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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  D01F
審判 一部申し立て 2項進歩性  D01F
管理番号 1387537
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-11 
確定日 2022-07-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6948385号発明「酸化炉」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6948385号の請求項1、2、3、7、9、10に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6948385号(以下「本件特許」という。)の請求項1〜12に係る特許についての出願は、平成29年8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年8月29日ドイツ連邦共和国(DE))に国際出願され、令和3年9月22日にその特許権の設定登録がされ、令和3年10月13日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1〜3、7、9、10に係る特許に対し、令和4年4月11日に特許異議申立人東レ株式会社(以下「申立人」という。)が、特許異議の申立て(以下「本件異議申立」という。)を行った。

第2 本件発明
特許第6948385号の請求項1〜3、7、9、10の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜3、7、9、10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
繊維を酸化処理するための、特に、炭素繊維を製造するための酸化炉であって、
a)繊維(22)の通過領域(18,20)を除いて気密である内部空間(14)を備えるハウジング(12)と、
b)前記ハウジング(12)の内部空間(14)にある処理空間(28)と、
c)並列している繊維(22)を、繊維カーペット(30)として前記処理空間(28)の中を蛇行状に案内する偏向ローラ(34)と、を備え、前記繊維カーペット(30)は、対向する偏向ローラ(34)の間で平面を形成し、前記内部空間(14)の部分空間(38)が、前記平面の上と下に定められ、
d)更に、前記ハウジング(12)の吹入れ端部(44)に配置された1次吹入れ装置(46a)と、1次吸込み装置(50)と、を備え、前記処理空間(28)は、前記1次吹入れ装置(46a)と前記1次吸込み装置(50)の間に延び、1次ガスが、前記処理空間(28)の中を処理ガスが処理流れ方向(50)に流れるように、前記1次吹入れ装置(46a)によって前記部分空間(38)に吹込まれ、
e)更に、流れ密封装置(84)を備え、前記流れ密封装置(84)のために、2次ガスが、処理空間(28)から離れた方の前記1次吹入れ装置(46a)の側において、前記部分空間(38)に2次吹入れ装置(46b)によって吹込まれる、酸化炉。
【請求項2】
吹込まれた2次ガスは、一部が前記処理空間(28)の方向に流れ、一部が前記処理空間(28)から離れる方向に流れる、請求項1に記載の酸化炉。
【請求項3】
前記部分空間(38)における2次ガスの流路の圧力損失係数を調整可能である、請求項2に記載の酸化炉。
【請求項7】
1次ガスは、前記1次ガス吹入れ装置(46a)によって複数の前記部分空間(38)の各々に吹込まれ、2次ガスは、前記2次吹入れ装置(46b)によって、複数の前記部分空間(38)の各々に吹込まれる、請求項1〜6の何れか1項に記載の酸化炉。
【請求項9】
前記1次吹入れ装置(46a)は、1つ又は2つ以上の1次吹入れボックス(76)を備え、前記2次吹入れ装置(46b)は、1つ又は2つ以上の2次吹入れボックス(78)を備える、請求項1〜8の何れか1項に記載の酸化炉。
【請求項10】
複数の前記部分空間(38)のうちの同じ部分空間(38)に配置された前記1次吹入れボックス(76)及び前記2次吹入れボックス(78)は、直接隣接するように配置され、1次ガス及び2次ガスを互いに反対方向に吹込む、請求項9に記載の酸化炉。

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、次の甲第1号証から甲第3号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲3」という。)を提出し、次の申立理由1及び2を主張している。

甲第1号証:特開2002−115125号公報
甲第2号証:特表2013−519005号公報
甲第3号証:特開2008−81859号公報

1.申立理由1(甲1発明を主たる引用発明とした新規性進歩性
本件特許の請求項1、7、9に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するから、本件特許の請求項1、7、9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきである。本件特許の請求項2、3、10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、甲3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、請求項2、3、10に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきである。

2.申立理由2(甲3発明を主たる引用発明とした新規性進歩性
本件特許の請求項1、7、9に係る発明は、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当するから、本件特許の請求項1、7、9に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきである。本件特許の請求項2、3、10に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1、甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるので、請求項2、3、10に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消すべきである。

