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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  D06B
管理番号 1387540
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-14 
確定日 2022-08-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6960744号発明「カーペットの連続染色機、カーペットの連続染色機用遮蔽板、及びカーペットの連続染色方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6960744号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6960744号の請求項1、2、4、5に係る特許についての出願は、平成29年2月15日を出願日とする出願であって、令和3年10月14日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月5日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年4月14日に特許異議申立人トーア紡マテリアル株式会社(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第6960744号の請求項1、2、4、5に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて、「本件発明」と総称することもある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2、4、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
カーペットの生機を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口と生機の間に配置された遮蔽板と、
前記遮蔽板の下方において前記遮蔽板と生機の間に配置された誘導板と、を有し、
前記遮蔽板が、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板外へと導く遮蔽部と、を有し、
前記遮蔽板の通過部を通過した染色剤が前記誘導板の表面上を伝って前記生機へと導かれる、カーペットの連続染色機。
【請求項2】
前記遮蔽板及び複数の吐出口の少なくとも一方を、前記生機の幅方向、前記生機の搬送方向、及び前記生機の幅方向に対して傾斜した方向から選ばれる少なくとも1つの方向に移動させるスライド装置をさらに有する、請求項1に記載のカーペット連続染色機。」
「【請求項4】
カーペットの生機を搬送する搬送工程と、
前記生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する染色工程と、を有し、
前記染色工程において、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を誘導板へと導いた後、前記染色剤を前記誘導板の表面を伝わせて前記生機へ導き、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板の上方に配置された遮蔽板の表面を伝わせて前記誘導板外へと導く、カーペットの連続染色方法。
【請求項5】
前記染色剤が、第1染色剤と、前記第1染色剤とは異なる色彩の第2染色剤と、を含み、前記第1染色剤と第2染色剤が、別個の吐出口からそれぞれ吐出される、請求項4に記載のカーペット連続染色方法。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下に示す甲第1号証〜甲第3号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1、2、4、5に係る特許は、甲1に記載された発明、甲2、甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨を主張している。

[引用文献等一覧]
甲1:特許第5952952号公報
甲2:特開昭50−59580号公報
甲3:特公昭47−8197号公報

第4 当審の判断
1 引用文献の記載された事項・発明
(1) 甲1には、次の事項が記載されている(なお、下線は、参考のため当審が付与したものである。)。
ア.「【請求項1】
