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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  B60N
審判 一部無効 1項2号公然実施  B60N
審判 一部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60N
審判 一部無効 1項3号刊行物記載  B60N
管理番号 1387804
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-06-16 
確定日 2022-05-25 
訂正明細書 true 
事件の表示 上記当事者間の特許第6293881号発明「安全チャイルドシート」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 令和2年12月16日付け訂正請求において、特許第6293881号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−18〕について訂正することを認める。 特許第6293881号の請求項1、7、11、12、14、15、17に係る発明についての特許を無効とする。 特許第6293881号の請求項3〜6、10、13、16、18に係る発明についての特許の審判の請求は成り立たない。 特許第6293881号の請求項2、8、9に係る発明についての特許の本件審判の請求を却下する。 審判費用は,その18分の11を請求人の負担とし,18分の7を被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6293881号(以下、「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月16日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その請求項1〜18に係る発明について平成30年2月23日に特許権の設定登録がされたものである。
そして、本件無効審判に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和 2年 6月16日付け 審判請求書、証拠説明書、甲第1〜12号証 提出
令和 2年12月16日付け 審判事件答弁書、訂正請求書
令和 3年 2月18日付け 審理事項通知書
令和 3年 3月19日付け 口頭審理陳述要領書、証拠説明書(請求人)
令和 3年 3月19日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
令和 3年 3月29日付け 上申書(被請求人)
令和 3年 3月30日付け 上申書(請求人)、甲第13、14号証提出
令和 3年 3月30日 口頭審理
令和 3年 6月29日付け 審決の予告

第2 訂正の適否
1 訂正事項
被請求人が求めている訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、令和2年12月16日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲の請求項1〜18のとおり訂正することであり、訂正事項は以下のとおりである。なお、下線部が訂正箇所である。

(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1を以下の訂正事項1−1、1−2のとおり訂正する(請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3〜7、10〜18も同様に訂正する)。
ア 訂正事項1−1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「少なくも一部」と記載されているのを、訂正後に「少なくとも一部」に訂正する。

イ 訂正事項1−2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「構成されていること、」との記載に続き、
「衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、
衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること、
ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えていること、」との事項を付加する。

(2)訂正事項2(請求項2に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3(請求項4に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項2または3記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項3記載」に訂正する(請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5〜7、10〜18も同様に訂正する)。

(4)訂正事項4(請求項5に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「請求項1ないし4のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3、4のいずれか1項記載」に訂正する(請求項5を直接又は間接的に引用する請求項6、7、10〜18も同様に訂正する)。

(5)訂正事項5(請求項7に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7を以下の訂正事項5−1 〜 5−3のとおり訂正する(請求項7を直接又は間接的に引用する請求項10〜18も同様に訂正する)。
ア 訂正事項5−1
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1ないし6のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし6のいずれか1項記載」に訂正する。

イ 訂正事項5−2
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

ウ 訂正事項5−3
訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「支持されている」と記載されているのを、訂正後に「支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す」に訂正する。

(6)訂正事項6(請求項8に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(7)訂正事項7(請求項9に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

(8)訂正事項8(請求項10に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項10を以下の訂正事項8−1、8−2のとおり訂正する(請求項10を直接又は間接的に引用する請求項11〜18も同様に訂正する)。
ア 訂正事項8−1
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に「請求項8または9記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7のいずれか1項記載」に訂正する。

イ 訂正事項8−2
訂正前の特許請求の範囲の請求項10に「衝撃力を吸収する」と記載されているのを、訂正後に「衝撃力を吸収し、衝撃要素(8)は、上部(8a)と基部(8b)を備えており、上部(8a)は基部(8b)の上部に備えられており、上部(8a)は基部(8b)より径方向に幅広であり、衝撃要素(8)がハウジング要素(7)内に完全に後退すると、上部(8a)の外端部がアウタシェル(2)上に位置する」に訂正する。

(9)訂正事項9(請求項11に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項1ないし10のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10のいずれか1項記載」に訂正する(請求項11を直接又は間接的に引用する請求項12〜18も同様に訂正する)。

(10)訂正事項10(請求項12に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項12に「請求項1ないし11のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10、11のいずれか1項記載」に訂正する(請求項12を直接又は間接的に引用する請求項13〜18も同様に訂正する)。

(11)訂正事項11(請求項13に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項13に「請求項1ないし12のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10ないし12のいずれか1項記載」に訂正する(請求項13を直接又は間接的に引用する請求項14〜18も同様に訂正する)。

(12)訂正事項12(請求項14に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項14に「請求項1ないし13のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10ないし13のいずれか1項記載」に訂正する(請求項14を直接又は間接的に引用する請求項15〜18も同様に訂正する)。

(13)訂正事項13(請求項15に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項15に「請求項1、2、及び5ないし14のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、5ないし7、10ないし14のいずれか1項記載」に訂正する(請求項15を引用する請求項16〜18も同様に訂正する)。

(14)訂正事項14(請求項17に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項17に「請求項1ないし16のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10ないし16のいずれか1項記載」に訂正する(請求項17を引用する請求項18も同様に訂正する)。

(15)訂正事項15(請求項18に係る訂正)
訂正前の特許請求の範囲の請求項18に「請求項1ないし17のいずれか1項記載」と記載されているのを、訂正後に「請求項1、3ないし7、10ないし17のいずれか1項記載」に訂正する。

(16)訂正事項16(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0006】に「従属請求項2〜18」と記載されているのを、訂正後に「従属請求項3〜7、10〜18」に訂正する。

(17)訂正事項17(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0007】に「少なくも一部」と記載されているのを、訂正後に「少なくとも一部」に訂正する。

(18)訂正事項18(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0014】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(19)訂正事項19(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0033】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(20)訂正事項20(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0036】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(21)訂正事項21(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0037】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(22)訂正事項22(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0039】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(23)訂正事項23(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0041】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(24)訂正事項24(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0048】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

(25)訂正事項25(明細書の訂正)
訂正前の明細書の段落【0051】に「固定軸受」と記載されているのを、訂正後に「固定支承」に訂正する。

また、訂正事項1〜15が請求の範囲の訂正であり、訂正事項16〜25が明細書の訂正であり、そのいずれもが、一群の請求項〔1〜18〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1(請求項1に係る訂正)について
ア 訂正事項1−1について
訂正事項1−1による訂正は、訂正前の請求項1に「少なくも一部」と記載されているのを、訂正後に「少なくとも一部」に訂正するものであって、誤記の訂正を目的とするものである。
したがって、訂正事項1−1による訂正は、誤記の訂正を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項1−2について
訂正事項1−2による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「衝撃要素(8)」及び「ハウジング要素」について、訂正前の請求項8の「衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能である」との記載、訂正前の請求項9の「衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されている」との記載、及び訂正前の請求項2の「ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えている」との記載を根拠に「衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること、ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えていること、」を限定するものである。
したがって、訂正事項1−2による訂正は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、さらに、本件明細書とともに本件特許請求の範囲及び図面を併せて「本件明細書等」という。)に記載された事項の範囲内において限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2(請求項2に係る訂正)、訂正事項6(請求項8に係る訂正)、及び訂正事項7(請求項9に係る訂正)について
訂正事項2、6、及び7の訂正は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3(請求項4に係る訂正)及び訂正事項4(請求項5に係る訂正)について
訂正事項3、4は、訂正前の請求項4、5について、訂正事項2により請求項2が削除されたことに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項5(請求項7に係る訂正)について
ア 訂正事項5−1について
訂正事項5−1は、訂正前の請求項7について、訂正事項2により請求項2が削除されたことに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項5−2について
訂正事項5−2は、後述する請求人が主張する無効理由3(実施可能要件)及び無効理由4(明確性要件)に係る記載不備を解消するための訂正であって、「固定軸受」とは、機械工学的には、固定された軸受であり、その軸受内部で回転運動又は往復運動をする軸の荷重を支える機構を意味するものであるが、そのような機構を有する「固定軸受」について、本件明細書等には記載がなく、「固定軸受」の構成が明瞭とはいえなかったところ、「固定軸受」を「固定支承」と訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
この訂正の根拠としては、本件明細書の段落【0014】の「本発明の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素は、固定軸受で支持されることが好ましい。この固定軸受は、衝撃力が安全チャイルドシートの構造的に安定した部分に導かれるのを許す。」との記載(下線は当審が付与。以下同様。)、また、同段落【0036】の「衝撃要素8が動作位置(または図3の中間位置)に位置しているとき、衝撃要素8に矢印20方向に作用する力は、衝撃要素8の上部8aから、基部8bと雄ねじ8cを介して、ハウジング要素7の雌ねじ7aへ伝達される。この力は、雌ねじ7aがハウジング要素7の圧縮可能な側壁10の上端近傍に位置しているので、雌ねじ7aから圧縮可能な側壁10へ伝達される。この力はさらに、圧縮可能な側壁10から底部領域101を通して固定軸受12に最後に伝達される。」との記載から、ハウジング要素7に作用する衝撃力が、該ハウジング要素7の底部領域101を通して固定軸受12に最後に伝達され、安全チャイルドシートの構造的に安定した部分に導かれるものであって、固定軸受12は、ハウジング要素7と安全チャイルドシートの構造的に安定した部分との間にあって、ハウジング要素7を安全チャイルドシートの構造的に安定した部分に支承する固定支承として機能することが理解できるから、訂正事項5−2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項5−3について
訂正事項5−3は、訂正事項5−2で訂正された「固定支承で支持されており、」について、上記本件明細書の段落【0014】及び段落【0036】の記載を根拠にして「固定支承で支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す」と限定するものである。
したがって、訂正事項5−3による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項8(請求項10に係る訂正)について
ア 訂正事項8−1について
訂正事項8−1は、訂正前の請求項10が請求項8(請求項1〜7を引用)または請求項9(請求項8を引用)を引用していたところ、訂正事項2、6、7により請求項2、8、9が削除されたことに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項8−2について
訂正事項8−2による訂正は、訂正前の請求項10に記載した発明を特定するために必要な事項である「衝撃要素(8)」及び「ハウジング要素(7)」について、本件明細書の段落【0034】の「衝撃要素8は、上部8aと基部8bを備えている。上部8aは、基部8bの上部に備えられている。図3に示すように、上部8aは、基部8bより径方向に幅広である。」との記載、及び、同段落【0035】の「衝撃要素8がハウジング要素7内に完全に後退すると、上部8aの外端部はアウタシェル2上に位置する。」との記載を根拠に「衝撃力を吸収し、衝撃要素(8)は、上部(8a)と基部(8b)を備えており、上部(8a)は基部(8b)の上部に備えられており、上部(8a)は基部(8b)より径方向に幅広であり、衝撃要素(8)がハウジング要素(7)内に完全に後退すると、上部(8a)の外端部がアウタシェル(2)上に位置する」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項8−2による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項9〜15(請求項11〜18に係る訂正)について
訂正事項9〜15は、訂正前の請求項11〜18について、訂正事項2、6、7により請求項2、8、9が削除されたことに伴って、引用元の請求項の数を減少させる訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項16(明細書の訂正)について
訂正事項16は、訂正事項2、6、及び7の訂正により、請求項2、8、9が削除されたことに伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)訂正事項17(明細書の訂正)について
訂正事項17は、訂正事項1−1の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(9)訂正事項18〜25(明細書の訂正)について
訂正事項18〜25は、訂正事項5−2の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と明細書の記載の整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号(特許請求の範囲の減縮)、第2号(誤記又は誤訳の訂正)又は3号(明瞭でない記載の釈明)に掲げる事項を目的とし、同法第134条の2第9項において準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、当該訂正は適法なものであるからこれを認める。

第3 本件発明
本件特許の特許請求の範囲は本件訂正によって訂正されたので、その請求項1〜18に記載された発明(以下、「本件発明1〜18」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。 なお、請求項2、8、9は本件訂正により削除されている。
【請求項1】
車両に用いられる安全チャイルドシート(1)であって、
子供(4)の着座エリア(3)を囲むアウタシェル(2)と保護部材(5)を有し、
保護部材(5)は、ハウジング要素(7)と衝撃要素(8)を有し、
ハウジング要素(7)は、アウタシェル(2)に埋め込まれていること、及び
衝撃要素(8)は、ハウジング要素(7)に装着され、ハウジング要素(7)に少なくとも一部が囲まれており、着座エリア(3)から離れる方向にアウタシェル(2)から横方向へ突出するように構成されていること、
衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、
衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること、
ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えていること、
を特徴とする安全チャイルドシート(1)。
【請求項3】
請求項1記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備え、変形部位(9)は圧縮性が異なる複数の領域を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項4】
請求項3記載の安全チャイルドシートにおいて、変形部位(9)は上記衝撃要素(8)に備えられていて、発泡構造体を備えている安全チャイルドシート。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)は圧縮可能な側壁(10)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項6】
請求項5記載の安全チャイルドシートにおいて、圧縮可能な側壁(10)は開口(11)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項7】
請求項1、3ないし6のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)は固定支承(12)で支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す安全チャイルドシート(1)。
【請求項10】
請求項1、3ないし7のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)とハウジング要素(7)は、衝撃要素(8)を動作位置から休止位置に移動させることによって、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収し、衝撃要素(8)は、上部(8a)と基部(8b)を備えており、上部(8a)は基部(8b)の上部に備えられており、上部(8a)は基部(8b)より径方向に幅広であり、衝撃要素(8)がハウジング要素(7)内に完全に後退すると、上部(8a)の外端部がアウタシェル(2)上に位置する安全チャイルドシート(1)。
【請求項11】
請求項1、3ないし7、10のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は常時アウタシェル(2)から突き出るように構成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項12】
請求項1、3ないし7、10、11のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、アウタシェル(2)はサイドウィング(13)を有し、ハウジング要素(7)はサイドウィング(13)に埋め込まれている安全チャイルドシート(1)。
【請求項13】
請求項1、3ないし7、10ないし12のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、アウタシェル(2)はベース部(14)を有し、ハウジング要素(7)はベース部(14)に埋め込まれている安全チャイルドシート(1)。
【請求項14】
請求項1、3ないし7、10ないし13のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)と一体に形成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項15】
請求項1、5ないし7、10ないし14のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項16】
請求項15記載の安全チャイルドシートにおいて、上記剛体はねじ山(8c)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項17】
請求項1、3ないし7、10ないし16のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)上に位置するフランジ(112)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項18】
請求項1、3ないし7、10ないし17のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、安全チャイルドシートの両側にそれぞれ少なくとも2つの保護部材(5)が装着され、そのうちの少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の上半分に位置し、少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の下半分に位置している安全チャイルドシート(1)。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
請求人は、特許第6293881号の請求項1〜18に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めており、令和2年6月16日付け審判請求書、令和3年3月19日付け口頭審理陳述要領書、令和3年3月30日付け上申書及び令和3年3月30日付け第1回口頭審理調書によれば、主張する無効理由は、次のとおりである。
なお、令和3年3月30日付け上申書の1頁下から2行〜6頁11行の主張、並びに甲第13号証及び甲第14号証は、令和3年3月30日に行われた口頭審理の場で撤回された。(令和3年3月30日付け第1回口頭審理調書の「請求人」の項を参照。)