第4 甲1〜甲3の記載
1.甲1について
甲1には、次の事項が記載されている。以下、下線は、理解の便宜のため、当審が付した。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素繊維の製造に用いて好適な熱処理炉およびその熱処理炉を用いた炭素繊維の製造法に関する。」
「【0017】図1は熱処理炉を耐炎化炉として使用する場合の、簡略化して示した耐炎化炉の一例を示す概略側面構成図である。図1において、1は熱処理室2を有する耐炎化炉全体を示しており、耐炎化炉1は、糸条5を実質的に水平方向に複数回通過させる横型熱処理炉に構成されている。この耐炎化炉1内に、複数個の吹き出しノズル3と、吸い込みノズル4が配設されている。
【0018】糸条5は、各ガイドローラ6で走行方向が反転されながら、耐炎化炉1の両側に設けられた開口部7を通り、耐炎化炉1の熱処理室2内を複数回通過する。
【0019】耐炎化炉1内には、吹き出しノズル3および吸い込みノズル4を介して熱風が循環され、これらノズル3、4に熱風の循環ダクトが接続されている。熱風循環経路には、熱風循環用ファン9、加熱ヒータ8が設けられており、耐炎化炉1内の温度を一定に保つように熱風を供給することができる。」
「【0021】開口部7の開口幅H1は多糸条を一度に通すため、複数の糸条を横に並べた幅H2よりも大きくしてある。図2において、太い破線は整流するためのノズル内の案内板を示す。」
【0023】図3は図1に示した耐炎化炉に本発明を適用した場合の吹き出しノズル周辺の一例を示す詳細図(図1のB−B’矢視断面)で、図4は吹き出しノズルと圧力維持用ノズルの一例を示す斜視図である。1は耐炎化炉を示しており、吹き出しノズル3は糸条5の上下に配設される。ファン11と加熱用ヒータ12に接続された圧力維持用ノズル10は隣接する吹き出しノズル3と3の間に熱風Q1を供給できるように配設されており、温度を制御しながら熱風Q1を供給することができる。」

甲1に記載された、耐炎化炉1は、熱処理室2を備えるハウジングからなると認められる(図1−3)。
甲1に記載されたものは、多糸条を開口部7に一度に通すものであるから、上記熱処理室2内を複数回通過する糸条5は、対向するガイドローラ6の間で平面を形成すると認められる(【0017】、【0021】、図2)。また、熱処理室2は、その内部を通過する複数の糸条5を含む平面により上下が画定される部分空間を有すると認められる(図1)。
甲1には、耐炎化炉1内で、吹き出しノズル3と吸い込みノズル4により熱風が循環され、糸条5が熱風に晒されることが記載されているから、耐炎化炉1の熱処理室2には、吹き出しノズル3と吸い込みノズル4の間に延びる処理空間があり、熱風が、処理空間の中を一定方向に流れるように、吹き出しノズル3によって部分空間に吹込まれ、さらに熱処理室2は、糸条5が通る開口部7を除いて気密であると認められる(【0019】、図1)。
甲1には、ガイドローラ6により、糸条5の走行方向を反転させて、糸条5を耐炎化炉1の熱処理室2内を複数回通過させることが記載されているから、ガイドローラ6は、糸条5を処理空間の中で蛇行状に案内すると認められる(【0018】、図1)。
甲1に記載された、吹き出しノズル3、吸い込みノズル4は、それぞれ耐炎化炉1のハウジングの端部に配置されていると認められる(図1)。
甲1に記載された、熱風Q1は、隣接する吹き出しノズル3と3の間に、圧力維持用ノズル10により、吹き出しノズル3から吹き出す熱風(V1a〜e)の吹き出し方向と概略直交する方向に吹き込まれていると認められる(【0023】、図4)。

以上の記載と甲1の図1−4を総合すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

[甲1発明]
「炭素繊維を製造するための耐炎化炉1であって、
糸条5が通る開口部7を除いて気密である熱処理室2を備えるハウジングと、
ハウジングの熱処理室2にある処理空間と、
複数の糸条5を、前記処理空間の中を蛇行状に案内するガイドローラ6と、を備え、複数の糸条5は、対向するガイドローラ6の間で平面を形成し、熱処理室2の部分空間が、前記平面の上と下に画定され、
前記ハウジングの端部には、吹き出しノズル3と、吸い込みノズル4とが備えられ、前記処理空間は、前記吹き出しノズル3と前記吸い込みノズル4の間に延び、熱風が、前記処理空間の中を一定方向に流れるように、前記吹き出しノズル3によって前記部分空間に吹込まれ、
圧力維持用ノズル10を備え、熱風Q1が、隣接する吹き出しノズル3と3の間に、圧力維持用ノズル10によって、吹き出しノズル3から吹き出す熱風(V1a〜e)の吹き出し方向と概略直交する方向に吹き込まれる、耐炎化炉1」

