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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H
管理番号 1387853
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-02 
確定日 2022-08-02 
事件の表示 特願2015−241817「多数のユニットを備えた繊維機械」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日出願公開、特開2016−113297〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年12月11日(優先権主張2014年12月13日,独国)の出願であって,令和1年10月29日付けで拒絶理由が通知され,令和2年1月23日に意見書及び手続補正書が提出され,同年6月17日付けで拒絶理由が通知され,同年9月3日に意見書が提出され,令和3年1月12日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対し,同年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,令和2年1月23日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
多数の同一形式の作業ユニット(1,36,53)及び表示手段及び1つの中央制御装置(26,38,67)を備え,前記表示手段が前記中央制御装置(26,38,67)及び/又は作業ユニット制御装置(24,39)に接続されている,繊維機械であって,
当該繊維機械は,複数の部分から成るLED光レール(15,32,52,69,84)として形成された表示手段を有しており,
LED光レール(15,32,52,69,84)の前記各部分には複数のLEDが配置されていて,該各部分は,それぞれ1つの作業ユニット(1,36,53)に対応配置されており,
前記LED光レール(15,32,52,69,84)の前記各部分の前記複数のLEDは,個々に又はグループ毎に制御されて,対応する前記各作業ユニット(1,36,53)のそれぞれ製造される糸ロット及び運転状態を表示する
ことを特徴とする,多数の同一形式の作業ユニット(1,36,53)を備えた繊維機械。」


第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である,令和2年6月17日付け拒絶理由通知の理由は,次の理由を含むものである。
進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1
・引用文献等 1,3
<引用文献等一覧>
1.特開2010−070302号公報
3.特開2002−087703号公報(周知技術を示す文献)