無効理由1:新規性の欠如
1−1 本件特許の請求項1、2、8ないし12、及び14に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

1−2 本件特許の請求項1、2、8ないし12、及び14に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された甲第8号証ないし甲第12号証に示された発明であり、特許法第29条第1項第1号ないし第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

無効理由2:進歩性の欠如
2−1 本件特許の請求項1、2、8ないし16、及び18に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−2 本件特許の請求項1、2、8ないし12、及び14、15に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、及び本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された甲第8号証ないし甲第12号証に示された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2―3 本件特許の請求項2、3、5、6、17に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−4 本件特許の請求項4に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第5号証に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−5 本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−6 本件特許の請求項6に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、並びに甲第4号証及び甲第6号証に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−7 本件特許の請求項7に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証に記載された発明、並びに甲第2号証、及び甲第8号証ないし甲第12号証に示された事項に例示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2−8 本件特許の請求項16に係る発明は、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1号証及び甲第7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

無効理由3:実施可能要件違反
本件請求項7に係る発明は、明細書等が当事者が実施可能である程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

無効理由4:明確性要件違反
本件請求項7に係る発明は明確でないことから、特許法第36条第6項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

そして、請求人が提出した証拠方法は次のとおりである。
<証拠方法>
甲第1号証:ドイツ実用新案公報 DE202012102471U1
甲第2号証:日本国公表特許公報 特表2010−531274
甲第3号証:欧州特許公開公報 EP2570299A1
甲第4号証:国際特許公開公報 WO2011/054063A1
甲第5号証:米国特許公開公報 US2009/0152913A1
甲第6号証:日本特許公開公報 特開2011−195142
甲第7号証:欧州特許公開公報 EP2275303A1
甲第8号証:欧州特許2826662号に対する異議申立書、異議申立日 2019年5月19日、作成者 サイベックス社
甲第9号証:甲第8号証の添付書類MB11a
甲第10号証:甲第8号証の添付書類MB11b
甲第11号証:甲第8号証の添付書類MB11c
甲第12号証:甲第8号証の添付書類MB11d

2 被請求人の主張
被請求人は、訂正を認める。本審判請求は成り立たない。審判請求の費用は請求人の負担とするとの審決を求めており、令和2年12月16日付け審判事件答弁書、令和3年3月19日付け口頭審理陳述要領書、令和3年3月29日付け上申書において、請求人の主張する無効理由は何れも理由がない旨の主張をしている。

第5 無効理由についての当審の判断
1 各甲号証の記載事項等
(1)甲第1号証
(1−1)甲第1号証の記載事項
本件特許出願の優先日前に頒布された刊行物である甲第1号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、訳文は当審で作成した。



・・・


特許請求の範囲
1.車両のシート(100)、特に車両助手席に取り付けるためのチャイルドセーフティシート(10)であって、シートシェル(20)及びそれに取り付けられる、特に標準的な幅の中に位置する休止位置から、特に前記標準的な幅の外に位置する機能位置に、及びその反対にされ得る側面衝突保護部を有し、側面衝突保護部は、前記シートシェル(20)の両側部に起こり得る横からの力を、チャイルドセーフティシートに座っている子供の背中の後ろに伝達し、シートシェル(20)に導かれるように配置される、チャイルドセーフティシート(10)。

2.前記側面衝突保護部は側部要素(30)を有し、前記側部要素は、前記休止位置において、前記シートシェル(20)の側部領域に実質的に均一に支えられる、又は実質的に前記シートシェル(20)中に押し込まれる、
請求項1に記載のチャイルドセーフティシート。

3.前記側部要素(30)は、前記機能位置での使用のために前記休止位置から展開され得る、旋回して出され得る、伸縮式に伸ばされ得る、又は取り外しされ得るとともに、前記側部要素(30)に対する適切な受容部にも取り付け可能、特に装着可能である、
請求項2に記載のチャイルドセーフティシート。
・・・

11.前記側部要素(30)は、キノコ状又は円盤状端部(90)(なお、キノコ状又は円盤状端部の符号「(90)」は、「(80)」の誤記と認める。)を具備することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のチャイルセーフティドシート。










[0006]本発明の実質的ポイントは側面衝突保護部がシートシェルに、側方衝突時に力ないしエネルギーが子供の体に直接伝わらないように特に子供の体をよけてシートシェルに導かれるように取り付けられることである。こうすることで側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく、子供の体後方の緩衝機能を有するシートシェルに導かれる。このようにして、チャイルドセーフティシートに座った子供に加わる力を大きく下げることができ、従来のチャイルドセーフティシートに比べて子供が傷つく可能性が大きく低下する。
[0007]本発明の実施態様では側面衝突保護部は非作動状態ではシートシェルの側面に、特に実質的に平坦に配置され、又は実質的にシートシェル内に押し込まれる側部要素を具備する。こうすることで、本発明のチャイルドセーフティシートが備えた側面衝突保護部によって非作動時に所定の幅、特に標準幅を超えることなく、側部要素が挿入されたとき、チャイルドセーフティシートの通常の幅を超えず、これにより、本発明のチャイルドセーフティシートの取り扱い性がさらに向上する。
[0008]さらに、本発明の作動時に使用する側部要素は展開、旋回、テレスコープ式に展開又は押出し、又は引き出すことができ、あるいは、これらに代わって実質的にチャイルドセーフティシートと関係する実施態様では側部要素は非作動時には取り外しでき、該側部要素に対応した受容部、即ちチャイルドセーフティシートのシートパンに取り付ける、特には固定することができる。
[0009]本発明によれば特に伸縮式に外に出せる、または引き出せる変形の側部要素が好ましく、特に好ましくはキノコ状又は円盤状端部を具備することが好ましく、それらは非作動時には直接かつ実質的に平坦にシートシェルの側面に取り付けられ、作動時には伸縮装置によってシートシェル内に押し込まれた状態からシートシェルの外に押し出された、又は引き出された状態に変換できる。作動状態では側部要素のキノコ状又は円盤状端部は車両の設置表面又はそれに隣接して配置されたチャイルドセーフティシートあるいは別のチャイルドセーフティシートの隣接する側部要素と接触する。
[0010]本発明では、側部要素はその長さおよび/又はその高さ位置を設定することができる。側部要素の長さが設定可能であることは特に様々なタイプの車両において本発明のチャイルドセーフティシートを使用する際に特に有効である。チャイルドセーフティシート固定装置は、車両のドアからの距離が車両のタイプによって様々であるため、車両のタイプによって異なることが一般的である。このような距離の違いについては、本発明によれば、その長さが調整できる側部要素によって容易に対応できる。こうした長さの設定に関しては、そして好ましくは所望する長さに固定することに関しては、本発明ではロックキング、スナップ、フラップ、ラチェット、テレスコープ、ネジもしくはボルト、又はプーリー機構も用いることができ、この時これら機構は例えば側部要素をまず所望の長さに設定してから所望する形で固定するために互いに組み合わせて用いることもでき、この場合チャイルドセーフティシートを作動状態で使用した後に固定を解除し、そして側部要素を再び非作動状態にすることができる。この場合テレスコープ機構が特に好ましく、それを用いて例えば筒状に作られた側部要素を所望の長さに設定する。続いて、例えばスナップ機構を用いて所望の長さへの継続固定を行うことができる。
[0011]これに関しては側面衝突保護部の側部要素のキノコ状または円盤状端部の構造は通常閉じた状態の車両のドアで支えられており、該側部要素は側部要素のキノコ状または円盤状端部が正確に位置取りし、例えばイソフィックスラッチによって固定され、チャイルドセーフティシートが車両のドアまたはその他しっかりした車体部分もしくは隣接するチャイルドシートに固定されるまで拡張する。





[0027]図1は、本発明によるチャイルドセーフティシート10を2の異なる図で示しており、このチャイルドセーフティシートは、車両シート100上に後方に向けられ、又は前方に向けられた位置に取り付けられている。この実施形態のチャイルドセーフティシート10は、回転可能に構成されており、チャイルドセーフティシートは、シートシェル20と側部要素30とを有している。図1に示すように、休止位置にある。この場合、休止位置は、側部要素の押し込まれた位置を示す。本発明による側部要素は、チャイルドセーフティシート10の背部70におけるシート面60の上方に位置している。
[0028]図2は本発明のチャイルドセーフティシート10の背部70の背面図を示しており、ここでは背部70の両側にそれぞれ端部80を有する側部要素30が認められる。該端部80は円盤状の形で作られてチャイルドセーフティシート10の背部に接触している。ここでは側面衝突保護部は休止位置であり、即ち押し込まれた状態で背部70に接触している。
[0029]図3は図2の背部70を示しており、ここでは側部要素30がテレスコープ式に左側に伸ばされるとともに、自動車の取付面40に接触している。この自動車の取付面40は概略的に示されている。側部要素30はロック機構90を具備しており、そこにはカムラッチが開口部に差し込まれている。カムラッチを押込むことで側部要素30はテレスコープ式に一緒に押されて休止状態となる。このために、側部要素はチャイルドセーフティシートの背中接触面の後方の背部70の中に押し戻される。
[0030]図4は前方から見た図3の側面衝突保護部を示しており、ここでは側部要素30の円盤状端部80が良く分かる。更に図4には、側部要素30の長さ50がどのようにテレスコープ式に拡張でき、そしてロック機構90によって固定されるかが描かれている。

エ 甲第1号証には、以下の図が示されている。なお、FIG.4の引き出し線及び部材名は当審で追記したものである。





(1−2)甲第1号証の記載事項からの認定事項
上記(1−1)から、以下の事項が認定できる。

・請求項1及び段落[0006]の「側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方、緩衝機能を有するシートシェルに導かれる。」との記載から、
車両シート(100)、特に車両助手席に取り付けるためのチャイルドセーフティシート(10)であって、前記チャイルドセーフティシート(10)は、シートシェル(20)及び、それに取り付けられる、標準的な幅の中に位置する休止位置から、前記標準的な幅の外に位置する機能位置に、及びその反対にされ得る側面衝突保護部を有し、前記側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されること。
・段落[0027]の「本発明による側部要素は、チャイルドセーフティシート10の背部70におけるシート面60の上方に位置している」との記載と、FIG.1から、シートシェル(20)は、ベース部と背部(70)とを有することが看取できることから、該シートシェル(20)は、子供が着座するシート面(60)が設けられたベース部と背部(70)とを有し、前記シート面(60)を囲むとともに側面衝突保護部を有することが理解できる。


・請求項2の記載から、側面衝突保護部は側部要素(30)を有すること。
・側部要素(30)は、FIG.4に示された「長さ50」の範囲の部材であるところ、その図示内容から、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、請求項11の記載から、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備すること。
・段落[0009]の「本発明によれば特に伸縮式に外に出せる、または引き出せる変形の側部要素が好ましく、特に好ましくはキノコ状又は円盤状端部を具備することが好ましく、それらは非作動時には直接かつ実質的に平坦にシートシェルの側面に取り付けられ、」との記載及びFIGS.1、2等から、側部要素(30)がシートシェル(20)の背部(70)の両側面に取り付けられていること。


・請求項2の「前記側部要素(30)は、前記休止位置において、前記シートシェル(20)の側部領域に実質的に均一に支えられる、又は実質的に前記シートシェル(20)の中に押し込まれる」との記載、段落[0010]の「この場合チャイルドセーフティシートを作動状態で使用した後に固定を解除し、そして側部要素を再び非作動状態にすることができる。この場合テレスコープ機構が特に好ましく、それを用いて例えば筒状に作られた側部要素を所望の長さに設定する。」との記載、及び段落[0028]の「該端部80は円盤状の形で作られてチャイルドセーフティシート10の背部に接触している。ここでは側面衝突保護部は休止位置であり、即ち押し込まれた状態で背部70に接触している。」との記載から、側部要素(30)は、休止位置において、テレスコープ機構によりシートシェル(20)の中に押し込まれ、側部要素(30)のキノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触すること。
・請求項3の「前記側部要素(30)は、前記機能位置での使用のために前記休止位置から展開され得る、旋回して出され得る、伸縮式に伸ばされ得る」との記載、段落[0010]の「この場合テレスコープ機構が特に好ましく、それを用いて例えば筒状に作られた側部要素を所望の長さに設定する。続いて、例えばスナップ機構を用いて所望の長さへの継続固定を行うことができる。」との記載、及び段落[0030]の「更に図4には、側部要素30の長さ50がどのようにテレスコープ式に拡張でき、そしてロック機構90によって固定されるかが描かれている。」との記載から、側部要素(30)は、機能位置での使用のために休止位置からテレスコープ機構により、伸縮式に伸ばされ得るとともに、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを所望の長さに設定し、続いて、ロック機構(90)を用いて所望の長さへの継続固定を行うことができること。さらに、段落[0011]の「これに関しては側面衝突保護部の側部要素のキノコ状または円盤状端部の構造は通常閉じた状態の車両のドアで支えられており」との記載、及びFIG.3から、側部要素(30)は、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得ること。

(1−3)甲第1号証に記載された発明
上記(1−1)及び(1−2)から、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

「車両シート(100)、特に車両助手席に取り付けるためのチャイルドセーフティシート(10)であって、
前記チャイルドセーフティシート(10)は、シートシェル(20)及び、それに取り付けられる、標準的な幅の中に位置する休止位置から、前記標準的な幅の外に位置する機能位置に、及びその反対にされ得る側面衝突保護部を有し、前記側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであり、
前記シートシェル(20)は、子供が着座するシート面(60)が設けられたベース部と背部(70)とを有し、前記シート面(60)を囲むとともに側面衝突保護部を有し、
前記側面衝突保護部は側部要素(30)を有し、
前記側部要素(30)は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備し、
前記側部要素(30)は、前記シートシェル(20)の背部(70)の両側面に取り付けられ、休止位置において、テレスコープ機構により前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、前記側部要素(30)の前記キノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触するものであり、機能位置での使用のために前記休止位置から前記テレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得るとともに、筒状に作られた前記筒状部材A、B、Cを所望の長さに設定し、続いて、ロック機構(90)を用いて所望の長さへの継続固定を行うことができるチャイルドセーフティシート(10)。」

(2)甲第2号証
(2−1)甲第2号証の記載事項

【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ吸収装置、特に、外部からの衝撃力によるエネルギを放散する装置に関する。さらに特に、本発明は、幼児拘束装置のような子供用製品に含まれるエネルギ放散装置に関する。