2.甲2について
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0016】
参照番号13によって全体として示され、以下に詳細に説明された吹出装置は、プロセスチャンバー6の中央領域に配置されている。吸込装置14及び吸込装置15は、それぞれ入口領域3及び出口領域4に隣接したプロセスチャンバー6の、2つの外端領域に配置されている。」
「【0020】
それは、吹出ボックス18の2つの「積層体」を具備する。これらの各吹出ボックス18は、長手寸法が、プロセスチャンバー6の長手方向にその全幅に亘り横に延在した中空直方体の形状である。それぞれプロセスチャンバー6に面する吹出ボックス18の狭い側部は、孔あき板18aとして構成される。各吹出ボックス18のそれぞれの端面は、空気誘導チャンバー9及び空気誘導チャンバー10と連絡され、それによって、通風機20及び通風機21によって輸送された空気がそれぞれ吹出ボックス18の内部に流れ、孔あき板18aによってそこから吹き出し得る。」
「【0026】
図3は、吹出装置13の領域における空気の流れの移動を示す。対応する通風機20及び通風機21によって各吹出ボックス18の内部に流れ入る空気は、入口ボックス18の両方の狭い長手側部に設けられた孔あき板18aによって、吹出ボックス18の両方の反対側部に吹き出され得る。それによって、吹出ボックス18の2つの積層体間の空隙の領域において、空気の流れは、図3に示す対向する方向において衝突する。この衝突によって空気をそこで旋回させ、プロセスチャンバー6の対向する端部領域の方向における各2つの積層体内の互いに他方の上方に配置された吹出ボックス18間の間隙を通り、それによって対応する吸込装置14、15を通る流れを生じさせる。吹出ボックス18によって運ばれる空気のこの部分は、吹出ボックス18間に配置された経路において繊維20周りにも流れる。従ってこれらの経路は、酸化工程において有効である。従って、等しい炉の長さで、冒頭で概説した先行技術による酸化炉と比較して、炉の高さを低くすることが可能となる。これに関連する利点は既に上述した通りである。」

以上の記載と甲2の図1−3を総合すると、甲2には次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されている。

[甲2技術]
「プロセスチャンバー6の中央領域に配置される吹出装置13と、プロセスチャンバー6の外端領域に配置される吸込装置14、15を備え、吹出装置13は、2つの積層体からなる吹出ボックス18からなり、吹出ボックス18の両方の狭い長手側部に設けられた孔あき板18aによって、空気が吹出ボックス18の両方の反対側部に吹き出され、吹出ボックス18の2つの積層体間の空隙の領域において、空気の流れが衝突することで、空気が、各2つの積層体内の互いに他方の上方に配置された吹出ボックス18間の間隙を通る酸化炉」