第4 当審の判断
1 引用例
本願の優先日前の平成22年4月2日に公報が発行され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2010−70302号公報(以下「引用例」という。)には,次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸処理ユニットを備えた繊維機械において,
前記各糸処理ユニットは,当該糸処理ユニットの運転状態が,複数の運転レベルの中でどの運転レベルに対応するかを表示するレベル表示部を備えていることを特徴とする繊維機械。」
(2)「【技術分野】
【0001】
本発明は,複数の糸処理ユニットを備えた繊維機械に関する。詳細には,前記糸処理ユニットの運転状態を表示するための構成に関する。」
(3)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,特許文献1から3のように集中管理装置を備えた構成の繊維機械においては,当該集中管理装置において所定の操作を行うことにより,所望の条件に合致する糸処理ユニットを抽出することができるように構成することも考えられる。この場合,オペレータは適宜の操作を行うことにより,例えば機台全体の平均に比べて運転効率の低いユニットを抽出(リストアップ)してモニタに表示し,この表示に基づいて,保守作業が必要な糸処理ユニットの設置箇所まで移動して作業を行うことができる。
【0005】
しかし,このような構成では,オペレータは,モニタの表示を確認するために集中管理装置と糸処理ユニットとの間を頻繁に往復しなければならない。このため,作業時の効率が悪く,オペレータにとっても負担であった。
【0006】
また,上記の構成では,集中管理装置においてオペレータが適宜の操作をすることにより,効率の悪いユニット等をモニタに表示させる構成である。このため,装置の運転中に或る糸処理ユニットの効率が低下したとしても,オペレータが機台制御装置で所定の操作をしてモニタを確認するまでは当該糸処理ユニットの運転効率の低下を把握することができない。従って,効率が低下した糸処理ユニットを早期に把握して適切な処置を施すことができなかった。
【0007】
一方,特許文献4は,正面パネルで異常の要因などを表示する構成であるため,異常発生時に当該異常の情報を得るために集中管理装置のモニタをわざわざ確認しなくても,その場で当該糸処理ユニットに発生している異常を把握することができる。しかし,特許文献4の構成は異常発生時以外は糸処理ユニットに関する情報を表示しないため,運転中の糸処理ユニットがどのような状態にあるのかを把握することができなかった。【0008】
本願発明は以上の事情に鑑みてされたものであり,その目的は,糸処理ユニットの運転状態を容易に把握することができる繊維機械を提供することにある。」
(4)「【0025】
図1に示す繊維機械としての精紡機1は,並設された多数の紡績ユニット(糸処理ユニット)2と,機台制御装置60と,糸継台車3と,ブロアボックス4と,原動機ボックス5と,を備えている。また,精紡機1は図略の自動玉揚装置を備えている。
【0026】
機台制御装置60は,精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって,モニタ61と入力キー62とを備える。図2に示すように,機台制御装置60は,精紡機1が備える各構成との間で情報の送受信を行うことができるように構成されている。
【0027】
モニタ61には,例えば,各紡績ユニット2の生産効率をグラフで表示したり,問題の発生した紡績ユニット2を表示したりすることができるほか,精紡機1全体の統計的な情報を表示することもできる。また,オペレータが入力キー62を用いて適宜の操作を行うことにより,特定の紡績ユニット2に対して設定の変更を行ったり,或いは全ての紡績ユニット2の設定を一括して変更したりすることができる(なお,この設定変更は,機台制御装置60から後述のユニット制御部73に対して設定データを送信することで行う)。また,機台制御装置60は,紡績ユニット2以外にも,例えば糸継台車3や図略の自動玉揚装置などの制御及び管理を行うことができるように構成されている。
【0028】
図2に示すように,精紡機1は,各紡績ユニット2を制御するための複数のユニット制御部73を備えている。本実施形態においてユニット制御部73は,4台の紡績ユニット2を制御及び管理するように構成されており,機台制御装置60からの制御信号,及び各紡績ユニット2が備える各種センサなどが検知した信号等に基づいて,それぞれの紡績ユニット2を制御する。また,ユニット制御部73は,各紡績ユニット2に関する情報を機台制御装置60に対して送信することができるように構成されている。
【0029】
各紡績ユニット2は,図1に示すようにスライバ15からパッケージ45を形成するためのものであって,上流から下流へ向かって順に,ドラフト装置7と,紡績装置9と,糸送り装置11と,糸弛み取り装置12と,巻取装置13と,を主要な構成として備えている。ドラフト装置7は精紡機1の筐体6の上端近傍に設けられており,このドラフト装置7から送られてくる繊維束8を紡績装置9で紡績するように構成している。紡績装置9から排出された紡績糸10は糸送り装置11で送られ,後述のヤーンクリアラ52を通過した後,巻取装置13によって巻き取られてパッケージ45が形成される。また,各紡績ユニット2は,装置正面側の適宜の位置にオペレーションパネル80を備えている。」
(5)「【0045】