【0013】
図1は、シート底部と、シート底部から上向きに延在するシート背部、シート背部に結合され、本発明の第1の実施例のように構成されたエネルギ放散装置と、を備え幼児拘束装置の部分断面を有する斜視図であり、シート背部が、シート底部に結合された背もたれと、背もたれに結合されたヘッドレストとを備え、エネルギ放散装置が、上記ヘッドレスト内に含まれた第1の横パネルの外壁に取り付けられた左ライドダウンパッドと、上記ヘッドレストに含まれた反対側の第2の横パネルの外壁に取り付けられた右ライドダウンパッドとを備える。図2は、上記左ライドダウンパッドと、図1に示されたヘッドレストの第1の横パネルとの、部分断面を有する拡大斜視図であり、外力が、上記左ライドダウンパッドの外部を打つ外部の衝撃力を示す。図3は、図2の左ライドダウンパッドの分解斜視図であり、上記ライドダウンパッドが、第1の空気室を含むよう形成された第1のベッセル(例えば、バッグ)と、第1の空気室内に開口する前向きの第1空気放出ポートと、第1の空気室内に配置される寸法にされた第1の変形可能な支持フレーム(例えば、クッション)とを有する第1の(内側の)力放散部、および、第2の空気室を含むよう形成された第2のベッセル(例えば、バッグ)と、第2の空気室内に開口する後ろ向きの第2の空気放出ポートと、第2の空気室内に配置される寸法にされた第2の変形可能な支持フレーム(例えば、クッション)とを有する第2の(外側の)力放散部を備える多段ユニットである。図4は、左ライドダウンパッドの詳細を明確にするための、図1の子供用自動車シートの、部分断面を有する側面図である。図5は、図1に示された子供用自動車シートに取り付けられる前の、互いに分離された、左ライドダウンパッドを含む第1の(内側の)力放散部と第2の力放散部の斜視図である。図6は、ヘッドレストの第1の横パネルの外壁に配置された左ライドダウンパッドと、ヘッドレストの第1の横パネルの内壁に配置された内側パッドとを示す、図2と図4の線6−6に沿った拡大断面図である。」


【0015】
図10は、本発明による力放散部を生成するために、第1のバッグに対し4つのクッションと、第2のバッグに対し4つのクッションと、を備え、それぞれのクッションが、出入口バッグの空気室内に支持フレームを形成し、外部の衝撃力を受けたとき異なる変形特性を有し、4つの使用できるクッションから所望のクッションを選択し、出入口バッグ内に選択されたクッションを配置することにより、それぞれの力放散部の変形性能が変化可能となるように構成された、本発明によるライドダウンパッドキットを示す、分解斜視図である。図13は、右から左に順番に、前向きの第1の空気放出ポートを含むよう形成された内側シェルと、第1のクッションと、仕切りと、第2のクッションと、後ろ向きの第2の空気放出ポートを含むよう形成された外側シェルと、を備え、内側シェルと仕切りによって、第1のクッションを収容するように形成された第1の空気室を構成するようにし、外側シェルと仕切りによって、第2のクッションを収容するように形成された第2の空気室を構成する、図12の左ライドダウンパッドの分解斜視図である。


【0030】
クッション61、62は、本発明による、バッグ51、72あるいは他のベッセル内に形成された空気室内に配置される変形可能な支持フレームの実施例である。ここに開示されているように、変形可能な支持フレームは、外部の衝撃力にさらされたときベッセルが変形するまでは、空気室内の所定の空気(あるいは他の流体)量を維持するように、ベッセル(たとえば、バッグ)を支持する手段を提供する。このように、ベッセルは、変形可能な支持フレームで支持されるので、ベッセルは速すぎる速度で変形せず、ベッセルが外部の衝撃力による外部のエネルギを吸収することができるような速度で変形する。この実施例では、変形可能な支持フレームは、出入口ベッセル内に空気室がほぼ占めるような大きさとなるクッションである。


【0039】
第1のクッション61と、第2のクッション62と、内装パッド23は、それぞれ所定の外部の衝撃力20にさらされたとき、所定の速度で変形するように構成されている。本発明による各クッション61、62、各バッグ51、72の変形の特性を校正することにより、それぞれの力放散部41、42およびライドダウンパッド21、22に対し、規定された大きさの外部の衝撃力に応じて選択されたエネルギ吸収特性とライドダウン時間を決定することができる。言い換えると、本発明によると、ライドダウンパッド21と内装パッド23を備えるエネルギ放散装置16は、規定された外部の衝撃力20にライドダウンパッド21がさらされるのに応じて、規定されたライドダウン時間を超えるよう、シート10の子供100に加速度負荷をかけるように、プログラム可能である。発泡流体、微小球体、ジェル、液体、押しつぶし可能に設計された材料、発泡体(例えば、押出ポリマー製品(EPP)、超多孔ポリマー物質(EPS)、ポリウレタン(PU)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリスチレン(PS)、粘弾性ポリマー、液化空気、空気、あるいは、上記の材料の組み合わせの中から、クッション61、62を形成することは、本発明の範囲である。


【0045】
仕切り216の内面216iは、図12、13に示すように、内側シェル210と組み合い、その間に第1の空気室226を形成する。第1のクッション214は、左ライドダウンパッド122内に含まれる第1の(内側の)力放散部141を成すように、内側シェル210と仕切り216の内面216iと共に構成される第1の空気室226内に設けられる。実施例において、内側シェル210は、図13に示されるように、ドーム211と、ドーム211の境界エッジに付加されたリム213と、を備える。リム213は、第1の(内側の)バッグを形成するように、仕切り216の内面216iと組み合う。
【0046】
仕切り216の外面216oは、図12、13に示すように、外側シェル222と組み合い、第2の空気室228をその間に形成する。第2のクッション218は、左ライドダウンパッド121に含まれる第2の(外側の)力放散部142を成すように、外側シェル222と仕切り216の外面216oと共に構成される第2の空気室228内に設けられる。実施例において、外側シェル222は、図12、13に示されるように、ドーム223と、ドーム223の境界エッジに付加されたリム225と、を備える。リム225は、第2の(外側の)バッグを形成するように、仕切り216の外面216oと組み合う。


【0052】
任意の適切な手段を、図11−16に示す取付位置に、第1の力放散部141と第2の力放散部142とを保持するように、使用することができる。実施例において、固定具251、252、253は、図13に示されているように、ヘッドレスト26の第1の横31の固定位置に第1の力放散部141および第2の力放散部142を保持するために、使用される。固定具251−233のそれぞれは、仕切り216の外側の部分に形成された3つの固定具収容開口254の内の1つを通り、図12、13に示されるように、ヘッドレスト26の第1の横パネル31と係合する。

ク 甲第2号証には、以下の図が示されている。




【図3】

【図6】

(2−2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、外部からの衝撃力によるエネルギを放散するためのエネルギ放散装置を備える幼児拘束装置(段落【0001】を参照。)について記載されているところ、上記(2−1)の特に下線部の記載から、甲第2号証には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「外部からの衝撃力によるエネルギを放散するためのエネルギ放散装置を備える幼児拘束装置において、
エネルギ放散装置が、ヘッドレスト内に含まれた第1の横パネルの外壁に取り付けられた左ライドダウンパッドと、上記ヘッドレストに含まれた反対側の第2の横パネルの外壁に取り付けられた右ライドダウンパッドとを備え、
各ライドダウンパッドが、第1の空気室を含むよう形成された第1のバッグと、前記第1の空気室内に開口する前向きの第1空気放出ポートと、前記第1の空気室内に配置される寸法にされた第1の変形可能なクッションとを有する第1の(内側の)力放散部、および、第2の空気室を含むよう形成された第2のバッグと、前記第2の空気室内に開口する後ろ向きの第2の空気放出ポートと、前記第2の空気室内に配置される寸法にされた第2の変形可能なクッションとを有する第2の(外側の)力放散部を備える多段ユニットであって、
力放散部を生成するために、前記第1のバッグに対し4つのクッションと、前記第2のバッグに対し4つのクッションと、を備え、それぞれのクッションが、出入口バッグの空気室内にクッションを形成し、外部の衝撃力を受けたとき異なる変形特性を有し、4つの使用できるクッションから所望のクッションを選択し、出入口バッグ内に選択されたクッションを配置することにより、それぞれの力放散部の変形性能が変化可能となるように構成する幼児拘束装置。」

(3)甲第3号証
(3−1)甲第3号証の記載事項




イ 甲第3号証には、以下の図が示されている。

(4)甲第4号証
(4−1)甲第4号証の記載事項
ア 5頁22行〜28行


イ 7頁21行〜28行


イ 甲第4号証には、以下の図が示されている。




(4−2)甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、衝撃吸収要素30を備えるチィルドシートについて記載されているところ、上記(4−1)の特に下線部の記載から、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「衝撃吸収要素30を備えるチャイルドシートであって、
衝撃吸収要素30はシェル32を有し、該シェル32は、正弦波形の形状を有する側壁35を含み、その結果、事故対象物の衝突により与えられるエネルギーにより側壁35を蛇腹効果により圧縮させるチャイルドシート。」

(5)甲第5号証
(5−1)甲第5号証の記載事項



イ 甲第5号証には、以下の図が示されている。

(6)甲第6号証
(6−1)甲第6号証の記載事項

【0042】
図12に示されているように、エネルギー吸収部材500の底面504はベース320と接触している。ベースは、エネルギー吸収部材500を受け、通常の使用の間及び衝撃の間にベース内にエネルギー吸収部材500の位置を維持するように形成された取付け点322,324を含む。底面504及びベース320の間及び上面502とシート310との間の接触領域が、吸収部材500の上面502及び底面504に作用する圧力を最小にするのに十分な領域であることが望ましい。圧力は領域単位ごとの力に等しいため、同一の力が維持されたままで接触領域の増加することにより、結果として圧力が減少する。エネルギー吸収部材500の表面に作用する圧力の減少は、エネルギーがエネルギー吸収部材500内でより均一に分散され、エネルギー吸収部材500はその効率を改善する。かくして、エネルギー吸収部材500の正面506からエネルギー吸収部材500の後部508へ延びる接触領域は、正面からの衝撃の間のエネルギー吸収部材500に作用する圧力を減らし、エネルギー吸収部材500内でのエネルギーをより均一に分散する。

イ 甲第6号証には、以下の図が示されている。
【図12】

(7)甲第7号証
(7−1)甲第7号証の記載事項






[0046]この実施形態300では、エネルギー吸収および/または伝達要素2は、シートシェル7の領域11に配置されることが好ましい。この配置は図11に示されている。くぼんだグリップ310により、シリンダー301をより容易にねじって動かすことができる。

イ 甲第7号証には、以下の図が示されている。


(7−2)甲第7号証に記載された発明
甲第7号証には、エネルギー吸収要素2を備えるチィルドシートについて記載されているところ、上記(7−1)の特に下線部の記載から、以下の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
「エネルギー吸収要素2を備えるチィルドシートであって、
エネルギー吸収要素2は、シートシェル7の領域11に配置され、くぼんだグリップ310により、シリンダー301をねじ山を介して、休止位置と機能位置との間を移動することができるチィルドシート。」

(8)甲第11号証
甲第11号証には、以下の事項が記載されている。


Sironaの説明
[ 1 ] Sirona には、黒いシートシェルとベース部があります。シートシェルの側方上部領域(サイドボルスターに隣接)にはそれぞれ(両側に)、拡張可能な側部要素が配置されています。
[ 2 ] Sironaは、自動車の座席又は付属ベース部において、後ろ向きの位置で、また前向きの位置で設置できます。チャイルドセーフティシートは回転可能になっており、このチャイルドセーフティシートは、1つのシートシェルと、休止位置になることが可能な2つの側部要素と、を備えます。休止位置とは、各側部要素が押し込まれたポジションを指しています。さらに各側部要素は、座面上方のチャイルドセーフティシートの背部に存在することが見て取れます。
[ 3 ]背部の両側には、それぞれ端部を有する側部要素があることが見て取れます。この端部は、キノコ状又は円盤状に形成されており、休止位置ではチャイルドセーフティシートの背部に接触します。この場合、側面衝撃保護部は休止位置にあり、すなわち、押し込まれた位置で背部と接触します。
[ 4 ]各側部要素は、伸縮式に伸長可能です。各側部要素は、2つのカムラッチが付属開口部を通じて延伸する固定機構を備えています。少なくとも1つのカムラッチが押し込まれることによって、各側部要素を伸縮式に一体的に伸縮させることが可能となり、各側部要素を休止位置にすることができます。このために側部要素は、チャイルドセーフティシートの背中に接する面の後方にある背部へと、移動します。
[ 5 ]各側部要素の端部は、キノコ状又は円盤状になっています。さらに、各側部要素の長さは伸縮式に延長可能であるとともに、固定機構によって固定可能なことが見て取れます。
[ 6 ]以下では、側部要素のうち一方について、さらに詳細に述べます。以下の説明は、もう一方の側部要素についても鏡像対称で当てはまります。
[ 7 ]側部要素は、その一部がプラスチック(PP) 製です。
[ 8 ]側部要素は具体的には、3つの部分、すなわち遠位部分、中央部分及び近位部分を備え、これらの部分は伸縮式に互いの内部へと移動させることができます。
[ 9 ]遠位部分には、キノコ状の端部があります。遠位部分は、可動式です(伸縮式に移動可能)。遠位部分のキノコ状端部は少なくとも、変形可能及び/又は曲げることが可能なプラスチック(PP)からできています。最大限入り込んだ状態においてキノコ状端部は、シートシェル外壁に接触します。
[ 10 ] 中央部分は、(少なくとも実質的に)円筒形になっており、同様に伸縮式に移動可能です。中央部分には2つの開口部があり、ロック状態ではこれらの開口分のうちの1つの中に、カムラッチが受容されています。もう一方の開口部は細長く、カムラッチのための開口部とは反対側にあります。(固定されている)近位部分にも、もう1つのカムラッチのための開口部が備えられています。中央部分には、プラスチック部材があります。
[ 11 ]円筒形でポット状の近位部分は、固定的に配置されており、シートシェル内に埋め込まれています。(固定された)近位部分は、特に実質的に放射状に延びるねじ、軸方向のリブ、及び放射状に延びるリブによって、シートシェルに設けられており、具体的には、シートシェルのポット状収納空間内に設けられています。近位部分には、プラスチック部材(PP)、特にプラスチックの底部と、フランジ付きプラスチックケース部分とがあります。近位部分にはさらに、円筒の壁面に複数の開口部及び凹部があります。近位部分の円筒形本体は、特にロックピンによって、プラスチックケース部分に設けられています。