3.甲3について
甲3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
被処理物を熱処理室内で連続的に熱処理する横型耐炎化炉において、前記熱処理室に連設されたシール室の外壁に、前記被処理物を挿入、挿出するためのスリット状の挿入口を開口形成し、前記挿入口を挟んだ上下に前記挿入口の外側でかつ被処理物に向かって空気を噴出する一対のノズルを設け、このノズルを単一の給気路に接続したことを特徴とする横型耐炎化炉。」
「【0002】
従来から、フィルム、シート、繊維など(以下、被処理物という)の長尺物の製造において、被処理物を連続的に耐炎化処理する耐炎化炉が知られている。この耐炎化炉は、炭素繊維の場合を例にすると、例えばポリアクリロニトリル系繊維からなる前駆体繊維に熱処理室内で連続的に200℃〜300℃で耐炎化する耐炎化処理を施すものである。この際、前駆体繊維の酸化反応によって熱処理炉内にシアン化合物、アンモニア、及び一酸化炭素等の分解ガスが発生する。この分解ガスは有毒であるため、回収して燃焼処理などのガス処理をする必要がある。
このような分解ガスが耐炎化炉の前駆体繊維の挿入口から炉外に漏出することを防止するために、熱処理室の挿入口に隣接してシール室を設け、更に挿入口の外側で被処理物へ向かって炉本体外の空気を吹き付けるエアーカーテン手段を設けた熱処理炉が提案されている・・・。
また、熱処理炉内の温度ムラ抑制のため、熱処理炉の挿入口にスリットを設け、スリットより炉内もしくは炉外へ加熱空気を噴出する機構を備えた耐炎化熱処理装置が提案されている・・・。
また、これらの耐炎化炉を用いた耐炎化処理においては、多量の前駆体繊維を効率良く連続的に処理するために、耐炎化炉に前駆体繊維の挿入口を複数設け、前駆体繊維を炉の外部で折り返しながら熱処理室内に連続して挿入及び挿出することを繰り返す。このため、従来から上下方向に複数のパスが設けられ、前駆体繊維が横方向に走行する横型耐炎化炉が用いられている。これらは、熱処理室内の煙突効果により熱処理室内に上方が高圧となり、下方が低圧となる圧力分布を生じる。」
「【0004】
そこで、この発明は、上記従来の横型耐炎化炉が有している課題を解決して熱処理室内への外気の流入を抑制すると共に、熱処理室内で発生した分解ガスの外部への漏出を完全に遮断することで、熱処理室内の温度を維持することができ、かつ燃焼処理が必要なガス量を削減することができる横型耐炎化炉を提供することを目的とするものである。」
「【0007】
以下、本発明の横型耐炎化炉の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)に示すように、横型耐炎化炉1は箱型の熱処理室2を備えている。熱処理室2には内部に熱風を循環させる図示しない熱風循環装置が連結されている。また、熱処理室2には排気口30が設けられている。排気口30は排気路31を介してファン14に接続されている。排気路31の途中には、例えばバルブ等の流量調節機構13が設けられている。ファン14は外部の図示しないガス回収処理装置に接続されている。
【0008】
熱処理室2の図示左右両側の外壁3,3には、シール室4,4がそれぞれ連設されている。シール室4,4の外壁5,5には被処理物、例えばポリアクリロニトリル系繊維からなる前駆体繊維Aを挿入、挿出するためのスリット状の挿入口7,7’がそれぞれ設けられている。同様に、熱処理室2の外壁3,3にもシール室4,4の挿入口7,7’に対応して挿入口6,6’が設けられている。熱処理室2の挿入口6,6’とシール室4,4の挿入口7,7’は、シール室4,4の上下方向にそれぞれ3段設けられている。
【0009】
シール室4,4の内部には、上下方向に各3段設けられた挿入口7,7’を別々の区画4a,4b,4cに分割する仕切り板12が設けられている。また、シール室4,4は排気口15,15を備え、排気路32,32を介して排気ファン17,17に接続されている。図1(b)に示すように、排気口15はシール室4,4を仕切り板12で分割した区画4a,4b,4cに各々設けられている。各排気口15に接続された排気路33には、例えばバルブ等の流量調節機構34が各々設けられている。
ここで、シール室4の前駆体繊維Aの走行方向の長さLsは繊維の性状、室内の清掃やメンテナンス作業性等を考慮して適宜決定される。
【0010】
シール室4,4の外壁5,5には、挿入口7,7’を挟むように上下に一対のノズル10a,10bを備えたエアーカーテン手段8がそれぞれ設けられている。ノズル10a、10bは、圧力印加の点で好ましい支持部9の前端コーナー部分に取り付けられている。
図1(b)に示すように、エアーカーテン手段8の上下のノズル10a,10bは単一の給気路35に接続され、給気路35には、例えばバルブ等の流量調節機構21が設けられている。各流量調節機構21はさらに共通給気路37を介して給気ファン24に接続されている。
図2に示すように、シール室4,4の外壁5,5の挿入口7,7’の上下に配置されたノズル10a,10bは、挿入口7,7’から外側に向かい、挿入口7,7’から挿入、挿出される前駆体繊維Aに向けて配置された2枚の板材により両板材間に形成されるもので、前駆体繊維Aに対して角度θを持つように配置されている。このとき、角度θは、0°より大きく90°より小さい範囲とする。さらに、30°以上60°以下の範囲とすることがより好ましい。ここで、対向するノズル10a、10bの間隔Dnは、4mm以上60mm以下の範囲とする。さらに、15mm以上40mm以下の範囲であることがより好ましい。」
「【0014】
次に、この実施の形態の作用について説明する。
図1(a)に示すように、複数の前駆体繊維Aが紙面に垂直方向に平行に揃えられた状態で耐炎化炉1の図示左側のシール室4の最上段の挿入口7から挿入される。次いで、前駆体繊維Aは熱処理室2の外壁3の挿入口6を通過し、熱処理室2の対抗する外壁3の挿入口6’から挿出される。さらに、前駆体繊維Aは熱処理室2に連接されたシール室4の外壁5の挿入口7’を通過して耐炎化炉1の外部に挿出される。耐炎化炉1の外部に挿出された前駆対繊維Aはシール室4の外部のロール11に巻き掛けられるようにして折り返され、挿出された挿入口7’の一つ下の挿入口7’から、再び耐炎化炉1内部に挿入される。
【0015】
再び耐炎化炉1内部に挿入された前駆体繊維Aは、逆向きに同様の経路を経て耐炎化炉1の外部に挿出され、耐炎化炉1外部のロール11に再び巻き掛けられ折り返される。このように、前駆体繊維Aはロール11によって耐炎化炉1の外部で繰り返し折り返されながら、耐炎化炉1に繰り返し挿入、挿出され、蛇行するようにして耐炎化炉1の内部を通過する。このとき、前駆体繊維Aにはロール11の回転とロール11表面の摩擦によって動力が与えられ、図1(a)の矢印X方向に連続的に送り出されている。」

