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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B32B
管理番号 1387817
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-01-18 
確定日 2022-08-15 
事件の表示 特願2016−187264号「積層体およびそれを備える包装製品」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月5日出願公開、特開2018−51796号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成28年9月26日を出願日とする特許出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成31年4月26日:手続補正書の提出
令和2年5月15日付け:拒絶の理由の通知
令和2年8月5日:意見書及び手続補正書の提出
令和2年10月23日付け:拒絶査定
令和3年1月18日:審判請求及び手続補正書の提出
令和4年3月1日付け:拒絶の理由の通知
令和4年4月27日:意見書及び手続補正書の提出(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)

第2 本願発明
本願の請求項1〜7に係る発明は、令和4年4月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体であって、
前記印刷層が、着色剤と、主剤と硬化剤との硬化物とを含み、前記主剤が、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールであり、前記硬化剤が、化石燃料由来のポリイソシアネートであり、
前記接着剤層が、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含み、
前記接着剤層のバイオマス度が、5%以上35%以下である、積層体。」

第3 拒絶の理由
令和4年3月1日付けで当審が通知した拒絶の理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1〜6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.特開2015−193423号公報
引用文献2.特開2011−225863号公報
引用文献3.国際公開第2013/151139号

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0032】
[詰替え用包装袋(内容物充填前)の構成]
まず、図1〜図3を参照して、内容物が充填される前の詰替え用包装袋1の構成について説明する。以下では、内容物が充填される前の詰替え用包装袋1を詰替え用袋1Aと呼ぶことがある。内容物が充填された後の詰替え用包装袋1を袋詰め製品1Bと呼ぶことがある。
【0033】
詰替え用袋1Aは、表積層シート2と、裏積層シート3と、底テープ4と、シール部Sとを備える。各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、可撓性を有し、略矩形状を呈する。各シート2,3及び底テープ4の厚みは、例えば、50μm〜200μm程度であってもよい。
【0034】
各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、例えば図2の(a)に示されるように、基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とを含んでいてもよい。基材層51、印刷層52、接着層53及びシーラント層54は、詰替え用袋1Aの外側から内側に向けてこの順に積層されている。各シート2,3及び底テープ4はそれぞれ、表面に印刷層52が形成された基材層51と、シーラント層54とが、接着層53によって接着されることにより構成される。
【0035】
基材層51としては、例えば、プラスチックフィルム、紙、不織布などを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。プラスチックフィルムが所定の機械的強度や寸法安定性を発現するのであれば、その材料、材質、製造方法等について特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムが二軸延伸されたフィルムからなるものであってもよい。プラスチックフィルムの表面にアルミニウム等の金属の蒸着層が形成されていてもよい。紙としては、例えば、上質紙、片アート紙、コート紙、キャストコート紙、模造紙などが挙げられる。紙が有する機械的強度や製袋適正に基づいて、基材層51に用いる紙を適宜決めてもよい。
【0036】
印刷層52は、袋詰め製品1Bの商品名等を表示するために、インキを用いて印刷された層である。インキは、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)に、例えば、各種顔料、体質顔料、及び添加剤(例えば、可塑剤、乾燥剤、安定剤など)が添加されてなる。印刷方法としては、例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法が挙げられる。基材層51に印刷層52を形成する前に、基材層51の表面を前処理(例えば、コロナ処理、オゾン処理など)してもよい。これにより、基材層51の表面に対する印刷層52の密着性が向上する。なお、基材層51の表面に印刷層52を形成しなくてもよい。
【0037】
接着層53は、印刷層52を介して基材層51とシーラント層54とを接着するための層である。接着層53は、例えば、接着剤を基材層51(印刷層52)上に層状に塗布してなるものであってもよい。接着剤としては、例えばドライラミネート用接着剤を用いてもよい。接着剤の種類としては、例えば、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。接着剤としてドライラミネート用接着剤を用いる場合には、2つの層をドライラミネート法にて貼り合わせてもよい。
【0038】
シーラント層54は、熱により溶融して他のシートに融着するように構成されている。すなわち、シーラント層54は、ヒートシール可能に構成されている。シーラント層54は、例えば、ポリオレフィン系樹脂により構成されていてもよい。ポリオレフィン系樹脂として、具体的には、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EAA)、アイオノマー、ポリプロピレンなどが挙げられる。シーラント層54の材料として上記の樹脂が用いられる場合には、上記の樹脂が押出機によって膜状に成形させることでシーラント層54が構成される。シーラント層54は、単層であってもよいし、複層であってもよい。」
イ 「【0095】
(実施例1)
まず、ポリエステルフィルム(厚さ12μm)の内面にグラビアインキを用いて印刷層を設けた。印刷は、グラビア印刷にて行った。次に、ポリエステルフィルムの印刷面と、ナイロンフィルム(厚さ15μm)とを、二液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ドライラミネート法により貼り合わせた。次に、ナイロンフィルムと、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:linear low-density polyethylene)フィルム(厚さ120μm)とを、二液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ドライラミネート法により貼り合わせた。これにより、ポリエステルフィルム、印刷層、接着剤層、ナイロンフィルム、接着剤層、及びLLPDEフィルムがこの順で積層された積層シートを得た。」
ウ 「【0156】
[第2実施形態の実施例]
ポリエステルフィルム12μmの内面にグラビアインキを用いて印刷層を設けた。印刷は、グラビア印刷にて行った。
【0157】
上記ポリエステルフィルムの印刷面と、ナイロンフィルム15μmを二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。
【0158】
次いで、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(LLDPE)120μmを、上記ナイロンフィルム面に、二液硬化型ウレタン系接着剤を介してドライラミネート法により貼り合わせた。積層シートを作成した。積層シートの層構成は、ポリエステルフィルム12μm/印刷層/接着剤/ナイロンフィルム15μm/接着剤/直鎖状低密度ポリエチレンフィルム120μmである。」
(2)上記(1)に摘記した事項からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とをこの順に積層してなる積層体であって、
前記印刷層52が、各種顔料と、バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)とを含み、
前記接着層53が、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤を含む、
積層体。」

2 引用文献2
(1) 引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とを用いて合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を用いて合成されてなるバイオポリエーテルポリオール(C)、のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、上記バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28〜95質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。
・・・
【請求項7】
前記イソシアネート成分(d)が、石油由来のイソシアネート(d1)または/および植物由来のイソシアネート(d2)である請求項1〜6のいずれか1項に記載のバイオポリウレタン樹脂。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、環境に優しいポリウレタン樹脂に関する。さらに詳しくは、地球温暖化対策や環境負荷低減を目的としたカーボンニュートラルに大きく貢献する、植物由来の原料利用率(含有量)の高いバイオポリウレタン樹脂に関する。本発明のバイオポリウレタン樹脂は、従来のポリウレタン樹脂と同様に、各種コーティング剤、インキ、塗料などのバインダーや、フィルム、シート、フォームおよび各種成形物などへの使用が期待される。
・・・
【0010】
例えば、各種コーティング剤などの用途に使用されるポリウレタン系樹脂は、環境問題に対する対策対応については、殆ど考慮されていないといった現状があり、植物由来の原料を積極的に使用することが望まれる。その一方で、使用用途にもよるが、一般的に、各種コーティング剤に要求される諸物性として、以下のことが要求されるため、環境問題に対する対策は、これらの諸物性を満足するものであることが前提となる。すなわち、原則として要求される耐久物性として、耐加水分解性、耐光性、耐熱性、耐ガス変色性、耐黴性、耐オレイン酸性(人間の汗成分)などを満足できる材料であることが要求される。
【0011】
本発明は、以上のような従来型技術における種々の問題に鑑みてなされたものである。その目的は、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などが従来のものと遜色がないか、或いはむしろ向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂を提供することにある。
・・・
【0014】
以上のように、本発明によれば、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂(以下、バイオウレタン樹脂とも呼ぶ)において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などを向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂が提供される。」
ウ 「【0034】
本発明に使用するイソシアネート(d)としては、従来公知のポリウレタンの製造に使用されている石油由来のポリイソシアネート(d1)を用いることができ、特に限定されない。例えば、好ましいものとして、トルエン−2,4−ジイソシアネート、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、ジュリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
・・・
【0036】
本発明で用いることのできるイソシアネート(d)としては、上記の他、植物由来のイソシアネート(d2)を用いることもできる。植物由来のポリイソシアネート(d2)は、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のポリイソシアネート(d2)としては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、植物由来のアミノ酸を原料として、そのアミノ基をイソシアネート基に変換することによっても植物由来のイソシアネート化合物を得ることができる。例えば、リシンジイソシアネート(LDI)は、リシンのカルボキシル基をメチルエステル化した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。また、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートはリシンのカルボキシル基を脱炭酸した後、アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。」
エ 「【0045】
<ポリオールの合成>
[ポリエステルポリオール合成例PES1]
撹拌機、分溜管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、セバシン酸(ひまし油由来)1,500部と、1,3−プロパンジオール(植物由来)645部とを仕込み、窒素雰囲気下において、130℃まで加熱して溶解させた。その後、テトラブトキシチタン0.21部を添加し、230℃まで昇温して、発生する水を溜出させながら反応させ、水の溜出がほとんどなくなるまで反応させた。減圧して水をさらに溜去させながら酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで加熱減圧を続けた。このようにして、水酸基価が56.5mgKOH/g、酸価が0.3mgKOH/gの100%植物由来ポリエステルポリオールPES1[植物由来成分含有量(以下、BPと表記)=100%]を得た。表1に、合成原料および得られたポリオールの性状を示した。
・・・
【0055】
<ポリウレタンの合成>
上記で合成した植物由来成分を用いて合成してなる各ポリオールを原料に使用して、下記のようにしてポリエステルポリウレタンを合成した。
[実施例1:ポリエステルポリウレタンの合成例PES−PU1]
撹拌機、冷却管、温度計、窒素吹き込み管およびマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、ポリエステルポリオールPES1を100部、エチレングリコールを15部、DMF(ジメチルホルムアミド)を282部仕込み、70℃に加温した。ここに、MDI(メチレンビス(4−フェニルイソシアネート))を73部(水酸基とイソシアネート基が当量)投入し、IRスペクトルにてイソシアネートの吸収がなくなるまで加熱撹拌した。その後、DMFを157部添加して、固形分30%のポリエステルポリウレタン樹脂溶液PES−PU1(BP=53%)を得た。」
(2) 上記(1)の記載事項、及びバイオポリウレタン樹脂をなす、バイオポリエステルポリオールが主剤を、イソシアネートが硬化剤をなし、バイオポリウレタン樹脂が硬化物となることも技術的に明らかであることより、引用文献2には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「主剤としてバイオポリエステルポリオール及び硬化剤として石油由来のイソシアネートを用いたバイオポリウレタン樹脂。」(以下「バイオポリウレタン樹脂A」という。)

3 引用文献3
(1) 引用文献3には、以下の事項が記載されている。
ア 「[0001] 本発明は、1,5−ペンタメチレンジアミンの製造方法、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、ポリイソシアネート組成物の製造方法、および、触媒菌体の保存方法に関するものである。
[0002] 1,5−ペンタメチレンジアミンは、バイオマス由来のポリマー原料、例えば、ポリウレタン原料、ポリアミド原料として注目されている。」
イ 「[0028] 本発明において「1,5−ペンタメチレンジアミン」とは、1,5−ペンタンジアミン(H2N(CH2)5NH2)をいう。1,5−ペンタメチレンジアミンは、ポリマー原料や医薬中間体の合成原料として有用な化合物である。」
ウ 「[0233] また、ペンタメチレンジアミン水溶液からペンタメチレンジアミンまたはその塩を得る方法としては、上記の抽出に限定されず、例えば、蒸留など、公知の単離精製方法を採用することもできる。
(12)1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法 また、本発明は、このようにして得られた1,5−ペンタメチレンジアミン(またはその塩)から1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(以下、単にペンタメチレンジイソシアネート、PDIと称する場合がある。)を製造する方法を含んでいる。
エ 「[0347] そして、上記のペンタメチレンジイソシアネート、および/または、上記のポリイソシアネート組成物と、活性水素化合物とを反応させることにより、ポリウレタン樹脂を得ることができる。
[0348] 活性水素化合物としては、例えば、ポリオール成分(水酸基を2つ以上有するポリオールを主として含有する成分)、ポリアミン成分(アミノ基を2つ以上有するポリアミンを主として含有する化合物)などが挙げられる。
[0349] 本発明において、ポリオール成分としては、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。
・・・(中略)・・・
[0352] 高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
・・・(中略)・・・
[0358] また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。」
オ 「[0418] そして、高生産速度、高反応収率および高品質で得られる1,5−ペンタメチレンジアミンを原料とした、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネート組成物およびポリウレタン樹脂は、例えば、ポリカーボネート、ABS、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリオレフィンなどへの各種プラスチックコート材料、太陽電池のバックシート部材へのコーティング原材料や自動車、二輪車などへの外装、金属などへのコート材料、インキなどのバインダーにも好適に使用できる。また、イソシアネート基あるいは水酸基末端のポリウレタンプレポリマーに誘導することにより、ラミネート工法や工業用、住宅・建築用接着材料やシーリング材料にも適用できる。さらには、熱可塑性あるいは熱硬化性ポリウレタンエラストマーとして、フィルム、シート、チューブ、ホース、パウダーあるいは柔軟なゲルなどにも誘導でき、各種産業用途、例えば、医療、衣料、工業部材、電子・電気部材、化粧品などのヘルスケア分野にも展開できる。また、アミノ基を有した化合物と本イソシアネートおよびポリイソシアネート組成物を反応させることにより、各種香料、薬剤などのカプセル材にも適用できる。」
カ 「[0491] 本発明の1,5−ペンタメチレンジアミンの製造方法により得られる1,5−ペンタメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、および、ポリイソシアネート組成物は、例えば、バイオマス由来のポリマー原料として、コーティング、接着剤、シーラント、エラストマー、ゲル、バインダー、フィルム、シートおよびカプセルなどの材料、農薬、医薬の中間体などの種々の産業分野において、好適に用いることができる。」
(2) 上記(1)の記載事項、及びポリウレタン樹脂をなす、植物由来のポリエステポリオールが主剤を、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが硬化剤をなし、ポリウレタン樹脂が硬化物となることも技術的に明らかであることより、引用文献3には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「主剤として植物由来のポリエステルポリオール及び硬化剤としてバイオマス由来のイソシアネートを用いたバイオポリウレタン樹脂。」(以下「バイオポリウレタン樹脂B」という。)

第5 対比
本願発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
引用発明の「基材層51と、印刷層52と、接着層53と、シーラント層54とをこの順に積層してなる積層体」は、本願発明の「少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体」に相当する。
引用発明の「各種顔料」は、本願発明の「着色剤」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
〈一致点〉
少なくとも、基材層、印刷層、接着剤層、およびシーラント層が順に積層された積層体であって、
前記印刷層が、着色剤を含む、積層体。
〈相違点1〉
各種顔料などの着色剤及び樹脂等の硬化物を含む「印刷層」における樹脂等の硬化物について、本願発明では「主剤と硬化剤との硬化物とを含み、前記主剤が、バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールであり、前記硬化剤が、化石燃料由来のポリイソシアネートであ」るとされているのに対し、引用発明では「バインダー樹脂(例えば、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系など)」を含むものである点。
〈相違点2〉
樹脂等の硬化物を含む「接着剤層」における硬化物について、本願発明では「ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含み、前記ポリオールがバイオマス由来成分を含み、前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含」むとされているのに対し、引用発明では「二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などの接着剤を含む」ものである点。
〈相違点3〉
本願発明の「接着剤層」は、その「バイオマス度が、5%以上35%以下である」とされているのに対して、引用発明の「接着層53」はバイオマス度について特定されていない点。

第6 判断
1 相違点1について
引用文献2(【0001】、【0014】)によれば、地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用することが望まれるところ、引用文献2に記載された塗料や印刷インキに係るバイオポリウレタン樹脂を用いること、すなわち、同文献記載のバイオポリウレタン樹脂Aを、引用発明のバインダー樹脂として採用することは、当業者が容易になし得たことである。

2 相違点2について
引用文献2(【0001】、【0014】)によれば、地球温暖化防止等の観点から、プラスチックや樹脂製品等の原料としてバイオマスを使用することが望まれるところ、引用文献3に記載された接着剤に係るバイオマス由来のポリマー原料を用いること、すなわち、同文献記載のバイオポリウレタン樹脂Bを、引用発明の接着剤として採用することは、当業者が容易になし得たことである。

3 相違点3について
バイオマス度は、化石燃料由来成分をバイオマス由来成分へ置き換える程度に応じて変わる性格のものであって、接着剤層におけるそれを「5%以上35%以下」にすることも当業者が適宜なし得た程度の事項というべきである。

4 本願発明の効果について
本願明細書をみても、ポリウレタン樹脂の原料として、バイオマス由来のポリエステルポリオール、ポリオール、イソシアネート化合物を用いることによって、同樹脂のバイオマス度が高まる以上の効果を奏する旨の記載は存在しない。また、接着剤層のバイオマス度を5%以上35%以下とすることについても、「接着剤層は、好ましくは5%以上、より好ましくは5%以上50%以下、さらに好ましくは30%以上50%以下のバイオマス度を有するものである。バイオマス度が上記範囲であれば、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。」(本願明細書【0058】)とされているのみであり、バイオマス度の範囲を限定することによって、何らかの効果が奏されるものでもない。
以上によれば、本願発明について、引用発明からは予測し得ない顕著な作用効果があるものとは認められない。

5 請求人は、令和4年4月27日に提出された意見書において、引用発明における印刷層52及び接着剤層53で用いられている化石燃料由来のポリウレタンを少なくとも部分的に置き換えようとすると35もの選択肢があり、本願発明の構成を導くことは容易でない旨主張する。
しかし、本願明細書の記載の限りでは、上記4で述べたとおりであって、本願発明は、有限の選択肢の中から適宜選択されたものという評価を免れることはできない。
したがって、請求人の上記主張にかかわらず、本願発明の発明特定事項は、引用発明に基づいて当業者が容易に採用し得たものというべきであるから、請求人の主張は採用できない。

6 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明し得たものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-22 
結審通知日 2022-06-24 
審決日 2022-07-05 
出願番号 P2016-187264
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B32B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 藤井 眞吾
山崎 勝司
発明の名称 積層体およびそれを備える包装製品  
代理人 宮嶋 学  
代理人 浅野 真理  
代理人 中村 行孝  

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