(9)甲第12号証
甲第12号証には以下の写真が示されている。なお、部材名の日本語訳は請求人が追加したものである。










2 無効理由について
2−1 無効理由1(新規性の欠如)について
2−1−1 無効理由1−1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「車両シート(100)、特に車両助手席に取り付けるためのチャイルドセーフティシート(10)」は、前者の「車両に用いられる安全チャイルドシート(1)」に相当する。
(イ)後者の「子供が着座するシート面(60)が設けられたベース部と背部(70)とを有し、前記シート面(60)を囲む」「シートシェル(20)」は、前者の「子供(4)の着座エリア(3)を囲むアウタシェル(2)」に相当する。
(ウ)後者の「側面衝突保護部」は、前者の「保護部材(5)」に相当する。
(エ)後者の「側部要素(30)」は、「筒状に作られた前記筒状部材A、B、Cを所望の長さに設定し、続いて、ロック機構(90)を用いて所望の長さへの継続固定を行うことができる」ものであって、「前記側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであ」るところ、「前記側部要素(30)は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備し、」「休止位置において、テレスコープ機構により前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、前記キノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触するものであ」ることと、該側部要素(30)がFIG.3に示された機能位置からFIG.2に示された休止位置へ変化することを併せみると、機能位置で「筒状部材A、B」及び「キノコ状端部(80)」は、衝撃を受ける部材として機能し、休止位置において、筒状部材A、Bは、筒状部材Cに収納されるものといえるから、後者の「筒状部材A、B」及び「キノコ状端部(80)」は、前者の「衝撃要素(8)」に相当し、後者の「筒状部材C」は、前者の「ハウジング要素(7)」に相当する。
(オ)後者の「側部要素(30)」が具備する「筒状部材A、B」は、「休止位置において、テレスコープ機構により前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、」「機能位置での使用のために前記休止位置からテレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ものであるところ、該テレスコープ機構を構成するためには、後者の「筒状部材A、B」は、「筒状部材C」に装着され、「筒状部材C」に少なくとも一部が囲まれている構成となることは明らかであるから、後者のかかる「筒状部材A、B」及び「キノコ状端部(80)」と、「筒状部材C」の配置構成は、前者の「衝撃要素(8)は、ハウジング要素(7)に装着され、ハウジング要素(7)に少なくとも一部が囲まれて」いる構成に相当する。また、甲第1号証のFIG.3を参照すると、後者の「機能位置での使用のために前記休止位置からテレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ことは、前者の「着座エリア(3)から離れる方向にアウタシェル(2)から横方向へ突出するように構成されていること」に相当する。
(カ)後者の「休止位置において、前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、前記キノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触するものであり、機能位置での使用のために前記休止位置からテレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ことは、前者の「衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「車両に用いられる安全チャイルドシートであって、
子供の着座エリアを囲むアウタシェルと保護部材を有し、
保護部材は、ハウジング要素と衝撃要素を有し、
衝撃要素は、ハウジング要素に装着され、ハウジング要素に少なくとも一部が囲まれており、着座エリアから離れる方向にアウタシェルから横方向へ突出するように構成されていること、
衝撃要素は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、
衝撃要素は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェルから突き出るように構成されている安全チャイルドシート。」

〔相違点1〕
「ハウジング要素」に関し、
本件発明1は、「アウタシェル(2)に埋め込まれている」のに対し、
甲1発明は、かかる点が特定されていない点。

〔相違点2〕
本件発明1は、「ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えている」のに対し、
甲1発明は、かかる「変形部位」が特定されていない点。

イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明とは相違点1,2で相違するから、本件発明1は甲1発明であるとはいえない。

(2)本件発明10〜12、14について
本件発明10〜12、14は、本件発明1の全ての構成を含み、さらに限定を加えるものであって、本件発明1と同様に、少なくとも、上記(1)アで検討した相違点1,2が存在するから、甲1発明であるとはいえない。なお、本件訂正により請求項2、8、9は削除されている。

2−1−2 無効理由1−2について
(1)甲8〜12発明の公知性について
請求人は、甲第8〜12号証に示された発明が、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された発明であることを主張しているので、これについて検討する。なお、請求人が提出した翻訳を参考にして述べる。
ア 請求人の主張の概要
本件特許の出願時の優先権主張の元の出願となった欧州出願13003568号(EP13003568A)の特許である欧州特許2826662号に対する、甲第8号証の異議申立書(異議申立日:2019年5月19日、異議申立人:サイベックス(Cybex)社)に沿って以下のように主張している。
(ア)甲第9号証のオルトルード・クリングスポール氏による宣誓供述書から、同氏は、2013年1月〜4月の期間にチャイルドシート「シローナ」を購入したこと、及びこのチャイルドシート「シローナ」の側面衝撃保護部の領域内のコード化された刻印から、製造日が2012年8月ということが導かれることに基づけば、チャイルドシート「シローナ」は、本件特許の優先日以前に公然実施されていたこと、及び、少なくとも当該製品の購入者に公然と知られていたことは明らかであること。

(イ)甲第10号証のカルステン・バルヴィンスキィ氏による宣誓供述書から、同氏が、オルトルード・クリングスポール氏所有のチャイルドシート「シローナ」を譲り受けたことを述べていること。

(ウ)甲第11号証は、異議申立人であるサイベックス社による、チャイルドシート「シローナ」の説明であること。

(エ)甲第12号証には、チャイルドシート「シローナ」の実施態様が、写真及びドイツ語注釈により示されていること。

イ 検討
甲第9号証のオルトルード・クリングスポール氏による宣誓供述書及び甲第10号証のカルステン・バルヴィンスキィ氏による宣誓供述書は、人の記憶を書面化した伝聞証拠であって、供述内容に対する反対尋問を経たという経緯はないから、正確性が担保されていない。
仮に、甲第9号証及び甲第10号証の宣誓供述書から、オルトルード・クリングスポール氏が2013年1月〜4月の期間に、製造日が2012年8月チャイルドシート「シローナ」を購入し、カルステン・バルヴィンスキィ氏がオルトルード・クリングスポール氏所有のチャイルドシート「シローナ」を譲り受けたことということが導かれることができたとしても、甲第11号証
及び甲第12号証は、チャイルドシートの構成の技術的な説明に留まるものであって、甲第11号証のチャイルドシート「シローナ」の説明と甲第12号証のチャイルドシートの写真の関係についての説明はなく、甲第11号証のチャイルドシート「シローナ」の説明が甲第12号証の写真に基づくものか不明であるとともに、甲第11号証のチャイルドシート「シローナ」の説明及び甲第12号証に示され写真が、オルトルード・クリングスポール氏が購入したチャイルドシート「シローナ」のものであることについての説明も一切されていない。
この点について、当審が通知した審理事項通知の「第2 1.(3)イ」において、「甲第9、10号証の写真に掲載されたチャイルドセーフティシートが、甲第11、12号証で説明されている「シローナ」であるか明らかでありません。」と述べて、説明を求めたが、請求人からは、令和3年3月19日付け口頭審理陳述要領書及び令和3年3月30日付け上申書においても、公然知られ、又は公然実施された発明であることに足る甲第8〜12号証の相互の関連性について、合理的な説明はされていないから、甲第9、10号証の写真に掲載されたチャイルドセーフティシートが、甲第11、12号証で説明されている「シローナ」であることを推認することができない。
したがって、甲第8〜12発明が、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された発明であるとは認められない。

(2)新規性の検討
上記(1)のとおり、甲8〜12発明が公然知られ、又は公然実施された発明とは認められないが、仮に、甲第11号証のチャイルドシート「シローナ」の説明が甲第12号証の写真に基づくものであり、さらに、かかるチャイルドシート「シローナ」が、甲第8、9号証から公然実施されたものと推認できて、甲8〜12発明が公然知られ、又は公然実施された発明であった場合について、念のため、検討する。

(2−1)甲8〜12発明
上記1(8)の甲第11号証の記載事項、及び上記1(9)の甲第12号証の各写真から、以下の事項が認定できる。
ア 甲第11号証の上記1(8)の段落[ 1 ]及び[ 2 ] の記載内容、並びに上記1(9)の甲第12号証の図1の写真から、自動車に用いられるチャイルドセーフティシートシローナであって、子供の座席を囲むシートシェルを備えること。

イ 甲第12号証の図9の写真から、側部要素は、機能位置で前記子供の座席から横方向へ突出すること。

上記1(8)の甲第11号証の記載事項の特に下線部の記載、及び上記1(9)の甲第12号証の各写真、並びに上記ア、イの認定事項から、甲第8〜12号証には、以下の発明(以下「甲8〜12発明」という。)が記載されていると認められる。

「自動車に用いられるチャイルドセーフティシートSironaであって、
子供の座席を囲むシートシェルと、機能位置で前記子供の座席から横方向へ突出するとともに、休止位置になることが可能な2つの側面衝撃保護部として機能する側部要素と、を備え、
前記側部要素は、遠位部分、中央部分及び近位部分を備え、これらの部分は伸縮式に互いの内部へと移動させることができ、各側部要素の長さは伸縮式に延長可能であるとともに、固定機構によって固定可能であり、
前記遠位部分には、キノコ状の端部があり、最大限入り込んだ状態において該キノコ状端部は、前記シートシェルの外壁に接触し、
前記中央部分は、カムラッチからなる前記ロック機構があり、
円筒形でポット状の前記近位部分は、前記シートシェルに固定的に配置されており、該シートシェル内に埋め込まれているチャイルドセーフティシートSirona。」


(2−2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲8〜12発明とを対比する。
(ア)後者の「自動車に用いられるチャイルドセーフティシートSirona」は、前者の「車両に用いられる安全チャイルドシート(1)」に相当する。
(イ)後者の「子供の座席を囲むシートシェル」は、前者の「子供の着座エリアを囲むアウタシェル(2)」に相当し、後者の「側面衝撃保護部として機能する側部要素」は、前者の「保護部材(5)」に相当する。
(ウ)後者は「前記側部要素は、遠位部分、中央部分及び近位部分を備え、これらの部分は伸縮式に互いの内部へと移動させることができ」るものであるところ、甲第12号証の図7をも参照すると、後者の「側部要素」の「近位部分」は、「遠位部分、中央部分」を収納することが理解できるから、前者の「ハウジング要素(7)」に相当する。また、後者の「側面衝撃保護部として機能する側部要素」の「遠位部分、中央部分」は、前者の「衝撃要素(8)」に相当する。
(エ)後者の「円筒形でポット状の前記近位部分は、前記シートシェルに固定的に配置されており、該シートシェル内に埋め込まれている」は、前者の「ハウジング要素(7)は、アウタシェル(2)に埋め込まれていること」に相当する。
(オ)後者は「前記側部要素は、遠位部分、中央部分及び近位部分を備え、これらの部分は伸縮式に互いの内部へと移動させることができ」るものであるから、「遠位部分、中央部分」は、「近位部分」に装着され、近位部分に少なくとも一部が囲まれているといえること、また、後者は「機能位置で子供の座席から離れる方向にシートシェルから横方向へ突出する」ものであるから、後者の「機能位置で子供の座席から離れる方向にシートシェルから横方向へ突出するとともに、休止位置になることが可能な2つの側面衝撃保護部として機能する側部要素と、を備え、
前記側部要素は、遠位部分、中央部分及び近位部分を備え、これらの部分は伸縮式に互いの内部へと移動させることができ」ることは、前者の「衝撃要素(8)は、ハウジング要素(7)に装着され、ハウジング要素(7)に少なくとも一部が囲まれており、着座エリア(3)から離れる方向にアウタシェル(2)から横方向へ突出するように構成されていること、衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「車両に用いられる安全チャイルドシート(1)であって、
子供(4)の着座エリア(3)を囲むアウタシェル(2)と保護部材(5)を有し、
保護部材(5)は、ハウジング要素(7)と衝撃要素(8)を有し、
ハウジング要素(7)は、アウタシェル(2)に埋め込まれていること、及び
衝撃要素(8)は、ハウジング要素(7)に装着され、ハウジング要素(7)に少なくとも一部が囲まれており、着座エリア(3)から離れる方向にアウタシェル(2)から横方向へ突出するように構成されていること、
衝撃要素(8)は休止位置と動作位置の間を移動可能であること、
衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されている安全チャイルドシート(1)。」

〔相違点2’〕
本件発明1は、「ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えている」のに対し、
甲8〜12発明は、かかる「変形部位」が特定されていない点。

イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲8〜12発明とは相違点2’で相違するから、本件発明1は甲8〜12発明であるとはいえない。

(2−3)本件発明10〜12、14について
本件発明10〜12、14は、本件発明1の全ての構成を含み、さらに限定を加えるものであって、本件発明1と同様に、少なくとも、上記(1)アで検討した相違点2’が存在するから、甲8〜12発明であるとはいえない。なお、本件訂正により請求項2、8、9は削除されている。

2−2 無効理由2(進歩性の欠如)について
2−2−1 無効理由2−1について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アで検討した一致点で一致し、相違点1、2で相違する。

イ 判断
(ア)上記相違点1について以下検討する。
甲1発明の「側部要素(30)」は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備し、」「休止位置において、テレスコープ機構により前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、前記キノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触するものであ」って、上記2−1 2−1−1(1)アの対比で述べたとおり、甲1発明の「筒状部材A、B」及び「キノコ状端部(80)」は、前者の「衝撃要素(8)」に相当し、後者の「筒状部材C」は、前者の「ハウジング要素(7)」に相当するところ、筒状部材A、Bが、休止位置において、テレスコープ機構により、筒状部材Cの中に収容され、シートシェル(20)内に押し込まれる際に、筒状部材A、Bを確実に案内して収容するために、筒状部材Cの長さを筒状部材A、Bの長さの同等に設計することは想起できることであり、筒状部材A、Bの長さ分を確保するために、該筒状部材Cをシートシェル(20)に埋め込まれるように設置することは、当業者であれば適宜なし得ることである。
したがって、上記相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

(イ)上記相違点2について以下検討する。
甲1発明は、「前記側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるもの」であり、「前記側面衝突保護部は側部要素(30)を有」するものであるから、甲1発明の側部要素(30)はクラッシュゾーンとして機能するものである。
そして、「クラッシュゾーン」とは、一般的に衝突時につぶれて衝撃を吸収するようにした部分を意味するところ、側部要素(30)をクラッシュゾーンとして機能させるために、側部要素(30)を構成する「筒状に作られた筒状部材A、B、C」、「キノコ状端部(80)」、及び「部材A、B、Cを所望の長さに設定し、」「所望の長さへの継続固定を行う」「ロック機構(90)」のうちのいずれかの部材の強度等を調整して、いずれかの部材に変形部位が存在するようにすることは当業者が通常の創作能力の発揮において行い得るものであり、その際に、甲第1号証の段落[0006]に記載された「チャイルドセーフティシート に座った子供に加わる力を大きく下げることができ、従来のチャイルドセーフティシートに比べて子供が傷つく可能性が大きく低下する。」との作用効果が奏し得るように、側部要素(30)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