甲3において、熱処理室2の排気口30は、熱処理室2内の気体を適切に排出するものであり、熱処理室2は、好ましくない熱処理室2内のガスの漏出及び外気の吸い込みの可能性がある前駆体繊維Aが通る挿入口6、6’を除いて、気密であると認められる(【0003】、【0007】、【0008】、図1)。
ハウジングとは一般に「機械装置などを囲む箱形の覆い。」(広辞苑第六版)であるものを意味することを踏まえると、甲3に記載された、横型耐炎化炉1は、箱形の熱処理室2を備えるものであるから、甲3には、熱処理室2を備えるハウジングが記載されていると認められる(【0007】、【0008】、図1)。
甲3には、熱処理室2内の空間で、熱風循環装置により熱風が循環され、前駆体繊維Aが熱風に晒されることの記載があるから、熱処理室2には熱風が循環する処理空間があると認められる(【0007】、図1)。
甲3には、対向するローラ11の間で、複数の前駆体繊維Aを含む平面を形成するように図示されている(【0014】、図1)。また、熱処理室2は、前駆体繊維Aが形成する当該平面により上下が画定される部分空間を有すると認められる。(【0015】、図1)

以上の記載と甲3の図1、2を総合すると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されている。

[甲3発明]
「繊維を酸化処理するための、特に、炭素繊維を製造するための横型耐炎化炉1であって、
繊維が通る挿入口6、6’を除いて気密である熱処理室2を備えるハウジングと、
前記ハウジングの熱処理室2にある処理空間と、
並列している繊維を、複数の前駆体繊維Aとして前記処理空間の中を蛇行状に案内するロール11と、を備え、前記複数の前駆体繊維Aは、対向するロール11の間で平面を形成し、前記熱処理室2の部分空間が、前記平面の上と下に定められ、
熱風循環装置を備え、熱風が、処理空間の中を流れ方向に流れるように、熱風循環装置によって吹き込まれ、
エアーカーテン手段8を備え、エアーカーテン手段8のために、空気が、熱処理室2の左右両側の外壁3、3’に連接されたシール室4、4の挿入口7、7’の外側において、ノズル10a、10bにより噴出される、耐炎化炉1。」

第5 当審の判断
以下、本件特許の請求項1、2等に係る発明を、以下それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」等という。
1.申立理由1について(甲1発明を主たる引用発明とした新規性進歩性
(1)本件発明1について
ア.対比
甲1発明の「耐炎化炉1」は、本件発明1の「酸化炉」に相当し、以下同様に、「糸条5」は「繊維」に、「開口部7」は「通過領域(18,20)」に、「熱処理室2」は「内部空間」に、「複数の糸条5」は「繊維カーペット」に、「ガイドローラ6」は「偏向ローラ(34)」に、「吹き出しノズル3」は「1次吹入れ装置(46a)」に、「吸い込みノズル4」は「1次吸込み装置(50)」に、「熱風」は「1次ガス」に、「圧力維持用ノズル10」は「流れ密封装置(84)」及び「2次吹入れ装置(46b)」にそれぞれ相当する。
甲1発明の「熱風Q1」と本件発明1の「2次ガス」とは、2次ガスが、1次吹入れ装置の側において、2次吹入れ装置によって吹込まれるという限りで一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。

[一致点1]
「繊維を酸化処理するための、特に、炭素繊維を製造するための酸化炉であって、
a)繊維の通過領域を除いて気密である内部空間を備えるハウジングと、
b)前記ハウジングの内部空間にある処理空間と、
c)並列している繊維を、繊維カーペットとして前記処理空間の中を蛇行状に案内する偏向ローラと、を備え、前記繊維カーペットは、対向する偏向ローラの間で平面を形成し、前記内部空間の部分空間が、前記平面の上と下に定められ、
d)更に、前記ハウジングの吹入れ端部に配置された1次吹入れ装置と、1次吸込み装置と、を備え、前記処理空間は、前記1次吹入れ装置と前記1次吸込み装置の間に延び、1次ガスが、前記処理空間の中を処理ガスが処理流れ方向に流れるように、前記1次吹入れ装置によって前記部分空間に吹込まれ、
e)更に、流れ密封装置を備え、前記流れ密封装置のために、2次ガスが、前記1次吹入れ装置の側において、2次吹入れ装置によって吹込まれる、酸化炉。」