次に,オペレーションパネル80の構成について,図4を参照して説明する。図4は,本実施形態に係る精紡機1が備える紡績ユニット2において,当該紡績ユニット2の前面に配置されているオペレーションパネル80の平面図である。図に示すように,オペレーションパネル80は,全体図81と,異常表示ランプ821,822,823と,7セグメントディスプレイ83と,保全コールランプ84と,操作スイッチ85と,レベル表示部86と,傾向表示部87と,を主に備えている。
【0046】
図4に示すように,オペレーションパネル80には,紡績ユニット2の側面の簡略的な全体図81が描かれている。なお,この全体図81は,図3の縦断面図に相当するものである。
【0047】
また,全体図81の側方近傍には,発光ダイオードよりなる3つの異常表示ランプ821,822,823が縦一列に並んで配置されている。前記異常表示ランプ821,822,823は,それぞれが前記全体図81の中の特定の領域に対応している。また,前記全体図81は,前記異常表示ランプ821〜823が当該全体図81の中のどこからどこまでの領域に対応しているかを明確にするため,縦方向に3つに分割して表示されている。即ち,全体図81の3つに分割された部分図が示す領域と,それぞれの部分図の横に配置されている異常表示ランプとが対応している。
【0048】
以上の構成で,紡績ユニット2において異常があると,前記異常表示ランプ821,822,823のうち,当該異常の発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させることにより,オペレータに当該異常の発生箇所を通知することができる。このように,全体図81のすぐ横に異常表示ランプ821〜823が配置され,異常発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させることで,全体図81のなかで異常発生箇所に対応する部分を特定して表示することができるように構成されている。これにより,紡績ユニット2のなかでどこに異常が発生しているかを直感的に把握することができるので,異常発生時にはオペレータが紡績ユニットの保全作業に直ちに取り掛かることができる。
【0049】
また,上記以外の箇所で異常が発生した場合や異常発生箇所を特定できない場合等に点灯するための,異常発生箇所特定不可ランプ824が備えられている。
【0050】
7セグメントディスプレイ83は,異常発生時のエラーコードなどを表示するためのものである。即ち,本実施形態の精紡機1では前記全体図81及び異常表示ランプ821〜823を用いた表示によって直感的に異常発生箇所を把握できるが,7セグメントディスプレイ83によるエラーコード表示を併用することで,紡績ユニット2で発生した異常の内容をより詳細にオペレータに通知できる。
【0051】
保全コールランプ84は,メンテナンスが必要な紡績ユニット2において点灯させるためのものであり,遠方のオペレータにも点灯状態が視認できるように,前記異常表示ランプ821〜823と比べて明るく目立つように構成されている。オペレータはこの保全コールランプ84の点灯を目視で確認することでメンテナンスの必要な紡績ユニット2の位置を把握し,メンテナンス作業を行うために当該点灯している保全コールランプ84を目指して紡績ユニット2まで移動する。
【0052】
また,オペレーションパネル80は複数の操作スイッチ85を備えている。オペレータはこの操作スイッチ85を適宜操作することで,紡績ユニット2の緊急停止などの操作を行うことができる。
【0053】
次に,レベル表示部86について説明する。本実施形態のレベル表示部86は,紡績ユニット2の運転状態を5段階の運転レベルで表示することができるように構成されている。なお,ここでいう「運転レベル」とは,各紡績ユニット2をその運転状態に応じて分類した区分を示すものである。そして,紡績ユニット2がどの運転レベルに分類されているかを見ることで,当該紡績ユニット2の大体の運転状態を把握できるようにしたものである。
【0054】
レベル表示部86は,その一部が透明又は半透明に構成され,裏側からの光を透過させることができるように構成されている。具体的には,第1レベル表示部861,第2レベル表示部862,第3レベル表示部863,第4レベル表示部864,第5レベル表示部865が,それぞれ矩形状の光透過部として構成されている。そして,前記第1〜第5レベル表示部の裏側には,図略の発光ダイオードがそれぞれ配置されている。以上の構成で,前記発光ダイオードの何れかを発光させることで,対応するレベル表示部861〜865の何れかを発光させることができる。
【0055】
また,前記各レベル表示部861〜865は,運転レベルの上下関係が図形的かつ直感的に判るように,例えば図4に示すように階段状に配置されている。具体的には,第1レベル表示部861が一番低い位置に配置され,第5レベル表示部865が一番高い位置に配置されている。即ち,第1レベル表示部861が一番低い運転レベルを表し,第2レベル表示部862,第3レベル表示部863,第4レベル表示部864と,表す運転レベルが順に高くなり,第5レベル表示部865が一番高い運転レベルを表すことが直感的に把握できるように構成されている。
【0056】
以上の構成で,紡績ユニット2の運転レベルと対応するレベル表示部86を発光させることで,当該紡績ユニット2の運転レベルを表示することができる。これにより,当該紡績ユニット2が5つの運転レベルの中でどの運転レベルにあるかを直感的に把握することができる。
【0057】
また,本実施形態では,レベル表示部86に当該紡績ユニット2の運転レベルを常時表示する構成としている。これにより,特別な操作を施す必要無く,その場で紡績ユニット2の運転レベルを知ることができる。また,従来の構成のように紡績ユニット2の運転状態を確認するために機台制御装置60までその都度移動する必要がないため,作業を効率的に行うことができる。」
(6)「【図4】