(ウ)被請求人の主張について
被請求人は、本件訂正後の請求項1の「ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えている」ことについて、令和2年12月16日付けの被請求人答弁書(以下、「被請求人答弁書」ともいう。)で、「変形部位(9)には、『衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している』、つまり変形により力を吸収するための積極的(能動的)な変形性(いずれの部材(材料)にも内在し得る単なる偶発的な自然変形を超える変形性)が必須とされる。」(「7.(4)(シ)」11ページ下から4行〜末行)、及び「甲第1号証において、伸縮機構及び側面衝突保護部並びにクラッシュゾーンは、変形により衝撃力を吸収するための積極的(能動的)な変形性を具備していない。すなわち、甲第1号証には、『ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えていること』という本件特許発明1の構成要素Gは記載されていない。」(第12ページ「7.(4)(ソ)」には、)と主張している。
しかしながら、本件訂正後の請求項1の「変形部位(9)」は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適しているものと特定されるだけであって、本件明細書の段落【0010】の「このような変形部位は、衝撃要素に作用する力によってハウジング要素または衝撃要素が変形するのを許す。変形部位の変形によって、衝撃エネルギーが吸収され、従って、本発明の安全チャイルドシートを備えた車両が側面衝突すると、安全チャイルドシートに対する衝撃が吸収される。変形部位は塑性的にまたは弾性的に変形するように構成されることが好ましい。」との記載を参照しても、変形部位は塑性的にまたは弾性的に変形するに留まるものであるから、本件発明1の「変形部位(9)」は、一般的なクラッシュゾーンによる変形との差異を特定しているものとはいえない。
したがって、被請求人の主張は採用できない。

(エ)そして、本件発明1の作用効果も、甲1発明から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)本件発明10について
ア 対比
本件発明10と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点3の点で相違する。
〔相違点3〕
本件発明10は、「衝撃要素(8)とハウジング要素(7)は、衝撃要素(8)を動作位置から休止位置に移動させることによって、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収し、衝撃要素(8)は、上部(8a)と基部(8b)を備えており、上部(8a)は基部(8b)の上部に備えられており、上部(8a)は基部(8b)より径方向に幅広であり、衝撃要素(8)がハウジング要素(7)内に完全に後退すると、上部(8a)の外端部がアウタシェル(2)上に位置する」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」及び「筒状部材C」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点3について検討する。
本件発明10の「衝撃要素(8)」に相当する甲1発明の「筒状部材A、B」と本件発明10の「ハウジング要素(7)」に相当する「筒状部材C」が、前記筒状部材A、Bを動作位置から休止位置に移動させることによって、前記筒状部材A、Bが受けた衝撃力を吸収する点が、甲1発明にはなく、また甲第1号証にも記載も示唆もされていない。
また、前記相違点3に係る本件発明10の構成が技術常識若しくは周知技術であると認めるに足る証拠はないから、前記相違点3に係る本件発明10の構成が、当業者が必要に応じて適宜選択し得る選択肢に含まれるとは認められず、甲1発明において、前記相違点3に係る本件発明10の構成とすることが設計的事項であるともいえない。
したがって、上記相違点3に係る本件発明10の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明10は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明11について
本件発明11と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比に加えて、後者の「休止位置において、テレスコープ機構により前記シートシェル(20)の中に押し込まれ、前記側部要素(30)の前記キノコ状端部(80)が前記シートシェル(20)の背部(70)に接触するものであり、機能位置での使用のために前記休止位置から前記テレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ことは、機能位置ではもとより、休止位置においても筒状部材Aの先端に具備するキノコ状端部(80)が常時シートシェル(20)から突き出るように構成されているといえるから、前者の「衝撃要素(8)は常時アウタシェル(2)から突き出るように構成されている」ことに相当するといえるし、仮に、相当するといえないとしても、常時、機能位置としておくことで側部要素(30)の「筒状部材A、B、C」を含めて突き出るように構成することも当業者であれば適宜なし得ることである。
そうすると、本件発明11と甲1発明とは、上記(1)アの対比で検討した相違点1、2で相違するものであるところ、該相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得たものである。
したがって、本件発明11は、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3)本件発明12について
ア 対比
本件発明12と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点4の点で相違する。
〔相違点4〕
本件発明12は、「アウタシェル(2)はサイドウィング(13)を有し、ハウジング要素(7)はサイドウィング(13)に埋め込まれている」のに対し、
甲1発明は、「前記側面衝突保護部は側部要素(30)を有し、前記側部要素(30)は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備し、前記側部要素(30)は、前記シートシェル(20)の背部(70)の両側面に取り付けられ」るものであるが、「筒状部材C」がサイドウィングに埋め込まれている点が特定されていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点4について検討する。
甲1発明は、「前記シートシェル(20)は、子供が着座するシート面60が設けられたベース部と背部(70)とを有し、前記シート面(60)を囲むとともに側面衝突保護部を有し」ているところ、FIG.1等からみて、甲1発明の「背部(70)」は、サイドウィングを有するものといえる。
また、甲1発明は「前記側部要素(30)は、前記シートシェル(20)の背部(70)の両側面に取り付けられ、」「機能位置での使用のために前記休止位置から前記テレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ものであるから、サイドウィングでも「背部(70)」に近いエリアに「筒状部材C」を配置し、側方力を子供の体の後方の緩衝機能を有するシートシェル(20)に導くように構成することで、上記相違点4に係る本件発明12の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明12は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(4)本件発明13について
ア 対比
本件発明13と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点5の点で相違する。
〔相違点5〕
本件発明13は、「アウタシェル(2)はベース部(14)を有し、ハウジング要素(7)はベース部(14)に埋め込まれている」のに対し、
甲1発明は、「前記シートシェル(20)は、子供が着座するシート面60が設けられたベース部と背部(70)とを有し、前記シート面(60)を囲むとともに側面衝突保護部を有し、前記側部要素(30)は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備するとともに、前記筒状部材Aの先端にキノコ状端部(80)を具備し、前記側部要素(30)は、前記シートシェル(20)の背部(70)の両側面に取り付けられ」るものであるが、「筒状部材C」がベース部に埋め込まれている点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点5について検討する。
甲1発明は「力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであ」るから、側方力を子供の体の後方に導くことが困難であるベース部に「筒状部材C」を配置することには、阻害要因が存在する。
したがって、上記相違点5に係る本件発明13の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明10は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)本件発明14について
ア 対比
本件発明14と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点6の点で相違する。
〔相違点6〕
本件発明14は、「ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)と一体に形成されている」のに対し、
甲1発明は、かかる点が特定されていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点6について検討する。
本件発明14の「ハウジング要素(7)」及び「アウタシェル(2)」に相当する甲1発明の「筒状部材C」と「シートシェル(20)」を一体に形成することは、当業者にとって格別な困難性を生じない設計的事項であるから、上記相違点6に係る本件発明14の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明14は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(6)本件発明15について
ア 対比
本件発明15と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点7の点で相違する。
〔相違点7〕
本件発明15は、「衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」に関し、かかる点が特定されていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点7について検討する。
甲1発明の「側部要素(30)」は、「力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであ」るところ、側方力を導くためには、「側部要素(30)」が具備する「筒状部材A、B」が剛体である必要がある。そして、材質についても、選択の余地があり、熱可塑性材料である熱可塑性樹脂(や多くの金属)は、チャイルドシートの材料として、例示するまでもなく周知であることを勘案すると、「筒状部材A、B」の材質として熱可塑性材料の成形品を採用することには格別な困難性はないから、上記相違点7に係る本件発明15の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明15は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(7)本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2及び上記(6)アの対比における相違点7を含む、以下の相違点8の点で相違する。
〔相違点8〕
本件発明16は、「衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されて」おり、「上記剛体はねじ山(8c)を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」に関して、かかるねじ山を備える点が特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イで判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであり、相違点8の前段の「衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されて」いることは、上記(6)イで判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点8の後段について検討する。
筒状部材A、Bがねじ山を備えていることは、甲1発明にはなく、また甲第1号証にも記載されておらず、示唆もない。
したがって、上記相違点8に係る本件発明16の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明16は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(8)本件発明18について
ア 対比
本件発明18と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点10の点で相違する。
〔相違点9〕
本件発明18は、「安全チャイルドシートの両側にそれぞれ少なくとも2つの保護部材(5)が装着され、そのうちの少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の上半分に位置し、少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の下半分に位置している」のに対し、
甲1発明は、「側面衝突保護部」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点9について検討する。
チャイルドセーフティシート(10)の両側にそれぞれ少なくとも2つの側面衝突保護部が装着され、そのうちの少なくとも1つの側面衝突保護部は、チャイルドセーフティシート(10)の上半分に位置し、少なくとも1つの側面衝突保護部は、チャイルドセーフティシート(10)の下半分に位置していることは、甲1発明にはなく、また甲第1号証にも記載されておらず、示唆もない。
したがって、上記相違点9に係る本件発明18の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明18は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2−2−2 無効理由2−2について
無効理由2−2は、甲1発明と甲8〜12発明に基づき進歩性を否定するものであが、上記2−1−2(1)で述べたとおり、甲8〜12発明が、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された発明であるとは認められないから、進歩性を否定するための発明として甲8〜12発明を採用することはできない。
他方、上記2−2−1の無効理由2−1について述べたとおり、本件発明1、11、12、14、15は、甲1発明から当業者であれば容易に想到し得たものであるから、甲8〜12発明との組合せを検討するまでもなく、上記2−2−1でのべたとおり、本件発明1、11、12、14、15は、甲1発明に基いて当業者であれば容易に想到し得たものであり、本件発明10は、甲1発明に基いて当業者であれば容易に想到し得たものとはいえない。

2−2−3 無効理由2−3について
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点10の点で相違する。
〔相違点10〕
本件発明3は、「衝撃要素(8)は衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備え、変形部位(9)は圧縮性が異なる複数の領域を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点10について検討する。
甲第2号証には、上記1(2)(2−2)で述べた、以下の甲2発明が記載されている。
「外部からの衝撃力によるエネルギを放散するためのエネルギ放散装置を備える幼児拘束装置において、
エネルギ放散装置が、ヘッドレスト内に含まれた第1の横パネルの外壁に取り付けられた左ライドダウンパッドと、上記ヘッドレストに含まれた反対側の第2の横パネルの外壁に取り付けられた右ライドダウンパッドとを備え、
各ライドダウンパッドが、第1の空気室を含むよう形成された第1のバッグと、前記第1の空気室内に開口する前向きの第1空気放出ポートと、前記第1の空気室内に配置される寸法にされた第1の変形可能なクッションとを有する第1の(内側の)力放散部、および、第2の空気室を含むよう形成された第2のバッグと、前記第2の空気室内に開口する後ろ向きの第2の空気放出ポートと、前記第2の空気室内に配置される寸法にされた第2の変形可能なクッションとを有する第2の(外側の)力放散部を備える多段ユニットであって、
力放散部を生成するために、前記第1のバッグに対し4つのクッションと、前記第2のバッグに対し4つのクッションと、を備え、それぞれのクッションが、出入口バッグの空気室内にクッションを形成し、外部の衝撃力を受けたとき異なる変形特性を有し、4つの使用できるクッションから所望のクッションを選択し、出入口バッグ内に選択されたクッションを配置することにより、それぞれの力放散部の変形性能が変化可能となるように構成する幼児拘束装置。」

甲1発明と甲2発明とは、チャイルドシートにおいて子供に衝撃を与えないための安全機構である点で共通する。
しかしながら、甲1発明は、本件発明3の「衝撃要素(8)」に相当する「側面衝突保護部」が「有」する「側部要素(30)」は、「クラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであ」るから、側方力をシートシェル(20)に導く力方向変更装置としても機能するものであるのに対して、甲2発明は、側方力をライドダウンパッドにより放散するものであるから、子供に衝撃を与えないための安全機構としての作用機序が異なるものである。
そして、甲1発明の「筒状部材A、B」に甲2発明の「ライドダウンパッド」を適用すると、側方力をシートシェル(20)に導く力方向変更装置としての機能が果たせなくなるものであるから、甲1発明に甲2発明を適用することには阻害要因が存在するといえる。
したがって、上記相違点10に係る本件発明3の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明3は、甲1発明と甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点11の点で相違する。
〔相違点11〕
本件発明5は、「ハウジング要素(7)は圧縮可能な側壁(10)を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材C」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点11について検討する。
本件発明5の「ハウジング要素(7)」に相当する「筒状部材C」に圧縮可能な側壁を備える構成は、甲第1号証及び甲第2号証に記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点11に係る本件発明5の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明5は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明6について
本件発明6は、本件発明5の全ての構成を含み、さらに限定を加えるものであって、本件発明5と同様に、少なくとも、上記(2)アで検討した相違点11が存在するから、甲1発明と甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明17について
ア 対比
本件発明17と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2に加えて、以下の相違点12の点で相違する。
〔相違点12〕
本件発明17は、「ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)上に位置するフランジ(112)を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材C」に関して、かかる点が特定されていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2 2−2−1(1)イの判断で検討したとおり 、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点12について検討する。
上記2−2 2−2−1(1)イで検討したとおり、本件発明17の「ハウジング要素(7)」に相当する「筒状部材C」を「シートシェル(20)」に埋め込まれる構成にすることは容易であるところ、部材を埋め込み固定する際、フランジを設けて固定することは、例示するまでもなく周知技術であって、該「筒状部材C」と「シートシェル(20)」の固定手段として、「筒状部材C」が「シートシェル(20)」上に位置するフランジを設ける構成にすることは、当業者にとって格別困難なことではないから、上記相違点12に係る本件発明17の構成にすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明17は、甲2発明を検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

2−2−4 無効理由2−4について
(1)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2、及び、上記2−2−3(1)アの対比における相違点10の内容を含む以下の相違点10’の点で相違する。
〔相違点10’〕
本件発明4は、「衝撃要素(8)は衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備え、変形部位(9)は圧縮性が異なる複数の領域を備えて」おり、「変形部位(9)は上記衝撃要素(8)に備えられていて、発泡構造体を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点10’について検討する。
甲第2号証の段落【0039】の記載、甲第3号証の段落[0003]、甲第4号証の7頁21〜28行の記載、及び甲第5号証の段落[0030]の記載から、衝撃吸収要素として発泡構造体を用いることは従来周知の技術といえる。
しかしながら、上記相違点11’の前段部分(相違点11に対応)に関し、上記2−2−3(1)イで述べたのと同様に、甲1発明の「筒状部材A、B」に甲2号証〜甲5号証記載の「発泡構造」を適用してしまうと、側方力をシートシェル(20)に導く力方向変更装置としての機能が果たせなくなるものであるから、甲1発明に甲2号証〜甲5号証記載の周知技術を適用することには阻害要因が存在するといえる。
したがって、甲第2号証〜甲第5号証により、衝撃吸収要素として発泡構造体を用いることは従来周知の技術だとしても、上記相違点10’に係る本件発明4の構成にすることは、容易想到といえるものでないから、本件発明4は、甲1発明と甲第2号証〜甲第5号証に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2−2−5 無効理由2−5について
(1)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2、及び、上記2−2−3(2)アの対比における相違点11で相違する。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点11について検討する。
甲第4号証には、上記1(4)(4−2)で述べた、以下の甲4発明が記載されている。
「衝撃吸収要素30を備えるチャイルドシートであって、
衝撃吸収要素30はシェル32を有し、該シェル32は、正弦波形の形状を有する側壁35を含み、その結果、事故対象物の衝突により与えられるエネルギーにより側壁35を蛇腹効果により圧縮させるチャイルドシート。」