[相違点1]
2次ガスが、前記1次吹入れ装置の側において、2次吹入れ装置によって吹込まれる点に関し、本件発明1は、「2次ガスが、処理空間(28)から離れた方の前記1次吹入れ装置(46a)の側において、前記部分空間(38)に2次吹入れ装置(46b)によって吹込まれる」のに対して、甲1発明は、熱風Q1は、隣接する吹き出しノズル3と3の間に、圧力維持用ノズル10により、吹き出しノズル3から吹き出す熱風(V1a〜e)の吹き出し方向と概略直交する方向に吹き込まれる点。

イ.新規性について
(ア)判断
相違点1について検討する。
2次ガス(熱風Q1)の処理空間への吹き込みに関し、本件発明1が1次吹入れ装置の処理空間から離れた方の側から吹き込むのに対して、甲1発明は、吹き出しノズル3と3の間の空間に向かって処理する糸と直交する方向に吹き込むから、吹き込み位置や吹き込み方向で相違し、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
したがって、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。

(イ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、
「甲第1号証の[0024]には「圧力維持用ノズル10からの熱風Q1の供給量は、隣接する吹き出しノズル3と3の間の圧力pと処理室外圧力poutとが、p≧poutの関係になるように設定されている。」と記載されている。
ここで、p≧poutの関係から、上記の図Aのように、1次ガスが炉内側、2次ガスが炉外側に流れることになり、これは2次ガスが、処理空間(28)から離れた方の前記1次吹入れ装置(46a)の側において、前記部分空間(38)に2次吹入れ装置(46b)によって吹込まれることになるため、甲第1号証には構成要件Iが記載されているといえる」(特許異議申立書15ページ9行目〜18行目)と、主張している。
そこで当該主張について検討する。
上記(ア)で述べたように、本件発明1と甲1発明とは、2次ガス(熱風Q1)の処理空間への吹き込みに関し、吹き込み位置や、吹き込み方向で相違し、申立人が主張するように、甲1発明の熱風Q1が、一部、炉外側に流れることがあったとしても、本件発明1とはその吹き込み位置や、吹き込み方向が同じではないから、発揮する作用・効果も同じにはならず、上記申立人の主張は採用できない。
したがって、申立人の前記主張には理由がない。

ウ.進歩性について
本件発明1は、申立理由1のうち進歩性違反の対象となっている発明ではないが、申立理由1のうち進歩性違反の対象となっている本件発明2、3、10は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものであるから、まず、本件発明1の進歩性について検討する。
(ア)判断
相違点1について検討する。
甲2技術は、吹出装置13をプロセスチャンバー6の中央領域に配置することを前提とした技術である。甲2の【0026】には、「図3は、吹出装置13の領域における空気の流れの移動を示す。対応する通風機20及び通風機21によって各吹出ボックス18の内部に流れ入る空気は、入口ボックス18の両方の狭い長手側部に設けられた孔あき板18aによって、吹出ボックス18の両方の反対側部に吹き出され得る。それによって、吹出ボックス18の2つの積層体間の空隙の領域において、空気の流れは、図3に示す対向する方向において衝突する。この衝突によって空気をそこで旋回させ、プロセスチャンバー6の対向する端部領域の方向における各2つの積層体内の互いに他方の上方に配置された吹出ボックス18間の間隙を通り、それによって対応する吸込装置14、15を通る流れを生じさせる。吹出ボックス18によって運ばれる空気のこの部分は、吹出ボックス18間に配置された経路において繊維20周りにも流れる。従ってこれらの経路は、酸化工程において有効である。従って、等しい炉の長さで、冒頭で概説した先行技術による酸化炉と比較して、炉の高さを低くすることが可能となる。これに関連する利点は既に上述した通りである。」と記載されている通り、甲2技術は、吹出ボックス18間に配置された経路において繊維20周りに空気を流し、これらの経路を酸化工程において有効とし、炉の高さを低くすることを目的としている。
甲1発明は、吹き出しノズル3が熱処理室2の中央領域に配置する耐炎化炉ではない。また、甲1の【0005】には、「吹き出しノズル3は熱処理炉1の側部から熱処理室内に延び、この吹き出しノズル3側の被処理物を出し入れする開口部7では、吹き出しノズル3から吹き出す熱風(V1aからe)によるサクション効果により、隣接する吹き出しノズルとノズルとの間の圧力pと処理室外圧力poutの関係がp<poutとなり、常温の外気(V2)が熱処理室内に流入する。」、【0006】には、「流入した外気は被処理物通過経路の上下に配置された吹き出しノズルから熱を奪い、熱処理室内に流入する。」、【0009】には、「本発明の課題は、上記のような問題に着目し、熱処理炉内の雰囲気温度を均一に保ち、安定した熱処理を行える状況を維持できる熱処理炉、特に炭素繊維製造用に好適な熱処理炉、およびそれを用いた炭素繊維の製造法を提供することにある。」と記載されており、甲1発明は、熱処理室内の雰囲気温度を均一にするために、外気の流入を防ぐことを課題としている。
甲1発明と甲2技術は、炉の前提となる構成が異なっており、かつ技術課題も相違するから、甲1発明の吹き出しノズル3に、甲2技術の吹出装置13の構成を適用する動機付けがない。
また、甲3発明は、「空気が、熱処理室2の左右両側の外壁3、3’に連接されたシール室4、4の挿入口7、7’の外側において、エアーカーテン手段8のノズル10a、10bにより、吹き込まれる」ものであり、空気が、熱処理室2内の部分空間に吹込まれるものではない。そのため、甲1発明の圧力維持用ノズル10に、甲3発明のノズル10a、10bを適用したとしても、依然として、熱風Q1が、熱処理室2内の部分空間に吹込まれるものではないため、本件発明1と相違するものとなる。
そうすると、本件発明1は、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