連続染色機を用いて長尺状のタフトカーペット原反を長手方向に走行させながら、タフトカーペット原反に染液を付与してタフトカーペット原反を染色するタフトカーペットの連続染色方法であって、連続染色機が、互いに独立した染液供給経路Aと染液供給経路Bを持つ染液供給アプリケーターを備え、染液供給経路A及び染液供給経路Bの各々が、開閉手段の開閉により染液の放出の実行及び停止を行なうことができるノズルを複数有し、ノズルから放出された染液がプレートを介してタフトカーペット原反上に均一に流れるように付与されること、染液供給経路Aと染液供給経路Bのノズルを互い違いの順番にかつ染液供給経路Aと染液供給経路Bのノズルをともに幅方向に一直線に並列し、開閉手段の開閉の制御により染液供給経路Aのノズルの少なくとも一つと染液供給経路Bのノズルの少なくとも一つを開放すること、及び染液供給経路Aと染液供給経路Bの各々に対して互いに色相又は濃度が異なる染液を同時に供給し、開放されたノズルからこれらの染液を放出し、色相又は濃度が異なる染液がプレート上に落下した後にプレート上で互いに幅方向から接触して混合する部分を作ってからタフトカーペット原反にこれらの染液を付与して染色することを特徴とする方法。」
イ.「【請求項4】
長尺状のタフトカーペット原反を長手方向に走行させながら、タフトカーペット原反に染液を付与してタフトカーペット原反を染色するタフトカーペットの連続染色機であって、連続染色機が、互いに独立した染液供給経路Aと染液供給経路Bを持つ染液供給アプリケーターを備え、染液供給経路A及び染液供給経路Bの各々が、開閉手段の開閉により染液の放出の実行及び停止を行なうことができるノズルを複数有し、ノズルから放出された染液がプレートを介してタフトカーペット原反上に均一に流れるように付与されるように構成されていること、染液供給経路Aと染液供給経路Bのノズルが互い違いの順番にかつ染液供給経路Aと染液供給経路Bのノズルをともに幅方向に一直線に並列されることができ、そのときに開閉手段の開閉の制御により染液供給経路Aのノズルの任意の少なくとも一つと染液供給経路Bのノズルの任意の少なくとも一つを開放できるように構成されていること、及び染液供給経路Aと染液供給経路Bの各々に対して互いに色相又は濃度が異なる染液を同時に供給し、開放されたノズルからこれらの染液を放出し、色相又は濃度が異なる染液がプレート上に落下した後にプレート上で互いに幅方向から接触して混合する部分を作ってからタフトカーペット原反にこれらの染液を付与して染色できるように構成されていることを特徴とする連続染色機。」
ウ.「【0004】
タフトカーペットは、タフト機を使用して製造される。タフト機では、幅方向に針を等間隔で並べ、これらの針を使用してパイル糸を基布に打ち込む。針の間隔はゲージと呼ばれ、例えば1/10ゲージ(G)のタフト機は、幅方向1インチ間に10本の針があり、4m幅で約1600本の針がある。針1本に対して糸1本を通し、一定速度で送られる基布に糸を打ち込み、パイルを形成し、無着色のタフトカーペットの原反を作成する。原反作成後は、染色工程に供される。」
エ.「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の連続染色法の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、従来の連続染色法を改良して、タフトカーペット原反に対して様々なグラデーションや複数色の混合等による柄表現の染色を容易に実現することができる連続染色方法及び連続染色機を提供することにある。」
オ.「【0013】
図1は、タフトカーペットの連続染色機による連続染色工程の概略図である。図1において、1は、原反供給部であり、巻回されたタフトカーペット原反のロールを連続的に繰り出して供給する。2は、ジェットバルカーであり、そこで必要により原糸の捲縮を出したり、汚れの除去を行なう。3は、染液供給アプリケーター部であり、そこでタフトカーペット原反に染液を付与して染色する。染液は、予め貯蔵タンクで調液し、原反の染色前に染液供給アプリケーター部に予め送り、原反が染液供給アプリケーター部を通過する前に染液を流せるようにする。4は、スチーマーであり、タフトカーペット原反に付与された染液を高温で固着する。5は、ウォッシャーであり、残留している染液を洗浄して除去する。6は、乾燥部であり、水分を完全に除去する。7は、検査及びロールアップ部であり、主に外観検査とロール巻きを行なう。染液の色の切り替えや規格の違う原反の切り替えは、原反と原反の間に誘導布を繋ぎ、連続的な染色ができるようにしている。本発明は、上述の連続染色機による連続染色工程において染液供給アプリケーター部3に関して改良を行なったことに特徴があり、それ以外の連続染色機の工程は、従来公知のものをそのまま選択して採用することができる。
【0014】
本発明において使用されるタフトカーペット原反としては、従来公知のものが適宜使用されることができ、例えば幅1.8?4.1mの合成繊維の基布にパイル長4?30mm、パイル目付250?1300g/m2でナイロン、ウールなどの素材のパイル糸をタフティングしたものが使用される。染液としては、従来公知のものが適宜使用され、例えば酸性染料、カチオン染料、分散染料が使用され、均染剤、沈殿防止剤、pH調整剤、消泡剤等が適宜添加される。
【0015】