本件発明5の「ハウジング要素(7)」に相当する甲4発明の「側壁35」は、他の筒状部材(筒状部材A、B)を収納するような筒状部材(筒状部材C)ではないから、甲1発明及び甲4発明に基いて、上記相違点11に係る本件発明5の構成にすることは、容易想到といえるものでない。
したがって、本件発明5は、甲1発明及び甲4発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2−2−6 無効理由2−6について
(1)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2、及び、上記2−2−3(2)アの対比における相違点11の内容を含む以下の相違点11’の点で相違する。
〔相違点11’〕
本件発明6は、「ハウジング要素(7)は圧縮可能な側壁(10)を備えて」おり、「圧縮可能な側壁(10)は開口(11)を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材C」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点11’について検討する。
甲第4号証のFigure12及び甲第6号証の【図12】から、衝撃吸収要素に開口を設けて衝撃を吸収することは従来周知の技術といえる。
しかしながら、他の筒状部材(筒状部材A、B)を収納するような筒状部材(筒状部材C)は圧縮可能な側壁を備え、該圧縮可能な側壁は開口を備えている構成は、甲第4号証及び甲第6号証には記載されていないから、上記相違点11’に係る本件発明6の構成にすることは、容易想到といえるものでない。
したがって、本件発明6は、甲1発明、甲第4号証及び甲第6号証に例示された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2−2−7 無効理由2−7について
(1)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2、及び以下の相違点12の点で相違する。
〔相違点12〕
本件発明7は、「ハウジング要素(7)は固定支承(12)で支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材C」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点12について検討する。
無効理由2−7は、本件発明7について、甲1発明、並びに甲第2号証及び甲第8〜12号証に示された事項に例示される周知技術に基づき進歩性を否定するものであるが、上記「2−1−2 無効理由1−2について 」(1)で述べたとおり、甲8〜12発明が、本件特許の出願の優先日前に日本国内又は外国において公然知られ、又は公然実施された発明であるとは認められないから、進歩性を否定するための発明として甲第8〜12号証を採用することはできない。
しかしながら、甲1発明は「前記側面衝突保護部は側部要素(30)を有し、前記側部要素(30)は、筒状に作られた筒状部材A、B、Cを具備する」ところ、該「側面衝突保護部」は「側面衝突保護部はクラッシュゾーンとしてだけでなく力方向変更装置としても機能し、事故時に場合によって発生する側方力は子供の体に直線的に加わるのではなく子供の体の後方の緩衝機能を有する前記シートシェル(20)に導くように配置されるものであ」るから、本件発明7の「ハウジング要素(7)」に相当する「筒状部材C」は、「シートシェル(20)」で支持されているといえる。そして、甲1発明の「シートシェル(20)」は、衝撃力がチャイルドセイフティシート(10)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す部位といえるものである。
したがって、本件発明7は、甲第2号証及び甲第8〜12号証に例示された周知技術を検討るまでもなく、甲1発明に基いて当業者であれば容易に想到し得たものである。2−2−8 無効理由2−8について
(1)本件発明16について
ア 対比
本件発明16と甲1発明とを対比すると、上記2−1 2−1−1(1)アの対比における相違点1、2、及び、上記2−2−1(7)アの対比における相違点8の内容を含む以下の相違点8’の点で相違する。
〔相違点8’〕
本件発明16は、「衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されて」おり、「上記剛体はねじ山(8c)を備えている」のに対し、
甲1発明は、「筒状部材A、B」に関して、かかる点について特定がされていない点。

イ 判断
相違点1、2は、上記2−2−1(1)イの判断で検討したとおり、甲1発明から容易に想到し得るものであるから、ここでは相違点8’について検討する。
甲第7号証には、上記1(7)(7−2)で述べた、以下の甲7発明が記載されている。
「エネルギー吸収要素2を備えるチィルドシートであって、
エネルギー吸収要素2は、シートシェル7の領域11に配置され、くぼんだグリップ310により、シリンダー301をねじ山を介して、休止位置と機能位置との間を移動することができるチィルドシート。」

相違点8’の前段の「衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成され」ることは、上記2−2−1(6)イの判断で述べたように、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、後段の「上記剛体はねじ山(8c)を備えている」ことについて検討する。
甲1発明は「機能位置での使用のために前記休止位置から前記テレスコープ機構により、車両のドアの方向へ突出するように、伸縮式に伸ばされ得る」ものであるから、「筒状部材A、B」に、ねじ山を備える動機付けはなく、むしろ阻害要因があるものといえる。
したがって、上記相違点8’に係る本件発明16の構成にすることは、容易想到といえるものでない。
よって、本件発明16は、甲1発明及び甲7発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2−3 無効理由3(実施可能要件違反)について
(1)無効理由3の概要
無効理由3の概要は以下のとおりである。
「『固定軸受』とは、固定された軸受であり、その軸受の内部で回転運動または往復運動をする軸の荷重を支える機構であると理解される。
一方、請求項7及び明細書の記載によれば、『固定軸受』は『ハウジング要素』を経由して印加される直線的な衝撃に耐え得るものである。しかしながら、『固定軸受』が支持する軸とはどのようなものか、また、『固定軸受』がどのようにして直線的な衝撃に耐え得るのか、理解できない。」(審判請求書37頁1〜6行)
「また、『固定軸受』が、単に『何らかの荷重に耐えられるように固定された部品』を意味すると仮定する。この場合、『固定軸受』がどこに固定され得る部品であるか、理解できない。」(審判請求書37頁10〜12行)
したがって、請求項7に係る発明は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に明細書に記載されていない。

(2)検討
請求項7は本件訂正により、以下のように訂正された。
「【請求項7】
請求項1、3ないし6のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)は固定支承(12)で支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す安全チャイルドシート(1)。」

本件訂正により、「固定軸受(12)」は、「固定支承(12)」と訂正されたことにより、軸受ではなく単に荷重を支える部材として理解できるようになった。
また、訂正された請求項7の記載から、該「固定支承(12)」は「安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分」に固定されることが理解でき、該「安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分」としては、シートシェル(20)や該シートシェル(20)内にある補強部材等が考えられる。
したがって、本件訂正により訂正された請求項7に係る発明は、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に明細書に記載されていると認められる。

2−4 無効理由4(明確性要件違反)について
(1)無効理由4の概要
無効理由4の概要は以下のとおりである。
「無効理由3について述べた通り、本件特許の請求項7に記載の「固定軸受」は、衝撃力の吸収という課題の解決手段になり得るか、不明である。また、本件特許において「固定軸受」を設けることの技術的意味を、請求項7の記載から理解することができない。
したがって、請求項7の記載により特定される発明は明確ではない。」(審判請求書37頁27〜30行)

(2)検討
上記2−3で述べたように、本件訂正により、「固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す」と訂正されたことにより、請求項7に係る発明は明確になった。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、7、11、12、14、15、17に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。
そして、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項3〜6、10、13、16、18に係る発明についての特許を無効とすることができない。
また、本件特許の請求項2、8、9は,訂正により,削除されたため、本件特許の請求項2、8、9に対して,請求人がした審判の請求については,対象となる請求項が存在しない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その18分の11を請求人の負担とし、18分の7を被請求人の負担とする。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