(イ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「甲第1号証と甲第2号証とは被処理物(炭素繊維)の酸化をより進行させ、結果として製品品質を向上させるという最終的な目的・効果は同一であるといえる。」(特許異議申立書23ページ下から1行目〜24ページ2行目)、「甲第3号証の最終的な目的・効果も甲第1号証と甲第2号証と共通している。」(特許異議申立書24ページ下から7行目〜下から6行目)と主張するが、前述のとおり、甲1発明に、甲2技術を適用する動機付けはなく、かつ、甲1発明に甲3発明を適用したとしても、依然として、本件発明1と相違するものとなる。
したがって、申立人の前記主張には理由がない。

(2)本件発明7、9について
本件発明7、9は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を付加し限定したものである。
よって、上記(1)イ.(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明7、9は、甲1発明ではない。

(3)本件発明2、3、10について
本件発明2、3、10は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を付加し限定したものである。
よって、上記(1)ウ.(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、3、10は、甲1発明及び甲2、3に記載された事項に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

2.申立理由2について(甲3発明を主たる引用発明とした新規性進歩性
(1)本件発明1について
ア.対比
甲3発明の「横型耐炎化炉」は、本件発明1の「酸化炉」に相当し、以下同様に、「挿入口6、6’」は「通過領域(18,20)」に、「熱処理室2」は「内部空間」に、「複数の前駆体繊維A」は「繊維カーペット」に、「ロール11」は「偏向ローラ(34)」に、「熱風」は「1次ガス」に、「エアーカーテン手段8」は「流れ密封装置(84)」に、「ノズル10a、10b」は「2次吹入れ装置(46b)」に、「空気」は「2次ガス」に、「熱処理室2の左右両側の外壁3、3’に連接されたシール室4、4の挿入口7、7’の外側」は「処理空間(28)から離れた方」にそれぞれ相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、次の一致点2で一致し、相違点2〜3で相違する。

[一致点2]
「繊維を酸化処理するための、特に、炭素繊維を製造するための酸化炉であって、
a)繊維の通過領域を除いて気密である内部空間を備えるハウジングと、
b)前記ハウジングの内部空間にある処理空間と、
c)並列している繊維を、繊維カーペットとして前記処理空間の中を蛇行状に案内する偏向ローラと、を備え、前記繊維カーペットは、対向する偏向ローラの間で平面を形成し、前記内部空間の部分空間が、前記平面の上と下に定められ、
e)更に、流れ密封装置を備え、前記流れ密封装置のために、2次ガスが、処理空間から離れた方において、2次吹入れ装置によって吹込まれる、酸化炉。」

[相違点2]
本件発明1は、「前記ハウジング(12)の吹入れ端部(44)に配置された1次吹入れ装置(46a)と、1次吸込み装置(50)と、を備え、前記処理空間(28)は、前記1次吹入れ装置(46a)と前記1次吸込み装置(50)の間に延び、1次ガスが、前記処理空間(28)の中を処理ガスが処理流れ方向(50)に流れるように、前記1次吹入れ装置(46a)によって前記部分空間(38)に吹込まれ」るのに対して、甲3発明は、熱風循環装置を構成する具体的な部材が特定されておらず、そのため、処理空間をどの範囲に規定するのか、どの部材によりどのように熱風を吹込むのかが特定されていない点