次に、連続染色機の染液供給アプリケーター部の側面方向から見た概略図を図2に示す。また、染液供給アプリケーター部の背面方向及び正面方向から見た概略図をそれぞれ図3及び図4に示す。図2〜4において、8は、タフトカーペット原反であり、9,10は、それぞれ染液供給経路A、染液供給経路Bであり、互いに独立した経路を構成する。染液供給経路A及び染液供給経路Bは、それぞれ染液11及び12を供給され、それぞれポンプ13及び14によってこれらの染液を送り、二重構造配管部15,16で幅方向に均一に流してから各ノズル19,20に染液11及び12を供給する。ポンプの流量は、染色する原反の規格により設定され、染色中は一定である。流量は、原反目付×ピックアップ×原反幅×原反速度で設定される。各ノズル19,20の直前にはそれぞれ電磁弁又はピンチコックなどの開閉手段17,18が設けられており、この開閉手段の開閉制御によりノズル19,20が開閉し、ノズルからの染液の放出の実行及び停止を行なうことができる。ノズル19,20の配置は、図5に示す正面図のように幅方向に多数存在しており、従来は、カーペット原反染色幅部分(カーペット原反走行部分)の上方のノズルのみが染液を放出し、両側の染色しない端部分は開閉手段でノズルが閉鎖され、閉鎖されたノズルからは染液が流れないようになっている。ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになっている。
【0016】
従来の方法は、図2、図4に示すように、染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させてノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定されている。この設定では、染液供給経路Aに供給された染液11のみがノズル19から放出され、単調な単一の色相しかカーペット原反に付与されない。また、従来の染色では、染液供給経路の一方、例えば経路Aのみを使用してノズル19からの染液のみでカーペット原反を染色している間に、次に染色する染液を他方の染液供給経路Bに流す準備を行ない、染液供給経路Aからの染色が終了するとノズル19を後方に退避させる代わりに染液供給経路Bのノズル20をプレート21上に移動させて染液供給経路Aと染液供給経路Bを素早く切り替えるようになっている。従って、従来の染色では、染液供給経路A及び染液供給経路Bのノズル19,20が同時に染色のために使用されることはなく、ノズル19,20が互い違いに幅方向に一直線に並列されることはない。」
カ.「【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


以上の、甲1の記載事項、特に、廃液溝22を有する図2に示された、従来の連続染色機(【0013】〜【0016】、図2〜4)に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1装置発明」という。)が記載されているものと認められる。

「巻回されたタフトカーペット原反のロールを連続的に繰り出して供給する原反供給部と、
タフトカーペット原反に染液を付与して染色する染液供給アプリケーター部と、
を備え、
染液供給アプリケーター部では、染液供給経路A及び染液供給経路Bが、それぞれ染液11及び12を供給し、それぞれ、ポンプ13及び14によってこれらの染液を送り、二重構造配管部15,16で幅方向に均一に流して各ノズル19,20に染液11及び12を供給し、各ノズル19,20の直前にはそれぞれ電磁弁の開閉手段17,18が設けられ、この開閉手段の開閉制御によりノズル19,20が開閉し、ノズルからの染液の放出の実行及び停止を行なうことができ、
ノズル19,20の配置は、幅方向に多数存在しており、タフトカーペット原反染色幅部分(タフトカーペット原反走行部分)の上方のノズルのみが染液を放出し、ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになっていて、
染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば染液供給経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させ、ノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定され、液供給経路Aに供給された染液のみがノズル19から放出され、
例えば染液供給経路Aのみを使用してノズル19からの染液のみでタフトカーペット原反を染色している間に、次に染色する染液を他方の染液供給経路Bに流す準備を行ない、染液供給経路Aからの染色が終了するとノズル19を後方に退避させ、代わりに染液供給経路Bのノズル20をプレート21上に移動させ、染液供給経路Aと染液供給経路Bを切り替えるようになっている、タフトカーペットの連続染色機。」