(7)上記【図4】から,第1〜第5レベル表示部は斜めに並んで配置されていることが看取できる。

そうすると,上記事項(1)乃至(7)より,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が示されているものと認められる。
「並設された多数の紡績ユニット2と,機台制御装置60と,糸継台車3と,ブロアボックス4と,原動機ボックス5と,各紡績ユニット2を制御するための複数のユニット制御部73を備えている精紡機1であって,
機台制御装置60は,精紡機1が備える各構成を集中的に管理するためのものであって,モニタ61と入力キー62とを備え,
モニタ61には,各紡績ユニット2の生産効率をグラフで表示したり,問題の発生した紡績ユニット2を表示したり,精紡機1全体の統計的な情報を表示し,また,オペレータが入力キー62を用いて適宜の操作を行うことにより,特定の紡績ユニット2に対して設定の変更を行ったり,或いは全ての紡績ユニット2の設定を一括して変更したりすることができ,この設定変更は,機台制御装置60から後述のユニット制御部73に対して設定データを送信することで行うものであり,
ユニット制御部73は,4台の紡績ユニット2を制御及び管理するように構成されており,機台制御装置60からの制御信号,及び各紡績ユニット2が備える各種センサなどが検知した信号等に基づいて,それぞれの紡績ユニット2を制御し,また,ユニット制御部73は,各紡績ユニット2に関する情報を機台制御装置60に対して送信することができるように構成され,
各紡績ユニット2は,装置正面側の適宜の位置にオペレーションパネル80を備え,
オペレーションパネル80は,全体図81と,異常表示ランプ821,822,823と,7セグメントディスプレイ83と,保全コールランプ84と,操作スイッチ85と,レベル表示部86と,傾向表示部87と,を備え,
発光ダイオードよりなり,縦一列に並んで配置されている異常表示ランプ821,822,823は,それぞれが前記全体図81の中の特定の領域に対応し,紡績ユニット2において異常があると,前記異常表示ランプ821,822,823のうち,当該異常の発生箇所に対応する異常表示ランプを点灯させることにより,オペレータに当該異常の発生箇所を通知することができるものであり,
レベル表示部86は,紡績ユニット2の運転状態を5段階の運転レベルで表示することができるように構成され,その一部が透明又は半透明に構成され,裏側からの光を透過させることができるように構成され,斜めに並んで配置された第1レベル表示部861,第2レベル表示部862,第3レベル表示部863,第4レベル表示部864,第5レベル表示部865が,それぞれ矩形状の光透過部として構成され,前記第1〜第5レベル表示部の裏側には,発光ダイオードがそれぞれ配置され,前記発光ダイオードの何れかを発光させることで,対応するレベル表示部861〜865の何れかを発光させることができる,
精紡機1。」

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)精紡機は,一般に,同一形式のユニットを多数備えることにより,生産性を高めることが技術常識であるところ(例えば,本願明細書に記載の特許文献1乃至4参照。)からすれば,後者の「並設された多数の紡績ユニット2」は同一形式のものと推認できるから,前者の「多数の同一形式の作業ユニット(1,36,53)」に相当する。
(2)後者の「オペレーションパネル80」,「機台制御装置60」,「ユニット制御部73」,「精紡機1」は,それぞれ,前者の「表示手段」,「1つの中央制御装置(26,38,67)」,「作業ユニット制御装置(24,39)」,「繊維機械」に相当する。
(3)後者の「オペレーションパネル80」の「異常表示ランプ821,822,823」は,発光ダイオードよりなり,縦一列に並んで配置されており,また,後者の「オペレーションパネル80」の「レベル表示部86」には,「第1〜第5レベル表示部」が,斜めに並んで配置され,裏側には,発光ダイオードがそれぞれ配置されているから,後者の「異常表示ランプ821,822,823」及び「レベル表示部86」は,それぞれ,前者の「LED光レール(15,32,52,69,84)」の「各部分」に相当する。
してみると,前者の「表示手段」と後者の「オペレーションパネル80」とは,「複数の部分から成るLED光レール(15,32,52,69,84)として形成された」ものとの概念で一致するとともに,前者の「LED光レール(15,32,52,69,84)の各部分」と後者の「異常表示ランプ821,822,823」及び「レベル表示部86」とは,「複数のLEDが配置されて」いるものとの概念で一致する。
(4)後者の「レベル表示部86」は,紡績ユニット2の運転状態を5段階の運転レベルで表示することができるように構成されたものであるから,前者の「LED光レール(15,32,52,69,84)の前記各部分の前記複数のLED」と後者の「レベル表示部86」の「第1〜第5レベル表示部」とは,「運転状態を表示する」ものとの概念で一致する。
してみると,「異常表示ランプ821,822,823」及び「レベル表示部86」の発光ダイオードが個々に制御されて発光していることは,明らかといえる。