[相違点3]
本件発明1は、「2次ガスが、処理空間(28)から離れた方の前記1次吹入れ装置(46a)の側において、前記部分空間(38)に2次吹入れ装置(46b)によって吹込まれる」のに対して、甲3発明は、空気が、熱処理室2の左右両側の外壁3、3’に連接されたシール室4、4の挿入口7、7’の外側において、エアーカーテン手段8のノズル10a、10bにより吹き込まれ、部分空間に吹込まれるものではなく、熱風循環装置の特定の部材の側に吹き込まれることが明記されていない点。

イ.新規性について
(ア)判断
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
相違点3は2次ガスを吹込む態様についての相違点であるから、形式的な相違点ではなく、実質的な相違点である。
したがって、相違点3は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明ではない。

(イ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、
「また、甲第3号証の[請求項1]には「前記被処理物を挿入、挿出するためのスリット状の挿入口を開口形成し、前記挿入口を挟んだ上下に前記挿入口の外側でかつ被処理物に向かって空気を噴出する一対のノズルを設け、・・・」と記載されており、ノズル(符号10a)により繊維の挿入口から外向きにエアーを供給している。
したがって、甲第3号証には構成要件Iが記載されているといえる。」(特許異議申立書15ページ19行目〜25行目)と主張する。
そこで当該主張について検討する。
申立人が主張するように、エアーカーテン手段8のノズル10a、10bにより、空気が、挿入口7、7’の外側(処理空間から離れた方)の方向に吹込むが、熱処理室2内の部分空間に吹込まれるものではなく、熱風循環装置の特定の部材の側に吹き込まれることは特定されていない。
したがって、申立人の前記主張には理由がない。

ウ.進歩性について
本件発明1は、申立理由2のうち進歩性違反の対象となっている発明ではないが、申立理由2のうち進歩性違反の対象となっている本件発明2、3、10は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものであるから、まず、本件発明1の進歩性について検討する。
(ア)判断
相違点3について検討する。
甲1発明は、「熱風Q1は、隣接する吹き出しノズル3と3の間に、圧力維持用ノズル10により、吹き出しノズル3から吹き出す熱風(V1a〜e)の吹き出し方向と概略直交する方向に吹き込まれ」るものであり、本件発明1と吹き込み位置や吹き込み方向が相違しており、甲3発明のノズル10a、10bに、甲1発明の圧力維持用ノズル10を適用したとしても、吹き込み位置や吹き込み方向が相違することになり、本件発明1と相違するものとなる。
甲2技術は、1.ウ.(ア)で示したとおり、吹出装置13をプロセスチャンバー6の中央領域に配置することを前提として、吹出ボックス18間に配置された経路において繊維20周りに空気を流し、これらの経路を酸化工程において有効とし、炉の高さを低くすることを目的としている。
甲3の【0004】には、「そこで、この発明は、上記従来の横型耐炎化炉が有している課題を解決して熱処理室内への外気の流入を抑制すると共に、熱処理室内で発生した分解ガスの外部への漏出を完全に遮断することで、熱処理室内の温度を維持することができ、かつ燃焼処理が必要なガス量を削減することができる横型耐炎化炉を提供することを目的とするものである。」と記載されている。
甲3発明は、熱風循環装置を構成する具体的な部材が特定されておらず、甲3発明と甲2技術は、前提とする技術が異なっており、かつ技術課題も相違するから、甲3発明のノズル10a、10bに、甲2技術の吹出装置13の構成を適用する動機付けがない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲1、2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

(イ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、「甲第3号証の最終的な目的・効果も甲第1号証と甲第2号証と共通している。」(特許異議申立書24ページ下から7行目〜下から6行目)と主張するが、前述のとおり、甲3発明に、甲2技術を適用する動機付けはなく、かつ、甲3発明に甲1発明を適用したとしても、依然として、本件発明1と相違するものとなる。
したがって、申立人の前記主張には理由がない。

(2)本件発明7、9について
本件発明7、9は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を付加し限定したものである。
よって、上記(1)イ(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明7、9は、甲3発明ではない。

(3)本件発明2、3、10について
本件発明2、3、10は、本件発明1に対して、さらに技術的事項を付加し限定したものである。
よって、上記(1)ウ(ア)に示した理由と同様の理由により、本件発明2、3、10は、甲3発明及び甲1、2に記載された事項に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものではない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1、2、3、7、9、10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、2、3、7、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-07-19 
出願番号 P2019-512687
審決分類 P 1 652・ 121- Y (D01F)
P 1 652・ 113- Y (D01F)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 石田 智樹
井上 茂夫
登録日 2021-09-22 
登録番号 6948385
権利者 アイゼンマン ソシエタス ユーロピア
発明の名称 酸化炉  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 ▲吉▼田 和彦  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 深田 孝徳  
代理人 山本 泰史  
代理人 鈴木 博子  
代理人 須田 洋之  
代理人 渡邊 徹  
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