また、甲1の上記記載事項、特に、廃液溝22を有する図2に示された、従来の連続染色機(【0013】〜【0016】、図2〜4)による染色する工程に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されているものと認められる。

「原反供給部から巻回されたタフトカーペット原反のロールを連続的に繰り出して供給する工程と、
染液供給アプリケーター部により、タフトカーペット原反に染液を付与して染色する工程と、
を備え、
染色する工程では、染液供給経路A及び染液供給経路Bが、それぞれ染液11及び12を供給し、それぞれ、ポンプ13及び14によってこれらの染液を送り、二重構造配管部15,16で幅方向に均一に流して各ノズル19,20に染液11及び12を供給し、各ノズル19,20の直前にはそれぞれ電磁弁の開閉手段17,18が設けられ、この開閉手段の開閉制御によりノズル19,20が開閉し、ノズルからの染液の放出の実行及び停止を行なうことができ、
ノズル19,20の配置は、幅方向に多数存在しており、タフトカーペット原反染色幅部分(タフトカーペット原反走行部分)の上方のノズルのみが染液を放出し、ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになっていて、
染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば染液供給経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させ、ノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定され、液供給経路Aに供給された染液11のみがノズル19から放出され、
例えば染液供給経路Aのみを使用してノズル19からの染液のみでタフトカーペット原反を染色している間に、次に染色する染液を他方の染液供給経路Bに流す準備を行ない、染液供給経路Aからの染色が終了するとノズル19を後方に退避させ、代わりに染液供給経路Bのノズル20をプレート21上に移動させ、染液供給経路Aと染液供給経路Bを切り替えるようになっている、タフトカーペットの連続染色方法。」

(2) 甲2には、次の事項が記載されている。
ア.「2.特許請求の範囲
刷毛ロールの表面に染料液を付着させて回転させ、その表面の一部に抵抗体を接触させて刷毛ロールの毛羽の反撥力を利用して染料液を被染物に飛散付着させるに際し、刷毛ロールと被染物との中間にスリットを有する飛沫制御板を一定の仰角を有するようにして設け、染料液の飛沫を該スリットを経て被染物に飛散付着させ、その後染料固着を行うことを特徴とする不規則模様染色法。」
イ.「不規則な変化に富む模様染植物を得ることを特徴とした不規則模様染色法である。」(449ページ右欄第5〜6行)
ウ.「染料液2の飛沫2'は、刷毛ロール1と被染物8の中間に一定の仰角を有するようにして設けられたスリットを有する飛沫制御板7のスリットを経て被染物8に飛散付着するが、染料液からの飛沫2'がスリットを通過する際、飛沫量が多いと一部はスリット間に皮膜を形成し被染物に付着せず、該皮膜は制御板7に与えられた傾斜により流下し元の染料液2と合体するので、これによつて飛沫量の制御が可能となる。」(第450ページ右上欄14行〜左下欄3行)
エ.「制御板の設備仰角は20〜50°が適当である。」(450ページ左下欄16行)
オ.「本発明におけるスリットを有する飛沫制御板は、前述したその作用機作から明らかなように、刷毛ロールと抵抗体を組合わせた飛沫発生装置のみでなく、例えばスプレーの如き噴霧装置より得られる飛沫の制御にも応用することが可能である。」(450ページ右下欄8〜13行)
カ.「



(3) 甲3には、次の事項が記載されている。
ア.「移動する糸条面上に左右に往復運動(以下トラバースと称す)せしむる染液噴射装置の描く軌跡に従つて生ず可き連続的模様を別に左右に往復運動せしむる遮断装置の軌跡によつて適宜遮断せしめ、両者の組合せによつて自然に断続的模様として糸条面に形成せしむる如くすることを特徴とする絣模様の自動的形成法である。」(1ページ左欄35行〜右欄4行)
イ.「第1図はその基本的態様を示すもので、トラバースする横梁1に取り付けた噴液孔3より染液Bを糸条面Aに向かつて噴射せしむると同時に別にトラバースする横梁2に設けた遮断装置5に依り、染液Bの糸条面Aへの到達を適宜阻止した状態(左)と通液孔4を通過して染液が糸条面Aへ到達した状態(右)のそれぞれを示す。」(1ページ右欄5〜11行)
ウ.「両横梁1,2に多彩なトラバース運動を実施せしめ、更に噴液孔3通液孔4の取り付け条件を種々に変更せしめて、糸条面A上に描かしむる軌跡X、Y線の形状を変化させることに依り、その交点を糸条面Aの全面に渉つて所要の位置に随時設定し得るのである。」(1ページ右欄26〜31行)
