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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01W |
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管理番号 | 1387786 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-10 |
確定日 | 2022-08-10 |
事件の表示 | 特願2019− 40947「車載センサを用いて気象状態を検出する方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月27日出願公開、特開2019−105648〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)4月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月11日、同月30日、同年5月7日、米国)を国際出願日として出願した特願2016−507580号の一部を平成29年8月2日に新たな特許出願とした特願2017−149815号の一部をさらに平成31年3月6日に新たな特許出願としたものであって、令和2年1月8日付けで拒絶理由が通知され、同年3月27日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月12日付けで拒絶査定されたのに対し、同年12月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされ、その後、当審より令和3年10月8日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1〜11に係る発明は、令和3年12月22日に提出された手続補正書により補正(以下「本件補正」という。)された特許請求の範囲の請求項1〜11に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 車両の環境について収集された、複数のレーザーデータ点を含むレーザーデータを受け取ることと、 コンピュータ装置により、前記複数のレーザーデータ点のうちのレーザーデータ点を前記環境内の1又はそれ以上の物体に関連付けることであって、前記1又はそれ以上の物体は予め定められた追跡対象の物体であることと、 前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定することと、 前記判定に基づいて、前記コンピュータ装置によって前記環境の状態の指標を識別することであって、前記状態は、車道の濡れ、霧、又は太陽光を含むことと、 を含み、 前記環境の前記状態の前記指標を識別することは、前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しない前記所与のレーザーデータ点の数が閾値数を上回ることを判定することを含むことを特徴とする方法。」 第3 当審の拒絶理由通知書の概要 当審が通知した令和3年10月8日付け拒絶理由通知の理由の概要は、次のとおりのものである。 1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 理由1(明確性)について ・請求項1〜10 (1)(略) (2)本件補正前の請求項1の「車両の環境について収集された、複数のレーザーデータ点」において、「前記複数のレーザーデータ点のうちのレーザーデータ点を前記環境内の1又はそれ以上の物体に関連付ける」、「前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定する」と特定されているが、 ・「物体に関連付ける」「レーザーデータ点」、 ・「物体に関連しないことを判定する」「レーザーデータ点」 における「物体」とは、どのような物のことを特定しているのか明確でない。一般に、「物体」とはものとして認識される対象物であるところ、本件補正前の請求項1における「物体」とは、その状態(固体、液体、気体)で区別しているのか、大きさなどで区別しているのか不明である。「物体」が不明確である以上、「物体に関連付ける」「レーザーデータ点」と「物体に関連しないことを判定する」「レーザーデータ点」との区別が明確でない。 本願明細書を参照すると、本件補正前の請求項1における「物体」とは「車両、歩行者、道路標識、交通信号、トラフィックコーンなど」であり、「水滴などの粒子状物質」は「物体」とはしていないと解されるが、例えば、道路の水たまり、砂利、空気中の塵など、「車両、歩行者、道路標識、交通信号、トラフィックコーンなど」でもない、「水滴などの粒状物質」ともいえないものは、「物体」として扱うのかどうか明確でないことから、本願明細書を参照しても、本件補正前の請求項1における「物体」の意味する物を明確に定義づけることはできない。 