審判長 佐々木 一浩
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】安全チャイルドシート
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全チャイルドシートに関し、より詳しくは、車両に用いられる安全チャイルドシートであって、座る子供に対する保護性能を向上させる安全チャイルドシートに関する。本発明の安全チャイルドシートは、種々の事故、特に、側面衝突を含む事故においてより優れた保護を提供するものである。
【0002】
多くの従来の安全チャイルドシートは、正面衝突事故において最適な保護が与えられるように設計されている。しかし、すべての事故のおよそ25%は側面から起こる。一般的に側面衝突事故での怪我は、正面衝突事故での怪我より深刻である。死傷事故の最高30%が側面衝突事故の結果であると見られている。従って、側面衝突事故から効果的に保護できる信頼性の高い安全チャイルドシートが必要とされている。
【0003】
安全チャイルドシートの側面衝突事故からの保護を向上させる試みは、種々の問題点にぶつかる。安全チャイルドシートのヘッドレストの内部に緩衝材(クッション要素)を設ける試みがなされたが、子供の頭部の保護だけが改善されたに過ぎない。子供の体の他の部分(例えば胴)の保護は、これらのクッション要素では改善されない。もう1つの試みにおいて、安全チャイルドシートの外側に大きな緩衝要素を取り付けることが行われた。これらの緩衝要素は安全チャイルドシートの側面からの衝撃保護を大幅に向上させることができるが、安全チャイルドシートの全体的な寸法が大きくなってしまう。これは、多くの状況で、例えば小さい乗物では問題である。さらにもう1つの試みにおいて、安全チャイルドシートに、種々の要因に適合可能な調節可能な保護部材を加えることが行われている。しかし、側面衝突からの保護を最適にするために、これらの安全チャイルドシートの調節可能な保護部材を常に最適に調節することは、簡単ではない。
【0004】
その結果、安全チャイルドシートの側面衝突保護を改善することの従来の多くの試みは、使いにくいという問題点が伴うものであった。そのうえ、これら従来の安全チャイルドシートの多くは、側面衝突事故に際して、不満足で不十分な保護結果しか得られていない。
【0005】
従って本発明は、座っている子供を側面衝突事故からより一層保護することができる安全チャイルドシートを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を備えた本発明の車両用安全チャイルドシートによって達成することができる。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項3〜7、10〜18に示されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による車両用安全チャイルドシートは、子供の着座エリアを囲むアウタシェルと保護部材を有している。この保護部材は、ハウジング要素と衝撃要素を有し、このハウジング要素は、アウタシェルに埋め込まれており、衝撃要素は、ハウジング要素に装着され、ハウジング要素に少なくとも一部が囲まれており、着座エリアから離れる方向にアウタシェルから横方向へ突出するように構成されている。
【0008】
安全チャイルドシートのアウタシェルに保護部材のハウジング要素を埋め込むことによって、保護部材に必要なスペースを最小にすることができる。ハウジング要素は、アウタシェルから突き出ないことが好ましい。ハウジング要素がアウタシェルに埋め込まれるとともに、衝撃要素がハウジング要素に取り付けられ、かつ少なくとも一部が該ハウジング要素に埋め込まれると、衝撃要素は少なくとも部分的にアウタシェル内に埋め込まれまたは沈み込むので、アウタシェルから完全に突出することがない。その結果、衝撃要素を請求項1のようにハウジング要素に取り付けられると、衝撃要素をアウタシェルに直接装着する場合に比較して、省スペースを図ることができる。
【0009】
本発明において、ハウジング要素または衝撃要素は、衝撃要素が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位を備えていることが好ましい。
【0010】
このような変形部位は、衝撃要素に作用する力によってハウジング要素または衝撃要素が変形するのを許す。変形部位の変形によって、衝撃エネルギーが吸収され、従って、本発明の安全チャイルドシートを備えた車両が側面衝突すると、安全チャイルドシートに対する衝撃が吸収される。変形部位は、塑性的にまたは弾性的に変形するように構成されることが好ましい。変形部位が塑性変形するように構成されるならば、変形部位が変形しているとき、衝撃エネルギーは熱に変わる。変形部位が弾性的に変形するように構成されるならば、衝撃エネルギーは、衝撃エネルギーは変形可能な部位に一時的に保管されるポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)に変換され、次いで、変形可能な領域が元の形状に復元するとき、最終的に運動エネルギーに変化する。ハウジング要素は第1の変形部位を備え、衝撃要素は第2の変形部位を備えることが好ましい。第2の変形部位の特性を第1の変形部位の特性に合わせることによって、保護部材のクッション効果を、最大にすることができる。
【0011】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材の衝撃要素の変形部位は、圧縮性が異なる複数の領域を備えていることが好ましい。これにより、保護部材のクッション効果をいろいろな要因、例えば安全チャイルドシートと隣接したドアとの距離に適合させることができる。
【0012】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材のハウジング要素は、圧縮可能な側壁を備えていることが好ましい。すると、衝撃エネルギーは、圧縮可能な側壁を圧縮することで吸収される。圧縮可能な側壁には、二つの作用がある。第一に、衝撃要素が取り付けられるハウジング要素の構造構成要素として、衝撃要素を安全チャイルドシートのアウタシェルに取り付けることができる。第二に、側壁は圧縮可能であるから、衝撃エネルギーを保護部材に吸収させることができる。ハウジング要素は、ハーモニカ・タイプの側壁から構成することが好ましい。
【0013】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材のハウジング要素の圧縮可能な側壁は、開口を備えていることが好ましい。圧縮可能な側壁に開口を設けると、側壁を簡単に圧縮可能とすることができる。また、ハウジング要素の圧縮可能な側壁に開口を設けることによって、ハウジング要素の重さを減らすことができる。
【0014】
本発明の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素は、固定支承で支持されることが好ましい。この固定支承は、衝撃力が安全チャイルドシートの構造的に安定した部分に導かれるのを許す。
【0015】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材の衝撃要素は、休止位置と動作位置の間を移動可能に設けることが好ましい。つまり、衝撃要素は、動作位置または休止位置に位置させることができる。従って、保護部材は、2つの異なった構成を採用することができる。第1の構成では、衝撃要素が休止位置に配置されており、第2の構成では、衝撃要素が動作位置に配置されている。保護部材に2つの異なった構成を提供することにより、保護部材の保護効果を特定のニーズに適応させ、かつ保護部材に必要なスペースを容易に減らすことができる。
【0016】
本発明の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェルから突き出るように構成されていることが好ましい。衝撃要素は、休止位置にあるときには、アウタシェルから突出しないように構成することが望ましい。その結果、衝撃要素が動作位置に位置するときには、保護部材の保護効果が最大になる。加えて、衝撃要素が休止位置にあると、保護部材に必要なスペースが最小になる。従って、2以上の保護部材を備えた本発明による安全チャイルドシートにおいて、これらの保護部材の一部を休止位置に保持しながら、残りの保護部材を動作位置に移動させることができる。特に、安全チャイルドシートを備えた車両のドアに近接する保護部材を動作位置に位置させ、ドアから離れた保護部材を休止位置に位置させることが好ましい。このようにして、安全チャイルドシートのドア側の面に効果的にクッション効果を発揮させながら、他方の側面に要するスペースを最小とすることができる。安全チャイルドシートの両側にクッション性が必要とされる場合、例えば、安全チャイルドシートの隣りのシートに座っている人を保護する場合には、安全チャイルドシートの両側の保護部材の衝撃要素を動作位置に位置させることができる。
【0017】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材の衝撃要素とハウジング要素は、衝撃要素が動作位置から休止位置へ移動することで衝撃要素に加わる力を吸収するクッション効果を発揮するように構成することが好ましい。このクッション効果はまた、衝撃要素が動作位置から休止位置に移動するにつれて生じる摩擦によって得ることが可能である。すると、衝撃要素が動作位置から休止位置に移動する間、衝撃エネルギーは、熱に変わる。
【0018】
本発明の安全チャイルドシートにおいて、保護部材の衝撃要素は、常時シェルから突出するようにすることが好ましい。衝撃要素を常時シェルから突出させることによって、保護部材のデザインを単純化することができる。また、衝撃要素がシェルから常時突き出ていることによって、常時クッション作用を期待できることから、誤使用を防ぐことができる。
【0019】
本発明の安全チャイルドシートのアウタシェルは、サイドウィングを有し、このサイドウィング内にハウジング要素が埋め込まれていることが好ましい。サイドウィング自体でチャイルドシートに座っている子供を囲み、側面衝突から保護することができる。この保護効果は、サイドウィングに埋め込まれたハウジング要素の保護部材によって強化することができる。保護部材のハウジング要素をサイドウィングに埋め込むと、サイドウィングに側面から作用する力を保護部材によって緩和することができる。その結果、子供に作用する側面からの力を小さくすることができる。
【0020】
本発明の安全チャイルドシートのアウタシェルは、ベース部を有し、このベース部にハウジング要素が埋め込まれていることが好ましい。ベース部にハウジング要素を埋め込むことによって、保護部材を安全チャイルドシートの下方、つまり、安全チャイルドシートに座っている子供のお尻に近い部分に位置させることができる。これにより、保護部材から安全チャイルドシートへ、そして安全チャイルドシートから子供へ伝達される衝撃力は、子供のお尻の近くに伝達される。すなわち、衝撃力が子供の体の強固な部分に伝達されるため、好ましい。
【0021】
本発明の安全チャイルドシートは、複数の保護部材を有することが好ましい。保護部材は、安全チャイルドシートの両側に取り付けることが好ましい。安全チャイルドシートの両側にそれぞれ少なくとも2つの保護部材が取り付けられ、そのうちの少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシートの上半分に位置させ、少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシートの下半分に位置させることが好ましい。安全チャイルドシートの上半分に位置させる保護部材は安全チャイルドシートのサイドウィングに取り付けられ、下半分に位置させる保護部材は安全チャイルドシートのベース部分に取り付けられることが好ましい。
【0022】
本発明の安全チャイルドシートにおいて、保護部材のハウジング要素は、アウタシェルと一体に形成することが好ましい。これによって、本発明の安全チャイルドシートの製造工程を単純化することができる。また、安全チャイルドシートの重さを減少させることができ、安全チャイルドシートの構造の複雑さを最小にすることができる。
【0023】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材の衝撃要素は、熱可塑性材料から形成される剛体から構成することが望ましい。熱可塑性材料から剛体を成形することによって、衝撃要素の重さと生産コストを低く抑えることができる。また、剛体からなる本体は、損害を受けることなく高い衝撃力に抵抗するように構成することができる。
【0024】
本発明の安全チャイルドシートの保護部材の衝撃要素の剛体は、ねじ山を備えていることが好ましい。このねじ山は、衝撃要素の回転運動を直線運動に変換する。ねじ山は、衝撃要素を回転させることによって休止位置と動作位置の間を移動させることが好ましい。また、衝撃要素は、高い力のアプリケーションなしで、休止位置と動作位置の間を簡単に移動させることができる。
【0025】
本発明の安全チャイルドシートにおいて、保護部材のハウジング要素はアウタシェル上に位置するフランジを備えていることが望ましい。このフランジによって、ハウジング要素を安全チャイルドシートのアウタシェルにしっかりと取り付けることができる。その結果、衝撃要素からハウジング要素へ移される衝撃要素に作用している衝撃力を、安全チャイルドシートのアウタシェルに、問題なく、そして、確実に導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下、本発明の特定の実施形態を添付図面について説明する。添付の図面において:
【図1a】本発明による安全チャイルドシートの第1の実施形態を示す、シートに子供が座っている状態の斜視図である。
【図1b】図1aの安全チャイルドシートの側面図である。
【図2】本発明による安全チャイルドシートの第2の実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明による安全チャイルドシートの第3の実施形態を示す詳細図である。
【図4a】図3の実施形態の保護部材の側面図である。
【図4b】図3の実施形態の保護部材の別の実施形態の側面図である。
【図4c】図3の実施形態の保護部材のさらに別の実施形態の側面図である。
【図4d】図3の実施形態の保護部材の別の実施形態の側面図である。
【図5】本発明による安全チャイルドシートの別の実施形態の詳細を示す図である。
【図6】本発明による安全チャイルドシートの別の実施形態の詳細を示す図である。
【図7】本発明による安全チャイルドシートの別の実施形態の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1aは、本発明の第1の実施例による子供4を乗せるための車両の安全チャイルドシート1を示している。安全チャイルドシート1は、子供4の着座エリア3を囲むアウタシェル2を備えている。アウタシェル2は、サイドウィング13を有する背もたれ103を備えている。アウタシェル2は、さらにベース部14を備えている。加えて、安全チャイルドシート1は、背もたれ103に備えられたヘッドレスト6を有している。子供4はベース部14に座り、ヘッドレスト6に頭を位置させて背もたれ103に凭れる。サイドウィング13は、両側から子供4の胴体を囲むように構成されている。安全チャイルドシート1は、サイドウィング13に取り付けられる2つの保護部材5をさらに備えている。図1aでは、右ウィング13に取り付けられた保護部材5は該右側ウィング13によって隠れているので、左ウィング13に取り付けられた保護部材5だけが見えている。保護部材5は、サイドウィング13の上半分に取り付けられており、子供4の頭と肩の近傍に位置している。保護部材5は、サイドウィング13から横に突出しており、サイドウィング13は、アウタシェル2の一部であるので、同時にアウタシェル2から突出している。
【0028】
従来、車両に子供を乗せるための安全チャイルドシートは車両のシートの1つに装着されている。このため、車両に装着されると、通常車両のドアの1つに隣接することになる。従って、安全チャイルドシートを備えた車両に側面衝突が生じると、安全チャイルドシートは、通常車両のドアの1つに衝撃を与える。この衝撃が厳しいならば、安全チャイルドシートに座っている子供は負傷してしまう。
【0029】
本発明の安全チャイルドシート1は、保護部材5がアウタシェル2から横に突き出ているので、安全チャイルドシート1を搭載している車両に側面衝突が生じた場合、車両のドアに対向している保護部材5が最初に車両に衝突する要素である。従って、保護部材5は、非常に初期の段階で安全チャイルドシート1に加わる衝撃力をコントロールすることができる。
【0030】
図1bは、図1aの安全チャイルドシートの側面図である。この図は、保護部材5がサイドウィング13の大部分をカバーしていることを示している。従って、保護部材5に対する衝撃力は、保護部材5からサイドウィング13へ伝達されてサイドウィング13の広い領域に分散される。その結果、サイドウィング13に高いピークカが発生することを避けることができる。このような高いピークカはサイドウィング13に損傷を与え、子供4に重傷を負わせる可能性が高い。
【0031】
図2は、本発明の第2の実施形態による安全チャイルドシート1の側面図である。この安全チャイルドシート1は、その両側にそれぞれ2つの保護部材を備えている点で、図1a及び1bの安全チャイルドシートと異なる。特に、図2で示すように、本安全チャイルドシート1は、サイドウィング13に取り付けられる第1の保護部材5aとベース部14に取り付けられる第2の保護部材5bとを備えている。図2は安全チャイルドシート1の左側だけを表しており、従って、2つの保護部材だけが見えている。図2では見えない2つの保護部材が、さらに安全チャイルドシート1の右側に設けられている。安全チャイルドシート1の両側に2つの保護部材を設けることによって、安全チャイルドシート1と車両の接触可能領域を増加させることができる。第1の保護部材5aと第2の保護部材5bは、側面衝突事故のときに、衝撃力をアウタシェル2へ導く2つの荷重経路(ロードパス)を構成する。2本の荷重経路を設けることによって、アウタシェル2の中で衝撃力を拡散することができる。
【0032】
図1a及び図1bの安全チャイルドシート1の保護部材5と、図2の保護部材5aと5bは、休止位置と動作位置の間を移動可能とすることが好ましい。保護部材は、休止位置に位置するときよりも動作位置に位置するときに、安全チャイルドシートのアウタシェルから突き出るように構成されていることが好ましい。保護部材5、5a、5bは、安全チャイルドシート1のアウタシェル2から常時突き出るように構成されていてもよい。
【0033】
図3は、本発明の好ましい実施形態による安全チャイルドシートの保護部材5の部分断面図である。図3は、保護部材5を有する安全チャイルドシートのアウタシェル2の断面を示している。保護部材5は、ハウジング要素7と衝撃要素8を備えている。ハウジング要素7は、安全チャイルドシートのアウタシェル2に埋め込まれている。すなわち、アウタシェル2は、ハウジング要素7を受け入れる穴を備えている。ハウジング要素7はカップ形状をなしていて、圧縮可能な側壁10と底部領域101を備えている。底部領域101は円形であることが好ましい。圧縮可能な側壁10は、複数の開口11を有している。図3の実施形態では、開口11は、楕円形をなしている。開口11は、ハウジング要素7が矢印16で示される方向に圧縮及び伸張されるような形状とされている。ハウジング要素7の圧縮可能な側壁10は、変形部位(変形領域)9を構成している。ハウジング要素7の底部領域101は、固定支承12で支持されている。ハウジング要素はさらに、雌ねじ7aを有している。
【0034】
衝撃要素8は、上部8aと基部8bを備えている。上部8aは、基部8bの上部に備えられている。図3に示すように、上部8aは、基部8bより径方向に幅広である。上部8aは、基部8bと一体に成形されることが好ましい。基部8bは基本的に円筒形をなし、雄ねじ8cを備えている。衝撃要素8の雄ねじ8cは、ハウジング要素の雌ねじ7aと共にねじを構成する。このねじで、衝撃要素8は第1の方向に回転させることによってハウジング要素7から突出し、第1の方向と反対の第2の方向に回転させることによって、ハウジング要素7内に後退する。第1の方向は反時計回りで、第2の方向は時計回りであることが好ましい。
【0035】
衝撃要素8がハウジング要素7内に完全に後退すると、上部8aの外端部はアウタシェル2上に位置する。この休止位置では、衝撃要素8に矢印20で示される方向の力が作用しても、衝撃要素をアウタシェル2に押し込むことはできない。休止位置にある衝撃要素8が第1の方向に回転させられると、衝撃要素8はハウジング要素7から徐々に突出する。保護部材5は、衝撃要素8が完全にハウジング要素7から引き出されるのを防ぐストッパ部を有することが好ましい。ストッパ部は、衝撃要素8上に設けることが好ましい。ストッパ部は、衝撃要素8のハウジング要素7からの最大突出位置を定める。この位置は同時に、動作位置でもある。図3の実施形態において、衝撃要素8は、休止位置(完全に後退した位置)と動作位置(完全に突出した位置)との間のいずれの中間位置もとることができる。図3は、これらの中間位置の1つを表している。