エ.「糸条を前置ローラー14に依り平面状に配列し矢印の方向に向かつて進行せしめ、上方より染液Bをトラバースする横梁1の噴射孔3に依り糸状面に向つて噴射せしむると同時に別個トラバースする横梁2に設けた遮断装置5に依り通液孔3以外の位置で染液Bが糸状面に到達する事を阻止する如くしたものである。」(2ページ左欄5〜12行)

2 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1装置発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1装置発明の「タフトカーペット」は本件発明1の「カーペット」に、以下同様に、「プレート21」は「誘導板」に、「染液」及び「染液11及び12」は「染色剤」に、「ノズル」及び「ノズル19,20」は「吐出口」に、「連続染色機」は「連続染色機」に、それぞれ相当する。
甲1装置発明の「染液を付与して染色」される「タフトカーペット原反」は、本件発明1の「生機」に相当する。そうすると、甲1装置発明の「巻回されたタフトカーペット原反のロールを連続的に繰り出して供給する原反供給部」は、本件発明1の「カーペットの生機を搬送する搬送装置」に相当し、また、甲1装置発明は、本件発明1の「前記搬送装置によって搬送される生機」の態様を備えるものである。
甲1装置発明の「開閉手段の開閉制御によりノズル19,20が開閉し、ノズルからの染液の放出の実行及び停止を行なうことができ、ノズル19,20の配置は、幅方向に多数存在し」ていることは、幅方向が、原反の幅方向であることは明らかであり、本件発明1の「生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口」を備える態様に相当する。
甲1装置発明の「ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになってい」る態様は、プレート21が生機の上に配置されていて、染液を誘導する板といえ、本件発明1の「前記遮蔽板の下方において前記遮蔽板と生機の間に配置された誘導板」と、「生機の上に配置された誘導板」との限りで一致する。また、甲1装置発明の「ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与される」態様は、本件発明1の「染色剤が前記誘導板の表面上を伝って前記生機へと導かれる」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1装置発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点1]
「カーペットの生機を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送される生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口と、
生機の上に配置された誘導板と、を有し、
染色剤が前記誘導板の表面上を伝って前記生機へと導かれる、カーペットの連続染色機。」
[相違点1]
生機の上に配置された誘導板について、本件発明1は、「複数の吐出口と生機の間に配置された遮蔽板」を有して、「前記遮蔽板の下方において前記遮蔽板と生機の間に配置された誘導板」とされているのに対して、甲1装置発明は、遮蔽板に相当するものは有していない点。
[相違点2]
染色剤が前記誘導板の表面上を伝って生機へと導かれることについて、本件発明1は、「前記遮蔽板が、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板へと通過させる通過部と、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板外へと導く遮蔽部と、を有し、前記遮蔽板の通過部を通過した染色剤」が生機へと導かれるとされているのに対して、甲1装置発明は、「ノズルから放出された染液」が生機へと導かれ、「染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば染液供給経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させ、ノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定され」ている点。
(2) 相違点についての判断
上記相違点1及び相違点2は、遮蔽板が関与し、相互に関連するものであるから、以下に纏めて検討する。
上記一致点1における「前記搬送装置によって搬送される生機の幅方向に配置され且つ染色剤を吐出する複数の吐出口と、生機の上に配置された誘導板」を備えることに関して、甲1装置発明は、「ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになってい」るものである。
そうすると、甲1装置発明は、電磁弁の開閉手段17,18により、ノズルから染液の放出の実行及び停止を行い得るものであり、さらに、染液を放出しないノズル、すなわち、使用されないノズルについては、プレート21上から退避させ、廃液溝22上に設定されるものである。
以上を踏まえると、甲1装置発明には、プレート21に染液を吐出するノズルを選択するに際して、それぞれ電磁弁の開閉手段により吐出するノズルを選択しているので、遮蔽板などの別途の手段を設ける必要性はなく、他に、甲1に、遮蔽板などの別途の手段を設けることについて、記載や示唆するところはない。
また、甲2は、「染料液2の飛沫2'は、刷毛ロール1と被染物8の中間に一定の仰角を有するようにして設けられたスリットを有する飛沫制御板7のスリットを経て被染物8に飛散付着する」ものであって、「刷毛ロールと抵抗体を組合わせた飛沫発生装置のみでなく、例えばスプレーの如き噴霧装置より得られる飛沫の制御にも応用することが可能である。」と記載はあるものの、甲2のものは、染料液の飛沫や、スプレーによる噴霧により、染液を被染物に付着させるもので、甲1装置発明のノズルからプレートに染液を放出し、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになっているものとは、染液付与の基本的構成が異なるものであるから、甲1装置発明に、甲2に記載されたスリットを有する飛沫制御板を適用する動機付けはないといえる。
さらに、甲3に記載されたものは、「移動する糸条面上に左右に往復運動(以下トラバースと称す)せしむる染液噴射装置の描く軌跡に従つて生ず可き連続的模様を別に左右に往復運動せしむる遮断装置の軌跡によつて適宜遮断せしめ、両者の組合せによつて自然に断続的模様として糸条面に形成せし」め、「更に噴液孔3通液孔4の取り付け条件を種々に変更せしめて、糸条面A上に描かしむる軌跡X、Y線の形状を変化させることに依り、その交点を糸条面Aの全面に渉つて所要の位置に随時設定し得る」もので、往復運動する染液噴霧装置と遮断装置を備えるものである。他方、甲1装置発明は、「ノズル19,20の配置は、幅方向に多数存在しており、タフトカーペット原反染色幅部分(タフトカーペット原反走行部分)の上方のノズルのみが染液を放出し、ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになってい」るもので、甲3に記載されたものとは、染液付与の基本的構成が異なるから、甲3の往復運動する染液噴霧装置と遮断装置のうち、遮断装置に着目して、甲1装置発明に適用する動機付けはないといえる。
以上のとおりであるから、甲1装置発明において、甲2に記載されたスリットを有する飛沫制御板、甲3に記載された遮蔽装置を適用する動機付けはなく、本件発明1は、当業者であっても甲1装置発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明2は、甲1装置発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4 本件発明4について
(1) 対比
本件発明4と甲1方法発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
甲1方法発明の「タフトカーペット」は本件発明4の「カーペット」に、以下同様に、「プレート21」は「誘導板」に、「染液」及び「染液11及び12」は「染色剤」に、「ノズル」及び「ノズル19,20」は「吐出口」に、「連続染色方法」は「連続染色方法」に、それぞれ相当する。甲1方法発明の「染液を付与して染色」される「タフトカーペット原反」は、本件発明4の「生機」に相当する。そうすると、甲1方法発明の「原反供給部から巻回されたタフトカーペット原反のロールを連続的に繰り出して供給する工程」は、本件発明4の「カーペットの生機を搬送する搬送工程」に相当する。
甲1方法発明の「開閉手段の開閉制御によりノズル19,20が開閉し、ノズルからの染液の放出の実行及び停止を行なうことができ、ノズル19,20の配置は、幅方向に多数存在し」ていることは、幅方向が、原反の幅方向であることは明らかであり、本件発明4の「前記生機の幅方向に配置された複数の吐出口」を備える態様に相当する。また、甲1方法発明の「タフトカーペット原反に染液を付与して染色する工程」は、本件発明4の「複数の吐出口から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する染色工程」に相当する。
甲1方法発明の「ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになってい」る態様は、プレート21が染液を誘導する板といえ、本件発明4の「前記染色工程において、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を誘導板へと導いた後、前記染色剤を前記誘導板の表面を伝わせて前記生機へ導き」く態様に相当する。