本願発明と引用発明とは,以下の一致点で一致し,以下の各相違点で相違する。
[一致点]
「多数の同一形式の作業ユニット(1,36,53)及び表示手段及び1つの中央制御装置(26,38,67)を備え,前記表示手段が前記中央制御装置(26,38,67)及び/又は作業ユニット制御装置(24,39)に接続されている,繊維機械であって,
当該繊維機械は,複数の部分から成るLED光レール(15,32,52,69,84)として形成された表示手段を有しており,
LED光レール(15,32,52,69,84)の前記各部分には複数のLEDが配置されていて,
前記LED光レール(15,32,52,69,84)の前記各部分の前記複数のLEDは,個々に又はグループ毎に制御されている,多数の同一形式の作業ユニット(1,36,53)を備えた繊維機械。」

[相違点]
本願発明の「LED光レール(15,32,52,69,84)」の「各部分」は,「それぞれ1つの作業ユニット(1,36,53)に対応配置されており」,「対応する各作業ユニット(1,36,53)のそれぞれ製造される糸ロット及び運転状態」を表示するものであるのに対し,引用発明の「異常表示ランプ821,822,823」は,それぞれが全体図81の中の特定の領域に対応しているものである点。

3 判断
前記相違点について,以下検討する。
多数の巻取ユニットが接続された繊維機械において,1つの表示手段に各巻取ユニットのロット番号を表示することは,当該技術分野において周知の技術手段といえる(例えば,原査定の拒絶の理由に引用された特開2002−87703号公報の【0017】,【0018】等参照。)。
そして,引用発明も上記周知の技術手段も,運転状態を容易に把握するという課題を有する点で共通するところからすれば,引用発明に上記周知の技術手段を適用することは,当業者が容易になし得るものである。
ここで,引用発明の「精紡機1」は,「モニタ61」を備え,該「モニタ61」は,各紡績ユニット2の生産効率をグラフで表示したり,問題の発生した紡績ユニット2を表示したり,精紡機1全体の統計的な情報を表示し,また,オペレータが入力キー62を用いて適宜の操作を行うことにより,特定の紡績ユニット2に対して設定の変更を行ったり,或いは全ての紡績ユニット2の設定を一括して変更したりすることができるものであることからすれば,引用発明の「精紡機1」には,各紡績ユニット2の識別情報とその運転情報とを併せて表示していることは明らかである。
そして,引用発明の縦一列に並んで配置されている異常表示ランプ821,822,823は,それぞれが前記全体図81の中の特定の領域に対応していることからすれば,引用発明のオペレーションパネル80に,上記周知の技術手段を適用し,各巻取ユニットのロット番号を表示するようにすると,当然,各巻取ユニットに対応する位置に運転状態を併せて表示することとなることは明らかである。
してみると,引用発明に,上記周知の技術手段を適用し,上記相違点に係る本願発明とすることは当業者が容易に想到し得るものである。

そして,本願発明の効果も,引用発明及び上記周知の技術手段から,当業者が予測し得る程度のものといえる。


第5 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,本願出願の優先日前に出願公開された引用文献に記載された発明及び上記周知の技術手段に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは,この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。

審判長 吉村 尚
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-22 
結審通知日 2022-02-28 
審決日 2022-03-15 
出願番号 P2015-241817
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65H)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
佐々木 創太郎
発明の名称 多数のユニットを備えた繊維機械  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  

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