【0036】
衝撃要素8が動作位置(または図3の中間位置)に位置しているとき、衝撃要素8に矢印20方向に作用する力は、衝撃要素8の上部8aから、基部8bと雄ねじ8cを介して、ハウジング要素7の雌ねじ7aへ伝達される。この力は、雌ねじ7aがハウジング要素7の圧縮可能な側壁10の上端近傍に位置しているので、雌ねじ7aから圧縮可能な側壁10へ伝達される。この力はさらに、圧縮可能な側壁10から底部領域101を通して固定支承12に最後に伝達される。圧縮可能な側壁10が圧縮できるので、この力の流れはハウジング要素7の圧縮可能な側壁10を圧縮することになる。このため、衝撃要素8は、安全チャイルドシートのアウタシェル2内に押し込まれる。その結果、衝撃要素8が動作位置に位置しているとき、衝撃力は衝撃要素8をアウタシェル2に押し込むことになる。この過程において、圧縮可能な側壁10を圧縮することで衝突エネルギーが吸収され、安全チャイルドシートに対する衝撃が吸収される。
【0037】
衝撃要素8とハウジング要素7の寸法と形状によって、衝撃要素8の上部8aがアウタシェル2に接触するまで、または、衝撃要素8の基部8bがハウジング要素7の底部領域101に衝突するまで、あるいはハウジング要素7の圧縮可能な側壁10が完全に圧縮されるまで、衝撃要素8はアウタシェル2に押し込まれることができる。第1の場合では、衝撃要素8に衝撃を与えている力はアウタシェル2を通して安全チャイルドシートへ最後に伝達されるのに対し、第2、第3の場合では、力は固定支承12を介して安全チャイルドシートへ最終的に伝達される。
【0038】
図4a−4dは、本発明のさらに別の実施形態を示すもので、保護部材5の変形例を示している。図4aの実施形態においては、保護部材5のハウジング要素7は、複数の三角形の開口11を備えている。図4bの実施形態においては、保護部材5のハウジング要素7は、複数の曲がった開口11を備えている。図4cの実施形態においては、保護部材5のハウジング要素7は、複数の楕円開口11を備えている。楕円開口11は、規則的なパターンで配置されている。図4dの実施形態においては、保護部材5のハウジング要素7は、ハウジング要素7の側壁のまわりで螺旋を描く一つ、または一つ以上の開口11を備えている。図4a−4dの4つの全ての実施形態において、保護部材5のハウジング要素7の側壁10は、開口11を備えることで圧縮できる。
【0039】
図5は、本発明のもう1つの実施形態による安全チャイルドシートの保護部材5を示している。この実施形態においては、保護部材5のハウジング要素7の側壁111は、硬質で圧縮できない。ハウジング要素7の側壁111は、如何なる開口も備えないことが好ましい。このハウジング要素7は、先の実施形態と同様に、安全チャイルドシートのアウタシェル2に埋め込まれる。しかし、この実施形態では、ハウジング要素7の上端部は、アウタシェル2上に位置するフランジ112を備えている。さらにまた、ハウジング要素7を受け入れるアウタシェル2の開口の近傍において、アウタシェル2は固定支承12で支持されている。ハウジング要素7の底部領域101は、固定支承12によっても支持される。
【0040】
保護部材5の衝撃要素8は、図3に関連して述べたように、ハウジング要素7に設けられている。しかし、図5の実施形態においては、衝撃要素8は、変形部位(変形可能領域)9を備えている。変形部位9は、矢印17で示す方向に、衝撃要素8が伸びまたは縮むことを可能とするものである。変形部位9は、熱可塑性物質または代替構造要素を有する発泡構造から構成することが好ましい。熱可塑性物質は、架橋ポリエチレン(XPE)、膨張ポリスチレン(EPS)、膨張ポリプロピレン(EPP)、または膨張ポリエチレン(EPE)を用いることができる。衝撃要素8の変形部位9は、図3及び図4a−4dに関連して述べたように、ハウジング要素の変形可能領域と同様にする、すなわち、衝撃要素8に開口を設けることで、圧縮可能とすることができる。この開口は衝撃要素8の基部8bの側壁に形成することが好ましい。
【0041】
衝撃要素8は、図3の衝撃要素8について述べたのと同様に、動作位置と休止位置の間を移動可能に構成することが望ましい。衝撃要素8が動作位置(または図5の中間位置)に位置しているとき、衝撃要素8に矢印20方向に作用している力は、衝撃要素8の上部8aから基部8bと雄ねじ8cを介してハウジング要素7の雌ねじ7aへ伝達される。力の第1の分力は、ハウジング要素7の雌ねじ7aからハウジング要素7のフランジ112を通してアウタシェル2に伝達され、アウタシェル2からアウタシェル2を支える固定支承12へ伝達される。力の第2の分力は、雌ねじ7aからハウジング要素7の側壁111を経たハウジング要素7の底部領域101まで、そして、底部領域101から底部領域101を支持する固定支承12まで伝達される。この力の流れによって、衝撃要素8の変形部位9が圧縮される。衝撃要素8の変形部位9を圧縮することで衝撃エネルギーを吸収し、安全チャイルドシートに対する衝撃を吸収する。
【0042】
本発明の好ましい実施形態では、衝撃要素8の変形部位9は、圧縮性が異なる複数の領域を備えている。衝撃要素8の圧縮性が異なる領域は、一定の圧縮性を示す複数の領域と、他の領域とは異なる圧縮性の複数の領域を備えることができる。通常、1つの領域の圧縮性は、その領域の硬さまたは剛性と相関する。圧縮性の高い領域は、圧縮性の低い領域より軟質である。図5の保護部材5の衝撃要素8においては、圧縮性の異なる領域が互いに積み重なっている。従って、衝撃要素8は、衝撃要素8の上端部またはその近傍に置かれる最上部の圧縮性領域、衝撃要素8の底部またはその近傍に置かれる底部の領域及び両方の領域の間に置かれる複数の他の領域を備えている。圧縮できる領域の圧縮性は、上部から下部に増加することが好ましい。従って、最上部の圧縮できる領域は、残りの圧縮できる領域よりも硬く、つまり圧縮性が低いことが好ましい。加えて、いちばん深い所の圧縮できる領域は、残りの圧縮できる領域よりも柔らかく、圧縮性が高いことが好ましい。衝撃要素8の圧縮性は、段階的にまたは連続的に、上部から下部に向けて増加することが好ましい。衝撃要素8の圧縮性は、指数関数的に増加してもよい。保護部材5の衝撃要素8のこのような圧縮特性により、衝撃要素8がどれくらいアウタシェル2から突出しているかに無関係に、衝撃要素8がアウタシェル2に押し込まれるときに吸収されるエネルギー量を基本的に一定にすることができる。
【0043】
図5に示される保護部材5の形態において、例えば、衝撃要素8のごくわずかな部分だけが、アウタシェル2から突出する。衝撃要素8が矢印20の方向の力によって圧縮されるとき、衝撃要素8のこの少ない突出部分だけが圧縮される。しかし、衝撃要素8の上部は非常に堅い(すなわち、圧縮するのが難しい)ので、衝撃要素8のこの部分を圧縮するには大きい力を必要とする。従って、衝撃要素8を上部8aをアウタシェル2と接触させるまでに押す距離は、それ程必要ないものの、強い力が必要とされる。
【0044】
衝撃要素8が図5に示される状態よりさらにアウタシェル2から突き出ていると、衝撃要素8のより大きい突出部分が圧縮される。アウタシェル2の衝撃要素8からの突出部分は、図5の構成でアウタシェル2から突き出ている圧縮できる領域より柔らかい(すなわちより圧縮できる)変形可能な領域となる。このため、衝撃要素8を圧縮するために必要な力は、小さくなる。従って、衝撃要素8はその上部8aをアウタシェル2と接触させるためには、衝撃要素8を図5の状態よりも長い距離で押されなければならない。しかしながら、衝撃要素8を押し込むための力は、図5の配置で必要であった力より小さいので、衝撃要素8を押し込むための仕事は、上述の2つの配置の場合と同様である。
【0045】
従って、衝撃要素8がアウタシェル2に押し込まれるときに吸収されるエネルギー量は、衝撃要素8が初期状態でアウタシェル2からどれだけ突出しているかとは無関係である(ことが好ましい)。このように、保護部材が側面事故に際して常に衝撃エネルギーを吸収するように構成されているため、特に有利である。
【0046】
図6は、本発明のもう1つの実施形態によるに安全チャイルドシートの保護部材5を示している。この実施形態は、多くの点で、図5の実施形態と類似している。保護部材5のハウジング要素7の側壁111は、硬くて圧縮できず、ハウジング要素7の上端部はアウタシェル2上に位置するフランジ112を構成している。図6の保護部材5は、図5の保護部材5と比較して、衝撃要素8がハウジング要素7に取り付けられている点が主に異なる。図6の実施形態においては、衝撃要素8は、矢印20の方向に衝撃要素8に作用している力によってハウジング要素に押し込まれるように構成されている。衝撃要素8の雄ねじ8cとハウジング要素7の雌ねじ7aは、雄ねじ8cのネジ山が雌ねじ7aのネジ山を乗り越えることができるように構成されていることが好ましい。従って、衝撃要素8がハウジング要素7に押し込まれるとき、衝撃要素8の基部8bは横方向の圧縮と拡大を繰り返す。衝撃要素8の基部8bが横に圧縮されると、衝撃エネルギーが吸収され、従って、衝撃要素8がハウジング要素7に押し込まれるに連れて、安全チャイルドシートに対する衝撃が吸収される。通常、衝撃要素8は一定速度でハウジング要素7に押し込まれることはなく、段階的に押し込まれる。この段階的な動きは、図6中の矢印18で示されている。
【0047】
雄ねじ8cと雌ねじ7bの代わりに、保護部材5は、衝撃要素8をハウジング要素7に接続するキャッチ機構から構成することができる。このキャッチ機構は、衝撃要素8をハウジング要素7に押し込み、または引き抜くことを許す機構であることが好ましい。衝撃要素8の基部8bは、雄ねじ8cに代えて、複数の円形の溝から構成することができる。ハウジング要素7は、雌ねじ7aに代えて、円形の凸部から構成することができる。この円形の凸部は、衝撃要素8の円形の溝と噛み合うように構成される。従って、衝撃要素8をその中心軸回りに回転させても、休止位置と動作位置の間で衝撃要素8が移動することはない。休止位置と動作位置の間で衝撃要素8を移動させるためには、代わりに、衝撃要素8をハウジング要素7に押し込むか、引き出さなければならない。衝撃要素8とハウジング要素7との間に、ねじ山以外のキャッチ機構を設けることによって、衝撃要素8とハウジング要素7は、もはや円形断面である必要がない。このため、保護部材5の横断面形状に自由度が生まれる。特に、保護部材5の形を安全チャイルドシートの形に適応させることが可能になる。例えば、安全チャイルドシートのベース部分に取り付けられる保護部材5の形は、そのベース部分の形に適合させることができ、安全チャイルドシートのサイドウィングに取り付けられる保護部材5の形は、そのサイドウィングの形に適合させることができる。
【0048】
図7は、本発明のもう1つの実施形態の安全チャイルドシートの保護部材5を示している。この実施形態において、ハウジング要素7の上端部には、先の実施形態と同様に、アウタシェル2上に位置するフランジ112が設けられている。アウタシェル2は、保護部材5の近傍では弾力性を持つように構成されている。図7に示すように、安全チャイルドシートは、アウタシェル2を固定支承12に結合させる弾性要素15を備えている。図7に示されるアウタシェル2が固定支承12に向けて下方に押されると、弾性要素15は圧縮される。アウタシェル2に加わる力が減ると、弾性要素15はアウタシェル2を初期位置に押し戻す。この動きは、図7中の矢印19で示される。弾性要素15を設ける代わりに、アウタシェル2そのものが高弾性を示すようにすることができる。そうすれば、アウタシェル2は下方に押されたあと、その初期位置に単独で戻る。
【0049】
図7の実施形態において、衝撃要素8に矢印20の方向に作用している力は、衝撃要素8の上部8aから基部8bまで伝達され、基部8bから、雄ねじ8c、雌ねじ7a及びフランジ112を介してアウタシェル2まで伝達される。その結果、衝撃要素8、ハウジング要素7及びアウタシェル2は下方に押され、アウタシェル2を変形させ、弾性要素15を圧縮する。アウタシェル2が変形し、弾性要素15が圧縮されると、衝撃エネルギーが吸収され、従って、安全チャイルドシートに対する衝撃が吸収される。この実施形態では、側壁とハウジング要素7の底部領域に沿った力の流れがないので、側壁と底部領域は省略することが可能である。省略した結果生じるハウジング要素は、環状で、アウタシェル2と一体に形成されることが好ましい。
【0050】
図3−図7に関連して述べた本発明の実施形態のいくつかの形態は、1つの実施形態に有利に組み込むことが可能である。特に、図3、図6及び図7の保護部材では、図5の衝撃要素について述べたように、衝撃要素8を変形部位とすることが可能である。図3、図5及び図7の保護部材では、図6の保護部材について述べたように、雄ねじと雌ねじから構成されるねじ機構をキャッチ機構に置き換えることができる。図3、図5及び図6の保護部材では、図7の衝撃要素について述べたように、アウタシェルは弾性領域を備えることができる。このようにして形成された保護部材は、特に安全チャイルドシートに作用する衝撃力を緩和するために特に好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 安全チャイルドシート
2 アウタシェル
3 着座エリア
4 子供
5 保護部材
5a 第1の保護部材
5b 第2の保護部材
6 ヘッドレスト
7 ハウジング要素
7a 雌ねじ
8 衝撃要素
8a 衝撃要素8の上部
8b 衝撃要素8の基部
9 変形部位
10 圧縮要素
11 開口
12 固定支承
13 サイドウィング
14 ベース部分
15 弾性要素
16 17 18 19 20矢印
101 底部領域
103 背もたれ
111 側壁
112 フランジ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に用いられる安全チャイルドシート(1)であって、
子供(4)の着座エリア(3)を囲むアウタシェル(2)と保護部材(5)を有し、
保護部材(5)は、ハウジング要素(7)と衝撃要素(8)を有し、
ハウジング要素(7)は、アウタシェル(2)に埋め込まれていること、及び
衝撃要素(8)は、ハウジング要素(7)に装着され、ハウジング要素(7)に少なくとも一部が囲まれており、着座エリア(3)から離れる方向にアウタシェル(2)から横方向へ突出するように構成されていること、
衝撃要素(8)は、休止位置と動作位置の間を移動可能であること、
衝撃要素(8)は、休止位置に位置しているときより動作位置に位置しているときに、アウタシェル(2)から突き出るように構成されていること、
ハウジング要素(7)または衝撃要素(8)は、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備えていること、
を特徴とする安全チャイルドシート(1)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収するのに適している変形部位(9)を備え、変形部位(9)は圧縮性が異なる複数の領域を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項4】
請求項3記載の安全チャイルドシートにおいて、変形部位(9)は上記衝撃要素(8)に備えられていて、発泡構造体を備えている安全チャイルドシート。
【請求項5】
請求項1、3、4のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)は圧縮可能な側壁(10)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項6】
請求項5記載の安全チャイルドシートにおいて、圧縮可能な側壁(10)は開口(11)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項7】
請求項1、3ないし6のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)は固定支承(12)で支持されており、固定支承(12)は、衝撃力が安全チャイルドシート(1)の構造的に安定した部分に導かれるのを許す安全チャイルドシート(1)。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】
請求項1、3ないし7のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)とハウジング要素(7)は、衝撃要素(8)を動作位置から休止位置に移動させることによって、衝撃要素(8)が受けた衝撃力を吸収し、衝撃要素(8)は、上部(8a)と基部(8b)を備えており、上部(8a)は基部(8b)の上部に備えられており、上部(8a)は基部(8b)より径方向に幅広であり、衝撃要素(8)がハウジング要素(7)内に完全に後退すると、上部(8a)の外端部がアウタシェル(2)上に位置する安全チャイルドシート(1)。
【請求項11】
請求項1、3ないし7、10のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は常時アウタシェル(2)から突き出るように構成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項12】
請求項1、3ないし7、10、11のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、アウタシェル(2)はサイドウィング(13)を有し、ハウジング要素(7)はサイドウィング(13)に埋め込まれている安全チャイルドシート(1)。
【請求項13】
請求項1、3ないし7、10ないし12のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、アウタシェル(2)はベース部(14)を有し、ハウジング要素(7)はベース部(14)に埋め込まれている安全チャイルドシート(1)。
【請求項14】
請求項1、3ないし7、10ないし13のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)と一体に形成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項15】
請求項1、5ないし7、10ないし14のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、衝撃要素(8)は熱可塑性材料の成形品からなる剛体から構成されている安全チャイルドシート(1)。
【請求項16】
請求項15記載の安全チャイルドシートにおいて、上記剛体はねじ山(8c)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項17】
請求項1、3ないし7、10ないし16のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、ハウジング要素(7)はアウタシェル(2)上に位置するフランジ(112)を備えている安全チャイルドシート(1)。
【請求項18】
請求項1、3ないし7、10ないし17のいずれか1項記載の安全チャイルドシートにおいて、安全チャイルドシートの両側にそれぞれ少なくとも2つの保護部材(5)が装着され、そのうちの少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の上半分に位置し、少なくとも1つの保護部材は、安全チャイルドシート(1)の下半分に位置している安全チャイルドシート(1)。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
審理終結日 2021-12-23 
結審通知日 2021-12-27 
審決日 2022-01-13 
出願番号 P2016-526465
審決分類 P 1 123・ 113- YAB (B60N)
P 1 123・ 112- YAB (B60N)
P 1 123・ 537- YAB (B60N)
P 1 123・ 121- YAB (B60N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 一浩
特許庁審判官 八木 誠
島田 信一
登録日 2018-02-23 
登録番号 6293881
発明の名称 安全チャイルドシート  
代理人 三浦 邦陽  
代理人 三浦 邦陽  
代理人 藤江 和典  
代理人 青木 宏義  
代理人 天田 昌行  
代理人 藤江 和典  
代理人 天田 昌行  
代理人 木村 晋朗  
代理人 青木 宏義  
代理人 園田・小林特許業務法人  
代理人 木村 晋朗  

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