甲1方法発明の「使用されない経路Bのノズル20」は、本件発明4の「前記幾つかの吐出口以外の吐出口」に相当し、そうすると、甲1方法発明の「染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば染液供給経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させ、ノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定され」ることと、本件発明4の「前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板の上方に配置された遮蔽板の表面を伝わせて前記誘導板外へと導く」こととは、「前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板外へと導く」との限りで一致する。
そうすると、本件発明4と甲1方法発明とは、次の点で一致し、相違する。
[一致点2]
「カーペットの生機を搬送する搬送工程と、前記生機の幅方向に配置された複数の吐出口から染色剤を吐出し、その染色剤によって前記生機を染色する染色工程と、を有し、前記染色工程において、前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を誘導板へと導いた後、前記染色剤を前記誘導板の表面を伝わせて前記生機へ導き、前記幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を前記誘導板外へと導く、カーペットの連続染色方法。」
[相違点3]
幾つかの吐出口以外の吐出口から吐出された染色剤を誘導板外へと導くことについて、本件発明4は、染色剤を「誘導板の上方に配置された遮蔽板の表面を伝わせて前記誘導板外へと導く」のに対して、甲1方法発明は、遮蔽板に相当するものは有しておらず、「染液供給経路A,Bのうち使用される経路、例えば染液供給経路Aのノズル19のみをプレート21上に移動させ、使用されない経路Bのノズル20は、プレート21上から後方に退避させ、ノズル20の先端が廃液溝22上にあるように設定され」ている点。
(2) 相違点3についての判断
上記一致点2における、「前記複数の吐出口のうち幾つかの吐出口から吐出された染色剤を誘導板へと導いた後、前記染色剤を前記誘導板の表面を伝わせて前記生機へ導」くことに関して、甲1方法発明は、「ノズルから放出された染液は、プレート21上に落ち、そこで均一な流れを形成してタフトカーペット原反の上に付与されるようになってい」るものである。
そうすると、甲1方法発明は、電磁弁の開閉手段17,18により、ノズルから染液の放出の実行及び停止を行い得るものであり、さらに、染液を放出しないノズル、すなわち、使用されないノズルについては、プレート21上から退避させ、廃液溝22上に設定されるものである。
以上を踏まえると、甲1方法発明には、プレート21に染液を吐出するノズルを選択するに際して、それぞれ電磁弁の開閉手段により吐出するノズルを選択しているので、遮蔽板などの別途の手段を設ける必要性はなく、他に、甲1に、遮蔽板などの別途の手段を設けることについて、記載や示唆するところはない。また、上記相違点1及び2の判断で述べたと同様に、甲2に記載されたスリットを有する飛沫制御板及び甲3に記載された遮蔽装置を、甲1方法発明に適用することの動機付けはない。
以上のとおりであるから、甲1方法発明において、甲2に記載されたスリットを有する飛沫制御板、甲3に記載された遮蔽装置を適用する動機付けはなく、本件発明4は、当業者であっても甲1方法発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

5 本件発明5について
本件発明5は、本件発明4の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記4で検討したのと同じ理由により、本件発明5は、甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2、4、5に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、2、4、5に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-07-27 
出願番号 P2017-026127
審決分類 P 1 652・ 121- Y (D06B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 藤原 直欣
特許庁審判官 山崎 勝司
稲葉 大紀
登録日 2021-10-14 
登録番号 6960744
権利者 東リ株式会社
発明の名称 カーペットの連続染色機、カーペットの連続染色機用遮蔽板、及びカーペットの連続染色方法  
代理人 弁理士法人G−chemical  
代理人 特許業務法人まこと国際特許事務所  
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