。)、当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。
なお、甲第6号証には、ダイヤフラム部のダイヤフラムと補助軸との接着をレーザー溶接することについては記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、ダイヤフラム部のダイヤフラムと補助軸との接着をレーザー溶接することにより、「補助軸とダイヤフラム中央部とを良好に接合連結し得る」(本件特許明細書段落【0048】)という格別な作用効果を奏するものといえる。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証〜甲第6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(3)請求項2及び4〜6に係る発明について
請求項2及び4〜6に係る発明は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定事項を付加したものである。
したがって、請求項2及び4〜6に係る発明と甲1発明との間には、少なくとも上記(2)アの相違点2が存在し、かかる相違点2は、甲第2号証〜甲第6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たものでないことは、上記(2)イで述べたとおりである。
また、甲第7号証には、ダイヤフラム部のダイヤフラムと補助軸との接着をレーザー溶接することについては記載も示唆もされていない。
よって、請求項2及び4〜6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証〜甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(4)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は特許異議申立書において、上記相違点2について、概略、次のように主張する(なお、特許異議申立人は、上記相違点2に対応するものを自身の主張の中では相違点1としている。)。
甲第2号証には、「熱可塑性樹脂成形体とフィルムを重ね合わせ、前記フィルムを介して前記熱可塑性樹脂成形体と反対側からレーザーを照射することにより、重ね合わせた面を接合することを特徴とする熱可塑性樹脂成形体とフィルムの接合方法。」という甲2技術が記載されており、また、甲第2号証の記載から甲2技術の課題は、「シート(フィルム)の表面にホットメルト接着剤を塗布した転写シート(フィルム)を金型キャビティー内にセットし型締め後、射出成形で一体化する方法は、ホットメルト接着剤の塗布や金型内へのフィルムの位置決めが煩雑であり作業性に劣るばかりか、射出成形の溶融樹脂の流動によりフィルムに皺が発生しやすい。」というものである。
そして、甲第1号証に記載の発明の、連結部23を膜部21に射出成形する場合でも、甲第2号証が示した課題である金型内への膜部21の位置決めが煩雑であり作業性が劣ること、膜部21の表面に第2材料m2(連結部23の材料)を溶融状態で射出するため膜部21に皺が発生しやすいという問題がある。
このため、甲第2号証に提示の課題に基づき、甲第1号証に記載の発明の連結部23と膜部21との溶接を「射出成形」に代えて甲2技術の「レーザー溶接」とする動機付けが存在する。
甲2技術は、熱可塑性樹脂成形体とフィルムの結合に関する技術であるが、甲第1号証に記載の発明の連結部23はPFA樹脂であるから熱可塑性樹脂であり、甲2技術のフィルムとしては特に制限がされていないことから、甲第1号証に記載の発明の膜部21を使用することができ、使用材料が共通する。
そして、甲2技術を甲第1号証に記載の発明に適用した結果、連結部23と膜部21とはレーザーにより溶接されて一体化されるため、射出成形と同じ作用、機能を奏する。
このため、使用材料が共通し、作用、機能が共通することからも、甲2技術を甲第1号証に記載の発明に適用する動機付けが存在する。
したがって、相違点1(当審の判断での「相違点2」に対応する。)に係る甲第1号証に記載の発明の構成を、甲2技術を適用して相違点1に係る本件発明1の構成とすることには動機付けが存在し、当業者には容易である(特許異議申立書第41頁第2行〜第42頁第28行)。

上記特許異議申立人の主張に対する当審の判断は次のとおりである。
特許異議申立人が甲2技術の課題と主張する上記課題は、甲第2号証が従来技術として掲げる特開平5−82943号公報をも参酌すれば、転写シートの一面に熱可塑性樹脂を射出成形しフィルムと熱可塑性樹脂とを接合し、転写シートの転写体(導電回路)を樹脂成形体(プリント基板)の一面に転写する技術に関し発生する課題、すなわち、熱可塑性樹脂からなる樹脂成形体が転写シートの面に射出成形されることから発生する課題であり、甲1発明とは技術的前提が異なるものである。
したがって、甲1発明に接した当業者が、特許異議申立人の主張する甲2技術の課題を認識し、かかる課題を解決するために甲1発明に甲2技術を適用しようとする動機付けがあるとはいえない。
しかも、上記(2)イで述べたとおり、甲1発明の膜部21と連結部23とは溶接により接着するとはされていないこと、及び、射出成形が可能な溶融状態での流動性が高いPFAが開発されたという技術的背景のもとで、膜部21に射出成形により連結部23を接着するという甲1発明が発明されたものであるということからすれば、甲1発明において、連結部23を膜部21に射出成形することにより形成することで連結部23と膜部21を接着することに代えて、甲2技術を適用し、連結部23を膜部21にレーザー溶接により接着することが当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

イ また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、上記相違点2について、概略、次のようにも主張する。
甲第3号証から甲第5号証には、「レーザー溶接」が、ダイヤフラム弁の接合、またPFA等のフッ素樹脂を用いた材料の接合に用いることが開示されており、PFA材料を用いたダイヤフラムの接合には周知技術ともいえる。このため、甲第1号証に記載の発明の(PFA製の)連結部23と(PFA製の)膜部21との接合に「レーザー溶接」を用いることは当業者において周知技術の転用にほかならず容易である(特許異議申立書第42頁第29行〜第43頁第8行)。

しかしながら、上記(2)イで述べたとおり、甲1発明の膜部21と連結部23とは溶接により接着するとはされていないこと、及び、射出成形が可能な溶融状態での流動性が高いPFAが開発されたという技術的背景のもとで、膜部21に射出成形により連結部23を接着するという甲1発明が発明されたものであるということからすれば、甲1発明において、連結部23を膜部21に射出成形することにより形成することで連結部23と膜部21を接着することに代えて、連結部23を膜部21にレーザー溶接により接着することは、周知技術の転用とはいえず、当業者にとって容易に想到し得たことであるということはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

6 むすび
上記5のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4〜6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4〜6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-06-29 
出願番号 P2018-151832
審決分類 P 1 652・ 121- Y (F16J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平瀬 知明
特許庁審判官 内田 博之
尾崎 和寛
登録日 2021-09-06 
登録番号 6940155
権利者 アドバンス電気工業株式会社
発明の名称 ダイヤフラム部材を用いるダイヤフラム弁  
代理人 間瀬 ▲けい▼一郎  
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