理由2(実施可能要件)について ・請求項1〜10 (1)レーザーデータ点の区別について 本件補正前の請求項1の「車両の環境について収集された、複数のレーザーデータ点」において、「前記複数のレーザーデータ点のうちのレーザーデータ点を前記環境内の1又はそれ以上の物体に関連付け」「前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定する」ことについて、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 (2)気象状態(車道の濡れ、霧、又は太陽光)の指標の識別について 仮に(1)で指摘した「前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定する」ことができるとしても、本件補正前の請求項1の「気象状態は、車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む」「前記気象状態の前記指標を識別するステップは、前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しない前記所与のレーザーデータ点の数が閾値数を上回ることを判定する」ことで行うことについて、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 第4 本願明細書の記載 1 まず、レーザーデータ点とは、本願明細書(下線は当審において付与した。以下同様。)に、 「【0084】 一例として、車両は、車両の周囲、周辺、前方、背後、側部又は近位の、或いは車両に関する領域を照明し、その反射光を検出するユニットを有することができる。LIDARは、動作時に回転して(例えば、周期的に)レーザービームを放出する。その後、環境内の物体による放出されたレーザービームからの反射が好適なセンサによって受け取られる。反射信号の受け取りにタイムスタンプ処理を行うことにより、(受け取られた場合には)各反射信号を直近に放出されたレーザーパルスに関連付け、レーザーパルスの放出と反射光の受け取りとの間の時間遅延を測定することができる。この時間遅延を、介在する大気内における光の速度に従ってスケーリングすることにより、反射した特徴までの距離の推定値が得られる。各反射信号の距離情報を、それぞれのパルス放出のためのLIDAR装置の配向と組み合わせることにより、反射した特徴の位置を3次元で特定することができる。例示を目的として、x−y平面内に存在する一連の点に対する位置を推定するLIDAR装置の1回の掃引に関連して、環境シーンを2次元x−y平面で記述することができる。しかしながら、次のシーン掃引時にレーザービームをx−y平面から上又は下に導くようにビームステアリング素子を調整することにより、或いは点位置サンプリング専用のさらなるレーザー及び関連するビームステアリング素子をx−y平面の上方及び下方の平面内に設けることにより、或いはこれらの組み合わせにより、より完全な3次元サンプリングが実現される。 【0085】 ブロック304において、方法300は、コンピュータ装置により、複数のレーザーデータ点のうちの、環境内の1又はそれ以上の物体に関連するレーザーデータ点を判定するステップを含む。一例として、追跡システムを用いて物体を追跡し、追跡した物体に関連するレーザーデータ点を判定することができる。」 と記載されているように、放出されたレーザービームが、環境内の物体により反射された反射信号であり、その反射信号から、物体の3次元の位置を特定できるものである。 2 そして、本願明細書には、車道の濡れ、霧、太陽光の各々のレーザーデータ点について、以下のように記載されている。 (1)車道の濡れについて 「【0096】 再び図3を参照すると、ブロック306において、方法300は、環境内の1又はそれ以上の物体に関連しないレーザーデータ点に基づいて、コンピュータ装置により、車両が走行する路面が濡れている指標を識別するステップを含む。1つの例では、レーザーデータが、路面上の水の存在に関連することができ、水は、車両の追跡システムによって追跡されないアイテムである。しかしながら、収集されたレーザーデータ点は、水に起因する可能性がある。例えば、路面上の水、又は車両から跳ね上げられた水では、水滴などの粒子から光パルスが反射されるので、光学的に反射性のある特徴を検出して位置を特定するLIDAR装置にとっては、これらの水は反射雲に類似する。従って、あらゆる未追跡の受信レーザーデータ(例えば、追跡物体に一致しないレーザーデータ)について、車道が濡れている可能性がある指標を特定することができる。 【0097】 これに加えて(又はこれとは別に)、ブロック306において、方法300は、環境内の1又はそれ以上の物体に関連しないレーザーデータ点の数が所定の閾値を超えていると判定し、コンピュータ装置により、車両が走行する路面が濡れている指標を識別するステップを含むことができる。例えば、物体に関連しないレーザーデータ点がわずかである場合には、あらゆる数の要因が考えられるが、特定の閾値数のレーザーデータ点については、放出されたレーザービームが水によって反射されたものである高い可能性が存在する。」 (2)霧について 「【0146】 1つの例では、レーザーデータが、空気中の水の存在、又は霧に典型的な曇天条件に関連する場合があり、このような水滴又は雲は、車両の追跡システムによって追跡されないアイテムである。例えば、光学的に反射した特徴を検出して位置を特定するLIDAR装置にとって、空気中の水滴又は空気中の雲の特徴は、粒子状物質から光パルスが反射されるという理由で物体群に類似する。LIDAR装置は、霧を貫通できないことがあり、従って霧の存在時には、霧のために多くのレーザー点が戻ってくることがある。従って、あらゆる未追跡の受信レーザーデータ(例えば、追跡物体に一致しないレーザーデータ)について、車両の環境の気象状態が霧を含む指標を判定することができる。 【0147】 これに加えて(又はこれとは別に)、ブロック806において、方法800は、環境内の1又はそれ以上の物体に関連しないレーザーデータ点の数が所定の閾値を超えていると判定し、コンピュータ装置により、車両の環境の気象状態が霧を含む指標を識別するステップを含むことができる。例えば、物体に関連しないレーザーデータ点がわずかである場合には、(例えば、疑似反射レーザーなどの)あらゆる数の要因が考えられるが、特定の閾値数のレーザーデータ点については、放出されたレーザービームが空気中の水滴によって反射されたものである高い可能性が存在する。」 (3)太陽光について 「【0193】 ブロック1210において、方法1200は、コンピュータ装置により、車両の環境の気象状態が晴れである指標を識別するステップを含む。例えば、LIDAR装置は、レーザーを用いてターゲットを照明した後に反射を分析し、反射性ターゲットからの日光の反射がLIDAR装置を飽和させ、或いは無効の又は精度の低い測定値を生成することがある。光学的に反射性のある特徴を検出して位置を特定するLIDAR装置には、直射日光に起因するレーザーアーチファクトが生じることがある。日光は、レーザー波長と重なり合うことができ、LIDAR装置は日光を受け取り、この日光を、アーチファクトを生じる戻りレーザーとして解釈することができる。従って、あらゆる未追跡の受信レーザーデータ(例えば、追跡物体に一致しないレーザーデータ)について、車両の環境の気象状態が晴れである指標を判定することができる。 【0194】 これに加えて(又はこれとは別に)、ブロック1206において、方法1200は、環境内の1又はそれ以上の物体に関連しないレーザーデータ点の数が所定の閾値を超えていると判定し、コンピュータ装置により、車両の環境の気象状態が晴れである指標を識別するステップを含むことができる。例えば、物体に関連しないレーザーデータ点がわずかである場合には、(例えば、疑似反射レーザーなどの)あらゆる数の要因が考えられるが、特定の閾値数のレーザーデータ点については、これらが受け取られた日光に起因するものであるという高い可能性が存在し得る。」 第5 当審の判断 事案に鑑み、上記第3の理由2(2)について検討する。 検討にあたり、まず上記第3の理由1(2)で指摘した「物体」、上記第3の理由2(1)で指摘した「レーザーデータ点の区別」について確認する。 1 物体、レーザーデータ点の区別について 上記第3の理由2(2)で記載したように、「物体」は、本件補正により「前記複数のレーザーデータ点のうちのレーザーデータ点を前記環境内の1又はそれ以上の物体に関連付けることであって、前記1又はそれ以上の物体は予め定められた追跡対象の物体である」とされたことから、「予め定められた追跡対象」のものが「物体」と特定された。 そして、「物体」が「予め定められた追跡対象」のものと特定され、上記第4で摘記した本願明細書の【0085】の「ブロック304において、方法300は、コンピュータ装置により、複数のレーザーデータ点のうちの、環境内の1又はそれ以上の物体に関連するレーザーデータ点を判定するステップを含む。一例として、追跡システムを用いて物体を追跡し、追跡した物体に関連するレーザーデータ点を判定することができる。」との記載を参照すると、「予め定められた追跡対象の物体」を追跡システムによって追跡し、その追跡した物体に関連するレーザーデータ点を「物体に関連付け」、「物体に関連しないことを判定する」レーザーデータ点については、「予め定められた追跡対象の物体」に関連するものではなく、追跡システムによって追跡しないものについてのレーザーデータ点ということで、レーザーデータ点の区別を行っているものと理解される。 2 理由2(2)について (1)車道の濡れ、霧、又は太陽光の指標の識別について 本願発明の「前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定することと、前記判定に基づいて」、「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む」「前記環境の状態の指標を識別することであって」「前記環境の前記状態の前記指標を識別することは、前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しない前記所与のレーザーデータ点の数が閾値数を上回ることを判定すること」については、本願明細書では、上記第4で摘記したとおり、車道の濡れについて「路面が濡れている指標を識別する」、霧について「霧を含む指標を識別する」、太陽光について「晴れである指標を判定する」というように、車道の濡れ、霧、太陽光の各々の指標について記載されている。 しかし、車道の濡れについて「特定の閾値数のレーザーデータ点については、放出されたレーザービームが水によって反射されたものである高い可能性が存在する。」、霧について「特定の閾値数のレーザーデータ点については、放出されたレーザービームが空気中の水滴によって反射されたものである高い可能性が存在する。」、太陽光について「特定の閾値数のレーザーデータ点については、これらが受け取られた日光に起因するものであるという高い可能性が存在し得る。」と記載されているのみであり、レーザーデータ点の「特定の閾値数」について、車道の濡れ、霧及び太陽光の各々において指標として識別するために、具体的に、どのような数の違いとして表れてくるのか記載されておらず、また、このような閾値数が本願の優先日時に周知であったともいえない。 そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が、車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む状態の各々の指標の識別を「環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しない所与のレーザーデータ点の数が閾値数を上回る」ことによって「判定」することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (2)追跡対象物体と環境状態の指標との識別 上記(1)で述べたとおり、本願明細書では、車道の濡れについて「路面が濡れている指標を識別する」、霧について「霧を含む指標を識別する」、太陽光について「晴れである指標を判定する」というように、車道の濡れ、霧、太陽光の各々の指標を区別して記載されていることから、本願発明において、「前記環境の前記状態の前記指標を識別すること」とは、レーザーデータ点の「特定の閾値数」に着目して、車道の濡れ、霧及び太陽光の各状態の各々の指標を識別することと解するのが相当であるが、異なる解釈として、レーザーデータ点の「特定の閾値数」に着目して、「予め定められた追跡対象の物体」と「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む」「前記環境の状態の指標を識別する」こと、すなわち、「予め定められた追跡対象の物体」であるか、あるいは当該物体に関連しないもの(「車道の濡れ、霧、又は太陽光」)であるかを「レーザーデータ点の数が閾値数を上回る」ことによって「判定」すると解した場合についても検討しておく。 上記1で述べたとおり、レーザーデータ点を「物体に関連付ける」、「物体に関連しないことを判定する」ことについて、前者は「予め定められた追跡対象の物体」を追跡システムによって追跡し、その追跡した物体に関連するレーザーデータ点を「物体に関連付け」、後者は「物体に関連しないことを判定する」レーザーデータ点を、「予め定められた追跡対象の物体」に関連するものではなく、追跡システムによって追跡しないものについてのレーザーデータ点とするいうことで、レーザーデータ点の区別を行っていると理解されるところであるが、「予め定められた追跡対象の物体」と「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む前記環境の状態の指標」とを識別することを「レーザーデータ点の数が閾値数を上回る」ことによって「判定」することについて、本願明細書には記載されておらず、どのようにして実現されているか明らかではない。 また、一般に追跡システムとは、対象物体について空間的な点群(LIDARの場合であればレーザーデータ点群)を得て、その点群をトラッキングすることにより対象物体を追跡するシステムのことであり、「予め定められた追跡対象の物体」と、それ以外のもの、すなわち「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む前記環境の状態の指標」とを識別することは、そもそも行われていることであり、「レーザーデータ点の数が閾値数を上回る」ことによって「判定」して「識別する」ものではないから、当業者が一般的に用いる常套手段などともいえない。 そうすると、上記のように「予め定められた追跡対象の物体」と「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む前記環境の状態の指標」とを「識別する」ことを「レーザーデータ点の数が閾値数を上回る」ことによって「判定」すると解釈したとしても、そのような事項について、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 (3)小括 よって、本願発明の「前記複数のレーザーデータ点のうちの所与のレーザーデータ点が前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しないことを判定することと、前記判定に基づいて」、「車道の濡れ、霧、又は太陽光を含む」「前記環境の状態の指標を識別することであって」「前記環境の前記状態の前記指標を識別することは、前記環境内の前記1又はそれ以上の物体に関連しない前記所与のレーザーデータ点の数が閾値数を上回ることを判定すること」について、発明の詳細な説明は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。 3 請求人の主張について (1)請求人は、令和3年12月22日に提出の意見書で、 「本願は、「特定の閾値数」に基づいて環境の状態の指標を識別することを特徴とするものであり、そして、「特定の閾値数」の具体的な値については、環境の状態の指標の識別に関する例示的記載のある本願明細書に接した当業者であれば、本願の構成を実施する際に適宜設定すべきものであると思料いたします。 したがって、本願は、実施可能要件を満たすものと思料いたします。」と主張している。 (2)請求人の主張に対する判断 上記請求人の主張は、具体的な技術的な説明ではなく、上記2で述べた当審の判断を何ら左右するものではないから、請求人の主張によって当審の判断は変わらない。 4 まとめ よって、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 第6 むすび 以上のことから、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないことから、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 井上 博之 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-03-14 |
結審通知日 | 2022-03-15 |
審決日 | 2022-03-28 |
出願番号 | P2019-040947 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WZ
(G01W)
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最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 車載センサを用いて気象状態を検出する方法及びシステム |
代理人 | 佐藤 睦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |